説明

ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物

【課題】 優れた寸法安定性、耐冷熱性、金型離型性、薄肉流動性をあわせもつポリアリーレンスルフィド樹脂組成物及びそれと金属部材からなるインサート成形複合部材を提供する。
【解決手段】 アリーレンスルフィド単位あたり0.05〜3モル%に相当するアミノ基を有し、溶融粘度が200〜800ポイズであって、結晶化温度が220℃未満であるアミノ基含有ポリアリーレンスルフィド(A)29〜68.9重量%、繊維状充填材(B)15〜30重量%、粉粒状充填材(C)15〜30重量%、エチレン系共重合体(D)1〜8重量%、及び、離型材(E)0.1〜3重量%、からなることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた寸法安定性、耐冷熱性、金型離型性、薄肉流動性をあわせもつポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、自動車機器部材、電気・電子機器部材及びOA機器部材等においては、軽量化や各種部品を一つにまとめたモジュール化などが進んでいる。軽量化やモジュール化した部品とするにあたっては、樹脂と金属とを一体化した複合部品が増えている。また、各種部品点数の増大等によりモジュール化した複合部品の大型化が進行しており、複合部品とする材料には薄肉流動性や寸法安定性に優れることなどが求められている。さらに、自動車機器部材等においては、より過酷な冷熱サイクル条件での使用が進んでおり、耐冷熱性に優れることなども求められている。
【0003】
一方、生産性の観点から、複合部品はインサート成形を用いて製造する場合が多い。しかし、樹脂と金属等では線熱膨張係数が異なることなどから、樹脂部の肉厚が薄い複合部品や肉厚の変化の大きい複合部品などは、成形直後に樹脂部が割れたり、または使用中に樹脂部が割れたりするものがあった。このため、用途や複合部品の形状等がかなり制限されている。
【0004】
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPSと略記することもある。)に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略記することもある。)は、優れた機械的性質、熱的性質、電気的性質を有し、自動車機器部材、電気・電子機器部材及びOA機器部材等に幅広く使用されているが、PASは靱性に乏しく、インサート成形した複合部品の耐冷熱性等に劣るという課題があった。
【0005】
そこでPASをインサート成形した複合部品の耐冷熱性を改良するための技術として、PASに特定のオレフィン系重合体を配合したPAS樹脂組成物が提案されている(例えば特許文献1、2参照。)。また、複合部品の耐冷熱性を改良するための技術として、PASに扁平な断面形状を有する繊維状充填材と熱可塑性エラストマーを配合したPAS樹脂組成物が提案されている(例えば特許文献3参照。)。さらに、PASのそり、耐冷熱性を改良するための技術として、PPSにガラス繊維、特定のオレフィン系重合体、エポキシ樹脂、ガラスフレーク及び/または炭酸カルシウムを配合したPPS樹脂組成物とすることが提案されている(例えば特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−179914号公報(特許請求の範囲参照。)
【特許文献2】特開2003−176410号公報(特許請求の範囲参照。)
【特許文献3】特開2005−161693号公報(特許請求の範囲参照。)
【特許文献4】特開2005−306926号公報(特許請求の範囲参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1ないし2に開示された樹脂組成物においては、耐冷熱性及び金型からの離型性に劣り、さらには複合部品の寸法安定性に劣るという課題があった。特許文献3に開示された樹脂組成物においては、金型からの離型性に劣り、複合部品の寸法安定性に劣るという課題を有していた。特許文献4に開示された樹脂組成物においては、複合部品の寸法安定性に劣るという課題を有していた。
【0008】
そこで、本発明は、複合部品の寸法安定性に優れ、耐冷熱性、優れた金型離型性、薄肉流動性をあわせもつポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に関し鋭意検討した結果、特定のポリアリーレンスルフィド樹脂、繊維状充填材、粉粒状充填材、特定のエチレン系共重合体、及び特定の滑剤からなる樹脂組成物が、優れた耐冷熱性、優れた金型離型性、薄肉流動性を有し、複合部品とした際の寸法安定性に優ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、アリーレンスルフィド単位あたり0.05〜3モル%に相当するアミノ基を有し、直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスターにて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で測定した溶融粘度が200〜800ポイズであって、示差走査熱量計により340℃で5分保持した後、冷却速度20℃/minで冷却測定した際の結晶化温度が220℃未満であるアミノ基含有ポリアリーレンスルフィド(A)29〜78.9重量%、繊維状充填材(B)15〜30重量%、粉粒状充填材(C)15〜30重量%、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体(d1),エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体(d2),エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−酢酸ビニル共重合体(d3),エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体(d4),無水マレイン酸グラフト変性エチレン−α−オレフィン共重合体(d5)からなる群より選択される少なくとも1種以上のエチレン系共重合体(D)1〜8重量%、及び、カルナバワックス(e1),脂肪酸アミド系滑剤(e2)から選択される離型材(E)0.1〜3重量%、からなることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関するものである。
【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を構成するアミノ基含有PAS(A)は、アリーレンスルフィド単位あたり0.05〜3モル%に相当するアミノ基を有し、直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスターにて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で測定した溶融粘度が200〜800ポイズであって、示差走査熱量計により340℃で5分保持した後の冷却速度20℃/minで冷却測定した際の結晶化温度が220℃未満であるアミノ基含有PASである。該アミノ基含有PAS(A)としては、一般にポリアリーレンスルフィドと称される範疇に属し、ポリアリーレンスルフィドの端末単位又は鎖中単位にアミノ基を有する単位を含有したものを挙げることができる。そして、該アミノ基含有PASを構成するポリアリーレンスルフィドの単位としては、例えばp−フェニレンスルフィド単位、m−フェニレンスルフィド単位、o−フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルフォン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ビフェニレンスルフィド単位等を挙げることができ、ポリアリーレンスルフィドはこれら単位の単独重合体又は共重合体である。該アミノ基含有PASの具体的例示としては、例えばアミノ基含有ポリフェニレンスルフィド、アミノ基含有ポリフェニレンスルフィドスルフォン、アミノ基含有ポリフェニレンスルフィドケトン、アミノ基含有ポリフェニレンスルフィドエーテル等が挙げられ、その中でも、特に耐熱性、強度特性に優れることから、アミノ基含有ポリ(p−フェニレンスルフィド)であることが好ましい。
【0013】
本発明を構成するアミノ基含有PAS(A)は、アリーレンスルフィド単位あたり0.05〜3モル%に相当するアミノ基を有するものであり、特に靭性及び機械的強度に優れるPAS樹脂組成物となることから0.1〜3モル%に相当するアミノ基を含有するものであることが好ましい。ここで、アミノ基含有量が0.05モル%未満である場合、樹脂組成物とする際のエチレン系共重合体(D)との相容性に劣り、耐冷熱性を改良することが困難になる。一方、5モル%を越える場合、機械的強度の低下が見られ、耐冷熱性に劣るものとなる。なお、アミノ基の測定方法としては、例えば赤外線吸収スペクトル測定装置により、1900cm−1の吸収(ベンゼン環のC−H面外変角振動)と3387cm−1の吸収(アミノ基のN−H伸縮振動)を測定し、別途作成した検量線を用いこれらの吸収比により得る方法を挙げることができる。なお、該検量線は、例えばベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族環を有する化合物とアニリン、ジアミノベンゼン等のアミノ芳香族化合物の混合物により作成することが可能である。
【0014】
本発明を構成するアミノ基含有PAS(A)は、直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスターにて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で測定した溶融粘度が200〜800ポイズのものであり、特に靭性と薄肉流動性に優れるPAS樹脂組成物となることから300〜700ポイズであることが好ましい。ここで、溶融粘度が200ポイズ未満である場合、樹脂組成物の機械的強度の低下が見られ、複合部品とした際に耐冷熱性に劣るものとなる。一方、溶融粘度が800ポイズを越える場合、樹脂組成物は薄肉流動性に劣り薄肉の複合部品を作製することが困難となるばかりか、寸法安定性にも劣るものとなる。
【0015】
本発明を構成するアミノ基含有PAS(A)は、示差走査熱量計により340℃で5分保持した後、冷却速度20℃/minで冷却測定した際の結晶化温度が220℃未満のものであり、特に寸法安定性に優れるPAS樹脂となることから180〜210℃の範囲内のアミノ基含有PASであることが好ましい。ここで、結晶化温度が220℃以上である場合、得られるPAS樹脂組成物は寸法安定性に劣るものとなる。
【0016】
本発明を構成するアミノ基含有PAS(A)の製造方法として、アミノ基含有PASの製造方法として知られている方法により製造することが可能であり、例えば極性溶媒中で硫化アルカリ金属塩、ポリハロ芳香族化合物、アミノ基含有ポリハロ芳香族化合物を重合することにより得る事が可能である。その際の極性有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等を挙げる事ができ、硫化アルカリ金属塩としては、例えば硫化ナトリウム、硫化ルビジウム、硫化リチウムの無水物又は水和物を挙げる事ができる。また、硫化アルカリ金属塩としては、水硫化アルカリ金属塩とアルカリ金属水酸化物を反応させたものであってもよい。ポリハロ芳香族化合物としては、例えばp−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン、p−ジヨードベンゼン、m−ジクロロベンゼン、m−ジブロモベンゼン、m−ジヨードベンゼン、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジクロロジフェニル等を挙げる事ができ、アミノ基含有ポリハロ芳香族化合物としては、例えばジクロロアニリン、クロロアニリン、ジクロロアミノベンゼン等を挙げる事ができる。
【0017】
また、アミノ基含有PAS(A)としては、直鎖状のものであっても、重合時にトリハロゲン以上のポリハロゲン化合物を少量添加して若干の架橋又は分岐構造を導入したものであっても、窒素などの非酸化性の不活性ガス中で加熱処理を施したものであってもかまわないし、さらにこれらの構造の混合物であってもかまわない。また、該アミノ基含有PAS樹脂は、加熱硬化前又は後に脱イオン処理(酸洗浄や熱水洗浄など)、あるいはアセトン、メチルアルコールなどの有機溶媒による洗浄処理を行うことによってイオン、オリゴマーなどの不純物を低減させたものであってもよい。さらに、重合反応終了後に不活性ガス又は酸化性ガス中で加熱処理を行い硬化を行ったものであってもよい。
【0018】
該アミノ基含有PAS(A)の配合量は、29〜68.9重量%であり、特に寸法安定性と薄肉流動性とのバランスに優れたPAS樹脂組成物となることから40〜60重量%であることが好ましい。ここで、29重量%未満である場合、得られる樹脂組成物は薄肉流動性に劣るものとなる。一方、68.9重量%を越える場合、得られる樹脂組成物は寸法安定性に劣るものとなる。
【0019】
本発明のPAS樹脂組成物を構成する繊維状充填材(B)としては、例えば平均繊維径が8〜15μmのチョップドストランド、ミルドファイバー、ロービング等のガラス繊維;PAN系炭素繊維やピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;グラファイト化繊維、窒化珪素ウイスカー、塩基性硫酸マグネシウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、チタン酸カリウムウイスカー、炭化珪素ウイスカー、ボロンウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等のウイスカー;ステンレス繊維等の金属繊維;ロックウール、ジルコニア、アルミナシリカ、チタン酸バリウム、炭化珪素、アルミナ、シリカ、高炉スラグ等の無機系繊維;全芳香族ポリアミド繊維、フェノール樹脂繊維、全芳香族ポリエステル繊維等の有機系繊維;ワラステナイト、マグネシウムオキシサルフェート等の鉱物系繊維等が挙げられ、とりわけ平均繊維径が8〜15μmのガラス繊維が機械的強度等のバランスに優れ、耐冷熱性に優れるPAS樹脂組成物となることから好ましい。また、これら2種以上を併用することも可能であり、必要によりエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物又はポリマーで、予め表面処理したものでもよい。
【0020】
該繊維状充填材(B)の配合量としては、15〜30重量%であり、特に機械的強度と薄肉流動性のバランスに優れたPAS樹脂組成物となることから20〜30重量%であることが好ましい。ここで、配合量が15重量%未満の場合、得られる樹脂組成物は寸法安定性に劣るものとなる。一方、配合量が30重量%を超える場合、得られる樹脂組成物は薄肉流動性に劣るばかりか寸法安定性にも劣るものとなる。
【0021】
本発明のPAS樹脂組成物を構成する粉粒状充填材(C)としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、マイカ、シリカ、タルク、クレイ、硫酸カルシウム、カオリン、ワラステナイト、ゼオライト、ガラスパウダー、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化スズ、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、黒鉛、カーボンブラック、ガラスパウダー、ガラスバルーン、ガラスフレーク、ハイドロタルサイト、金属箔等の粉粒状物が挙げられ、その中でも特に機械的強度等のバランスに優れ、耐冷熱性に優れるPAS樹脂組成物となることから平均粒子径1〜7μmの炭酸カルシウムが好ましい。また、これら2種以上を併用することも可能であり、必要によりエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物又はポリマーで、予め表面処理したものでもよい。
【0022】
該粉粒状充填材(C)の配合量としては、15〜30重量%であり、特に機械的強度と薄肉流動性のバランスに優れたPAS樹脂組成物となることから、15〜25重量%であることが好ましい。ここで、配合量が15重量%未満の場合、得られる樹脂組成物は寸法安定性に劣るものとなる。一方、配合量が30重量%を超える場合、得られる樹脂組成物の薄肉流動性に劣るばかりか寸法安定性にも劣るものとなる。
【0023】
本発明のPAS樹脂組成物を構成するエチレン系共重合体(D)は、アミノ基含有PASと組み合わせることにより、PAS樹脂組成物の耐冷熱性を改良するものであり、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体(d1),エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体(d2),エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−酢酸ビニル共重合体(d3),エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体(d4),無水マレイン酸グラフト変性エチレン−α−オレフィン共重合体(d5)からなる群より選択される少なくとも1種以上のものである。
【0024】
そして、該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体(d1)としては、この範疇に属するものであれば如何なるものを用いても良く、中でも得られるPAS樹脂組成物が特に耐冷熱性等に優れることから、エチレン残基単位:α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル残基単位:無水マレイン酸残基単位(重量比)=50〜98:40〜1:10〜1の範囲であることが好ましい。該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体(d1)の具体的例示としては、(商品名)ボンダインLX4110(アルケマ社製)、(商品名)ボンダインTX8030(アルケマ社製)、(商品名)ボンダインAX8390(アルケマ社製)等が挙げられる。
【0025】
該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体(d2)としては、この範疇に属するものであれば如何なるものを用いても良く、中でも得られるPAS樹脂組成物が特に耐冷熱性等に優れることから、エチレン残基単位:α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル残基単位(重量比)=85〜99:15〜1の範囲であることが好ましい。該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体(d2)の具体的例示としては、(商品名)ボンドファースト2C(住友化学(株)製)、(商品名)ボンドファーストE(住友化学(株)製)等が挙げられる。
【0026】
該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−酢酸ビニル共重合体(d3)としては、この範疇に属するものであれば如何なるものを用いても良く、中でも得られるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が特に耐冷熱性等に優れることから、エチレン残基単位:α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル残基単位:酢酸ビニル残基単位(重量比)=50〜98:15〜1:35〜1の範囲であることが好ましい。該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−酢酸ビニル共重合体(d3)の具体的例示としては、(商品名)ボンドファースト2B(住友化学(株)製)、(商品名)ボンドファースト7B(住友化学(株)製)等が挙げられる。
該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体(d4)としては、この範疇に属するものであれば如何なるものを用いても良く、中でも得られるPAS樹脂組成物が特に耐冷熱性等に優れることから、エチレン残基単位:α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル残基単位:α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル残基単位(重量比)=50〜98:10〜1:40〜1の範囲であることが好ましい。該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体(d4)の具体的例示としては、(商品名)ボンドファースト7L(住友化学(株)製)、(商品名)ボンドファースト7M(住友化学(株)製)等が挙げられる。
【0027】
該無水マレイン酸グラフト変性エチレン−α−オレフィン共重合体(d5)としては、この範疇に属するものであれば如何なるものを用いても良く、中でも得られるPAS樹脂組成物が特に耐冷熱性等に優れることから、エチレン残基単位:α−オレフィン残基単位:無水マレイン酸残基単位(重量比)=50〜98:45〜1:5〜1の範囲からなるものであることが好ましく、具体的には無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレンゴム等が挙げられる。該無水マレイン酸グラフト変性エチレン−α−オレフィン共重合体(d5)は、例えばエチレン−α−オレフィン共重合体、過酸化物、無水マレイン酸を共存し、グラフト化反応を進行することにより入手することが可能である。
【0028】
ここで、エチレン系共重合体(D)を構成するα−オレフィンとは、炭素数が3以上のα−オレフィンを言い、例えばプロピレン、ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等を例示できる。また、α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸等のアルキルエステルが挙げられ、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル等が挙げられる。α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステルとしては、例えばアクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステルが挙げられる。
【0029】
該エチレン系共重合体(D)の配合量は1〜8重量%である。ここで、エチレン系共重合体(D)の配合量が1重量%未満である場合、得られる樹脂組成物は耐冷熱性に劣るものとなる。一方、配合量が8重量%を超える場合、成形加工時の金型汚染が激しいものとなる。
【0030】
本発明のPAS樹脂組成物を構成する離型材(E)は、カルナバワックス(e1)、脂肪酸アミド系滑剤(e2)から選択される1種以上のものであり、該カルナバワックス(e1)、脂肪酸アミド系滑剤(e2)は市販のものが使用できる。該カルナバワックス(e1)としては、一般にカルナバワックスと称するものであれば如何なるものを用いる事が可能であり、例えば(商品名)精製カルナバ粉末1号(日興リカ(株)製)等を挙げることができる。また、該脂肪酸アミド系滑剤(e2)は、高級脂肪酸アミド、エチレンビスステアロアミド、高級脂肪酸及びジアミンからなる重縮合物などが挙げられ、この範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えばステアリン酸、セバシン酸、エチレンジアミンからなる重縮合物である、(商品名)ライトアマイドWH−255(共栄社化学(株)製)等を挙げることができる。
【0031】
該離型材(E)の配合量は、0.1〜3重量%である。ここで、0.1重量%未満である場合、得られる樹脂組成物は成形加工時の金型からの離型性に劣るものとなる。一方、3重量%を超える場合、成形加工時に大量のガスが発生し成形加工性に劣るものとなる。
【0032】
さらに、本発明のPAS樹脂組成物においては、より耐冷熱性等の改良効果を促す目的で、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基等の官能基を有する変性ポリシロキサン化合物;アミノ基、エポキシ基等の官能基を有するアルコキシシランカップリング剤;エポキシ樹脂等を配合してなるものであってもよい。
【0033】
本発明のPAS樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知のタルク、カオリン、シリカなどの結晶核剤;ポリアルキレンオキサイドオリゴマー系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤;酸化防止剤;熱安定剤;滑剤;紫外線防止剤;着色剤;発泡剤などの通常の添加剤を1種以上添加するものからなるものであってもよい。
【0034】
また、本発明のPAS樹脂組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、各種熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、例えばシアン酸エステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、シリコーン樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリチオエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリーレンサルファイドスルホン、ポリアリーレンサルファイドケトン、ポリアミドイミド、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアルキレンオキサイド等の1種以上を混合して使用してなるものであってもよい。
【0035】
本発明のPAS樹脂組成物を製造する際の製造方法としては特に制限はなく、一般的な混合・混練方法として知られている方法を用いる事が可能であり、例えば全ての原材料を配合し溶融混練する方法;原材料の一部を配合した後で溶融混練し、さらに残りの原材料を配合し溶融混練する方法;あるいは原材料の一部を配合後単軸又は二軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法、など、いずれの方法を用いてもよい。また、小量の添加成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加することで使用してもよい。そして、溶融混練を行う方法としては、従来から使用されている加熱溶融混練方法を用いることができ、例えば単軸又は二軸押出機、ニーダー、ミル、ブラベンダーなどによる加熱溶融混練方法が挙げられ、特に混練能力に優れた二軸押出機による溶融混練方法が好ましい。また、この際の混練温度は特に限定されるものではなく、通常280〜370℃の中から任意に選ぶことができる。
【0036】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、優れた寸法安定性、耐冷熱性、金型離型性、薄肉流動性をあわせもつことを特徴とする。さらに、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、他部材、例えば金属部材等とのインサート成形に供し、インサート成形複合部材として用いることに適したものである。ここで、該インサート成形複合部材が金属部材より構成される場合、該金属部材としては、金属の範疇に属するものであればいかなる金属であってもよく、その中でも得られるインサート成形複合部材が各種用途に適応可能となることから、鋼材、銅、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム、真鍮、ニッケルが好ましく、特に鋼材、銅が好ましい。該金属部材は圧延したものを使用しても良いし鋳造したものを使用しても良い。また、該金属部材は、表面にケミカルエッチング等の化学的な表面処理、ブラスト処理などの物理的な表面処理またはめっき等が施されたものであっても構わない。
【0037】
該金属部材の形状はインサート成形可能な形状であれば特に制限はない。また、1個又は複数個の金属部材を用いインサート成形複合部材を構成しても良い。
【0038】
インサート成形法としては、例えば射出成形機、押出成形機、圧縮成形機などを用い、金属部材を成形用金型内に装着し、290〜340℃で加熱溶融したPAS樹脂組成物を通常の成形条件で成形する成形法を挙げることができ、特に射出成形機を用いた射出インサート成形が生産効率の観点から好ましく使用される。
【0039】
本発明のPAS樹脂組成物は、例えば自動車部材、電気・電子機器部材、及びOA・精密機器部材などに幅広く使用でき、具体的例示としてはイグニッション関連部品、ディストリビューター部品、各種センサー部品、各種アクチュエーター部品、スロットル部品、パワーモジュール部品、インテリジェントパワーモジュール部品、ECU部品、コンデンサケース部品、各種コネクタ部品などのインサート成形複合部材に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0040】
本発明のPAS樹脂組成物は金型からの離型性に優れ、該組成物の成形体は、優れた寸法安定性、耐冷熱性、薄肉流動性をあわせもつことから各種成形品用の樹脂組成物原料として用いる事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例及び比較例においてインサート成形により製造した樹脂組成物及び鋼材よりなるテストピースを示す図である。
【実施例】
【0042】
以下に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。
【0043】
実施例及び比較例において用いた、PAS(A)、繊維状充填材(B)、粉粒状充填材(C)、エチレン系共重合体(D)、離型材(E)、その他添加剤を以下に示す。
【0044】
<PAS(A)>
アミノ基含有ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、単にアミノ基含有PPS(a1−2)と記す。):溶融粘度400ポイズ、フェニレンスルフィド単位あたりのアミノ基含有量0.6モル%、結晶化温度207℃。
【0045】
アミノ基含有ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、単にアミノ基含有PPS(a1−3)と記す。):溶融粘度750ポイズ、フェニレンスルフィド単位あたりのアミノ基含有量0.6モル%、結晶化温度222℃。
【0046】
アミノ基含有ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、単にアミノ基含有PPS(a2−2)と記す。):溶融粘度300ポイズ、フェニレンスルフィド単位あたりのアミノ基含有量1.0モル%、結晶化温度210℃。
【0047】
アミノ基含有ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、単にアミノ基含有PPS(a2−3)と記す。):溶融粘度550ポイズ、フェニレンスルフィド単位あたりのアミノ基含有量1.0モル%、結晶化温度227℃。
【0048】
アミノ基含有ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、単にアミノ基含有PPS(a3−2)と記す。):溶融粘度650ポイズ、フェニレンスルフィド単位あたりのアミノ基含有量0.3モル%、結晶化温度203℃。
【0049】
アミノ基含有ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、単にアミノ基含有PPS(a4−1)と記す。):溶融粘度400ポイズ、フェニレンスルフィド単位あたりのアミノ基含有量0.15モル%、結晶化温度198℃。
【0050】
アミノ基含有ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、単にアミノ基含有PPS(a4−2)と記す。):溶融粘度1200ポイズ、フェニレンスルフィド単位あたりのアミノ基含有量0.15モル%、結晶化温度215℃。
【0051】
アミノ基含有ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、単にアミノ基含有PPS(a5−1)と記す。):溶融粘度550ポイズ、フェニレンスルフィド単位あたりのアミノ基含有量0.6モル%、結晶化温度217℃。
【0052】
アミノ基含有ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、単にアミノ基含有PPS(a6−2)と記す。):溶融粘度550ポイズ、フェニレンスルフィド単位あたりのアミノ基含有量0.6モル%、結晶化温度204℃。
【0053】
アミノ基含有ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、単にアミノ基含有PPS(a6−3)と記す。):溶融粘度700ポイズ、フェニレンスルフィド単位あたりのアミノ基含有量0.6モル%、結晶化温度222℃。
【0054】
アミノ基含有ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、単にアミノ基含有PPS(a7−2)と記す。):溶融粘度150ポイズ、フェニレンスルフィド単位あたりのアミノ基含有量1.0モル%、結晶化温度212℃。
【0055】
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、単にPPS(a8−2)と記す。):溶融粘度330ポイズ、結晶化温度213℃。
【0056】
<繊維状充填材(B)>
ガラス繊維(b−1); エヌエスジー・ヴェトロテックス(株)製、(商品名)RES03−TP91;繊維径9μm、繊維長3mm。
【0057】
ガラス繊維(b−2); エヌエスジー・ヴェトロテックス(株)製、(商品名)RES03−TP91K;繊維径13μm、繊維長3mm。
【0058】
<粉粒状充填材(C)>
炭酸カルシウム(c−1);白石工業(株)製、(商品名)ホワイトンP−30;平均粒子径6μm。
【0059】
炭酸カルシウム(c−2);白石工業(株)製、(商品名)ホワイトンP−10;平均粒子径3μm。
【0060】
<エチレン系共重合体(D)>
エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体(d1−1)(以下、単にエチレン系共重合体(d1−1)と記す。):アルケマ(株)製、(商品名)ボンダインAX8390
エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体(d2−1)(以下、単にエチレン系共重合体(d2−1)と記す。):住友化学(株)製、(商品名)ボンドファーストE
エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−酢酸ビニル共重合体(d3−1)(以下、単にエチレン系共重合体(d3−1)と記す。):住友化学(株)製、(商品名)ボンドファースト7B
エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−アルキルエステル共重合体(d4−1)(以下、単にエチレン系共重合体(d4−1)と記す。):住友化学(株)製、(商品名)ボンドファースト7M
無水マレイン酸グラフト変性エチレン−α−オレフィン共重合体(d5−1)(以下、単にエチレン系共重合体(d5−1)と記す。):無水マレイン酸付加量1.4wt%、密度929kg/m、メルトマスフローレート1.7g/10min。
【0061】
<離型材(E)>
カルナバワックス(e1−1);日興リカ製、(商品名)精製カルナバ粉末1号
ステアリン酸、セバシン酸、エチレンジアミンの重縮合物(以下、単に脂肪酸アミド系滑剤(e2−1)と記す。);共栄社化学(株)製、(商品名)ライトアマイドWH−255
<エポキシ樹脂(F)>
エポキシ樹脂(f−1):大日本インキ化学工業(株)製、(商品名)エピクロン3050。
【0062】
<合成例1(アミノ基含有PPS(a1−2,3)の合成)>
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、NaS・2.9HO6214g及びN−メチル−2−ピロリドン17000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン7150g、3,5−ジクロロアニリン47g(p−ジクロロベンゼンと3,5−ジクロロアニリンの総量に対して約0.6モル%)、N−メチル−2−ピロリドン5000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却し、遠心分離器により固形分を単離した。該固形分を温水でポリマーを繰り返し洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、溶融粘度が250ポイズのアミノ基含有ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、アミノ基含有PPS(a1−1)と記す。)を得た。
【0063】
このアミノ基含有PPS(a1−1)を、さらに窒素雰囲気下250℃で4時間硬化を行いアミノ基含有PPS(a1−2)を得た。アミノ基含有PPS(a1−2)の溶融粘度は400ポイズであり、フェニレンスルフィド単位あたりのアミノ基含有量は0.6モル%であり、結晶化温度は207℃であった。
【0064】
さらに、アミノ基含有PPS(a1−2)を、酸素雰囲気下230℃で2時間硬化を行いアミノ基含有PPS(a1−3)を得た。アミノ基含有PPS(a1−3)の溶融粘度は750ポイズであり、フェニレンスルフィド単位あたりのアミノ基含有量は0.6モル%であり、結晶化温度は222℃であった。
【0065】
<合成例2(アミノ基含有PPS(a2−2,3)の合成)>
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、NaS・2.9HO6214g及びN−メチル−2−ピロリドン17000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン7085g、3,5−ジクロロアニリン79g(p−ジクロロベンゼンと3,5−ジクロロアニリンの総量に対して約1.0モル%)、N−メチル−2−ピロリドン5000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却し、遠心分離器により固形分を単離した。該固形分を温水でポリマーを繰り返し洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、溶融粘度が180ポイズのアミノ基含有ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、アミノ基含有PPS(a2−1)と記す。)を得た。
【0066】
このアミノ基含有PPS(a2−1)を、さらに窒素雰囲気下250℃で4時間硬化を行いアミノ基含有PPS(a2−2)を得た。アミノ基含有PPS(a2−2)の溶融粘度は300ポイズであり、フェニレンスルフィド単位あたりのアミノ基含有量は1.0モル%であり、結晶化温度は210℃であった。
【0067】
さらに、アミノ基含有PPS(a2−2)を、酸素雰囲気下230℃で2時間硬化を行いアミノ基含有PPS(a2−3)を得た。アミノ基含有PPS(a2−3)の溶融粘度は550ポイズであり、フェニレンスルフィド単位あたりのアミノ基含有量は1.0モル%であり、結晶化温度は227℃であった。
【0068】
<合成例3(アミノ基含有PPS(a3−2)の合成)>
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、NaS・2.9HO6214g及びN−メチル−2−ピロリドン17000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン7123g、3,5−ジクロロアニリン24g(p−ジクロロベンゼンと3,5−ジクロロアニリンの総量に対して約0.3モル%)、N−メチル−2−ピロリドン5000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却し、遠心分離器により固形分を単離した。該固形分を温水でポリマーを繰り返し洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、溶融粘度が350ポイズのアミノ基含有ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、アミノ基含有PPS(a3−1)と記す。)を得た。
【0069】
このアミノ基含有PPS(a3−1)を、さらに窒素雰囲気下250℃で4時間硬化を行いアミノ基含有PPS(a3−2)を得た。アミノ基含有PPS(a3−2)の溶融粘度は650ポイズであり、フェニレンスルフィド単位あたりのアミノ基含有量は0.3モル%であり、結晶化温度は203℃であった。
【0070】
<合成例4(アミノ基含有PPS(a4−1,2)の合成)>
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、NaS・2.9HO6214g及びN−メチル−2−ピロリドン17000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン7120g、3,5−ジクロロアニリン12g(p−ジクロロベンゼンと3,5−ジクロロアニリンの総量に対して約0.15モル%)、N−メチル−2−ピロリドン5000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却し、遠心分離器により固形分を単離した。該固形分を温水でポリマーを繰り返し洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、溶融粘度が400ポイズで結晶化温度が198℃のアミノ基含有ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、アミノ基含有PPS(a4−1)と記す。)を得た。
【0071】
このアミノ基含有PPS(a4−1)を、さらに酸素雰囲気下230℃で3時間硬化を行いアミノ基含有PPS(a4−2)を得た。アミノ基含有PPS(a4−2)の溶融粘度は1200ポイズであり、フェニレンスルフィド単位あたりのアミノ基含有量は0.15モル%であり、結晶化温度は215℃であった。
【0072】
<合成例5(アミノ基含有PPS(a5−1)の合成)>
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、NaS・2.9HO6214g及びN−メチル−2−ピロリドン12000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に200℃まで昇温して、1090gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン7150g、3,5−ジクロロアニリン79g(p−ジクロロベンゼンと3,5−ジクロロアニリンの総量に対して約1.0モル%)、N−メチル−2−ピロリドン6000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて1時間重合し、続けて250℃まで昇温し、250℃にて2時間重合した。さらに、250℃で水3005gを圧入し、再度255℃まで昇温し、255℃にて2時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却し、遠心分離器により固形分を単離した。該固形分をN−メチル−2−ピロリドン、アセトン及び温水で順次洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、溶融粘度が550ポイズのアミノ基含有ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、アミノ基含有PPS(a5−1)と記す。)を得た。このアミノ基含有PPS(a5−1)を、フェニレンスルフィド単位あたりのアミノ基含有量は0.6モル%であり、結晶化温度は217℃であった。
【0073】
<合成例6(アミノ基含有PPS(a6−2)の合成)>
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、NaS・2.9HO6214g及びN−メチル−2−ピロリドン17000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン7110g、3,5−ジクロロアニリン47g(p−ジクロロベンゼンと3,5−ジクロロアニリンの総量に対して約0.6モル%)、N−メチル−2−ピロリドン5000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却し、遠心分離器により固形分を単離した。該固形分を温水でポリマーを繰り返し洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、溶融粘度が300ポイズのアミノ基含有ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、アミノ基含有PPS(a6−1)と記す。)を得た。
【0074】
このアミノ基含有PPS(a6−1)を、さらに窒素雰囲気下250℃で2時間硬化を行いアミノ基含有PPS(a6−2)を得た。アミノ基含有PPS(a6−2)の溶融粘度は550ポイズであり、フェニレンスルフィド単位あたりのアミノ基含有量は0.6モル%であり、結晶化温度は204℃であった。
【0075】
さらに、アミノ基含有PPS(a6−2)を、酸素雰囲気下220℃で3時間硬化を行いアミノ基含有PPS(a6−3)を得た。アミノ基含有PPS(a6−3)の溶融粘度は700ポイズであり、フェニレンスルフィド単位あたりのアミノ基含有量は0.6モル%であり、結晶化温度は222℃であった。
【0076】
<合成例7(アミノ基含有PPS(a7−2)の合成)>
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、NaS・2.9HO6214g及びN−メチル−2−ピロリドン17000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン7090g、3,5−ジクロロアニリン79g(p−ジクロロベンゼンと3,5−ジクロロアニリンの総量に対して約1.0モル%)、N−メチル−2−ピロリドン5000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却し、遠心分離器により固形分を単離した。該固形分を温水でポリマーを繰り返し洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、溶融粘度が100ポイズのアミノ基含有ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、アミノ基含有PPS(a7−1)と記す。)を得た。
【0077】
アミノ基含有PPS(a7−1)を、さらに窒素雰囲気下240℃で4時間硬化を行いアミノ基含有PPS(a7−2)を得た。アミノ基含有PPS(a7−2)の溶融粘度は150ポイズであり、フェニレンスルフィド単位あたりのアミノ基含有量は1.0モル%であり、結晶化温度は212℃であった。
【0078】
<合成例8(PPS(a8−2)の合成)>
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、NaS・2.9HO6214g及びN−メチル−2−ピロリドン17000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン7310g、N−メチル−2−ピロリドン5000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却し、遠心分離器により固形分を単離した。該固形分を温水でポリマーを繰り返し洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、溶融粘度が200ポイズのポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(a8−1)と記す。)を得た。
【0079】
このPPS(a8−1)を、さらに窒素雰囲気下250℃で4時間硬化を行いPPS(a8−2)を得た。得られたPPS(a8−2)の溶融粘度は330ポイズであり、結晶化温度は213℃であった。
【0080】
<合成例9(エチレン系共重合体(d5−1)の合成)>
直鎖状低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名ニポロンL F13)10kgに対し無水マレイン酸(和光純薬工業(株)製)250g、ジアルキルパーオキサイド(日本油脂(株)製、商品名パーヘキサ25B)10gをヘキシェルミキサーにて均一に混合した。その後、二軸押出機(東芝機械(株)、商品名TEM−35B)にて、シリンダー温度220℃で押し出し、無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン(以下、無水マレイン酸変性L−LDPEと記す。)を得た。赤外線吸収スペクトルによりカルボニル基による吸収を測定し、別途作成した検量線から求めた無水マレイン酸付加量は1.4wt%であった。また、密度は929kg/m、メルトマスフローレートは1.7g/10min(測定温度190℃、荷重21.18N)であった。
【0081】
合成例1〜9により得られたPASの評価・測定方法を以下に示す。
【0082】
〜アミノ基含有量の測定〜
赤外線吸収スペクトル測定装置により、1900cm−1の吸収(ベンゼン環のC−H面外変角振動)と3387cm−1の吸収(アミノ基のN−H伸縮振動)を測定し、該吸収比によりアミノ基含有量を得た。なお、その際の検量線はベンゼンとアニリンの混合物より作製した。
【0083】
〜結晶化温度の測定〜
熱流束型示差走査熱量計にて、340℃で5分保持した後、冷却速度20℃/minで冷却した際の発熱ピーク温度を結晶化温度とした。
【0084】
〜PASの溶融粘度測定〜
直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスター((株)島津製作所製、(商品名)CFT−500)にて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で溶融粘度の測定を行った。
【0085】
〜離型性、寸法安定性及び耐冷熱性の評価〜
得られたPAS樹脂組成物をシリンダー温度310℃、金型温度135℃に調整した射出成形機(住友重機械工業(株)製、(商品名)SE−75S)を用い、図1に示す3φ×40mmの鋼材(炭素鋼)製ピンをインサートするインサート成形により、肉厚5mmの100mm×50mm×30mmのPAS樹脂組成物で被覆し、寸法安定性及び耐冷熱性評価用のテストピースを作製した。
【0086】
インサート成形の際、テストピースが金型から離型する際の離型性を以下の評価基準で判定した。
○:テストピースが得られかつ外観上の異常は認められなかったもの
×:金型から離型せず複合部品を得ることができなかったもの。または、テストピースは得られたが、テストピースにエジェクターピンの痕跡が目立つ、金型転写性に劣り表面外観が悪いなど、テストピースに不具合が認められたもの。
【0087】
そして、得られた該テストピースを、予め用意した治具にあてがい、寸法安定性を判定した。寸法安定性の良好なテストピースでは、4つのピン全てを治具にはめ込むことができる。
○:テストピースを治具にはめ込むことが可能であったもの
×:テストピースを治具にはめ込むことができなかったもの。
【0088】
さらに、得られた該テストピースを、150℃で30min保持した後、−40℃で30min保持することを1サイクルとする冷熱サイクルに供し、目視によりクラックが発生するまで該サイクルを継続し、クラック発生が認められた冷熱サイクル処理数を耐冷熱性として評価した。該冷熱サイクル処理数の高いものほど冷熱性に優れるものとした。
【0089】
〜薄肉流動性の評価〜
得られたPAS樹脂組成物をシリンダー温度310℃、金型温度135℃に調整した射出成形機(住友重機械工業(株)製、(商品名)SE−75S)を用い、肉厚1mmのスパイラルフロー金型に射出圧100MPaで射出成形した際の流動長から薄肉流動性を判定した。該流動長が長いものほど薄肉流動性に優れるとした。
【0090】
実施例1
合成例1で得られたアミノ基含有PPS(a1−2)4.95kg、炭酸カルシウム(c−1)2.0kg、エチレン系共重合体(d1−1)0.5kg、脂肪酸アミド系滑剤(e2−1)0.05kg、エポキシ樹脂(f−1)0.1kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、シリンダー温度300℃に設定した二軸押出機(東芝機械(株)、(商品名)TEM−35B)にて、サイドフィーダーからガラス繊維(b−1)2.5kgを供給しながら溶融混練を行いペレット化した。その後、175℃で5時間乾燥しPPS樹脂組成物を得た。
【0091】
得られたPPS樹脂組成物の寸法安定性、冷熱性、金型離型性、薄肉流動性の評価を行った。その結果を表1に記す。
【0092】
実施例2
合成例2で得られたアミノ基含有PPS(a2−2)4.28kg、炭酸カルシウム(c−2)2.5kg、エチレン系共重合体(d2−1)0.7kg、カルナバワックス(e1−1)0.02kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、シリンダー温度300℃に設定した二軸押出機(東芝機械(株)、(商品名)TEM−35B)にて、サイドフィーダーからガラス繊維(b−2)2.5kgを供給しながら溶融混練を行いペレット化した。その後、175℃で5時間乾燥しPPS樹脂組成物を得た。
【0093】
得られたPPS樹脂組成物の寸法安定性、冷熱性、金型離型性、薄肉流動性の評価を行った。その結果を表1に記す。
【0094】
実施例3
合成例3で得られたアミノ基含有PPS(a3−2)5.7kg、炭酸カルシウム(c−2)2.0kg、エチレン系共重合体(d3−1)0.2kg、脂肪酸アミド系滑剤(e2−1)0.1kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、シリンダー温度300℃に設定した二軸押出機(東芝機械(株)、(商品名)TEM−35B)にて、サイドフィーダーからガラス繊維(b−1)2.0kgを供給しながら溶融混練を行いペレット化した。その後、175℃で5時間乾燥しPPS樹脂組成物を得た。
【0095】
得られたPPS樹脂組成物の寸法安定性、冷熱性、金型離型性、薄肉流動性の評価を行った。その結果を表1に記す。
【0096】
実施例4
アミノ基含有PPS(a4−1)5.07kg、炭酸カルシウム(c−2)1.5kg、エチレン系共重合体(d4−1)0.4kg、カルナバワックス(e1−1)0.03kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、シリンダー温度300℃に設定した二軸押出機(東芝機械(株)、(商品名)TEM−35B)にて、サイドフィーダーからガラス繊維(b−1)3.0kgを供給しながら溶融混練を行いペレット化した。その後、175℃で5時間乾燥しPPS樹脂組成物を得た。
【0097】
得られたPPS樹脂組成物の寸法安定性、冷熱性、金型離型性、薄肉流動性の評価を行った。その結果を表1に記す。
【0098】
実施例5
アミノ基含有PPS(a5−1)4.38kg、炭酸カルシウム(c−1)2.5kg、エチレン系共重合体(d5−1)0.6kg、カルナバワックス(e1−1)0.02kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、シリンダー温度300℃に設定した二軸押出機(東芝機械(株)、(商品名)TEM−35B)にて、サイドフィーダーからガラス繊維(b−1)2.5kgを供給しながら溶融混練を行いペレット化した。その後、175℃で5時間乾燥しPPS樹脂組成物を得た。
【0099】
得られたPPS樹脂組成物の寸法安定性、冷熱性、金型離型性、薄肉流動性の評価を行った。その結果を表1に記す。
【0100】
実施例6
アミノ基含有PPS(a6−2)5.05kg、炭酸カルシウム(c−1)1.5kg、エチレン系共重合体(d1−1)0.4kg、脂肪酸アミド系滑剤(e2−1)0.05kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、シリンダー温度300℃に設定した二軸押出機(東芝機械(株)、(商品名)TEM−35B)にて、サイドフィーダーからガラス繊維(b−2)3.0kgを供給しながら溶融混練を行いペレット化した。その後、175℃で5時間乾燥しPPS樹脂組成物を得た。
【0101】
得られたPPS樹脂組成物の寸法安定性、冷熱性、金型離型性、薄肉流動性の評価を行った。その結果を表1に記す。
【0102】
実施例7
アミノ基含有PPS(a1−2)5.07kg、炭酸カルシウム(c−1)1.5kg、エチレン系共重合体(d4−1)0.4kg、脂肪酸アミド系滑剤(e2−1)0.03kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、シリンダー温度300℃に設定した二軸押出機(東芝機械(株)、(商品名)TEM−35B)にて、サイドフィーダーからガラス繊維(b−2)3.0kgを供給しながら溶融混練を行いペレット化した。その後、175℃で5時間乾燥しPPS樹脂組成物を得た。
【0103】
得られたPPS樹脂組成物の寸法安定性、冷熱性、金型離型性、薄肉流動性の評価を行った。その結果を表1に記す。
【0104】
実施例8
アミノ基含有PPS(a2−2)4.36kg、炭酸カルシウム(c−2)2.0kg、エチレン系共重合体(d3−1)0.6kg、カルナバワックス(e1−1)0.04kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、シリンダー温度300℃に設定した二軸押出機(東芝機械(株)、(商品名)TEM−35B)にて、サイドフィーダーからガラス繊維(b−1)3.0kgを供給しながら溶融混練を行いペレット化した。その後、175℃で5時間乾燥しPPS樹脂組成物を得た。
【0105】
得られたPPS樹脂組成物の寸法安定性、冷熱性、金型離型性、薄肉流動性の評価を行った。その結果を表1に記す。
【0106】
実施例9
アミノ基含有PPS(a3−2)5.57kg、炭酸カルシウム(c−1)1.5kg、エチレン系共重合体(d2−1)0.4kg、脂肪酸アミド系滑剤(e2−1)0.03kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、シリンダー温度300℃に設定した二軸押出機(東芝機械(株)、(商品名)TEM−35B)にて、サイドフィーダーからガラス繊維(b−2)2.5kgを供給しながら溶融混練を行いペレット化した。その後、175℃で5時間乾燥しPPS樹脂組成物を得た。
【0107】
得られたPPS樹脂組成物の寸法安定性、冷熱性、金型離型性、薄肉流動性の評価を行った。その結果を表1に記す。
【0108】
実施例10
アミノ基含有PPS(a4−1)4.96kg、炭酸カルシウム(c−2)2.0kg、エチレン系共重合体(d5−1)0.5kg、カルナバワックス(e1−1)0.04kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、シリンダー温度300℃に設定した二軸押出機(東芝機械(株)、(商品名)TEM−35B)にて、サイドフィーダーからガラス繊維(b−2)2.5kgを供給しながら溶融混練を行いペレット化した。その後、175℃で5時間乾燥しPPS樹脂組成物を得た。
【0109】
得られたPPS樹脂組成物の寸法安定性、冷熱性、金型離型性、薄肉流動性の評価を行った。その結果を表1に記す。
【0110】
比較例1
アミノ基含有PPS(a1−2)の代わりにアミノ基含有PPS(a1−3)とした以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。その評価結果を表2に示す。得られた樹脂組成物は、寸法安定性に劣るものであった。
【0111】
比較例2
アミノ基含有PPS(a2−2)の代わりにアミノ基含有PPS(a2−3)とした以外は、実施例2と同様の方法により樹脂組成物を得た。その評価結果を表2に示す。得られた樹脂組成物は、寸法安定性、薄肉流動性に劣るものであった。
【0112】
比較例3
アミノ基含有PPS(a6−2)の代わりにアミノ基含有PPS(a6−3)とした以外は、実施例6と同様の方法により樹脂組成物を得た。その評価結果を表2に示す。得られた樹脂組成物は、寸法安定性に劣るものであった。
【0113】
比較例4
アミノ基含有PPS(a1−2)の代わりにアミノ基含有PPS(a4−2)とした以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。その評価結果を表2に示す。得られた樹脂組成物は、寸法安定性、薄肉流動性に劣るものであった。
【0114】
比較例5
アミノ基含有PPS(a1−2)の代わりにアミノ基含有PPS(a7−2)とした以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。その評価結果を表2に示す。得られた樹脂組成物は、冷熱性に劣るものであった。
【0115】
比較例6
アミノ基含有PPS(a1−2)の代わりにPPS(a8−2)とした以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。その評価結果を表2に示す。得られた樹脂組成物は、冷熱性に劣るものであった。
【0116】
比較例7
合成例1で得られたアミノ基含有PPS(a1−2)7.45kg、炭酸カルシウム(c−1)1.0kg、エチレン系共重合体(d1−1)0.5kg、脂肪酸アミド系滑剤(e2−1)0.05kg、エポキシ樹脂(f−1)0.1kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、シリンダー温度300℃に設定した二軸押出機(東芝機械(株)、(商品名)TEM−35B)にて、サイドフィーダーからガラス繊維(b−1)1.0kgを供給しながら溶融混練を行いペレット化した。その後、175℃で5時間乾燥し樹脂組成物を得た。その評価結果を表2に記す。得られた樹脂組成物は、寸法安定性に劣るものであった。
【0117】
比較例8
合成例1で得られたアミノ基含有PPS(a1−2)2.45kg、炭酸カルシウム(c−1)3.5kg、エチレン系共重合体(d1−1)0.5kg、脂肪酸アミド系滑剤(e2−1)0.05kg、エポキシ樹脂(f−1)0.1kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、シリンダー温度300℃に設定した二軸押出機(東芝機械(株)、(商品名)TEM−35B)にて、サイドフィーダーからガラス繊維(b−1)3.5kgを供給しながら溶融混練を行いペレット化した。その後、175℃で5時間乾燥し樹脂組成物を得た。その評価結果を表2に記す。得られた樹脂組成物は、寸法安定性、薄肉流動性に劣るものであった。
【0118】
比較例9
合成例1で得られたアミノ基含有PPS(a1−2)5.45kg、炭酸カルシウム(c−1)2.0kg、脂肪酸アミド系滑剤(e2−1)0.05kg、エポキシ樹脂(f−1)0.1kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、シリンダー温度300℃に設定した二軸押出機(東芝機械(株)、(商品名)TEM−35B)にて、サイドフィーダーからガラス繊維(b−1)2.5kgを供給しながら溶融混練を行いペレット化した。その後、175℃で5時間乾燥し樹脂組成物を得た。その評価結果を表2に記す。得られた樹脂組成物は、冷熱性に劣るものであった。
【0119】
比較例10
合成例1で得られたアミノ基含有PPS(a1−2)5.0kg、炭酸カルシウム(c−1)2.0kg、エチレン系共重合体(d−1)0.5kg、脂肪酸アミド系滑剤(e2−1)0.05kg、エポキシ樹脂(f−1)0.1kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、シリンダー温度300℃に設定した二軸押出機(東芝機械(株)、(商品名)TEM−35B)にて、サイドフィーダーからガラス繊維(b−1)2.5kgを供給しながら溶融混練を行いペレット化した。その後、175℃で5時間乾燥し樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形を試みたが、成形品が金型から離型せず、評価を中断した。
【0120】
【表1】

【0121】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリーレンスルフィド単位あたり0.05〜3モル%に相当するアミノ基を有し、直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスターにて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で測定した溶融粘度が200〜800ポイズであって、示差走査熱量計により340℃で5分保持した後、冷却速度20℃/minで冷却測定した際の結晶化温度が220℃未満であるアミノ基含有ポリアリーレンスルフィド(A)29〜68.9重量%、繊維状充填材(B)15〜30重量%、粉粒状充填材(C)15〜30重量%、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体(d1),エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体(d2),エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−酢酸ビニル共重合体(d3),エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体(d4),無水マレイン酸グラフト変性エチレン−α−オレフィン共重合体(d5)からなる群より選択される少なくとも1種以上のエチレン系共重合体(D)1〜8重量%、及び、カルナバワックス(e1),脂肪酸アミド系滑剤(e2)から選択される1種以上の離型材(E)0.1〜3重量%、からなることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【請求項2】
アミノ基含有ポリアリーレンスルフィド(A)が、前記条件で測定した溶融粘度が300〜700ポイズであって、前記条件で測定した結晶化温度が180〜210℃の範囲内であるアミノ基含有ポリフェニレンスルフィドであることを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【請求項3】
繊維状充填材(B)が、平均繊維径8〜15μmのガラス繊維であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
【請求項4】
粉粒状充填材(C)が、平均粒子径1〜7μmの炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物及び金属部材からなることを特徴とするインサート成形複合部材。

【図1】
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【公開番号】特開2011−16942(P2011−16942A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163087(P2009−163087)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】