説明

ポリアリーレン系ブロック共重合体及び高分子電解質

【課題】高分子電解質膜として用いるとき、プロトン伝導性(イオン伝導性)が高く、高温低加湿条件下で、良好な発電特性を示すポリアリーレン系ブロック共重合体を提供する。
【解決手段】イオン交換基を有するブロックと、イオン交換基を実質的に有しないブロックとを含み、該イオン交換基を有するブロックの少なくとも1つが特定の酸化硫黄化合物を含むイオン交換基から選ばれる1種以上のイオン交換基と、下記の群から選ばれる1種以上のイオン交換基とを有することを特徴とするポリアリーレン系ブロック共重合体。


(式中、Mは、対カチオンを表す。*はイオン交換基を有するブロック中の炭素原子に結合する。Eは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアリーレン系ブロック共重合体及び高分子電解質に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一次電池、二次電池、あるいは高分子電解質形燃料電池等の伝導膜として、プロトン伝導性を有する高分子を用いる高分子電解質膜が用いられている。例えば、ナフィオン(デュポン社の登録商標)をはじめとする側鎖に超強酸としてのパーフルオロアルキルスルホン酸を有し、主鎖がパーフルオロアルカンである脂肪族系高分子を有効成分とする高分子電解質が、燃料電池用の膜材料として用いた場合に、発電特性が優れることから従来、主に使用されている。しかしながら、この種の材料は非常に高価であること、耐熱性が低いこと、膜強度が低く何らかの補強をしないと実用的でないこと等の問題が指摘されている。
【0003】
こうした状況において、前記高分子電解質に替わり得る安価で特性の優れた高分子電解質の開発が近年活発化している。
例えば、スルホ基を含有する親水性セグメント及びスルホ基を含有しない疎水性セグメントからなる芳香族ポリエーテルスルホンブロック共重合体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−031232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のような芳香族ポリエーテルスルホンブロック共重合体を、高分子電解質形燃料電池の伝導膜として用いた場合、プロトン伝導性(イオン伝導性)が低く、高温低加湿条件下での発電特性が低いという問題があった。
本発明の目的は、高分子電解質膜として用いるとき、プロトン伝導性(イオン伝導性)が高く、高温低加湿条件下で、良好な発電特性を示すポリアリーレン系ブロック共重合体、該ブロック共重合体を含む高分子電解質、該高分子電解質を用いてなる高分子電解質膜、該高分子電解質を用いてなる触媒組成物及びこれらを用いてなる高分子電解質形燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、燃料電池のプロトン伝導膜あるいは触媒層に好適な高分子電解質として、より優れた性能を示す高分子を見出すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は[1]を提供するものである。
【0007】
[1]イオン交換基を有するブロックと、イオン交換基を実質的に有しないブロックとを含み、該イオン交換基を有するブロックの少なくとも1つが下記A群から選ばれる1種以上のイオン交換基と、下記B群から選ばれる1種以上のイオン交換基とを有することを特徴とするポリアリーレン系ブロック共重合体。

[A群]


[B群]


(式中、Mは、対カチオンを表す。*はイオン交換基を有するブロック中の炭素原子に結合する。Eは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。)
【0008】
さらに本発明は、上記ポリアリーレン系ブロック共重合体に係る好適な実施形態として、以下の[2]〜[14]を提供する。
[2]前記イオン交換基を実質的に有しないブロックが、下記式(3)で表される構造を含むことを特徴とする[1]に記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。

(式中、mは2以上の整数を表し、Ar3、Ar4、Ar5及びAr6は、それぞれ独立に2価の芳香族基を表し、該2価の芳香族基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基から選ばれる1種以上の基を置換基として有していてもよい。kは0又は1、lは0,1又は2を表す。Xは−SO−で示される基又は−CO−で示される基を表し、Yは、直接結合又は

から選ばれるいずれかの2価の基を表す。複数個あるYは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)
[3]前記イオン交換基を有するブロックが、前記A群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する下記式(1)で表される構造単位と、前記B群から選ばれるイオン交換基を有する下記式(2)で表される構造単位とを含むことを特徴とする[1]又は[2]に記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。


(式中、Ar1は、前記A群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有するアリーレン基を表し、該アリーレンは、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基から選ばれる1種以上の基を置換基として有してもよい。式中、Arは、前記B群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有するアリーレン基を表し、該アリーレン基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基から選ばれる1種以上の基を置換基として有してもよい。)
[4]前記式(1)で表される構造単位が、下記式(4)で表される構造単位であることを特徴とする[3]に記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。

(式中、Aは前記A群から選ばれるいずれかのイオン交換基を表す。R1は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基を表す。pは1以上3以下の整数であり、qは0以上3以下の整数であり、p+qは4以下の整数である。複数あるAは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。複数あるR1は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)
[5]前記式(2)で表される構造単位が、下記式(5)で表される構造単位であることを特徴とする[3]又は[4]に記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。

(式中、Bは前記B群から選ばれるいずれかのイオン交換基を表す。Rは、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基を表す。rは1以上3以下の整数であり、sは0以上3以下の整数であり、r+sは4以下の整数である。複数あるBは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。複数あるR2は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)
[6]前記A群から選ばれるイオン交換基が前記(a−1)であり、前記B群から選ばれるイオン交換基が前記(b−3)であることを特徴とする[1]〜[5]いずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。
[7]前記A群から選ばれるイオン交換基が前記(a−1)であり、前記B群から選ばれるイオン交換基が前記(b−1)であることを特徴とする[1]〜[5]いずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。
[8]イオン交換容量が0.5〜7.0meq/gであることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。
[9][1]〜[8]のいずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体を含むことを特徴とする高分子電解質。
[10][9]に記載の高分子電解質を含むことを特徴とする高分子電解質膜。
[11][9]に記載の高分子電解質と、触媒成分とを含むことを特徴とする触媒組成物。
[12][10]に記載の高分子電解質膜を有することを特徴とする膜−電極接合体。
[13][11]に記載の触媒組成物を含む触媒層を有することを特徴とする膜−電極接合体。
[14][12]又は[13]に記載の膜−電極接合体を有することを特徴とする高分子電解質形燃料電池。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体は、高分子電解質形燃料電池の高分子電解質膜(プロトン伝導膜)として用いるときに、高いプロトン伝導性を示し、また高温低加湿条件下で、良好な発電特性を示す燃料電池を与える。高分子電解質形燃料電池における高温低加湿条件下での運転は、発電効率の向上や、冷却装置や、加湿装置等の簡略化が図られることから、工業的に有利である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体は、イオン交換基を有するブロックと、イオン交換基を実質的に有しないブロックとを含み、該イオン交換基を有するブロックの少なくとも1つが下記A群から選ばれる1種以上のイオン交換基と、下記B群から選ばれる1種以上のイオン交換基とを有することを特徴とする。好ましくは、該イオン交換基を有するブロックの全てが下記A群から選ばれる1種以上のイオン交換基と、下記B群から選ばれる1種以上のイオン交換基とを有する。

[A群]


[B群]


(式中、Mは、対カチオンを表す。*はイオン交換基を有するブロック中の炭素原子に結合する。Eは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。)
【0011】
本発明において、「ブロック共重合体」とは、化学的に性質の異なる2種以上のポリマーが、共有結合でつながり、長い連鎖になった分子構造のものをいう。本発明では、前記ポリマーを「ブロック」という。ブロックとは、骨格が同一の繰り返し単位が2個以上連結したものである。好ましくは、骨格が同一の繰り返し単位が3個以上連結したものである。但し、該繰り返し単位が主鎖に2価の基を有する場合、ブロックの末端の2価の基は欠損していてもよい。末端の2価の基としては、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)などがあげられる。ブロックとして、好ましくは、1種の繰り返し単位が2個以上連結したものである。より好ましくは、1種の繰り返し単位が3個以上連結したものである。ここで、該骨格とは、ポリマーを構成する主鎖であって置換基を含まないものをいう。該主鎖とは、ポリマーを形成する最も長い鎖のことをいう。この鎖は共有結合により相互に結合した炭素原子から構成されていて、その際、この鎖は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等により中断されていてもよい。また、前記「化学的に性質の異なる」ポリマーとは、本発明においては、イオン交換基を有するポリマーと、イオン交換基を実質的に有しないポリマーとである。ここで、「イオン交換基」とは、本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体を膜として用いたとき、イオン伝導、特にプロトン伝導に係る基であり、「イオン交換基を有する」とは繰り返し単位当たり有しているイオン交換基が、概ね平均0.5個以上であることを意味し、「イオン交換基を実質的に有しない」とは繰り返し単位あたり有しているイオン交換基が概ね平均0.1個以下であることを意味する。本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体におけるイオン交換基を実質的に有しないブロックについて説明する。
該イオン交換基を実質的に有しないブロックは、前記のように、その繰り返し単位当たりで計算してイオン交換基が0.1個以下であるものであり、繰り返し単位当たりのイオン交換基が0、すなわちイオン交換基が実質的に皆無であると特に好ましい。
【0012】
前記イオン交換基を実質的に有しないブロックとしては、主鎖に芳香族環を含むことが好ましい。さらには、イオン交換基を実質的に有しないブロックの主鎖が芳香族環と連結基とからなることが好ましい。ここで、連結基とは、2価の原子又は2価の原子団のことを示す。2価の原子としては、例えば、−O−、−S−で表される基などがあげられ、2価の原子団としては、例えば、−C(CH32−、−C(CF32−、−CH=CH−、−SO2−、−CO−で表される基などがあげられる。
【0013】
前記イオン交換基を実質的に有しないブロックとしては、下記式(3)で表される構造を含むブロックが好ましく、下記式(3)で表される構造のみからなることが好ましい。

ここで、式(3)における、mは2以上の整数を表し、3以上であると好ましく、5以上であるとより好ましく、10以上であるとさらに好ましい。mはH−NMRによって、求めることができる。ポリマー中のnに分布がある場合、各イオン交換基を実質的に有しないブロックのmの平均値を取ることによって、求められる。また、前記イオン交換基を実質的に有しないブロックのポリスチレン換算数平均分子量が1000以上であることが好ましく、2000以上であることが更に好ましい。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0014】
前記式(3)におけるAr、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に2価の芳香族基を表す。該2価の芳香族基としては、例えば、下記式(3−1)〜(3−14)等が挙げられる。好ましくは(3−1)である。


【0015】
また、Ar、Ar、Ar及びArは、フッ素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基及び置換基を有してもよい炭素数2〜20のアシル基から選ばれる1種以上の基を置換基として有してもよい。
【0016】
ここで、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の炭素数1〜20のアルキル基、及びこれらの基がヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等を置換基として有する、その総炭素数が20以下であるアルキル基等が挙げられる。
【0017】
また、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、2,2−ジメチルプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、イコシルオキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基、及びこれらの基が以下の置換基群から選ばれる1種以上の置換基を有するその総炭素数が20以下であるアルコキシ基等が挙げられる。
[置換基群]メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ドデシル基等の炭素数1〜19のアルキル基、これらの基がヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、ナフチル基等を置換基として有するその総炭素数が19以下であるアルキル基、及びヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等
【0018】
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、アントラセニル基等のアリール基、及びこれらの基が以下の置換基群から選ばれる1種以上の置換基を有するその総炭素数が20以下であるアリール基等が挙げられる。
[置換基群]メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ドデシル基等の炭素数1〜14のアルキル基、これらの基がヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、ナフチル基等を置換基として有するその総炭素数が14以下であるアルキル基、及びヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等
【0019】
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基、ナフチルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、アントラセニルオキシ基等のアリールオキシ基、及びこれらの基が以下の置換基群から選ばれる1種以上の置換基を有する、その総炭素数が20以下であるアリールオキシ基が挙げられる。
[置換基群]メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ドデシル基等の炭素数1〜14のアルキル基、これらの基がヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、ナフチル基等を置換基として有するその総炭素数が14以下であるアルキル基、及びヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等
【0020】
置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基としては、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基等の炭素数2〜20のアシル基、及びこれらの基が以下の置換基群から選ばれる1種以上の置換基を有する、その総炭素数が20以下であるアシル基が挙げられる。
[置換基群]メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ドデシル基等の炭素数1〜18のアルキル基、これらの基がヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、ナフチル基等を置換基として有するその総炭素数が18以下であるアルキル基、及びヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等
【0021】
前記式(3)におけるkは0又は1、lは0,1又は2を表す。XはSO又はCOを表す。またYは、直接結合又は、

から選ばれるいずれかの2価の基を表す。複数個あるYは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
【0022】
前記イオン交換基を実質的に有しないブロックとしては、例えば、下記の構造を含むブロックがあげられ、好ましくは下記の(3)−1〜4、(3)−9〜14、(3)−17〜20の構造を含むブロックであり、より好ましくは(3)−2、(3)−10、(3)−14、(3)−18、(3)−20の構造を含むブロックである。この例示の中で、mは前記と同義である。
【0023】

【0024】

【0025】

【0026】

【0027】
前記イオン交換基を有するブロックは、実質的に複数の芳香環が直接連結してなるポリアリーレン構造を有する構造であることが好ましい。
ここで、前記ポリアリーレン構造について説明する。本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体の、イオン交換基を有するブロックは、主鎖を構成している芳香環同士が実質的に直接結合で結合されている形態であることが好ましく、ブロックの主鎖を構成している芳香環同士の結合の総数に対する直接結合の割合が多いほど、よりプロトン伝導性の向上が図れる傾向があるため好ましく、具体的にいうと、前記ポリアリーレン構造が、該芳香環同士の結合の総数を100%としたとき、直接結合の割合が80%以上の構造であると好ましく、90%以上の構造であるとより好ましく、95%以上の構造であるとさらに好ましい。なお、直接結合以外の結合とは、芳香環同士が2価の原子又は2価の原子団で結合している形態である。2価の原子としては、例えば、−O−、−S−で表される基などがあげられ、2価の原子団としては、例えば、−C(CH32−、−C(CF32−、−CH=CH−、−S(=O)−、−C(=O)−で表される基などがあげられる。
【0028】
ここで、前記イオン交換基について説明する。
本発明の高分子電解質は、前記A群から選ばれる1種以上のイオン交換基と、前記B群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する。A群とB群とから選ばれるイオン交換基を含むことにより、前記のような効果が発現される理由は必ずしも定かではないが、本発明者は次のように推定している。本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体を含む高分子電解質を含む高分子電解質膜は、B群から選ばれるイオン交換基が高温低加湿条件下で水と水素結合を安定に形成し水分を蒸散しにくくさせ、A群から選ばれるイオン交換基に、プロトン伝導に必要な水を供給するため、高温低加湿条件下でもプロトン伝導性を確保しやすく、良好な発電特性を示すことができると推測される。
【0029】
上記Mで表される対カチオンとしては、有機カチオン、無機カチオンがあげられる。複数のMは同一であっても、異なっていてもよい。但し、Mが2価以上の対カチオンである場合、さらにアニオンと結合していてもよい。
【0030】
無機カチオンの代表例としては、水素イオン、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン等のアルカリ金属カチオン、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオン等のアルカリ土類金属カチオン、アンモニウムカチオン等があげられるがこれらに限定されるものではない。これらの中でも、水素イオン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンであることが好ましく、水素イオン、アルカリ金属カチオンであることがより好ましく、水素イオンであることがさらに好ましい。
【0031】
有機カチオンの代表例としては、第1級アンモニウムカチオン、第2級アンモニウムカチオン、第3級アンモニウムカチオン、第4級アンモニウムカチオンなどがあげられるがこれらに限定されるものではない。第1級アンモニウムカチオンとしては、メチルアミン、エチルアミン、1−プロピルアミン、2−プロピルアミン、n−ブチルアミン、2−ブチルアミン、1−ペンチルアミン、2−ペンチルアミン、3−ペンチルアミン、ネオペンチルアミン、シクロペンチルアミン、1−ヘキシルアミン、2−ヘキシルアミン、3−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミンがプロトン化されたカチオンなどがあげられる。第2級アンモニウムカチオンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−1−プロピルアミン、ジ−2−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−2−ブチルアミン、ジ−1−ペンチルアミン、ジ−2−ペンチルアミン、ジ−3−ペンチルアミン、ジネオペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジ−1−ヘキシルアミン、ジ−2−ヘキシルアミン、ジ−3−ヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンがプロトン化されたカチオンなどがあげられる。第3級アンモニウムカチオンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−1−プロピルアミン、トリ−2−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−2−ブチルアミン、トリ−1−ペンチルアミン、トリ−2−ペンチルアミン、トリ−3−ペンチルアミン、トリネオペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリ−1−ヘキシルアミン、トリ−2−ヘキシルアミン、トリ−3−ヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミンがプロトン化されたカチオンなどがあげられる。第4級アンモニウムカチオンとしては、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラ(1−プロピル)アンモニウムカチオン、テトラ(2−プロピル)アンモニウムカチオン、テトラ(1−ブチル)アンモニウムカチオン、テトラ(2−ブチル)アンモニウムカチオン、テトラ(1−ペンチル)アンモニウムカチオン、テトラ(2−ペンチルアミン)アンモニウムカチオン、テトラ(3−ペンチル)アンモニウムカチオン、テトラ(ネオペンチル)アンモニウムカチオン、テトラ(1−シクロペンチル)アンモニウムカチオン、テトラ(1−ヘキシル)アンモニウムカチオン、テトラ(2−ヘキシル)アンモニウムカチオン、テトラ(3−ヘキシルアミン)アンモニウムカチオン、テトラ(シクロヘキシル)アンモニウムカチオンなどがあげられる。これらの中でも、好ましくは第1級アンモニウムカチオンであり、第1級アンモニウムカチオンの中でも、メチルアミン、エチルアミンがプロトン化されたカチオンが好ましい。
【0032】
A群から選ばれるイオン交換基としては、前記(a−1)で表される基が好ましい。特に、Mが水素イオンである、スルホ基が好ましい。また、B群から選ばれるイオン交換基としては、前記(b−1)で表される基及び前記(b−3)で表される基が好ましい。特に、Mが水素イオンである、ホスホン酸基及びカルボキシル基が好ましい。
【0033】
前記イオン交換基を有するブロックに含まれる構造単位としては、A群から選ばれるイオン交換基を有する構造単位として、下記式(1)で表される構造単位が好適である。

(式中、Ar1は、前記A群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有するアリーレン基を表し、該芳香族基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基から選ばれる1種以上の基を置換基として有してもよい。)
【0034】
Ar1は、前記A群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する。該イオン交換基は、Ar1の主鎖を構成する芳香環に結合していることが好ましい。
【0035】
前記式(1)におけるArは、アリーレン基を表す。該アリーレン基としては、例えば、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基等の2価の単環性芳香族基、1,3−ナフタレンジイル基、1,4−ナフタレンジイル基、1,5−ナフタレンジイル基、1,6−ナフタレンジイル基、1,7−ナフタレンジイル基、2,6−ナフタレンジイル基、2,7−ナフタレンジイル基等の2価の縮環系芳香族基、ピリジンジイル基、キノキサリンジイル基、チオフェンジイル基等の2価の芳香族複素環基等があげられる。好ましくは2価の単環性芳香族基である。
【0036】
また、Arは、フッ素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有してもよい炭素数2〜20のアシル基で置換されていてもよく、これらの具体例としては、前記のものがあげられる。
【0037】
前記式(1)で表される構造単位の好ましい例としては、下記式(4)で表される構造単位があげられる。このような、構造単位を有するブロックは、後述する該ブロックの製造において、工業的に容易に入手できる原料を用いることができるため、好ましい。

(式中、Aは前記A群から選ばれるいずれかのイオン交換基を表す。R1は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基を表す。pは1以上3以下の整数であり、qは0以上3以下の整数であり、p+qは4以下の整数である。複数あるAは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。複数あるR1は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0038】
ここで、Aとしては、前記(a−1)で表される基が好ましい。特に、Mが水素イオンである、スルホ基が好ましい。また、R1の具体例としては、前記アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基及びアシル基の具体例があげられる。その置換基の数pは、0又は1であると好ましく、特に好ましくはpが0、すなわち置換基を有しない繰り返し単位である。
【0039】
前記イオン交換基を有するブロックに含まれる構造単位としては、B群から選ばれるイオン交換基を有する構造単位として、下記式(2)で表される構造単位が好適である。

(式中、Arは、前記B群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有するアリーレン基を表し、該芳香族基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基から選ばれる1種以上の基を置換基として有してもよい。)
【0040】
Ar2は、前記B群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する。該イオン交換基は、Ar2の主鎖を構成する芳香環に結合していることが好ましい。
【0041】
前記式(2)におけるArの具体例としては前記Arと同様のアリーレン基があげられる
【0042】
前記式(2)で表される構造単位の好ましい例としては、下記式(5)で表される構造単位があげられる。このような、構造単位を有するブロックは、後述する該ブロックの製造において、工業的に容易に入手できる原料を用いることができるため、好ましい。

(式中、Bは前記B群から選ばれるいずれかのイオン交換基を表す。Rは、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基を表す。rは1以上3以下の整数であり、sは0以上3以下の整数であり、r+sは4以下の整数である。複数あるBは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。複数あるR2は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0043】
ここで、Bとしては、前記(b−1)で表される基及び前記(b−3)で表される基が好ましい。特に、Mが水素イオンである、ホスホン酸基又はカルボキシル基が好ましい。
また、Rの具体例としては、前記アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基及びアシル基の具体例があげられる。その置換基の数sは、0又は1であると好ましく、特に好ましくはsが0、すなわち置換基を有しない繰り返し単位である。
【0044】
1つの構造単位に、前記A群から選ばれる1種以上のイオン交換基及び前記B群から選ばれる1種以上のイオン交換基の両方のイオン交換基を有してもよいが、前記A群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する構造単位と、前記B群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する構造単位とが、全て異なることが好ましい。前記A群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する構造単位と、前記B群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する構造単位とが、全て異なる場合、前記A群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する構造単位と、前記B群から選ばれるイオン交換基を有する構造単位とのモル比に特に制限はないが、A群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する構造単位と、B群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する構造単位とのモル比の合計を100モル%とした場合、前記B群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する構造単位の割合が、1モル%〜60モル%であると好ましく、5モル%〜55モル%であるとより好ましく、10モル%〜50モル%であると特に好ましい。
前記A群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する構造単位と、前記B群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する構造単位との割合は、後述の合成時の仕込み比により決定することができる。モノマーの仕込み比が不明な場合、1H−NMRにより、高分子電解質中のイオン交換基の種類と量を決定することにより求めることができる。
【0045】
本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体のイオン交換基を有するブロックのイオン交換基導入量は、イオン交換容量で表して、2.5meq/g〜10.0meq/gが好ましく、さらに好ましくは5.5meq/g〜9.0meq/gであり、特に好ましくは5.5meq/g〜7.0meq/gである。
該イオン交換基導入量を示すイオン交換容量が2.5meq/g以上であると、イオン交換基同士が密接に隣接することとなり、ポリアリーレン系ブロック共重合体としたときのプロトン伝導性がより高くなるので好ましい。一方、イオン交換基導入量を示すイオン交換容量が10.0meq/g以下であると、製造がより容易であるので好ましい。
【0046】
また、ポリアリーレン系ブロック共重合体全体のイオン交換基の導入量は、イオン交換容量で表して、0.5meq/g〜7.0meq/gが好ましく、より好ましくは1.0meq/g〜5.0meq/gであり、特に好ましくは1.5meq/g〜4.5meq/gである。
該イオン交換基導入量を示すイオン交換容量が0.5meq/g以上であると、プロトン伝導性がより高くなり、燃料電池用の高分子電解質としての機能がより優れるので好ましい。一方、イオン交換基導入量を示すイオン交換容量が7.0meq/g以下であると、耐水性がより良好となるので好ましい。
【0047】
また、本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体は、分子量が、ポリスチレン換算の数平均分子量で表して、5000〜1000000であることが好ましく、中でも15000〜400000であることが特に好ましい。該数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0048】
次に、本発明の、好適なポリアリーレン系ブロック共重合体の製造方法について説明する。
該ポリアリーレン系ブロック共重合体における、好適なイオン交換基を有するブロックは、前記式(1)及び式(2)に表される構造単位を含むブロックであり、例えば、Ar1及びArおける主鎖を構成する芳香環に結合するイオン交換基の導入方法は、予めイオン交換基を有するモノマーを重合する方法であっても、予めイオン交換基を有しないモノマーからブロックを製造した後に、該ブロックにイオン交換基を導入する方法であってもよい。中でも、前者の方法であると、イオン交換基の導入量や、置換位置を的確に制御することができるので、より好ましい。
【0049】
イオン交換基を有するモノマーを用いて、本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体の製造を行う方法としては、例えば、ゼロ価遷移金属錯体の共存下、下記式(6)及び下記式(7)で表されるモノマーと、下記式(8)で表されるイオン交換基を実質的に有しないブロックの前駆体とを縮合反応により重合することにより製造し得る。



(式中、Arは、前記A群から選ばれる1種以上のイオン交換基及び/又は前記A群から選ばれる1種以上のイオン交換基になり得る基(イオン交換基前駆基)を有するアリーレン基を表し、該アリーレンは、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基から選ばれる1種以上の基を置換基として有してもよい。Arは、前記B群から選ばれる1種以上のイオン交換基及び/又は前記B群から選ばれる1種以上のイオン交換基になり得る基(イオン交換基前駆基)を有するアリーレン基を表し、該アリーレンは、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基から選ばれる1種以上の基を置換基として有してもよい。Qは、縮合反応時に脱離する基を表し、複数あるQは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。Ar、Ar、Ar、Ar、k、l及びmは前記と同義である。)
【0050】
前記A群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する構造単位と、前記B群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する構造単位との割合は、前記式(6)及びで表されるモノマーと前記式(7)で表されるモノマーとの仕込み比で制御することができる。式(6)及びで表されるモノマーと式(7)で表されるモノマーとの仕込み比に特に制限はないが、式(6)で表されるモノマーと式(7)で表されるモノマーの合計を100モル%とした場合、式(7)で表されるモノマーの割合が1モル%〜60モル%であると好ましく、5モル%〜55モル%であるとより好ましく、10モル%〜50モル%であると特に好ましい。
【0051】
前記式(6)で表されるモノマーは、好ましいイオン交換基であるスルホ基で例示すると、2,4−ジクロロベンゼンスルホン酸、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸、2,4−ジクロロ−5−メチルベンゼンスルホン酸、2,5−ジクロロ−4−メチルベンゼンスルホン酸、2,4−ジクロロ−5−メトキシベンゼンスルホン酸、2,5−ジクロロ−4−メトキシベンゼンスルホン酸、3,3’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸、4,4’−ジクロロビフェニル−3,3’−ジスルホン酸、5,5’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸等があげられ、これらのモノマーの塩素原子が、前述の縮合反応時に脱離する基と置き換わったものも使用可能である。また、これらのモノマーのスルホ基が塩を形成していてもよく、スルホ基の替わりにスルホン酸前駆基を有するものも使用可能である。スルホ基が塩を形成している場合、その対イオンはアルカリ金属イオンが好ましく、特に、Liイオン、Naイオン、Kイオンが好ましい。スルホン酸前駆基としては、加水分解処理や酸化処理等の簡便な操作でスルホ基になり得るものが好ましい。特に、本発明のポリマーを製造するには、スルホ基が塩の形態のモノマーか、もしくはスルホン酸前駆基を有するモノマーを用いることが、重合反応性の観点から好ましい。
【0052】
スルホン酸前駆基としては、スルホン酸エステル(−SO3c;ここでRcは炭素数1〜20のアルキル基を表す。)又はスルホンアミド(−SO2N(Rd)(Re);ここでRd及びReはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数3〜20の芳香族基を表す。)のように、スルホ基がエステル又はアミドを形成して保護されているような形態のものが好ましい。スルホン酸エステルとしては、例えばスルホン酸メチルエステル、スルホン酸エチルエステル基、スルホン酸n−プロピルルエステル、スルホン酸イソプロピルエステル、スルホン酸n−ブチルエステル基、スルホン酸sec−ブチルエステル基、スルホン酸tert−ブチルエステル、スルホン酸n−ペンチルエステル、スルホン酸ネオペンチルエステル、スルホン酸n−ヘキシルエステル、スルホン酸シクロヘキシルエステル、スルホン酸n−ヘプチルエステル、スルホン酸n−オクチルエステル、スルホン酸n−ノニルエステル、スルホン酸n−デシルエステル、スルホン酸n−ドデシルエステル、スルホン酸n−ウンデシルエステル、スルホン酸n−トリデシルエステル、スルホン酸n−テトラデシルエステル、スルホン酸n−ペンタデシルエステル、スルホン酸n−ヘキサデシルエステル、スルホン酸n−ヘプタデシルエステル、スルホン酸n−オクタデシルエステル、スルホン酸n−ノナデシルエステル、スルホン酸n−エイコシルエステルなどのスルホン酸エステルが例示され、好ましくはスルホン酸sec−ブチルエステル、スルホン酸ネオペンチルエステル又はスルホン酸シクロヘキシルエステルである。これらのスルホン酸エステルには、重合反応に関与しない置換基で置換されていてもよい。
【0053】
また、スルホンアミドとしては、例えばスルホンアミド、N−メチルスルホンアミド、N,N−ジメチルスルホンアミド、N−エチルスルホンアミド、N,N−ジエチルスルホンアミド、N−n−プロピルスルホンアミド、ジ−n−プロピルスルホンアミド、N−イソプロピルスルホンアミド、N,N−ジイソプロピルスルホンアミド、N−n−ブチルスルホンアミド、N,N−ジ−n−ブチルスルホンアミド、N−sec−ブチルスルホンアミド、N,N−ジ−sec−ブチルスルホンアミド、N−tertブチルスルホンアミド、N,N−ジ−tert−ブチルスルホンアミド、N−n−ペンチルスルホンアミド、N−ネオペンチルスルホンアミド、N−n−ヘキシルスルホンアミド、N−シクロヘキシルスルホンアミド、N−n−ヘプチルスルホンアミド、N−n−オクチルスルホンアミド、N−n−ノニルスルホンアミド、N−n−デシルスルホンアミド、N−n−ドデシルスルホンアミド、N−n−ウンデシルスルホンアミド、N−n−トリデシルスルホンアミド、N−n−テトラデシルスルホンアミド、N−n−ペンタデシルスルホンアミド、N−n−ヘキサデシルスルホンアミド、N−n−ヘプタデシルスルホンアミド、N−n−オクタデシルスルホンアミド、N−n−ノナデシルスルホンアミド、N−n−エイコシルスルホンアミド、N,N−ジフェニルスルホンアミド、N,N−ビストリメチルシリルスルホンアミド、N,N−ビス−tert−ブチルジメチルシリルスルホンアミド、ピロリルスルホンアミド、ピロリジニルスルホンアミド、ピペリジニルスルホンアミド、カルバゾリルスルホンアミド、ジヒドロインドリルスルホンアミド、ジヒドロイソインドリルスルホンアミドなどが例示され、好ましくはN,N−ジエチルスルホンアミド、N−n−ドデシルスルホンアミド、ピロリジニルスルホンアミド、ピペリジニルスルホンアミドが例示される。これらのスルホンアミドは、いずれも重合反応に関与しない置換基で置換されていてもよい。
【0054】
また、スルホン酸前駆基としてはメルカプト基も使用可能である。メルカプト基は適当な酸化剤を使用して、酸化させることによりスルホ基に転換可能である。
【0055】
前記式(7)で表されるモノマーは、好ましいイオン交換基であるカルボキシル基で例示すると、2,4−ジクロロベンゼンカルボン酸、2,5−ジクロロベンゼンカルボン酸、3,5−ジクロロベンゼンカルボン酸、2,5−ジクロロベンゼン−1,4−ジカルボン酸等があげられ、これらのモノマーの塩素原子が、前述の縮合反応時に脱離する基と置き換わったものも使用可能である。また、これらのモノマーのカルボキシル基が塩を形成していてもよく、カルボキシル基の替わりにカルボン酸前駆基を有するものも使用可能である。カルボキシル基が塩を形成している場合、その対イオンはアルカリ金属イオンが好ましく、特に、Liイオン、Naイオン、Kイオンが好ましい。カルボン酸前駆基としては、加水分解処理や酸化処理等の簡便な操作でカルボキシル基になり得るものが好ましい。特に、本発明のポリマーを製造するには、カルボキシル基が塩の形態のモノマーか、もしくはカルボン酸前駆基を有するモノマーを用いることが、重合反応性の観点から好ましい。
【0056】
カルボン酸前駆体としては、カルボン酸エステル(−CO:ここでRは炭素数1〜20のアルキル基を表す)のように、カルボン酸基がエステルを形成して保護されているような形態のものが好ましい。カルボン酸エステルとしては、例えば2,5−ジクロロ安息香酸イソプロピル、2,5−ジクロロ安息香酸イソブチル、2,5−ジクロロ安息香酸イソアミル、2,5−ジクロロ安息香酸n−デシル、2,4−ジクロロ安息香酸イソプロピル、2,4−ジクロロ安息香酸イソブチル、2,4−ジクロロ安息香酸イソアミル、2,4−ジクロロ安息香酸n−デシル、3,5−ジクロロ安息香酸イソプロピル、3,5−ジクロロ安息香酸イソブチル、3,5−ジクロロ安息香酸イソアミル、3,5−ジクロロ安息香酸n−デシル等が挙げられる。
【0057】
前記式(7)で表されるモノマーを、好ましいイオン交換基であるホスホン酸基(で例示すると、例えば下記式のような芳香族化合物があげられる。この例示の中で、Qは前記と同義である



また、これらのモノマーのホスホン酸基が塩を形成していてもよく、ホスホン酸基の替わりにホスホン酸前駆基を有するものも使用可能である。ホスホン酸基が塩を形成している場合、その対イオンはアルカリ金属イオンが好ましく、特に、Liイオン、Naイオン、Kイオンが好ましい。ホスホン酸前駆基としては、加水分解処理や酸化処理等の簡便な操作でホスホン酸基になり得るものが好ましい。
【0058】
ホスホン酸前駆体は例えば、−(P(=O)(OR)(OR)(Rは、水素原子、無機カチオン、有機カチオン、アルキル基またはアリール基を表し、Rは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rは、水素原子、無機カチオン、有機カチオン、アルキル基またはアリール基を表し、Rは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)で表され、好ましい例としては下記式のような化合物があげられる。この例示の中で、Qは前記と同義である


【0059】
また、他のイオン交換基の場合は、前記に例示したモノマーのスルホ基を、ヒドロキシ基、ホスフィン酸基等のイオン交換基に置き換えて、選択することができ、これら他のイオン交換基を有するモノマーも市場から容易に入手できるか、公知の製造方法を用いて、製造することが可能である。
【0060】
前記の式(6)、式(7)、式(8)に示すQは、縮合反応時に脱離する基を表すが、その具体例としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、下記に示すようなホウ素原子を含む基などがあげられる。

(Ra及びRbは、互いに独立に水素原子又は有機基を表し、RaとRbとが結合して環を形成していてもよい。)
【0061】
また、イオン交換基の導入を重合後に行い、本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体の製造を行う方法として、例えば、ゼロ価遷移金属錯体の共存下、下記式(9)及び式(10)で表されるモノマーと、前記式(8)で表されるイオン交換基を実質的に有しないブロックの前駆体を縮合反応により重合し、その後、公知の方法に準じてイオン交換性基を導入することにより製造し得る。



(式中、Ar、はイオン交換基を導入することで、前記式(1)のArとなりえるアリーレン基を表し、Ar10、はイオン交換基を導入することで、前記式(2)のArとなりえるアリーレン基を表しQは前記と同義である)
【0062】
ここで、Ar及びAr10は、それぞれ独立にフッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基及び炭素数2〜20のアシル基から選ばれる1種以上の基を置換基として有してもよいが、Ar及びAr10は少なくともひとつのイオン交換基を導入可能な構造を有する、アリーレン基である。該アリーレン基としては、例えば、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基等の2価の単環性芳香族基、1,3−ナフタレンジイル基、1,4−ナフタレンジイル基、1,5−ナフタレンジイル基、1,6−ナフタレンジイル基、1,7−ナフタレンジイル基、2,6−ナフタレンジイル基、2,7−ナフタレンジイル基等の2価の縮環系芳香族基、ピリジンジイル基、キノキサリンジイル基、チオフェンジイル基等の複素環基等があげられる。置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基としては、前記のArにおける置換基として例示したものと同様のものがあげられる。
【0063】
Ar、Ar10におけるイオン交換基を導入可能な構造としては、芳香環に直接結合している水素原子を有しているか、イオン交換基に変換可能な置換基を有していることを示す。イオン交換基に変換可能な置換基としては、重合反応を阻害しない限り特に制限はないが、例えば、メルカプト基、メチル基、ホルミル基、ヒドロキシ基、ブロモ基等があげられる。
【0064】
イオン交換基の導入方法としてスルホ基の導入方法を例としてあげると、重合して得られたポリアリーレン系ブロック共重合体を濃硫酸に溶解あるいは分散することにより、あるいは有機溶媒に少なくとも部分的に溶解させた後、濃硫酸、クロロ硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄などを作用させることにより、水素原子をスルホ基に変換する方法をあげることができる。これらのモノマーの代表例としては、例えば1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,3−ジブロモベンゼン、1,4−ジブロモベンゼン、1,3−ジヨードベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1,3−ジクロロ−4−メトキシベンゼン、1,4−ジクロロ−3−メトキシベンゼン、1,3−ジブロモ−4−メトキシベンゼン、1,4−ジブロモ−3−メトキシベンゼン、1,3−ジヨード−4−メトキシベンゼン、1,4−ジヨード−3−メトキシベンゼン、1,3−ジクロロ−4−アセトキシベンゼン、1,4−ジクロロ−3−アセトキシベンゼン、1,3−ジブロモ−4−アセトキシベンゼン、1,4−ジブロモ−3−アセトキシベンゼン、1,3−ジヨード−4−アセトキシベンゼン、1,4−ジヨード−3−アセトキシベンゼン、4,4’−ジクロロビフェニル、4,4’−ジブロモビフェニル、4,4’−ジヨードビフェニル、4,4’−ジクロロ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジブロモ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヨード−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジクロロ−3,3’−ジメトキシビフェニル、4,4’−ジブロモ−3,3’−ジメトキシビフェニル、4,4’−ジヨード−3,3’−ジメトキシビフェニル等があげられる。
【0065】
また、前記式(9)で表されるモノマーがメルカプト基を有すると、重合反応終了時にメルカプト基を有するブロックを得ることができ、該メルカプト基を、酸化反応によりスルホ基に変換することができる。このようなモノマーの代表例としては2,4−ジクロロベンゼンチオール、2,5−ジクロロベンゼンチオール、3,5−ジクロロベンゼンチオール、2,4−ジブロモベンゼンチオール、2,5−ジブロモベンゼンチオール、3,5−ジブロモベンゼンチオール、2,4−ジヨードロベンゼンチオール、2,5−ジヨードベンゼンチオール、3,5−ジヨードベンゼンチオール、2,5−ジクロロ−1,4−ベンゼンジチオール、3,5−ジクロロ−1,2−ベンゼンジチオール、3,6−ジクロロ−1,2−ベンゼンジチオール、4,6−ジクロロ−1,3−ベンゼンジチオール、2,5−ジブロモ−1,4−ベンゼンジチオール、3,5−ジブロモ−1,2−ベンゼンジチオール、3,6−ジブロモ−1,2−ベンゼンジチオール、4,6−ジブロモ−1,3−ベンゼンジチオール、2,5−ジヨード−1,4−ベンゼンジチオール、3,5−ジヨード−1,2−ベンゼンジチオール、3,6−ジヨード−1,2−ベンゼンジチオール、4,6−ジヨード−1,3−ベンゼンジチオール等があげられ、さらに前記に例示するモノマーのメルカプト基が保護されたモノマー等があげられる。
【0066】
スルホンイミド基の導入方法を例としてあげると、縮合反応、置換反応等により、前述のスルホ基をスルホンイミド基に変換する方法等の公知の方法があげられる。
【0067】
次に、前記式(10)で表されるモノマーにカルボキシル基を導入する方法を例としてあげると、酸化反応により、メチル基、ホルミル基をカルボキシル基に変換する方法や、ブロモ基をMgの作用により−MgBrとした後、二酸化炭素を作用させカルボキシル基に変換する等の公知の方法があげられる。ここで、メチル基を有する代表的なモノマーとしては、2,4−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロトルエン、3,5−ジクロロトルエン、2,4−ジブロモトルエン、2,5−ジブロモトルエン、3,5−ジブロモトルエン、2,4−ジヨードトルエン、2,5−ジヨードトルエン、3,5−ジヨードトルエン等があげられる。
【0068】
ホスホン酸基の導入方法を例としてあげると、ブロモ基を、塩化ニッケルなどのニッケル化合物の共存下、亜リン酸トリアルキルを作用させてホスホン酸ジエステル基とした後、これを加水分解してホスホン酸基に変換する方法や、ルイス酸触媒の共存下、三塩化リンや五塩化リンなどを用いてC−P結合を形成させ、続いて必要に応じ酸化及び加水分解してホスホン酸基に変換する方法とする方法、高温でリン酸無水物を作用させ、水素原子をホスホン酸基に変換する方法等の公知の方法があげられる。
【0069】
ここで、Qは、縮合反応時に脱離する基であり、前記式(6)、式(7)、式(8)で例示したものと同等である。
【0070】
また、前記式(8)で表される前駆体の好適な代表例としては、例えば、下記の構造を含むブロックがあげられ、好ましくは下記の(8)−1〜4、(8)−9〜14、(8)−17〜20の構造を含むブロックであり、より好ましくは(8)−2、(8)−10、(8)−14、(8)−18、(8)−20の構造を含むブロックである。この例示の中で、m及びQは前記と同義である。
【0071】

【0072】

【0073】

【0074】

【0075】
縮合反応による重合は、ゼロ価遷移金属錯体の共存下に実施される。
前記ゼロ価遷移金属錯体は遷移金属にハロゲンや後述の配位子が配位したものであり、後述の配位子を少なくとも一つ有するものが好ましい。ゼロ価遷移金属錯体は市販品でも別途合成したものいずれを用いてもよい。
ゼロ価遷移金属錯体の合成方法は、例えば遷移金属塩や遷移金属酸化物と配位子とを反応させる方法等の公知の方法があげられる。合成したゼロ価遷移金属錯体は、取り出して使用してもよいし、取り出すことなく、in situで使用してもよい。
配位子としては、例えばアセテート、アセチルアセトナート、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリン、メチレンビスオキサゾリン、N,N,N’N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェノキシホスフィン、1,2−ビスジフェニルホスフィノエタン、1,3−ビスジフェニルホスフィノプロパンなどがあげられる。
【0076】
ゼロ価遷移金属錯体としては、例えばゼロ価ニッケル錯体、ゼロ価パラジウム錯体、ゼロ価白金錯体、ゼロ価銅錯体などがあげられる。これら遷移金属錯体の中でもゼロ価ニッケル錯体、ゼロ価パラジウム錯体が好ましく用いられ、ゼロ価ニッケル錯体がより好ましく用いられる。
ゼロ価ニッケル錯体としては、例えばビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケルなどがあげられ、中でも、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)が、反応性、得られるポリマー等の収率、得られるポリマー等の高分子量化という観点から好ましく使用される。
ゼロ価パラジウム錯体としては、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)があげられる。
これらゼロ価遷移金属錯体は、前記のように合成して用いてもよいし、市販品として入手できるものを用いてもよい。
ゼロ価遷移金属錯体の合成方法は例えば、遷移金属化合物を亜鉛やマグネシウムなどの還元剤でゼロ価とする方法などの公知の方法があげられる。合成したゼロ価遷移金属錯体は、取り出して使用してもよいし、取り出すことなくin situ で使用してもよい。
【0077】
還元剤により、遷移金属化合物からゼロ価遷移金属錯体を発生させる場合、使用される遷移金属化合物としては、ゼロ価の遷移金属化合物が用いることもできるが、通常2価のものを用いることが好ましい。なかでも2価ニッケル化合物、2価パラジウム化合物が好ましい。2価ニッケル化合物としては、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、ニッケルアセテート、ニッケルアセチルアセトナート、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、臭化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、ヨウ化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)などがあげられ、2価パラジウム化合物としては塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、パラジウムアセテートなどがあげられる。
還元剤としては、亜鉛、マグネシウム、水素化ナトリウム、ヒドラジン及びその誘導体、リチウムアルミニウムヒドリドなどがあげられる。必要に応じて、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化トリメチルアンモニウム、ヨウ化トリエチルアンモニウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどを併用することもできる。
【0078】
前記遷移金属錯体を用いた縮合反応の際、得られるポリマー等の収率向上の観点から、用いたゼロ価遷移金属錯体の配位子となり得る化合物を添加することが好ましい。添加する化合物は使用したゼロ価遷移金属錯体の配位子と同じであっても異なっていてもよい。
該配位子となりうる化合物の例としては、前述の、配位子として例示した化合物があげられ、汎用性、経済性、反応性、得られるポリマー等の収率、得られるポリマー等の高分子量化の点でトリフェニルホスフィン、2,2’−ビピリジルが好ましい。特に、2,2’−ビピリジルを用いると、ポリマー等の収率向上や高分子量化の点で特に有利である。
配位子の添加量は、ゼロ価遷移金属錯体にある遷移金属原子基準で、通常0.2〜10モル倍程度、好ましくは1〜5モル倍程度使用される。
【0079】
ゼロ価遷移金属錯体の使用量は、ポリマー等の製造に使用する、式(6)及び式(7)で表されるモノマー、式(8)で表される前駆体の総モル量(以下、「全モノマーの総モル量」という。)に対して、0.1モル倍以上である。使用量が過少であると分子量が小さくなる傾向があるので、好ましくは1.5モル倍以上、より好ましくは1.8モル倍以上、より一層好ましくは2.1モル倍以上用いる。一方、使用量の上限は特に制限はないが、使用量が多すぎると後処理が煩雑になることもあるので、5.0モル倍以下であることが好ましい。
なお、還元剤を用いて遷移金属化合物からゼロ価遷移金属錯体を合成する場合、生成するゼロ価遷移金属錯体が前記範囲となるように、遷移金属化合物及び還元剤の使用量等を設定すればよく、例えば、遷移金属化合物の量を、全モノマーの総モル量に対して、0.01モル倍以上、好ましくは0.03モル倍以上とすればよい。使用量の上限は限定的ではないが、使用量が多すぎると後処理が煩雑になる傾向があるために、5.0モル倍以下であることが好ましい。また、還元剤の使用量は、全モノマーの総モル量に対して、例えば、0.5モル倍以上、好ましくは1.0モル倍以上とすればよい。使用量の上限は限定されないが、使用量が多すぎると後処理が煩雑になる傾向があるために、10モル倍以下であることが好ましい。
【0080】
また、反応温度は、通常0℃〜200℃程度であり、好ましくは10℃〜150℃程度でありより好ましくは20℃〜100℃程度である。反応時間は、通常0.5〜24時間程度である。
ゼロ価遷移金属錯体と、ポリマー等の製造に使用する、式(6)、式(7)で表されるモノマー、式(8)で表される前駆体から選ばれるモノマーとを混合する方法は、一方を他方に加える方法であっても、両者を反応容器に同時に加える方法であってもよい。加えるに当っては、一挙に加えてもよいが、発熱を考慮して少量ずつ加えることが好ましいし、溶媒の共存下に加えることも好ましく、この場合の好適な溶媒は後述する。
【0081】
縮合反応は、通常、溶媒存在下に実施される。かかる溶媒としては、例えばN、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどの非プロトン性極性溶媒、トルエン、キシレン、メシチレン、ベンゼン、n−ブチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチルなどのエステル系溶媒、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒などが例示される。なお、括弧内の表記は溶媒の略号を示すものであり、後述する表記において、この略号を用いることもある。
【0082】
生成するポリマー等の分子量をより高くするためには、ポリマー等が十分に溶解する溶媒、すなわちポリマー等に対する良溶媒を用いることが望ましい。生成するポリマー等に対する良溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、DMF、DMAc、NMP、DMSO、トルエンが好ましい。これらは2種以上を混合して用いることもできる。なかでもDMF、DMAc、NMP及びDMSOから選ばれる溶媒、又はこれらから選ばれる2種以上の溶媒の混合物が好ましく用いられる。
溶媒量は、特に限定されないが、あまりにも低濃度では、生成したポリマー等を回収しにくくなることもあり、また、あまりにも高濃度では、攪拌が困難になることがあることから、ポリマー等の製造に使用するモノマー(式(6)、式(7)で表されるモノマー、式(8)で表される前駆体から選ばれるモノマー)に対して1重量倍〜999重量倍、より好ましくは、3重量倍〜199重量倍となるようにして、溶媒の使用量を決定することが好ましい。
【0083】
かくして本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体又は本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体になり得るプレポリマーが得られるが、生成したポリアリーレン系ブロック共重合体等は、常法により反応混合物から取り出すことができる。例えば、貧溶媒を加えることでポリアリーレン系ブロック共重合体等を析出させ、濾別などにより目的物を取り出すことができる。
また必要に応じて、更に水洗や、良溶媒と貧溶媒を用いての再沈殿など、通常の精製方法により精製することもできる。
【0084】
生成したポリマーの前記A群から選ばれる1種以上のイオン交換基及び/又は前記B群から選ばれる1種以上のイオン交換基が塩の形態である場合、燃料電池に係る部材として使用するために、スルホ基を遊離酸の形態にすることが好ましく、遊離酸への変換は、通常酸性溶液での洗浄により実施することができる。使用される酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などがあげられ、好ましくは希塩酸、希硫酸である。
【0085】
また、前記A群から選ばれるイオン交換基及び前記B群から選ばれるイオン交換基が保護されているようなプレポリマーを得た場合も、燃料電池に係る部材として使用するために、保護されたイオン交換基を、遊離酸の形態の酸基にすることが必要である。遊離酸の形態の酸基への変換は、例えば、酸又は塩基による加水分解、ハロゲン化物による脱保護反応により可能である。なお、塩基を使用した場合は、上述したような酸性溶液の洗浄を行えば、遊離酸の形態の酸基にすることが可能である。使用される酸・塩基としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどがあげられ、使用されるハロゲン化物としては、例えば、臭化リチウム、ヨウ化ナトリウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウムなどがあげられ、好ましくは臭化リチウム、臭化テトラブチルアンモニウムである。酸基への変換率は、赤外線吸収スペクトルや核磁気共鳴スペクトルにより、保護基に特徴的なピークの存在がどの程度であるかを定量することにより算出することができる。
【0086】
本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体の代表例を例示すると、以下の構造があげられる。


【0087】
前記に示す、本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体は、いずれも燃料電池用の部材として好適に用いることができる。
本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体は、燃料電池等の電気化学デバイスの高分子電解質として好ましく使用される。
本発明の高分子電解質は、通常、膜の形態で使用されるが、膜へ転化する方法に特に制限はなく、例えば溶液状態より製膜する方法(溶液キャスト法)が好ましく使用される。
具体的には、本発明の高分子電解質を適当な溶媒に溶解し、その溶液を支持基材上に流延塗布し、溶媒を除去することにより製膜される。かかる支持基材としては、例えば、ガラス板や、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)等のプラスチックフィルム等があげられる。製膜に用いる溶媒は、該高分子電解質が溶解可能であり、その後に除去し得るものであるならば特に制限はなく、DMF、DMAc、NMP、DMSO等の非プロトン性極性溶媒、あるいはジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好適に用いられる。これらは単独で用いることもできるが、必要に応じて2種以上の溶媒を混合して用いることもできる。中でも、DMSO、DMF、DMAc、NMP等がポリマーの溶解性が高く好ましい。
【0088】
膜の厚みは、特に制限はないが10〜300μmが好ましい。膜厚が10μm以上の膜では実用的な強度がより優れるため好ましく、300μm以下の膜では膜抵抗が小さくなり、電気化学デバイスの特性がより向上する傾向にあるので好ましい。膜厚は、溶液の濃度及び基板上への塗布厚により制御できる。
【0089】
また、膜の各種物性改良を目的として、通常の高分子に使用される可塑剤、安定剤、離型剤等を本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体に添加してもよい。また、同一溶剤に混合共キャストする等の方法により、他のポリマーを本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体と複合アロイ化することも可能である。このように、本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体と、添加剤及び/又は他のポリマーとを組み合わせて高分子電解質を調製する場合には、該高分子電解質を燃料電池用部材に適用したときに、所望の特性が得られるようにして、添加剤及び/又は他のポリマーの種類や使用量を決定する。
さらに燃料電池用途においては水管理を容易にするために、無機あるいは有機の微粒子を保水剤として添加することも知られている。これらの公知の方法はいずれも本発明の目的に反しない限り使用できる。また、このようにして得られた高分子電解質膜に関し、その機械的強度向上等を目的として、電子線・放射線等を照射するといった処理を施してもよい。
【0090】
また、本発明の高分子電解質を用いた高分子電解質膜の強度や柔軟性、耐久性のさらなる向上のために、本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体を含む高分子電解質を多孔質基材に含浸させ複合化することにより、複合膜とすることも可能である。複合化方法は公知の方法を使用し得る。
多孔質基材としては、上述の使用目的を満たすものであれば特に制限は無く、例えば多孔質膜、織布、不織布、フィブリル等があげられ、その形状や材質によらず用いることができる。多孔質基材の材質としては、耐熱性の観点や、物理的強度の補強効果を考慮すると、脂肪族系、芳香族系高分子、又は含フッ素高分子が好ましい。
【0091】
本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体を用いた高分子電解質複合膜を高分子電解質形燃料電池の高分子電解質膜として使用する場合、多孔質基材の膜厚は、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは3〜30μm、特に好ましくは5〜20μmであり、多孔質基材の孔径は、好ましくは0.01〜100μm、さらに好ましくは0.02〜10μmであり、多孔質基材の空隙率は、好ましくは20〜98%、さらに好ましくは40〜95%である。
多孔質基材の膜厚が1μm以上であると、複合化後の強度補強の効果あるいは、柔軟性や耐久性を付与するといった補強効果がより優れ、ガス漏れ(クロスリーク)が発生しにくくなる。また、該膜厚が100μm以下であると、電気抵抗がより低くなり、得られた複合膜が高分子電解質形燃料電池の高分子電解質膜として、より優れたものとなる。該孔径が0.01μm以上であると、本発明のポリアリーレン系ブロック共重合体の充填がより容易となり、100μm以下であると、ポリアリーレン系ブロック共重合体への補強効果がより大きくなる。空隙率が20%以上であると、高分子電解質膜としての抵抗がより小さくなり、98%以下であると、多孔質基材自体の強度がより大きくなり補強効果がより向上するので好ましい。
また、該高分子電解質複合膜と、前記高分子電解質膜とを積層して燃料電池の高分子電解質膜として用いることもできる。
【0092】
次に本発明の燃料電池について説明する。
燃料電池の基本的な単位となる、本発明の膜電極接合体(以下、「MEA」ということがある。)は、本発明の高分子電解質膜、及び、本発明の高分子電解質と、触媒成分とを含む触媒組成物を用いてなる触媒層から選ばれる少なくとも1種を用いて製造することができる。
ここで触媒成分としては、水素又は酸素との酸化還元反応を活性化できるものであれば特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、白金又は白金系合金の微粒子を触媒成分として用いることが好ましい。白金又は白金系合金の微粒子はしばしば活性炭や黒鉛などの粒子状又は繊維状のカーボンに担持されて用いられることもある。
カーボンに担持された白金又は白金系合金(カーボン担持触媒)を、本発明の高分子電解質の溶液及び/又は高分子電解質としてのパーフルオロアルキルスルホン酸樹脂のアルコール溶液と共に混合してペースト化した触媒組成物を、ガス拡散層及び/又は高分子電解質膜に塗布・乾燥することにより触媒層が得られる。具体的な方法としては例えば、J. Electrochem. Soc.: Electrochemical Science and Technology, 1988, 135(9), 2209 に記載されている方法等の公知の方法を用いることができる。このようにして、高分子電解質膜の両面に触媒層を形成させることで、MEAが得られる。なお、該MEAの製造において、ガス拡散層となる基材上に触媒層を形成した場合は、得られるMEAは高分子電解質膜の両面にガス拡散層と触媒層とをともに備えた膜−電極−ガス拡散層接合体の形態で得られる。また、ペースト化した触媒組成物を高分子電解質膜に塗布して高分子電解質膜上に触媒層を形成させた場合は、得られた触媒層上にさらにガス拡散層を形成させることで、膜−電極−ガス拡散層接合体が得られる。
ガス拡散層には公知の材料を用いることができるが、多孔質性のカーボン織布、カーボン不織布又はカーボンペーパーが、原料ガスを触媒へ効率的に輸送するために好ましい。
このようにして製造されたMEAを有する燃料電池は、燃料として水素ガス又は改質水素ガスを使用する形式はもとより、メタノールを用いる各種の形式で使用可能である。
【0093】
かくして得られる本発明の高分子電解質形燃料電池は、発電性能に優れ、長寿命の燃料電池として提供できる。
【実施例】
【0094】
以下に実施例を挙げて本発明を説明する。
(1)分子量の測定
実施例中に記載した分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、下記条件で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)である。

<条件1>
GPC測定装置 島津製作所社製 Prominence GPCシステム
カラム 東ソー社製 TSKgel GMHHR-M
カラム温度 40℃
移動相溶媒 DMF(LiBrを10mmol/dm3になるように添加)
溶媒流量 0.5mL/min

<条件2>
GPC測定装置 東ソー社製 HLC−8220
カラム 東ソー社製 TSKgel GMHHR-M
TSKguardcolumn HHR-Hを直列に接続
カラム温度 40℃
移動相溶媒 DMAc(LiBrを10mmol/dm3になるように添加)
溶媒流量 0.5mL/min

<条件3>
GPC測定装置 TOSOH社製 HLC−8220
カラム Shodex社製 AT−80Mを2本直列に接続
カラム温度 40℃
移動相溶媒 DMAc(LiBrを10mmol/dm3になるように添加)
溶媒流量 0.5mL/min
【0095】
(2)イオン交換容量(IEC)の測定
イオン交換基を遊離酸型(プロトン型)に変換した膜をハロゲン水分率計で105℃でさらに乾燥させ、絶乾質量を求めた。この膜を、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液5mLに浸漬した後、50mLのイオン交換水を加え、2時間放置した。その後、この高分子電解質膜が浸漬された溶液に0.1mol/Lの塩酸を徐々に加えることで滴定し、中和点を求めた。絶乾質量と中和点に要する0.1mol/L塩酸の量から、イオン交換容量を求めた。
【0096】
[プロトン伝導度(σ)の測定]
合成例1、2及び比較例1で得られた高分子電解質膜を、幅1.0cmの短冊状膜試料とし、その表面に白金板(幅:5.0mm)を間隔が1.0cmになるように押しあて、80℃、相対湿度90%及び80℃、の恒温恒湿槽中にそれぞれ試料を保持し、白金板間の106〜10-1Hzにおける交流インピーダンスを測定した。そして
、得られた値を、下記式に代入して、各高分子電解質膜のプロトン伝導度(σ)(S/cm)を算出した。
σ(S/cm)=1/(R×d)
[式中、コール・コールプロット上において、複素インピーダンスの虚数成分が0の時の、複素インピーダンスの実数成分をR(Ω)とする。dは短冊状膜試料の膜厚(cm)を表す。]
【0097】
[実施例1]
アルゴン雰囲気下、フラスコに無水塩化ニッケル27.46g(211.9mmol)とジメチルスルホキシド(DMSO)261gとを加え、70℃に昇温し、溶解した。これを50℃に冷却し、2,2’−ビピリジル36.41g(233.1mmol)を加え、同温度で保温することで、ニッケル含有溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、フラスコに末端クロロ型である下記ポリエーテルスルホン

(住友化学製スミカエクセルPES3600P、Mn=27000、Mw=45000 :GPC条件1)9.04g、DMSO355gを加え50℃に昇温し、溶解した。得られた溶液に、メタンスルホン酸0.049g(0.50mmol)を加えた。次いで、亜鉛粉末20.79g(317.9mmol)、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)20.00g(67.3mmol)、2,5−ジクロロベンゼンカルボン酸エチル3.69g(16.82mmol)を加え溶解させた。これに、前記ニッケル含有溶液を注加し、次いで75℃に昇温して2時間保温撹拌し、黒色の重合溶液を得た。得られた重合溶液を、70℃の熱水1200gに注加し、生じた沈殿を濾過で集めた。沈殿物に、沈殿物と水との合計が696gになるように水を加え、さらに35重量%亜硝酸ナトリウム水溶液9.2gを加えた。このスラリー溶液に、70重量%硝酸160gを30分かけて滴下し、滴下後、室温で1時間撹拌した。スラリー溶液を濾過し、集めた粗ポリマーを濾液のpHが3を越えるまで水洗を行なった。
次に、冷却器を備えたフラスコに、粗ポリマーと、粗ポリマーと水との合計の重量が349gになるまで水を加え、さらに5重量%水酸化リチウム水溶液を、粗ポリマーと水のスラリー溶液のpHが7になるまで加え、さらにメタノール666gを加え、1時間還流させた。粗ポリマーを濾過して集め、水200g、次いで、メタノール250gを用いて浸漬洗浄し、80℃の乾燥機で乾燥することで、スルホン酸前駆基及びカルボン酸前駆基を有するポリマー25.50gを得た。
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基及びカルボン酸前駆基をスルホン酸及びカルボン酸に変換した。上述のようにして得られたスルホン酸前駆基を有するポリマー25.00gをフラスコに入れ、アルゴン雰囲気下、NMP825gを加えて、80℃で加熱撹拌し、溶解させた。これに活性アルミナ33gを加えて1時間30分保温撹拌した。その後、これに425gのNMPを加え、濾過により活性アルミナを除いた。得られた溶液からNMPを減圧留去することで濃縮し、332gのNMP溶液とした。この溶液に水2.42g、無水臭化リチウム11.66g(134.3mmol)を加え、120℃に昇温して、同温度で12時間保温撹拌した。得られた反応溶液を6N塩酸1600gに投入し、1時間攪拌した。析出した粗ポリマーを濾過で集め、3750gの35重量%塩酸/メタノール溶液(重量比1/1の混合溶液)で3回浸漬洗浄した後、濾液のpHが4を越えるまで水洗をおこない、粗ポリマーを得た。1H−NMR測定の結果から、スルホン酸基とカルボン酸基前駆体を有する下記構造と推定される。得られた粗ポリマーのイオン交換容量を測定したところ、2.4meq/gであった。


【0098】
ついで、粗ポリマーを1625gの熱水(95℃)で3回浸漬洗浄し、乾燥することにより下記構造で表されるポリアリーレン系ブロック共重合体15.48gを得た。得られた共重合体の分子量は、Mn=111000、Mw=258000であった(GPC条件2)。


得られたポリアリーレン系ブロック共重合体をDMSOに溶解し、高分子電解質溶液を調整した。その後、得られた高分子電解質溶液をPET上に流延塗布し、常圧下、100℃で乾燥させる事により溶媒を除去した後、2N硫酸で浸漬処理し、イオン交換水での洗浄を経て、約22μmの高分子電解質膜1を作製した。仕込みから計算される親水性ブロック中のカルボキシル基を有するユニットの割合i/(i+j)は0.2であった。

イオン交換容量: 3.0meq/g
プロトン伝導度: 2.9x10−1S/cm
【0099】
[実施例2]
アルゴン雰囲気下、フラスコに無水塩化ニッケル30.87g(238.17mmol)とジメチルスルホキシド(DMSO)339gとを加え、70℃に昇温し、溶解した。これを50℃に冷却し、2,2’−ビピリジル40.92g(261.99mmol)を加え、同温度で保温することで、ニッケル含有溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、フラスコに末端クロロ型である下記ポリエーテルスルホン

(住友化学製スミカエクセルPES3600P、Mn=27000、Mw=45000 :GPC条件1)8.85g、DMSO248gを加え50℃に昇温し、溶解した。得られた溶液に、メタンスルホン酸0.055g(0.57mmol)を加えた。次いで、亜鉛粉末23.36g(357.3mmol)、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)22.50g(75.71mmol)、2,5−ジクロロベンゼンカルボン酸エチル4.15g(18.93mmol)を加え溶解させた。これに、前記ニッケル含有溶液を注加し、次いで75℃に昇温して2時間保温撹拌し、黒色の重合溶液を得た。得られた重合溶液を、70℃の熱水1350gに注加し、生じた沈殿を濾過で集めた。沈殿物に、沈殿物と水との合計が783gになるように水を加え、さらに35重量%亜硝酸ナトリウム水溶液10.35gを加えた。このスラリー溶液に、70重量%硝酸180gを30分かけて滴下し、滴下後、室温で1時間撹拌した。スラリー溶液を濾過し、集めた粗ポリマーを濾液のpHが1を越えるまで水洗を行なった。
次に、冷却器を備えたフラスコに、粗ポリマーと、粗ポリマーと水との合計の重量が785gになるまで水を加え、さらに5重量%水酸化リチウム水溶液を、粗ポリマーと水のスラリー溶液のpHが7になるまで加え、さらにメタノール749gを加え、1時間還流させた。粗ポリマーを濾過して集め、水225g、次いで、メタノール281gを用いて浸漬洗浄し、80℃の乾燥機で乾燥することで、スルホン酸前駆基及びカルボン酸前駆基を有するポリマー26.62gを得た。
【0100】
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基及びカルボン酸前駆基をスルホン酸及びカルボン酸に変換した。
上述のようにして得られたスルホン酸前駆基を有するポリマー26.00gをフラスコに入れ、アルゴン雰囲気下、NMP650gを加えて、80℃で加熱撹拌し、溶解させた。これに活性アルミナ34gを加えて1時間30分保温撹拌した。その後、これに650gのNMPを加え、濾過により活性アルミナを除いた。得られた溶液からNMPを減圧留去することで濃縮し、280gのNMP溶液とした。この溶液に、アルゴン雰囲気下、水2.52g、無水臭化リチウム12.13g(139.7mmol)を加え、120℃に昇温して、同温度で12時間保温撹拌した。得られた反応溶液を6N塩酸1300gに投入し、1時間攪拌した。析出した粗ポリマーを1300gの35重量%塩酸/メタノール溶液(重量比1/1の混合溶液)で3回浸漬洗浄した後、濾液のpHが4を越えるまで水洗をおこない、粗ポリマーを得た。1H−NMR測定の結果から、スルホン酸基とカルボン酸基前駆体を有する下記構造と推定される。得られた粗ポリマーのイオン交換容量を測定したところ、2.6meq/gであった。


【0101】
ついで、冷却器を備えたフラスコに粗ポリマーと24重量%塩酸水溶液を加え95℃で10時間攪拌した。粗ポリマーを濾過して集め、濾液のpHが4を越えるまで水洗を行った。ついで、粗ポリマーを1690gの熱水(95℃)で3回浸漬洗浄し、乾燥することにより下記構造で表されるポリアリーレン系ブロック共重合体15.9gを得た。得られた共重合体の分子量は、Mn=152000、Mw=355000であった(GPC条件2)。仕込みから計算される親水性ブロック中のカルボキシル基を有するユニットの割合i/(i+j)は0.2であった。



得られたポリアリーレン系ブロック共重合体をDMSOに溶解し、高分子電解質溶液を調整した。その後、得られた高分子電解質溶液をPET上に流延塗布し、常圧下、80℃で乾燥させる事により溶媒を除去した後、2N硫酸で浸漬処理し、イオン交換水での洗浄を経て、約18μmの高分子電解質膜2を作製した。

イオン交換容量: 3.2meq/g
プロトン伝導度: 2.8x10−1S/cm
【0102】
[実施例3]
アルゴン雰囲気下、フラスコに無水塩化ニッケル27.42g(211.6mmol)とジメチルスルホキシド(DMSO)271gとを加え、70℃に昇温し、溶解した。これを50℃に冷却し、2,2’−ビピリジル36.35g(232.8mmol)を加え、同温度で保温することで、ニッケル含有溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、フラスコに末端クロロ型である下記ポリエーテルスルホン

(住友化学製スミカエクセルPES3600P、Mn=27000、Mw=45000 :GPC条件1)7.26g、DMSO250gを加え50℃に昇温し、溶解した。得られた溶液に、メタンスルホン酸0.049g(0.50mmol)を加えた。次いで、亜鉛粉末20.75g(317.4mmol)、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)20.00g(67.3mmol)、2,5−ジクロロベンゼンホスホン酸(ジエチル)4.76g(16.8mmol)を加え溶解させた。これに、前記ニッケル含有溶液を注加し、次いで70℃に昇温して2時間保温撹拌し、黒色の重合溶液を得た。
得られた重合溶液を、70℃の熱水1200gに注加し、生じた沈殿を濾過で集めた。沈殿物に、沈殿物と水との合計が698gになるように水を加え、さらに35重量%亜硝酸ナトリウム水溶液9.2gを加えた。このスラリー溶液に、70重量%硝酸160gを30分かけて滴下し、滴下後、室温で1時間撹拌した。スラリー溶液を濾過し、集めた粗ポリマーを濾液のpHが1を越えるまで水洗を行なった。次に、冷却器を備えたフラスコに、粗ポリマーと、粗ポリマーと水との合計の重量が769gになるまで水を加え、さらに5重量%水酸化リチウム水溶液を、粗ポリマーと水のスラリー溶液のpHが7.6になるまで加え、さらにメタノール666gを加え、1時間還流させた。粗ポリマーを濾過して集め、水308g、次いで、メタノール300gを用いて浸漬洗浄し、80℃の乾燥機で乾燥することで、スルホン酸前駆基(スルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)基)とホスホン酸前駆基(ホスホン酸(ジエチル)基)を有するポリマー24.00gを得た。
【0103】
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基をスルホ基に、ホスホン酸前駆基をホスホン酸基に変換した。
上述のようにして得られたスルホン酸前駆基とホスホン酸前駆基を有するポリマー23.90gをフラスコに入れ、アルゴン雰囲気下、NMP598gを加えて、80℃で加熱撹拌し、溶解させた。これに活性アルミナ31gを加えて1時間30分保温撹拌した。その後、これに598gのNMPを加え、濾過により活性アルミナを除いた。得られた溶液からNMPを減圧留去することで濃縮し、290gのNMP溶液とした。この溶液に水2.2g、無水臭化リチウム10.72g(123.4mmol)を加え、120℃に昇温して、同温度で12時間保温撹拌した。得られた反応溶液を6N塩酸1214gに投入し、1時間攪拌した。析出した粗ポリマーを濾過で集め、1210gの35重量%塩酸/メタノール溶液(重量比1/1の混合溶液)で3回浸漬洗浄した後、濾液のpHが4を越えるまで水洗を行ない、乾燥することにより下記構造で表されるポリアリーレン系ブロック共重合体13.63gを得た。仕込みから計算される親水性ブロック中のホスホン酸基を有するユニットの割合i/(i+j)は0.2であった。


【0104】
[実施例4]
アルゴン雰囲気下、フラスコに無水塩化ニッケル36.41g(280.9mmol)とジメチルスルホキシド(DMSO)291gとを加え、70℃に昇温し、溶解した。これを50℃に冷却し、2,2’−ビピリジル48.26g(309.0mmol)を加え、同温度で保温することで、ニッケル含有溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、フラスコに末端クロロ型である下記ポリエーテルスルホン

(住友化学製スミカエクセルPES3600P、Mn=27000、Mw=45000 :GPC条件1)2.88g、DMSO230gを加え50℃に昇温し、溶解した。得られた溶液に、メタンスルホン酸0.065g(0.67mmol)を加えた。次いで、亜鉛粉末27.55g(421.4mmol)、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)20.00g(67.3mmol)、2,5−ジクロロベンゼンホスホン酸(ジエチル)12.70g(44.9mmol)を加え溶解させた。これに、前記ニッケル含有溶液を注加し、次いで70℃に昇温して2時間保温撹拌し、黒色の重合溶液を得た。
得られた重合溶液を、70℃の熱水1200gに注加し、生じた沈殿を濾過で集めた。沈殿物に、沈殿物と水との合計が696gになるように水を加え、さらに35重量%亜硝酸ナトリウム水溶液9.2gを加えた。このスラリー溶液に、70重量%硝酸160gを30分かけて滴下し、滴下後、室温で1時間撹拌した。スラリー溶液を濾過し、集めた粗ポリマーを濾液のpHが1を越えるまで水洗を行なった。次に、冷却器を備えたフラスコに、粗ポリマーと、粗ポリマーと水との合計の重量が699gになるまで水を加え、さらに5重量%水酸化リチウム水溶液を、粗ポリマーと水のスラリー溶液のpHが8.0になるまで加え、さらにメタノール666gを加え、1時間還流させた。粗ポリマーを濾過して集め、水327g、次いで、メタノール300gを用いて浸漬洗浄し、80℃の乾燥機で乾燥することで、スルホン酸前駆基(スルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)基)とホスホン酸前駆基(ホスホン酸(ジエチル)基)を有するポリマー21.90gを得た。
【0105】
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基をスルホ基に、ホスホン酸前駆基をホスホン酸基に変換した。
上述のようにして得られたスルホン酸前駆基とホスホン酸前駆基を有するポリマー21.80gをフラスコに入れ、アルゴン雰囲気下、NMP545gを加えて、80℃で加熱撹拌し、溶解させた。これに活性アルミナ28gを加えて1時間30分保温撹拌した。その後、これに545gのNMPを加え、濾過により活性アルミナを除いた。得られた溶液からNMPを減圧留去することで濃縮し、261gのNMP溶液とした。この溶液に水5.7g、無水臭化リチウム9.22g(106.2mmol)を加え、120℃に昇温した。保温中、ポリマーが析出するたびに、35重量%塩酸を加えて溶解させながら、同温度で12時間保温撹拌した。得られた反応溶液を6N塩酸1070gに投入し、1時間攪拌した。析出した粗ポリマーを濾過で集め、1110gの35重量%塩酸/メタノール溶液(重量比1/1の混合溶液)で3回浸漬洗浄した後、濾液のpHが4を越えるまで水洗を行ない、乾燥することにより下記構造で表されるポリアリーレン系ブロック共重合体11.05gを得た。仕込みから計算される親水性ブロック中のホスホン酸基を有するユニットの割合i/(i+j)は0.4であった。


【0106】
[比較例1]

特開2003−313275に準拠して合成した、ポリ安息香酸をDMAcに溶解させ、ガラス板上に塗り広げた。常圧下、80℃で溶媒を乾燥させ、目的とする高分子電解質膜3を得た。構造単位から推定されるイオン交換容量は8.3meq/gであった。

プロトン伝導度: 1.5x10−4S/cm
【0107】
[比較例2]
アルゴン雰囲気下、末端クロロ型である下記ポリエーテルスルホン

(住友化学工業製スミカエクセルPES5200P、Mn=5.44×104、Mw=1.23×105:GPC条件3)2.5g、下記ポリエーテルスルホン共重合体



(特開2002−220469号公報の実施例1に記載の方法に準拠して製造した。Mn=3.16×104、Mw=8.68×104:GPC条件3)2.50g、2,2’−ビピリリジル0.117g(0.75mmol)をDMAc200mLに溶解し、30分間アルゴンガスのバブリングを実施、Ni(COD)2 0.206g(0.75mmol)を加えて80℃まで昇温し、同温度で6時間保温攪拌した後放冷した。次いで反応混合物を4規定塩酸500mLに注ぎ、生じた白色沈殿を濾過、常法により再沈精製を行い、下記芳香族ポリエーテル系超高分子を得た。



Mn=1.89×106
Mw=2.17×106

前記芳香族ポリエーテル系超高分子を5g用い、濃硫酸を用いて常法に従いスルホン化、精製することにより、下記に示す芳香族ポリエーテル系イオン伝導性超高分子を得た。1H−NMR測定の結果、下式のようにビフェニル部分に選択的にスルホ化されていることが分かった。


イオン交換容量: 1.8meq/g
プロトン伝導度: 9.1×10-2S/cm
【0108】
[実施例5]
(MEA1の作製)
前記で作製した高分子電解質膜1の片面の中央部における1cm×1.3cmの領域に、スプレー法にて前記の触媒インクを塗布した。この際、吐出口から膜までの距離は6cm、ステージ温度は75℃に設定した。同様にして重ね塗りをした後、溶媒を除去してアノード触媒層を形成させた。アノード触媒層として2.1mgの固形分(白金目付け:0.6mg/cm2)が塗布された。続いて、もう一方の面に同様に触媒インクを塗布して、カソード触媒層を形成させて、MEA1を得た。カソード触媒層として2.1mgの固形分(白金目付け:0.6mg/cm2)が塗布された。
【0109】
[実施例6]
(MEA2作製)
実施例1の高分子電解質1の代わりに高分子電解質膜2を用いたこと以外は実施例1と同様にしてMEA2を得た。アノード触媒層として2.1mgの固形分(白金目付け:0.6mg/cm2)カソード触媒層として2.1mgの固形分(白金目付け:0.6mg/cm2)が塗布された。
【0110】
[比較例3]
(MEA3作製)
実施例1の高分子電解質1の代わりに高分子電解質膜4を用いたこと以外は実施例1と同様にしてMEA3を得た。アノード触媒層として2.1mgの固形分(白金目付け:0.6mg/cm2)カソード触媒層として2.1mgの固形分(白金目付け:0.6mg/cm2)が塗布された。
【0111】
(燃料電池セル組み立て)
前記で得られたMEAの両外側に、ガス拡散層としてカーボンペーパーと、ガス通路用の溝を切削加工したカーボン製セパレータを配し、さらにその外側に集電体及びエンドプレートを順に配置し、これらをボルトで締め付けることによって、有効膜面積1.3cm2の燃料電池セルを組み立てた。
【0112】
(発電特性評価)
得られた燃料電池セル80℃に保ちながら、アノードに加湿水素、カソードに加湿空気をそれぞれ供給した。この際、セルのガス出口における背圧が0.1MPaGとなるようにした。各原料ガスの加湿は、水の入ったバブラーにガスを通すことで行い、加湿度は、バブラー水温で調整を行った。水素のガス流量は529mL/min、空気のガス流量は1665mL/minとした。
【0113】
実施例5及び6で得られたMEAを燃料電池セルに組み込み、下記加湿条件下で、電流密度1.0A/cmの時の電圧値を測定した。結果を、表1に示す。この値が大きいほど、発電特性が良好であることを示す。
[加湿条件]
アノードバブラー水温45℃
カソードバブラー水温55℃
アノードガス相対湿度20%RH
カソードガス相対湿度33%RH
【0114】
【表1】

【0115】
以上の結果から、電解質膜として用いたときに、高温低加湿条件下で、良好な発電特性を示すポリアリーレン系ブロック共重合体、該ブロック共重合体を含む高分子電解質、該高分子電解質を用いてなる高分子電解質膜、該高分子電解質を用いてなる触媒組成物及びこれらを用いてなる高分子電解質形燃料電池を提供できることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換基を有するブロックと、イオン交換基を実質的に有しないブロックとを含み、該イオン交換基を有するブロックの少なくとも1つが下記A群から選ばれる1種以上のイオン交換基と、下記B群から選ばれる1種以上のイオン交換基とを有することを特徴とするポリアリーレン系ブロック共重合体。

[A群]


[B群]


(式中、Mは、対カチオンを表す。*はイオン交換基を有するブロック中の炭素原子に結合する。Eは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。)
【請求項2】
前記イオン交換基を実質的に有しないブロックが、下記式(3)で表される構造を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。

(式中、mは2以上の整数を表し、Ar3、Ar4、Ar5及びAr6は、それぞれ独立に2価の芳香族基を表し、該2価の芳香族基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基から選ばれる1種以上の基を置換基として有していてもよい。kは0又は1、lは0,1又は2を表す。Xは−SO−で示される基又は−CO−で示される基を表し、Yは、直接結合又は

から選ばれるいずれかの2価の基を表す。複数個あるYは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記イオン交換基を有するブロックが、前記A群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有する下記式(1)で表される構造単位と、前記B群から選ばれるイオン交換基を有する下記式(2)で表される構造単位とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。


(式中、Ar1は、前記A群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有するアリーレン基を表し、該アリーレンは、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基から選ばれる1種以上の基を置換基として有してもよい。式中、Arは、前記B群から選ばれる1種以上のイオン交換基を有するアリーレン基を表し、該アリーレン基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基から選ばれる1種以上の基を置換基として有してもよい。)
【請求項4】
前記式(1)で表される構造単位が、下記式(4)で表される構造単位であることを特徴とする請求項3に記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。

(式中、Aは前記A群から選ばれるいずれかのイオン交換基を表す。R1は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基を表す。pは1以上3以下の整数であり、qは0以上3以下の整数であり、p+qは4以下の整数である。複数あるAは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。複数あるR1は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)
【請求項5】
前記式(2)で表される構造単位が、下記式(5)で表される構造単位であることを特徴とする請求項3又は4に記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。

(式中、Bは前記B群から選ばれるいずれかのイオン交換基を表す。Rは、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基を表す。rは1以上3以下の整数であり、sは0以上3以下の整数であり、r+sは4以下の整数である。複数あるBは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。複数あるR2は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)
【請求項6】
前記A群から選ばれるイオン交換基が前記(a−1)であり、前記B群から選ばれるイオン交換基が前記(b−3)であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。
【請求項7】
前記A群から選ばれるイオン交換基が前記(a−1)であり、前記B群から選ばれるイオン交換基が前記(b−1)であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。
【請求項8】
イオン交換容量が0.5〜7.0meq/gであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のポリアリーレン系ブロック共重合体を含むことを特徴とする高分子電解質。
【請求項10】
請求項9に記載の高分子電解質を含むことを特徴とする高分子電解質膜。
【請求項11】
請求項9に記載の高分子電解質と、触媒成分とを含むことを特徴とする触媒組成物。
【請求項12】
請求項10に記載の高分子電解質膜を有することを特徴とする膜−電極接合体。
【請求項13】
請求項11に記載の触媒組成物を含む触媒層を有することを特徴とする膜−電極接合体。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の膜−電極接合体を有することを特徴とする高分子電解質形燃料電池。

【公開番号】特開2011−246618(P2011−246618A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121478(P2010−121478)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】