説明

ポリイソブチレンおよびその製造方法

本発明は概して、アルコール末端ポリソブチレン(PIB)化合物およびそのような化合物の製造方法に関する。一実施形態では、本発明は、第一級アルコール末端ポリソブチレン化合物およびそのような化合物の製造方法に関する。別の実施形態では、本発明はポリウレタンを合成するのに使用可能なポリイソブチレン化合物、そのようなポリイソブチレン化合物の使用により製造されたポリウレタン化合物、ならびにそのような化合物の製造方法に関する。さらに別の実施形態では、本発明は、2以上の第一級アルコール末端を有する、第一級アルコール末端ポリソブチレン化合物、ならびにそのような化合物を製造する方法に関する。さらなる別の実施形態では、本発明は、アミン基またはメタクリレート基から選択される2以上の第一級末端を有する、第一級末端ポリソブチレン化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本発明は、全米科学財団(NSF)の助成金DMR 02−43314−3の支援を受けた研究の過程においてなされたものである。米国政府は、本発明または本明細書に係る発明に一定の権利を有することができる。
【技術分野】
【0002】
本発明は概して、アルコール末端ポリソブチレン(PIB)化合物およびそのような化合物の製造方法に関する。一実施形態では、本発明は、第一級アルコール末端ポリソブチレン化合物およびそのような化合物の製造方法に関する。別の実施形態では、本発明はポリウレタンを合成するのに使用可能なポリイソブチレン化合物、そのようなポリイソブチレン化合物の使用により製造されたポリウレタン化合物、ならびにそのような化合物の製造方法に関する。さらに別の実施形態では、本発明は、2以上の第一級アルコール末端を有する、第一級アルコール末端ポリソブチレン化合物、ならびにそのような化合物を製造する方法に関する。さらなる別の実施形態では、本発明は、アミン基またはメタクリレート基から選択される2以上の第一級末端を有する、第一級末端ポリソブチレン化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
様々なポリウレタン(PUs)は何十億ドルの市場であり、最大の化学会社(例えば、ダウ、デュポン、BASF、三井)のいくつかによって世界中で製造されている。ポリウレタンは、例えば熱可塑性プラスチック、ゴム、発泡材、クッション材、チューブ、および様々な生体材料の形態で、幅広い種類の産業的用途および臨床的な用途に使用されている。
【0004】
典型的には、ポリウレタンは3つの成分を結合することにより製造される:(1)テトラメチレンオキサイドなどのジオール、(2)4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートなどのジイソシアネート、(3)1,4−ブタンジオールなどの鎖延長剤。一般に、ポリウレタンは軟らかい成分(ゴム状)および硬い成分(結晶)を含み、ポリウレタンの特性は、軟らかい成分および硬い成分の性質および相対的な濃度に依存する。
【0005】
従前の合成方法により調製された、HOCH−PIB−CHOHなどの第一級アルコール末端PIB化合物は、経済的でなかった。第一級アルコール末端PIB化合物の製造コストは、商業的生産には高すぎる。HOCH−PIB−CHOHなどの第一級アルコール末端PIB化合物の製造コストが高い理由のひとつは、PIB分子の末端に、末端−CHOH基を導入する際に、高価なホウ素化学物質(Hおよびその錯体)の使用を必要とするハイドロボレーション/酸化の方法を必要とすることである。
【0006】
上述したように、HOCH−PIB−CHOHなどの第一級アルコール末端PIB化合物を製造するための経済的な方法を開発するために、多くの努力がなされている。例えば、BASFは、ハイドロボレーション/酸化によりHOCH−PIB−CHOHを製造する方法の調査および開発に何百万ドルを費やしており、かかる方法は、使用される高価なボロン含有化合物の回収および再利用を可能にしている。他の研究もなされており、PIB−CHOHまたはHOCH−PIB−CHOHなどの第一級アルコール末端PIB化合物の製造に関するコストを低減することに関しては限定的に成功している。
【0007】
アミン末端PIBに関しては、アミン末端テレケリックPIBの合成に関する早くからの試みは面倒でかつ高価であり、アミン末端テレケリックPIBの最終的な構造は、上述したものと異なる。
【0008】
ごく最近、Binderら(D.Machl,M.J.KunzおよびW.H.Binder,Polymer Preprints,2003,44(2),85頁)は、公知の条件にてイソブチレンのリビング重合を開始して、ポリマーを1−(3−ブロモプロピル)−4−(1−フェニルビニル)−ベンゼンで末端化して、生成物に複雑な種類の反応を施して、アミン末端PIBを得ている。本明細書で開示される構造と非常に異なる複雑な構造が得られ、上述した方法では、1.0±0.05個の官能基を有するアミン末端テレケリックPIB化合物が得られなかった。
【0009】
このように、第一級アルコール末端PIB化合物、第一級アミン末端PIB化合物、第一級メタクリレート末端PIB化合物、および/または第一級アミン末端テレケリックPIB化合物を効率的にかつ低コストで生産および製造することができる製造プロセスが求められている。
【発明の概要】
【0010】
本明細書において、
【化1】

の代わりに「*」と表記するものとする。
【0011】
本発明は概して、アルコール末端ポリソブチレン(PIB)化合物およびそのような化合物の製造方法に関する。一実施形態では、本発明は、第一級アルコール末端ポリソブチレン化合物およびそのような化合物の製造方法に関する。別の実施形態では、本発明はポリウレタンを合成するのに使用可能なポリイソブチレン化合物、そのようなポリイソブチレン化合物の使用により製造されたポリウレタン化合物、ならびにそのような化合物の製造方法に関する。さらに別の実施形態では、本発明は、2以上の第一級アルコール末端を有する、第一級アルコール末端ポリソブチレン化合物、ならびにそのような化合物を製造する方法に関する。さらなる別の実施形態では、本発明は、アミン基またはメタクリレート基から選択される2以上の第一級末端を有する、第一級末端ポリソブチレン化合物に関する。
【0012】
一実施形態では、本発明は、(A)少なくとも2つのアルケニル末端を有するアルケニル末端ポリイソブチレンを供給し、前記アルケニル末端は、末端に二重結合を有し、直鎖状または分岐状の炭素数3〜12のアルケニル基から形成され、(B)アルケニル末端ポリイソブチレンに対してアンチマルコニコフ臭素化を行い、少なくとも2つの第一級臭素末端を有する第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物を形成し、(C)塩基反応により、前記第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物を、少なくとも2つの第一級アルコール末端を有する第一級アルコール末端ポリイソブチレンへと変換し、(D)前記第一級アルコール末端ポリイソブチレンを回収することを含む、第一級アルコール末端ポリイソブチレン化合物の製造方法に関する。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、下記の式で表される第一級アルコール末端ポリイソブチレン化合物に関する。
【0014】
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−R−OH
[式中、〜〜〜は直鎖状分子、星型状分子(star)、ハイパーブランチ(hyperbranched)状分子、または樹枝状(arborescent)分子の残部を表し、nは2から約5000の整数であり、Rは末端に二重結合を有し、対応する直鎖状または分岐状の炭素数3〜12のアルケニル基から形成される、直鎖状または分岐状の炭素数3〜12の結合であり、前記第一級アルコール末端ポリイソブチレンは、少なくとも2つの第一級アルコール末端を有する。]
【0015】
さらに別の実施形態では、本発明は、(a)少なくとも2つのアルケニル末端を有するアルケニル末端ポリイソブチレンを供給し、前記アルケニル末端は、末端に二重結合を有し、直鎖状または分岐状の炭素数3〜12のアルケニル基から形成され、(b)アルケニル末端ポリイソブチレンに対してアンチマルコニコフ臭素化を行い、少なくとも2つの第一級臭素末端を有する第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物を形成し、(c)少なくとも1つのアルカリ性メタクリレート化合物との反応により、前記第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物を、少なくとも2つの第一級メタクリレート末端を有する第一級メタクリレート末端ポリイソブチレンへと変換し、(d)前記第一級メタクリレート末端ポリイソブチレンを回収することを含む、第一級メタクリレート末端ポリイソブチレン化合物の製造方法に関する。
【0016】
さらに別の実施形態では、本発明は、下記の式で表される第一級メタクリレート末端ポリイソブチレン化合物に関する。
【0017】
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−R−Ma
[式中、〜〜〜は直鎖状分子、星型状分子、ハイパーブランチ状分子、または樹枝状分子の残部を表し、nは2から約5000の整数であり、Rは末端に二重結合を有し、対応する直鎖状または分岐状の炭素数3〜12のアルケニル基から形成される、直鎖状または分岐状の炭素数3〜12の結合であり、Maはメタクリレート末端を表し、前記第一級メタクリレート末端ポリイソブチレンは、少なくとも2つの第一級メタクリレート末端を有する。]
【0018】
さらに別の実施形態では、本発明は、(i)少なくとも2つのアルケニル末端を有するアルケニル末端ポリイソブチレンを供給し、前記アルケニル末端は、末端に二重結合を有し、直鎖状または分岐状の炭素数3〜12のアルケニル基から形成され、(ii)アルケニル末端ポリイソブチレンに対してアンチマルコニコフ臭素化を行い、少なくとも2つの第一級臭素末端を有する第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物を形成し、(iii)少なくとも1つのアルカリ性フタルイミド化合物との反応により、前記第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物を、少なくとも2つの第一級フタルイミド末端を有する第一級フタルイミド末端ポリイソブチレンへと変換し、(iv)アミン水和物化合物との反応により、前記第一級フタルイミド末端ポリイソブチレン化合物を第一級アミン末端化合物へと変換し、(v)前記第一級アミン末端ポリイソブチレンを回収することを含む、第一級アミン末端ポリイソブチレン化合物の製造方法に関する。
【0019】
さらに別の実施形態では、本発明は、下記の式で表される第一級アミン末端ポリイソブチレン化合物に関する。
【0020】
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−R−NH
[式中、〜〜〜は直鎖状分子、星型状分子、ハイパーブランチ状分子、または樹枝状分子の残部を表し、nは2から約5000の整数であり、Rは末端に二重結合を有し、対応する直鎖状または分岐状の炭素数3〜12のアルケニル基から形成される、直鎖状または分岐状の炭素数3〜12の結合であり、前記第一級アミン末端ポリイソブチレンは、少なくとも2つの第一級メタクリレート末端を有する。]
【0021】
さらに別の実施形態では、本発明は、少なくとも2つのアルケニル末端を有するアルケニル末端ポリイソブチレンを供給し、前記アルケニル末端は、末端に二重結合を有し、直鎖状または分岐状の炭素数3〜12のアルケニル基から形成され、アルケニル末端ポリイソブチレンに対してアンチマルコニコフ臭素化を行い、少なくとも2つの第一級臭素末端を有する第一級臭素末端ポリイソブチレンを形成し、前記第一級臭素末端ポリイソブチレンを回収することを含む、第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物の製造方法に関する。
【0022】
さらに別の実施形態では、本発明は、下記の式で表される第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物に関する。
【0023】
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−R−Br
[式中、〜〜〜は直鎖状分子、星型状分子、ハイパーブランチ状分子、または樹枝状分子の残部を表し、nは2から約5000の整数であり、Rは末端に二重結合を有し、対応する直鎖状または分岐状の炭素数3〜12のアルケニル基から形成される、直鎖状または分岐状の炭素数3〜12の結合であり、前記第一級臭素末端ポリイソブチレンは、少なくとも2つの第一級臭素末端を有する。]
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】アームセグメントがアリル基(*−(PIB−アリル))で末端化された3つのアーム星型状PIB分子のH−NMRスペクトルである。
【図1B】アームセグメントが第一級臭素(−CH−Br)で末端化された3つのアーム星型状PIB分子のH−NMRスペクトルである。
【図2】フタルイミド−テレケリック(telechelic)ポリイソブチレンのH−NMRスペクトルである。
【図3】アミン−テレケリックポリイソブチレンのH−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は一般に、アルコール末端ポリイソブチレン(PIB)化合物、ならびにそのような化合物を製造する方法に関する。一実施形態では、本発明は、第一級アルコール末端ポリソブチレン化合物およびそのような化合物の製造方法に関する。別の実施形態では、本発明はポリウレタンを合成するのに使用可能なポリイソブチレン化合物、そのようなポリイソブチレン化合物の使用により製造されたポリウレタン化合物、ならびにそのような化合物の製造方法に関する。さらに別の実施形態では、本発明は、2以上の第一級アルコール末端を有する、第一級アルコール末端ポリソブチレン化合物、ならびにそのような化合物を製造する方法に関する。さらなる別の実施形態では、本発明は、アミン基またはメタクリレート基から選択される2以上の第一級末端を有する、第一級末端ポリソブチレン化合物に関する。
【0026】
本発明は特に、様々なPIB分子末端を1つの−CH−CH−CH−OH基を用いて製造する方法を開示する。むしろ、本発明は、幅広い種類のPIB分子配置を製造するために使用することができ、そのような分子は1以上の第一級アルコールで末端化されている。
【0027】
一実施形態では、本発明において末端器として使用することができる第一級アルコールは限定されないが、炭素数1から約12(または炭素数1から約10、または炭素数1から約8、または炭素数1から約6、または炭素数2から約5)の直鎖状または分岐状の第一級アルコール置換基を含む。本願において、明細書および特許請求の範囲のいずれにおいても、個々の範囲の限界を組み合わせて、他の非開示の範囲限度を形成することができる。
【0028】
一実施形態では、本発明は直鎖状、星型状、ハイパーブランチ状、または樹枝状のPIB化合物に関し、このような化合物は1以上の第一級アルコール末端セグメントを有する。このような分子配置は当該分野で知られており、本明細書での検討は簡略化のため省略する。他の実施形態では、本発明は、中央の環状基(例えば芳香基)を含む星型分子に関し、3つ以上の第一級アルコール末端PIBアーム(arm)が付加されている。
【0029】
以下の実施例は性質の例示であり、本発明を限定するものではない。むしろ、上述したように、本発明は、PIB化合物およびPIB化合物から製造されるポリウレタン化合物の生産および/または製造に関する。
【実施例】
【0030】
以下の実施例は、第一級水酸基末端ポリイソブチレンの三段階での合成に関する。
【0031】
1.3つのアリル末端PIBアーム(*−(PIB−アリル))を用いた星型分子の調製
The Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry,25,pp.3255〜3265(1987)において、Lech WilczekおよびJoseph P.Kennedyによって記述された方法にしたがって、*−(PIB−アリル)を合成した。当該文献はこの参照によって本明細書に含まれる。
【0032】
第1の工程は、乾燥ボックス内でのNブランケット中で1,3,5−トリ(2−メトキシイソプロピル)ベンゼン/TiClシステムによって,イソブチレンをtert−塩素末端PIBと重合することを含む。次に、オーバーヘッド攪拌機を備えた500mL三ツ口丸底ガラス製フラスコに、混合溶媒(n−ヘキサン/塩化メチル,60/40 v/v)、2,6−ジ−t−ブチルピリジン(0.007M)、1,3,5−トリ(2−メトキシイソプロピル)ベンゼン(0.0044M)、およびイソブチレン(2M)を−76℃で添加する。TiCl(0.15M)を素早く添加して重合を誘発する。10分間攪拌した後、形成される*−(PIB−Cl)のtert−塩素末端基に対して3倍モル超のアリルトリメチルシラン(AllylSiMe)を添加して、反応を終了させる。−76℃でさらに60分間攪拌した後、数mlのNaHCO水溶液を導入して、系を不活性化し、(アリル末端ポリイソブチレン)生成物を単離する。収量は28g(理論値の85%)であり、Mnは3000g/mlである。
【0033】
2.*−(PIB−CH−CH−CH−Br))の調製:*−(PIB−アリル)へのHBrのアンチマルコフニコフ付加
100mlの三ツ口フラスコに、ヘキサン(50mL)およびアリル−テレケリック ポリイソブチレン(10g)を入れ、100℃で空気を溶液に30分間吹き込んで、アリル末端基を活性化する。次に、溶液を約−10℃に冷却して、HBrガスを系に10分間吹き込む。
【0034】
乾燥HBrは、臭化水素水溶液(47%)と硫酸(95〜98%)との反応によって生成される。溶液をNaHCO水溶液(10%)で中和した後、生成物を水で3回洗浄する。最後に、溶液を少なくとも12時間(すなわち一晩)硫酸マグネシウム存在下で乾燥させ、濾過する。次いで、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去する。生成物は透明な粘性のある液体である。
【0035】
図1Aは、アリル末端PIBのH−NMRスペクトルを示し、図1Bは、臭素末端PIB生成物のH−NMRスペクトルである。図1Aおよび図1Bに対する式および基の同定は以下の通りである。
【0036】
【化2】

[式中、nは2から約5,000の整数、または約7から約4,500の整数、または約10から約4,000の整数、または約15から約3,500の整数、または約25から約3,000の整数、または約75から約2,500の整数、または約100から約2,000の整数、または約250から約1,500の整数、または約500から約1,000の整数である。]
【0037】
本願において、明細書および特許請求の範囲のいずれにおいても、個々の範囲の限界を組み合わせて、他の非開示の範囲限度を形成することができる。
【0038】
本明細書に開示されるアルコール末端ポリイソブチレン生産プロセスにおいて、本発明は上述したアリル末端化合物の仕様に単に限定されないことを留意すべきである。あるいは、他の直鎖状または分岐状の炭素数3〜12(または炭素数4〜10または炭素数5〜7)のアルケニル基を用いることもでき、このようなアルケニル基は、鎖の末端に存在する1つの二重結合と同じ長さである。本願において、明細書および特許請求の範囲のいずれにおいても、個々の範囲の限界を組み合わせて、他の非開示の範囲限度を形成することができる。
【0039】
上述したアルケニル基に関するさらなる実施例として、末端二重結合の位置を示すのに下記の一般式を用いる。
【0040】
−R=CH
[式中、Rは上述した直鎖状または分岐状アルケニル基の残部である。]
他の実施形態では、本発明のアルケニル基は1つの二重結合のみを含み、この二重結合は上述したように、鎖の末端に存在する。
【0041】
スペクトル(A)の5ppmに存在するオレフィン性(アリル)プロトンは、スペクトル(B)に示されるように、アンチマルコフニコフ臭素化によって完全に消失する。1,3,5−トリ(2−メトキシイソプロピル)ベンゼン(開始剤残渣)中に存在する芳香族プロトンは内部標準として機能する。したがって、開始剤フラグメントで3つの芳香族プロトンに関する−PIB−CH−CHCH−Brの末端メチレンプロトンの積算は、定量的な官能性情報を提供する。アリル基および/または第二級臭素の完全な不在は、アンチマルコフニコフ生成物である、目的の*−(PIB−CH−CH−CH−Br)への実質的に100%の変換を示唆する。
【0042】
3.*−(PIB−CH−CH−CH−Br)から*−(PIB−CH−CH−CH−OH)への調製
末端臭素化生成物の末端第一級水酸基への変換は、臭素上への求核置換によって行なわれる。攪拌機を備えた丸底フラスコに、*−(PIB−CH−CH−CH−Br)のTHF溶液を入れる。次に、NaOH水溶液を添加し、室温で2時間攪拌する。任意に、テトラエチルアンモニウムブロマイドなどの相間移動触媒を反応促進のために使用することができる。次に、生成物を水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて一晩乾燥し、濾過する。最後に、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去する。生成物は透明な粘性のある液体である。
【0043】
別の実施形態では、本発明はハロゲン末端PIB(例えば、上述した臭素含有化合物よりも塩素末端PIB)を製造するための方法に関する。これらのハロゲン末端PIBはまた、上述した方法に使用して、第一級アルコール末端PIBへと変換することができる。また、上述したように、本発明は、メタクリレート(塩化メタクリロイルとの反応を経て)、疎水性接着剤(例えばシアノアクリレート誘導体)、エポキシ樹脂、ポリエステルなどの他の様々な重合性末端生成物と同様に、ポリウレタンの製造におけるこのようなPIB化合物の使用に関する。
【0044】
さらに別の実施形態では、本発明の第一級ハロゲン末端PIB化合物を、末端エポキシ基、アミン基などを含むPIB化合物へと変換することができる。第一級ハロゲン末端PIB化合物を安価に調製するための従前の試みは効果に乏しく、第三級末端ハロゲン原子を有する化合物が得られるのみである。
【0045】
上述したように、第一級アルコール末端PIBは、慣用的な技術による反応、すなわち、公知のイソシアネート(例えば、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート,MDI)および鎖延長剤(例えば、1,4−ブタンジオール,BDO)の使用によりポリウレタンを調製するのに有用な中間体である。これらのポリウレタン(PU)は、生物学的に安定なPIBセグメントにより生物学的安定性が付与される。そのうえ、PIBは生体適合性で知られており、本発明のPIB化合物から製造されるポリウレタンは新規でありかつ生体適合性を有する。
【0046】
第一級末端水酸基はさらに誘導体化されて、付加的に有用な誘導体が得られる。例えば、第一級末端水酸基は、生体組織に接着することができる末端シアノアクリレート基に変換することができ、この方法にて、新しい組織接着剤を調製することができる。
【0047】
一実施形態では、出発物質のPIBセグメントはモノ−,ジ−,トリ−およびマルチ官能性であることができ、この方法にて、ジ−末端、トリ−末端、または他のPIB誘導体を調製することができる。別の実施形態では、本発明は、α,ωジ−末端(テレケリック)、トリ−末端、または他のPIB誘導体を調製することができる。大部分の興味深いPIB出発物質の一つは、多くの第一級ハロゲン末端を有することができる樹枝状PIB(arb−PIB)であり、樹枝状PIBはいずれも、第一級アルコール基へと変換することができる。
【0048】
別の実施形態では、下記の式が、本発明により生成することができるプロセスおよび化合物を示す。一般的なルールによれば、下記の反応はすべて、95%以上の変換率で実行可能である。
【0049】
(A)カチオン性リビングイソブチレン重合は、例えば、tert−Cl末端PIB鎖である第1の中間体
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−CH−C(CH−Cl (A)
[式中、〜〜〜は直鎖状分子、星型状分子、ハイパーブランチ状分子、または樹枝状分子の残部を表し、nは上述した通りである。当業者に明らかなように、実質的に直鎖状のジ末端第一級アルコールPIBの生成を認めるために、場合によって、〜〜〜は他の塩素原子を示してもよい。また、本発明は、繰り返しPIB単位と本発明の分子の残部との間は、上述した特定の結合基(すなわち−C(CH)に限定されない点に留意すべきである。
【0050】
(B)第2の工程は、(A)の脱水素化により、以下に示す第2の中間体を得ることである。
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−CH−CH(CH)=CH (B)
【0051】
(C)第3の工程は、(B)のアンチマルコフニコフ臭素化により、以下に示す第一級臭素化物を得ることである。
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−CH−CH(CH)−CH−Br (C)
【0052】
(D)第4の工程は、塩基(例えば、NaOH、KOH、またはtert−BuONa)の使用によって、第一級臭素を下記の式による第一級水酸基へと変換することである。
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−CH−CH(CH)−CH−OH (D)
【0053】
別の実施形態では、本発明に係る第一級アルコール末端PIB化合物を生産するために、下記の反応工程を使用することができる。
【0054】
(B’)脱水素化のかわりに、(B)に示されるように、トリメチルアリルシランなどのアリルシランを使用して、アリル末端PIBを調製することができる。
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−CH−CH=CH (B’)
【0055】
(C’)上述の(C)に示される反応に類似して、前記(B’)中間体は、アンチマルコフニコフ反応により、第一級臭素化物に変換され、下記の化合物が得られる。
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−CH−CH−CH−Br (C’)
【0056】
(D’)上述したように、(C’)は第一級アルコール末端化合物に変換され、下記の化合物が得られる。
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−CH−CH−CH−OH (D’)
【0057】
上述したように、別の実施形態においては、本発明は、アミン基またはメタクリレート基から選択される2以上の第一級末端を有する第一級末端ポリイソブチレン化合物に関する。また、本発明の他の実施形態においては、以下の実施形態は、上述した定義と同様の分子のPIB部分における繰り返し単位の数とともに、直鎖状、星型状、ハイパーブランチ状、または樹枝状分子に適用することができる。
【0058】
4.ポリイソブチレンメタクリレートマクロ分子(PIB−(CH=MA):
第一級メタクリレート末端ポリイソブチレンの合成は、以下に示す例示反応スキームにしたがって実行される。
【0059】
【化3】

【0060】
1.0グラムのPIB−(CH−Br(Mn=5160g/molおよびMw/Mn=1.065)を20mLのTHFに溶解させ、10mLのNMPを添加して、媒体の極性を増加させた。この溶液に1グラムのメタクリル酸ナトリウムを添加し、この混合物を80℃で18時間還流させた。50mlのヘキサンを添加して希釈し、過剰の水で3回洗浄した。有機層を分離し、蒸留水で3回洗浄し、硫酸マグネシウム存在下で乾燥させた。ヘキサンをロータリーエバポレーターで除去し、得られたポリマーを真空下で乾燥して、0.95グラムのPIB−(CH−MAを得た(95%)。
【0061】
上述の実施形態はメタクリル酸ナトリウムの使用のみに限定されず、他の適切なメタクリレート化合物を使用することができる。そのような化合物は限定されないが、アルカリメタクリレート化合物を含む。
【0062】
また、本発明は、本明細書で開示されたメタクリレート末端ポリイソブチレンの製造方法におけるアリル末端化合物の使用のみに限定されない。あるいは、炭素原子数3〜12、炭素原子数4〜10、または炭素原子数5〜7の直鎖状または分岐状のアルケニル基を使用することができ、このようなアルケニル基は、鎖の末端に存在する1つの二重結合と同じ長さである。本願において、明細書および特許請求の範囲のいずれにおいても、個々の範囲の限界を組み合わせて、他の非開示の範囲限度を形成することができる。
【0063】
上述したアルケニル基に関するさらなる実施例として、末端二重結合の位置を示すのに下記の一般式を用いる。
【0064】
−R=CH
[式中、Rは上述した直鎖状または分岐状アルケニル基の残部である。]
他の実施形態では、本発明のアルケニル基は1つの二重結合のみを含み、この二重結合は上述したように、鎖の末端に存在する。
【0065】
5.アミン末端ポリイソブチレン(PIB−(CH−NH
本実施形態においては、PIB−(CH−NHの合成は2つの工程を含む:
(a)末端第一級臭素をフタルイミド末端ポリイソブチレン(PIB−(CH−NH)に置換すること、ならびに(b)フタルイミド末端ポリイソブチレン(PIB−(CH−フタルイミド)を第一級アミン末端ポリイソブチレン(PIB−(CH−NH)へとヒドラジン分解すること。
【0066】
(a)フタルイミド末端ポリイソブチレン(PIB−(CH−フタルイミド)の合成
フタルイミド末端ポリイソブチレン(PIB−(CH−フタルイミド)の合成は、下記の反応スキームにしたがって実行される。
【0067】
【化4】

【0068】
1.0グラムのPIB−(CH−Br(Mn=5160g/molおよびMw/Mn=1.06)を20mLのTHFに溶解させ、10mLのNMPを添加して、媒体の極性を増加させた。この溶液に1.0グラムのフタルイミドカリウムを添加し、この混合物を80℃で4時間還流させた。50mlのヘキサンを添加して希釈し、過剰の水で3回洗浄した。有機層を分離し、蒸留水で3回洗浄し、硫酸マグネシウム存在下で乾燥させた。ヘキサンをロータリーエバポレーターで除去し、得られたポリマーを真空下で乾燥して、0.97グラムのPIB−(CH−フタルイミドを得た。
【0069】
(b)第一級アミン末端ポリイソブチレン(PIB−(CH−NH)の合成
アミン末端ポリイソブチレン(PIB−(CH−NH)の合成は、下記の反応スキームにしたがって実行される。
【0070】
【化5】

【0071】
1.0グラムのPIB−(CH−フタルイミドを20mLのヘプタンおよび20mlのエタノール混合物に溶解させ、3グラムのヒドラジン水和物を添加した。この混合物を105℃で5時間還流させた。次に、50mlのヘキサンを添加して希釈し、過剰の水で3回洗浄した。有機層を分離し、蒸留水で3回洗浄し、硫酸マグネシウム存在下で乾燥させた。ヘキサンをロータリーエバポレーターで除去し、得られたポリマーを真空下で乾燥して、0.96グラムのPIB−(CH−NHを得た。
【0072】
本発明は、本明細書で開示されたアミン末端ポリイソブチレンの製造方法におけるアリル末端化合物の使用のみに限定されない。あるいは、炭素原子数3〜12、炭素原子数4〜10、または炭素原子数5〜7の直鎖状または分岐状のアルケニル基を使用することができ、このようなアルケニル基は、鎖の末端に存在する1つの二重結合と同じ長さである。本願において、明細書および特許請求の範囲のいずれにおいても、個々の範囲の限界を組み合わせて、他の非開示の範囲限度を形成することができる。
【0073】
上述したアルケニル基に関するさらなる実施例として、末端二重結合の位置を示すのに下記の一般式を用いる。
【0074】
−R=CH
[式中、Rは上述した直鎖状または分岐状アルケニル基の残部である。]
他の実施形態では、本発明のアルケニル基は1つの二重結合のみを含み、この二重結合は上述したように、鎖の末端に存在する。
【0075】
他の実施形態では、本発明は、以下の式に示されるように、少なくとも2つの第一級臭素末端を有するポリイソブチレンに関する。
【0076】
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−R−Br
[式中、〜〜〜は直鎖状分子、星型状分子、ハイパーブランチ状分子、または樹枝状分子の残部を表し、nは上述した通りである。当業者に明らかなように、実質的に直鎖状のジ末端第一級アルコールPIBの生成を認めるために、場合によって、〜〜〜は他の臭素原子を示してもよい。上述の式において、Rは、本発明にしたがって、適切なアルケニル末端化合物をアンチマルコニコフ臭素化した後に残ったアルケニル基の残部を表す。当業者に明らかなように、Rは、直鎖状または分岐状の炭素数3〜12、炭素数4〜10または炭素数5〜7のアルケニル基(上述したように、鎖の末端に存在する二重結合を有する、ただ1つの二重結合を有する「出発物質」のアルケニル基の結果)であってもよい。他の実施形態によれば、Rは、直鎖状または分岐状の炭素数3〜12、炭素数4〜10または炭素数5〜7のアルケニル基(上述したように、鎖の末端に存在する二重結合の1つを有する、2以上の二重結合を有する「出発物質」のアルケニル基の結果)であってもよい。
【0077】
様々なポリマー化合物の製造におけるテレケリックアミンおよびアルコールPIBの使用
別の実施形態によれば、本発明は、所定量の官能性第一級(−NH)、第二級(−NH−R)、または第三級(=N−R)アミン末端基を有するアミン−テレケリックポリイソブチレン(PIB)に関し、Rは上述したとおりである。さらに別の実施形態では、本発明は、所定量の官能性第一級アルコール末端基(OH)を有するアルコール−テレケリックPIBに関する。
【0078】
「テレケリック」という用語(ギリシャ語から「telos」=「遠い」、「chelos」=「爪(引っ掻く)」)は、ポリマー分子の各末端は官能性末端が付加されていることを意味する。本発明の一実施形態において、本発明の官能性末端はヒドロキシル末端基またはアミン末端基である。本発明の別の実施形態では、ヒドロキシル−テレケリックまたはアミン−テレケリックPIB分子の各末端は1.0±0.05個の官能基を有する(すなわち、全部で2.0±0.05個、すなわち、95モル%以上)。
【0079】
上述したように、一実施形態において、本発明は、第一級(−NH)、第二級(−NH−R)、または第三級(=N−R)アミン末端基を有するアミン末端化テレケリックポリイソブチレン(PIB)に関し、Rは直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30のアルケニル基、および直鎖状または分岐状の炭素数2〜30のアルキニル基から選択される。別の実施形態において、Rは直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜20のアルケニル基、および直鎖状または分岐状の炭素数2〜20のアルキニル基から選択される。さらに別の実施形態において、Rは直鎖状または分岐状の炭素数1〜10のアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10のアルケニル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10のアルキニル基、または直鎖状または分岐状の炭素数1〜5のアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜6のアルケニル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜6のアルキニル基から選択される。本願において、明細書および特許請求の範囲のいずれにおいても、個々の範囲の限界を組み合わせて、他の非開示の範囲限度を形成することができる。
【0080】
さらに他の実施形態において、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、またはブチル基のいずれかから選択されるか、またはメチル基またはエチル基のいずれかから選択される。
【0081】
最も単純なテレケリックPIB分子は、ジテレケリック構造である。例えば、分子の一端に1つのNH基が結合したPIB:HN−PIB−NHである。ただ1つの−NH末端(すなわちPIB−NH)を有するPIBは当業者に知られている定義内でのアミン−テレケリックPIBではない。3つのアームの星型アミン−テレケリックPIB(トリテレケリックPIB)は3つの−NH基を有し、各アームの末端に1つの−NH基を有し、Rはトリ(3)置換芳香族基から選択される。別の実施形態では、3つのアームの星型アミン−テレケリックPIBの場合、Rは3つのPIB−NH基で3置換が可能な適切な官能基であってもよい。すべての枝の末端は−NH末端(マルチ−テレケリックPIB)を有するため、ハイパーブランチ状または樹枝状アミン−テレケリックPIBは多くの−NH末端を有する。別の実施形態では、上述した第一級NH基は、上述したRを有する第二級(−NH−R)または第三級(=N−R)アミンによって置換することができる。
【0082】
1つの鎖末端につき約1.0±0.05個未満の水酸基またはアミン基を有する分子、ならびに1つの鎖末端につき約1.0±0.05個未満の水酸基またはアミン基を得る合成方法は、ポリウレタンおよび/またはポリウレアの生産に使用するための化合物の生産に実用的な利益が殆どまたは全くない。これらのテレケリックPIBはポリウレタンおよびポリウレアの生産のための中間体として使用できるよう設計されているため、この厳しい要求を満たさなければならず、最適な機械的特性を有するポリウレタンおよび/またはポリウレア化合物の調製には、正確な出発材料の立体化学が必要とされる。正確な(すなわち約1.0±0.05)末端基の官能性がないと、高品質のポリウレタンおよびポリウレアの調製を行うことができない。
【0083】
ヒドロキシ−ジテレケリックPIB(すなわちHO−PIB−OH)およびジイソシアナート(例えばMDI)の反応によって得られるポリマーは、ウレタン(カルバメート)結合を有し、ポリウレタンと呼ばれ、この場合、〜〜〜はポリウレタン分子の残部を表す。
【0084】
〜〜〜OH+OCN〜〜〜 → 〜〜〜O−CO−NH〜〜〜
同様に、アミン−ジテレケリックPIB(すなわちHN−PIB−NH)およびジイソシアナートによって調製されたポリマーは、ウレア結合を有し、ウレアと呼ばれ、この場合、〜〜〜はポリウレア分子の残部を表す。
【0085】
〜〜〜NH+OCN〜〜〜 → 〜〜〜NH−CO−NH〜〜〜
低コストで商業的に実現可能性がある簡単な合成のみが検討されるため、最終的には、出発材料コストおよび手順によって決定されるように、生成物の総コストは決定的な重要性を有する。
【0086】
本発明は具体的には、少なくとも2つのアルコール基またはアミン基を有する様々なアルコール−テレケリックPIBおよびアミン−テレケリックPIBの製造方法を開示するが、本発明はこれらの限定されない。むしろ、本発明は様々な種類のPIB分子配置を生成するために使用することができ、このような分子は2以上の第一級アルコールまたは2以上のアミン基(第一級アミン基、第二級アミン基、または第三級アミン基)で末端化される。
【0087】
一実施形態では、本発明における末端基として使用可能な第一級アルコールは限定されないが、炭素原子数1から約12(または炭素原子数1から10、または炭素原子数1から8、または炭素原子数1から6、または炭素原子数2から5)を有する直鎖状または分岐状の第一級アルコール置換基を含む。本願において、明細書および特許請求の範囲のいずれにおいても、個々の範囲の限界を組み合わせて、他の非開示の範囲限度を形成することができる。
【0088】
別の実施形態において、本発明は直鎖状、星型状、ハイパーブランチ状、または樹枝状のPIB化合物に関し、このような化合物は2以上の第一級アルコール末端化セグメント、第一級アミン末端化セグメント、または第一級アミン含有セグメントを有する。このような分子配置は当該分野で知られており、本明細書での検討は簡略化のため省略する。他の実施形態では、本発明は、中央の環状基(例えば芳香基)を含む星型分子に関し、3つ以上の第一級アルコール末端PIBアーム(arm)、または3つ以上の第一級アミン含有PIBアーム(arm)が付加されている。
【0089】
以下の実施例は性質の例示であり、本発明を限定するものではない。むしろ、上述したように、本発明は、様々な第一級アルコール末端PIB化合物および該PIB化合物から製造されるポリウレタン化合物の生産および/または製造に関する。
【0090】
[実施例]
以下の実施例は、第一級水酸基末端ポリイソブチレンの三段階での合成に関する。
【0091】
1.3つのアリル末端PIBアーム(*−(PIB−アリル))を用いた星型分子の調製
The Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry,25,pp.3255〜3265(1987)において、Lech WilczekおよびJoseph P.Kennedyによって記述された方法にしたがって、*−(PIB−アリル)を合成した。当該文献はこの参照によって本明細書に含まれる。
【0092】
第1の工程は、乾燥ボックス内でのNブランケット中で1,3,5−トリ(2−メトキシイソプロピル)ベンゼン/TiClシステムによって,イソブチレンをtert−塩素末端PIBと重合することを含む。次に、オーバーヘッド攪拌機を備えた500mL三ツ口丸底ガラス製フラスコに、混合溶媒(n−ヘキサン/塩化メチル,60/40 v/v)、2,6−ジ−t−ブチルピリジン(0.007M)、1,3,5−トリ(2−メトキシイソプロピル)ベンゼン(0.0044M)、およびイソブチレン(2M)を−76℃で添加する。TiCl(0.15M)を素早く添加して重合を誘発する。10分間攪拌した後、形成される*−(PIB−Cl)のtert−塩素末端基に対して3倍モル超のアリルトリメチルシラン(AllylSiMe)を添加して、反応を終了させる。−76℃でさらに60分間攪拌した後、数mlのNaHCO水溶液を導入して、系を不活性化し、(アリル末端ポリイソブチレン)生成物を単離する。収量は28g(理論値の85%)であり、Mnは3000g/mlである。
【0093】
2.*−(PIB−CH−CH−CH−Br))の調製:*−(PIB−アリル)へのHBrのアンチマルコフニコフ付加
100mlの三ツ口フラスコに、ヘキサン(50mL)およびアリル−テレケリック ポリイソブチレン(10g)を入れ、100℃で空気を溶液に30分間吹き込んで、アリル末端基を活性化する。次に、溶液を約−10℃に冷却して、HBrガスを系に10分間吹き込む。
【0094】
乾燥HBrは、臭化水素水溶液(47%)と硫酸(95〜98%)との反応によって生成される。溶液をNaHCO水溶液(10%)で中和した後、生成物を水で3回洗浄する。最後に、溶液を少なくとも12時間(すなわち一晩)硫酸マグネシウム存在下で乾燥させ、濾過する。次いで、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去する。生成物は透明な粘性のある液体である。
【0095】
図1Aは、アリル末端PIBのH−NMRスペクトルを示し、図1Bは、臭素末端PIB生成物のH−NMRスペクトルである。図1Aおよび図1Bに対する式および基の同定は以下の通りである。
【0096】
【化6】

[式中、nは2から約5,000の整数、または約7から約4,500の整数、または約10から約4,000の整数、または約15から約3,500の整数、または約25から約3,000の整数、または約75から約2,500の整数、または約100から約2,000の整数、または約250から約1,500の整数、または約500から約1,000の整数である。]
【0097】
本願において、明細書および特許請求の範囲のいずれにおいても、個々の範囲の限界を組み合わせて、他の非開示の範囲限度を形成することができる。
【0098】
本明細書に開示されるアルコール末端ポリイソブチレン生産プロセスにおいて、本発明は上述したアリル末端化合物の仕様に単に限定されないことを留意すべきである。あるいは、他の直鎖状または分岐状の炭素数3〜12(または炭素数4〜10または炭素数5〜7)のアルケニル基を用いることもでき、このようなアルケニル基は、鎖の末端に存在する1つの二重結合と同じ長さである。本願において、明細書および特許請求の範囲のいずれにおいても、個々の範囲の限界を組み合わせて、他の非開示の範囲限度を形成することができる。
【0099】
上述したアルケニル基に関するさらなる実施例として、末端二重結合の位置を示すのに下記の一般式を用いる。
【0100】
−R=CH
[式中、Rは上述した直鎖状または分岐状アルケニル基の残部である。]
他の実施形態では、本発明のアルケニル基は1つの二重結合のみを含み、この二重結合は上述したように、鎖の末端に存在する。
【0101】
スペクトル(A)の5ppmに存在するオレフィン性(アリル)プロトンは、スペクトル(B)に示されるように、アンチマルコフニコフ臭素化によって完全に消失する。1,3,5−トリ(2−メトキシイソプロピル)ベンゼン(開始剤残渣)中に存在する芳香族プロトンは内部標準として機能する。したがって、開始剤フラグメントで3つの芳香族プロトンに関する−PIB−CH−CHCH−Brの末端メチレンプロトンの積算は、定量的な官能性情報を提供する。アリル基および/または第二級臭素の完全な不在は、アンチマルコフニコフ生成物である、目的の*−(PIB−CH−CH−CH−Br)への実質的に100%の変換を示唆する。
【0102】
3.*−(PIB−CH−CH−CH−Br)から*−(PIB−CH−CH−CH−OH)への調製
末端臭素化生成物の末端第一級水酸基への変換は、臭素上への求核置換によって行なわれる。攪拌機を備えた丸底フラスコに、*−(PIB−CH−CH−CH−Br)のTHF溶液を入れる。次に、NaOH水溶液を添加し、室温で2時間攪拌する。任意に、テトラエチルアンモニウムブロマイドなどの相間移動触媒を反応促進のために使用することができる。次に、生成物を水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて一晩乾燥し、濾過する。最後に、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去する。生成物は透明な粘性のある液体である。
【0103】
別の実施形態では、本発明はハロゲン末端PIB(例えば、上述した臭素含有化合物よりも塩素末端PIB)を製造するための方法に関する。これらのハロゲン末端PIBはまた、上述した方法に使用して、第一級アルコール末端PIBへと変換することができる。また、上述したように、本発明は、メタクリレート(塩化メタクリロイルとの反応を経て)、疎水性接着剤(例えばシアノアクリレート誘導体)、エポキシ樹脂、ポリエステルなどの他の様々な重合性末端生成物と同様に、ポリウレタンの製造におけるこのようなPIB化合物の使用に関する。
【0104】
さらに別の実施形態では、本発明の第一級ハロゲン末端PIB化合物を、末端エポキシ基、アミン基などを含むPIB化合物へと変換することができる。第一級ハロゲン末端PIB化合物を安価に調製するための従前の試みは効果に乏しく、第三級末端ハロゲン原子を有する化合物が得られるのみである。
【0105】
上述したように、第一級アルコール末端PIBは、慣用的な技術による反応、すなわち、公知のイソシアネート(例えば、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート,MDI)および鎖延長剤(例えば、1,4−ブタンジオール,BDO)の使用によりポリウレタンを調製するのに有用な中間体である。これらのポリウレタン(PU)は、生物学的に安定なPIBセグメントにより生物学的安定性が付与される。そのうえ、PIBは生体適合性で知られており、本発明のPIB化合物から製造されるポリウレタンは新規でありかつ生体適合性を有する。
【0106】
第一級末端水酸基はさらに誘導体化されて、付加的に有用な誘導体が得られる。例えば、第一級末端水酸基は、生体組織に接着することができる末端シアノアクリレート基に変換することができ、この方法にて、新しい組織接着剤を調製することができる。
【0107】
一実施形態では、出発物質のPIBセグメントはモノ−,ジ−,トリ−およびマルチ官能性であることができ、この方法にて、ジ−末端、トリ−末端、または他のPIB誘導体を調製することができる。別の実施形態では、本発明は、α,ωジ−末端(テレケリック)、トリ−末端、または他のPIB誘導体を調製することができる。大部分の興味深いPIB出発物質の一つは、多くの第一級ハロゲン末端を有することができる樹枝状PIB(arb−PIB)であり、樹枝状PIBはいずれも、第一級アルコール基へと変換することができる。
【0108】
別の実施形態では、下記の式が、本発明により生成することができるプロセスおよび化合物を示す。一般的なルールによれば、下記の反応はすべて、95%以上の変換率で実行可能である。
【0109】
(A)カチオン性リビングイソブチレン重合は、例えば、tert−Cl末端PIB鎖である第1の中間体
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−CH−C(CH−Cl (A)
[式中、〜〜〜は直鎖状分子、星型状分子、ハイパーブランチ状分子、または樹枝状分子の残部を表し、nは上述した通りである。当業者に明らかなように、実質的に直鎖状のジ末端第一級アルコールPIBの生成を認めるために、場合によって、〜〜〜は他の塩素原子を示してもよい。また、本発明は、繰り返しPIB単位と本発明の分子の残部との間は、上述した特定の結合基(すなわち−C(CH)に限定されない点に留意すべきである。
【0110】
(B)第2の工程は、(A)の脱水素化により、以下に示す第2の中間体を得ることである。
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−CH−CH(CH)=CH (B)
【0111】
(C)第3の工程は、(B)のアンチマルコフニコフ臭素化により、以下に示す第一級臭素化物を得ることである。
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−CH−CH(CH)−CH−Br (C)
【0112】
(D)第4の工程は、塩基(例えば、NaOH、KOH、またはtert−BuONa)の使用によって、第一級臭素を下記の式による第一級水酸基へと変換することである。
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−CH−CH(CH)−CH−OH (D)
【0113】
別の実施形態では、本発明に係る第一級アルコール末端PIB化合物を生産するために、下記の反応工程を使用することができる。
【0114】
(B’)脱水素化のかわりに、(B)に示されるように、トリメチルアリルシランなどのアリルシランを使用して、アリル末端PIBを調製することができる。
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−CH−CH=CH (B’)
【0115】
(C’)上述の(C)に示される反応に類似して、前記(B’)中間体は、アンチマルコフニコフ反応により、第一級臭素化物に変換され、下記の化合物が得られる。
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−CH−CH−CH−Br (C’)
【0116】
(D’)上述したように、(C’)は第一級アルコール末端化合物に変換され、下記の化合物が得られる。
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−CH−CH−CH−OH (D’)
【0117】
上述したように、別の実施形態においては、本発明は、アミン基またはメタクリレート基から選択される2以上の第一級末端を有する第一級末端ポリイソブチレン化合物に関する。また、本発明の他の実施形態においては、以下の実施形態は、上述した定義と同様の分子のPIB部分における繰り返し単位の数とともに、直鎖状、星型状、ハイパーブランチ状、または樹枝状分子に適用することができる。
【0118】
4.HN−PIB−NHの構造、合成および同定
本例の詳細な構造であるアミン−ジテレケリックPIBは下記の式で定義される。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0119】
【化7】

[式中、nは2から約5,000の整数、または約7から約4,500の整数、または約10から約4,000の整数、または約15から約3,500の整数、または約25から約3,000の整数、または約75から約2,500の整数、または約100から約2,000の整数、または約250から約1,500の整数、または約500から約1,000の整数である。]
【0120】
本願において、明細書および特許請求の範囲のいずれにおいても、個々の範囲の限界を組み合わせて、他の非開示の範囲限度を形成することができる。
【0121】
(C)において上記に示した対応する臭素化構造から上記化合物を製造することができる。以下の化学式は上述の化合物に対する合成方法を要約する。
【0122】
【化8】

【0123】
【化9】

[式中、nは2から約5,000の整数、または約7から約4,500の整数、または約10から約4,000の整数、または約15から約3,500の整数、または約25から約3,000の整数、または約75から約2,500の整数、または約100から約2,000の整数、または約250から約1,500の整数、または約500から約1,000の整数である。]
【0124】
本願において、明細書および特許請求の範囲のいずれにおいても、個々の範囲の限界を組み合わせて、他の非開示の範囲限度を形成することができる。
【0125】
次に、反応条件Aは、30グラムのポリマー、150mlのヘプタン(103g)を110℃で30分間還流し、このポリマー溶液にHBrを0℃で5分間付加した。
【0126】
次に、上述したように、アリル−PIB−アリルをテレケリック第一級臭素化物であるBr−(CH−PIB−(CH−Brへと変換する。
【0127】
上記のプロセスに続いて、16グラムの臭素−ジテレケリックポリイソブチレン(0.003モル)を320mlのTHFに溶解させる。160mlのNM<Pおよびフタルイミドカリウム(2.2g、0.012モル)を溶液に添加する。次に、溶液を80℃で8時間還流させる。次に、生成物を100mlのヘキサンに溶解させ、水で3回抽出して、硫酸マグネシウム存在下で乾燥させる。中間体の構造はNHRスペクトルで同定される。図2は、フタルイミド−テレケリックポリイソブチレンのNHRスペクトルを同定とともに示す。
【0128】
次に、フタルイミド−テレケリックポリイソブチレン(14g、0.025モル)を280mLのヘプタンに溶解させ、280mlのエタノールおよびヒドラジン水和物(3.2g、0.1モル)を添加する。この溶液を110℃で6時間還流させる。生成物をヘキサンに溶解させ、水で3回洗浄し、硫酸マグネシウム存在下で乾燥させる。ヘキサンをロータリーエバポレーターで除去する。目的生成物の構造はNHRスペクトルで同定される。図3は、アミン−テレケリックポリイソブチレンのNHRスペクトルを同定とともに示す。
【0129】
5.PIB系ポリウレタンおよびポリウレアの合成および同定
(a)ポリウレア
(1)HO−PIB−OHの出発材料の合成
HO−PIB−OHの合成は以下の通りである。したがって、出発材料である市販されている(カネカインコーポレイテッド)アリル−ジテレケリックPIB(Mw=5,500)をヘプタンに溶解させ、70℃で30分間溶液にHBrをバブリングすることによって臭化水素化する。次に、生成物をTHFに溶解し、KOH水溶液およびn−メチルピロリドンを添加して、系を100℃で24時間還流させる。HO−PIB−OHの構造をプロトンNMRスペクトルによって確定する。
【0130】
(2)PIB系ポリウレタンの合成および酸化的安定性の同定
ポリウレタンは、メチレンビスビフェニルイソシアネート(MDI)とのHO−PIB−OHの反応によって得られる。下記の式は使用される合成戦略を示している:
【0131】
【化10】

【0132】
【化11】

【0133】
【化12】

[式中、nおよびmは独立して、2から約5,000の整数、または約7から約4,500の整数、または約10から約4,000の整数、または約15から約3,500の整数、または約25から約3,000の整数、または約75から約2,500の整数、または約100から約2,000の整数、または約250から約1,500の整数、または約500から約1,000の整数である。]
【0134】
本願において、明細書および特許請求の範囲のいずれにおいても、個々の範囲の限界を組み合わせて、他の非開示の範囲限度を形成することができる。
【0135】
次に、HO−PIB−OH(2.2g、Mn=5,500g/mol、水酸基当量0.0008モル)を乾燥トルエン(12ml)に溶解し、蒸留したてのMDI(0.3g、0.0012モルのイソシアネート)およびジオクタン酸錫(0.03ml)触媒を乾燥窒素雰囲気下で添加する。次いで、70℃で8時間これを加熱した後、室温まで冷却し、長方形のテフロン(商標)製鋳型に注ぐ(5cm×5cm)。系を一晩空気乾燥させ、乾燥オーブン内にて70℃で24時間乾燥させる。ポリウレタン生成物は薄い黄色のゴム状シートであり、THFに可溶である。手作業での実験では良好な機械的特性が確認された。
【0136】
ポリウレタンの酸化抵抗性は、25mlのガラス製バイアル内での濃縮硝酸(65%)中で、少量(約0.5g)の予め秤量されたサンプルによってテストされ、室温で系を穏やかに攪拌した。濃縮硝酸は、最も強くかつ腐食性の酸化剤のひとつであると認識されている。24時間後または48時間後に、サンプルの外観が視覚的に評価され、以下の式を用いて重量損失が重量分析的に決定された。
【0137】
loss=(W−W/W)100
[式中、Wlossはパーセント重量損失であり、WおよびWはそれぞれ、硝酸に曝す前のサンプルおよび硝酸に曝した後のサンプルである。]
【0138】
重量損失は、予め秤量されたサンプルを硝酸あら除去し、全体を水で洗浄し、重量が一定になるまで(約24時間)乾燥させてから秤量することにより決定された。比較のために、市販の別のポリウレタン(AorTech Biomaterial,Batch♯60802、E2Aペレットサンプル)を用いて、HO−PDMS−OHおよびMDIを用いて調製された「対照」ポリウレタンについても同じ手順を行った。
【0139】
対照のポリウレタンを以下の方法で調製した:1グラム(0.0002モル)のヒドロキシ−ジテレケリックポリジメチルシロキサン(DMS−C21,Gelest,Mn=4500−5500g/mol)を10mlのトルエンに溶解し、蒸留したてのMDI(0.11グラム、0.0002モル)および次いでオクタン酸錫(0.03ml)触媒を乾燥窒素雰囲気下で添加する。次いで、70℃で8時間これを加熱した後、室温まで冷却し、長方形のテフロン(商標)製鋳型に注ぐ(5cm×5cm)。系を一晩空気乾燥させ、乾燥オーブン内にて70℃で24時間乾燥させる。生成物は薄い黄色の柔らかいゴム状シートであり、THFに可溶である。手作業での実験では良好な機械的特性が確認された。
【0140】
表1は、PIB系ポリウレタン、PDMS系ポリウレタンおよびPIB系ポリウレアを用いて行われたアグレッシブ(aggressive)酸化分解試験の結果をまとめたものである。酸化剤は室温で65%のHNOである。
【0141】
【表1】

【0142】
データによれば、PIB系ポリウレタンおよびポリウレア(HO−PIB−OH/MDIおよびHN−PIB−NH/MDI)は、室温で濃縮HNOに曝してから24時間後に分解しなかった。酸化抵抗性は、ポリウレタンフィルムおよびポリウレアフィルムのごくわずかな重量損失によって証明された。濃縮HNOに曝してから48時間後に、PIB系ポリウレタンフィルムおよびPIB系ポリウレアフィルムの両方とも、濃茶色の退色を示し、サンプルの劣化が目視で確認された。一方、HO−PDMS−OH/MDIを用いて調製された対照のポリウレタンおよび市販のポリウレタン(すなわち、酸化的に高い安定性を有すると考えられている材料)は完全に分解し、4時間未満の曝露で当該酸に大きく溶解した。
【0143】
理論に拘泥するわけではないが、PIB系ポリウレタンならびに本発明の合成プロセスにしたがって形成されたポリウレタンの優れた酸化抵抗性は、脆いポリウレタン(カルバメート)およびウレア結合が、不活性のPIB鎖/領域によって保護されていることに大きく起因する。一方、PDMS鎖/領域は、強い酸化性の酸お攻撃に対する保護ができなかった。
【0144】
(b)ポリウレア
(1)PIB系ポリウレアの合成およびPIB系ポリウレアの酸化的安定性の証明
N−PIB−NH(1.5g、Mn=5,500g/mol、アミン当量0.00054モル)を乾燥トルエン(10ml)に溶解し、蒸留したてのMDI(0.125g、0.0005モル)を攪拌し、乾燥窒素雰囲気下で添加する。1分以内に溶液は粘性を示す。次いで、5mlのトルエンで希釈し、長方形のテフロン(商標)製鋳型に注ぐ(5cm×5cm)。系を一晩空気乾燥させ、乾燥オーブン内にて70℃で24時間乾燥させる。ポリウレア生成物は薄い黄色の柔らかいゴム状シートであり、THFに可溶である。手作業での実験では良好な機械的特性が確認された。
【0145】
ポリウレアの酸化抵抗性は、室温で濃縮硝酸にサンプルを曝すことによってテストされた(上述の表1参照)。濃縮硝酸は、表1の最後の欄はこの実施例に関連するデータを示す。結果として、PIB系ポリウレアは24時間における上述の厳しい条件下での酸化に耐久性を有する。
【0146】
本明細祖において説明した各種の実施形態を具体的に参照して本発明を説明したが、他の実施形態も同じ結果を達成することができる。本発明の変形および変更は当業者に明らかであり、添付する特許請求の範囲において、本発明はこのようなすべての変更および均等物を網羅することを意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも2つのアルケニル末端を有するアルケニル末端ポリイソブチレンを供給し、前記アルケニル末端は、末端に二重結合を有し、直鎖状または分岐状の炭素数3〜12のアルケニル基から形成され、
(B)アルケニル末端ポリイソブチレンに対してアンチマルコニコフ臭素化を行い、少なくとも2つの第一級臭素末端を有する第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物を形成し、
(C)塩基反応により、前記第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物を、少なくとも2つの第一級アルコール末端を有する第一級アルコール末端ポリイソブチレンへと変換し、
(D)前記第一級アルコール末端ポリイソブチレンを回収すること
を含む、第一級アルコール末端ポリイソブチレン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記アルケニル末端は、−CH−C(CH)=CHまたは−CH−CH=CHから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記工程(B)のアンチマルコニコフ臭素化は臭化水素を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第一級アルコール末端ポリイソブチレン化合物は直鎖状化合物である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記第一級アルコール末端ポリイソブチレン化合物は星型状化合物である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記第一級アルコール末端ポリイソブチレン化合物はハイパーブランチ状化合物である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記第一級アルコール末端ポリイソブチレン化合物は樹枝状化合物である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法によって製造された、第一級アルコール末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項9】
下記の式で表される第一級アルコール末端ポリイソブチレン化合物。
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−R−OH
[式中、〜〜〜は直鎖状分子、星型状分子、ハイパーブランチ状分子、または樹枝状分子の残部を表し、nは2から約5000の整数であり、Rは末端に二重結合を有し、対応する直鎖状または分岐状の炭素数3〜12のアルケニル基から形成される、直鎖状または分岐状の炭素数3〜12の結合であり、前記第一級アルコール末端ポリイソブチレンは、少なくとも2つの第一級アルコール末端を有する。]
【請求項10】
nが約7から約4,500の整数である、請求項9に記載の第一級アルコール末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項11】
nが約10から約4,000の整数である、請求項9に記載の第一級アルコール末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項12】
nが約15から約3,500の整数である、請求項9に記載の第一級アルコール末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項13】
nが約25から約3,000の整数である、請求項9に記載の第一級アルコール末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項14】
nが約75から約2,500の整数である、請求項9に記載の第一級アルコール末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項15】
nが約100から約2,000の整数である、請求項9に記載の第一級アルコール末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項16】
nが約250から約1,500の整数である、請求項9に記載の第一級アルコール末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項17】
nが約500から約1,000の整数である、請求項9に記載の第一級アルコール末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項18】
(a)少なくとも2つのアルケニル末端を有するアルケニル末端ポリイソブチレンを供給し、前記アルケニル末端は、末端に二重結合を有し、直鎖状または分岐状の炭素数3〜12のアルケニル基から形成され、
(b)アルケニル末端ポリイソブチレンに対してアンチマルコニコフ臭素化を行い、少なくとも2つの第一級臭素末端を有する第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物を形成し、
(c)少なくとも1つのアルカリ性メタクリレート化合物との反応により、前記第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物を、少なくとも2つの第一級メタクリレート末端を有する第一級メタクリレート末端ポリイソブチレンへと変換し、
(d)前記第一級メタクリレート末端ポリイソブチレンを回収すること
を含む、第一級メタクリレート末端ポリイソブチレン化合物の製造方法。
【請求項19】
前記アルケニル末端は、−CH−C(CH)=CHまたは−CH−CH=CHから選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記工程(b)のアンチマルコニコフ臭素化は臭化水素を使用する、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記第一級メタクリレート末端ポリイソブチレン化合物は直鎖状化合物である、請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記第一級メタクリレート末端ポリイソブチレン化合物は星型状化合物である、請求項18記載の方法。
【請求項23】
前記第一級メタクリレート末端ポリイソブチレン化合物はハイパーブランチ状化合物である、請求項18記載の方法。
【請求項24】
前記第一級メタクリレート末端ポリイソブチレン化合物は樹枝状化合物である、請求項18記載の方法。
【請求項25】
請求項18記載の方法によって製造された、第一級メタクリレート末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項26】
下記の式で表される第一級メタクリレート末端ポリイソブチレン化合物。
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−R−Ma
[式中、〜〜〜は直鎖状分子、星型状分子、ハイパーブランチ状分子、または樹枝状分子の残部を表し、nは2から約5000の整数であり、Rは末端に二重結合を有し、対応する直鎖状または分岐状の炭素数3〜12のアルケニル基から形成される、直鎖状または分岐状の炭素数3〜12の結合であり、Maはメタクリレート末端を表し、前記第一級メタクリレート末端ポリイソブチレンは、少なくとも2つの第一級メタクリレート末端を有する。]
【請求項27】
nが約7から約4,500の整数である、請求項26に記載の第一級メタクリレート末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項28】
nが約10から約4,000の整数である、請求項26に記載の第一級メタクリレート末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項29】
nが約15から約3,500の整数である、請求項26に記載の第一級メタクリレート末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項30】
nが約25から約3,000の整数である、請求項26に記載の第一級メタクリレート末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項31】
nが約75から約2,500の整数である、請求項26に記載の第一級メタクリレート末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項32】
nが約100から約2,000の整数である、請求項26に記載の第一級メタクリレート末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項33】
nが約250から約1,500の整数である、請求項26に記載の第一級メタクリレート末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項34】
nが約500から約1,000の整数である、請求項26に記載の第一級メタクリレート末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項35】
(i)少なくとも2つのアルケニル末端を有するアルケニル末端ポリイソブチレンを供給し、前記アルケニル末端は、末端に二重結合を有し、直鎖状または分岐状の炭素数3〜12のアルケニル基から形成され、
(ii)アルケニル末端ポリイソブチレンに対してアンチマルコニコフ臭素化を行い、少なくとも2つの第一級臭素末端を有する第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物を形成し、
(iii)少なくとも1つのアルカリ性フタルイミド化合物との反応により、前記第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物を、少なくとも2つの第一級フタルイミド末端を有する第一級フタルイミド末端ポリイソブチレンへと変換し、
(iv)アミン水和物化合物との反応により、前記第一級フタルイミド末端ポリイソブチレン化合物を第一級アミン末端化合物へと変換し、
(v)前記第一級アミン末端ポリイソブチレンを回収すること
を含む、第一級アミン末端ポリイソブチレン化合物の製造方法。
【請求項36】
前記アルケニル末端は、−CH−C(CH)=CHまたは−CH−CH=CHから選択される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記工程(ii)のアンチマルコニコフ臭素化は臭化水素を使用する、請求項35記載の方法。
【請求項38】
前記第一級アミン末端ポリイソブチレン化合物は直鎖状化合物である、請求項35記載の方法。
【請求項39】
前記第一級アミン末端ポリイソブチレン化合物は星型状化合物である、請求項35記載の方法。
【請求項40】
前記第一級アミン末端ポリイソブチレン化合物はハイパーブランチ状化合物である、請求項35記載の方法。
【請求項41】
前記第一級アミン末端ポリイソブチレン化合物は樹枝状化合物である、請求項35記載の方法。
【請求項42】
前記工程(iv)はヒドラジン水和物の使用を含む、請求項35記載の方法。
【請求項43】
請求項35記載の反応によって製造された、第一級アミン末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項44】
下記の式で表される第一級アミン末端ポリイソブチレン化合物。
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−R−NH
[式中、〜〜〜は直鎖状分子、星型状分子、ハイパーブランチ状分子、または樹枝状分子の残部を表し、nは2から約5000の整数であり、Rは末端に二重結合を有し、対応する直鎖状または分岐状の炭素数3〜12のアルケニル基から形成される、直鎖状または分岐状の炭素数3〜12の結合であり、前記第一級アミン末端ポリイソブチレンは、少なくとも2つの第一級メタクリレート末端を有する。]
【請求項45】
nが約7から約4,500の整数である、請求項44に記載の第一級アミン末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項46】
nが約10から約4,000の整数である、請求項44に記載の第一級アミン末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項47】
nが約15から約3,500の整数である、請求項44に記載の第一級アミン末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項48】
nが約25から約3,000の整数である、請求項44に記載の第一級アミン末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項49】
nが約75から約2,500の整数である、請求項44に記載の第一級アミン末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項50】
nが約100から約2,000の整数である、請求項44に記載の第一級アミン末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項51】
nが約250から約1,500の整数である、請求項44に記載の第一級アミン末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項52】
nが約500から約1,000の整数である、請求項44に記載の第一級アミン末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項53】
少なくとも2つのアルケニル末端を有するアルケニル末端ポリイソブチレンを供給し、前記アルケニル末端は、末端に二重結合を有し、直鎖状または分岐状の炭素数3〜12のアルケニル基から形成され、
アルケニル末端ポリイソブチレンに対してアンチマルコニコフ臭素化を行い、少なくとも2つの第一級臭素末端を有する第一級臭素末端ポリイソブチレンを形成し、
前記第一級臭素末端ポリイソブチレンを回収すること
を含む、第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物の製造方法。
【請求項54】
前記アルケニル末端は、−CH−C(CH)=CHまたは−CH−CH=CHから選択される、請求項53記載の方法。
【請求項55】
前記工程(ii)のアンチマルコニコフ臭素化は臭化水素を使用する、請求項53記載の方法。
【請求項56】
前記第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物は直鎖状化合物である、請求項53記載の方法。
【請求項57】
前記第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物は星型状化合物である、請求項53記載の方法。
【請求項58】
前記第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物はハイパーブランチ状化合物である、請求項53記載の方法。
【請求項59】
前記第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物は樹枝状化合物である、請求項53記載の方法。
【請求項60】
請求項53記載の反応によって製造された、第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項61】
下記の式で表される第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物。
〜〜〜C(CH−[CH−C(CH−R−Br
[式中、〜〜〜は直鎖状分子、星型状分子、ハイパーブランチ状分子、または樹枝状分子の残部を表し、nは2から約5000の整数であり、Rは末端に二重結合を有し、対応する直鎖状または分岐状の炭素数3〜12のアルケニル基から形成される、直鎖状または分岐状の炭素数3〜12の結合であり、前記第一級臭素末端ポリイソブチレンは、少なくとも2つの第一級臭素末端を有する。]
【請求項62】
nが約7から約4,500の整数である、請求項61に記載の第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項63】
nが約10から約4,000の整数である、請求項61に記載の第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項64】
nが約15から約3,500の整数である、請求項61に記載の第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項65】
nが約25から約3,000の整数である、請求項61に記載の第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項66】
nが約75から約2,500の整数である、請求項61に記載の第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項67】
nが約100から約2,000の整数である、請求項61に記載の第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項68】
nが約250から約1,500の整数である、請求項61に記載の第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物。
【請求項69】
nが約500から約1,000の整数である、請求項61に記載の第一級臭素末端ポリイソブチレン化合物。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2010−511745(P2010−511745A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539348(P2009−539348)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/024674
【国際公開番号】WO2008/066914
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(505395700)ザ ユニバーシティ オブ アクロン (20)
【氏名又は名称原語表記】The University of Akron
【住所又は居所原語表記】302 E. Buchtel Common, Akron, OH 44325 U.S.A.
【Fターム(参考)】