説明

ポリイソブチレン系ポリマー及びその誘導体を含んだ医療用器具

少なくとも一部がポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、又はポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体より形成される絶縁性リード本体を有する医療用電気リード。リード本体は、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、又はポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体より形成される少なくとも1つの外側管状絶縁及び/又は内部長尺上部材を含んでいてもよい。ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、又はポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体により形成されるリード本体の部分は押出成形されてもよいし、型成形されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用電気リードに関し、より詳細にはポリイソブチレン系のウレタン共重合体、尿素共重合体、及びウレタン/尿素共重合体及びその誘導体を含んだ医療用電気リード及びリード部品に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴム、ポリウレタン、及び他のポリマー等のポリマー材が医療用電気リードの絶縁材として用いられている。拍動管理システムにおいては、このようなリードは患者の心臓の上もしくは内部の植え込み位置まで血管内を延び、心臓電気活動の感知や治療的刺激の伝達等を行うパルス発生器に接続される。リードは患者の自然な動きを許容できるよう高い可撓性を有し、かつ、小径であることが好ましい。
【0003】
植え込み時及び植込み後において、リード及びリード本体は、人体の筋肉、骨格、血管系、体液、パルス発生器、他のリード、ならびに植え込み及び除去時に用いられる手術器具等の様々な外的条件に曝される。したがって、好適な可撓性を有するとともに小型であり、かつ、長期間にわたって様々な条件に対して耐性を有するリード本体の材料の特定が課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ポリイソブチレン系ポリマー及びその誘導体を含んだ医療用器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の実施形態は植え込み型医療用リードに関する。この植え込み型医療用リードは、ルーメンを有する長尺状のリード本体を備え、同ルーメン内には少なくとも1つの導体が配置され、少なくとも1つの電極が同導体に動作可能に接続されるとともにリード本体に沿って配置され、リード本体のショア硬度は30A〜75Dであり、リード本体は軟質ポリマーセグメントと硬質ポリマーセグメントとを含んだポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかを含む。軟質ポリマーセグメントはポリイソブチレンセグメントと、ポリエーテルジオール、フッ素化ポリエーテルジオール、フッ素ポリマージオール、ポリエステルジオール、ポリアクリレートジオール、ポリメタクリレートジオール、ポリシロキサンジオール、フッ化ポリシロキサンジオール、及びポリカーボネートジオールのいずれかの残留物を含む少なくとも1つの追加的ポリマーセグメントとを含む。ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体内の軟質セグメント対硬質セグメントの重量比は50:50乃至90:10である。
【0006】
第2の実施形態は第1の実施形態に記載の植え込み型医療用リードであって、ポリイソブチレンセグメント対追加的ポリマーセグメントの重量比が70:30乃至90:10である。
【0007】
第3の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、軟質ポリマーセグメントがポリイソブチレンセグメント、及びポリエーテルジオールの残留物を含む。
【0008】
第4の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、軟質ポリマーセグメントがポリイソブチレンセグメント、及びポリテトラメチレンオキシドジオールの残留物を含む。
【0009】
第5の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、ポリイソブチレンセグメント対ポリテトラメチレンオキシドジオールの重量比が70:30乃至90:10である。
【0010】
第6の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、ポリイソブチレンセグメントが飽和ポリイソブチレンジオールの残留物を含む。
第7の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、リード本体が内部ルーメンを有し、内部ルーメンの内面がポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかを含む。
【0011】
第8の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、導体が同径構造を有するコイル状導体であり、内面がコイル状導体の外面上に位置する。
【0012】
第9の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、リード本体が内側管状層及び外側管状層を有し、同内側管状層及び外側管状層の少なくとも一方がポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかを含む。
【0013】
第10の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、同軸構造を有する第1コイル状導体及び第2コイル状導体を有し、内側管状層が同第1コイル状導体及び第2コイル状導体の間に配置され、外側管状層が第2コイル状導体の上に配置される。
【0014】
第11の実施形態は植え込み型医療用リードに関する。この植え込み型医療用リードはルーメンを有する長尺状のリード本体を備え、同ルーメン内には少なくとも1つの導体が配置され、少なくとも1つの電極が同導体に動作可能に接続されるとともにリード本体に沿って配置される。リード本体は基端側領域、中間領域、及び先端側領域のそれぞれにおいてポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかを含む。基端側領域は第1のショア硬度を有し、中間領域は第2のショア硬度を有し、先端側領域は第3のショア硬度を有する。ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体は軟質ポリマーセグメント及び硬質ポリマーセグメントを含み、同軟質ポリマーセグメントはポリイソブチレンセグメントと、ポリエーテルジオール、フッ素化ポリエーテルジオール、フッ素ポリマージオール、ポリエステルジオール、ポリアクリレートジオール、ポリメタクリレートジオール、ポリシロキサンジオール、フッ化ポリシロキサンジオール、及びポリカーボネートジオールのいずれかの残留物を含む少なくとも1つの追加的ポリマーセグメントとを含む。
【0015】
第12の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、先端側領域のショア硬度が30A〜70Aである。
第13の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、中間領域のショア硬度が60A〜85Aである。
【0016】
第14の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、基端側領域のショア硬度が85A〜100Aである。
第15の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、基端側領域、中間領域、及び先端領域の追加的ポリマーセグメントがポリテトラメチレンオキシドジオールの残留物を含む。
【0017】
第16の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、基端側領域、中間領域、及び先端領域中のポリイソブチレンセグメント対ポリテトラメチレンオキシドジオールの重量比が70:30乃至90:10である。
【0018】
第17の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかにおいて軟質ポリマーセグメント対硬質ポリマーセグメントの重量比が50:50乃至90:10である。
【0019】
第18の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、基端側領域が、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかにおける軟質ポリマーセグメント対硬質ポリマーセグメントの第1の重量比を有し、中間領域が、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかにおける軟質ポリマーセグメント対硬質ポリマーセグメントの第2の重量比を有し、先端側領域が、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかにおける軟質ポリマーセグメント対硬質ポリマーセグメントの第3の重量比を有する。
【0020】
第19の実施形態は、植え込み型医療用リードに関する。この植え込み型医療用リードは、内部に少なくとも1つのルーメンが長手方向に延びる内部管状部品を含むとともに可撓性を有する長尺状のリード本体と、内部管状部品の少なくとも1つのルーメン内を延び、リード本体に対して露出された面を含む電極を有する少なくとも1つの導体と、リード本体、導体、及び電極の少なくともいずれかに接続される少なくとも1つのポリマー部品とを備える。少なくとも1つのポリマー部品は、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかを含み、同ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体は硬質ポリマーセグメント及び軟質ポリマーセグメントを含む。軟質ポリマーセグメントはポリイソブチレンセグメントと、ポリエーテルジオール、フッ素化ポリエーテルジオール、フッ素ポリマージオール、ポリエステルジオール、ポリアクリレートジオール、ポリメタクリレートジオール、ポリシロキサンジオール、フッ化ポリシロキサンジオール、及びポリカーボネートジオールのいずれかの残留物を含む少なくとも1つの追加的ポリマーセグメントとを含む。
【0021】
第20の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、少なくとも1つのポリマー部品がリード終端、ターミナルピン、リード先端、Oリング、シール、及びヘッダのいずれかを含む。
【0022】
第21の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、少なくとも1つのポリマー部品が電極の露出した面の上及び近傍のいずれかに配置される薄膜を含む。
【0023】
第22の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、薄膜が、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかからエレクトロスピニング法により形成された複数の繊維を含む。
【0024】
第23の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、少なくとも1つのポリマー層が、電極の露出した面の近傍に配置されるポリマーチューブを含む。
【0025】
第24の実施形態は、植え込み型医療用リードを形成する方法に関する。この方法は、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかを含むポリマー材からショア硬度が30A〜75Dであるリード本体を形成する工程と、リード本体を、導体及び同導体に接続する電極に連結する工程とを含む。ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体は軟質ポリマーセグメント及び硬質ポリマーセグメントを有する。軟質ポリマーセグメント対硬質ポリマーセグメントの重量比は50:50乃至90:10である。軟質ポリマーセグメントはポリイソブチレンセグメントと、ポリエーテルジオール、フッ素化ポリエーテルジオール、フッ素ポリマージオール、ポリエステルジオール、ポリアクリレートジオール、ポリメタクリレートジオール、ポリシロキサンジオール、フッ化ポリシロキサンジオール、及びポリカーボネートジオールのいずれかの残留物を含む少なくとも1つの追加的ポリマーセグメントとを含む。
【0026】
第25の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、リード本体はポリマー材を押出成形することにより形成される。
第26の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体が不飽和ポリイソブチレンセグメントを含む。
【0027】
第27の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体が、数平均分子量が1,000〜5,000である飽和ポリイソブチレンジオールから形成されるポリイソブチレンセグメントを含む。
【0028】
第28の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体が、数平均分子量が500〜3,000であるポリテトラメチレンオキシドジオールから形成されるポリテトラメチレンオキシドセグメントを含む。
【0029】
第29の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかを、加工補助剤及び安定剤の少なくとも一方と混合して混合物を形成する工程をさらに含む。
【0030】
第30の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、混合物からリード本体を押出成形する工程をさらに含む。
第31の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、リード本体を形成する工程が、第1のショア硬度を有する基端側領域、第2のショア硬度を有する中間領域、及び第3のショア硬度を有する先端側領域を形成する工程を含み、同基端側領域、中間領域、及び先端側領域のそれぞれがポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかを含む。
【0031】
第32の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、基端側領域が、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかにおける軟質ポリマーセグメント対硬質ポリマーセグメントの第1の重量比を有し、前記中間領域が、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかにおける軟質ポリマーセグメント対硬質ポリマーセグメントの第2の重量比を有し、前記先端側領域が、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかにおける軟質ポリマーセグメント対硬質ポリマーセグメントの第3の重量比を有する。
【0032】
第33の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、リード本体を形成する工程がポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかをエレクトロスピニング法にて加工する工程を含む。
【0033】
第34の実施形態は、ポリマー層を含むコイル状電極を有する医療用電気リードを形成する方法に関する。本方法は、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、又はポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体を含む複数の繊維をエレクトロスピニング法にて加工する工程と、コイル状電極の少なくとも一部の上に繊維を配置してポリマー層を形成する工程とを含む。
【0034】
第35の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、エレクトロスピニング法によりコイル状電極の上に直接的に繊維を配置する工程を含む。
【0035】
第36の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、エレクトロスピニング法により繊維を基材の上に直接的に配置して繊維状の薄膜を形成し、複数の層の繊維上の薄膜をコイル状電極に巻き付ける工程を含む。
【0036】
第37の実施形態は、上記の実施形態のいずれかに記載の植え込み型医療用リードであって、基端側領域のデュロメータ硬度が85A〜70Aであり、中間領域のデュロメータ硬度が60A〜85Aであり、先端側領域のデュロメータ硬度が30A〜70Aである。
【0037】
本発明の実施形態及び効果は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】断面が示された心臓内に配置されているリードを含んだ植え込み型心臓用器具を示す概略図。
【図2】本発明の一実施形態による医療用電気リードを示す概略図。
【図3A】本発明の一実施形態によるポリマーリード部品の概略図。
【図3B】本発明の一実施形態によるポリマーリード部品の概略図。
【図3C】本発明の一実施形態によるポリマーリード部品の概略図。
【図4A】本発明の一実施形態による医療用リードの一部を示す概略断面図。
【図4B】図4Aのリードの別の拡大図。
【図4C】図4Aのリードの別の拡大図。
【図5】本発明の別の実施形態による医療用リードの一部を示す概略断面図。
【図6A】本発明の別の実施形態による医療用リードの一部を示す概略断面図。
【図6B】図6Aの医療用リードのB―B線における断面図。
【図7A】本発明の別の実施形態による医療用リードの一部を示す概略断面図。
【図7B】図7Aの医療用リードのB―B線における断面図。
【図8】本発明の別の実施形態による医療用リードの一部を示す概略図。
【図9】図8の医療用リードのB―B線における断面図。
【図10】図8の医療用リードのB―B線における図9とは異なる実施形態を示す断面図。
【図11】本発明の別の実施形態による医療用電気リードの一部を示す断面図。
【図12A】本発明の別の実施形態による医療用電気リードの一部を示す断面図。
【図12B】本発明の別の実施形態による医療用電気リードの一部を示す断面図。
【図13】本発明の別の実施形態によるコイル状電極を有するリード本体の一部を示す断面図。
【図14】PTMOを含んだポリイソブチレンウレタン共重合体試料の重量損失と経過時間との関係を示すグラフ。
【図15】ポリイソブチレンウレタン共重合体試料の12週間後の重量損失とPTMO含有量との関係を示すグラフ。
【図16】PTMOを含んだポリイソブチレンウレタン共重合体試料の代表的FTIRスペクトルを示すグラフ。
【図17】飽和PIBジオールを含んだポリイソブチレンウレタン共重合体の代表的FTIRスペクトルを示すグラフ。
【図18】代表的PELLETHANE(登録商標)試料のFTIRスペクトルを示すグラフ。
【図19】代表的PELLETHANE(登録商標)試料のFTIRスペクトルを示すグラフ。
【図20】代表的PELLETHANE(登録商標)試料のGPC屈折率の軌跡を示すグラフ。
【図21】代表的PELLETHANE(登録商標)試料のGPC屈折率の軌跡を示すグラフ。
【図22】飽和PIBジオールを含んだポリイソブチレンウレタン共重合体のGPC屈折率の軌跡を示すグラフ。
【図23】いくつかの試料の引張強度と経過時間との関係を示すグラフ。
【図24】代表的PELLETHANE(登録商標)試料を倍率300倍にて撮影し走査型電子顕微鏡(SEM)写真。
【図25】代表的ポリイソブチレンウレタン共重合体試料を倍率300倍にて撮影した走査型電子顕微鏡(SEM)写真。
【図26】様々な試験試料の3週間後及び6週間後の質量損失(劣化)を示す棒グラフ。
【図27】様々な試験試料の3週間後及び6週間後の質量損失(劣化)を示す棒グラフ。
【図28】加速劣化試験におけるPELLETHANE(登録商標)試料の0週目及び3週目のFTIRスペクトルを示す図。
【図29】加速劣化試験におけるPELLETHANE(登録商標)試料の0週目及び3週目のFTIRスペクトルを示す図。
【図30】加速劣化試験におけるElast−Eon(登録商標)試料の0週目及び3週目のFTIRスペクトルを示す図。
【図31】加速劣化試験におけるPIB−PU試料の0週目及び3週目のFTIRスペクトルを示す図。
【図32】加速劣化試験における様々な試料の0週目及び3週目の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に本発明の様々な実施形態の詳細を説明する。実施形態は例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
本発明のいくつかの実施形態による植え込み型又は挿入型医療器具は、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかもしくは複数(以下、集合的に「ポリイソブチレンウレタン共重合体」と呼ぶ)を含んだ1つ以上のポリマー領域を有する。ポリマー領域は、例えば50重量%以下から、75重量%、90重量%、95重量%、97.5重量%、99重量%、又はそれ以上のポリマーを含んだ領域(例えば、器具全体、絶縁層、器具部品、及び器具のコーティング層)を指す。
【0040】
本発明の一実施形態による医療用電気装置は、電気信号発生部品及び1本以上のリードを含む。電気信号発生部品は、電力源(密閉型電池等)、体器官(心臓、神経系等)に送られる信号を生成する電気回路パッケージを有する。リードは少なくとも1本の可撓性を有する長尺状導電部材(ワイヤ、ケーブル等)を有し、この導電部材の長手方向における少なくとも一部分は一般的にリード本体と称される長尺状のポリマー部品によって絶縁される。導電部材は、器具の電気信号発生部品と1つ以上の電極とを電気的に接続し、これにより体器官との電気接続をもたらす。従って、リードが電気信号発生部品からの電気信号を体器官へ伝達することができるようになっている。さらに、リードは体器官からの信号を電気信号発生部品に伝達できる。
【0041】
本発明による医療用電気器具の例としては、脊髄電気刺激法(SCS)システム、脳深部電気刺激法(DBS)システム、末梢神経刺激(PNS)システム、胃神経刺激システム、蝸牛植え込みシステム、及び網膜植え込みシステム等の神経刺激システムや、植え込み型拍動管理(CRM)システム、植え込み型除細動器(ICD)、及び心臓再同期治療除細動器(CRDT)等の心臓システム等の植込み型電気刺激システムが挙げられる。
【0042】
図1に本発明の一実施形態によるリードシステム100の概略図を示す。このリードシステム100は、心臓102に刺激やショックを与えるための電気パルス又は電気信号の伝達、及び心臓102を感知するための電気パルス又は電気信号の受信の少なくともいずれかを行う。システム100はパルス発生器105及びリード110を含む。パルス発生器105は電力源及び電気回路部を有する。パルス発生器105は電池式装置であり、連続する放電すなわちパルスを所定のタイミングにて発生する。パルス発生器105は、胸壁に形成された皮下ポケットに植え込まれる。又は、パルス発生器105は腹部又は他の部位に形成された皮下ポケット内に植え込んでもよい。図1においてはリード110は心臓用に構成されているが、リード110は他の形式の電気刺激/感知にも適している。例えば、リード110は神経刺激に用いてもよい。神経刺激リード及びその植え込み器具に関しては、Whitehurstらに付与された米国特許番号第7292890号明細書、Maschinoらに付与された米国特許番号6600956号明細書、及びBakulaらに付与された米国特許番号6093197号明細書に記載されている。
【0043】
リード110は基端112から先端114まで延び、基端112においてパルス発生器105に接続される。先端114は植え込み又は他の方法により心臓102の一部に対して連結される。外側の絶縁リード本体は、リード110の基端112から先端114まで延びる。リード110の一部に沿って、例えばリード110の先端付近において少なくとも1つの電極116が配置される。電極116は、リード110と心臓102とを電気的に接続する。少なくとも1つの導電体(図示しない)がリード本体内に配置され、リード110の基端112から先端114まで延びる。この少なくとも1つの導電体は、電極116とリード110の基端112とを接続する。導電体はパルス発生器105及び電極116の間において電流及びパルスを伝え、さらに、心臓へ送られる電流及びパルス、及び心臓から送られる電流及びパルスを伝達する。一実施形態においては、少なくとも1つの導電体はコイル状導体である。別の実施形態においては、少なくとも1つの導電体が1本以上のケーブルを含む。このようなリードの長さは、例えば、約35cmから40cm、50cm、60cm、70cm、80cm、90cm、100cm、110cm、又は120cmである。リード径は例えば、4〜9フレンチである。
【0044】
前述の通り、本発明の一実施形態による医療用電気器具は、以下に詳細を述べるポリイソブチレンウレタン共重合体から形成されるか、もしくはポリイソブチレンウレタン共重合体を含む。このようなポリイソブチレンウレタン共重合体は、医療用電気装置(ペースメーカ、除細動器、心不全治療装置、神経刺激装置等)の様々なポリマー部品の形成に用いることができる。このようなポリマー部品の例としては、単一の内腔を有する押出成形品、複数の内腔を有する押出成形品、内側管状絶縁層、及び外側管状絶縁層等の少なくとも1つの導体が内部に延設されるリード本体の部分や、リード先端材、ヘッダ、及び他のリード部品(シール用Oリング等)が挙げられる。
【0045】
本ポリイソブチレンウレタン共重合体は、植え込み型パルス発生器、植え込み型除細動器(ICD)、及び植え込み型心臓再同期治療除細動器(CRDT)等の電気信号生成/感知部品の封止材及び絶縁材として用いることもできる。このような電気信号生成/感知部品は、例えば右心室リードシステム、右心房リードシステム、左心室リードシステム、及び左心房リードシステムとともに用いることができ、例えば、脊椎動物(ヒト、ペット、家畜等)の徐脈、頻脈(心室性頻脈等)、又は心臓同期不全の治療に用いることができる。前述のように、本発明は脊髄電気刺激法(SCS)システム、脳深部電気刺激法(DBS)システム、末梢神経刺激(PNS)システム、胃神経刺激システム、蝸牛植え込みシステム、網膜植え込みシステム、及び疼痛処理システム等の神経刺激システムのリード及び電気信号生成/感知部品にも適用することができる。
【0046】
周知の通り、ポリマーは、一般的にモノマーと呼ばれる1つ以上の構成単位の複数の複製(例えば5から10、25、50、100、250、500、又は1,000以上の複製)を含んだ分子である。本明細書においては、モノマーという用語は自由モノマー、及びポリマー内に組み込まれたモノマーの双方を指す。これらのモノマーの区別は、この用語が使用される文脈から明確に判断可能である。
【0047】
ポリマーは、線状構成、環状構成、及び分岐構成等の様々な構成のものであってよい。分岐構成の例としては、星形構成(1つの分岐点から3つ以上の鎖が延びる構成等)、くし形構成(グラフト構成とも称される、主鎖と複数の枝鎖を有する構成等)、樹木状構成(例えば、樹枝状ポリマーや超分岐ポリマー)が挙げられる。
【0048】
単独重合体とは、単一の構成単位(すなわちモノマー)の複数の複製を含むポリマーである。共重合体とは、2つ以上の異なる構成単位の複数の複製を含むポリマーである。
ポリウレタンは、多官能性イソシアネート(脂肪族ジイソシアナート及び芳香族ジイソシアナートの両方を含んだジイソシアナート等)、及びポリオール(マクログリコール等)から合成される共重合体の族のひとつである。一般的なマクログリコールは、ポリウレタンのポリマーセグメントを形成するポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、及びポリカーボネートジオールを含む。一般的に脂肪族又は芳香族のジオール又はジアミンも鎖延長剤として用いられ、その結果、例えばポリウレタンの物理特性を向上される。鎖延長剤としてジアミンを用いる場合、尿素結合が形成され、得られるポリマーはポリウレタン/ポリ尿素と呼ばれる。
【0049】
ポリ尿素は、多官能性イソシアネート、及びジアミン等のポリアミンから合成される共重合体の族のひとつである。ジアミンの例としては、ポリエステルジアミン、ポリエーテルジアミン、ポリシロキサンジアミン、ポリ炭化水素ジアミン、及びポリカーボネートジアミンが挙げられる。ポリウレタンと同様に、脂肪族又は芳香族のジオール又はジアミンを鎖延長剤として用いることができる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態において、ポリイソブチレンウレタン共重合体は(a)1つ以上のポリイソブチレンセグメント、(b)1つ以上の追加的ポリマーセグメント(ポリイソブチレンセグメント以外のもの)、(c)1つ以上のジイソシアナート残留物を含む1つ以上のセグメント、及び任意の(d)1つ以上の鎖延長剤を含む。このような共重合体及びその合成方法については国際公開第2008/060333パンフレット、国際公開第2008/066914パンフレット、及び2009年6月26日出願の米国特許出願公開第2004/0215227号明細書「POLYISOBUTYLENE URETHANE, UREA AND URETHANE/UREA COPOLYMERS AND MEDICAL DEVICES CONTAINING THE SAME」に記載されている。
【0051】
「ポリマーセグメント」又は「セグメント」は、ポリマーの一部分である。セグメントは分岐していても分岐していなくてもよい。セグメントは、一種類の構成単位を含んでいてもよいし(ホモポリマーセグメントとも称する)、複数の種類の構成単位のみを含んでいてもよい(コポリマーセグメントとも称する)。構成単位の分布は、ランダム、統計的、グラジエント、又は反復的(例えば交互)な構成であってよい。
【0052】
ポリイソブチレンウレタン共重合体のポリイソブチレンセグメントは一般的に軟質なセグメントであると理解され、ジイソシアナート残留物を含むセグメントは一般的に硬質なセグメントであると理解される。追加的なポリマーセグメントは、柔軟なセグメント又は硬質セグメントを含んでいてもよい。本明細書において、軟質セグメント及び硬質セグメントは、このようなセグメント含んだポリマー材の特性を表す相対的な用語である。上記の記載を限定するものではないが、軟質セグメントのガラス転移温度Tgは体温より低く、一般的には、35度から、20度、0度、−25度、−50度、又はそれ未満である。硬質セグメントのTgは体温より高く、一般的には40度から、50度、75度、又は100度以上である。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)、動的粘弾性測定(DMA)、及び熱機械分析(TMA)を用いて測定できる。
【0053】
好適な軟質セグメントの例としては、線状、枝状、及び環状のポリアルキルセグメント、ポリアルキレンセグメント、ポリアルケニルセグメンド、ポリエーテルセグメント、フッ素化ポリエーテルを含むフッ素ポリマーセグメント、ポリエステルセグメント、ポリ(アクリレート)セグメント、ポリ(メタクリレート)セグメント、ポリシロキサンセグメント、及びポリカーボネートセグメントが挙げられる。
【0054】
好適なポリエーテルセグメントの例としては、線状、枝状、及び環状のホモポリ(アルキレンオキシド)セグメント及びコポリ(アルキレンオキシド)セグメントが挙げられ、これらには、メチレンオキシド、ジメチレンオキシド(エチレンオキシド)、トリメチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラメチレンオキシド、ペンタメチレンオキシド、ヘキサメチレンオキシド、オクタメチレンオキシド、及びデカメチレンオキシド等のいずれか又は複数から形成されるホモポリマーセグメント及びコポリマーセグメントが含まれる。
【0055】
好適なフッ素ポリマーセグメントの例としては、ペルフルオロアクリレートセグメント及びフッ化ポリエーテルセグメント、例えば、線状、枝状、及び環状のホモポリ(フッ化アルキレンオキシド)及びコポリ(フッ化アルキレンオキシド)が挙げられ、これらには、ペルフルオロメチレンオキシド、ペルフルオロジメチレン(ペルフルオロエチレンオキシド)、ペルフルオロトリメチレンオキシド、及びペルフルオロプロピレンオキシド等のいずれか又は複数から形成されるホモポリマーセグメント及びコポリマーセグメントが含まれる。
【0056】
好適なポリエステルセグメントの例としては、エチレンアジペート、プロピレンアジペート、テトラメチレンアジペート、及びヘキサメチレンアジペート等のアルキレンアジペートのいずれか又は複数から形成される、線状、枝状、及び環状のホモポリマーセグメント及びコポリマーセグメントが挙げられる。
【0057】
好適なポリ(アクリレート)セグメントの例としては線状、枝状、及び環状のホモポリ(アクリレート)セグメント及びコポリ(アクリレート)セグメントが挙げられ、これらには、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、セクブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、及びドデシルアクリレート等のアルキルアクリレートのいずれか又は複数から形成されるホモポリマーセグメント及びコポリマーセグメントが含まれる。
【0058】
好適なポリ(メタクリレート)セグメントの例としては線状、枝状、及び環状のホモポリ(メタクリレート)セグメント及びコポリ(メタクリレート)セグメントが挙げられ、これらには、例えばヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ドデシルメタクリレート及びオクタデシルメタクリレート等のアルキルメタクリレートのいずれか又は複数から形成されるホモポリマーセグメント及びコポリマーセグメントが含まれる。
【0059】
好適なポリシロキサンセグメントの例としては、線状、枝状、及び環状のホモポリシロキサンセグメント及びコポリシロキサンセグメントが挙げられ、これらには、ジメチルシロキサン、ジエチルシロキサン、及びメチルエチルシロキサン等のいずれか又は複数から形成されるホモポリマーセグメント及びコポリマーセグメントが含まれる。
【0060】
好適なポリカーボネートセグメントの例としては、以下のタイプのカーボネート単位を1つ又は複数含むものが挙げられる。
【0061】
【化1】

Rは、線状、枝状、及び環状のアルキル基から選択できる。具体的な例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及びヘキサメチレンカーボネートのいずれか又は複数から形成されるホモポリマーセグメント及びコポリマーセグメントが挙げられる。
【0062】
好適な硬質ポリマーセグメントの例としては、ポリ(ビニル芳香族)セグメント、ポリ(アルキルアクリレート)セグメント、及びポリ(アルキルメタクリレート)セグメントが挙げられる。
【0063】
好適なポリ(ビニル芳香族)セグメントの例としては、線状、枝状、及び環状のホモポリ(ビニル芳香族)セグメント及びコポリ(ビニル芳香族)セグメントが挙げられる。これらには、スチレン、2−ビニルナフタレン、アルファメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−アセトキシスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、及び4−メチルスチレン等のビニル芳香族モノマーのいずれか又は複数から形成されるホモポリマーセグメント及びコポリマーセグメントが含まれる。
【0064】
好適なポリ(アルキルアクリレート)セグメントの例としては、線状、枝状、及び環状のホモポリ(アルキルアクリレート)セグメント及びコポリ(アルキルアクリレート)セグメントが挙げられる。これらには、tert−ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、及びイソボルニルアクリレート等のアクリレートモノマーのいずれか又は複数から形成されるホモポリマーセグメント及びコポリマーセグメントが含まれる。
【0065】
好適なポリ(アルキルメタクリレート)セグメントの例としては、線状、枝状、及び環状のホモポリ(アルキルメタクリレート)セグメント及びコポリ(アルキルメタクリレート)セグメントが挙げられる。これらには、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、及び、シクロヘキシルメタクリレート等のアルキルメタクリレートモノマーのいずれか又は複数から形成されるホモポリマーセグメント及びコポリマーセグメントが含まれる。
【0066】
特に好適なポリイソブチレンウレタン共重合体は、(a)ポリイソブチレン軟質セグメント、(b)ポリエーテル軟質セグメント、(c)ジイソシアナート残留物を含んだ硬質セグメント、(d)後述する任意の鎖延長剤、及び/又は(e)後述する任意のエンドキャッピング材を含む。
【0067】
本発明によるポリイソブチレンウレタン共重合体における軟質セグメント対硬質セグメントの重量比は、例えばショア硬度等の幅広い物理特性及び機械特性、ならびに機能を所望のものにするために調節することができる。例えば、ポリマー中の軟質セグメント対硬質セグメントの重量比は、99:1、95:5、90:10、75:25、50:50、25:75、10:90、5:95、又は1:99である。より具体的には、95:5、90:10、80:20、70:30、65:35、60:40、又は50:50である。さらに具体的には、80:20から50:50である。
【0068】
本発明の一実施形態によるポリイソブチレンウレタン共重合体のショア硬度は、軟質セグメント対硬質セグメントの重量比を調整することにより変更できる。好適なショア硬度の範囲は45A以上であり、より詳細には50A、52.5A、55A、57.5A、60A、62.5A、65A、67.5A、70A、72.5A、75A、77.5A、80A、82.5A、85A、87.5A、90A、92.5A、95A、97.5A、又は100Aである。一実施形態においては、軟質セグメント対硬質セグメントの重量比が80:20である場合のポリイソブチレンウレタン共重合体のショア硬度は60〜71Aである。軟質セグメント対硬質セグメントの重量比が65:35である場合のポリイソブチレンウレタン共重合体のショア硬度は80〜83Aである。軟質セグメント対硬質セグメントの重量比が60:40である場合のポリイソブチレンウレタン共重合体のショア硬度は95〜99Aである。軟質セグメント対硬質セグメントの重量比が50:50である場合のポリイソブチレンウレタン共重合体のショア硬度は100Aより高い。軟質セグメントに対する硬質セグメントの比率を上げることにより、より高い硬度(例えばは55D以上から75D)を有する材料を生成することができる。このような硬い材料は、PGヘッダ器具、リードの先端及びピン領域、及び神経変調療法器具のヘッダに特に好適に用いることができる。
【0069】
ポリイソブチレンセグメント及び追加的ポリマーセグメントの分子量は様々であり、例えば、2〜100の反復単位(モノマー単位)から構成される。ポリイソブチレンセグメント及び追加的ポリマーセグメントは、ポリオール(ジオール、トリオール等)又はポリアミン(ジアミン、トリアミン等)の出発物質として本発明によるポリイソブチレンウレタン共重合体に組み込むことができる。ポリオールを使用した場合について以下に説明するが、ポリアミン、ならびにポリオール及びポリアミンの組み合わせを用いた場合でも同様の方法により同様の組成物を生成することができる。
【0070】
好適なポリイソブチレンポリオール出発物質の例としては、線状のポリイソブチレンジオール及び枝状(3本の枝)のポリイソブチレントリオールが挙げられる。別の例としては、各端部に官能基−OHを有する線状ポリイソブチレンジオールが挙げられる。さらに別の例としては、ポリ(スチレン−coーイソブチレン)ジオール及びポリ(スチレンーb−イソブチレンーb−スチレン)ジオールを含んだポリイソブチレンポリオールが挙げられる。このようなポリイソブチレンポリオールは、J.P.Kennedy他、「Designed Polymers by Carbocationic Macromolecular Engineering:Theory and Practice」、Hanser Publishers、1991年、p191−193、Joseph P.Kennedy、「Journal of Elastomers and Plastics」、1985年、17、p82−88、及びこれらの引用文献に記載された方法と同様の方法により生成することができる。ポリイソブチレンジオール出発物質は、様々な周知の出発物質から形成することができる。一実施形態においては、ポリイソブチレンジオール出発物質はC=C結合を持たない飽和ポリイソブチレンジオールである。
【0071】
好適なポリエーテルポリオール出発物質の例としてはポリテトラメチレンオキシドジオール及びポリテトラメチレンジオールが挙げられるが、これらは、米国ミズーリ州セントルイス所在のSigma−Aldrich社及び米国デラウェア州ウィルミントン所在のE.I.du Pont de Nemours and Company等の様々な提供元から入手できる。ポリシロキサンポリオール出発物質の例としては、米国ミシガン州ミッドランド所在のDow Corning Corporation、及び東京都所在のチッソ株式会社等の様々な提供元から入手可能であるポリジメチルシロキサンジオールが挙げられる。好適なポリカーボネートポリオール出発物質は、例えばSigma−Aldrich社より入手可能であるポリテトラメチレンオキシドジオールが挙げられる。好適なポリフルオロアルキレンオキシドジオール出発物質の例としては、イタリアのブッシに所在するAusimont社のZDOLTXが挙げられる。ZDOLTXはコポリマーフルオロアルキレンオキシドジオールであり、エトキシル化された単位によりエンドキャッピングされたーCFCFO―単位及びーCFO―単位のランダム分布、すなわちH(OCHCHOCHCFO(CFCFO)(CFO)CFCHO(CHCHO)Hを含む。n、p、及びqは整数である。好適なポリスチレンジオール出発物質の例としては、カナダのモントリオール所在のPolymer Source社より入手可能である、可変分子量のα、ω−ジヒドロキシ−末端ポリスチレンが挙げられる。ポリスチレンジオール及び三枝トリオールは、M.Weissmuller他、「Preparation and end−linking of hydroxyl−terminated polystyrene star macromolecules」、Macromolecular Chemistry and Physics 200(3)、1999年、p541−551に記載の方法と同様の方法にて形成できる。
【0072】
いくつかの実施形成においては、ポリオール(ジオール、トリオール等)はブロック共重合体ポリオールとして合成される。このようなブロック共重合体ポリオールの例としては、ポリ(テトラメチレンオキシドーb−イソブチレン)ジオール、ポリ(テトラメチレンオキシドーb−イソブチレンーb−テトラメチレンオキシド)ジオール、ポリ(ジメチルシロキサンーb−イソブチレン)ジオール、ポリ(ジメチルシロキサンーb−イソブチレンーb−ジメチルシロキサン)ジオール、ポリ(ヘキサメチレンカーボネートーb−イソブチレン)ジオール、ポリ(ヘキサメチレンカーボネートーb−イソブチレンーb−ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、ポリ(メチルメタクリレートーb−イソブチレン)、ポリ(メチルメタクリレートーb−イソブチレンーb−メチルメタクリレート)ジオール、ポリ(スチレンーb−イソブチレン)ジオール、及びポリ(スチレンーb−イソブチレンーb−スチレン)ジオール(SIBSジオール)が挙げられる。
【0073】
本発明によるウレタン共重合体の形成に用いるジイソシアナートには、芳香族ジイソシアナート及び非芳香族(脂肪族等)のジイソシアナートが含まれる。芳香族ジイソシアナートは、例えば、4,4’ーメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、2,4−及び/又は2,6−トルエンジイソシアナート(TDI)、1,5−ナフタレンジイソシアナート(NDI)、パラフェニレンジイソシアナート、3,3’ートリジンー4,4’ージイソシアナート、及び3,3’ージメチルージフェニルメタンー4,4’ージイソシアナートから適宜選択することができる。非芳香族のジイソシアナートは、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、4,4’ージシクロヘキシルメタンジイソシアナート、3−イソシアネートメチルー3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアナート又はIPDI)、シクロヘキシルジイソシアナート、及び2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート(TMDI)から適宜選択することができる。
【0074】
一実施形態においては、ポリテトラメチレンオキシドジオール(PTMOジオール)、ポリヘキサメチレンオキシドジオール(PHMOジオール)、ポリオクタメチレンオキシドジオール、又はポリデカメチレンオキシドジオール等のポリエーテルジオールがポリイソブチレンジオール及びジイソシアナートと組み合わされてポリイソブチレンポリウレタン共重合体が形成される。このポリイソブチレンポリウレタン共重合体においては、ポリウレタン硬質セグメント、ポリイソブチレンセグメント、及びポリエーテルセグメントが均等に分布され、ポリマー内にてミクロ相分離が好ましい状態になっている。ポリエーテルセグメントにより、ショア硬度、引張強度、引張弾性率、曲げ弾性率、伸び率、引裂強度、曲げ疲労、引張クリープ、及び耐摩耗性等の主要な機械特性が向上されている。
【0075】
本発明の一実施形態によるポリイソブチレンウレタン共重合体は、さらに1つ以上の鎖延長剤の残留物及び/又は末端基を含む。鎖延長剤は硬質セグメントの長さを延長させる(換言すると、ウレタンポリマー、尿素ポリマー、又はウレタン/尿素ポリマーにおいて軟質セグメント材に対する硬質セグメント材の割合を増やす)。その結果、ポリマーの弾性率が上がり、破断点伸びが下がり、強度が増す。軟質セグメント:鎖延長剤:ジイソシアナートのモル比は、例えば1:9:10、2:8:10、3:7:10、4:6:10、5:5:10、6:4:10、7:3:10、8:2:10、又は9:1:10である。
【0076】
鎖延長剤は例えば脂肪族ジオール又は芳香族ジオールから形成可能である(この場合、イソシアネート基との反応時にはウレタン結合が形成される)。また、脂肪族ジアミン又は芳香族ジアミンから形成することもできる(この場合、イソシアネート基との反応時には尿素結合が形成される)。鎖延長剤は、例えばエチレングリコール(1,2−エタンジオール)、1,4−ブタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオール等のアルファオメガーアルカンジオール、エチレンジアミン、ジブチルアミン(1,4−ブタンジアミン)、1,6−ヘキサンジアミン、ならびに4,4’ーメチレンビス(2−クロロアニリン)等のアルファオメガアルカンジアミンから適宜選択される。鎖延長剤は、硬質ポリマーセグメント及び軟質ポリマーセグメントをベースとする(より一般的には軟質ポリマーセグメントをベースとする)短鎖ジオールポリマー(分子量が1,000以下であるアルファオメガージヒドロキシ末端ポリマー)から選択してもよい。このような短鎖ジオールポリマーには、短鎖ポリイソブチレンジオール、ポリテトラメチレンオキシドジオール等の短鎖ポリエーテルポリオール、ポリジメチルシロキサンジオール等の短鎖ポリシロキサンジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等の短鎖ポリカーボネートジオール、短鎖ポリ(フッ素化エーテル)ジオール、短鎖ポリエステルジオール、短鎖ポリアクリレートジオール、短鎖ポリメタクリレートジオール、及び短鎖ポリビニル芳香族ジオールが含まれる。
【0077】
いくつかの実施形成においては、ポリイソブチレンウレタン共重合体の生体安定性及び/又は生体適合性が、短い脂肪族鎖(例えば、[−CH−CH基、[−CH−C(CH基、[−CH−CF基、[−CH−C(CF基、[−CH−CHOH基、[−CH−C(OH)基、及び[−CH−C基であり、nは例えば1、2、5、10、15、又は20である)を用いて共重合体をエンドキャッピングすることにより向上されている。このような脂肪族鎖はポリマー表面に移動して合成プロセスとは無関係に自己組織化し、生体内に植え込まれたときに好適な免疫反応を供する。別の実施形態においては、短い脂肪族鎖(例えば、[−CH−b−CHO]−CH基、[−CH−b−CHO]−CHCHC(CH基、[−CH−b−[−CH0]−CHCHCF基、[−CH−b−[−CHO]−CHCHC(CF基、[−CH−b−CHO]−CHCHOH基、[−CHb−[−CHO]−C(OH)基、[−CH−b−[−CHO]−CHCH−C基であり、nは例えば1、2、5、10、15、又は20である)を有するブロック共重合体又はブロックターポリマーを合成プロセスの終盤に共重合体に混和させてもよい。このような脂肪族鎖はポリマー表面に移動して自己組織化する。このようなエンドキャッピングセグメントは、加工補助材又は潤滑剤として機能し、ポリマーの熱加工性を向上させる。加工補助剤、酸化防止剤、及びワックス等を別に追加して熱加工性の向上をもたらしてもよい。
【0078】
ジオール又はジイソシアナートの出発物質からポリイソブチレンウレタン共重合体を合成するためには様々な方法を用いることができる。例えば、有機溶剤を用いて反応させてもよいし、超臨界COを溶剤として用いて反応させてもよい。ポリマー沈殿には、アイオノマーを用いることができる。
【0079】
一実施形態においては、第1のマクロジオール(M1)(例えば、非飽和又は飽和ポリイソブチレンジオール等のポリマージオール)、第2のマクロジオール(M2)(例えばポリエーテルジオール)、及びジイソシアネート(DI)(例えば、MDI、TDI)が単一工程にて反応する単一工程法が採用される。第1と第2のジオールに対するジイソシアネートのモル比は1:1である。DI:M1:M2の比率は、例えば、2:1:1、2:1.5:0.5、又は2:0.5:1.5である。DI:M1:M2の比率が2:1:1である場合、−[DI−M1−DI−M2−]の構造を有するポリウレタンが形成される。ただし、鎖がこのように完全に交互に配置される可能性は低い。いくつかの実施形態においては、鎖延長剤(CE)が反応混合物に追加され、第1と第2のマクロジオール及び鎖延長剤に対するジイソシアネートのモル比が1:1になるように構成される。例えば、DI:M1:M2:CEの比率は4:1:1:2、2:0.67:0.33:1、2:0.33:0.67:1、又は5:1:1:3である。DI:M1:M2:CEの比率が4:1:1:2である場合、−[DI−M1−DI−CE−DI−M2−DI−CE−]の構造を有するポリウレタンが形成される。ただし、鎖がこのように完全に交互に配置される可能性は低い。
【0080】
いくつかの実施形態においては二工程法が採用される。この二工程法においては、第1工程にてDI:M1:M2の比率が2:1:1以上である第1及び第2のマクロジオール及びジイソシアネートが反応して、例えばDI−M1−DI及びDI−M2−DI等の、イソシアネートによりエンドキャッピングされた第1及び第2のマクロジオールが形成される。第2工程においては、鎖延長剤が追加されてマクロジオールのイソシアネートエンドキャップと反応する。いくつかの実施形態においては、鎖延長剤のヒドロキシル基又はアミン基のモル数は、マクロジオールのイソシアネートエンドキャップのモル数を超え、この場合、必要に応じて第2工程においてジイソシアネートが追加されて全体的な化学量の安定が維持される。前述のとおり、第1及び第2のマクロジオールならびに鎖延長剤の合計に対するジイソシアネートのモル比は1:1であり、例えば、D1:M1:M2:CEは4:1:1:2となる。この比率は、論理上、−[DI−M1−DI−CE−DI−M2−DI−CE−]の反復構造を有する理想的なポリウレタンをもたらす。ただし、このように鎖が完全に交互するとは限らない。別の実施形態においては、DI:M1:M2:CEの比率は例えば4:1.5:0.5:2、もしくは5:1:1:3であるが、別の比率であってもよい。
【0081】
いくつかの実施形態においては、3工程、4工程、又はそれ以上の工程からなる方法が採用される。これらの方法においては、第1のマクロジオール及びジイソシアネートが第1工程において反応してイソシアネートにエンドキャップされた第1のマクロジオールを形成される。DI対M1の比率が2:1以上となり、第1のマクロジオールの各末端にイソシアネートエンドキャップが形成される(他の比率であってもよく、例えばD1:M1が1:1である場合は各マクロジオールに平均して1つのイソシアネートが配される)。この工程に続く第2工程において、第2のマクロジオールが追加されて、イソシアネートがエンドキャップされた第1のマクロジオールの1つ又は両方のイソシアネートエンドキャップと反応する。D1、M1、及びM2の比率に応じて、この工程により例えばM2−DI−M1−DI−M2(DI:M1:M2が2:1:2である場合)、M2−DI−M1−DI(DI:M1:M2が2:1:1である場合)、又はM1−DI−M2(DI:M1:M2が1:1:1である場合)等の構造が形成される。
【0082】
いくつかの実施形態においては、例えば前述のプレポリマーのような混合されたマクロジオールプレポリマー(M2−DI−M1−DI−M2、M1−DI−M2−DI−M1、DI−M1−DI−M2等)が、ジオール又はジアミンの鎖延長剤、及び化学量を維持するために必要である場合はジイソシアネートと同時に反応する。鎖延長処理を行うことにより、例えば、−[DI−M2−DI−M1−DI−M2−DI−CE−]、−[DI−M1−DI−M2−DI−M1−DI−CE−]、又は[DI−M1−DI−M2−DI−CE−]等の理想的な構造を形成することができる。ただし、このように鎖が完全に交互するとは限らない。
【0083】
他の実施形態においては、混合されたマクロジオールプレポリマーが十分な量のジイソシアネートと反応して、混合されたマクロジオールプレポリマーにイソシアネートエンドキャップが形成される(例えば、構成がDI−M2−DI−M1−DI−M2−DI、DI−M1−DI−M2−DI−M1−Dl又はDI−M1−DI−M2−DIとなる)。このイソシアネートによりエンドキャッピングされたマクロジオールは次いでジオール又はジアミンの鎖延長剤と反応させられる(化学量維持のために必要であればジイソシアネートとも反応させられる)。例えば、イソシアネートによりエンドキャッピングされたマクロジオールは等モル量の鎖延長剤と反応することにより、例えば−[DI−M2−DI−M1−DI−M2−DI−CE−]、−[DI−M1−DI−M2−DI−M1−DI−CE−]、又は−[DI−M1−DI−M2−DI−CE−]等の理想的な構造を形成することもできる。
【0084】
前述したように、鎖延長剤を用いることによりウレタンポリマー、尿素ポリマー、又はウレタン/尿素ポリマー中において軟質セグメント材に対する硬質セグメント材の比率を上げることができる。その結果、より高い弾性率、より低い破断伸び、及びより高い強度を有するポリマーを形成することができる。例えば、軟質セグメント(SS)、鎖延長剤(CE)、及びジイソシアネート(DI)の比率(SS:CE:DI)は、1:9:10から2:8:10、3:7:10、4:6:10、5:5:10 、6:4:10、7:3:10、8:2:10、9:1 :10、又は10:0:10の範囲である。
【0085】
一実施形態においては、ポリイソブチレンウレタン共重合体の軟質セグメントは第1の軟質マクロジオール又はマクロジアミン(M1)、及び第2の軟質マクロジオール又はマクロジオール(M2)から形成され、M2に対するM1のモル比(M1:M2)は、例えば、99:1、95:5、90:10、75:25、66:33、50:50、25:75、10:90、5:95、又は1 :99であり、より限定的には、90:10、85:15、80:20、75:25、又は70:30である。さらに限定的には、75:25、50:50である。
【0086】
M1及びM2の数平均分子量は例えば100〜10,000であり、より好適には200〜5,000、さらに好適には750〜2,500である。M1は例えばポリイソブチレンジオールであり、M2の好適な材料は例えばポリテトラメチレンオキシド(PTMO)ジオール及びポリヘキサメチレンオキシド(PHMO)ジオール等のポリエーテルジオールである。一実施形態においては、M1は数平均分子量が約1,000〜5,000であるポリイソブチレンジオールであり、M2は数平均分子量が約900〜1,200であるPTMOである。
【0087】
ポリイソブチレンウレタン共重合体中において第2の軟質セグメントに対する第1の軟質セグメントの重量比は、ジオール出発物質のモル比及び数平均分子量を用いて求めることができる。例えば、数平均分子量が1,000であるポリイソブチレンジオール48.00gを数平均分子量1,000のPTMO32.00gと反応させた場合、PTMOセグメントに対するポリイソブチレンセグメントの比率は60:40である。軟質セグメントにポリイソブチレン及びポリテトラメチレンオキシドが含まれる場合は、重量比は15:1、13:1、12:1、7.5:1、4.5:1、3:1、2:1、3:2、1:1、1:2、又は2:3であり、より限定的には約99:1、95:5、90:10、80:20又は70:30である。
【0088】
別の実施形態においては、反応混合物中のポリテトラメチレンオキシドジオールに対するポリイソブチレン(PIB)ジオールの比率により、軟質セグメントの総重量に対して約30重量%以下のポリテトラメチレンオキシド、限定的には0〜30重量%、より限定的には約5〜20重量%、さらに限定的には約10〜20重量%のポリテトラメチレンオキシドを含む軟質セグメントを有するポリイソブチレンウレタン共重合体が生成される。軟質セグメントの残りの重量にはポリイソブチレンが含まれる。
【0089】
別の実施形態においては、反応混合物中のポリヘキサメチレンオキシドジオールに対するPIBジオールの比率に応じて、軟質セグメントの総重量に対して約30重量%以下のポリヘキサメチレンオキシド、限定的には10〜30重量%、より限定的には約15〜20重量%、さらに限定的には約20〜25重量%のポリヘキサメチレンオキシドを含む軟質セグメントを有するポリイソブチレンウレタン共重合体が生成される。軟質セグメントの残りの重量にはポリイソブチレンが含まれる。
【0090】
PTMOの含有量が30%以下であるポリイソブチレンウレタン共重合体に対する加速劣化試験において、重量及び引張強さの減少は少なく、表面形態は連続的なものである。つまり、これらの材料は好適な生体安定性を有している。さらに、ポリエーテルジオール(PTMO等)の分量が増加すると劣化程度が上がるため、PTMO量を低くすることにより生体安定性が向上されることがわかる。
【0091】
別の実施形態においては、反応混合物中のPIBジオール、ポリエステルジオール(ポリテトラメチレンオキシドジオール又はポリヘキサメチレンジオール等)及びポリジメチルシロキサンジオールの比率により、ポリイソブチレン、ポリエーテル、及びポリジメチルシロキサンの比率が約60:20:20乃至80:15:5であるポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、ポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体が生成される。
【0092】
図2に示す医療用電気リードは、基端112から先端114まで延びる長尺状の絶縁リード本体110を有する。いくつかの実施形態においては、リード本体の少なくとも一部が前述のポリイソブチレンウレタン共重合体から形成される。いくつかの実施形態においては、ポリイソブチレンウレタン共重合体は押出成形又は型成形によりリード本体の一部分又は複数部分として形成される。他の実施形態においては、ポリイソブチレンウレタン共重合体は導体に直接コーティングされる。このコーティングの方法としては、例えばスプレーコーティング、溶剤コーティング(浸漬コーティング等)、スパッタリング、プラズマ蒸着、気相化学成長等が挙げられる。さらに別の実施形態においては、ポリイソブチレンウレタン共重合体は、既存のリード本体構成の1つ以上の部分の上に成形される。
【0093】
いくつかの実施形態においては、ポリイソブチレンウレタン共重合体を含むリード本体110のショア硬度は約30Aから75Dであり、より限定的には約30Aから55Dである。さらに、限定的には50Aから100Aである。ショア硬度はリードの全長にわたって均一でもよいし、変化していてもよい。
【0094】
別の実施形態においては、リード本体110のショア硬度は長手方向において変化する。ショア硬度は、リード本体の異なる部分において異なる配合のポリイソブチレンウレタン共重合体を用いることにより変化させる。これは、選択されたポリイソブチレンウレタン共重合体の組成を製造工程においてリード本体の長手方向にわたって変化させることにより行うことができる。又は、製造時に異なるポリイソブチレンウレタン共重合体を混ぜることにより、リード本体の所定の部分において所定のショア硬度を得ることができる。
【0095】
図2に示すリード本体110は、複数の異なる領域を含む。これらの領域の境界は、破線にて示されている。これらの領域には、基端側領域40、中間領域42、先端側領域44、及びリード先端領域46が含まれる。基端側領域40は、心臓から遠い位置において血管内に位置する部分である。中間領域42は、心臓に通じる血管内に位置する部分である。先端側領域44は心臓内に位置する部分であり、通常の場合少なくとも1つの電極116を含む。リード先端領域46は、リード本体110の先端であり、能動的又は受動的な固定部材36を有していてもよい。図2に示す領域のリード本体における長さや位置は、医療用電気装置100の種類及びサイズや、実施する治療、実施する植え込み方法に応じて適宜変更することができる。
【0096】
いくつかの実施形態においては、領域40,42,及び44のショア硬度がそれぞれ異なる。一実施形態においては、領域40,42及び44のショア硬度は、リード110の長手方向において基端112から先端114に向かって減少する。従って、基端側領域40のショア硬度は先端側領域44のショア硬度よりも高くなり、中間領域42のショア硬度は、基端側領域40のショア硬度よりも小さく、先端側領域44のショア硬度よりも高い。一実施形態においては、領域40,42,及び44は減少するショア硬度を有する別個の領域である。他の実施形態においては、ショア硬度はリード本体110の基端側領域40から先端側領域44に向かって徐々に連続的に減少する。一実施形態においては、リード本体の基端側領域40のショア硬度は約75Dであり、リード先端領域46を含んだ先端側領域44のショア硬度は45Aである。別の実施形態においては、基端側領域40のショア硬度は約85A〜100Aであり、中間領域42のショア硬度は約60A〜85Aである。リード先端領域46のショア硬度は約30A〜70Aである。
【0097】
リード本体の長手方向においてショア硬度を変化させる方法には様々な方法がある。一実施形態においては、ポリマー材のショア硬度は、単一の構造を有するリード本体を押出成形することにより変化させられる。別の実施形態においては、別々に形成されたセグメントが、例えば、熱結合、レーザー結合、熱融着、レーザー融着、及び医療用接着剤のいずれか又は複数を用いることにより結合される。
【0098】
いくつかの実施形態においては、複数ルーメンを有するリード本体110の少なくとも1つの領域(基端側領域40及び/又は中間領域42)の形成に用いられるポリマー材の混合比すなわち体積比率が、押出成形工程において変化される。この場合、異なるデュロメータ硬度を有するポリマー材が一緒に混合され、押出成形されてリード110の異なる部分が形成される。一実施形態においては、硬質セグメントと軟質セグメントとの比率、及びショア硬度が異なるポリイソブチレンウレタン共重合体材料が異なる比率にて一緒に混合されて押出成形されることにより、リード本体110の異なるショア硬度を有する複数の部分が形成される。別の実施形態においては、異なる軟質セグメント及び/又は硬質セグメントを有する2種以上のポリイソブチレンウレタン共重合体材料が混合される。さらに別の実施形態においては、ポリイソブチレンウレタン共重合体材料が別のポリマー材と混合されてリード本体110の1つ以上の部分が形成される。
【0099】
押出成形工程においては、ポリマー材混合物内における硬質ポリマー材(ポリマーA)の体積%は、リード本体110の基端側領域40における最大量から中間領域42における最小量へと押出成形時に変化する。同様に、ポリマー材混合物の軟質ポリマー材(ポリマーB)の体積%は、基端側領域40における最小量から中間領域42における最大量へと変化する。一実施形態においては、ポリマーAのデュロメータ硬度は約80A〜100Aであり、ポリマーBのデュロメータ硬度は約25A〜40Aである。一実施形態においては、リード本体110の基端側領域40の形成に用いる混合物におけるポリマーAとポリマーBの比率は、約75:25乃至99:1である。一実施形態においては、基端側領域40の形成に用いる混合物の約100%がポリマーAである。別の実施形態においては、リード本体110の中間領域42の形成に用いる混合物のポリマーAとポリマーBの体積比は約35:65〜75:25である。
【0100】
いくつかの実施形態においては、リード本体110の先端側領域44及び/又はリード先端領域46も押出成形により形成することができる。リード本体110の先端側領域44及び/又はリード先端領域46の形成に用いられるポリマー材の混合比すなわち容積比率を変えることにより、これらの領域のデュロメータ硬度を変えることができる。
【0101】
他の実施形態においては、少なくとも2つのリード本体部分が別々に形成され(押出成形又は型成形等)、その後結合されてリード本体110が形成される。結合は、2つの部分を重ねて接着剤により結合してもよいし、重複部分を少ししか有しないか全く有しない部品を熱融着により結合させてもよい。
【0102】
図3Aは別の実施形態によるポリマーリード部品111(例えば、長尺状の管状部品、長尺状の複数ルーメン押出成形品等)を示す図であり、ポリマーリード部品111は基端112及び先端114を有する。ポリマーリード部品111は非外傷性の先端部分115及び主リード部分119を有し、これらはそれぞれポリイソブチレンウレタン共重合体を含む。非外傷性の先端部分115の長さは例えば1〜2.5、5、又は12cmである。ポリマーリード部品111の残りの長さは主リード部分119が占め、長さは5〜125cmである(リードの種類に応じて、例えば、5cmから、10cm、20cm、30cm、40cm、50cm、60cm、70cm、80cm、90cm、95cm、100cm、110cm、又は125cmである)。非外傷性先端部分115は比較的軟質であり、ショア硬度は例えば、30A〜80Aである(例えば30Aから40A、50A、52.5A、55A、57.5A、60A、62.5A、65A、67.5A、70A、72.5A、75A、77.5A、又は80Aである)。一方、主リード部分119は耐摩耗性及び押圧性を高くするために比較的硬質であり、ショア硬度は例えば75A〜100Aである(例えば75Aから85A、90A、92.5A、95A、97.5A、又は100Aである)。
【0103】
図3Aに示すようなリード部品111において、先端から1cm離れた位置(非外傷性先端部分115内の位置)におけるショア硬度は約50A〜70Aであり、リード部品111の中央位置(主リード部分119内の位置)におけるショア硬度は約90A〜100Aである。
【0104】
ショア硬度の異なる複数の部分を形成することにより、リード特性を最適なものにすることができる。一般的に、主リード本体を比較的硬質にして、先端を比較的軟質にすることが好ましい。リード本体を硬質にすることにより押圧性及びトルク伝達性が向上する。先端を軟質にすることにより、操作性が向上し、固定位置における圧力を低減することができる。
【0105】
図3Bは別の実施形態によるポリマーリード部品111(例えば長尺状の管状部品、長尺状の複数ルーメン押出成形品等)を示す図であり、ポリマーリード部品111は基端112及び先端114を有する。図3Bのポリマーリード部品111は非外傷性の先端部分115及び主リード部分119を有する。このポリマーリード部品111はさらに基端領域117を有する。基端領域117は、耐摩耗性と可撓性との釣り合いを取るよう機能する(例えば、植え込み時にリードを巻いてポケットに収め易くする)。基端領域117の長さは例えば約10〜15cmである。この実施形態における基端領域117のショア硬度は80A〜98A(例えば80A、82.5A、85A、87.5A、90A、92.5A、95A、又は98A)である。また、別の実施形態においては、植え込まれたペースメーカから延びる部分のリードの可撓性を向上させるために80A〜90A(例えば80A、82.5A、85A、87.5A、又は90A)である。
【0106】
図3Bに示すようなリード部品111において、基端から5cm離れた位置(基端領域117内の位置)のショア硬度は例えば約80A〜90Aであり、先端から1cm離れた位置(非外傷性先端部分115内の位置)のショア硬度は例えば約50A〜70Aであり、先端から10cm離れた位置(主リード部分119内の位置)のショア硬度は例えば約90A〜100Aである。
【0107】
図3Cは別の実施形態によるポリマーリード部品111(例えば、長尺状の管状部品、長尺状の複数ルーメン押出成形品等)を示す図であり、ポリマーリード部品111は基端112及び先端114を有する。図3Bのポリマーリード部品111と同様に、非外傷性の先端部分115、主リード部分119、及び基端領域117を有する。このポリマーリード部品111はさらに縫合スリーブ部118を有する。縫合スリーブ部118は、静脈移行領域において鎖骨/第1肋骨に対する圧縮抵抗を供する。非外傷性の先端部分115及び基端領域117の長さ及びショア硬度は前述したものと同様であってよい。縫合スリーブ部118の長さは例えば7.5〜12cmである。この実施形態における縫合スリーブ部118のショア硬度は70A〜85A(例えば70A、72.5A、75A、77.5A、80A、82.5A、又は85A)である。別の実施形態においては、圧縮抵抗を向上させるために、70A〜80A(例えば70A、72.5A、75A、77.5A、又は80A)のショア硬度を有する。主リード部分119のショア硬度は前述のものであってよく、主リード部分119は、リード部品111において非外傷性先端部分115、基端領域117及び縫合スリーブ部118が占める部分の残りの部分を占めていてもよい(例えば、主リード部分119の長さはリードの種類に応じて、10cm、20cm、30cm、40cm、50cm、60cm、70cm、又は80cmである)。
【0108】
図3Cに示すようなリード部品111において、基端から20cm離れた位置(基端領域117内の位置)のショア硬度は例えば約80A〜90Aであり、基端から10cm離れた位置(縫合スリーブ部118内の位置)のショア硬度は例えば70A〜80Aであり、先端から1cm離れた位置(非外傷性先端部分115内の位置)のショア硬度は例えば約50A〜70Aであり、先端から10cm離れた位置(主リード部分119内の位置)のショア硬度は例えば約90A〜100Aである。
【0109】
ポリマーリード部品111の各部分のショア硬度を最適化することに加えて、これらの部分の曲げ弾性率も最適化することができる。一実施形態においては、主リード部分119の曲げ弾性率は約27.586MPa〜68.965MPa(4000〜10,000psi)であり、非外傷性先端部分115の曲げ弾性率は約6.896MPa〜34.482MPa(1000〜5000psi)であり、基端領域117の曲げ弾性率は約27.586MPa〜68.965MPa(4000〜10,000psi)である。
【0110】
図3A〜3Cに示すポリマーリード部品111はそれぞれ部分115,117,118及び119に対応する別個のポリマー部品により形成することができる。例えば、このような別個の部品は別々に形成(押出成形等により形成)した後、互いに結合(接着剤、熱融着等により結合)されてポリマーリード部品111が形成される。例えば、非外傷性先端部分115及び主リード部分119にそれぞれ対応する個別部品が互いに結合されて図3Aに示すようなポリマーリード部品111が形成される。別の実施形態においては、非外傷性先端部分115、主リード部分119、及び基端領域117にそれぞれ対応する個別部品が互いに結合されて図3Bに示すようなポリマーリード部品111が形成される。さらに別の実施形態においては、非外傷性先端部分115、主リード部分119、縫合スリーブ部118、及び基端領域117にそれぞれ対応する個別部品が互いに結合されて図3Cに示すようなポリマーリード部品111が形成される。このように別個の部品を用いてポリマーリード部品111を形成した場合、前述した硬さ範囲の間に硬度が急変する移行部(例えば1mm以下の移行部)が形成される。
【0111】
別の実施形態においては、ポリマーリード部品111の部分115,117,118及び119の間においてポリマー組成が連続的に変化する(例えば、押出成形時に押出されるポリマー材の組成を変化させて連続的管状押出成形品や複数ルーメン押出成形品が形成される)。この場合、前述した硬さ範囲の間にゆるやかな移行部(例えば1mmを超える移行部であり、より一般的には1cmを超える移行部)が形成される。
【0112】
必要に応じて、図3A〜3Cの各リード部品111に高いショア硬度を有する基端側端部(図示しない)を配してもよい。例えば、このような基端側端部の長さは2.5〜5cmであり、ショア硬度は60D、70D、80D、又は90Dであり、より好適には75Dである。基端側端部は、軟質セグメント対硬質セグメントの割合が60:40乃至30:70であり、より好適には60:40乃至45:55であるポリウレタンから形成することができ、ポリマーリード部品111に結合される(例えば、熱可塑結合、又は好適な接着剤を用いた結合により結合される)。
【0113】
本発明によるポリイソブチレン系共重合体は様々なリード構成とともに用いることができる。例えば、図4Aに本発明の一実施形態による医療用リード110の絶縁部分(非電極部分)の概略断面図を示す。この図示されるリード部分は、第1のコイル状導体130及び第2のコイル状の導体132を有し、これらの導体は互いに同径状に配置される。導体130及び132をコイル状に形成することの利点は、体内におけるリードの様々な動きが、通常このようなコイルの形成に用いられる金属が許容することができる程度のねじれに変換されることである。コイル状導体130,132は、例えばステンレス鋼、Eligilogy(登録商標)、MP35N(登録商標)、又は他の好適な導電材料により形成することができる。コイル状導体130,132は管状絶縁層120内に配置され、管状絶縁層120は前述したようなポリイソブチレン系共重合体から形成できる。管状絶縁層120はコイル状導体を外的環境から化学的、物理的、及び電気的に絶縁し、さらに、リードの可撓性、圧縮耐性、及びトルク伝達性等の物理特性を向上させる。このような特性は管状絶縁層120の長手方向において変化していてもよい。例えば、管状絶縁層120のショア硬度は長手方向に沿って、図3A〜3Cに関して前述したように変化する。
【0114】
このような管状絶縁層120は例えばコイル状導体130,132上にコーティングされた溶剤であってもよいし、コイル状導体130,132の上に押出成形されたものでもよい。また、まず押出成形された後にコイル状導体130,132の上に配置されたものであってもよい。この場合、あらかじめ形成された管状絶縁層120がコイル状導体130,132上に配置された絶縁材(図示しない)に結合される。この結合は例えばレーザー結合等の高温処理により行うことができる(導体上の絶縁材が熱可塑性材料である場合)。
【0115】
別の実施形態においては、管状絶縁層120がポリマー材の2つ以上の層を有し、これらの層は図4Bに示すように2つ以上の同軸をなす管状材料領域を形成する。管状絶縁層120は2つの同軸管状材料領域120a及び120bを含む。これらの2つの同軸をなす管状材料領域120a及び120bは同一の材料から形成してもよいし異なる材料から形成してもよい。例えば一実施形態においては、外側の材料領域120aは様々な実施形態に関して前述したようなポリイソブチレンウレタン共重合体から形成され、内側の材料領域120bは既存のポリウレタン、シリコーンゴム、SIBS(スチレン/イソブチレン/スチレン共重合体)、及び当業者に周知のリード本体の好適な材料等の別の材料から形成される。別の実施形態においては、外側の材料領域120a及び内側の材料領域120bの両方が、様々な実施形態に関して前述したようなポリイソブチレンウレタン共重合体から形成される。
【0116】
いくつかの実施形態においては、外側材料領域120aは内側材料領域120bの上にコーティングされた溶剤であってもよく、内側材料領域120bの上に押出成形されてもよく、さらには、内側材料領域120bと共押出成形されてもよい。また、押出成形された後に内側材料領域120bの上に配置されてもよい。いくつかの実施形態においては、レーザー結合加工や熱結合加工等の好適な高温処理により内側材料領域120bに対して外側材料領域120aが溶着される。レーザー結合加工を行うことにより、リードの製造時間を早めることができる。さらに、組み立て時間の低減や、製品歩留まりの向上を実現することができる。
【0117】
図4Cに示すさらに別の実施形態においては、リード本体110が3つの同軸をなす管状部材領域120a、120b、及び120cを含む。これらの3つの同軸をなす管状部材領域120a、120b、及び120cは同じ材料から形成してもよいし、それぞれ異なる材料から形成してもよい。例えば一実施形態においては、外側材料領域120a及び内側材料領域120cが本発明の様々な実施形態によるポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、又はポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体により形成され、介在領域120bがポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、又はポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体を含まない物質により形成されていてもよい。別の実施形態においては、外側材料領域120aのみがポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、又はポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体から形成される。
【0118】
図4Aと同様に、図5は本発明の一実施形態による医療用リード110の絶縁部分を示す概略断面図である。この医療用リード110も第1及び第2のコイル状導体130,132を含むが、図4A〜4C示す実施形態とは異なりこれらの導体は互いに同軸をなして配置される(同径状ではない)。外側管状絶縁層120が外側のコイル状導体130の上に配置される。図4A〜4Cに示す管状絶縁層と同様に、図5に示す外側管状絶縁層120もポリイソブチレン系共重合体により形成することができる。外側管状絶縁層120のショア硬度は、例えば図3A〜3Cについて前述したように長手方向に変化していてもよい。内側コイル状導体132はさらなる管状絶縁層122を有し、この管状絶縁層122は内側コイル状導体132を外部環境(及び外側コイル状導体130)から絶縁する。内側の管状絶縁層122も、ポリイソブチレンウレタン共重合体から形成してもよい。又は、リードの物理特性に与える影響を最小限にするために、軟質のシリコーン材(例えばショア硬度が50Aであるもの)から内側の管状絶縁層122を形成してもよい。
【0119】
図5の外側管状絶縁層120は、例えば2つ以上の材料の層等の、2つ以上の同軸をなす環状材料領域を形成する2つ以上の材料領域を有していてもよい。図5の外側管状絶縁層120の形成に好適な2材料領域及び3材料領域は図4B及び4Cに関連して記載したものと同様である。
【0120】
図7Aは、絶縁(非電極)部分100a及び非絶縁(電極)部分100bを含む医療用リード110の一実施形態を示す概略断面図である。この医療用リード110は、ポリマーを含んだ内部長尺状部材140を有する。この内部長尺状部材140の右側部分100bの上には、例えば刺激付与又は除細動のための電極として機能するコイル状導体130が配置される。電極として機能するコイル状導体130は導電層(例えば酸化イリジウム等の層)により被覆されていてもよい。内部長尺状部材140の左側部分100aの上には管状被覆120が配置される。この管状被覆120は、非電極部分100aと電極部分100bとの間の移行を平坦化するものである(つまり、管状被覆120は器具の外径を連続的にするものである)。例えば、管状被覆120の厚さは、導体であるコイル130の径と同一にされ、非電極部分100aの最大径が電極部分100bの最大径と同一になる。(管状被覆120は非電極部分100aと電極部分100bとの間の移行を平坦化する効果に加えて、内部長尺状部材140内の導体の絶縁性を向上させるという効果や、リードの物理特性を向上させるという効果も奏する。)
図7Bは、図7Aに示す器具のB−B線における断面図である。この図には、2つのルーメンを有する内部長尺状部材140及び外側管状絶縁層120が示されている。内部長尺状部材140のルーメンは、例えばガイドワイヤ、1つの導体、及び2つの導体等を収容する。内部長尺状部材は、1つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つ等のルーメンを備えた部材等、他の構成を有する部材であってもよい。
【0121】
図7A及び7Bに示す器具の内部長尺状部材140は、例えば、本明細書に記載のポリイソブチレン系共重合体を用いて形成することができる。内部長尺状部材140のショア硬度は、図2A〜2Cについて前述したように、長手方向に沿って変化していてもよい。内部長尺状部材140の形成にポリイソブチレン系共重合体を用いることの利点は、内部長尺状部材140を熱可塑処理により押出成形できるということである。同様に、外側管状絶縁層120もポリイソブチレン系共重合体により形成することができる。外側管状絶縁層120のショア硬度も、図2A〜2Cについて前述したように、長手方向に沿って変化していてもよい。このような外側管状絶縁層120は例えば内部長尺状部材140上にコーティングされた溶剤であってもよいし、内部長尺状部材140の上に押出成形されてもよく、さらには、内部長尺状部材140と共押出成形されてもよい。また、まず押出成形された後に内部長尺状部材140に配置されたものであってもよい。
【0122】
前述したポリイソブチレン系共重合体を用いて外側管状絶縁層120及び内部長尺状部材140の両方を形成することの利点は、例えばレーザー結合処理等の適宜な高温処理により外側管状絶縁層120を内部長尺状部材140に溶着できることである。このような処理は、例えば図4Aに示すような環状の熱融着領域150を形成するために行われる(この処理は例えば、器具を回転させながらレーザー照射することにより行われる)。器具の全外周にわたってこのような溶着領域を形成することにより、外側管状絶縁層120と内部長尺状部材140とが効果的に密着される。レーザー結合処理により、環状領域だけでなく様々な形状の熱溶着領域を形成することができる。例えば、管状被覆120は内部長尺状部材140の様々な場所にスポット融着され(スポット溶接と同様の処理においてスポット融着させる)、植え込み時における管状被覆120及び内部長尺状部材140の相対移動が許容される程度を超えないようにしてもよい。
【0123】
図8は、本発明の一実施形態による医療用リード110のポリマー(非電極)部分を示す部分概略図である。このリードの図示される部分には、螺旋状部分の単一ループ110sが含まれる。必要に応じて他のループを追加してもよい。一般的に、このような螺旋の径は1.5〜5cmである。
【0124】
図9は、図6AのB−B線における概略断面図であり、ここには第1のコイル状導体130及び第2のコイル状導体132が互いに同径をなして配置されている(図4Aと同様の構成)。コイル状導体130,132は管状の絶縁構造内に配置され、この絶縁構造体の半分は第1の材料120aにより形成され、残りの半分は第2の材料120bにより形成される。第1及び第2の材料のそれぞれが、前述のポリイソブチレン系共重合体から形成されていてもよい。第1の材料120aは、螺旋状部分110sにおいて外側に対向する面である面110soに相当する。第1の材料120aは比較的硬度の高い材料であり、ショア硬度は例えば90Aから95A又は100Aである。第2の材料120bは、螺旋状部分110sにおいて内側に対向する面である面110siに相当する。第2の材料120bは比較的硬度の低い材料であり、ショア硬度は50A、60A、70A、80A、90A、又は100Aである。
【0125】
このような二材料からなるリード絶縁物は螺旋状部分110sの部分にのみ配置してもよいし、リードの全長にわたって配置してもよい。螺旋状部分110sは、左心室リードの一部分、又は冠状静脈洞内に配置される心不全治療リードの一部分であってよい。螺旋状部分110sは、リードを体内において受動的に固定させる部分として機能し得る。一実施形態においては、螺旋状部分の直径は2〜5cmであり、リードの先端から1〜10cm離れた部分により形成される。
【0126】
図10は、図8のB−B線における別の概略断面図であり、ここには第1のコイル状導体130及び第2のコイル状導体132が複数のルーメンを有する長尺状部材の2つのルーメン内に配置されている。この長尺状部材の半分は第1の材料120aにより形成され、残りの半分は第2の材料120bにより形成される。第1及び第2の材料のそれぞれが、前述のポリイソブチレン系共重合体から形成されていてもよい。第1の材料120aは、螺旋状部分110sにおいて外側に対向する面である面110soに相当する。第1の材料120aは比較的硬度の高い材料であり、ショア硬度は例えば図7の第1の材料120aのショア硬度と同等である。第2の材料120bは、螺旋状部分110sにおいて内側に対向する面110siに相当する。第2の材料120bは比較的硬度の低い材料であり、ショア硬度は図7の第2の材料120bのショア硬度と同等である。
【0127】
図9及び10の材料領域120a及び120bは、別々に形成して(例えば、押出成形や型成形等により形成する)、互いに結合してもよい(例えば、熱可塑結合や好適な接着剤により結合する)。又は、材料領域120a及び120bは、単一の押出成形処理により同時に形成してもよい。
【0128】
図8〜10に示す螺旋状部分の形成においては、例えば、最初にリード110を機械的に変形させて螺旋状部分110sを含む形状に変形する。次いで、適切な温度(例えば材料110a及び110bの軟化温度と融解温度の間の温度)にリードを加熱してから冷却することにより、リードに螺旋形状を記憶させる。例えば、リードはその組成に応じて、140〜200度に加熱される。他の実施形態においては、型成形により螺旋状部分が形成される。螺旋状部分は体内において形成することができ、この場合、リードは比較的剛性の高いガイドワイヤ上に配置されて、そのガイドワイヤによりほぼ直線的な形状に保持される。そして、ガイドワイヤを除去することにより記憶した螺旋形状に戻るべくリードが変形する。
【0129】
図11は、本発明の別の実施形態によるリード本体110を示す断面図である。このリード本体110は、それぞれが複数の導電性フィラメント131を含む複数のケーブル導体130を有する。フィラメント131は互いに絶縁されていてもよい。一実施形態においては、ケーブル導体130の外周部分には少なくとも1層の絶縁層134が形成される。一実施形態においては、リード本体110を形成する外側管状絶縁136は、ケーブル導体130、又はケーブル導体130を形成するフィラメント131と共押出成形される。別の実施形態においては、外側管状絶縁136はケーブル導体の周囲に成形される。一実施形態においては、外側管状絶縁136は、様々な実施形態の記載において前述したポリイソブチレンウレタン共重合体から形成される。さらに別の実施形態においては、各ケーブル導体130の外周部分に配置される絶縁層も前述のポリイソブチレンウレタン共重合体から形成される。
【0130】
図12A及び12Bは、本発明の他の実施形態によるリード本体110を示す断面図である。図12Aに示すリード本体110は4つのルーメン152を有するが、ルーメンの数はいくつであってもよい。一実施形態においては、リード本体110は様々な実施形態の記載において前述したポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、又はポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体から、押出成形又は型成形により形成される。12Bに示すリード本体110は、複数ルーメン152を含む内部コア部材154及び少なくとも1層の外側管状絶縁層156を有する。いくつかの実施形態においては、内部コア部材154と外側管状絶縁層156の両方が前述のポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、又はポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体から形成される。別の実施形態においては、外側管状絶縁層156のみがポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、又はポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体から形成される。
【0131】
いくつかの実施形態においては、様々な他のリード本体部品がポリイソブチレンウレタン共重合体から形成される。例えば、高いデュロメータ硬度(例えば85A以上)を有するポリイソブチレンウレタン共重合体が、PEEK(登録商標)やTecothane(登録商標)を用いて従来形成されてきた部品の形成に用いられる。別の実施形態においては、ポリイソブチレンウレタン共重合体が既存のリード本体部品の上に成形される。このようなリード部品の例としては、リード末端、ターミナルピン、リード先端、ヘッダの一部分等が挙げられるがこれらに限定されない。別の実施形態においては、低いデュロメータ硬度(例えば60A未満)を有するポリイソブチレンウレタン共重合体が、シリコーンゴムを用いて従来形成されてきた部品の形成に用いられる。このような部品の例としては、Oリング、シール材、低外傷性先端、及び先端ヘッド等が挙げられる。さらに別の実施形態においては、コネクタやヘッダ等の、パルス発生器においてリードが接続される部分の形成に前述したポリイソブチレンウレタン共重合体が用いられる。
【0132】
いくつかの実施形態においては、ポリイソブチレンウレタン共重合体から形成されたリード本体やリード本体部品の外面に、潤滑性を上げるための処理が施される。例えば一実施形態においては、外面はパリレン層により被覆されるか、生体適合性モノマーを用いてプラズマグラフト処理が施される。このような生体適合性モノマーの例としては、ヘキサメチレンジシラザン、C3F8(八フッ化プロパン)、ポリビニルピロリドン、トリフルオロメタン、オクタフルオロシクロブタン、及びテトラグリムが挙げられる。例えば、テトラグリムを用いて外面にプラズマグラフト処理を施すことにより、ポリエチレングリコールに似た表面が形成される。リード本体やリード本体部品の表面を処理するための化合物及び方法に関しては、2008年9月19日に出願された米国特許仮出願番号61/098,450号明細書「SURFACE MODIFICATION TO IMPROVE LUBRICITY,ABRASION RESISTANCE AND TEMPERATURE RESILIENCE OF LEADS」に記載されている。
【0133】
いくつかの実施形態においては、前述のポリイソブチレンウレタン共重合体は電極の外面上に薄いフィルム状被覆を形成するために用いられる。図13は本発明の一実施形態によるリード本体12を示す部分断面図であり、このリード本体12はコイル状電極200を有する。コイル状電極200は少なくとも1本の導電性フィラメント206を含み、外面210を有して第1端212から第2端214まで延びる。一実施形態においては、コイル状電極200の外面210上にはポリマー被覆220が配され、このポリマー被覆220は少なくとも第1端212から第2端214まで延びる。別の実施形態においては、ポリマー被覆220はコイル状電極の第1端212及び/又は第2端214を越えて延びる。一実施形態においては、ポリマー被覆220が、導電性を増加させることが可能である程度の多孔性を有する。別の実施形態においては、ポリマー被覆220の多孔性は、適宜なイオン性流体で湿った場合には導電性の向上をもたらす程度に高く、かつ、組織内殖を抑制し得る程度に低くなるように構成される。前述したようなポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、又はポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体により形成されたポリマー被覆220は、コイル状除細動電極の被覆として従来より用いられているGORE(登録商標)電極被覆の代わりに用いることができる。
【0134】
ポリマー被覆220は、前述したようなポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、又はポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体から形成される1層以上の薄膜224を含む。コイル状電極200の外面210上に、所望の厚さになるよう複数層の薄膜224を巻きつけてもよい。螺旋状巻きつけ又は円筒状巻きつけ等の手法により、複数層の薄膜224を巻きつけてポリマー被覆220を形成することができる。一実施形態においては、同一又は類似のポリマー材を含んだリード本体12の外面にポリマー被覆220が結合される。別の実施形態においては、コイル状電極を形成するフィラメントの巻線の間に配置されたポリマー充填材に対してポリマー被覆220が結合される。このポリマー充填材は、ポリマー被覆220と同一又は類似の材料から形成することができる。
【0135】
ポリマー被覆220の各層を形成する薄膜224は、当業者に周知の様々な方法により形成することができる。一実施形態においては、エレクトロスピニング法により薄膜224が形成される。繊維を形成できる液体や溶液のエレクトロスピニングに関しては、例えば米国特許第4,043,331号明細書に記載されている。エレクトロスピニング法により、繊維の連続的な網又はマトリックスを形成することができる。一実施形態においては、薄膜224を形成する繊維マトリックスはコイル状電極200の外面210上に直接的に配置される。別の実施形態においては、薄膜224を形成する繊維マトリックスが基材上に形成され、次いで、電極の外面210上に巻きつけられるか、摺動配置される。エレクトロスピニングにより形成された繊維は直径が小さいため、エレクトロスピニングされた繊維マトリックスの表面積は非常に大きく、孔寸法は小さい。別の実施形態においては、繊維マトリックスは導電性を向上させることができる程度の多孔性を有する。
【0136】
本発明による医療用器具に使用されるポリマー部品は、前述したポリイソブチレンウレタン共重合体に加えて任意の補助剤を含んでいてもよい。例えばいくつかの実施形態においては、有機的に変性されたケイ酸塩が補助剤として用いられる。このような補助材により水分の通路が蛇行状になるため、ポリマー部品の透湿性が減少する。さらにこのようなケイ酸塩は、ポリマー材の強度及び弾性率を向上させる。補助剤のその他の例としては、アルミナナノ粒子、銀ナノ粒子、ケイ酸塩/アルミナ/銀ナノ粒子化合物、及び治療薬(詳細は後述する)が挙げられる。
【0137】
治療薬を有する実施形態においては、本発明によるポリマー領域(リード部品等)の下に治療薬を配置してもよいし、ポリマー領域と治療薬を混和させてもよい。また、ポリマー領域に治療薬を付着させてもよい(例えば共有結合や非共有結合等により結合させる)。「治療薬」、「薬剤」、「薬理的に有効な物質」、及び「薬理的に有効な材料」等の用語は本明細書において区別されない。
【0138】
本発明の実施形態においては様々な治療薬を用いることができる。治療薬の例としては、(a)デキサメタゾン、プレドニソロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、サルファサラジン、及びメサラミン等の抗炎症剤、(b)トリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシド、及びニトロフラントイン等の抗菌剤、(c)リドカイン、ブピバカイン、及びロピバカイン等の麻酔薬、(d)パクリタキセル等の増殖抑制剤、(e)シロリムス、バイオリムス、及びエベロリムス等の免疫抑制剤、(f)ヘパリン等の抗血栓剤、ならびに(g)VEGF等の増殖因子が挙げられる。
【0139】
本発明による医療用器具に用いる治療薬の量は広範囲にわたる。ポリマー領域(リード部品等)における治療薬の量は、例えば1重量%以下、2重量%、5重量%、10重量%、又は25重量%以上である。
【0140】
いくつかの実施形態においては、リード本体の一部又は全体が潤滑コーティングにより被覆される。このような潤滑コーティングは、親水性ポリマーや他の材料(ポリ(ビニルピロリドン)、ポリエチレン/オリゴエチレン、ポリHEMA、ポリテトラグリム、親水性の酸及びその誘導体、キトサン及びその誘導体等)から形成できる。これらの材料は、摩擦係数を下げるために架橋されていてもよい。
【0141】
本発明によるポリマー領域は様々な方法により形成することができる。
例えば本発明の一実施形態によるポリイソブチレンウレタン共重合体が熱可塑性を有する場合、様々な熱可塑性処理方法によりポリマー領域を形成できる。このような方法においては、ポリマーがケイ酸塩や治療薬等の任意の追加的物質とともに溶解され、その後冷却される。熱可塑性処理方法の例としては、圧縮成形、射出成形、ブロー成形、スプレー法、真空成形、カレンダー法、押出成形、及びこれらの方法の組み合わせが挙げられる。押出成形においては、シート状、糸状、棒状、管状、及び他の断面形状を有する形成物を様々な長さに形成することができる。上記の方法及び他の熱可塑性処理方法により、器具(器具部品等)の一部又は全体を形成することができる。
【0142】
本発明によるポリマー領域は熱可塑性処理方法だけでなく、例えば溶剤を用いた方法等の他の方法によっても形成することができる。溶剤を用いた方法においては、例えば、ポリマー、及びケイ酸塩や治療薬等の任意の追加的物質を含む溶剤又は懸濁物が生成され、その後溶剤が除去されることによりポリマー領域が形成される。選択される溶剤は1つ以上の溶媒種を含む。溶媒種は、ポリマーを溶解する能力に基づいて選択されるが、乾燥速度、表面張力等の他の特性も考慮される。いくつかの実施形態においては、任意の物質が添加される場合はその任意の物質を溶解又は分散させる能力に基づいて溶剤が選択される。そのため、ケイ酸塩や治療薬等の任意物質がコーティング溶剤中において好適に溶解又は分散される。溶剤を用いた方法の例としては、溶液流延法、スピンコーティング法、ウェブコーティング法、スプレー法、ディッピング法、気中懸濁法等の機械的懸濁法によるコーティング法、インクジェット法、静電気法、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0143】
いくつかの実施形態においては、ポリマーを含んだ溶剤(溶剤を用いた方法が採用される場合)又はポリマーを含んだ溶融物(熱可塑法が採用される場合)がポリマー領域を形成するために基材上に配置される。例えば、基材は、スプレー法や押出成形法によりポリマー被覆が施される植え込み型医療用器具の全て又は一部に相当する。また、基材は型等の型板であってもよく、ポリマー領域は硬化後にこの型から取り出される。別の実施形態においては、例えば押出成形法又は共押出成形法により、基材を用いずに1つ以上のポリマー領域が形成される。ある実施形態においては、医療用器具部品の全体が押出成形される。別の実施形態においては、ポリマー被覆層がその下の医療用器具部品とともに共押出成形される。別の実施形態においては、ポリマーチューブが押出成形され、その後医療用器具基材の上に配置される(例えば、電気リードの上に絶縁性又は非絶縁性のカバーとして配置される)。
【0144】
本発明の様々な実施形態においては、前述したように、医療用リード部品(長尺の管状部品、長尺の複数ルーメン押出成形品等)の硬度又は剛性がその長手方向において変化する。いくつかの実施形態においては、このようなリード部品は、硬度の異なる複数の部品が前もって形成された後に互いに結合される(熱可塑結合、又は適宜な接着剤を用いることにより結合される)ことにより形成される。いくつかの実施形態においては、このようなリード部品は、押出成形中に押し出される物質が変化する押出成形処理により形成される。
【0145】
このような押出成形処理においては、例えば、あらかじめ形成された複数のポリマーが、複数のポリマー供給源から単一の型に供給される(例えば複数の送りネジを用いて供給される)。ポリマー供給源は硬度の異なるポリマーをそれぞれ供給する。ポリマー供給源から供給される共重合体の相対的な量を押出時に変化させることにより、異なる硬度を有する押出成形品(長手方向又は径方向において硬度が変化する押出成形品)が形成される。
【0146】
押出成形処理の別の例としては反応押出成形処理が挙げられる。この反応押出成形処理においては、反応物質(ポリイソブチレンジオール、ポリテトラメチレンオキシドジオールやポリヘキサメチレンオキシドジオール等のポリエーテルジオール、1,4−ブタンジオール、MDI等のジイソシアネート、及び好適な触媒等)が適宜な流量調整器を用いて押出機に供給される。この種の押出機に関しては、例えば、Rausch Jr.らに付与された米国特許第3,642,964号明細書、及びMeijsらに付与された米国特許第6,627,724号明細書に記載されている。押出機は重合を促進する温度にて作動される。各反応物質の相対的な供給率は経時的に変化され、これにより異なる硬度を有する押出成形品が形成される。押出成形されたポリマーは反応を完了させるために後硬化され、その後、応力を緩和させるために軟化処理を施してもよい。
実施例
実験
材料
PTMO(TERATHANE(登録商標)1000ポリエーテルグリコール)、4,40−メチレンビス(イソシアン酸フェニル)(98%)、トルエン(99%)、1,4−ブタネジオール(99%)、過酸化水素溶液(30%)、塩化コバルト六水和物(98%)、及びTriton(登録商標)X−100をSigma−Aldrich社(米国ミズーリ州セントルイス)より入手して使用した。Sn(Oct)(米国イリノイ州ナイルスPolyscience社の第一スズオクトアート)、及びテトラ−n−ブチルーアンモニウムブロミド(TBAB)(98+%、米国マサチューセッツ州ワードヒルAlfa Aesar社)を使用した。本実験に用いた対照試料はDow Chemical社のPELLETHANE(登録商標)2363−55D及びPELLETHANE(登録商標)2363−80Aである。硬度及びPIB対PTMOの配合がそれぞれ異なるポリウレタンが前述のように合成された。これらのポリウレタンを下記の表1に示す。
【0147】
【表1】

代表的なポリイソブチレンウレタン共重合体(60A 82)を二工程処理により形成した手順を以下に記載する。まず、HO−アリル−PIB−アリル−OH(M=2200Da、5.2g、2.36ミリモル)及びPTMO(M=1000Da、1.3g、1.3ミリモル)を乾燥トルエン(10mL)を用いて共沸蒸留により乾燥させた。混合物を、真空状態において3時間の間45度に維持した。乾燥トルエン(25mL)、次いでSn(Oct)(28.3mg、0.07ミリモル)を加えた後、混合物を、乾性窒素ガスの緩気流下において80度に加熱した。次いで、MDI(1.76g、7.02ミリモル)を混合物に加え、混合物を30分間強く攪拌した。その後、BDO(302mg、3.36ミリモル)を混合物に加え、混合物を100度にて4時間攪拌した。混合物を室温まで冷却した後Teflon(登録商標)製の型に注ぎ入れ、48時間室温にて放置することにより溶剤を蒸発させた。最後に、ポリマーを真空状態において50度の温度で12時間乾燥させた。PTMOを含まないポリイソブチレンウレタン共重合体は、Ojha他、「Syntheses and Characterization of Novel Biostable Polyisobutylene Based Thermoplastic Polyurethanes」、Polymer、2009年、50、p.3448−3457に記載の方法にて形成された。飽和PIB−PTMOポリウレタンは、Bela他、「Living Carbocation Polymerization.XX.Synthesis of Allyl−Telechelic Polyisobutylenes by One−Pot Polymerization− Functionalization」、Polymer.Mater.Sci.Eng.、1988年、58、p.869−872に記載の方法で生成されたHO−プロピルーPIB−プロピルーOHを用いて合成した。
【0148】
ポリウレタンは、Carver社(インディアナ州ウォバッシュ)の実験室用プレス機モデルCを用い、負荷約7,257.6kg(16,000lbs)、温度160度にて圧縮成形した。ポリウレタンを厚さ0.2〜0.5mmの薄膜に成形した後、幅約3mm、長さ約30mmの長方形片に裁断した。ポリウレタンの加速劣化を行う前に、H NMR分析及びGPC分析によりポリウレタンの特性を検査した。いくつかの組成物(80A 91、100A、60A)はGPC溶離剤に溶離しなかった。
【0149】
ポリウレタンの符号については、最初の文字がショアA硬度を表し、続く2桁の数字がPIB:PTMOの比率を表す。これらの後に続く文字は試験を行ったポリウレタン中において固有であるポリウレタンを表す。例えば、「PIB」は、軟質セグメント内にPIBのみが含まれることを示し、「SAT」は、使用されるPIB前駆体がヒドロキシアリル末端基に対して飽和ヒドロキシプロピル末端基を含むことを表している。P55DはPELLETHANE(登録商標)2363−55Dであり、P80AはPELLETHANE(登録商標)2363−80Aである。
管内酸化処理
試料をガラス瓶に入れ、20%のHを含んだ0.1MのCoCI 水系溶液に浸し、50度にて保管した。ラジカル濃度を一定にするために、溶液は1日おきに交換した。1週間、2週間、4週間、6週間、及び12週間を経た時点で酸化環境から試料を取り出し、水系の1%TRITON(登録商標)X−100界面活性剤溶液により7回洗浄した。その後、エタノールにより5回洗浄し、精製水により5回洗浄してから、恒量が得られるまで真空状態にて80度で乾燥させた。
特性検査
乾燥された試料の特性を、重量損失測定、ATR−FTIR分光法、最大引張強度測定、破断点伸び測定、走査型電子顕微鏡(SEM)、GPC分析により検査した。検査結果は、n=3を用いて表す。
実施例1
重量損失測定
乾燥したポリウレタンフィルムの重量を、Sartorius社(米国イリノイ州エルクグローブ)のMC1分析用はかりAC 210OSを用いて酸化処理の前後に測定した。図14に、経過時間に対する重量損失を示す。PIB−PTMOポリイソブチレンウレタン共重合体の12週間経過後の重量損失は非常に少なく、組成に応じて6〜15%であった。60Aの組においては、90:10の組成物の重量損失は6%であり、80:20の組成物の8%よりも低かった。60A 91 SATと不飽和60A 91の重量損失は同程度であった。同様に、80Aの組においてもPTMO含有量の低い方が重量損失も低く、PTMO30%で15%、PTMO20%で10%、及びPTMO10%で6%であった。つまり、重量損失は、ポリウレタン中のPTMO含有量と相関していた。
【0150】
図15にPTMO含有量と12週間後の重量損失との関係を示す。このグラフが示すように、PIB−PTMOポリイソブチレンウレタン共重合体については、重量損失とPTMO含有量がほぼ直線的に比例している。これは、ポリエーテル軟質セグメントの金属イオン酸化により劣化がもたらされており、この成分がポリウレタンから除去すべき成分であるという予想を裏付けるものであった。図15に示すように、60A 82の重量損失は、PTMO含有量から予期したものよりも低かった。PIBのみを含んだポリイソブチレンウレタン共重合体の重量損失も低く、前記の予想に一致する。体積に対して表面積が非常に大きいため、少量の腐食が表面において発生すると思われる。PELLETHANE(登録商標)対照試料は管内において1週間経過後にすでに顕著な重量損失がみられた。そして、P80Aは7週間以下、P55Dは9週間で完全に劣化した。軟質セグメントをより多く含むP80AはP55Dよりも速く重量を損失することが判明したが、これは酸化メカニズムと一致する。
実施例2
ATR−FTIR分光法
Thermo Electron Corporation(米国マサチューセッツ州ウォルサム)のNicolet(登録商標)4700FT−IR装置と、Thermo Electron Corporationのダイヤモンド結晶を備えたSmart Orbit(登録商標)ATRアクセサリとを用いてATR−FTIR分光法による分析を行った。各試料の1つのスペクトルを取得するために平均32回スキャンした。洗浄及び乾燥されたポリイソブチレンウレタン共重合体片をクリスタルの上に置き、支持取付具によりしっかりと固定して分析のためにスキャンを行った。分析の対象となるのは〜1700cm−1及び〜1100cm−1の範囲であり、この範囲には、硬質セグメント劣化生成物(〜1650cm−1)、軟質セグメントの劣化部分(〜1110cm−1)、生成物(〜1170cm−1)、及び正規化された参照ピーク(〜1410cm−1)が含まれる。
【0151】
ATR−FTIR分光法による分析は、金属イオン酸化メカニズムの存在及び進行を確認するために行った。このメカニズムにおいては、ヒドロキシルラジカルがポリエーテルセグメントからa−水素を抽出する。形成されたラジカルは他の鎖ラジカルと合体して架橋接合を形成するか、もしくは、他のヒドロキシルラジカルと反応してヘミアセタールを形成する。ヘミアセタールによりエステルが酸化され、酸化したエステルが加水分解されて鎖が切断される。したがって、軟質セグメントエーテルのピークの後及び/又は架橋のピーク発生に続いて劣化の進行が確認された。すべてのスペクトルは1410cm−1のピークに正規化された。これは、硬質セグメントの芳香族CーC伸縮振動に一致する。
【0152】
すべてのPIB−PTMOポリウレタンのFTIRスペクトルの変化は極めて小さかった。図16に60A 82の代表的なスペクトルを例として示す。脂肪族エーテルC−O−Cの1110cm−1のピークに明らかな変化は見られず、〜1174cm−1のC−O−C分岐ピークはなかった。しかし、時間の経過につれ脂肪族ピーク増加が確認された(1470cm−1の脂肪族CH屈曲、1388cm−1のPIBジメチルの縦揺れ、及び1365cm−1の脂肪族CHの縦揺れ)。このような様態は、80度での真空乾燥中に、PIBセグメントが表面への移動することによりもたらされる。これらのピークは経時的に増加するため、表面においてPTMOがPIBに置き換わっていることがわかる(ATR−FTlR分光法による観察では深さ1〜2μm)。図14、15、24及び25に示す重量損失及びSEMのデータも考慮した結果、いくらかのPTMO劣化が発生しているという結論が出された。これらのPIB−PTMOポリイソブチレンウレタン共重合体においては架橋が発生していない場合あるが、これは、2つのポリマーラジカルが切断される前に結合できるほどPTMOの含有量又は流動性が高くないからである。同様の結果が他のPIB−PTMOスペクトルでも確認された。60A 91の組は、PIBジオール中の不飽和アリル部分の酸化に対する脆弱性を確認するために今回の試験に加えた。
【0153】
飽和ジオールを含んだポリイソブチレンウレタン共重合体のFTIRスペクトルは、非飽和ジオールを含んだポリイソブチレンウレタン共重合体のFTIRスペクトルと同じであった。さらに、ポリイソブチレンウレタン共重合体においてはポリエーテル軟質セグメント劣化が起こるのみであり、硬質セグメント劣化は発生しないという推測を確認するために60A PIBも追加した。これらのスペクトルは図17に示す。図17において何も変化がみられないことから、このような推測は事実であることが証明された。劣化するポリエーテルが存在しないため、1388cm−1のPIBピーク及び1111cm−1のエーテルピークのどちらにも変化が見られなかった。また、硬質セグメントT2の劣化も確認されなかった。変化の傾向が見られたIRピークを以下の表2に示す。
【0154】
【表2】

PELLETHANE(登録商標)試料の様態は、重量損失データ及びこれまでの検証データと整合するものであった。P55Dのスペクトルを図18に示す。図18のスペクトルは1週間経過時点では1109cm−1の脂肪族C−O−Cピークにおいて顕著な低減が確認され、6週間まではより緩やかに変化した。同時に、わずか1週間経過後に1364cm−1の脂肪族α―CHピークが消失した。また、1172cm−1のC−O−C分岐ピークが1週間経過後すぐに確認され、その後一定の大きさを保った。後で示すように、PELLETHANE(登録商標)試料は1週間経過後から定速的又は加速的に劣化し、これはIRスペクトルに整合する。TR−FTIR分光法は表面特性を検査する方法であり、表面で発生する劣化が確認される。したがって、表面において脆弱なセグメントはほぼ瞬時に酸化し、より深い位置での劣化は、他の分析での確認結果より、その後の数週間において発生するという結論を出した。図19に示すP80AのATR−FTIRスペクトルにおいても、非常によく似た結果が出た。エーテルピーク及び架橋ピークの違いの大きさは、P55Dとは異なっていた。引張強度データ(後述する)により、P55Dにおいては架橋よりも鎖切断の影響が強く、一方P80Aでは架橋及び鎖切断の両方が交互に強い影響を及ぼしていることがわかった。
実施例3
GPC分析
分子量及び分子量分布をWaters社のHPCLシステムを用いて計測した。このHPCLシステムは、HPLCポンプ510モデル、示差屈折計410モデル、吸光度検出器441モデル、多角度光散乱(MALLS)検出器(米国カルフォルニア州サンタバーバラ所在のWyatt Technology社のMini−Dawn(登録商標))、試料プロセッサ712モデル、500、103、104、105及び100Åと連続して連結された5つのUltrastyragel(登録商標)GPCコラム(マサチューセッツ州ミルフォード所在のWaters社)を備えていた。水素結合撹乱物質であるテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)をテトラヒドロフラン(THF)(2重量%)に溶かし、ポリイソブチレンウレタン共重合体の溶解に用いた。THF:TBABが98:2(重量:重量)である溶液を、1mL min−1の流速にてキャリヤ溶液として用いた。
【0155】
ポリイソブチレンウレタン共重合体をTHF対TBABが98:2(重量:重量)である溶液に溶かした。しかし、いくつかの組成物は溶けなかった。合成直後のポリマーのGPC結果と、圧縮成形された未処理のフィルム(0週間)のGPC結果との比較により、高温での処理中にいくらかの架橋又は他の熱劣化が発生していることがわかった。しかしながら、このようなわずかな変化はポリイソブチレンウレタン共重合体の特性に影響を与えるものではなかった。
【0156】
図20にP55Dの屈折率の軌跡を示す。数平均分子量(M)は0週目の122kDaから4週目の47kDa、6週目の37kDaに減少し、分子量分布(MWD)は0週目の1.6から6週目の3.0に増加した。
【0157】
図21にP80Aの屈折率の軌跡を示す。Mは、処理前の84kDAから4週目の18kDA、6週目の14kDaと顕著な減少傾向をみせた。いくつかの低分子量劣化生成品の増加が4週目まで確認された。同時に、MWDも増加した。このような結果はATR−FTIR、重量損失、及び引張強度の結果と一致する。
【0158】
図22に60A 91 SATの屈折率の軌跡を示す。分子量の損失は重量損失及び引張強度データと一致して最小であった。Mは6週目以降に130kDaから112kDaに若干減少し、12週目に110kDaに極僅かに減少した。一方、MWDは1.6から変化しなかった。
実施例4
機械的試験
引張強度試験は、室温及び大気圧環境にてInstro社(米国マサチューセッツ州ノーウッド)の引張試験機と約23kg(50lb)のロードセルを用い、破断まで50mm min−1の伸張速度にて行った。最大引張強度及び破断点伸びを記録した。
【0159】
処理されていない原型の試料の引張強度をパーセントで表し、経過時間との関係を図23に示す。PELLETHANE(登録商標)ウレタン共重合体とPIB−PTMOポリイソブチレンウレタン共重合体のグラフ線が大きく異なっていることが確認できる。さらにPIB−PTMOポリイソブチレンウレタン共重合体はすべての試料において引張強度の低減が僅かであることが確認できたが、引張強度損失の速度は試料によって異なっていた。PIB−PTMOポリイソブチレンウレタン共重合体の損失は試料により異なっていたが、この差異はPTMO含有量とほぼ相関するものであった。60Aの組においては、異なる組成における引張強度損失は同等であった。60A 91の12週目のデータは試料の状態不良のため測定できなかった。しかしながら、6週目までの傾向は、60A 91 SATの傾向と非常に近いものであった。60A PIB試料の引張強度の損失はわずかであり、前述の重量損失及びFTIR検証でも判明したように劣化はみられなかった。従って、1〜2MPaの減少は、ロードセル及び試験機の試験誤差であると推測される。80Aの組においては、80:20の組成物の引張強度の減少が21%以下であり、90:10の組成物の減少は13%以下であった。80A 73(図示しない)の引張強度は初めに上昇した後緩やかに減少した。これは、初期の架橋と、その後の試料中のPTMO量の増加に伴う鎖切断との影響によるものである。この分量のPTMO(全ポリイソブチレンウレタン共重合体の19.5%)が存在する場合、架橋と鎖切断の両方が発生し得る濃度の鎖ラジカルが存在する。80A 73の引張強度%は12週間目では他のPIB−PTMOポリイソブチレンウレタン共重合体よりも高かったが、それ以降の経過時間において急に減少することがデータの外挿から予想される。P55Dの劣化耐性はP80Aよりも高いが、これは結晶化度がより高いためである。したがって、100A 82は80A 82と同等もしくはより高い強度を有すると予測されたが、引張強度はより大きく減少した。このことから、PIBは硬質セグメントに比べて表面を守る機能が高いことがわかる。実際にいくつかの試料は抑制期間を呈し、引張強度は2週目、4週目、またさらには6週目(特に80A 82)まで減少しなかった。PIB−PTMOポリイソブチレンウレタン共重合体の最大伸びは処理の段階中においてあまり変化しなかった。PELLETHANE(登録商標)試料については、ここでも予想された金属イオン酸化現象がみられた。P55Dの引張強度は6週目まで徐々に減少していき、12週間目には管内で破損してしまったため検査不可能であった。P80Aの引張強度は1週目以降から増加した後急速に減少して12週間目までに破損した。これは、80A 73で確認されたのと同様に、まず鎖が架橋され、その後切断されたためである。P55Dにも架橋が発生することがATR−FTIRの結果からわかっているが、この組成においては鎖切断の方がより影響力の強い酸化過程であることが推測される。PELLETHANE(登録商標)試料の弾性率は時間経過とともにほぼ直線状に増加し、IRデータと一致して架橋が起こっていることが分かる。一方、PIB−PTMOポリイソブチレンウレタン共重合体の弾性率は一定であった。
実施例5
SEM(走査型電子顕微鏡)
乾燥した処理済みのフィルムの一部を切り離してSEM分析を行った。Denton社(ニュージャージー州ムーアズタウン)のVacuum Desk IV冷陰極スパッタコータを用いて金のスパッタ膜を施した試料の表面の形態を観察した。試料には出力25%にて1.5分間スパッタ処理を施し、厚さ75Å以下の金膜を形成した。被覆された試料は日本電子株式会社(米国マサチューセッツ州ピーボディ)の電界放出形走査電子顕微鏡JSM−7401Fを用いて検査した。様々な写真が倍率30倍及び300倍にて撮影された。
【0160】
300倍の倍率で撮影された代表的なSEM写真を図24及び25に示す。図24はPELLETHANE(登録商標)試料の写真であり、これらの写真から処理時間に応じた表面劣化が明瞭に確認できる。ひび割れの面密度は時間の経過につれ増加し、これまでの試験データを目視にて確認できた。図25は、硬度の異なる80:20組成物の走査電子顕微鏡写真であり、硬質セグメントが表面形態に及ぼす影響を示すものである。これらのポリイソブチレンウレタン共重合体の劣化反応は、PELLETHANE(登録商標)とは明らかに異なるものであったが、軟質セグメント含有量の増加につれて表面欠陥が増加することが確認された。12週間後の60A 82はいくらかの点腐食を有し、80A 82はこれよりは少ない点腐食を有し、100A 82の表面様態はほとんど変化しなかった。いくつかの試料においていくらかの小孔が確認されたが、これらは劣化によるものではないと思われる。このような小孔は劣化の発生しなかった60A PIB試料においても確認されたため、圧縮成形処理に起因するものであると推測される。
実施例6
劣化試験
PELLETHANE(登録商標)80A、PELLETHANE(登録商標)55D、Elast−Eon(登録商標)E2A、及びPIB−PU 80A等の様々な試料の生体安定性を、負荷をかけた状態にて試験した。本試験で用いたPIB−PU 80Aの組成を以下の表3に示す。
【0161】
【表3】

本試験においては、金属イオン酸化及び環境応力亀裂の発生が加速化される環境下に試料を置いた。試料を150%に伸張させ、腐食性かつ酸化性のCoCI/H溶液に50度にて15週間放置した。溶液はラジカル濃度を一定に保つために1日おきに交換した。試料を三週間毎に取り出して、質量損失(劣化)、引張強度損失、分子量変化及び表面腐食を検査した。
【0162】
図26及び27は3週間目及び6週間目の質量損失(劣化)を示す棒グラフである。3週間目及び6週間目において、PELLETHANE(登録商標)80A及びPELLETHANE(登録商標)55Dの平均質量損失%が最も大きかった。3週間目において、Elast−Eon(登録商標)E2Aの平均質量損失%が0.74%であり、PIB−PU80試料が1.51%であった。6週目では、Elast−Eon(登録商標)E2Aが3%、PIB−PU80試料が4%であった。
【0163】
3週間目における各試料の引張強度損失を以下の表4に示す。
【0164】
【表4】

PELLETHANE(登録商標)80Aの3週間後の引張強度損失は56%であった。PELLETHANE(登録商標)55Dの引張強度損失は16%であった。Elast−Eon(登録商標)E2AとPIB−PU80の結果は同等であり、引張強度損失は8%であった。
【0165】
試料は、ART−FTIR分光法によっても評価した。図28〜31に、評価サンプルの0週間及び3週間後のFTIRスペクトルを示す。前述の試験結果と同様に、3週間後において、PELLETHANE(登録商標)80A及びPELLETHANE(登録商標)55Dの試料の劣化が最も顕著であった。
【0166】
試料はSEMを用いても評価した。0週間目及び3週間目に撮影した各試料のSEM写真を図32に示す。上側二段に示すPELLETHANE(登録商標)試料は3週間目に割れ及び表面劣化が発生していた。三段目及び四段目のElast−Eon(登録商標)E2A及びPIB−PU80の3週間目の表面劣化はわずかであった。
【0167】
本発明は、本明細書に記載する実施形態以外の様々な形態で実施可能であることが当業者に明らかになるであろう。特許請求の範囲に記載された本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、形状及び詳細における別例が実施可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーメンを有する長尺状のリード本体を備え、同ルーメン内には少なくとも1つの導体が配置され、少なくとも1つの電極が同導体に動作可能に接続されるとともにリード本体に沿って配置され、前記リード本体のショア硬度は30A〜75Dであり、リード本体は軟質ポリマーセグメントと硬質ポリマーセグメントとを含んだポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかを含み、
前記軟質ポリマーセグメントはポリイソブチレンセグメントと、ポリエーテルジオール、フッ素化ポリエーテルジオール、フッ素ポリマージオール、ポリエステルジオール、ポリアクリレートジオール、ポリメタクリレートジオール、ポリシロキサンジオール、フッ化ポリシロキサンジオール、及びポリカーボネートジオールのいずれかの残留物を含む少なくとも1つの追加的ポリマーセグメントとを含み、
前記ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体内の軟質セグメント対硬質セグメントの重量比が50:50乃至90:10である植え込み型医療用リード。
【請求項2】
前記ポリイソブチレンセグメント対追加的ポリマーセグメントの重量比が70:30乃至90:10である請求項1に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項3】
前記軟質ポリマーセグメントがポリイソブチレンセグメント、及びポリエーテルジオールの残留物を含む請求項1に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項4】
前記軟質ポリマーセグメントがポリイソブチレンセグメント、及びポリテトラメチレンオキシドジオールの残留物を含む請求項1に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項5】
前記ポリイソブチレンセグメント対ポリテトラメチレンオキシドジオールの重量比が70:30乃至90:10である請求項4に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項6】
前記ポリイソブチレンセグメントが飽和ポリイソブチレンジオールの残留物を含む請求項1に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項7】
前記リード本体が内部ルーメンを有し、同内部ルーメンの内面がポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかを含む請求項1に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項8】
前記導体が同径構造を有するコイル状導体であり、前記内面がコイル状導体の外面上に位置する請求項7に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項9】
前記リード本体が内側管状層及び外側管状層を有し、同内側管状層及び外側管状層の少なくとも一方がポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかを含む請求項1に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項10】
同軸構造を有する第1コイル状導体及び第2コイル状導体を有し、前記内側管状層が同第1コイル状導体及び第2コイル状導体の間に配置され、前記外側管状層が第2コイル状導体の上に配置される請求項9に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項11】
前記リード本体のショア硬度が30A〜100Aである請求項1に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項12】
ルーメンを有する長尺状のリード本体を備え、同ルーメン内には少なくとも1つの導体が配置され、少なくとも1つの電極が同導体に動作可能に接続されるとともにリード本体に沿って配置され、リード本体は基端側領域、中間領域、及び先端側領域のそれぞれにおいてポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかを含み、前記基端側領域は第1のショア硬度を有し、前記中間領域は第2のショア硬度を有し、前記先端側領域は第3のショア硬度を有し、
前記ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体は軟質ポリマーセグメント及び硬質ポリマーセグメントを含み、同軟質ポリマーセグメントはポリイソブチレンセグメントと、ポリエーテルジオール、フッ素化ポリエーテルジオール、フッ素ポリマージオール、ポリエステルジオール、ポリアクリレートジオール、ポリメタクリレートジオール、ポリシロキサンジオール、フッ化ポリシロキサンジオール、及びポリカーボネートジオールのいずれかの残留物を含む少なくとも1つの追加的ポリマーセグメントとを含む植え込み型医療用リード。
【請求項13】
前記先端側領域のショア硬度が30A〜70Aである請求項12に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項14】
前記中間領域のショア硬度が60A〜85Aである請求項12に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項15】
前記基端側領域のショア硬度が85A〜100Aである請求項12に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項16】
前記リード本体が前記基端側領域、中間領域、及び先端側領域のいずれかに近接する1つ以上の移行領域を有し、同移行領域のショア硬度は近接する基端側領域、中間領域、及び先端領域のショア硬度と異なる請求項12に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項17】
前記基端側領域、中間領域、及び先端領域の追加的ポリマーセグメントがポリテトラメチレンオキシドジオールの残留物を含む請求項12に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項18】
前記基端側領域、中間領域、及び先端領域中のポリイソブチレンセグメント対ポリテトラメチレンオキシドジオールの重量比が70:30乃至90:10である請求項17に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項19】
前記ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかにおいて軟質ポリマーセグメント対硬質ポリマーセグメントの重量比が50:50乃至90:10である請求項12に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項20】
前記基端側領域が、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかにおける軟質ポリマーセグメント対硬質ポリマーセグメントの第1の重量比を有し、前記中間領域が、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかにおける軟質ポリマーセグメント対硬質ポリマーセグメントの第2の重量比を有し、前記先端側領域が、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかにおける軟質ポリマーセグメント対硬質ポリマーセグメントの第3の重量比を有する請求項12に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項21】
内部に少なくとも1つのルーメンが長手方向に延びる内部管状部品を含むとともに可撓性を有する長尺状のリード本体と、
前記内部管状部品の少なくとも1つのルーメン内を延び、リード本体に対して露出された面を含む電極を有する少なくとも1つの導体と、
前記リード本体、導体、及び電極の少なくともいずれかに接続される少なくとも1つのポリマー部品と、を備える植え込み型医療用リードであって、
前記少なくとも1つのポリマー部品は、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかを含み、同ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体は硬質ポリマーセグメント及び軟質ポリマーセグメントを含み、前記軟質ポリマーセグメントはポリイソブチレンセグメントと、ポリエーテルジオール、フッ素化ポリエーテルジオール、フッ素ポリマージオール、ポリエステルジオール、ポリアクリレートジオール、ポリメタクリレートジオール、ポリシロキサンジオール、フッ化ポリシロキサンジオール、及びポリカーボネートジオールのいずれかの残留物を含む少なくとも1つの追加的ポリマーセグメントとを含む植え込み型医療用リード。
【請求項22】
前記少なくとも1つのポリマー部品がリード終端、ターミナルピン、リード先端、Oリング、シール、及びヘッダのいずれかを含む請求項21に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項23】
前記少なくとも1つのポリマー部品が前記電極の露出した面の上及び近傍のいずれかに配置される薄膜を含む請求項21に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項24】
前記薄膜が、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかからエレクトロスピニング法により形成された複数の繊維を含む請求項21に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項25】
前記薄膜が導体の一部分に配置される請求項21に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項26】
少なくとも1つのポリマー層が、前記電極の露出した面の近傍に配置されるポリマーチューブを含む請求項21に記載の植え込み型医療用リード。
【請求項27】
植え込み型医療用リードを形成する方法であって、
ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかを含むポリマー材からショア硬度が30A〜75Dであるリード本体を形成する工程と、
前記リード本体を、導体及び同導体に接続する電極に連結する工程と、を含み、
前記ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体が軟質ポリマーセグメント及び硬質ポリマーセグメントを有し、軟質ポリマーセグメント対硬質ポリマーセグメントの重量比が50:50乃至90:10であり、前記軟質ポリマーセグメントがポリイソブチレンセグメントと、ポリエーテルジオール、フッ素化ポリエーテルジオール、フッ素ポリマージオール、ポリエステルジオール、ポリアクリレートジオール、ポリメタクリレートジオール、ポリシロキサンジオール、フッ化ポリシロキサンジオール、及びポリカーボネートジオールのいずれかの残留物を含む少なくとも1つの追加的ポリマーセグメントとを含む方法。
【請求項28】
前記リード本体が、ポリマー材の押出成形及び射出成形のいずれかにより形成される請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体が不飽和ポリイソブチレンセグメントを含む請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体が、数平均分子量が1,000〜5,000である飽和ポリイソブチレンジオールから形成されるポリイソブチレンセグメントを含む請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体が、数平均分子量が500〜3,000であるポリテトラメチレンオキシドジオールから形成されるポリテトラメチレンオキシドセグメントを含む請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかを、加工補助剤及び安定剤の少なくとも一方と混合して混合物を形成する工程をさらに含む請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記混合物からリード本体を押出成形する工程をさらに含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記安定剤が可塑剤及びワックスのいずれかであり、かつ、酸化防止剤及び熱安定剤のいずれかである請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記リード本体を形成する工程が、第1のショア硬度を有する基端側領域、第2のショア硬度を有する中間領域、及び第3のショア硬度を有する先端側領域を形成する工程を含み、同基端側領域、中間領域、及び先端側領域のそれぞれがポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかを含む請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記基端側領域が、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかにおける軟質ポリマーセグメント対硬質ポリマーセグメントの第1の重量比を有し、前記中間領域が、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかにおける軟質ポリマーセグメント対硬質ポリマーセグメントの第2の重量比を有し、前記先端側領域が、ポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかにおける軟質ポリマーセグメント対硬質ポリマーセグメントの第3の重量比を有する請求項27に記載の方法。
【請求項37】
前記リード本体を形成する工程がポリイソブチレンウレタン共重合体、ポリイソブチレン尿素共重合体、及びポリイソブチレンウレタン/尿素共重合体のいずれかをエレクトロスピニング法にて加工する工程を含む請求項27に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公表番号】特表2013−503711(P2013−503711A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528051(P2012−528051)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/047703
【国際公開番号】WO2011/028920
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】