説明

ポリイノシン酸−ポリシチジル酸を基礎としたアジュバントを含む粘膜免疫原性物質

本発明は、ポリヌクレオチドアジュバント(PICKCa)組成物、および、免疫応答、特に粘膜免疫応答を引き起こす際の使用方法を提供する。ポリヌクレオチドアジュバント組成物は、ポリリボイノシン酸−ポリリボシチジル酸(PIC)、少なくとも1種類の抗生物質および少なくとも1種の陽イオンを含んでいる。本発明はまた、抗原(例えば、ワクチンに見られるようなもの)などの他の免疫原性組成物と共にポリヌクレオチドアジュバント組成物が含まれている免疫原性組成物を提供する。本発明はさらに、このようなアジュバント組成物の使用方法、特に免疫応答、とりわけ抗原性化合物に対する粘膜免疫応答を引き起こす際の使用方法を意図している。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、概して、免疫原性組成物およびその利用方法に関する。より詳細には、本発明は、一つ以上の抗原性物質と共にポリヌクレオチドアジュバントを含み、宿主における疾患特異的粘膜免疫応答を引き起こすために用いられる、免疫原性組成物に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
免疫システムは、特異免疫および非特異免疫の何れをも示す。非特異免疫は、いろいろある中で、例えば、マクロファージまたは顆粒球によるファゴサイトーシス(外来微粒子または抗原の取り込み)、およびナチュラルキラー(NK)細胞活性など、様々な細胞およびメカニズムを含んでいる。非特異免疫は、進化があまり進んでいないメカニズムに依存しており、特異免疫応答の典型的な特徴である、特異性および記憶の獲得性質を示さない。特異免疫と非特異免疫との主要な違いは、B細胞およびT細胞特異性に基づくものである。これらの細胞は、主に、特定の抗原による活性化の後にそれらに対する応答性を獲得し、将来この特定の抗原にさらされることがあったときに、記憶を提示するメカニズムを有している。その結果、ワクチン接種(特異性および記憶を含む)は、有害な病原体に対する防御のための有効な手順となる。
【0003】
通常、Bリンパ球およびTリンパ球は、特定の抗原に特異的なレセプターを細胞表面に提示しており、特異免疫を生み出している。特異免疫システムは、2つの手段により、異なる抗原に応答できる:1)は液性免疫であり、B細胞刺激およびB細胞による抗体もしくは免疫グロブリンの産生、ならびにヘルパーT細胞(主に、Th2)を含むものである、および2)は細胞性免疫であり、細胞傷害性Tリンパ球(CTLs)を包含するT細胞を通常含み、CTL応答の産生に関与する他の細胞(例えば、抗原提示細胞およびTh1細胞)もまた含むものである。
【0004】
免疫システムは、感染に対抗する免疫応答の相違する特異的な範囲能力を発達させてきた。ヒトの免疫システムは、大きくわけて、相互作用しあう二つのサブシステムに分けられる。全身性免疫システムは、リンパ節、骨髄および脾臓を含んでなり、内部器官および内部組織を巡回する。また、粘膜免疫システムは、呼吸器系管、胃腸管、知覚路および尿生殖路の上皮から体内に侵入してくる病原体に対する防御壁を提供する粘膜表面および外分泌線と結びついている、リンパ系組織を含んでなる。
【0005】
全身性免疫システムおよび粘膜免疫システムの免疫応答は、特定の機能とともに進化してきており、病原体に対する防御メカニズムにおいて大部分は相違したままである。例えば、粘膜免疫は、一般的に、ある特別の抗体のクラスである、免疫グロブリンA(IgA)抗体、主として粘膜表面を保護する分泌型IgA(S−IgA)の存在により特徴付けられる。S−IgA抗体は、粘膜中にあり、粘膜防壁を未だ通過していない病原体を中和する。
【0006】
主に、抗原の筋肉投与、皮下投与、腹腔内投与または皮内投与を伴う既存の免疫化方法は、異なるクラスの抗体の産生、例えば、病原体が体内に侵入した後にその病原体を中和する免疫グロブリンG(IgG)の産生において、全身性免疫システムを喚起する。注射によるワクチン投与は、十分なS−IgA応答を喚起しない傾向にある。さらに、全身性免疫は、粘膜面を介した病原体の体内への侵入を、必ずしも阻止しない。したがって、全身性免疫応答を誘導するのみであるワクチン接種の方法では、被験体は、ひとたび血液の循環に入った病原体に対抗する身体の免疫システムと共に、粘膜面を介して感染し易いままである。
【0007】
一方、粘膜投与は、粘膜免疫応答(局所的、ときには、投与部位から離れた部位)および全身性免疫応答を誘導する。さらに、注射される免疫化レジメ(regime)による従来の方法には、感染の危険性ならびに注射部位における硬結(組織の硬化)、出血(hemorrhage)(出血(bleeding))および/または壊死(組織の局所壊死)の症状について多くの個体において寛容が低いことなど、いくつかの欠点があることが知られている。
【0008】
しかしながら、アジュバントが全身性免疫応答を亢進させるからといって、粘膜免疫応答もまた亢進させるであろうとは必ずしも結論付けることはできない。典型的な例としては、水酸化アルミニウムは、筋肉投与、皮下投与、腹腔内投与または皮内投与における、ある物質の全身性免疫原性を亢進させるが、注射により投与した場合または粘膜経路で投与した場合における粘膜免疫応答の亢進には、効果がない。
【0009】
粘膜免疫応答を亢進させるものも含め、近年、新規なアジュバントの探索が徹底的になされてきている。粘膜防壁におけるS−IgA防御をうまく利用する取り組みとして、病原体の侵入を防ぐための取り組みにおいて呼吸器官の表面にモノクローナルS−IgA抗体を直接塗布するとともに、経口免疫がある。しかしながら、宿主において有益な粘膜免疫応答を引き起こすことができる、安全で効果的なアジュバントの医療における要求が依然として残っている。
【0010】
本発明は、安全性および有効性の特質が向上している新規な免疫原性組成物、および粘膜免疫応答を亢進させるためのこの組成物の使用方法を提供する。対象となる免疫原性組成物は、ポリヌクレオチドアジュバントおよび抗原を含んでいる。
【0011】
[文献]
以下の参考文献が着目される。
・日本国特開平01−93540号;
・米国特許第4,124,702号
・米国特許第3,692,899号
・米国特許第3,906,092号
・米国特許第4,389,395号
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・米国特許第4,323,559号
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・米国特許第4,186,194号
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【0012】
〔発明の概要〕
主に、本発明は、ポリイノシン酸−ポリシチジル酸と、カナマイシンと、カルシウムとの複合アジュバントを含む免疫原性組成物、ならびに疾患特異的粘膜免疫応答を引き起こすための、それらの使用方法に関する。
【0013】
したがって、(a)ポリリボイノシン酸−ポリリボシチジル酸(PIC)、少なくとも1種類の抗生物質および少なくとも1種類の陽イオンを含むポリヌクレオチドアジュバントと、(b)少なくとも1種類の抗原とを含む免疫原性組成物であって、粘膜投与用に調剤されていることを特徴とする免疫原性組成物が提供される。
【0014】
とりわけ、本発明は、ポリイノシン酸−ポリシチジル酸と、カナマイシンと、カルシウムとのアジュバントとしての複合物を含む免疫原性組成物の応用に関し、このアジュバントは、ヒトおよび非ヒト動物への使用において安全である。抗原性物質および/または免疫賦活剤と共に投与すると、この免疫原性組成物は、特異的な粘膜免疫応答を亢進させ、また、特定の使用においては、特異的な粘膜免疫応答および特異的な全身性免疫応答の何れをも亢進させる。
【0015】
より詳細には、本発明に係る免疫原性組成物は、分子量が不均一なポリヌクレオチドアジュバント組成物分子を含んでいてもよい。ここで、当該分子量は少なくとも66,000ダルトンである。
【0016】
〔図面の簡単な説明〕
図1−PIKAおよび/または不活化全SARS抗原を含むワクチンによる免疫化後の、肺の上清における特異的S−IgAの力価のELISA検出。
図2−PIKAおよび/または不活化全SARS抗原を含むワクチンによる免疫化後の、血清における特異的IgAの力価のELISA検出。
図3−PIKAおよび/または不活化全SARS抗原を含むワクチンによる免疫化後の、血清における特異的IgGの力価のELISA検出。
図4−PIKAおよび/または不活化され分割されたインフルエンザ抗原を含むワクチンによる免疫化後の、肺の上清における特異的S−IgAの力価のELISA検出。
図5−PIKAおよび/または不活化され分割されたインフルエンザ抗原を含むワクチンによる免疫化後の、腸の上清における特異的S−IgAの力価のELISA検出。
図6−PIKAおよび/または不活化され分割されたインフルエンザ抗原を含むワクチンによる免疫化後の、血清における特異的IgGの力価のELISA検出。
図7−PIKAおよび/または不活化され分割されたインフルエンザ抗原を含むワクチンによる免疫化後の、血清における特異的IgAの力価のELISA検出。
図8−PIKAおよび/または不活化され分割されたインフルエンザ抗原を含むワクチンによる免疫化後の、IL−2を産生しているマウス脾細胞のELISPOT検出。
図9:PIKAもしくはAl(OH)3および/または不活化され分割されたインフルエンザ抗原を含むワクチンによる免疫化後の、肺の上清(32×希釈)における特異的S−IgAのELISA検出。
図10:PIKAもしくはAl(OH)3および/または不活化され分割されたインフルエンザ抗原を含むワクチンによる免疫化後の、腸の上清(32×希釈)における特異的S−IgAのELISA検出。
図11:PIKAもしくはミョウバンおよび/または不活化され分割されたインフルエンザ抗原を含むワクチンによる免疫化後の、IFN−ガンマを産生しているマウス脾細胞のELISPOT検出。
図12:PIKAもしくはミョウバンおよび/または不活化され分割されたインフルエンザ抗原を含むワクチンによる免疫化後の、IL−2を産生しているマウス脾細胞のELISPOT検出。
【0017】
〔本発明を例示する実施形態の詳細な説明〕
本発明は、以下の本発明の特定の実施形態の詳細な説明および本明細書に記載の実施例を参照することにより、より容易に理解されるだろう。
【0018】
本出願は参考文献を載せており、これらの文献の開示内容は、本発明の属する分野の技術水準をより十分に説明するために、そのまま、本出願に参考として援用される。
【0019】
本発明についてさらに説明する前に、本発明が、説明に用いられる特定の実施形態に限定されるものではなく、当然、変化したものであってもよいことは、理解されるべきである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるため、本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないこともまた理解されるべきである。
【0020】
別の定義をしていない限り、本明細書における技術用語および科学用語は、本発明の属する分野の通常の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味で用いられる。本明細書において記載されているものと同様または等価な任意の方法および材料を、本発明の実施および評価にも用いることができるものの、好ましい方法および材料がここに記載されている。本明細書において記載されている全ての文献は、方法および/または材料を開示し、説明するために、当該文献に挙げられている方法および/または材料と併せて、本明細書に参考として援用される。
【0021】
本明細書および添付の特許請求の範囲に用いているように、単数形である「一」、「および」および「その」は、前後関係から別のことであることが明確に指示されていない限り、複数形の対象を含むものである点、留意しなければならない。したがって、例えば、「一免疫原性組成物」というときは、このような組成物の複数を含み、また、「その抗原」というときは、一つ以上の抗原をいうこと、および当業者において公知の、その他それらと同等のものを含む。特許請求の範囲は任意の構成要素を考慮しないで作成してもよいことは、さらに留意すべきである。そのようなものとして、この明細書は、請求項の構成要素の列挙と共に、「一つだけ」および「のみ」など排他的な用語を使用するための、または「消極的」な限定を使用するための根拠としての役割を果たすことが意図されている。
【0022】
<用語の定義>
本発明の詳細について記載する前に、本明細書に用いられるいくつかの用語の定義を記載することは、本発明を理解するために有用であろう。
【0023】
本明細書において用いる場合、用語「アジュバント」は、抗原性化合物に対する宿主の免疫応答を増大または多様化させる任意の物質または物質の混合物をいう。
特に:
1.用語「PICKCa」は、特定の物理的特性および免疫原性特性に関わりなく、概して、ポリI:C、カナマイシンおよびカルシウムを含む組成物を指す。
2.「Av−PICKCa」は、抗ウイルス剤として商業的に用いられているPICKCaの形態を指す。
3.「PIKA」は、ポリI:C、抗生物質(例えば、カナマイシン)、陽イオン(例えば、カルシウム)を含む本発明の組成物を指し、PIKAは投与におけるような物質特性(例えば、分子量、サイズなど)により特徴付けられ、PIKAは、意に沿わない副作用が例えばPICKCaよりも低減しており(例えば、毒性の低下)、また例えばAv−PICKCaよりも有効性が優れている(例えば、亢進した免疫応答を刺激する)というアジュバントの特徴を示す。
【0024】
用語「ポリI:C」または「PIC」は、ポリリボイノシン核酸およびポリリボシチジル核酸(これらは、それぞれ、ポリイノシン酸−ポリシチジル酸ともいう)を含む組成物を指す。
【0025】
「PIC含有分子」または「PIC含有化合物」は、特に制限なく、PICを指し、PIC含有分子を含む組成物中に存在する抗生物質(例えば、カナマイシン)および陽イオン(例えば、カルシウム)の少なくとも一つまたは両方と、状況に応じて複合し、または別の方法で組み合わされている。一実施形態において、PIC含有分子は、複合体中に、ポリ−L−リジンまたはその誘導体を含んでいない。
【0026】
本明細書において、本発明のアジュバント組成物との関連で用いられる場合、「不均一」は、例えばPIC含有分子などの組成物の構成物質が、分子量、サイズまたはその両方の物理的特性に関して均一ではないことを指す。組成物が所定の物理的特性において不均一であるとして記載されている場合、またさらに組成物がその物理的特性において一定の値の範囲であるとして記載されている場合、列挙された範囲内に分布する、および範囲の全域にわたる物理的特性を有する分子により特徴付けられる分子から実質的に構成されていると考えられている。組成物は、列挙された範囲の上限と下限との間の全ての物理的特性値に対応する分子は含んでいないものの、組成物は、概して、上限値および下限値の物理的特性を有する分子を少なくとも一つは含んでいるだろう。特定の実施形態における組成物は、組成物を説明するために用いられる物理的特性の規定の範囲からはずれた分子を含んでいてもよい。組成物中にある、規定した範囲からはずれた分子は、組成物の基本特性および新規特性に実質的に影響を与えない。
【0027】
用語「粘膜」または「粘膜皮膜(mucosal membrane)」または「粘膜面」は、直接的または間接的に外部環境に接している表面、通路および空洞を指し、呼吸器系、消化器系、感覚器系および泌尿器生殖器系の表面を含むものである。「胃腸管の粘膜面」は、腸(小腸および大腸を含む)の粘膜、直腸の粘膜、胃(stomach)(胃(gastric))の内壁の粘膜、および口腔粘膜などを含むことが意図されている。
【0028】
用語「粘膜投与用に調剤されている」は、粘膜(例えば、粘膜表面または粘膜皮膜)への投与に適合しており、それゆえ、粘膜への投与と相性がよい組成物をいう。いくつかの実施形態において、組成物は、経直腸、経膣、経鼻、経口またはオプサマリック以外を経由しての粘膜投与用に調剤されている(例えば、組成物は、肺組織への投与用、例えば経肺投与用に調剤されている)。
【0029】
用語「個体」は、本明細書において、「宿主」、「被験体」および「動物」と交換可能に用いられ、ヒト、家畜およびペットなど全ての家畜化された動物、野生の哺乳動物、ならびに家禽が含まれ、畜牛、ウマ、乳牛、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、シカ、ミンク、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウおよびゲームヘンなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
用語「抗体」は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含んでおり、同様に、Fab、F(ab’)2、FdおよびFv断片を含むような抗体の抗原性物質結合断片、ならびにそれらの一本鎖誘導体を含んでいる。さらに、用語「抗体」は、自然に生じる抗体および自然には生じない抗体を含み、例えば、キメラ抗体、二官能性抗体およびヒト化抗体ならびに関連した合成アイソフォームが含まれる。用語「抗体」は、「免疫グロブリン」と交換可能に用いられる。
【0031】
本明細書で用いられる場合、「抗原性化合物」は、適当な条件下において免疫システムに認識され得る(例えば、抗体が結合する、または細胞内免疫応答を引き起こすために加工される)任意の物質を指す。
【0032】
「抗原」は、適した経路(例えば、非経口)で投与したときに、例えば、抗原に特異的に結合する抗体を含む抗体の産生など、特異的な免疫応答を誘導する物質を指し、ワクチンそのものが抗原性化合物を含んで構成され、かつPIKA以外のアジュバントを含んでいても含まなくてもよいワクチンの形態の組成物も包含される。抗原の特徴的な二つの性質は、1)免疫原性、すなわち、インビボにおいて特異的免疫応答を誘導する能力、および、2)抗原性、すなわち、抗原に由来する抗体によって選択的に認識されうる能力である。
【0033】
本明細書で用いられる場合、「抗原」は、細胞、細胞抽出物、タンパク質、リポタンパク質、糖タンパク質、核タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、多糖、多糖複合体、ペプチドによる多糖模倣物、脂質、糖脂質、炭水化物、ウイルス、ウイルス抽出物、細菌、細菌抽出物、真菌、真菌抽出物、寄生生物などの多細胞生物、およびアレルゲンを含むが、これらに限定されるものではない。抗原は、外来性(例えば、抗原が投与される個体以外に由来するもの、例えば、異なる種に由来するもの)、または内因性(例えば、宿主内に由来するもの、例えば、身体の罹患成分、がん抗原、および抗原を生産するウイルス感染細胞など)のものであってよい。抗原は、天然のもの(例えば、自然に生じるもの)、合成したもの、または組み換えたものであってよい。抗原は、粗抽出物、全細胞、および精製抗原を含む。ここで「精製」とは、抗原が通常生じる環境および/または例えば抗原の培養状態などの粗抽出物と比較して濃縮されている状態の抗原を指す。
【0034】
本明細書で用いられる場合、「免疫原性組成物」は、宿主に投与したときに免疫応答を共に引き起こす2以上の物質(例えば、抗原およびアジュバント)を組み合わせたものを指す。
【0035】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、「オリゴペプチド」および「タンパク質」は、本明細書において交換可能に使用され、アミノ酸の任意の長さの重合形態を指し、コードしているアミノ酸およびコードしていないアミノ酸、化学修飾もしくは生化学修飾アミノ酸または誘導アミノ酸、ならびに修飾されたペプチドバックボーンを有するポリペプチドを含み得る。
【0036】
「抗原性化合物の有効量」は、任意にアジュバントを組み合わせたときに、抗原性化合物に対する特異免疫応答を被験体に引き起こさせるであろう抗原性化合物の量を指す。
【0037】
用語「免疫応答」は、脊椎動物被験体の免疫システムによる、抗原性または免疫原性化合物に対する任意の応答を指す。典型的な免疫応答は、CD8+ 細胞傷害性Tリンパ球(CTLs)の抗原特異的誘導を含むCTL応答、T細胞の増殖反応およびサイトカイン放出を含むヘルパーT細胞応答ならびに抗体反応を含むB細胞応答などの、局所および全身性細胞性免疫および液性免疫であるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
用語「免疫応答を引き起こすこと」は、主に、免疫応答の誘導および/または増強作用を包含するために本明細書において用いられる。
【0039】
用語「免疫応答を誘導すること」は、刺激された、引き起こされた、または誘導された免疫応答を指す。
【0040】
用語「免疫応答を増強すること」は、向上した、促進された、補われた、増幅された、亢進した、増大した、または引き延ばされた既存の免疫応答を指す。
【0041】
「亢進した免疫応答」という表現または類似の表現は、事前の免疫応答の状態、例えば本発明の免疫原性組成物の投与の前の状態と比較して、宿主に対する免疫応答の利点が高まり、向上し、亢進していることを意味する。
【0042】
用語「粘膜免疫応答」および「粘膜免疫」は、この分野においてよく理解されている用語であり、直腸組織を含めた胃腸組織、膣組織および呼吸器系管組織などの粘膜における分泌型IgAの産生および/または粘膜CTL応答の刺激によって、少なくとも一部は、特徴づけられる免疫応答を指す。
【0043】
用語「液性免疫」および「液性免疫応答」は、抗原刺激に応答して抗体分子が産生される免疫の形態を指す。
【0044】
用語「細胞性免疫」および「細胞性免疫応答」は、例えば、T細胞リンパ球が被害細胞に近接したときにT細胞リンパ球によりもたらされる免疫防御など、リンパ球によりもたらされる免疫防御を指すことを意味する。細胞性免疫応答は、通常、リンパ球の増殖を含む。「リンパ球増殖」が測定されるとき、特定の抗原に応答したリンパ球の増殖能力が測定される。リンパ球増殖は、B細胞、Tヘルパー細胞、またはCTL細胞増殖を指すことを意味する。
【0045】
用語「免疫原性量」は、対象免疫原性組成物を投与したときに、ポリヌクレオチドアジュバントの非存在下で抗原により引き起こされる免疫応答と比較して、免疫応答を刺激するのに十分な抗原性化合物の量を指す。
【0046】
用語「免疫増強量」は、本発明の組成物における抗原性化合物を投与したときに、ポリヌクレオチドアジュバントの非存在下で観察される抗体および/または細胞性免疫レベルの増加と比較して、抗体力価および/または細胞性免疫の増加をもたらすのに必要なアジュバントの量を指す。
【0047】
用語「処理」、「処理すること」および「処理する」などは、概して、所望の薬理効果および/または生理学的効果を獲得することを指すために本明細書において用いられる。この効果は、疾患または疾患の症状を完全にまたは部分的に抑えるという観点から予防の効果であってよく、および/または、疾患および/または疾患に起因する副作用を部分的にまたは完全に安定化する、または治癒するという観点から治療の効果であってよい。本明細書において用いる場合、「処理」は、被験体の、特に哺乳動物被験体の、より特にはヒトの疾患に対する任意の処理におよび、以下のものを含む:(a)疾患または症状にかかりやすいが未だかかっているとは診断されていない被験体において、疾患または症状が生じるのを抑えること、(b)疾患の症状を防ぐこと、例えば、その発達を阻むこと、または疾患の症状を軽減させること、すなわち、疾患または症状の退行を引き起こすこと、(c)疾患を引き起こす病原体により産出される産物(例えば、毒素および抗原など)の水準の低減、および(d)疾患を引き起こす感染物質に対する、望まない生理反応(例えば、発熱および組織浮腫など)を減少させること。
【0048】
本明細書において用いる場合、用語「混合すること」は、組成物の構成成分を混ぜ合わせる任意の方法を含むものである。このような方法としては、組成物の構成成分の混和、分配、溶解、乳化、凝固もしくは懸濁、または組成物の構成成分を物理的に混ぜ合わせる別の方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
化合物の「薬剤として許容される塩」は、薬剤として許容され、もととなる化合物の所望の薬理活性を保持している塩を意味する。このような塩としては以下のものが含まれる:(1)酸を添加した塩であり、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸およびリン酸などの無機酸により形成されているもの、または、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、琥珀酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、グルコヘプトン酸、4,4’−メチレンビス−(3−ヒドロキシ−2−エン−1−カルボン酸)、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸およびムコン酸などの有機酸により形成されているもの、または(2)もととなる化合物にある酸性プロトンを、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオンまたはアルミニウムイオンなどの金属イオンにより置換するか、または、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミンおよびN−メチルグルカミンなどの有機塩基を用いて調整するかの何れかにより形成された塩。
【0050】
本明細書において用いられる場合、用語「単位剤形」は、ヒトおよび動物被験体に対する単一の投薬量として適している物理的に分離した一構成単位を指し、各構成単位は、薬事的/生理学的に許容し得る希釈剤、キャリアまたは賦形剤と共に、所望の効果を産み出すのに十分な量に計算された本発明の化合物の規定量を含んでいる。
【0051】
〔本発明の例示となる実施形態〕
本発明は、免疫原性組成物、免疫応答の誘導および/または亢進に有効な方法に関する。ここで免疫応答とは、ヒト、非ヒト動物、または細胞培養系における、粘膜性および/または全身性のものであってよく、液性および/または細胞性のものであってよい。概して、本発明にかかる免疫原性組成物は、抗原(抗原性組成物)とアジュバントとを含んでなる。アジュバントの存在は抗原に対する免疫応答を亢進させるまたは修飾する。アジュバントは、産生される免疫グロブリンのサブクラス(アイソタイプ)および/またはケモカイン類および/またはサイトカイン類に影響を与えることによって、免疫応答の質を変化させうる。結果として、先天性免疫、液性および/または細胞性免疫応答は、アジュバントの存在により、より一層効率化される。
【0052】
特筆すべき優位性は、PIKAアジュバントを抗原性物質と組み合わせて使用した際における、特定の液性免疫応答を誘導し、結果として防御免疫を亢進させる効果である。
【0053】
さらに重要な優位性として、PIKAアジュバントを抗原と組み合わせて使用することにより、細胞内ウイルス性の感染症、細胞内バクテリア性の感染症、並びに細胞内寄生物性の感染症の制限および治療のための治療用ワクチンにとって本質的に重要な、特定の細胞性免疫応答を誘導できるという点がある。
【0054】
よって、本発明には、有効な免疫応答を顕在化させる安全なアジュバントを要請する動物および/またはヒトに投与するワクチンとして使用する上で最適な、優れた製品特性を持つ組成物が含まれる。
【0055】
よって、本発明は、ヒトと動物とにおいて安全に使用することができるアジュバント、および免疫原性組成物を提供するものである。
【0056】
さらに、(a)ポリリボイノシン酸-ポリリボシチジル酸(PIC)、少なくとも一種類の抗生物質および少なくとも1種類の陽イオンを含むポリヌクレオチドアジュバントと、(b)少なくとも1種類の抗原とを含む免疫原性組成物であって、粘膜への投与用に調剤されていることを特徴とする免疫原性組成物が提供される。
【0057】
とりわけ、本発明にかかる免疫原性組成物は、分子量が不均一なポリヌクレオチドアジュバント組成物分子を含んでおり、該分子量は少なくとも66,000ダルトンであることを特徴とする。66,000ダルトンという値は、約6.4スベドベリ単位のサイズに相当する。したがって、66,000〜1,200,000ダルトンという分子量の範囲は、約6.4〜24.0スベドベリ単位のサイズに相当する。
【0058】
さらには、本発明は、ポリヌクレオチド、抗生物質、および陽イオンを含んでなるPIKAアジュバント組成物であって、当該ポリヌクレオチドがポリリボイノシン酸-ポリリボシチジル酸(PIC)であってもよく、当該抗生物質がカナマイシンであってもよく、当該イオンがカルシウムであってもよいという、PIKAアジュバント組成物を提供するものである。
【0059】
特に着目される一態様において、本発明は、抗原特異的な細胞性免疫応答を引き起こすことができるポリヌクレオチドアジュバント組成物を含んでなり、抗原性複合物の抗原性を亢進させることができる免疫原性組成物を提供するものである。
【0060】
特に着目される一態様において、本発明は、抗原特異的な液性免疫応答を顕在化することができるポリヌクレオチドアジュバント組成物を含んでなり、抗原性複合物の抗原性を亢進させることができる免疫原性組成物を提供するものである。
【0061】
特に着目される一態様において、本発明は、特異的な細胞性免疫応答と液性免疫応答とを複合的に引き起こすことができるポリヌクレオチドアジュバント組成物を含んでなり、抗原性複合物の抗原性を亢進させることができる免疫原性組成物を提供するものである。
【0062】
特に着目される一態様において、本発明は、アジュバント組成物を含んでなるアジュバント組成物または免疫原性組成物であって、当該アジュバント組成物または免疫原性組成物が凍結乾燥されてなるものを提供するものである。
【0063】
特に着目される一態様において、本発明は、宿主の免疫原性応答を亢進させる治療薬の調製のためのポリヌクレオチドアジュバント組成物の使用を提供するものである。
【0064】
<ポリヌクレオチドアジュバント>
対象となる免疫原性組成物はPICを含んでなるポリヌクレオチドアジュバントを含んでなり、例えばPIKA組成物等である。当該免疫原性組成物は、概して、ポリイノシン酸、ポリシチジル酸、少なくとも一種の抗生物質(例えばカナマイシン)、および二価の陽イオン(例えばカルシウム)を含み構成される。ここでは、PIKAへの言及は、PICを含んでなるアジュバントの具体例として理解される。
【0065】
対象となるPICを含んでなるアジュバントは、公知の方法を用いて製造することができる。PICを含んでなるアジュバント組成物は、適切な如何なるプロセスによっても製造することができる。例えば、ポリヌクレオチドアジュバント組成物は、ポリイノシン酸、ポリシチジル酸、抗生物質、および陽イオン源を、pH6〜pH8の塩化ナトリウム/リン酸バッファー溶液中で混合することにより製造することができる。ポリイノシン酸およびポリシチジル酸は、一般的には、0.1〜10mg/ml、0.5〜5mg/ml、0.5〜2.5mg/mlの何れかの濃度で供される。深色性の値は、少なくとも10%より大きく、15%より大きく、20%より大きく、50%より大きくあるべきである。PICの調製、抗生物質(例えばカナマイシン)と陽イオン(例えばカルシウム)との配合は、概して、国際GMP(Good Manufacturing Process)に沿った品質基準となるように行われる。
【0066】
本発明にかかる或る実施形態では、アジュバントに含まれる抗生物質成分はカナマイシンである。抗生物質がカナマイシンである場合、幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドアジュバント組成物に含まれるカナマイシンは、トブラマイシン、アントラサイクリン類、硫酸ブチロシン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、アミカシン、ジベカシン、ネブラマイシン、メトリザマイド(metrzamide)、ネオマイシン、プロマイシン、ストレプトマイシン、ストレプトゾシンを含む群から選択される一またはそれ以上の抗生物質と共に、または当該抗生物質がカナマイシンに代替して使用される。本発明のポリヌクレオチドアジュバント組成物における抗生物質(例えばカナマイシン等)は概して、10units/ml〜100,000units/mlの間の何れかの濃度で、100units/ml〜10,000units/mlの間の何れかの濃度で、または500units/ml〜5,000units/mlの間の何れかの濃度で供される。
【0067】
本発明にかかる或る実施形態では、ポリヌクレオチドアジュバント組成物はさらに、陽イオン(カチオン)を含んでなる。当該陽イオンは一般的には二価の陽イオンであり、通常はアルカリ金属陽イオンである。陽イオンは、一般的には、塩または複合体のような陽イオン源のかたちで本発明の組成物に供されている。該塩または複合体は、例えば、有機または無機の塩または複合体であり、一般的には無機塩または有機複合体である。特にこれらに限定されないが、陽イオンの具体例としては、カルシウム、カドミウム、リチウム、マグネシウム、セリウム、セシウム、クロム、コバルト、重水素、ガリウム、ヨウ素、鉄、または亜鉛が含まれる。
【0068】
上記の陽イオンは好適な塩または有機複合体のかたちで供されてもよく、特にこれらに限定されないが、具体例として、塩化物、フッ化物、水酸化物、リン酸塩、または硫酸塩が含まれる。例えば陽イオンがカルシウムの場合、当該イオンは、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、フッ化カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、または硫酸カルシウムのかたちで供されてもよい。
【0069】
本発明の組成物における陽イオン(例えば、カルシウム)は、約10umol/ml〜10mmol/mlの間の何れかの濃度で、通常は、約50umol/ml〜5mmol/mlの間の何れかの濃度で、さらに通常には、約100umol/ml〜1mmol/mlの間の何れかの濃度で供される。「umol」という用語は、マイクロモルを表すものとして使用している。
【0070】
本発明のアジュバント組成物における陽イオンがカルシウムの場合、カドミウム、リチウム、マグネシウム、セリウム、セシウム、クロム、コバルト、重水素、ガリウム、ヨウ素、鉄、または亜鉛を含む群から選択される他の陽イオンと共に、または当該陽イオンがカルシウムに代替して使用される。ここで、他の陽イオンは、無機塩または有機複合体のかたちであってもよい。結果として生じる組成物は、PICを含んでなるアジュバントであって、さらに抗生物質と陽イオンとを含んでなるものである。或る特定の実施形態では、抗生物質がカナマイシンであり、イオンがカルシウムの場合、製造されたものをPICKCaと記載することがある。関連する実施形態では、PICKCa組成物は、物理的特徴の相違に制限されることなく複数の分子を含みうる。
【0071】
<PIKAアジュバント組成物>
特に着目される実施形態においては、ポリヌクレオチドアジュバントはPIKAである。PIKAはさまざまな方法で製造することができる。PICKCaから製造することがとりわけ利益が大きい。PIKAは、特定の分子サイズおよび/または分子量を有する分子を単離および/または濃縮することを含む追加的な製造工程をへてPICKCaから製造することができる。特定の特徴を有するポリヌクレオチド分子を、ろ過、クロマトグラフィー、熱的処理、遠心分離、電気泳動、または類似の方法により分離し濃縮することは、通常のプロセスであり、かつ当業者に公知である。
【0072】
免疫原性組成物は、乾燥粉末、液状の溶液、懸濁液、乳化剤のかたちで調製されうる。所望する免疫原性組成物の調剤方法は、その概要が、Vaccine 4th Edition (Stanley A Plotkinら、W.B. Saunders Company、4th edition 2003)に記載されている。好適な調剤法は、例えばまた、A. Gennaro(2000) “Remington: The Science and Practice of Pharmacy”, 20th edition, Lippincott, Williams, & Wilkins; Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery System(1999) H.C. Ansel et al., eds.,7th ed., Lippincott, Williams, & Wilkins; Handbook of Pharmaceutical Excipients(2000) A.H. Kibbe et al.,eds.,3rded. Amer.Pharmaceutical Assoc.; Methods in Molecular Medicine, Vol.87: Vaccine Protocols, 2nd edition(2003),Humana Press; Mucosal Vaccines(1996), Kiyono et al., eds., Academic Press; and Vaccine Adjuvants: Preparation Methods and Research Protocols(2000) D.T. O’Hagan, Humana Press.にも記載されている。
【0073】
特に着目される実施形態においては、本発明は該してPIKAと称される、ポリリボイノシン酸−ポリリボシチジル酸(PIC)、抗生物質(カナマイシン等)、および正に帯電したイオン(カルシウムイオン等)を含んでなるアジュバントに特徴付けられる。この組成物は、約66,000〜1,200,000ダルトンの間の分子量を有する、分子量の面で不均一な複数の分子を含んでなる。すなわち、アジュバント組成物は、約66,000〜1,200,000ダルトンの範囲内の分子量を有する複数の分子を含んでなる。
【0074】
関連する実施形態では、当該組成物中に含まれるPIKAポリヌクレオチドアジュバント組成物の分子は不均一である。すなわち、アジュバント分子の重量は一定の分子量の範囲内に分布しており、ここでその分子量は約300,000〜1,200,000ダルトンの範囲内、または約66,000〜660,000ダルトンの範囲内、または約300,000〜660,000ダルトンの範囲内、または約300,000〜2,000,000ダルトンの範囲内、または約66,000〜約100,000ダルトンの範囲内、または100,000〜200,000ダルトンの範囲内、または約300,000〜約4,000,000ダルトンの範囲内、または約500,000〜1,000,000ダルトンの範囲内、または約1,000,000〜1,500,000ダルトンの範囲内、または約1,500,000〜2,000,000ダルトンの範囲内、または約2,000,000〜2,500,000ダルトンの範囲内、または約2,500,000〜3,000,000ダルトンの範囲内、または約3,000,000〜3,500,000ダルトンの範囲内、または約3,500,000〜4,000,000ダルトンの範囲内、または約4,000,000〜4,500,000ダルトンの範囲内、または約4,500,000〜5,000,000ダルトンの範囲内である。
【0075】
関連する実施形態においては、当該組成物中に含まれるPIKAポリヌクレオチドアジュバント組成物の分子は、平均分子量にして66,000ダルトン以上であり、または150,000ダルトン以上であり、または250,000ダルトン以上であり、または350,000ダルトン以上であり、または500,000ダルトン以上であり、または650,000ダルトン以上であり、または750,000ダルトン以上であり、または1,000,000ダルトン以上であり、または1,200,000ダルトン以上であり、または1,500,000ダルトン以上であり、または2,000,000ダルトン以上である。
【0076】
特に着目される実施形態においては、本発明は該してPIKAと称される、ポリリボイノシン酸-ポリリボシチジル酸(PIC)、抗生物質、および陽イオン(カルシウムイオン等)を含んでなり、かつ当該組成物は不均一なアジュバントの分子を含んでなる、すなわち、アジュバント分子のサイズは一定の分子サイズの範囲内に分布しており、ここでその分子サイズはスベドベリの沈降係数(S)にして約6.43S〜24.03Sの範囲内である、という点で特徴付けられる。
【0077】
関連する実施形態においては、当該組成物中に含まれるPIKAポリヌクレオチドアジュバント組成物の分子は不均一である。すなわち、アジュバント分子のサイズは一定の分子サイズの範囲内に分布しており、ここでその分子サイズは約12.8S〜24.03Sの範囲内であり、または約3S〜12Sの範囲内であり、または約6.43S〜18.31Sの範囲内であり、または約12.8S〜18.31Sの範囲内であり、または約12.8S〜30.31Sの範囲内であり、または約12.8S〜41.54Sの範囲内であり、または約13.5S〜18.31Sの範囲内であり、または約13.5S〜24.03Sの範囲内であり、または約16.14S〜22.12Sの範囲内であり、または約22.12S〜26.6Sの範囲内であり、または約26.6S〜30.31Sの範囲内であり、または約30.31S〜33.55Sの範囲内であり、または約33.55S〜36.45Sの範囲内であり、または約36.45S〜39.1Sの範囲内であり、または約39.1S〜41.54Sの範囲内であり、または約41.54S〜43.83Sの範囲内であり、または約43.83S〜45.95Sの範囲内である。
【0078】
関連するさらに別の実施形態においては、当該PIKAポリヌクレオチドアジュバント組成物は、9を超え、または12を超え、または13.5を超え、または15を超え、または16を超え、または17を超え、または18を超え、または19を超え、または20を超え、または21を超え、または22を超え、または25を超え、または30を超える平均沈降係数(スベドベリ)を有する。
【0079】
<免疫原性の特性>
例えば、PIKAと或る抗原とを含んでなるもののような免疫原性組成物は、一般に少なくとも二種類の方法により抗原特異的な免疫応答を誘導することができる。i)は液性免疫によるもので、例えばB細胞の刺激と、抗体または免疫グロブリンの産生とが含まれる(他の細胞、例えば、マクロファージやヘルパーT細胞(Th1およびTh2)等を含む抗原提示細胞も抗体反応の発生に関与している)。ii)は細胞性免疫によるもので、一般的には細胞傷害性Tリンパ球などを含むT細胞が関与するものであるが、しかしながら他の細胞もまた細胞傷害性Tリンパ球応答の発生に関与している(例えば、Th1および/またはTh2細胞、並びに抗原提示細胞等)。
【0080】
さらに、ポリヌクレオチドアジュバント組成物は、産生される免疫グロブリンのサブクラス(アイソタイプ)や親和性に影響を与えることで、免疫応答の質を変化させうる。
【0081】
対象となる免疫原性組成物により誘導される免疫原性応答の程度並びに性質は、サイトカイン、ケモカイン、並びに免疫系細胞により産生された抗体等の分子の存在を測定することで評価されうる。
【0082】
本発明は、宿主において粘膜性免疫応答を誘導することにより免疫応答のレベルを総合的に亢進させる、PIKAアジュバントを含んでなる新規な免疫原性物質を提供するものである。或る実施形態においては、対象となる免疫原性組成物は、粘膜性免疫応答を誘導し、全身性免疫の水準を亢進させる。粘膜性免疫応答の誘導と全身性免疫レベルの亢進とは、粘膜表面を経由して体内に侵入した病原体により引き起こされる感染症の治療において着目される。
【0083】
後に示される実施例では、PIKAとSARS抗原とを含んでなる免疫原性組成物が腹膜注射により投与された場合には、血中における特定のIgAおよびIgGの発現を指標とする全身性免疫応答を誘導することが示された。しかしながら、PIKAとSARS抗原とを含んでなる同一の免疫原性組成物が腹膜注射により投与された場合には、S−IgAの発現を指標とする粘膜性免疫応答を誘導しないことが示された。
【0084】
驚くべきことに、PIKAとSARS抗原とを含んでなる同一の免疫原性組成物が粘膜に投与された場合には、S−IgAの発現を指標とする粘膜性免疫応答を誘導することが示された。
【0085】
実施例1は、腹膜注射により投与された免疫原性組成物中にPIKAアジュバントが存在する場合、粘膜において特定のS−IgAの発現亢進を誘導しないことを例証する。しかしながら、粘膜に投与された免疫原性組成物中にPIKAアジュバントが存在する場合、粘膜において特定のS−IgAの発現を投与量依存的に誘導する(表A)。
【0086】
腹膜注射により投与された免疫原性組成物中にPIKAアジュバントが存在する場合、血中のIgAの存在量を投与量依存的に顕在化させる。さらには、粘膜注射で投与された免疫原性組成物中にPIKAアジュバントが存在する場合にも、血中における特定のIgAのレベルを投与量依存的に増加させる(表B)。
【0087】
さらに、腹膜注射で投与された免疫原性組成物中にPIKAアジュバントが存在する場合、血中のIgGの存在量を投与量依存的に顕在化させる。粘膜投与された免疫原性組成物中にPIKAアジュバントが存在する場合にも、血中における特定のIgGのレベルを投与量依存的に増加させる(表C)。
【0088】
これら実施例の結果は図1〜3に要約する。
【0089】
PIKAとSARS抗原とからなるワクチン組成物を粘膜投与して誘導される、血中での特定のIgGの産生は、腹膜投与で観察されるレベルと比較して70%まで上回った(表B)。従って、粘膜投与された免疫原性物質中にPIKAが存在すれば、粘膜性および全身性の免疫サブシステム双方の免疫応答を誘導することができるという予期し得ない付加的な利益も奏する。
【0090】
実施例2は、PIKAの存在が、粘膜性免疫応答および全身性免疫応答の双方を誘導することを例証する。さらに、PIKAを含む免疫原性組成物が粘膜投与された場合、投与場所から離れた粘膜において粘膜性免疫応答の誘導が観察されるという予期し得ない結果が見られた。さらに、PIKAを含んでなる免疫原性組成物を粘膜投与することで、T細胞依存性の免疫応答の誘導が観察されるという予期し得ない結果が見られた。
【0091】
実施例2で使用されたインフルエンザ抗原は、サノフィパスツール社から入手した承認ヒトインフルエンザワクチンであるVAXIGRIPであり、H1N1、H3N2様株およびb/Shanghai5/361/2002株を含んでなる。
【0092】
このインフルエンザ抗原単独を皮下注射により投与した場合、並びに、当該インフルエンザ抗原とPIKAアジュバントとを含んでなる組成物を皮下注射で投与した場合には、特定の強い全身性の液性免疫応答が誘導されるが、一方で、肺と腸管の粘膜表面でのS−IgAの産生を指標とする特定の弱い粘膜性免疫応答が見られるに過ぎない。
【0093】
このインフルエンザ抗原単独を点鼻により投与した場合、並びに、ミョウバンと組み合わせてなる当該インフルエンザ抗原(承認ワクチン抗原)を点鼻により投与した場合もまた、肺および腸の粘膜表面におけるS−IgAの産生を指標とする、弱い特定の粘膜免疫応答のみを誘導した(表EおよびF、図4および5参照)。
【0094】
これに対して、インフルエンザ抗原を含んでなる免疫原性組成物中のPIKAの存在により、S−IgAの産生を指標とする強い特定の粘膜性部位の誘導が肺の粘膜表面に見られる(表E、図4)という予期し得ない結果が見られた。
【0095】
さらに、腸管から離れた粘膜の部位においても、S−IgAの存在を指標とする特定の強い粘膜性免疫応答が見られた(表F、図5)。
【0096】
加えて、PIKAとインフルエンザ抗原とを含んでなる免疫原性組成物を投与すれば、血清中の特定のIgAおよびIgGの発現を指標とする液性免疫応答(表GおよびH、図6および7参照)と、脾臓細胞によるIl−2の産生を指標とするT細胞依存性の免疫応答(表I、図8)との双方からなる、強い特定の全身性の応答が誘導された。
【0097】
実施例3は、PIKAの存在が粘膜性免疫応答を亢進させ、一方で細胞性免疫を特異的に増幅することを例証する。対照的に、同一の実験条件下でのミョウバンアジュバントの使用は、粘膜性免疫活性度も細胞性免疫応答も亢進させることはなかった。
【0098】
<その他の特徴>
さらに別の実施形態では、対象となる免疫原性組成物は、PIKAアジュバントと抗原(複数種であってよい)との相対的な存在比にて定義付けられる。ここで存在比は、量的、濃度、体積、分子の数、または他の知られた計量単位の一つまたは複数の性質にて数量的に表しうる。
【0099】
関連する実施形態では、対象となる免疫原性組成物は、ポリヌクレオチドアジュバント組成物と抗原(複数種であってよい)とを含んでなり、両者の存在比は、分子の重量または数において、1:1000より少、1:900より少、1:800より少、1:700より少、1:500より少、1:400より少、1:300より少、1:200より少、1:100より少、1:50より少、1:10より少、1:5より少、1:2より少、約1:1、2:1より大、5:1より大、10:1より大、50:1より大、100:1より大、200:1より大、300:1より大、400:1より大、500:1より大、600:1より大、700:1より大、800:1より大、900:1より大、1000:1より大である。
【0100】
関連する別の実施形態では、対象となる免疫原性組成物は投与量の点で定義付けられる。すなわち、最適な効果を奏する免疫応答を誘導するために投与される免疫原性組成物の量、またはそれに代えて、免疫応答の顕在化に最低限必要なレベルから、好ましい応答の増大よりも有害な副作用を潜在的に誘導する点が勝り医学的に許容し得なくなる最大限までの投与量の範囲、の点で定義付けられる。
【0101】
特に着目される或る実施形態では、ポリヌクレオチドアジュバント組成物と抗原とを含んでなる免疫原性組成物において、単位投与量中に含まれる抗原の量は、0.1ugを超え、0.5ugを超え、0.001mgを超え、0.005mgを超え、0.01mgを超え、0.025mgを超え、0.05mgを超え、0.075mgを超え、0.1mgを超え、0.25mgを超え、0.5mgを超え、1.2mgを超え、1.4mgを超え、1.6mgを超え、1.8mgを超え、2.0mgを超え、2.5mgを超え、3mgを超え、3.5mgを超え、4mgを超え、5mgを超え、6mgを超え、7mgを超え、8mgを超え、9mgを超え、10mgを超え、15mgを超え、20mgを超え、25mgを超え、または50mgを超える。
【0102】
抗原の最適量、および抗原のPIKAアジュバントに対する最適割合は、抗体力価の観察、および宿主における他の免疫応答を観察すること等の標準的な研究により確かめることができる。
【0103】
<抗原>
特に着目される実施形態では、本発明はポリヌクレオチドアジュバント組成物と抗原またはワクチンとを含んでなる免疫原性組成物であって、当該抗原がヒト由来のもの、非ヒト動物由来のもの、植物由来のもの、ウイルス、マイコバクテリアを含む細菌、真菌または寄生生物等の感染性病原体から選択される一またはそれ以上の病原体、がん抗原、アレルギー抗原、または自己免疫疾患を引き起こす抗原等のその他の抗原であるものを提供する。
【0104】
或る実施形態では、抗原は天然に由来する粗精なものまたは精製されたものであってよい。また、抗原は、生きたままの状態、または殺した、不活化した、切断した、弱毒化した、元に戻らないかたちに変換した、脱毒化した、毒性のないかたちに変異させた、ろ過した、または精製した状態で使用してもよい。
【0105】
幾つかの具体例では、抗原は、例えば、単離した微生物由来の抗原、ウイルスの抗原、バクテリアの抗原、菌(fungal)の抗原、アレルギー抗原、ガン抗原、または自己免疫抗原である。他の具体例では、抗原は、不活化された全体抗原である。全体抗原を不活化する方法はこの分野ではよく知られている。抗原を不活化する方法は既知のいかなる方法も用いることができ、対象となる抗原の種類に応じて適切に選択可能である。抗原を不活化する方法として、例えば、光反応性の化合物を用いる方法、酸化剤を用いる方法、照射(例えば、UV照射、γ線照射)、リボフラビンとUV照射との組み合わせ、溶媒−洗浄剤処理(例えば、有機溶媒であるリン酸トリ-N-ブチル(tri-N-butyl-phosphate)とTween80等の洗浄剤とで処理する)、ポリエチレングリコール処理、低温殺菌処理(熱処理)、低pH処理、ペプシンまたはトリプシンによるマイルドな酵素処理、メチレンブルー(MB)光処理、ジメチルメチレンブルー(DMMB)と可視光による処理、ソラレン誘導体であるS−59処理とUVA照明との組み合わせ、その他の方法が例示される。
【0106】
特に着目される関連する具体例では、抗原は固相合成法により合成されうる、または遺伝子組換技術により得られうる、または病原体の免疫原性特性を模倣して人工的に製造しうる。
【0107】
抗原は、無細胞性のもの、カプセル化されたもの、感染性のあるクローン、増幅産物、ベクター化したもの、マイクロカプセル化されたもの、一価、二価、または多価のものでありうる。
【0108】
幾つかの具体例では、対象となる免疫原性組成物は、ポリヌクレオチドアジュバントと少なくとも二種類の異なる抗原とを含んでなる。例えば、或る具体例では、対象となる免疫原性組成物は、2種の抗原を、3種の抗原を、4種の抗原を、5種の抗原を、または5種以上の抗原を含んでなる。
【0109】
ポリペプチド抗原は、この分野で公知の標準的なタンパク質の精製方法を用いて自然源から単離することができる。特にこれに限定されるものではないが、例えば、液体クロマトグラフィー(例えば、高性能液体クロマトグラフィー、タンパク質高速液体クロマトグラフィーなど)、サイズ排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動(一次元ゲル電気泳動、二次元ゲル電気泳動などを含む)、アフィニティクロマトグラフィー、または他の精製手法を用いることができる。固相ペプチド合成技術を用いることもでき、そのような技術は当業者に公知である。Jones, The Chemical Synthesis of Peptides(Clarendon Press, Oxford)(1994)を参照のこと。一般的にこの技術では、ペプチドは、活性化された単量体単位が固相の界面に連続的に付加されてペプチド鎖が成長することを通じて製造される。確立された組換えDNA技術もポリペプチドの製造に用いることができる。特に限定されるものではないが、そのような技術には、例えば、ポリペプチドをコードする核酸配列を含んでなる発現コンストラクトを適切な宿主細胞(例えば、インビトロ細胞培養で単一細胞として独立して成長しうる真核宿主細胞、例えば、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳類細胞等)、または原核細胞(例えば、インビトロ細胞培養で成長するもの)に導入して、遺伝的に改変された宿主細胞を作製し、適切な培養条件下で、遺伝的に改変された宿主細胞により当該タンパク質が生産される。
【0110】
或る具体例では、抗原は精製された抗原であり、例えばその純度は、約25%から50%であり、約50%から約75%であり、約75%から約85%であり、約85%から約90%であり、約90%から約95%であり、約95%から約98%であり、約98%から99%であり、または99%以上である。
【0111】
当該抗原は、無細胞性のもの、カプセル化されたもの、感染性のあるクローン、増幅産物、ベクター化したもの、マイクロカプセル化されたもの、一価、二価、または多価のものでありうる。
【0112】
本発明のポリヌクレオチドアジュバント組成物は、DNAワクチンおよび/またはDNA発現タンパク質(DNA expressed proteins)を用いて製造される抗原に対する免疫応答を亢進させる目的で用いることもできる。これらワクチンに含まれる、抗原をコードするDNA配列は、そのままであってもよく、例えばリポソームのような送達系に含まれたものであってもよい。
【0113】
特に着目される側面として、新規なワクチン組成物は、PIKAアジュバントと組合わせて使用される一種または複数の抗原の選択により定義づけることもできる。
【0114】
特に着目される具体例において、本発明はポリヌクレオチドアジュバント組成物とその使用方法を提供するものであって、当該ポリヌクレオチドアジュバント組成物はPIKAアジュバントと抗原とを含んでなる。ここで、抗原の例示として、特にこれらに限定されるものではないが、表Nに記載した、粘膜表面を介して宿主に侵入する感染性疾患の病原体の抗原が挙げられる。さらに、表Nには、抗原のソースとなりうる生物と、粘膜への感染の結果として生じる疾患名とを記載する。
【0115】
【表1】









特に着目される具体例において、本発明はポリヌクレオチドアジュバント組成物とその使用方法を提供するものであって、当該ポリヌクレオチドアジュバント組成物はPIKAアジュバントと、粘膜表面を介して宿主に侵入するアレルギー抗原とを含んでなる。ここで、当該抗原は、例えば植物、動物、菌(fungi)、昆虫、食品、埃およびダニなどのヒトまたは動物のアレルギー源から選ばれる。
【0116】
アレルゲンは特に限定されるものではないが、環境アエロアレルゲン(aeroallergens);ブタクサ/花粉症性の植物花粉;雑草(weed)花粉のアレルゲン;イネ科植物(grass)花粉のアレルゲン;ジョンソングラス(Johnson grass);樹木花粉のアレルゲン;ドクムギ属の草本(ryegrass);イエ塵ダニ(house dust mite)のアレルゲン(例えば、Der p I, Der f I等)等のクモ形類のアレルゲン;貯蔵庫ダニ(storage mite)のアレルゲン;日本スギの花粉/花粉症;カビ胞子のアレルゲン;動物由来のアレルゲン(例えば、イヌ、モルモット、ハムスター、アレチネズミ、ラット、マウス等のアレルゲン);食品由来のアレルゲン(例えば、甲殻類のアレルゲン、ピーナツ等のナッツのアレルゲン、柑橘系果物のアレルゲン等);昆虫のアレルゲン;毒液(膜翅類の昆虫、スズメバチ(yellow jacket)、ミツバチ、スズメバチ(wasp)、スズメバチ(hornet)、フシアリ(fire ant));その他ゴキブリやシラミや蚊等のような周辺環境にいる昆虫のアレルゲン;連鎖球菌の抗原のような細菌由来のアレルゲン;回虫の抗原等のような寄生虫由来のアレルゲン;ウイルスの抗原;菌(fungal)の胞子;薬物アレルゲン;抗生物質;ペニシリンや関連する化合物;他の抗生物質;ホルモン(インシュリン)や酵素(ストレプトキナーゼ)等の全長タンパク質;不完全な抗原やハプテンとして機能しうる全ての薬やその代謝産物;アレルゲンとして作用し並びにハプテンとして機能しうる工業化学品やその代謝産物(例えば、酸無水物(無水トリメリト酸など)やイソシアン酸塩/エステル(トルエンジイソシアネート));小麦粉(例えばパン屋喘息(Baker’s asthma)の原因となるアレルゲン)やトウゴマの実やコーヒー豆や上記した工業化学品などの職業上のアレルゲン;または非ヒト動物中のヒト由来タンパク質等;が含まれる。
【0117】
特に限定されるものではないが、アレルゲンとしては、細胞、細胞抽出物、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、多糖類、複合多糖類、多糖類や他の分子を含んでなるペプチド・非ペプチド模倣体(peptide and non-peptide mimics of polysaccharides and other molecules)、小分子、脂質、糖脂質、および炭水化物などが例示される。
【0118】
特異的な天然由来の、動物由来のおよび植物由来のアレルゲンの具体例としては、特に限定されるものではないが、以下の生物の属に特有のタンパク質が含まれる。イヌ属(Canine)(イヌ(Canis familiaris))、ヒョウダニ属(Dermatophagoides)(例えばコナヒョウダニ(Dermatophagoides farinae))、ネコ属(Felis)(イエネコ(Felis domesticus))、ブタクサ属(Ambrosia)(ブタクサ(Ambrosia artemiisfolia))、ドクムギ属(Lolium)(例えばホソムギ(Lolium perenne)やネズミムギ(Lolium multiflorum))、スギ属(Cryptomeria)(スギ(Cryptomeria japonica))、アルテルナリア属(Alternaria)(アルテルナリア・アルテルナタ(Alternaria alternata))、ハンノキ属(Alder)、ヤシャブシ属(Alnus)(アルヌス・グルティノサ(Alnus gultinoasa))、カバノキ属(Betula)(カバ(Betula verrucosa))、カシ属(Quercus)(クウェルクス・アルバ(Quercus alba))、オリーブ属(Olea)(オリーブ(Olea europa))、ヨモギ属(Artemisia)(ヨモギ(Artemisia vulgaris))、オオバコ属(Plantago)(例えばヘラオオバコ(Plantago lanceolata))、ヒカゲミズ属(Parietaria)(パリエタリア・オフィチナリス(Parietaria officinalis)またはタチヒカゲミズ(Parietaria judaica))、チャバネゴキブリ属(Blattella)(チャバネゴキブリ(Blattella germanica))、ミツバチ属(Apis)(アピス・ムルティフロルム(Apis multiflorum))、イトスギ属(Cupressus)(例えば、クプレスス・セムペルビレンス(Cupressus sempervirens), クプレスス・アリゾニカ(Cupressus arizonica), クプレスス・マクロカルパ(Cupressus macrocarpa))、ビャクシン属(Juniperus)(例えばユニペルス・サビオノイデス(Juniperus sabinoides), ユニペルス・ビルギニアナ(Juniperus virginiana), ユニペルス・コムニス(Juniperus communis), ユニペルス・アシェイ(Juniperus ashei))、クロベ属(Thuya)(例えばツヤ・オリエンタリス(Thuya orientalis))、ヒノキ属(Chamaecyparis)(例えば、ヒノキ(Chamaecyparis obtusa))、ワモンゴキブリ属(Periplaneta)(例えばワモンゴキブリ(Periplaneta americana)) 、カモジグサ属(Agropyron)(例えばアグロピロン・レペンス(Agropyron repens))、ライムギ属(Secale) (例えばライムギ(Secale cereale))、コムギ属(Triticum) (例えばコムギ(Triticum aestivum))、カモガヤ属(Dactylis)(例えばカモガヤ(Dactylis glomerata))、ウシノケグサ属(Festuca) (例えばヒロハノウシノケグサ(Festuca elatior))、イチゴツナギ属(Poa) (例えばナガハグサ(Poa pratensis)またはポア・コンプレサ(Poa compressa))、カラスムギ属(Avena) (例えばマカラスムギ(Avena sativa))、シラゲガヤ属(Holcus) (例えばシラゲガヤ(Holcus lanatus))、ハルガヤ属(Anthoxanthum)(ハルガヤ(Anthoxanthum odoratum))、オオカニツリ属(Arrhenatherum)(例えばオオカニツリ(Arrhenatherum elatius))、ヌカボ属(Agrostis) (例えばコヌカグサ(Agrostis alba))、アワガエリ属(Phleum) (例えばオオアワガエリ(Phleum pratense)) 、クサヨシ属(Phalaris) (例えばクサヨシ(Phalaris arundinacea))、スズメノヒエ属 (Paspalum) (例えばパスパルム・ノタツム(Paspalum notatum))、モロコシ属(Sorghum) (例えばソルグム・ハレペンシス(Sorghum halepensis)) 、スズメノチャヒキ属(Bromus) (例えばコスズメノチャヒキ(Bromus inermis))。
【0119】
特に着目される具体例では、本発明はポリヌクレオチドアジュバント組成物とその使用方法を提供するものであって、当該ポリヌクレオチドアジュバント組成物はPIKAアジュバントと、粘膜表面を介して宿主に侵入する自己免疫抗原とを含んでなる。
【0120】
<その他の剤>
幾つかの具体例では、本発明の免疫原性組成物は、ポリヌクレオチドアジュバントと抗原とに加えて、例えば免疫調節剤(immunomodulatory agent)や担体その他の剤等の一またはそれ以上の追加の剤を含んでなる。
【0121】
特に着目される具体例では、本発明は免疫原性組成物とその使用方法とを提供するものであって、当該免疫原性組成物はPIKAアジュバントと、抗原またはワクチンと、例えばアジュバント等の他の免疫調節物質とを含んでなる。ここで、好適な免疫調節物質は、特に限定されるものではないが、例えば水酸化アルミニウム等のアルミニウム組成物;例えば完全フロイントアジュバント等の、抗原性物質を含んでなる水中油(oil-in-water)乳化剤組成物または乳化剤;乾燥し、熱処理で殺した結核菌体を含んでなる水中油乳化剤組成物;不完全フロイントアジュバント;マイコバクテリアの細胞壁組成を含む乳化剤;スクアレン(MF-59)を含む乳化剤;脱毒化したエンドトキシン、微生物モノホスホリルリピッドA(MPL)等のリピッドA誘導体;ハプテン;ニトロセルロース吸着タンパク質(nitrocellulose-absorbed protein); 例えば、キラヤ・サポナリア(Quillaja Saponoria)の樹皮から単離された粒状の免疫調節剤であるQS21等のサポニン;内因性のヒトの免疫調節剤;例えば、メチル化されていないCpGジヌクレオチド等の細菌由来のアジュバント;例えば、メチル化されていないCpGジヌクレオチド等のオリゴデオキシヌクレオチド(例えば合成オリゴヌクレオチド);リポソーム(例えば、リン脂質等の生分解可能な材料からなるリポソーム);(例えば、ポリ乳酸−グリコール酸共重合体(polylactic-co-glycolic acid: PLGA)、ポリホスファゼン(polyphosphazene)、ポリ酸無水物(polyanhydrides)等の様々なポリマーにより構成されるミクロスフェア);インターロイキン−2;無菌化ウシ型結核菌(BCG:Bacillus Calmette Guerin); 顆粒球単球−コロニー刺激因子(Granulocyte Monocyte-Colony Stimulating Factor); モンタニド アイ・エス・エー51(Montanide ISA-51); スカシ貝抽出ヘモシアニン(Keyhole limpet hemocyanin); DNA; タンパク質;カプセル化された抗原;免疫刺激複合体(ISCOM’s);コレラ毒素;コレラ毒素の誘導体;閉鎖体毒(zonula occludens toxin); 大腸菌の熱変性エンテロトキシン(escherichia coli heat-labile enterotoxin); 熱変性した毒素;熱変性した毒素の誘導体;百日咳毒素、百日咳毒素の誘導体;ムラミルジペプチドの誘導体;セピック社製 のモンタニド(montanide)アジュバントシリーズ;ポリジカルボキシラトフェノキホスファゼン(poly-di(carboxylatophenoky)phosphazene)およびリーシュマニア伸長因子;が含まれる。
【0122】
対象となる免疫原性組成物が他のアジュバントと混合して投与される場合には、当該ポリヌクレオチドアジュバントは他のアジュバントの投与前および/または投与後、および/または同時に投与することができる。例えば、最初の抗原投与と同時に当該ポリヌクレオチドアジュバントを投与して、これに引き続いて何れか一方または双方のアジュバントを含んでなるワクチンの投与を追加刺激として行うこともできる。代わりに、最初に投与するワクチンには当該ポリヌクレオチドアジュバントを含ませず、引き続いて当該ポリヌクレオチドアジュバントを含む免疫原性物質を患者に投与することもできる。
【0123】
或る具体例では、対象となる免疫原性組成物は、例えばIL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−10、IL−12、IL−15等のサイトカインや他の共刺激分子と共に投与することもできる。
【0124】
関連する具体例では、本発明は、PIKAアジュバントと、一種または複数種の抗原性物質とに加えて、適切な担体(キャリア)を含んでなる免疫原性物質を提供する。担体としては、例えば、オイル-水乳化剤、脂質伝達体(lipid vehicle)またはアルミニウム塩、コクリエート類(cochleates)、ISCOMs、リポソーム、生細菌ベクター、生ウイルスベクター、ミクロスフェア、核酸ワクチン、ポリマー、ポリマー環(polymer ring)、フッ化ナトリウム、トランスジェニック植物、ウイロソーム、ウイルス様粒子、並びにこの分野で知られている他の送達用の伝達体が例示される。
【0125】
ポリヌクレオチドアジュバントは被験体に直接投与されてもよく、又送達用複合体との混合物として投与されてもよい。ここで、上記の送達用複合体とは、例えば樹状細胞の表面のようなターゲット細胞に対しより高結合親和性を示す分子、および/または、ターゲット細胞による細胞取り込みを増加させるような、ターゲティング手段と結合されてなる物質である。送達用複合体の例としてこれらに限定されるものではないが、核酸送達のために、ステロール(例えば、コレステロール)、脂質(例えば、カチオン性脂質、ウイロソームまたはリポソーム)、またはターゲット細胞特異的に結合する剤(例えば、ターゲット細胞特異的な受容体により認識されるリガンド)と結合されてなるものが含まれる。好適な複合体は、ターゲット細胞により取り込まれる前に、影響を与えうる分離が発生しない程度に生体内で十分に安定でありうる。しかしながら、当該複合体は、細胞内において適切な条件下で分解されうる。
【0126】
対象となる具体例の一つでは、PIKAアジュバントを含んでなる当該組成物は、ポリL−リジンまたはその誘導体を含んでいない。
【0127】
<キット>
或る具体例では、本発明は、対象となる免疫原性組成物を含んでなるキットを提供する。或る具体例では、本発明は、ポリヌクレオチドアジュバントと抗原とを別々の調剤として含んでなるキットを提供する。
【0128】
或る具体例では、本発明は、ポリヌクレオチドアジュバントと免疫原性化合物とを含んでなるキットを提供する。
【0129】
関連する具体例では、本発明は、ポリヌクレオチドアジュバントと免疫原性化合物とを含んでなり、当該免疫原性物質が抗原であるキットを提供する。
【0130】
幾つかの具体例では、対象となるキットは、対象となる免疫原性組成物を無菌の液状(例えば水性)として調剤したものを含んでなり、当該調剤は無菌であり、かつ無菌の容器にて供され、無菌のバイアルまたは無菌のシリンジにて供される。
【0131】
幾つかの具体例では、対象のキットは、対象となる免疫原性組成物が注射剤として調剤されたものを含んで構成される。幾つかの具体例では、対象のキットは、無菌のシリンジ内に収納され無菌の液状として調剤された免疫原性組成物と、注射針と、を備えてなる。幾つかの具体例では、対象のキットは、無菌のシリンジ内に収納され無菌の液状として調剤された1投与単位量(すなわち1回量)の免疫原性組成物と、注射針と、を備えてなる。
【0132】
幾つかの具体例では、対象となるキットは、凍結乾燥されて無菌の容器に入れられた免疫原性組成物と、凍結乾燥された当該組成物を元に戻すための無菌の液体を含んだ容器と、を備えてなる。幾つかの具体例では、当該キットはさらに、凍結乾燥された当該組成物を元に戻すための説明書を含んでなる。
【0133】
幾つかの具体例では、対象となるキットは、経直腸投与、経膣投与、経鼻投与、経口投与(吸入投与を含む)、オプサマティカル投与、局所投与、経肺投与、経眼投与、または経皮投与のために調剤された免疫原性組成物を、並びに例えば吸入器や坐薬や塗布具その他の適切な投与装置により投与するために調剤された免疫原性組成物を含んでなる。
【0134】
幾つかの具体例では、対象となるキットはさらに、例えば投与量や投与頻度等、キットの使用説明書を含んでなる。幾つかの具体例では、説明書はキット上に直接印刷されている。他の具体例では、説明書はパッケージに挿入された形で供される印刷物である。説明書はまた他の媒体のかたち、例えば、オーディオカセット、オーディオテープ、コンパクトディスクまたはDVDその他の上にデジタル形式またはアナログ形式等で電子的に保存されて提供しうる。
【0135】
<調剤>
対象となる免疫原性組成物は、様々な如何なる形式の調剤でも提供される。例えば、対象となる免疫原性組成物は、注射可能なもの、乾燥粉末、または溶液として調製されてもよい。例えば、水性溶液または生理的食塩水溶液、懸濁液、クリーム、乳化剤、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル剤、ゲル、シロップ、スラリーが例示される。幾つかの具体例では、対象となる免疫原性組成物は、例えば、吸入器を介した送達、人工呼吸装置の管を介した送達、経口送達、経直腸送達、経膣送達等の粘膜投与用として調製される。所望する免疫原性組成物の調剤方法は、その概要がVaccine 4th Edition (Stanley A Plotkin等、W.B. Saunders Company、4th edition 2003)に記載されている。好適な調剤法は、例えばまた、A. Gennaro(2000) “Remington: The Science and Practice of Pharmacy”, 20th edition, Lippincott, Williams, & Wilkins; Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery System(1999) H.C. Ansel et al., eds.,7th ed., Lippincott, Williams, & Wilkins; Handbook of Pharmaceutical Excipients(2000) A.H. Kibbe et al.,eds.,3rded. Amer.Pharmaceutical Assoc.にも記載されている。
【0136】
対象となる免疫原性組成物は、マイクロカプセル化され、コクリエート化され(encochleated)、金微粒子上にコートされ、リポソームに封入され、霧状のエアロゾルとして、または皮膚に移植する錠剤とされうる、または、皮膚に掻きこめるように鋭利な物体上で乾燥されうる。
【0137】
また別の具体例では、対象となる免疫原性物質は、単独でまたは分散系と混合されて送達されてもよい。幾つかの具体例では、当該分散系は、例えば、高分子性複合体(macromolecular complexes)、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、および脂質を基材とする系からなる群より選択されるものである。脂質を基材とする系は、任意に、水中油(oil-in-water)乳化剤、ミセル、ミセルまたはリポソームの混合物、を含む。
【0138】
或る具体例では、PIKAアジュバントを含んでなる対象の免疫原性組成物は、薬剤として許容される溶液の形態であり、常態的に、薬剤として許容される濃度の塩、緩衝(バッファー)剤、保存料、反応性のない担体、アジュバント、および任意に他の治療用成分を含みうる。当該組成物は、例えば、崩壊剤、バインダー、コート剤、膨張剤、潤滑剤、香料、甘味料、可溶化剤その他を含みうる。
【0139】
或る具体例では、PIKAアジュバントを含んでなる対象の免疫原性組成物は、そのまま、または薬剤として許容される塩のかたちで投与される。
【0140】
或る具体例では、PIKAアジュバント組成物、および、PIKAアジュバントと抗原化合物とを含んでなる抗原性組成物は、長期安定性のためと固体での保存を可能とするために凍結乾燥(フリーズドライ)されうる。凍結乾燥の方法は当業者には公知である。
【0141】
特に着目される側面として、本発明は、免疫原性組成物または当該免疫原性組成物に含まれるアジュバント組成物が、固体もしくは液体または溶液もしくは懸濁液である、アジュバント組成物または免疫原性組成物を提供する。
【0142】
水性溶液で非経口投与を行うために、例えば、当該溶液は必要に応じて適切に緩衝され、かつ、十分量の塩水またはグルコースを用いて溶液を等張性となるよう希釈する。これら特定の水性溶液は、とりわけ静脈投与および腹膜投与に好適である。この関係で、使用可能な無菌の水性媒体は、現在の開示に照らして当業者に知られるものである。本発明で使用可能な注射用媒体の例示として、分散剤および/または保存料を含む/含まない緩衝剤、食用油、鉱物油、タラの肝油、スクワレン、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、またはこれらの混合物、が挙げられる。
【0143】
或る具体例では、対象となる免疫原性組成物は、粘膜投与に好適な特定の形態に調剤される。その形態には、無菌のものも無菌でないものも含まれるが、例えば、カプセル、溶液、液滴、乳液、懸濁液、エリキシル剤、クリーム、坐薬、ゲル、ソフトカプセル等のカプセル、スプレー、吸入薬、エアロゾル、粉末、錠剤、被覆錠剤、マイクロカプセル、坐薬、点滴薬、丸薬、糖衣錠、シロップ剤、スラリー、浣腸剤、顆粒、トローチ剤が挙げられる。例えば、塩水、リン酸緩衝塩水、安定化剤、推進薬(propellant)等、不活性の担体はいずれも使用することができ、これら担体は、粘膜への適用を助けるためにゼラチンカプセル、マイクロカプセルまたはベクターに包まれたかたちとすることもできる。また、本発明の方法に用いられるこれら担体は、適切な溶解特性を持つ。
【0144】
対象となる免疫原性組成物は、吸入経路(経口、経気管、経鼻)用の薬剤送達系を介して個人に投与されうる。従って、対象となる免疫原性組成物は、吸入投与に好適な形態に調剤されうる。この薬剤送達系は、対象となる細菌の組成物を気管支の粘膜内層に局所投与して呼吸器系の治療を行うに適したものである。本発明は、容器から細菌を放出するのに圧縮ガスの力を用いる系も利用できる。この目的では、エアロゾルや加圧パッケージを採用することもできる。したがって、或る具体例では、対象となる免疫原性組成物は、例えば吸入によって呼吸器系の組織に送達する目的で調剤される。或る具体例では、対象となる免疫原性組成物はエアロゾルを形成するようにエアロゾル化される。
【0145】
ここで、「エアロゾル」という用語は、通常の意味で用いられており、すなわち、一定圧力を有する推進(propellant)ガスによって治療の適用を受ける部位に運搬される、微細液体または微細固体粒子を指す。薬剤としてのエアロゾルが本発明で用いられる場合、当該エアロゾルは、流体キャリアと推進剤との混合物中で溶解、懸濁、または乳化されていてもよい免疫原性組成物を含んでなる。或る具体例では、対象となる免疫原性組成物は流体キャリアと推進剤とを含んでなるように調剤される。当該エアロゾルは、溶液、懸濁液、乳化剤、粉末、または半固体状製剤の形態をとりうる。本発明にて用いられるエアロゾルは、微細な固体粒子、または微細な液状ミストとして、被験体の呼吸器系管(respiratory tract)を介して投与されることを意図している。当業者に知られたあらゆる種類の推進剤を利用可能である。好適な推進剤の例として、特に限定されるものではないが、例えば、炭化水素ガスまたは他の好適なガスが挙げられる。加圧されたエアロゾルの場合、計量された量の送達ができるような値を規定することでその投与量を決めることができる。
【0146】
本発明に関連して採用しうる吸入方法には、幾つか異なったタイプのものがある。対象となる免疫原性組成物は、基本的には、三種の異なった吸入剤の調剤法により調剤することができる。第一は、対象となる免疫原性組成物は、低沸点の推進剤とともに調剤することができる。そのような調剤は、一般的には汎用の定量噴霧式加圧ネブライザー(meter dose inhalers(MDI’s))にて投与される。しかしながら、米国特許5,404,871号および米国特許5,542,410号にて議論されているように、被験体の吸入体積(inspiratory vulume)と流量率(flow rate)とを測定する技術を用いて反復可能投与(repeatable dosing)をなしうる能力を増大させるように、汎用のMDI’sを改良してもよい。
【0147】
これに代えて、対象となる免疫原性組成物は、水性溶液またはエタノール溶液として調剤し、汎用のネブライザーにて投与することもできる。幾つかの具体例では、このような溶液状の調剤は、例えば、米国特許5,497,763号、5,544,646号、米国特許5,718,222号、米国特許5,660,166号に開示されるような装置またはシステムを用いてエアロゾルにされる。
【0148】
さらに、対象となる免疫原性組成物は、乾燥粉末調剤として調剤されてもよい。この調剤は、当該乾燥粉末調剤のエアロゾルミストを形成した後に、簡単に、吸入投与することができる。これを実行する技術は、米国特許5,775,320号、米国特許5,740,794号に記載されている。経鼻投与目的の好適な調剤としては、点鼻スプレー、点鼻液滴、エアロゾル調剤、その他、が例示される。
【0149】
本発明は、対象の免疫原性組成物を個人の気道または呼吸器系管に送達する目的で使用するパッケージを提供する。概して、呼吸器系管に届ける目的で好適なパッケージは、呼吸器系管に届ける(例えば吸入法により届ける)に好適なフロアブル調剤を保持する容器と、上記のポリヌクレオチドアジュバントと、抗原とを含んでなる。幾つかの具体例では、当該パッケージは、定量噴霧式加圧ネブライザーと、ポリヌクレオチドアジュバントと、抗原とを、推進剤とともに調剤したものである。
【0150】
幾つかの具体例では、対象となる免疫原性組成物は、放出持続性の調剤(例えば、放出が制御された調剤)として調剤される。例えば、幾つかの具体例では、対象となる免疫原性組成物は、ペレット状またはシリンダー内に調剤され、貯蔵性注射剤(depot injection)またはインプラントとして、筋肉経由でまたは皮下に注入される。このような注入においては、一般的に、生分解性ポリマー等の公知の不活性材料を利用する。注射可能な貯蔵物のかたちは、ポリラクチド−ポリグリコリド等の生分解性ポリマー中に免疫原性組成物のマイクロカプセルマトリクスを形成することにより製造される。他の好適な生分解性ポリマーとしては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)が例示される。注射可能な貯蔵用の調剤はまた、体の組織に適合性のあるリポソームやマイクロエマルジョンの中に当該組成物を補足することによっても調製できる。送達放出システムとしてはまた、ポリマーベース系、マイクロカプセル、脂質、ヒドロゲル放出系、シラスティック(sylastic)系、ペプチド系、ペプチドベース系、ワックスコーティング、圧縮製造の錠剤、部分的に融合したインプラント、等の例示を挙げることができる。放出持続性の他の形態は、当業者に公知である。
【0151】
口からの投薬の場合、対象となる免疫原性組成物は、或る具体例では腸溶性のコート材を含んでよい。好適な腸溶性のコート材は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(ヒプロメロースフタル酸エステル:HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ポリビニルフタリックアセテート(PVPA)、ユードラギット(Eudragit:商標)、セラック、が挙げられる。
【0152】
好適な経口用の調剤に関する特に限定されない例の一つでは、米国特許6,346,269号に記載されるように、対象となる免疫原性組成物は一またはそれ以上の薬学的な補形剤とともに調剤され、腸溶性のコート材によってコートされる。例えば、対象となる免疫原性組成物と安定化剤とを、薬剤的に許容される補形剤を含んでなる核上にコートして、活性ある剤をコートした核を形成し、次いでこの核にサブコート層をアプライし、当該核が腸溶性のコート層にてコートされる。当該核は一般に、ラクトース、スターチ、マンニトール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、スターチグリコール酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、色素、アルギン酸の塩、タルク、二酸化チタン、ステアリン酸、ステアリン酸塩、マイクロ-クリスタリン セルロース、グリセリン、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、三酢酸プロパニル、二塩基性のリン酸カルシウム、三塩基性のリン酸ナトリウム、硫酸カルシウム、シクロデキストリンおよびヒマシ油等の薬学的に不活性な組成を含む。
【0153】
好適な溶媒には、水性溶媒が挙げられる。好適な安定化剤には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、並びに、リン酸塩、有機酸塩および有機アミン類の塩基類、が挙げられる。当該サブコート層は、一またはそれ以上の、接着剤、可塑化剤、および抗粘着剤を含んでなる。好適な抗粘着剤には、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸塩、ステアリルフマル酸ナトリウム、ベヘン酸グリセリル(glyceryl behenate)、カオリン、エアロジル、が挙げられる。好適な接着剤には、ポリビニルピロリドン(PVP)、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、酢酸ビニル(VA)、ポリビニルアルコール(PVA)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、キサンガム、アルギニン酸、アルギニン酸の塩、ユードラギット(商標)、アクリル酸メチル/メタクリル酸メチルとポリビニルアセテートフタレート(PVAP)との共重合体、が挙げられる。好適な可塑化剤には、グリシン、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、三酢酸プロパニルおよびヒマシ油が挙げられる。好適な腸溶性のコート材としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ポリビニルフタリックアセテート(PVPA)、ユードラギット(商標)およびセラックが挙げられる。
【0154】
好適な経口用の調剤としてはまた、以下に記載の如何なるものと共に調剤された対象の免疫原性組成物を含んでなる。ミクロ顆粒(例えば、米国特許6,458,398号を参照)、生分解性のマクロマー(macromers)(例えば、米国特許6,703,037号を参照)、生分解性のヒドロゲル(例えば、Graham and McNeill(1989)Biomaterials 5:27-36を参照)、生分解性の粒状のベクター(例えば、米国特許5,736,371号を参照)、生物により吸収されるラクトンポリマー(例えば、米国特許5,631,015号を参照)、徐放性のタンパク質ポリマー(例えば、米国特許6,699,504号;Pelias Technologies, Inc. を参照)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド/ポリエチレングリコール ブロック共重合体(例えば、米国特許6,630,155号;Atrix Laboratories, Inc. を参照)、生物適合性のあるポリマーと当該ポリマー中に分散された金属カチオン安定化剤の粒子とを含んでなる組成物(例えば、米国特許6,379,701号;Alkermes Controlled Therapeutics, Inc. を参照)、ミクロスフェア(例えば、米国特許6,303,148号; Octoplus, B.V. を参照)。
【0155】
好適な経口用の調剤としてはまた、以下に記載の如何なるものと共に調剤された対象の免疫原性組成物を含んでなる。Emisphere(登録商標:Emisphere Technologies, Inc.)等の担体; TIMERx: キサンガムとイナゴマメ由来ガムとを結合した親水性のマトリクスであって、ブドウ糖の存在下では水中で強力なバインダーゲルを構成する(Penwest); Geminex(商標:Penwest); Procise(商標:GlaxoSmithKline); SAVIT(商標:Mistral Pharma Inc.); RingCap(商標:Alza Corp.); Smartrix(登録商標:Smartrix Technologies, Inc.); SQZgel(商標:MacroMed, Inc.); Geomatrix(商標:Skye Pharma, Inc.); Oros(登録商標)Tri−layer(Alza Corporation);その他。また、米国特許6,296,842号(Alkermes Controlled Therapeutics, Inc.)、米国特許6,187,330号(Scios, Inc.)、その他に記載された調剤方法も好適に用いることができる。
【0156】
また、腸管吸収を増強する剤を含んでなる調剤も、ここで好適に用いることができる。好適な腸管吸収増強剤は特に限定されるものではないが、カルシウムキレート剤(例えば、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸)、界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、胆汁酸塩、パルミトイルカルニチン、および脂肪酸のナトリウム塩)、毒素(例えば、閉鎖帯毒)、その他、が挙げられる。
【0157】
関連する具体例では、対象となる免疫原性組成物は、胃腸の酵素および/または酸による分解を阻害する一またはそれ以上の剤と共に調剤される。或る具体例では、対象となる免疫原性組成物は、当該組成物中の構成を、胃腸の酵素および/または酸による分解から保護するための一またはそれ以上の剤と共に調剤される。
【0158】
幾つかの具体例では、対象となる免疫原性組成物は、粘膜組織による吸収を亢進させるための一またはそれ以上の剤と共に調剤される。
【0159】
幾つかの具体例では、対象となる免疫原性組成物は、膣用の送達系を備えて、膣から送達するように調剤される。一つの具体例では、膣用の送達系は、対象となる免疫原性組成物を含んでなるタンポンまたはタンポン様のデバイスである。薬剤を送り届けるためのタンポンは当該分野では知られており、如何なるタンポンも、対象となる薬剤送達系と共に用いることができる。薬剤を送り届けるためのタンポンは、例えば、米国特許6,086,909号に記載されている。仮に、タンポンまたはタンポン様のデバイスが用いられる場合、対象となる免疫原性組成物を当該デバイスに組み込み可能な方法は、様々なものがある。例えば、当該デバイスの先端内に位置する生物接着性ある(bioadhesive)ゲル様のリザーバ内に、対象となる免疫原性組成物を組み込むことができる。これに代えて、対象となる免疫原性組成物を、粉末状物質のかたちでタンポンの先端に配置してもよい。当該免疫原性組成物を、タンポン先端の繊維に吸収させることもできる。例えば、当該免疫原性組成物を薬学的に許容される担体中に溶解し、次いで当該免疫原性組成物をタンポンの繊維に吸収させることもできる。対象となる免疫原性組成物を、タンポンの先端にアプライされるコート材中に溶解することもできる。これに代えて、対象となる免疫原性組成物は、タンポンの先端と関連する位置に配される、挿入可能な坐薬に組み込むこともできる。
【0160】
他の具体例では、対象となる免疫原性組成物は、膣リング(vaginal ring)と同時使用する目的で、膣用の送達系として膣リングを備えて調剤される。膣リングは、通常、不活性のエラストマーリングにより構成され、このリングは対象となる免疫原性組成物を含んでなる他のエラストマー層によりコートされてなる。このリングは容易に挿入でき、所望する期間(例えば、7日まで)その場所に挿入しておき、次いで使用者により取り出される。当該リングは、当該免疫原性組成物を含まない第三の外層である、速度制御用のエラストマー層を任意に含むことができる。当該免疫原性組成物は、当該組成物のリザーバとして機能するポリエチレングリコール中に、シリコーンエラストマーリング全体にわたり組み込むことができる。
【0161】
他の具体例では、好適な膣用の送達系は膣スポンジである。対象となる免疫原性組成物は、文献に記載されるように、円筒形でかつドラッグフリーのポリウレタン製の膣スポンジ上にコートされるシリコーンマトリックス内に組み込まれる。ペッサリー、錠剤、および坐薬が、本発明において用いることができる他の薬剤送達系の例である。これらの系に関しては、文献で詳細に述べられている。
【0162】
他の系としては、対象となる免疫原性組成物を含み、例えば、直腸または膣送達用の塗布具と共に使用する目的に適合した容器(例えばチューブ)がある。対象となる免疫原性組成物は、塗布具を用いて膣に塗ることができるように、クリーム、ローション、フォーム、ペースト、軟膏、およびゲルに混ぜ込まれる。クリーム、ローション、フォーム、ペースト、軟膏、およびゲルの形状の薬剤を調製する方法は、様々な文献中に見出すことができる。好適な系の一例として、JERGENS(Andrew Jergens Co., Cincinnati, Ohio)の商標の元、販売されている製品のような標準的な無香料のローションの調合である、グリセロール、セラミド類、鉱物油、ワセリン、パラベン類、香料および水、が挙げられる。本発明にかかる当該組成物用に使用できる、毒性がなく薬剤として許容される好適な系は、薬剤調合の技術分野に属する当業者には明らかなものであり、その例はRemington’s Pharmaceutical Sciences, 19th edition, A.R. Gennaro, ed.,(1995)に記載されている。好適なキャリアの選択は、所望される特定の膣薬の形態が有する性質、例えば、活性成分がクリーム、ローション、フォーム、軟膏、ペースト、溶液、またはゲルの何れかの形態に調剤されているか、並びに活性成分が何であるか等、に依存する。その他の好適な送達用デバイスとして、米国特許6,476,079に記載されたものがある。
【0163】
<方法>
特に着目される側面として、本発明は、抗原化合物に対する免疫応答を顕在化させるおよび/または亢進させる方法であって、対象となる免疫原性組成物を宿主に投与することを含んでなる方法を提供する。幾つかの具体例では、宿主はヒトである。他の具体例では、宿主は、例えば、非ヒト哺乳動物および鳥類の種等の非ヒト動物である。
【0164】
さらに、本発明は、当該免疫原性組成物を宿主に投与することで、抗原化合物に対する免疫応答を亢進させる方法を提供する。宿主は、ヒトまたは非ヒト動物でありうる。投与は、例えば、筋肉注射、腹膜注射、静脈注射、皮下注射、皮内注射等の注射により非経口的に行うことができる。他の具体例では、当該免疫原性組成物は、注射以外の方法、例えば、機械的手段により上皮のバリアを破壊することなく皮内に投与されうる。他の具体例では、当該免疫原性組成物は、直腸投与、経膣投与、経鼻投与、経口投与(吸入投与を含む)、オプサマティカル(opthamalically)投与、局所投与、経肺投与、経眼投与、または経皮投与により、送達されうる。
【0165】
被験体は、環境との接触を通じて抗原にさらされうるので、例えば、アレルギー反応、感染症、自己免疫疾患、またはガン等を発症するリスクをもつ。他の具体例では、被験体は、環境との接触を通じて事前に抗原にさらされた結果、例えば、感染症、自己免疫疾患、ガンまたはアレルギー等を有している。
【0166】
或る具体例では、当該アジュバントが抗原とともに投与される。さらに別の具体例では、当該アジュバントは、抗原の投与前にまたは抗原の投与後に投与される。
【0167】
幾つかの具体例では、対象となる免疫原性組成物は、粘膜を介して投与される。粘膜投与としては、吸入、鼻へ点滴投与、点眼投与等により呼吸器系等の組織に投与するもの;経口投与;例えば坐薬により肛門または膣ルートから投与するもの;その他;が挙げられる。
【0168】
特に着目される側面として、本発明は、抗原化合物に対する免疫応答を亢進させる方法であって、宿主に対し、抗原化合物の抗原性を亢進させるためのポリヌクレオチドアジュバント組成物を含んでなる免疫原性組成物を投与する方法を提供する。これらのうちの幾つかの具体例では、宿主はヒトである。他の具体例では、宿主は非ヒト動物(非ヒト霊長類、げっ歯類、またはその他の非ヒト哺乳類、鳥類の種、等)である。
【0169】
或る具体例では、当該ポリヌクレオチドアジュバント組成物は、ワクチンとして使われてもよい。当該ワクチン組成物は、任意に、他のアジュバントも含んでなる。含まれるワクチンの種類は、呼吸器系、抗消化器官系、尿生殖器系、または感覚器系の抗感染性疾患用、アレルギー用、および抗自己免疫疾患用がある。
【0170】
対象となる免疫原性組成物は有効量(effective amount)投与される。有効量とは、すなわち、免疫応答を顕在化させる、誘導する、または亢進させるために選択した投与経路において効果を発揮する、免疫原性組成物の量を指す。幾つかの具体例では、病原性微生物により産生された抗原に対する免疫応答が顕在化される。幾つかの具体例では、対象となる免疫原性組成物の量は、病原性微生物による感染を制限する、および/または、感染を根絶する、および/または、感染に関連する症状を減らすに有効な量である。
【0171】
例えば、幾つかの具体例では、対象の免疫原性組成物を個人に投与することが、感染症の治療に有効である。ここで、感染症の治療とは、個人における病原体の数を減らす(例えば、ウイルス量(load)を減らす、細菌量を減らす、原生動物の数を減らす、寄生虫数を減らす)、および/または、感染症に関わるパラメーター、限定されないが例えば、病原体により産生される産物(例えば、毒、抗原、その他)の量を減らす;病原体に対する不所望な生理学的応答(例えば、熱、組織の浮腫、その他)を減らす、という一または複数を達成するものである。
【0172】
免疫応答(例えば、粘膜性免疫応答等)を誘導する、および/または、亢進させるために必要な免疫原性組成物の正確な量は、生物種;体重;被験体の一般条件;治療または予防の対象となる病気、感染症または状態の厳しさ;使用される化合物;投与の方法;その他;に依存して、被験体毎に異なる。適切な量は、ここに教示した内容に基づき、当業者であれば単なるルーチンな実験で決定することができるだろう。最初の投与に引き続き、被験体は一または数回の追加免疫を適切な間隔をおいて受けうる。
【0173】
幾つかの具体例では、対象となる免疫原性組成物は連続して投与される。これらの具体例では、対象となる免疫原性組成物の第一回目の投与は、ワクチン投与と同様の結果をもたらしうる。対象となる免疫原性組成物の第二回目の投与は、第一回目の投与にさらされることで個体が免疫的に感作(prime)された後に行われる。追加抗原刺激は、患者の応答と状態に応じて、第一回目の免疫から数日後、数週間後、または数ヶ月後に行いうる。例えば、追加抗原刺激の投与は、最初の投与の後約2日から約12ヶ月の間で行われ、例えば、最初の投与の後、約2日後から約7日後の間で行われ、約1週間後から2週間後の間で行われ、約2週間後から約4週間後の間で行われ、約4週間後から8週間後の間で行われ、約8週間後から6ヵ月後の間で行われ、または約6ヶ月後から12ヵ月後の間で行われる。本発明はさらに、3回目、4回目、5回目、6回目またはさらなる投与を用いて、3回目、4回目、5回目、6回目またはさらなる追加抗原刺激を行うことを企図する。
【0174】
幾つかの具体例では、投与の方法は、異なる経路の組み合わせであっても良く、例えば、全身性の投与(例えば、腹膜、筋肉、皮下、皮内)を行った後に、粘膜性の投与(例えば、経鼻、吸入)を行う、またはその逆であってもよい。全体のプロトコールを構成する投与の少なくとも1つがPIKAアジュバントを含んでなる。
【0175】
或る具体例では、ポリヌクレオチドアジュバントは、最初に投与される抗原と共に、またはそれに引き続く投与の何れかと共に、または全ての投与と共に、患者に投与されうる。
【0176】
或る具体例では、投与される免疫原性組成物の組成は、最初の投与(dose)と追加抗原刺激の投与との間で、および/または、複数の追加抗原刺激の投与間で、変わりうる。例示をすると、最初の投与はDNAワクチンを含んでなり、一方で追加抗原刺激の投与は組換えタンパク質ワクチンのかたちでありうる。全体のプロトコールを構成する投与の少なくとも1つがPIKAアジュバントを含んでなる。
【0177】
標準のアッセイ法を用いて、個体において抗原に対する抗体反応が誘導されたまたは亢進したことを容易に決定できる。例えば、酵素結合免疫吸着定量法(ELIZA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫沈降アッセイ、タンパク質ブロット(ウエスタンブロット)アッセイ等の免疫学的アッセイ;中和アッセイ(例えば、ウイルス感染力を中和するインビトロまたはインビボのアッセイ);は、個体の体液またはその他の生物学的サンプル、例えば血清、分泌物または他の液体等、における、細菌抗原に特異的な抗体の存在を探知する目的で用いることができる。
【0178】
標準のアッセイ法を用いて、個体において抗原に対するCD4免疫応答が誘導されたことを容易に決定できる。ここで標準のアッセイ法は例えば、蛍光活性化セルソーティング(FACS)(例えば、Waldrop et al.(1997) J.Clin.Invest.99:1739-1750参照);抗原刺激に続き起こるサイトカイン類の産生を検出する細胞内サイトカインアッセイ(例えば、Suni et al.(1998) J.Immunol.Methods.212:89-98; Nomura et al.(2000) Cytometry 40:60-68; Ghanekar et al.(2001) Clin.Diagnostic Lab.Immunol. 8: 628-631参照);例えば、検出可能にラベル(例えば蛍光ラベル)された可溶性のMHCクラスII/ペプチドマルチマーを用いるもの等の、MHC−ペプチドマルチマー染色アッセイ(例えば、Bill and Kotzin(2002) Arthritis Res.4:261-265; Altman et al.(1996) Science 274:94-96; Murali-Krishna et al.(1998) Immunity 8: 177-187参照); 酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイ(例えば、Hutchings et al.(1989) J.Immunol.Methods 120:1-8; Czerkinsky et al.(1983) J.Immunol.Methods 65:109-121);その他;が挙げられる。限定されるものではないが、細胞内サイトカインアッセイの例として、全血を抗原と共刺激抗体(例えば、抗−CD28、抗−CD49d)とで2時間またはそれ以上刺激し;サイトカインの分泌を阻害するためにブレフェルディンA(Brefeldin A)を添加し;蛍光標識された抗CD4抗体と、TNF−a、TNF−γおよびIL−2等のサイトカインに対する蛍光標識化抗体とを用いて、細胞をFACS解析にかける;ものがある。
【0179】
抗原(例えば、病原体)に特異的なCD8(例えば、細胞傷害性T細胞(CTL))応答が誘導されたことは、この分野で知られた様々なアッセイ法を用いて決定できる。限定されるものではないが、アッセイ法として、その表面に抗原を発現する標的細胞がCTLにより特異的に溶解されることを測定するものがある。ここで、標的細胞には、溶解により放出される検出可能な標識が組み込まれており、例えば、51Cr放出アッセイ;ランタン系蛍光ベース細胞溶解(lanthanide fluorescence-based cytolysis)アッセイ;その他;により測定することができる。
【0180】
<治療に好適な被験体>
微生物性の病原体に対する免疫応答を誘導する本発明の方法、並びに微生物性の病原体の感染を治療または予防する本発明の方法が適用される好適な被験体には、病原性の微生物に感染している個体、病原性の微生物に感染しやすいが未感染の個体、病原性の微生物に感染する危険にさらされているが未感染の個体、が挙げられる。好適な被験体としては、幼子(infant)、子、青年期の個体(adolescent)、大人、が挙げられる。
【0181】
微生物性の病原体に対する免疫応答を誘導する本発明の方法、並びに微生物性の病原体の感染を治療または制限する本発明の方法が適用される好適な被験体には、標的とする小児集団、例えば、約1歳から約17歳の間の個体;幼子(例えば、生後約1ヶ月から約1歳の間);子(例えば、約1歳から約12歳の間);青年期の個体(例えば、約13歳から約17歳の間);が挙げられる。
【0182】
微生物性の病原体に対する免疫応答を誘導する本発明の方法、並びに微生物性の病原体の感染を治療または制限する本発明の方法が適用される好適な被験体には、新生児、例えば、生後1日から約14日の間の個体(例えば、ヒト新生児);生後約1日から約2日の間の個体;生後約2日から約10日の間の個体;生後約10日から約14日の間の個体;が挙げられる。
【0183】
特定の具体例では、被験体は約10歳もしくはそれより若い、例えば、約5歳もしくはそれより若いヒトの子であり、免疫原性組成物は、以下の時期の1つまたはそれ以上のタイミングで投与される。生後2週間後、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、4ヶ月後、5ヶ月後、6ヶ月後、7ヶ月後、8ヶ月後、9ヶ月後、10ヶ月後、11ヶ月後、12ヶ月後、15ヶ月後、18ヶ月後、または21ヵ月後、または2歳、3歳、4歳、5歳、6歳、7歳、8歳、9歳、または10歳時。幾つかの具体例では、対象となる免疫原性組成物は、生後約6ヶ月から約6歳の範囲内の年齢にある個体に投与され、ここで、個体は最初の投与を生後約6ヶ月で受け、引き続く追加抗原刺激の投与(例えば2回から3回)を、例えば2歳時、4歳時、および6歳時に受ける。
【0184】
特定の具体例では、被験体は約17歳から約49歳のヒトの成体である。幾つかの具体例では、被験体は、約50歳から約65歳の間の、65歳から75歳の間の、75歳から85歳の間の、または85歳を越えた、年配のヒトの成体である。
【0185】
幾つかの具体例では、対象となる免疫原性組成物は、現実にまたは潜在的に微生物性の病原体源と接触した後直ちに(例えば、確実に接触または接触したと推定された後直ちに)個体、例えば微生物性の病原体に感染したまたはその疑いのある個体等、に投与される。例えば、幾つかの具体例では、対象となる免疫原性組成物は、微生物性の病原体に感染したまたはその疑いのある個体に接触した後、約1時間以内に、約2時間以内に、約5時間以内に、約8時間以内に、約12時間以内に、約18時間以内に、約24時間以内に、約2日以内に、約4日以内に、約7日以内に、約2週間以内に、または約1ヶ月以内に、個体に投与される。
【0186】
幾つかの具体例では、感染症の症状を呈しているか否かに関わらず、保菌者または微生物性の病原体になったまたはその疑いのある個体に対して、対象となる免疫原性組成物が投与される。
【0187】
微生物性の病原体に対する免疫応答を誘導する本発明の方法、並びに微生物性の病原体の感染を治療または制限する本発明の方法が適用される好適な被験体には、例えば、機能を有するCD4Tリンパ球の数が通常より低いレベルの個体等の、CD4T細胞を欠損した個体(「CD4欠損」個体)が挙げられる。ここで、「通常の個体」という用語は、CD4Tリンパ球のレベルおよび機能が集団内の平均範囲内にある個体を指し、ヒトにおいては、血液1立方ミリメートル(mm)あたり通常は600個から1500個のCD4Tリンパ球があることを指す。CD4欠損個体としては、後天的なまたは生まれながらの免疫不全の個体が挙げられる。後天的な免疫不全は、例えば、放射線療法や化学療法等により引き起こされる一時的なCD4欠損でありうる。
【0188】
本発明の方法が適用される好適な被験体には、また、健康で、免疫系が完全であるが、CD4欠損になるリスクにさらされた個体(「リスク個体」)である。限定されるものではないが、リスク個体としては、一般集団よりもCD4欠損によりなりやすい傾向のある個体が挙げられる。CD4欠損になるリスクにさらされた個体は、特に限定されるものではないが、HIV感染個体との性行為の故にHIV感染のリスクを有している個体;静脈注射を伴う薬物使用者;HIV感染した血液、血液産物、またはその他HIVを含む体液、に晒されうる個体;HIV感染個体の産道を通過した赤ん坊;HIV感染した母親より授乳された赤ん坊;その他;が挙げられる。
【0189】
当該調剤および即製の本発明にかかるアレルギーを治療する方法が適用される好適な被験体には、アレルギーを有すると診断された如何なる個体も挙げられる。ここで記載された方法および剤を用いた治療に従う被験体は、1つまたはそれ以上のアレルゲンに対するアレルギー性過敏症を持つことがわかっている個体が挙げられる。この治療に従う被験体は、上述したアレルギー疾患の何れかを持つ個体が挙げられる。また、この治療に従う被験体は、1つまたはそれ以上のアレルギー反応を持つリスクにさらされた個体が挙げられる。また、アレルギー性疾患の標準的な治療の1つまたはそれ以上を受けたが、治療に失敗した個体も好適である。
【0190】
治療に好適な被験体には、工業国に住む個体;発展途上国に住む個体;田園地帯に住む個体;相対的に隔離された場所に住む個体;その他;が挙げられる。
【0191】
被験体となる免疫原性組成物の標的となる集団は、細菌性の病原体に依存して変化する。
【0192】
上記の記述は、本発明の概要を記載したものである。以下の実施例は、本発明の理解を助けるものとなる。これらの実施例は、例証の目的のみに記載したものであり、本発明の範囲を制限する意図はない。形態の変更や同等物への置換は、本発明を構成する事実の一つを表すものと意図され、一つの手段を示唆しまたは表現しうる。ここでは特定的な用語を使用しているが、このような用語は記述的な意味合いで使用したものであり、本発明を制限する目的は有しない。
【0193】
〔実施例〕
[実施例1:SARS抗原と組み合わせてPIKAを腹膜および粘膜に投与することによって誘起される全身性免疫応答]
この実施例は、PIKAおよびSARS抗原を含む免疫原性物質が、腹膜注射により投与すると、投与位置の近くおよび遠くのいずれの部位においても強い免疫応答を示すことを実証している。例えば、粘膜に投与すると、粘膜性免疫応答および全身性免疫応答の両方が引き起こされる。
【0194】
balb/cマウスを3匹ずつ含む6つのグループに対して、SARS抗原に加えてPIKAアジュバント(主に重量範囲分布が約66kDa〜1,200kDaの範囲内であるPIKA分子の不均一な組成物)を含む組成物を接種した。使用される抗原およびアジュバントの量は、以下の表A〜Cに示す。繰り返し接種を2週間後に投与し、さらに2週間後にさらに追加免疫を投与した。
【0195】
6週目に、血液サンプルを採取し、血清中の特異的なIgAおよび特異的なIgGの発現を、ELISAによって測定した。上清を得るために、マウスを屠殺し、肺を摘出し、解剖し、洗浄した。得られた粘膜の抽出物について、特異的なS−IgAを測定した。
【0196】
表A、BおよびC(さらに図1、2および3)の結果は、血中の特異的なIgGの発現が投与量に依存して増加していることが測定されていることから、腹膜内注射により投与された免疫原性組成物に含まれるPIKAの存在が、全身性免疫応答を促進することを実証している。しかしながら、肺から採取したサンプル中の特異的なS−IgAの発現の測定から、粘膜性免疫活性に対する影響は観測されなかった。肺の粘膜表面の特異的なS−IgAの発現が投与量に依存して増加していることが測定されたことから、粘膜に投与された免疫原性組成物中のPIKAは、粘膜性免疫応答を促進する。さらに、血清サンプル中に、特異的なIgAおよび特異的なIgGの発現が測定されたことから、投与量に依存して全身性免疫応答を促進する。
【0197】
【表2】

【0198】
【表3】

【0199】
【表4】

【0200】
[実施例2:インフルエンザ抗原と組み合わせてPIKAを投与することによって誘起される全身性免疫応答]
この実施例は、PIKAおよびインフルエンザ抗原を含む免疫原性物質が、投与位置の近くおよび遠くのいずれの部位においても強い粘膜性免疫応答を誘起することを実証している。すなわち、粘膜に投与すると、全身性免疫応答だけでなく、呼吸器官および腸の粘膜のいずれにおいても粘膜性免疫応答が誘起される。
【0201】
balb/cマウスの5グループに、0日目および20日目に、表Dに示した組成物を、ワクチン接種した。
【0202】
【表5】

使用するインフルエンザ抗原は、サノフィパスツール社から取り寄せた、ヒトへの使用が認められている、H1N1、H3N2様菌株およびb/Shanghai5/361/2002菌株を含む精製され分割された不活化インフルエンザワクチンのVAXIGRIPである。
【0203】
血液サンプルを35日後に採取し、その後、特異的な体液性免疫応答の発現をELISAにより測定した。
【0204】
7週間後、上清を得るためにマウスを屠殺し、肺および腸を摘出し、解剖し、洗浄した。得られた粘膜の抽出物について、特異的なS−IgAの発現をELISAにより測定した。
【0205】
表Eの結果は、肺の粘膜表面に特異的なS−IgAの発現が測定されていることから、粘膜に投与された免疫原性組成物に含まれるPIKAの存在が肺の粘膜性免疫応答を促進することを実証している。
【0206】
【表6】

さらに、表F(図5)の結果は、腸の粘膜表面に特異的なS−IgAの発現が測定されていることから、粘膜に投与された免疫原性組成物に含まれるPIKAの存在が腸の近くおよび遠くのいずれの部位においても粘膜性免疫応答を促進することを実証している。
【0207】
【表7】

加えて、以下の結果は、血清サンプル中の特異的なIgG(表G、図6)および特異的なIgA(表H、図7)の発現が測定されていることから、粘膜に投与された免疫原性組成物に含まれるPIKAの存在が、全身性免疫応答を促進することを実証している。
【0208】
【表8】

【0209】
【表9】

脾臓細胞の懸濁液を調製し、各マウスに由来する細胞懸濁液のサンプルをELISPOTプレート上の6〜12のウェルに添加し、培養した。ELISPOTプレート上の各ウェルは、脾臓細胞懸濁液を200ul含み、1ウェル当たりおおよそ2.5×10個の細胞に相当する。各マウスの培養された脾臓細胞のサンプルに対して、脾臓細胞を含むウェルのうち半分のウェルを培地でインキュベートし、残り半分のウェルはインフルエンザ抗原を用いて活性化させた。最後の調製および標準的なELISPOTプレートリーダーを用いた読み取りの前に、環境的に制御された状況のもと、プレートを37度で20時間インキュベートする。
【0210】
下記の表I(さらに図8参照)の結果は、ウェル当たりの、IL−2を産生している細胞数を示している。PIKAおよびインフルエンザ抗原を含む免疫原性物質の投与は、単独のPIKAまたはインフルエンザ抗原と比較して、細胞のIL−2の産生を著しく高い水準に誘起することが観測された。これは、PIKAを伴う抗原は、免疫応答を媒介するT細胞を誘起することを指し示している。
【0211】
【表10】

【0212】
[実施例3:インフルエンザ抗原と組み合わせてPIKAを投与することによって誘起される粘膜性および全身性免疫応答]
この実施例は、PIKAおよびインフルエンザ抗原を含む免疫原性物質が、粘膜表面に投与された後に、強い抗原特異的な粘膜性および全身性の体液性免疫応答並びにT細胞免疫応答を誘起することを実証している。
【0213】
balb/cマウス(グループ当たり3匹)の5つのグループに対して、0日目、14日目、および30日目に以下の表に示す組成物により免疫化した。使用するインフルエンザ抗原は、サノフィパスツール社から取り寄せた、ヒトへの使用が認められている、H1N1、H3N2様菌株およびb/Shanghai5/361/2002菌株を含む精製され分割された不活化インフルエンザワクチンのVAXIGRIPである。
【0214】
血液サンプルを、3度目の免疫化後から14日目に採取し、そして、特異的な血清IgGの発現をELISAにより検出した。
【0215】
3度目の免疫化後から14日目、上清を得るためにマウスを屠殺し、肺および腸を摘出し、解剖し、洗浄した。得られた上清を、特異的なS−IgAの発現を検出するためにELISAにより検出した。
【0216】
表J(図9)の結果は、肺の粘膜表面に、特異的なS−IgAの発現が測定されていることから、粘膜に投与された免疫原性組成物中のPIKAの存在が、肺の粘膜性免疫応答を促進することを実証している。経鼻投与によるAl(OH)および抗原による免疫化は、肺の粘膜表面にS−IgAの産生を誘起しなかった。
【0217】
【表11】

表K(図10)の結果は、腸の粘膜表面に、特異的なS−IgAの発現が測定されていることから、粘膜に投与された免疫原性組成物中のPIKAの存在が、腸の粘膜性免疫応答を促進することを実証している。経鼻投与によるAl(OH)および抗原による免疫化は、腸の粘膜表面にS−IgAの産生を誘起しなかった。
【0218】
【表12】

脾臓細胞の懸濁液を調製し、各マウスに由来する細胞懸濁液のサンプルをELISPOTプレート上の6つのウェルに添加し、培養した。ELISPOTプレート上の各ウェルは、脾臓細胞懸濁液を200ul含み、1ウェル当たりおおよそ3.0×10個の細胞に相当する。各マウスの培養された脾臓細胞のサンプルに対して、脾臓細胞を含むウェルの半分を培地でインキュベートし、残り半分のウェルはインフルエンザ抗原を用いて活性化させた。最後の調製および標準的なELISPOTプレートリーダーを用いた読み取りの前に、プレートを、37度、CO濃度5パーセントで20時間インキュベートする。
【0219】
以下の表L(さらに図11を参照)の結果は、脾臓細胞1.0×10個当たりの、インターフェロンγを産生している細胞数を示している。PIKAおよびインフルエンザ抗原を含む免疫原性組成物の投与は、単独のPIKAまたはインフルエンザ抗原と比較して、細胞のインターフェロンγの産生を著しく高い水準に誘起することが観測された。
【0220】
【表13】

以下の表M(さらに図12参照)の結果は、1.0×10個の脾臓細胞当たりの、IL−2を産生している細胞数を示している。PIKAおよびインフルエンザ抗原を含む免疫原性組成物の投与は、単独のPIKAまたはインフルエンザ抗原と比較して、細胞のIL−2の産生を著しく高い水準に誘起することが観測された。
【0221】
【表14】

脾臓細胞周辺でインターフェロンγおよびIL−2の産生増幅を誘起するPIKAの作用は、鼻腔内および皮下注射により、PIKAを伴う抗原で免疫化することが、免疫応答を媒介する強いT細胞を誘起することを示している。経鼻投与によるAl(OH)および抗原による免疫化は、単独の抗原と比較して、T細胞応答を促進しない。
【0222】
しかしながら、鼻腔内または皮下注射により投与するときに、抗原にAl(OH)を添加しても、亢進したT細胞免疫応答を促進しない。
【図面の簡単な説明】
【0223】
【図1】PIKAおよび/または不活化全SARS抗原を含むワクチンによる免疫化後の、肺の上清における特異的S−IgAの力価のELISA検出を表す図である。
【図2】PIKAおよび/または不活化全SARS抗原を含むワクチンによる免疫化後の、血清における特異的IgAの力価のELISA検出を表す図である。
【図3】PIKAおよび/または不活化全SARS抗原を含むワクチンによる免疫化後の、血清における特異的IgGの力価のELISA検出を表す図である。
【図4】PIKAおよび/または不活化され分割されたインフルエンザ抗原を含むワクチンによる免疫化後の、肺の上清における特異的S−IgAの力価のELISA検出を表す図である。
【図5】PIKAおよび/または不活化され分割されたインフルエンザ抗原を含むワクチンによる免疫化後の、腸の上清における特異的S−IgAの力価のELISA検出を表す図である。
【図6】PIKAおよび/または不活化され分割されたインフルエンザ抗原を含むワクチンによる免疫化後の、血清における特異的IgGの力価のELISA検出を表す図である。
【図7】PIKAおよび/または不活化され分割されたインフルエンザ抗原を含むワクチンによる免疫化後の、血清における特異的IgAの力価のELISA検出を表す図である。
【図8】PIKAおよび/または不活化され分割されたインフルエンザ抗原を含むワクチンによる免疫化後の、IL−2を産生しているマウス脾細胞のELISPOT検出を表す図である。
【図9】PIKAもしくはAl(OH)3および/または不活化され分割されたインフルエンザ抗原を含むワクチンによる免疫化後の、肺の上清(32×希釈)における特異的S−IgAのELISA検出を表す図である。
【図10】PIKAもしくはAl(OH)3および/または不活化され分割されたインフルエンザ抗原を含むワクチンによる免疫化後の、腸の上清(32×希釈)における特異的S−IgAのELISA検出を表す図である。
【図11】PIKAもしくはミョウバンおよび/または不活化され分割されたインフルエンザ抗原を含むワクチンによる免疫化後の、IFN−ガンマを産生しているマウス脾細胞のELISPOT検出を表す図である。
【図12】PIKAもしくはミョウバンおよび/または不活化され分割されたインフルエンザ抗原を含むワクチンによる免疫化後の、IL−2を産生しているマウス脾細胞のELISPOT検出を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリリボイノシン酸−ポリリボシチジル酸(PIC)、少なくとも1種類の抗生物質および少なくとも1種類の陽イオンを含むポリヌクレオチドアジュバントと、
(b)少なくとも1種類の抗原とを含む免疫原性組成物であって、
粘膜への投与用に調剤されていることを特徴とする免疫原性組成物。
【請求項2】
分子量が不均一なポリヌクレオチドアジュバント組成物分子を含んでおり、該分子量は少なくとも66,000ダルトンであることを特徴とする請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
分子量が不均一なポリヌクレオチドアジュバント組成物分子を含んでおり、該分子量は約66,000から1,200,000ダルトンであることを特徴とする請求項1または2に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
分子量が不均一なポリヌクレオチドアジュバント組成物分子を含んでおり、該分子量は少なくとも150,000ダルトンであることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
少なくとも1種類の免疫賦活剤をさらに含んでいることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
粘膜吸収を亢進させる少なくとも1種類の剤をさらに含んでいることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の免疫原性組成物であって、該免疫原性組成物または該免疫原性組成物に含まれる上記アジュバントが、液体、溶液、液滴、固形物、カプセル、乳液、懸濁物、エリキシル剤、クリーム、坐薬、ゲル、ソフトカプセル、スプレー、吸入薬、エアロゾル、錠剤、被覆錠剤、丸薬、糖衣錠、粉末、シロップ剤、スラリー、マイクロカプセル、浣腸剤、顆粒またはトローチ剤の形態であることを特徴とする免疫原性組成物。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の免疫原性組成物であって、上記アジュバント組成物の少なくとも1種または該免疫原性組成物が凍結乾燥されていることを特徴とする免疫原性組成物。
【請求項9】
吸入、経直腸送達、経膣送達、経鼻送達、経口送達、経肺送達、経目送達、局所送達、経眼送達または経皮送達により投与されることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
宿主の粘膜免疫原性応答を亢進させるために使用される請求項1から9の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
宿主の粘膜免疫原性応答を亢進させるための薬剤を調製するための、請求項1から10の何れか1項に記載の免疫原性組成物または該免疫原性組成物に含まれるアジュバントの利用。
【請求項12】
上記薬剤は、局部および遠隔部における粘膜免疫応答を亢進させるためのものであることを特徴とする請求項11に記載の利用。
【請求項13】
宿主のT細胞依存性免疫応答を誘導するための薬剤を調製するための、請求項1から10の何れか1項に記載の免疫原性組成物または該免疫原性組成物に含まれるアジュバントの利用。
【請求項14】
上記薬剤が、吸入、経直腸送達、経膣送達、経鼻送達、経口送達、経肺送達、経目送達、局所送達、経眼送達または経皮送達により投与されることを特徴とする請求項11から13の何れか1項に記載の利用。
【請求項15】
上記宿主は感染症に罹患しており、抗原性化合物の投与により、該感染症の原因となっている病原体に対する免疫応答を引き起こすことを特徴とする請求項11から14の何れか1項に記載の利用。
【請求項16】
請求項1から10の何れか1項に記載の免疫原性組成物を備えているキット。
【請求項17】
請求項1から10の何れか1項に記載の免疫原性組成物を含む送達システムであって、粘膜面への上記免疫原性組成物の送達を亢進させることを特徴とする送達システム。
【請求項18】
請求項1から10の何れか1項に記載の免疫原性組成物を宿主に投与する工程を含む、粘膜免疫応答を亢進させる方法。
【請求項19】
上記宿主は感染症に罹患しており、抗原性化合物の投与により、該感染症の原因となっている病原体に対する免疫応答を引き起こすことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1から10の何れか1項に記載の免疫原性組成物を宿主に投与する工程を含む、局部および遠隔部における粘膜免疫応答を亢進させる方法。
【請求項21】
請求項1から10の何れか1項に記載の免疫原性組成物を宿主に投与する工程を含む、T細胞依存性免疫応答を誘導する方法。
【請求項22】
上記宿主がヒトであることを特徴とする請求項11から15の何れか1項に記載の利用または請求項18から21の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
上記宿主が非ヒト動物であることを特徴とする請求項11から15の何れか1項に記載の利用または請求項18から21の何れか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−523722(P2009−523722A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550271(P2008−550271)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【国際出願番号】PCT/SG2006/000177
【国際公開番号】WO2007/081288
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(507403023)ニューバイオメッド ピーアイケイエイ プライベート リミテッド (3)
【Fターム(参考)】