説明

ポリイミドシート

【課題】平面における熱膨張係数が小さく、厚み方向との異方性が大きく、かつ破断点ひずみが極めて大きいポリイミドシートを提供する。
【解決手段】ポリイミドフィルムを複数枚積層して得られるポリイミドシートであって、該ポリイミドシートの平面方向をX軸、Y軸、厚さ方向をZ軸とした時に、X軸方向の熱膨張係数αと、Y軸方向の熱膨張係数βとの間にβ≧1.5αの関係が成り立ち、且つZ軸方向の熱膨張係数γとの間にγ≧10.0αの関係が成り立つポリイミドシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面の熱膨張係数が小さく、異方性を持つポリイミドシートに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は優れた耐熱性と耐摩耗性を持つことから機械・電機部品を始め幅広い用途で使用されており、該用途に求められる重要な特性の1つとして、熱膨張係数が挙げられる。熱膨張係数は低い程良いとされているが、従来のポリイミド樹脂の製造方法である、ポリイミド粉末を成形加工する方法ではX軸、Y軸、Z軸の熱膨張係数がほぼ同じ値になるため、ポリイミド粉体から製造するポリイミド樹脂成形体の各軸における熱膨張係数を制御することは困難であった。
【0003】
このため、特許文献1に記載されているように、ポリイミドフィルムを積層してシート状に形成する方法が紹介されているが、この方法は異なるポリイミドフィルムを用いており、しかも同方法では接着剤の役割を持つポリイミドフィルムが必要となる。接着剤の役割を持つポリイミドフィルムは、接着機構を持たせる構成成分を含むため、一般的に熱膨張係数は大きくなる。このため、該方法によって作成したポリイミドシートは熱膨張係数が大きくなるため、上記用途に用いるためには不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−183040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、平面の熱膨張係数が小さく、異方性を持つポリイミドシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は次のような構成である。
(1)ポリイミドフィルムを複数枚積層して得られるポリイミドシートであって、該ポリイミドシートの平面方向をX軸、Y軸、厚さ方向をZ軸とした時に、X軸方向の熱膨張係数αと、Y軸方向の熱膨張係数βとの間にβ≧1.5αの関係が成り立ち、且つZ軸方向の熱膨張係数γとの間にγ≧10.0αの関係が成り立つポリイミドシート。
(2)Y軸方向の熱膨張係数とZ軸方向の熱膨張係数との間にγ≧5.0βの関係が成り立つ(1)に記載のポリイミドシート。
(3)任意の面の熱膨張係数が10ppm/℃以下である請求項1または2に記載のポリイミドシート。
(4)実質的に1種類のポリイミドフィルムを複数枚積層して得られる(1)〜(3)に記載のポリイミドシート。
(5)ポリイミドを構成するジアミン成分としてパラフェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを主たる構成成分とする(1)〜(4)に記載のポリイミドシート。
(6)ポリイミドを構成する酸二無水物成分としてピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を主たる構成成分とする(1)〜(5)のいずれかに記載のポリイミドシート。
(7)ポリイミド樹脂の任意方向の25℃雰囲気下における破断点ひずみが20%以上であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のポリイミドシート。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、平面の熱膨張係数が小さく、異方性を持つポリイミドシートを作成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明のポリイミドシートについて具体的に説明する。
【0009】
本発明に用いるポリイミドフィルムは、製造方法に特に限定はなく、一般的に知られている方法で製造されたポリイミドフィルムである。例えば、酸二無水物とジアミンを反応させたポリアミド酸溶液を流延またはフィルム状に押出し、乾燥、熱処理を行って、イミド化を進行させることにより、製膜するのが一般的である。この際、乾燥・熱処理は、流延またはフィルム状に押し出されたポリアミド酸溶液を、200〜600℃、好ましくは250〜550℃の高温雰囲気に維持した乾燥熱処理ゾーンを通過させることにより達成することができる。また、乾燥・熱処理中のフィルムは、ポリアミック酸からポリイミドへ転移させる工程中、任意の倍率で延伸しても構わない。
【0010】
一般的に知られているイミド化の方法には、加熱することにより脱水をおこなう熱閉環法とイミド化触媒、脱水剤を使用して化学的に脱水をおこなう化学閉環法があるが、本発明に用いられるイミド化の方法は特に限定されない。ただ、線膨張係数を小さくすることから化学閉環法の方が好ましい。イミド化触媒としては、第三級アミン類が好ましく、具体例として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ピリジン、イソキノリン、2−エチルピリジン、2−メチルピリジン、N−エチルモルフォリン、N−メチルモルフォリン、ジエチルシクロヘキシルアミン、N−ジメチルシクロヘキシルアミン、4−ベンゾイルピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、4−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−イソプロピルピリジン、N−ジメチルベンジルアミン、4−ベンジルピリジン、およびN−ジメチルドデシルアミンなどが挙げられる。また、脱水剤としては、有機カルボン酸無水物、N,N−ジアルキルカルボジイミド類、低級脂肪酸ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸無水物、アリールホスホン酸ジハロゲン化物およびチオニルハロゲン化物が挙げられる。
【0011】
本発明で用いるポリイミドフィルムを構成する酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−カルボキシフェニル)エーテル二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロ−ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,6,−ジクロロナフタレン−1,4,58−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられ、これらを単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0012】
これらの酸二無水物の中で好ましいものはピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。好ましい形態としては、本発明で用いるポリイミドフィルムの全酸成分のうち、ピロメリット酸成分を0〜85mol%含有することが好ましく、さらに好ましくは10〜80mol%、さらに好ましくは20〜75mol%である。また、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分は0〜60mol%が好ましく、さらに好ましくは5〜50mol%、さらに好ましくは5〜40mol%である。
【0013】
本発明で用いるポリイミドフィルムを構成するジアミン成分としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、パラフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、メタフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンチジン、4,4’−ジアミノジフェニルサルファイド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,6−ジアミノピリジン、ビス−(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、ビス−(4−アミノフェニル)ジフェニルシラン、3,3’−ジクロロベンチジン、ビス−(4−アミノフェニル)エチルホスフィンオキサイド、ビス−(4−アミノフェニル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミン、ビス−(4−アミノフェニル)−N−メチルアミン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジメチル−3’,4−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシベンチジン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチル−フェニル)エーテル、p−ビス−(2−メチル−4−アミノ−ベンチル)ベンゼン、p−ビス−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ベンチル)ベンゼン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3−ジアミノアダマンタン、3,37−ジアミノ−1,17−ジアダマンタン、3,3’−ジアミノ−1,1’−ジアダマンタン、ビス(p−アミノ−シクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノ−ドデカン、1,2−ビス−(3−アミノ−プロポキシ)エタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシ−ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、1,4−ジアミノ−シクロヘキサン、1,12−ジアミノ−オクタデカン、2,5−ジアミノ−1,3,4−オキサジアゾール、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、N−(3−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド、4−アミノフェニル−3−アミノベンゾエートなどが挙げられ、これらを単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0014】
これらのジアミンの中で好ましいものは4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、パラフェニレンジアミンである。好ましい形態としては、本発明で用いるポリイミドフィルムの全ジアミン成分のうち、4,4’―ジアミノジフェニルエーテルを0〜95mol%含有することが好ましく、さらに好ましくは10〜90mol%、さらに好ましくは20〜85mol%である。また、パラフェニレンジアミン成分は0〜60mol%が好ましく、さらに好ましくは5〜50mol%、さらに好ましくは5〜40mol%である。
【0015】
本発明に係るポリイミドフィルムは、無機粒子などの添加物を、前駆体であるポリアミック酸をポリイミドへ環化、脱溶媒する前であれば、いかなる工程においても添加することが可能である。
【0016】
この時の添加物の好ましい形態は、粒子径が1.5μm以下の無機粒子をフィルム樹脂重量あたり0.1〜0.9重量%の割合で添加することが好ましい。
【0017】
また、本発明に係るポリイミドフィルムの厚さは特に規定しないが、ポリイミドフィルムの厚さが薄い場合は積層枚数が多くなるために空気泡が発生し、ポリイミドシートの収率が悪化する可能性あり、また厚い場合はポリイミドフィルム内で相分離がおこり十分な密着力が得られない可能性あるために、5〜200μmの厚さが好ましい。また、より好ましくは10〜50μmである。さらに、得られたポリイミドフィルムは別途、熱処理、またはコロナ放電処理やプラズマ放電処理等の表面処理法によって処理されていても良い。
【0018】
本発明では、上記のポリイミドフィルムを複数枚積層圧着して一体化し、一枚のシートにする。積層圧着手段は特に限定されないが、通常は同種のポリイミドフィルムを所望の枚数積層し、適宜の温度と圧力で圧着する。加圧には通常のプレス機を用いることができるが、積層したポリイミドフィルム間に空気層ができるのを防止できることから、真空プレス機を用いることが好ましい。
【0019】
本発明においては、ポリイミドフィルムを複数枚積層して得られるポリイミドシートであって、該ポリイミドシートの平面方向をX軸、Y軸、厚さ方向をZ軸とした時に、X軸方向の熱膨張係数αと、Y軸方向の熱膨張係数βとの間にβ≧1.5αの関係が成り立ち、且つZ軸方向の熱膨張係数γとの間にγ≧10.0αの関係が成り立つことが必要である。
【0020】
β≧1.5αの関係が成り立つようにするには、例えばポリイミドフィルムを作成する際に長手方向とそれに垂直方向の延伸倍率を調整させることで可能となる。
【0021】
また、γ≧10.0αの関係が成り立つためには、積層時のプレス圧を調整することで可能になると考えられる。
【0022】
さらに、任意の面の熱膨張係数が10ppm/℃以下になるようにするには、ポリイミドフィルムの原料であるモノマーにおいて、屈曲性の少ないモノマーの成分を多く使用することで可能となる。
【0023】
ポリイミド樹脂は一般的に直方体のポリイミド樹脂を切削加工して得られる。しかし、最近は切削加工技術の向上や最終用途の高密度化、小型化により、従来よりもピッチの狭い加工が求められている。これらの用途では、XY平面上において、β≧1.5α、厚さ方向に対してγ≧10.0αの関係が成り立つ時に、目的とする熱膨張係数を持つポリイミドシートを得ることができる。
【0024】
本発明のポリイミドシートは、任意の面の熱膨張係数が10ppm/℃以下であることを特徴とする。更なるファインピッチ化に伴い、熱膨張係数に対する要求が高くなっている。これらの用途に対応するために、該ポリイミドシートは熱膨張係数が10ppm/℃以下であることを特徴としている。本発明のポリイミドシートは、任意の面の25℃雰囲気下での破断点ひずみが20%以上であることが好ましい。また、より好ましくは30%以上である。
【0025】
これは、ファインピッチ化による高精細な切削に耐えられるだけの破断点ひずみが必要となる。このために、該ポリイミドシートは破断点ひずみが20%以上であることを特徴としている。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し本発明はこれらの実施例のみによって限定されない。また、シートの各物性は以下の方法に従って測定した。
【0027】
[破断点ひずみ]
ASTM D1780に準じた。この時の引っ張り速度は1mm/minであり、試験片は試験部が長さ22.5mm、幅4.75mm、つかみ部の幅が115.88mm、試験部、つかみ部を合わせた全体の長さが60mmである。
【0028】
[熱膨張係数]
長さ5mm、幅5mm、高さ3mmの試験片を作成し、10℃/minの昇温速度で、室温〜500℃まで測定した。このときの50〜250℃平均膨張の値を熱膨張係数とした。
【0029】
[実施例1]
ケミカルスターラーを備えた300mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル15.02g(0.075mol)、パラフェニレンジアミン2.70g(0.025mol)、N,N’−ジメチルアセトアミド155.49gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。60分撹拌後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物7.36g(0.025mol)とピロメリット酸二無水物15.70g(0.072mol)を数回に分けて投入し、更に180分撹拌後、ピロメリット酸二無水物のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液(溶液濃度6wt%)適量を30分かけて滴下し、更に60分攪拌してポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を連続製膜装置を用い、ポリイミドに転化すると同時に乾燥固化し、ポリイミドフィルムを得た。この時のポリイミドフィルム(ポリイミドフィルム1)の平均厚みは41μmであった。
【0030】
得られたポリイミドフィルムを75枚積層し、真空プレス機を用いて350℃、10.2MPaで積層圧着し、ポリイミドシートを得た。熱膨張係数と破断点ひずみを表1に示す。
【0031】
[実施例2]
ケミカルスターラーを備えた300mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル14.17g(0.070mol)、パラフェニレンジアミン3.28g(0.030mol)、N,N’−ジメチルアセトアミド158.40gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。60分撹拌後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物5.95g(0.020mol)とピロメリット酸二無水物16.98g(0.077mol)を数回に分けて投入し、更に180分撹拌後、ピロメリット酸二無水物のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液(溶液濃度6wt%)適量を30分かけて滴下し、更に60分攪拌してポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を連続製膜装置を用い、ポリイミドに転化すると同時に乾燥固化し、ポリイミドフィルムを得た。この時のポリイミドフィルム(ポリイミドフィルム2)の平均厚みは41μmであった。
【0032】
得られたポリイミドフィルムを75枚積層し、真空プレス機を用いて350℃、10.2MPaで積層圧着し、ポリイミドシートを得た。熱膨張係数と破断点ひずみを表1に示す。
【0033】
[比較例1]
デュポン社の“ベスペル”SP−1を用いて長さ5mm、幅5mm高さ3mmの試験片を作成し、実施例記載の評価方法にて評価した。結果を表1に示す。
【0034】
[比較例2]
デュポン社の“ベスペル”SCP−5000を用いて長さ5mm、幅5mm高さ3mmの試験片を作成し、実施例記載の評価方法にて評価した。結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の、複数枚のポリイミドフィルムから成るポリイミドシートは、耐熱性、摺動性、寸法安定性が求められる電子部品用途などに利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドフィルムを複数枚積層して得られるポリイミドシートであって、該ポリイミドシートの平面方向をX軸、Y軸、厚さ方向をZ軸とした時に、X軸方向の熱膨張係数αと、Y軸方向の熱膨張係数βとの間にβ≧1.5αの関係が成り立ち、且つZ軸方向の熱膨張係数γとの間にγ≧10.0αの関係が成り立つポリイミドシート。
【請求項2】
Y軸方向の熱膨張係数とZ軸方向の熱膨張係数との間にγ≧5.0βの関係が成り立つ請求項1に記載のポリイミドシート
【請求項3】
平面のいずれかの方向において、熱膨張係数が10ppm/℃以下である請求項1または2に記載のポリイミドシート
【請求項4】
実質的に1種類のポリイミドフィルムを複数枚積層して得られる請求項1〜3に記載のポリイミドシート。
【請求項5】
ポリイミドを構成するジアミン成分としてパラフェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを主たる構成成分とする請求項1〜4に記載のポリイミドシート。
【請求項6】
ポリイミドを構成する酸二無水物成分としてピロメリット酸二無水物および3,3’−4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を主たる構成成分とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリイミドシート。
【請求項7】
ポリイミド樹脂の任意方向の25℃雰囲気下における破断点ひずみが20%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリイミドシート。

【公開番号】特開2011−167906(P2011−167906A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33171(P2010−33171)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000219266)東レ・デュポン株式会社 (288)
【Fターム(参考)】