説明

ポリイミドフィルムの製造方法及びポリイミドフィルム

【課題】特定の芳香族酸二無水物とジアミンを特定の作成方法で作成することにより、透明でかつ低線膨張性と低複屈折性を両立させたポリイミドフィルムを得ることを目的とする。さらに、当該ポリイミドフィルムを用いた透明性や耐熱性、低線熱膨張係数、低複屈折が求められる製品又は一部材を形成するためのフィルムを用いた製品を提供することを目的とする。
【解決手段】特定構造を有するポリアミド酸を少なくとも2種反応させたポリアミド酸に脱水触媒及びイミド化剤を混合し反応させるポリイミドフィルムの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明で低線膨張かつ低複屈折に優れる高分子化合物に関する。好適には、耐熱性優れるポリイミドに関し、特に、耐熱性と共に低線膨張かつ低複屈折に対する要求が高い製品又は部材を形成するための材料(例えば、液晶表示装置など)として好適に利用できるポリイミドフィルムの製造方法、当該製造方法で得られたポリイミド、当該ポリイミドを含有する樹脂組成物及び、当該樹脂組成物を用いて作製した物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶や有機EL、電子ペーパー等のディスプレイや、太陽電池、タッチパネル等のエレクトロニクスの急速な進歩に伴い、デバイスの薄型化や軽量化、更には、フレキシブル化が要求されるようになってきた。これらのデバイスにはガラス板上に様々な電子素子、例えば、薄型トランジスタや透明電極等が形成されているが、このガラス材料をフィルム材料に変えることにより、パネル自体の薄型化や軽量化が図れる。しかしながらこれらの電子素子の形成には高温プロセスが必要であり、これに耐えられるだけのフィルム材料がこれまで存在しなかった。
【0003】
ポリイミドは耐熱性と共に高い絶縁性能を有することから、半導体や電子部品への応用がなされてきた。その為、単結晶シリコンや銅などの金属と積層される場合が多く、ポリイミドの熱膨張率を単結晶シリコンや金属並に小さくし、積層した基板のそりを解決する試みは従来から行われてきた。
【0004】
また、ポリイミドを光学材料として使用する場合、光学部品の偏波依存性を起こさないために、低複屈折性も重要な特性である。
【0005】
このようなポリイミドの物性に大きく影響を与える因子として、その化学構造が挙げられる。一般に、ポリイミドの高分子鎖が剛直で直線性が高いほど熱膨張率は下がるといわれており、熱膨張率を下げる為、ポリイミドの原料である酸二無水物、ジアミン双方で種々の構造が提案されてきた。
【0006】
しかしながら、熱膨張係数と複屈折はトレードオフの関係にあり、ポリイミドの高分子鎖が剛直で直線性が高いほど分子が配列して熱膨張率は下がるが、複屈折は高くなることが一般的に知られている。例えば、特許文献1では、4―アミノ―2―メチルフェニル―4‘―アミノベンゾエートとピロメリット酸二無水物からなるポリイミド膜は0.8ppm/Kという低い線膨張係数を示したが、複屈折は0.196と高い値を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−112990
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、透明性や耐熱性、更には低熱膨張性と低複屈折性を兼ね備えたポリイミドを得ることを目的とする。さらに、当該高分子化合物を用いて耐熱性や、低線熱膨張係数の要求の高い製品又は部材を形成するための樹脂材料として有用な樹脂組成物、さらには、当該樹脂組成物を用いて作製した耐熱性に優れた製品又は部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は以下の構成を有するものである。
【0010】
1). 下記式(1)で示す化合物と下記式(2)で示す化合物、あるいは下記式(3)で示す化合物と下記式(4)で示す化合物を反応させて得られるポリアミド酸に脱水触媒及びイミド化剤を混合した溶液を支持体上に流延することにより作成することを特徴とする、ポリイミドフィルムの製造方法。
【0011】
【化1】

【0012】
式中nは繰り返し単位の数を示し、
【0013】
【化2】

【0014】
式中mは繰り返し単位を示し、nよりも小さな整数であり、前記式(1)と(2)のR2は必ずしも同一のものでなくてもよく、
【0015】
【化3】

【0016】
式中oは繰り返し単位の数を示し、
【0017】
【化4】

【0018】
式中pは繰り返し単位の数を示し、oよりも小さな整数であり、前記式(3)と(4)のR2は必ずしも同一のものでなくてもよい。
【0019】
前記式のR1は下記一般式(5)から選択される4価の有機基を、また、R2は下記一般式(6)から選択される2価の有機基を示し、
【0020】
【化5】

【0021】
【化6】

【0022】
式中R3は、ハロゲン、ハロゲン化アルキル、C1〜C16のアルキル基を示す。
【0023】
2). 前記式(2)あるいは(4)で表される繰り返し単位として、R1の構造が下記一般式(7)であることを特徴とする1)に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0024】
【化7】

【0025】
3). 前記式(1)、(2)、(3)あるいは(4)で表される繰り返し単位として、R2の構造が下記一般式(8)から選択される2価の有機基であることを特徴とする1)または2)に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0026】
【化8】

【0027】
4). R3がハロゲン、もしくは、ハロゲン化アルキルであることを特徴とする1)乃至3)のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0028】
5). R3がトリフルオロメチル基であることを特徴とする1)乃至4)のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0029】
6). 前記式(1)と(2)、あるいは前記式(3)と(4)を反応させて得られるポリアミド酸にイミド化剤と脱水触媒を用いてイミド化することを特徴とする、1)乃至5)のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0030】
7). イミド化剤が3級アミンであることを特徴とする6)に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0031】
8). 脱水触媒が酸無水物であることを特徴とする6)または7)に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0032】
9). イミド化剤が、ポリアミド酸のカルボン酸に対して0.01モル倍当量以上を用いることを特徴とする、6)乃至8)のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0033】
10). 脱水触媒が、ポリアミド酸のカルボン酸に対して0.05モル倍当量以上を用いることを特徴とする、6)乃至9)のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0034】
11). ポリアミド酸の重量平均分子量が3,000以上である、1)乃至10)のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0035】
12). 線熱膨張係数が40ppm/K以下である、1)乃至11)のいずれかに記載の方法で製造されたポリイミドフィルム。
【0036】
13). 複屈折が0.1以下である、12)に記載のポリイミドフィルム。
【0037】
14). ガラス転移温度が200℃以上である、12)または13)に記載のポリイミドフィルム。
【0038】
15). 光学フィルムと偏光子とを含む偏光板であって、前記光学フィルムが11)乃至14)のいずれかに記載のポリイミドフィルムである偏光板。
【0039】
16). 液晶セルの少なくとも一方の表面に光学部材が配置された液晶パネルであって、前記光学部材が、11)乃至14)のいずれかに記載のポリイミドフィルムである液晶パネル。
【0040】
17). 液晶セルの少なくとも一方の表面に光学部材が配置された液晶パネルであって、前記光学部材が15)記載の偏光板である液晶パネル。
【0041】
18). 液晶パネルを含む液晶表示装置であって、前記液晶パネルが17)記載の液晶パネルである液晶表示装置。
【発明の効果】
【0042】
上記本発明に係るポリイミドを含有する樹脂組成物は、剛直で直線性が高い高分子鎖の中にさらに剛直な高分子鎖を一部導入することによって、分子配向が部分的に乱れ、複屈折は低くなる一方で、導入した剛直な高分子鎖により低CTEは保持できるという特徴を持つ。
【0043】
また、上記本発明に係るポリイミドを含有する樹脂組成物は、透明性、耐熱性に加えて、低線膨張性、低複屈折性に優れることから、耐熱性、低膨張性(寸法安定性)、低複屈折性が必要とされる公知の全ての部材用のフィルムや塗膜として好適であり、例えば、印刷物、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー、半導体部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材又は建築材料や構造物としての利用が期待される。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下において本発明を詳しく説明する。
本発明で製造されるポリイミドは、上記式(1)と上記式(2)、あるいは上記式(3)と上記式(4)を反応させて得られるポリアミド酸から誘導されるポリイミドである。式(2)あるいは式(4)中のR1は酸二無水物成分からポリイミド鎖の形成に関与する両末端酸無水物基を取り除いた構造であり、式(5)で示す構造を有するものである。
【0045】
式(5)に挙げられている4価の有機基のうち、得られる高分子が示す剛直性及び原料の入手性という観点から、特にフェニレン基を有する構造が好ましい。この場合、式(2)あるいは式(4)を製造するために用いる酸二無水物は、それぞれ、ピロメリット酸二無水物が好ましい。
【0046】
前記式(1)と前記式(2)、あるいは前記式(3)と前記式(4)は末端官能基の反応率が90%以上、さらには95%以上、特には98%以上となるように混合し反応させることが好ましい。実質的にはすべて反応させることがもっとも望ましい。末端の反応率が低いと分子の配向性が乱されず、複屈折低下の効果を発揮し難くなる。
【0047】
本願発明のポリイミドフィルムの酸二無水物成分から派生する構造中、R1で示す構造が1〜30モル%、さらには3〜25モル%、特には5〜20モル%の範囲で用いることが好ましい。
【0048】
また、ポリイミドの透明性を確保できる範囲内であれば、式(2)あるいは式(4)のR1の部分の構造を形成するために、2種類以上の酸二無水物を併用して用いることができる。
【0049】
上記式(5)と併用可能な他の酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス[(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル]ベンゼン二無水物、1,4−ビス[(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル]ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、4,4'−ビス[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]ビフェニル二無水物、4,4'−ビス[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]ビフェニル二無水物、ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルフィド二無水物、2,2−ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルプロパン二無水物、2,2−ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−プロパン二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0050】
これらは式(5)で示す酸二無水物と共に単独あるいは2種以上混合して用いられる。そして、特に好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物として3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物が挙げられる。
【0051】
一方、式(1)、(2)、(3)あるいは(4)中のR2は2価の有機基であり、その具体例としては、後述する各ジアミン成分に対応する2価の有機基、すなわち、ジアミン成分からポリイミド鎖の形成に関与する両末端アミノ基を取り除いた式(6)に示す構造が挙げられる。式(6)のうち、好ましくは、フェニレン基、もしくは、ビフェニレン基である。この場合、式(1)、(2)、(3)あるいは(4)を製造するために用いるジアミンは、それぞれ、フェニレン基を有するジアミン、および、ビフェニレン基を有するジアミンである。
【0052】
また、式(6)中のR3は、ハロゲン、ハロゲン化アルキル、C1〜C16のアルキル基を示す一価の有機基である。得られるポリイミドの透明性、耐熱性、及び寸法安定性から、ハロゲンやハロゲン化アルキルなどの電子吸引基が好ましく、フッ素原子もしくはトリフルオロメチル基がさらに好ましく、特にはトリフルオロメチル基が好ましい。
【0053】
ジアミンについては、得られるポリイミドの線膨張性及び着色性から、剛直で電子吸引基を有するジアミンが好ましく用いられる。R2としては式(6)中フェニレン基もしくは、ビフェニレン基、さらにはビフェニレン基が好ましい。中でもトリフルオロメチル基を有するジアミンが好ましい。最も好ましい具体的化合物として2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンが挙げられる。
【0054】
これらのジアミンは2種以上を併用することができる。また、本願発明のポリイミドフィルム中、ジアミン成分から派生する構造中、すべてがR2の構造を有するジアミンを用いることが好ましいが、R2以外の構造を有するジアミンをジアミン全体の70モル%、好ましくは50モル%、さらに好ましくは20モル%を超えない範囲で用いてもかまわない。当該ジアミンのジアミンも含めて複数種用いる場合、それらは規則的に配列されていてもよいし、ランダムにポリイミド中に存在していてもよい。
【0055】
併用可能な他のジアミンとして、例えば、3,3'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,3'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、3,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,4'−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4'−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4'−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4'−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4'−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4'−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6'−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3',3'−テトラメチル−1,1'−スピロビインダン、6,6'−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3',3'−テトラメチル−1,1'−スピロビインダン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、trans−1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、をあげることができる。
【0056】
さらに目的に応じ、架橋点となるエチニル基、ベンゾシクロブテン−4'−イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基、及びイソプロペニル基のいずれか1種又は2種以上を、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てに置換基として導入しても使用することができる。
【0057】
置換基R3は、原料の状態で導入し、ジアミンの状態で既に置換基が導入されたものを用いても良いし、ジアミンと反応させてポリイミドやポリアミド酸の状態で導入しても良い。また、置換基を導入することで吸収する光の波長を調整することが可能であり、得られるフィルムの透明性や着色度に影響を与える。
【0058】
本発明におけるポリイミドフィルムは詳述しているように式(1)と式(2)、あるいは式(3)と式(4)を反応させて得られるポリアミド酸から誘導されるポリイミド構造を有することが特徴であるが、ポリイミドフィルムのイミド化率が85%以上、さらには93%以上、特には97%以上であることが好ましい。実質的にすべてがイミド化されていることが最も好ましい。
【0059】
本発明のポリイミドを製造する方法としては、従来公知の手法を適用することができるが、例えば、酸二無水物とジアミンから前駆体であるポリアミド酸を合成し、これに脱水触媒とイミド化剤を添加して塗布し、ポリイミドフィルムを得る手法が代表的に挙げられる(化学的イミド化)。ポリアミド酸の状態で成形し、その後、脱水触媒やイミド化剤を用いずに加熱によりイミド化を行う手法(熱的イミド化)では、得られるフィルムの線膨張や寸法安定性が悪く、目的には適さない。
【0060】
用いるイミド化剤としては、3級アミンを用いることができる。3級アミンとしては複素環式の3級アミンがさらに好ましい。複素環式の3級アミンの好ましい具体例としてはピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリンをあげることができる。脱水触媒としては酸無水物を用いることができる。酸無水物としては具体的には無水酢酸、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物等が好ましい具体例として挙げることができる。
【0061】
イミド化剤や脱水触媒の添加量としては、ポリアミド酸のカルボン酸基に対して、イミド化剤は0.01から2.0倍モル当量、さらには0.05〜1.5倍モル当量、特には0.1〜1.0倍モル当量が好ましい。また、脱水触媒は0.05から15.0倍モル当量、さらには1.0〜12倍モル当量、特には2.0〜10倍モル当量が好ましい。
【0062】
ポリアミド酸溶液にイミド化剤や脱水触媒を加える際、溶剤に溶かさず直接加えても良いし、溶剤に溶かしたものを加えても良い。直接加える方法ではイミド化剤や脱水触媒が拡散する前に反応が急激に進行しゲルが生成することがある。好ましくはイミド化剤や脱水触媒を溶剤に溶かし、その溶液をポリアミド酸溶液に混合することが好ましい。
【0063】
次に、本発明に係るポリイミドを合成する手法をこれより具体的に例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0064】
ポリアミド酸を得る方法は、アミン成分と酸無水物成分を混合することで得ることができる。混合中には攪拌していることが好ましい、攪拌時間は1〜100時間が好ましい。混合する際の温度は発熱に注意すれば室温でも良いが、10℃以下、さらには5℃以下が好ましい。アミン成分と酸無水物成分は実質的に等モル使用することが好ましい。混合方法はアミン成分に酸無水物成分を加える方法、その反対の方法が採用できるが、アミン成分に酸無水物成分を加える方法が好ましい。それぞれの成分は一度に加えても良いし、複数回に分けて加えることも出来る。
【0065】
所定時間撹拌した後、ポリアミド酸溶液が得られる。そのポリアミド酸を3℃以下、さらには0℃付近の低温にしてイミド化剤と脱水剤を加えることが好ましい。イミド化剤と脱水剤を加えた後、溶液を激しく攪拌し真空下もしくは遠心沈殿機等を用いて脱泡した後、ガラスやフィルムなどの基板上に塗布乾燥し、塗膜を成形させる。それを例えば300℃以上に加熱することでポリイミドの塗膜が得られる。
【0066】
このようにして合成される本発明のポリイミドは、低線膨張と低複屈折を有することを特徴としており、例えば引っ張り加重法により線熱膨張係数を測定する場合、15mm×5mmのフィルム試料に加重を3.0gとし、10℃/minの昇温速度で測定したときに、線熱膨張係数が40ppm/K以下、好ましくは20ppm/K以下、さらには10ppm/K以下、特には8ppm/K以下のポリイミドフィルムを得ることができる。また、このフィルムの複屈折を測定したとき、複屈折が0.2以下、好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.1以下のポリイミドフィルムを得ることができる。
【0067】
本発明に係るポリアミド酸の重量平均分子量は、その用途にもよるが、3,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、5,000〜500,000の範囲であることがさらに好ましく、10,000〜500,000の範囲であることがさらに好ましい。重量平均分子量が小さいと塗膜又はフィルムとした場合に十分な強度が得られにくく、また、着色の原因になるポリマー末端の数が相対的に多くなることから着色する場合がある。一方、大きすぎると溶液粘度が上昇し、溶媒への溶解性も落ちてくるため、表面が平滑で膜厚が均一な塗膜又はフィルムが得られにくくなる。
【0068】
ここで用いている分子量とは、ゲルパーミレーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値のことをいう。
【0069】
本発明のポリイミドは、低線膨張と低複屈折を有することを特徴とするが、耐熱性、絶縁性等のポリイミド本来の特性も損なわれておらず、良好である。
【0070】
ガラス転移温度は、耐熱性の観点からは高ければ高いほど良いが、示差走査熱量測定装置において、昇温速度10℃/minの条件で測定したときのガラス転移温度が、200℃以上が好ましく、更に好ましくは300℃以上であるとよい。
【0071】
本発明に係るポリアミド酸は、そのまま製品や部材を作製するためのコーティングや成形プロセスに供してもよいが、フィルム状に成形された成形物にさらにコーティング等の処理を行い積層物として用いることが出来る。コーティングあるいは成形プロセスに供するために、該ポリアミド酸を必要に応じて溶剤に溶解又は分散させ、さらに、光又は熱硬化性成分、本発明に係るポリアミド酸以外の非重合性バインダー樹脂、その他の成分を配合して、ポリイミド樹脂組成物を調製してもよい。
【0072】
本発明に係る樹脂組成物に加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機又は無機の低分子又は高分子化合物を配合してもよい。例えば、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子、増感剤等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、それらは多孔質や中空構造であってもよい。また、その機能又は形態としては顔料、フィラー、繊維等がある。
【0073】
本発明に係るポリイミドフィルムは、その表面に金属酸化物や透明電極等の各種無機薄膜を形成していても良い。これら無機薄膜の製膜方法は特に限定されるものではなく、例えばCVD法、スパッタリング法や真空蒸着法、イオンプレーティング法等のPVD法であっても良い。
【0074】
本発明に係るポリイミド樹脂組成物は、耐熱性、絶縁性等のポリイミド本来の特性に加えて、高い寸法安定性を有することから、これらの特性が有効とされる分野・製品、例えば、印刷物、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー、半導体部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材又は建築材料を形成するのに適している。
【0075】
具体的には、本発明のポリイミドフィルムをいわゆる光学フィルムとして用い、偏向子と組み合わせて偏光板として用いることができる。また、液晶セルの少なくとも一方の表面に本発明のポリイミドフィルムあるいは本発明のポリイミドフィルムを用いた偏光板からなる光学部材を設け、液晶パネルとしても用いることができる。
【0076】
さらには、当該液晶パネルを用いた液晶表示装置としても用いることができる。
【実施例】
【0077】
(前駆体溶液の合成)
(1)前駆体溶液1の合成
2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン 5.50g(17.2mmol)を100mLの3つ口フラスコに投入し、59.5gの脱水されたジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させ窒素気流下、撹拌した。そこへ、上記3,3',4,4'-BPDA5.0g(17.0mmol)を氷冷下(3℃)で添加し、添加終了後、2日間撹拌し、粘稠液体(前駆体溶液1)を得た。
【0078】
(2)前駆体溶液2の合成
2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン 4.0g(12.5mmol)を100mLの3つ口フラスコに投入し、39.7gの脱水されたDMAcに溶解させ窒素気流下、撹拌した。そこへ、ピロメリット酸二無水物3.0g(13.8mmol)を氷冷下(3℃)で添加し、添加終了後、1日間撹拌し、粘稠液体(前駆体溶液2)を得た。
【0079】
(3)前駆体溶液3の合成
前駆体溶液1(14.3g)と前駆体溶液2(1.3g)を50mLの3つ口フラスコに投入し、窒素気流下、撹拌した。1日間撹拌し、粘稠液体(前駆体溶液3)を得た。また、この前駆体溶液3の分子量を測定した結果、重量平均分子量は144000であった。
【0080】
(4)前駆体溶液4の合成
2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン 5.39g(16.8mmol)を100mLの3つ口フラスコに投入し、58.9gの脱水されたジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させ窒素気流下、撹拌した。そこへ、上記3,3',4,4'-BPDA5.0g(17.0mmol)を氷冷下(3℃)で添加し、添加終了後、2日間撹拌し、粘稠液体(前駆体溶液4)を得た。
【0081】
(5)前駆体溶液5の作成
前駆体溶液4(14.3g)と前駆体溶液2(1.3g)を50mLの3つ口フラスコに投入し、窒素気流下、撹拌した。1日間撹拌し、粘稠液体(前駆体溶液5)を得た。
【0082】
(実施例1)
合成した上記前駆体溶液3(15.6g)を0℃付近に冷却した後、βピコリン0.16g(1.7mmol)及び無水酢酸1.18g(11.6mmol)の混合液を添加して激しく攪拌した。その後、真空下で脱泡したのち、ポリエチレンナフタレートフィルム上に流し、スリット間隔を0.5mmに設定したバーコーターでフィルム上に塗布した。その後、120℃に温められたオーブン内で7分20秒乾燥させた。その後、窒素雰囲気下、オーブンにより300℃で1時間加熱を行い、ポリイミドフィルムを得た。
【0083】
(比較例1)
合成した上記前駆体溶液5(15.6g)を0℃付近に冷却した後、βピコリン0.16g(1.7mmol)及び無水酢酸1.18g(11.6mmol)の混合液を添加して激しく攪拌した。その後、実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。
【0084】
(比較例2)
合成した上記前駆体溶液4(20.0g)を0℃付近に冷却した後、βピコリン0.23g(2.5mmol)及び無水酢酸1.5g(14.7mmol)の混合液を添加して激しく攪拌した。その後、実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。
【0085】
(比較例3)
合成した上記前駆体溶液4(20.0g)を0℃付近に冷却した後、βピコリン0.68g(7.3mmol)及び無水酢酸4.5g(44.1mmol)の混合液を添加して激しく攪拌した。その後、実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。
【0086】
[ガラス転移温度の評価]
島津製作所製DSC−50(島津熱流束示差走査熱量計)により、昇温速度10℃/minで測定してポリマーのTg(ガラス転位温度)を求めた。
【0087】
[線熱膨張係数の評価]
上記で作製したフィルムの線熱膨張係数を、熱機械的分析装置Thermo Plus TMA8310(リガク社製)によって、15mm×5mmのフィルム試料に加重を3.0gとし、10℃/minの昇温速度で測定を行った。
【0088】
[複屈折の評価]
上記で作成したフィルムのレタデーションを、位相差測定装置KOBRA(王子計測機器株式会社製)によって測定し、フィルムの厚みで除することにより求めた。
【0089】
実施例および比較例において膜物性を評価した結果を表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
表1から次のことが明らかである。
(1)比較例1、2で得られたフィルムの複屈折は、実施例と同程度であるが、線膨張係数が顕著に悪い。
(2)比較例3で得られたフィルムの線膨張係数は、実施例と同程度であるが、複屈折は顕著に悪い。
【0092】
表1のフィルムのTgを測定した結果、320℃までに明確なTgは観測されなかった。
【0093】
これらの結果より、本発明のポリイミドフィルムは、耐熱性が良好で、且つ、低線膨張・低複屈折を両立したフィルムを作製することが可能である為、これらの特性が有効とされる分野・製品、例えば、塗料、印刷インキ、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、その他の光学部材又は建築材料を形成するのに適している。
【0094】
具体的には、偏光板、液晶パネル、当該液晶パネルを用いた液晶表示装置としても用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示す化合物と下記式(2)で示す化合物、あるいは下記式(3)で示す化合物と下記式(4)で示す化合物を反応させて得られるポリアミド酸に脱水触媒及びイミド化剤を混合した溶液を支持体上に流延することにより作成することを特徴とする、ポリイミドフィルムの製造方法。
【化1】

式中nは繰り返し単位の数を示し、
【化2】

式中mは繰り返し単位を示し、nよりも小さな整数であり、前記式(1)と(2)のR2は必ずしも同一のものでなくてもよく、
【化3】

式中oは繰り返し単位の数を示し、
【化4】

式中pは繰り返し単位の数を示し、oよりも小さな整数であり、前記式(3)と(4)のR2は必ずしも同一のものでなくてもよい。
前記式のR1は下記一般式(5)から選択される4価の有機基を、また、R2は下記一般式(6)から選択される2価の有機基を示し、
【化5】

【化6】

式中R3は、ハロゲン、ハロゲン化アルキル、C1〜C16のアルキル基を示す。
【請求項2】
前記式(2)あるいは(4)で表される繰り返し単位として、R1の構造が下記一般式(7)であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【化7】

【請求項3】
前記式(1)、(2)、(3)あるいは(4)で表される繰り返し単位として、R2の構造が下記一般式(8)から選択される2価の有機基であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【化8】

【請求項4】
3がハロゲン、もしくは、ハロゲン化アルキルであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項5】
3がトリフルオロメチル基であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記式(1)と(2)、あるいは前記式(3)と(4)を反応させて得られるポリアミド酸にイミド化剤と脱水触媒を用いてイミド化することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項7】
イミド化剤が3級アミンであることを特徴とする請求項6に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項8】
脱水触媒が酸無水物であることを特徴とする請求項6または7に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項9】
イミド化剤が、ポリアミド酸のカルボン酸に対して0.01モル倍当量以上を用いることを特徴とする、請求項6乃至8のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項10】
脱水触媒が、ポリアミド酸のカルボン酸に対して0.05モル倍当量以上を用いることを特徴とする、請求項6乃至9のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項11】
ポリアミド酸の重量平均分子量が3,000以上である、請求項1乃至10のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項12】
線熱膨張係数が40ppm/K以下である、請求項1乃至11のいずれかに記載の方法で製造されたポリイミドフィルム。
【請求項13】
複屈折が0.1以下である、請求項12に記載のポリイミドフィルム。
【請求項14】
ガラス転移温度が200℃以上である、請求項12または13に記載のポリイミドフィルム。
【請求項15】
光学フィルムと偏光子とを含む偏光板であって、前記光学フィルムが請求項11乃至14のいずれかに記載のポリイミドフィルムである偏光板。
【請求項16】
液晶セルの少なくとも一方の表面に光学部材が配置された液晶パネルであって、前記光学部材が、請求項11乃至14のいずれかに記載のポリイミドフィルムである液晶パネル。
【請求項17】
液晶セルの少なくとも一方の表面に光学部材が配置された液晶パネルであって、前記光学部材が請求項15記載の偏光板である液晶パネル。
【請求項18】
液晶パネルを含む液晶表示装置であって、前記液晶パネルが請求項17記載の液晶パネルである液晶表示装置。

【公開番号】特開2011−111596(P2011−111596A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272173(P2009−272173)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】