ポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法、該方法によって製造された金属薄膜、ならびにポリイミド配線板の製造方法および該方法によって製造されたポリイミド配線板
【課題】金属薄膜とポリイミド樹脂との間で十分な密着強度を示す金属薄膜、ポリイミド配線板およびそれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】第1のアルカリ性溶液によりポリイミド樹脂表面を処理してイミド環を開環し、改質層を形成する改質工程;金属イオン含有溶液により該改質層を処理する金属イオン吸着工程;酸溶液により該改質層を処理する第1の酸溶液処理工程;および還元溶液により該改質層を処理して、改質層に吸着した金属イオンを還元して、金属薄膜を析出させる還元工程;を含むポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法、および該方法によって製造された金属薄膜。該金属薄膜の製造方法を実施した後に、配線パターンを形成する配線形成工程を含むことを特徴とするポリイミド配線板の製造方法、および該方法によって製造されたポリイミド配線板。
【解決手段】第1のアルカリ性溶液によりポリイミド樹脂表面を処理してイミド環を開環し、改質層を形成する改質工程;金属イオン含有溶液により該改質層を処理する金属イオン吸着工程;酸溶液により該改質層を処理する第1の酸溶液処理工程;および還元溶液により該改質層を処理して、改質層に吸着した金属イオンを還元して、金属薄膜を析出させる還元工程;を含むポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法、および該方法によって製造された金属薄膜。該金属薄膜の製造方法を実施した後に、配線パターンを形成する配線形成工程を含むことを特徴とするポリイミド配線板の製造方法、および該方法によって製造されたポリイミド配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法、該方法によって製造された金属薄膜、ならびにポリイミド配線板の製造方法および該方法によって製造されたポリイミド配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などの携帯情報機器に代表される電子機器は、小形化および軽量化が要求されている。この要求に伴って、電子機器に搭載されるプリント配線板として、可撓性を有するフレキシブルプリント配線板(FPC:Flexible Printed Circuit)や、ガラスエポキシ基板などの硬質基板とFPCとを組み合わせたリジット−フレキシブル配線板などの使用量が増加している。FPCの基板材料としては、耐熱性、電気絶縁性、機械的強度に優れるポリイミド基板が広く用いられている。
【0003】
ポリイミド基板を用いたFPCへの配線形成方法としては、従来、基板材料の表面全体に接着剤を介して貼り付けた金属膜を、エッチングにより除去してパターニングするサブトラクティブ法が用いられている。しかしながら、プリント配線板の高密度化に伴い、より微細な配線パターンが要求されているため、オーバーエッチングの発生や、接着剤の密着性が弱いという問題があるサブトラクティブ法に替わる配線形成方法が検討されている。
【0004】
その手法の一つとして、ダイレクトメタライゼーション法を利用したセミアディティブ法がある。このダイレクトメタライゼーション法を用いると、金属薄膜とポリイミドにナノスケールでアンカリングすることにより密着性を改善することができる。全体のプロセスは、ポリイミド基板表面に金属薄膜を形成し、その金属薄膜を給電層として電解Cuめっきを行なって作製した銅張2層基板を用いて、フレキシブルプリント配線板を作製する(例えば、特許文献1)。
【0005】
ダイレクトメタライゼーション法の詳細プロセスは、まず、KOHやNaOHなどのアルカリ性溶液にポリイミド基板を浸漬し、ポリイミド基板表面を加水分解して、改質層を形成する。この改質層は、イミド環が開環したことによって、カルボキシル基を有するポリアミック酸、あるいはポリアミック酸塩の構造を有する。次に、ポリイミド基板を金属イオン含有溶液に浸漬して、カルボキシル基に金属イオンを配位させて金属塩を形成する。そして、この金属塩を還元して金属薄膜を得る。そのようなダイレクトメタライゼーション法で形成された金属薄膜をシード層として、セミアディティブ法により配線パターンを形成する。
【0006】
しかしながら、上記の方法には、以下に示すような問題点があった。
ダイレクトメタライゼーション法では、改質層表層部に存在するポリアミック酸塩を還元剤溶液に浸漬して、金属粒子として析出させるため、金属粒子の析出は改質層表面付近からスタートする。そして、還元剤溶液が改質層内部に浸透していくと共に、深さ方向に金属粒子の析出が進んでいき、最終的に数百nmの金属薄膜になる。このとき、金属薄膜を析出させた後の構造は還元速度に大きく依存し、還元速度が遅い場合には、還元剤が改質層深部に到達するまでの時間を長くとれるので、析出厚さの厚い膜を形成することができる。その結果、金属粒子とポリイミドの絡み合う表面積が大きくなり、高い密着性の配線板にすることができる。その反面、核生成よりも核成長が優勢となるため、金属粒子サイズのばらつきが大きくなり、不均一なサイズの粒子間にある改質されたポリイミドに過度の応力がかかり、ひび割れが生じてしまう。このようなひび割れは改質層をその後の工程で元のポリイミドに戻す処理(以下、再イミド化と称す)を行ったとしても、金属薄膜のポリイミドに対する密着強度を低下させてしまう。それを防止するためには、核成長よりも核生成を優勢にするために、還元速度の速い還元剤溶液を用いなければならない。
【0007】
ところが、逆に還元速度が速いと、改質層内部だけでなく、改質層の上部にも過剰に金属粒子の析出が進み、改質層上部を金属薄膜が覆い尽くしてしまう。その後の工程で改質層内の水分を除去する処理を行うが、そのような構造では改質層上部を覆い尽くしている金属薄膜がバリアとなり、真空乾燥や昇温を行っても水分除去を十分にできなくなる。その結果、改質層の分子構造であるポリアミック酸は水分が周辺に存在することによって酸としての特性を有するため、金属粒子がポリアミック酸に溶解してポリアミック酸金属塩となってしまう。ポリアミック酸ではなくポリアミック酸金属塩の状態では、ベーク処理を行っても改質層が再イミド化されないことはすでに公知である(特許文献1)。その結果、金属薄膜のポリイミドに対する十分な密着強度は得られなかった。
【特許文献1】特開2004−6584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は金属薄膜とポリイミド樹脂との間で十分な密着強度を示す金属薄膜、ポリイミド配線板およびそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は特に、還元速度が速い場合でも、金属薄膜が改質層上部を覆う面積を96%以下である構造にすることで、改質層が十分に再イミド化され、化学的に安定な旧改質層(改質層であった箇所)を有するポリイミド配線板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
第1のアルカリ性溶液によりポリイミド樹脂表面を処理してイミド環を開環し、改質層を形成する改質工程;
金属イオン含有溶液により該改質層を処理する金属イオン吸着工程;
酸溶液により該改質層を処理する第1の酸溶液処理工程;および
還元溶液により該改質層を処理して、改質層に吸着した金属イオンを還元して、金属薄膜を析出させる還元工程;
を含むことを特徴とするポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法、および該方法によって製造された金属薄膜に関する。
【0011】
本発明はまた、
上記金属薄膜の製造方法を実施した後に、
配線パターンを形成する配線形成工程
を実施することを特徴とするポリイミド配線板の製造方法、および該方法によって製造されたポリイミド配線板に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基礎技術にダイレクトメタライゼーション法を採用した結果、ポリイミドと金属薄膜とがナノレベルで噛み合った構造が実現できるため、密着性が優れたポリイミド配線板を高い生産性および信頼性で得ることができる。
また本発明の製造方法では、金属イオン還元工程を終えた段階で改質層上部を金属薄膜が96%以下覆った構造にすることで、改質層内部の水分が蒸発しやすい状態になり、上記課題を解決できる。その結果、改質層が十分に再イミド化され、化学的に安定な旧改質層を有するポリイミド配線板およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明のポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法は、いわゆる直接めっき法(ダイレクトメタライゼーション)を用いている。
【0014】
本発明のポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法は、詳しくは、
(1)第1のアルカリ性溶液によりポリイミド樹脂表面を処理してイミド環を開環し、改質層を形成する改質工程;
(2)金属イオン含有溶液により該改質層を処理して、改質層に該金属イオンを吸着させる金属イオン吸着工程;
(3)酸溶液により該改質層を処理して、改質層に吸着させた金属イオンのうち最表部の金属イオンを除去する第1の酸溶液処理工程;および
(4)還元溶液により該改質層を処理して、改質層に吸着した金属イオンを還元して、金属薄膜を析出させる還元工程;
を含むことを特徴とする。
【0015】
以下、本発明を図1〜図8を参照して説明する。図1は、本発明に係るポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法の製造工程を示すフロー図の一例であり、図2〜図8は、製造工程を説明するためのポリイミド樹脂(基板)の概略断面図の一例である。
【0016】
(1)改質工程
本発明において、直接めっき法を用いるに際し、金属薄膜製造のためにポリイミド樹脂表面を開環処理する必要がある。詳しくは図2に示すようなポリイミド樹脂1を第1のアルカリ性溶液に浸漬することで、図3に示すように表面に改質層2を形成し、水洗する。この工程により、ポリイミド樹脂表面におけるポリイミド分子のイミド環が加水分解によって開環し、カルボキシル基が生成すると同時に、カルボキシル基の水素イオンが第1のアルカリ性溶液中の金属イオンと置換され、改質層が形成される。例えば、化学式(1)で表されるポリイミドがKOH水溶液で処理される場合、加水分解による開環によって生成したカルボキシル基にカリウムイオンが吸着し、化学式(2)で表される構造を有するようになる。
【0017】
【化1】
【0018】
ポリイミド樹脂の構造は特に制限されるものではなく、例えば、上記化学式(1)で表されるような、ピロメリット酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させて製造されたポリイミド樹脂が使用可能である。
【0019】
ポリイミド樹脂の形態は特に制限されず、可撓性を有するフィルム状のものから剛性を有するボード状のものまで、いかなるポリイミド樹脂も使用可能であるが、フレキシブル配線板を製造する観点からは、厚み10〜200μmの可撓性を有するフィルム状のものが好ましく使用される。ポリイミド基板を用いる場合、市販のものを使用することができ、例えば、アピカル(R)(カネカ製)、カプトン(R)(東レデュポン製)、ユーピレックス(R)(宇部興産製)等として入手可能である。
【0020】
第1のアルカリ性溶液はポリイミドのイミド環を開環できる限り特に制限されるものではなく、例えば、K、Na等のアルカリ金属の水酸化物を含有する水溶液、Mg、Ca等のアルカリ土類金属の水酸化物を含有する水溶液等が使用可能である。第1のアルカリ性溶液に含有され、本工程で水素イオンと置換する金属イオンを以下、金属イオンAと呼ぶものとする。
【0021】
本工程に用いられる第1のアルカリ性溶液は通常は、濃度が0.1〜10M(mol/l)、溶液温度が20〜70℃であり、処理時間は1分〜2時間である。好ましくは、溶液温度は30〜50℃、処理時間は3〜7分である。処理温度が高すぎるとポリイミドの主鎖が切れる可能性があり、処理時間が長すぎると改質層の厚さが厚くなりポリイミド基板全体の強度低下のため、プロセス継続が困難になる可能性がある。
【0022】
改質層2の厚さはその後の工程で得られる金属薄膜の厚さと相関がある。さらに後の工程で増膜を行うのに必要な金属薄膜の厚さを得る観点からは、改質層の厚さは1〜5μmが好ましい。
【0023】
水洗は、ポリイミド樹脂表面に付着した第1のアルカリ性溶液を除去するために行う。従って、流水による水洗が望ましい。通常は、1〜5L/minの水量で、5分以上の水洗を行う。
【0024】
(2)金属イオン吸着工程
本工程では、金属イオン含有溶液により前記改質層2を処理して、図4に示すように、該溶液に含有される金属イオンを改質層に吸着させる。詳しくは、改質層2を有するポリイミド樹脂を、金属イオン含有溶液に浸漬して、改質層中の金属イオンAを、当該金属イオン含有溶液中の金属イオンと置換させ、水洗する。図4中、3が金属イオンを吸着した改質層である。
【0025】
金属イオン含有溶液中に含まれる金属イオンは後述の工程で還元されて金属薄膜として析出するものである。用いることができる金属イオンの種類は、樹脂の種類によって決定される。ポリイミド樹脂は弱酸性カチオン交換樹脂に分類され、この樹脂の場合、あらゆる金属イオンを吸着可能である。後述の配線形成工程の電解めっき処理でCuを増膜する観点からは、例えば、Niイオン、Cuイオン、およびそれらの組み合わせを用いることが好ましい。そのような金属イオンを含有する溶液として、具体的には、例えば、NiSO4水溶液、CuSO4水溶液、NiCl2水溶液、およびそれらの混合液などが使用可能である。金属イオン含有溶液に含有され、本工程で金属イオンAと置換する金属イオンを以下、金属イオンBと呼ぶものとする。
【0026】
本工程に用いられる金属イオン含有溶液は通常は、濃度が0.01〜0.1M(mol/l)、処理温度が20〜30℃であり、処理時間は5分以上である。特に本工程での処理時間は、工程(1)における改質処理の条件により適宜設定される。例えば、ポリイミド改質層の厚さが約3μmの場合、少なくとも3分間吸着処理を行えば十分である。
【0027】
水洗は、ポリイミド樹脂表面に付着した金属イオン含有溶液を除去するために行う。水洗は通常、1〜5L/minの水量で、5分以上の条件で行う。
【0028】
(3)第1の酸溶液処理工程
本工程では、酸溶液により該改質層を処理して、改質層に吸着させた金属イオンのうち最表部の金属イオンBを除去する。詳しくは、金属イオンBを吸着した改質層3を有するポリイミド樹脂を、酸溶液に浸漬して、改質層3の最表部中の金属イオンBを、当該酸溶液中の水素イオンと置換させ、水洗する。酸溶液処理は浸漬によって達成されてもよいが、後述の処理時間を確保できる限り特に制限されず、例えば、噴霧処理等であってもよい。図5中、2が金属イオンBを水素イオンに置換させて得られた最表部の改質層2である。以下、最表部の改質層2を抵抗層ということがある。
【0029】
本工程を経た後、後述の還元工程を行うことによって、改質層表面に析出する金属薄膜の被覆率を96%以下、特に20%以上96%以下、好ましくは60%以上80%以下とする。これによって、その後の乾燥工程において改質層内部の水分が蒸発し易くなるので、改質層が十分に再イミド化され、金属薄膜とポリイミド樹脂との密着強度が向上する。化学的に安定な再イミド化層を有するポリイミド配線板およびその製造方法を提供することができる。本工程を行わない場合、還元工程によって改質層内部だけでなく改質層の上部にも過剰に金属の析出が進むので、改質層表面の96%を超えて金属薄膜が覆い尽くしてしまう。そのため、その後に乾燥工程を行っても、当該金属薄膜がバリアとなり、水分除去が難しくなる。したがって、乾燥工程で、改質層内部において、残存水分によりナノサイズの金属粒子が再イオン化する。その結果、後述の配線形成工程で行うめっき処理工程により増膜を行うことができなくなる。たとえ、めっき処理により増膜できたとしても、金属イオンの存在により再イミド化が阻害され、金属薄膜の密着強度が低下する。一方、金属薄膜の被覆率が小さすぎると、後述の配線形成工程で行うめっき処理工程により増膜を行うことができない。
【0030】
後述の還元工程において析出する金属薄膜は金属粒子の集合体により構成されている。本来、金属粒子の析出は、改質層内部の金属イオンBが改質層表面へ拡散していく過程で還元されることにより進行する。改質層最表部の金属イオンBは、改質層表面までの距離が近いので、改質層表面で析出されやすい。これに対して、改質層深部にある金属イオンBは、改質層表面までの距離が遠いので、改質層の内部で還元されやすい。本工程では、ポリイミド樹脂最表層部に吸着した金属イオンBは除去されるので、還元工程において金属粒子の析出は改質層内部で優先的に起こる。その結果、金属薄膜はポリイミド樹脂表面において上記被覆率を達成できる。
【0031】
金属薄膜の被覆率(占有率)は以下の方法によって測定された値を用いている。
金属薄膜表面の6万倍のFE−SEM観察写真(例えば、図10)を10枚ランダムに取得し、金属薄膜4の占有面積を測定した。当該写真における金属薄膜および改質層の総占有面積に対する金属薄膜の占有面積の割合を算出し、被覆率とした。
【0032】
第1の酸溶液処理工程で使用される酸溶液は溶液中、水素イオンが存在するものであれば特に制限されず、例えば、硫酸水溶液、塩酸水溶液、硝酸水溶液、リン酸水溶液、ギ酸水溶液、クエン酸水溶液等が使用できる。ただし、硫酸や硝酸、塩酸などの酸溶液を用いる場合は、酸としての性質が強いので、比較的低い濃度で用いることが望まれる。
【0033】
例えば、金属イオンBが銅イオンのとき、クエン酸、リン酸、ギ酸等が好ましく使用される。
また例えば、金属イオンBがニッケルイオンのとき、クエン酸、リン酸、硫酸)等が好ましく使用される。
【0034】
本工程の処理条件、例えば、使用される酸溶液の種類、濃度、温度および酸溶液とポリイミド樹脂との接触時間(処理時間)等は、還元工程後において上記金属薄膜の被覆率が達成される限り特に制限されない。
例えば、クエン酸水溶液を使用する場合、溶液濃度は0.02〜1M、溶液温度は10〜70℃、処理時間は0.5〜10秒が好適である。特にクエン酸水溶液を濃度0.2M、温度25℃の条件で用いる場合、処理時間は0.5〜10秒であれば、それ以降の工程を実施する上で好ましい。
また例えば、硫酸水溶液を用いる場合、溶液濃度は0.01〜10vol%、溶液温度は10〜50℃、処理時間は0.1〜10秒が好適である。
また例えば、塩酸水溶液を用いる場合、溶液濃度は0.1〜5M、溶液温度は10〜50℃、処理時間は0.1〜5秒が好適である。
また例えば、硝酸水溶液を用いる場合、溶液濃度は0.1〜5M、溶液温度は10〜50℃、処理時間は0.1〜3秒が好適である。
また例えば、リン酸水溶液を用いる場合、溶液濃度は0.1〜10M、溶液温度は15〜50℃、処理時間は0.1〜10秒が好適である。
また例えば、ギ酸水溶液を用いる場合、溶液濃度は0.1〜10M、溶液温度は15〜50℃、処理時間は0.1〜10秒が好適である。
【0035】
本工程において酸溶液は撹拌しながら使用してもよいが、撹拌することなく使用することが好ましい。攪拌することで、金属薄膜付近のCuイオンの濃度勾配が大きくなることが理由で、金属薄膜の溶解速度が速まるからである。
【0036】
本工程の処理条件のうち、例えば処理時間は、本工程の他の条件および還元工程の処理条件を固定し、金属薄膜の被覆率と本工程における酸溶液による処理時間との関係を示すグラフを作成することによって、容易に決定できる。例えば、図9(縦軸は左側)はそのようなグラフの一例である。図9より酸溶液による処理時間を長く設定するほど、金属薄膜の被覆率は低下することが明らかである。図9において、被覆率96%以下を達成する処理時間は0.5秒以上であり、被覆率20%以上を達成する処理時間は10秒以下である。
【0037】
水洗は、ポリイミド樹脂表面に付着した酸溶液を除去するために行う。酸溶液は酸性であるため、そのまま次工程に持ち込むと還元剤のpHの変動をもたらす原因となる。水洗は通常、0〜5L/minの流速で、1〜10秒の条件で行う。ここでいう流速は、試料との相対的な速度を意味しているのではなく、溶液自体の攪拌速度のことである。試料の溶液への投入にかかる時間は少なくとも0.1〜1秒の間で終えるものとする。ここでいう、流量0L/minとは攪拌されていない溶液に、試料を単に浸漬処理するという意味である。
【0038】
(4)還元工程
本工程では、還元溶液により前記改質層2、3を処理して、改質層に吸着した金属イオンを還元させる。詳しくは、最表部に金属イオンBをほとんど含有しない改質層を有するポリイミド樹脂を還元溶液に浸漬する。これによって、改質層の深部に含有される金属イオンBは改質層表面へ拡散していく過程で還元され、図6に示すように、改質層表面で金属粒子が析出し、金属薄膜4が形成される。
【0039】
還元溶液は、金属イオンBとの接触によって当該金属イオンBを還元できる液体であれば特に制限されず、一般的な無電解めっきで使用される還元剤の水溶液が使用可能である。具体的には、例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、ジメチルアミンボランDMAB、トリメチルアミンボラン等のホウ素化合物の水溶液や、次亜リン酸ナトリウムの水溶液などが使用可能である。そのような還元溶液の中でも、比較的、還元速度の速い水素化ホウ素ナトリウムを用いるのがもっとも望ましい。金属粒子の析出に伴うポリイミド基板に生じる応力は微細な金属粒子であった方が周囲に均一に分散され、そのような微細な金属粒子の析出には、還元速度が比較的速い還元溶液が好適なためである。そのような還元溶液は核成長反応よりも核生成反応が優勢となる傾向が強い。
【0040】
例えば、水素化ホウ素ナトリウムを単独で使用する場合、溶液温度は5℃〜30℃、特に10〜30℃が好適である。還元溶液の濃度は0.0002mol/L〜0.01mol/L、望ましくは0.001mol/L〜0.005mol/Lが好適である。処理時間は0.5〜30分間、特に5〜20分間が好適である。
また例えば、ジメチルアミンボランを単独で使用する場合、溶液温度は30〜70℃、特に40〜60℃が好適である。還元溶液の濃度は0.05〜5mol/L、望ましくは0.5〜1mol/Lが好適である。処理時間は1〜30分間、特に5〜15分間が好適である。
【0041】
また例えば、トリメチルアミンボランを単独で使用する場合、溶液温度は30〜70℃、特に40〜60℃が好適である。還元溶液の濃度は0.05〜5mol/L、望ましくは0.5〜1mol/Lが好適である。処理時間は1〜30分間、特に5〜15分間が好適である。
また例えば、次亜リン酸ナトリウムを単独で使用する場合、溶液温度は10〜30℃、特に15〜25℃が好適である。還元溶液の濃度は0.05〜5mol/L、望ましくは0.5〜1mol/Lが好適である。処理時間は1〜30分間、特に5〜15分間が好適である。
【0042】
溶液温度が低すぎると、還元反応において金属の核生成反応よりも核成長反応が優勢となり、金属薄膜の被覆率が大きくなり過ぎる。温度が高すぎると、改質層が剥がれてしまう原因となりやすい。濃度が低すぎたり、処理時間が短すぎると、すべてのCuイオンを還元することができず、金属薄膜の電気伝導率を十分確保できないので、後工程である配線形成工程の中の電解めっき工程を実施できなくなる。濃度が高すぎると、還元速度が速すぎて、金属粒子の析出が試料表面で優先的に起こるので、ポリイミドと金属薄膜がナノレベルで密着したような構造にすることができない。したがって、この場合は、低い密着度のポリイミド配線板になってしまう。また、処理時間が長すぎる場合は、ポリイミド改質層にダメージを与えてしまい、還元処理時に金属薄膜が剥がれてしまう。
【0043】
還元溶液は、還元剤を単独の種類だけでなく、複数の種類で混合して使用しても良い。
例えば、水素化ホウ素ナトリウムをDMABなど他の還元剤と用いる場合は、水素化ホウ素ナトリウム単独で用いる場合よりも、金属薄膜の被覆率は少なくなる傾向にある。そのような場合において、還元溶液は温度20〜60℃で使用可能である。還元剤の濃度について、水素化ホウ素ナトリウムとジメチルアミンボランのそれぞれの濃度は、0.0002〜0.01mol/L、0.05〜5mol/Lであれば使用可能である。処理時間は0.5〜30分間、特に5〜15分間が好適である。
【0044】
還元溶液には、必要に応じてpH調整剤や錯化剤等の添加剤を添加しても良い。
そのような添加剤としては、従来より一般的な無電解めっきで使用される還元溶液に添加され得る添加剤が使用可能である。
【0045】
本工程で析出する金属薄膜の厚みは、前記した被覆率が達成される限り特に制限されるものではなく、通常は60〜196nm、特に112〜144nmである。
【0046】
金属イオンが還元されるのに伴い、金属イオンが吸着されていた改質層の分子構造はポリアミック酸Cu塩からCuイオンが引き離されて、ポリアミック酸になる。
【0047】
還元処理後は通常、ポリイミド樹脂表面に付着した還元溶液を除去するために水洗を行う。水洗は、0〜5L/minの水量で、5分以上の条件で行う。
【0048】
本発明において、還元工程の後、通常は、
(5)第2のアルカリ性溶液により該改質層を処理して、還元工程後の改質層の内部に残留する金属イオンを水酸化物イオンとの反応物として析出させる工程;
(6)酸溶液により該改質層を処理して、前記反応物を改質層から除去する第2の酸溶液処理工程;
(7)該改質層中の水分を除去する乾燥工程;および
(8)イミド環を閉環する再イミド化工程
を実施する。還元工程(4)において、改質層中の金属イオンBは全てが還元されるわけではなく、改質層には金属イオンBが残存するので、アルカリ性溶液処理工程(5)および第2の酸溶液処理工程(6)を行うことによって、再イミド化率を大幅に改善できる。本発明においては、アルカリ性溶液処理工程(5)を必ずしも行わなければならないというわけではなく、還元工程(4)の後、順次、第2の酸溶液処理工程(6)および再イミド化工程(7)を実施してもよい。
【0049】
(5)アルカリ性溶液処理工程
次に、水洗が終了したポリイミド基板を第2のアルカリ性溶液に浸漬する。本工程を行う目的は、改質層内に残存する金属イオンを、第2のアルカリ性溶液内に存在する水酸化物イオンとの反応物として析出させることにある。この工程により、ポリイミド改質層内に残存する金属イオンはすべて金属酸化物となる。この場合、金属イオンの種類がCuイオン、Niイオンのどちらでも、金属酸化物を析出させることができる。
【0050】
本工程で用いる第2のアルカリ性溶液としては、水酸化物イオンが生成するものが使用でき、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を含有するアルカリ性水溶液が使用される。具体的には、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液等が挙げられる。第2のアルカリ性溶液は、金属イオンBとの組み合わせについて、特に制限はなく、上記したアルカリ性水溶液であればよい。
【0051】
第2のアルカリ性溶液の濃度は、工程(2)でポリイミド中に吸着された金属イオンの量に対して同程度の量の水酸化物イオンを含んでいればよく、例えば、0.01mol/L〜2mol/L、望ましくは0.5mol/L〜1mol/Lである。処理時間は、1分〜30分、望ましくは3分〜10分である。処理温度は、10℃〜40℃、望ましくは20℃〜30℃である。温度が高すぎると、ポリイミド改質層がさらに改質され、ポリイミド樹脂と金属薄膜との密着強度低下につながる恐れがある。温度が低すぎると、酸化物を析出させる反応が起こらず、金属イオンが改質層内に残存してしまう。また、本工程で用いる溶液に、酸化防止剤、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム等を添加しても良い。
【0052】
水洗は、ポリイミド樹脂表面に付着した第2のアルカリ性溶液を除去するために行う。水洗は通常、0〜5L/minの水量で、5分以上の条件で行う。
【0053】
(6)第2の酸溶液処理工程
次に、水洗が終了したポリイミド基板を酸溶液に浸漬する。本工程を行う目的は、工程(5)で析出した金属酸化物を酸溶液にて溶出させ、改質層内から金属酸化物を除去することである。
【0054】
第2の酸溶液処理工程で使用される酸溶液は、第1の酸溶液処理工程で使用される酸溶液であり、かつ金属薄膜を溶かしにくいものが望まれる。好ましい具体例として、例えば、硫酸水溶液、硝酸水溶液、クエン酸水溶液等が使用できる。
【0055】
例えば、銅薄膜が析出した場合、クエン酸、硫酸等が好ましく使用される。
また例えば、ニッケル薄膜が析出した場合、硝酸、クエン酸等が好ましく使用される。
【0056】
酸溶液の濃度は、例えば、0.1mol/L〜1.0mol/L、望ましくは0.2mol/L〜0.5mol/Lである。処理時間は1分〜15分、望ましくは2分〜10分である。処理温度は、10℃〜40℃、望ましくは20℃〜30℃である。
【0057】
水洗は、ポリイミド樹脂表面に付着した酸溶液を除去するために行う。水洗は通常、0〜5L/minの水量で、5分以上の条件で行う。
【0058】
(7)乾燥工程
次に、水洗が終了したポリイミド樹脂を乾燥させる。改質層内部に存在する水分は、改質層表面に存在する金属薄膜の隙間を通して有効に除去できる。乾燥方法としては、真空乾燥や加熱乾燥などの方法を用いることできる。どのような乾燥方法を採用した場合であっても、金属薄膜の被覆率は前記範囲内であるので、乾燥を有効に達成できる。その結果、改質層内部の水分除去が十分になされ、工程(8)で実施する熱処理で再イミド化が十分に達成される。
【0059】
本工程を例えば、熱処理により行った場合、温度が80〜140℃、望ましくは、100℃〜120℃、時間は30〜60分である。得られた金属薄膜の酸化防止のため、窒素ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気、真空雰囲気で加熱処理することが望ましい。
また例えば、真空雰囲気で乾燥を行う場合は、真空度を500HPa以下に保った状態で、60分以上行う。
【0060】
(8)再イミド化工程
本工程ではイミド環を閉環する。詳しくは、前工程で得られたポリイミド樹脂を加熱することで、改質層が再イミド化される(再イミド化ベーク処理)。これによって、図7に示すように、機械的強度、耐熱性、耐薬品性に劣る改質層を、元のポリイミド分子構造に戻すことができる。
【0061】
処理条件は、改質層の再イミド化を達成できる限り特に制限されず、例えば、温度が250℃以上、時間は1時間以上である。得られた金属薄膜の酸化防止のため、窒素ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気、真空雰囲気で加熱処理することが望ましい。
【0062】
以上に示した本発明のポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法は、ポリイミド配線板、特にフレキシブル配線板の製造方法に適用可能である。
(9)配線形成工程
上記した本発明に係るポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法によって得られた金属薄膜を有するポリイミド樹脂に対して、例えば、いわゆるサブトラクティブ法またはアディティブ法等によって図8に示すような配線パターン5を形成すればよい(配線形成工程)。
【0063】
詳しくはサブトラクティブ法においては、例えば、本発明で得られた金属薄膜を有するポリイミド樹脂に対して、所望により電解/無電解めっき等により導体層5をさらに形成し、配線領域にレジストパターンを形成した後、金属膜の露出部(非配線領域)をエッチング除去し、レジストパターンを除去すればよい。
【0064】
アディティブ法においては、例えば、本発明で得られた金属薄膜を有するポリイミド樹脂に対して非配線領域にレジストパターンを形成し、金属薄膜の露出部(配線領域)に電解/無電解めっき等により導体層5を形成した後、レジストパターンを除去し、さらに導体層をマスクとして金属薄膜の露出部をエッチング除去すればよい。
【実施例】
【0065】
本発明によるポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法について、実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
<実験例1>
[実施例1]
以下に説明する工程により、ポリイミド基板表面へCu薄膜を形成した。
ポリイミド基板には、125μm厚のポリイミドフィルムを用いた。ポリイミドフィルムとしては、東レ・デュポン社のカプトンHを使用した(図2)。
まず、ポリイミド基板を50℃のKOH水溶液に3分間浸漬し、改質工程を実施した。この際、KOH水溶液は、5M(mol/l)の濃度に設定した。この工程により、ポリイミド基板1の両面には、ポリイミド分子中のイミド環の加水分解により、カルボキシル基にカリウムイオンが配位したカルボン酸カリウム塩が形成された改質層2が形成される(図3)。改質層2の厚さは、ポリイミド基板1の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察することにより、約3μmであることが判った。次に、ポリイミド基板1を、2リットル/分の流水で5分間、水洗した。
【0067】
次に、ポリイミド基板1について、Cuイオン吸着のための処理を実施した。Cuイオン吸着には、硫酸銅水溶液を用いた。処理条件は、濃度が0.05M(mol/l)、温度は25℃、浸漬処理時間は10分である。なお、溶液は攪拌している。この処理により改質層2はCuイオン付改質層3に変わる(図4)。次に、ポリイミド基板の水洗を行った。水洗は、2リットル/分の流水で5分間実施した。
【0068】
次に、ポリイミド基板1について、第1の酸溶液処理工程を実施した。溶液にはスターラー撹拌下のクエン酸水溶液を用いた。処理条件は、濃度が0.2M(mol/l)、温度は25℃、浸漬処理時間は0.5秒間であった。この処理により、Cuイオン付改質層3の最表層のCuイオンが取り除かれ、最表層は改質層2に戻る(図5)。次に、ポリイミド基板の水洗を行った。水洗は、2リットル/分の流水で1秒間(図5)実施した。
【0069】
次に、ポリイミド基板1について、還元処理を行った。還元溶液は、水素化ホウ素ナトリウム水溶液であり、濃度は0.001M(mol/l)、pHは9.2、温度は25℃、浸漬処理時間は30分とした。なお、還元溶液は攪拌を行っている。この処理により、Cuイオンは還元され、改質層2の最表部に金属薄膜4が形成された(図6)。次に、ポリイミド基板を水素化ホウ素ナトリウム還元溶液から取り出し、水洗処理を行った。水洗は、2リットル/分の流水で5分間実施した。
試料表面における金属薄膜4の被覆率(占有比率)を調べた。SEMによる表面観察像を図10に示す。金属薄膜4の被覆率は96%であった。またその断面をSEMにより断面観察したところ、金属薄膜4の厚さは192nmであった。
【0070】
次に、ポリイミド基板1について、アルカリ性溶液処理を行った。アルカリ性溶液は、水酸化ナトリウム水溶液であり、濃度は1mol/L、温度は25℃、浸漬処理時間は3分とした。次に、ポリイミド基板1について、水洗を行った。水洗は、2リットル/分の流水で30分間実施した。
【0071】
次に、ポリイミド基板1について、第2の酸溶液処理工程を行った。酸溶液は、クエン酸水溶液であり、濃度は0.2mol/L、温度は25℃、浸漬処理時間は7分とした。次に、ポリイミド基板1について、水洗を行った。水洗は、2リットル/分の流水で5分間実施した。
【0072】
次に、ポリイミド基板について、乾燥処理を行った。乾燥処理は、まず、窒素ブローによりポリイミド基板表面に付着した水分を除去した。次に、真空(10hPa)雰囲気中で、温度は25℃、時間は3時間の乾燥処理を実施した。
【0073】
次に、ポリイミド基板について、再イミド化処理を行った。再イミド化処理は、窒素ガス雰囲気中で、300℃、1時間実施した(図7)。
【0074】
最後に電解めっきによる増膜、レジスト形成、電解/無電解めっきによる金属配線層形成、レジスト除去、エッチングを行い、配線パターニング処理を行った。その結果、配線部以外の金属薄膜4は取り除かれ、また金属薄膜4および導体層5よりなる配線が形成された(図8)。
【0075】
このようにして作製したポリイミド配線板の断面をSEMにより観察した像を図11に示す。析出したCu薄膜(金属薄膜)は、ポリイミドの深さ方向に150nmの厚さで層を形成している。
さらに、Cu薄膜とポリイミド基板の密着強度を測定するために、配線板についてピール試験を実施した。ピール試験は、JISC6471に規定されている90°引き剥がし試験方法により行った。試験機は、一般的な引張試験機を用いた。詳しくはポリイミドフィルムの裏面を、市販のエポキシ系接着剤を用いて金属板に貼り付け、その金属板をピール試験治具に取り付けた。一部だけ引き剥がした銅パターンと、引っ張り試験機のロードセルと接続した。この後、引っ張り試験を行い、ピール強度を測定した。
ピール強度は、10〜12N/cmを示した。さらに、高温処理(150℃、196時間保持)後の密着強度低下は、約10%であった。ピール試験後の破断面は、Cu薄膜とポリイミド基板の界面であった。改質されていたポリイミド基板部で破断を起こしていないことから、再イミド化処理を行うことにより、ポリイミド基板の機械強度を保ちつつ、ポリイミド基板とCu薄膜層の密着強度を高くすることができた。
【0076】
[実施例2]
本実施例では、以下の処理条件により還元工程を実施したこと以外、実施例1と同様の方法により、ポリイミド配線板を製造した。
還元剤にジメチルアミンボランを用い、濃度は0.5mol/l、pHは8.9、温度は50℃、処理時間は12分とした。そのような条件以外は実施例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0077】
還元工程後の試料表面における金属薄膜4の被覆率を調べた。SEMによる表面観察像を図12に示す。金属薄膜4の被覆率は85%であった。またその断面をSEMにより断面観察したところ、金属薄膜4の厚さは約156nmであった。
配線板についてピール試験を実施例1と同様の方法により実施した。ポリイミド基板とCu薄膜層とのピール強度は12〜14N/cmを示した。高温処理(150℃、196時間保持)後の密着強度低下は、約5%であった。ピール試験後の破断面は、Cu薄膜とポリイミド基板の界面であった。
【0078】
[実施例3]
本実施例では、第1の酸溶液処理工程の処理時間を10秒としたこと以外、実施例1と同様の方法により、ポリイミド配線板を製造した。
【0079】
還元工程後の試料表面における金属薄膜4の被覆率を調べた。SEMによる表面観察像を行ったところ、金属薄膜4の被覆率は20%であった。またその断面をSEMにより断面観察したところ、金属薄膜4の厚さは62nmであった。イミド基板とCu薄膜層とのピール強度は(9〜10N/cm)を示した。高温処理(150℃、196時間保持)後の密着強度低下は、約15%であった。ピール試験後の破断面は、Cu薄膜とポリイミド基板の界面であった。
【0080】
[実施例4]
本実施例では、第1の酸溶液処理工程の処理時間を2秒としたこと以外、実施例1と同様の方法により、ポリイミド配線板を製造した。
【0081】
還元工程後の試料表面における金属薄膜4の被覆率を調べた。SEMによる表面観察像を行ったところ、金属薄膜4の被覆率は80%であった。またその断面をSEMにより断面観察したところ、金属薄膜4の厚さは144nmであった。
配線板についてピール試験を実施例1と同様の方法により実施した。ポリイミド基板とCu薄膜層とのピール強度は(10〜12N/cm)N/cmを示した。高温処理(150℃、196時間保持)後の密着強度低下は、約10%であった。ピール試験後の破断面は、Cu薄膜とポリイミド基板の界面であった。
【0082】
[実施例5]
本実施例では、第1の酸溶液処理工程において25℃および1mol/lの塩酸水溶液を用いたこと、および処理時間を4秒としたこと以外、実施例1と同様の方法により、ポリイミド配線板を製造した。
【0083】
還元工程後の試料表面における金属薄膜4の被覆率を調べた。SEMによる表面観察像を行ったところ、金属薄膜4の被覆率は40%であった。またその断面をSEMにより断面観察したところ、金属薄膜4の厚さは112nmであった。
配線板についてピール試験を実施例1と同様の方法により実施した。ポリイミド基板とCu薄膜層とのピール強度は(10〜12N/cm)を示した。高温処理(150℃、196時間保持)後の密着強度低下は、約5%であった。ピール試験後の破断面は、Cu薄膜とポリイミド基板の界面であった。
【0084】
[実施例6]
本実施例では、第1の酸溶液処理工程において20℃および1mol/lのギ酸水溶液を用いたこと、および処理時間を8秒としたこと以外、実施例1と同様の方法により、ポリイミド配線板を製造した。
【0085】
還元工程後の試料表面における金属薄膜4の被覆率を調べた。SEMによる表面観察像を行ったところ、金属薄膜4の被覆率は30%であった。またその断面をSEMにより断面観察したところ、金属薄膜4の厚さは76nmであった。
配線板についてピール試験を実施例1と同様の方法により実施した。ポリイミド基板とCu薄膜層とのピール強度は10〜12N/cmを示した。高温処理(150℃、196時間保持)後の密着強度低下は、約5%であった。ピール試験後の破断面は、Cu薄膜とポリイミド基板の界面であった。
【0086】
[比較例1]
本比較例では、第1の酸溶液処理工程を行わなかったこと以外、実施例1と同様の方法により、ポリイミド配線板を製造した。
【0087】
還元工程後において試料表面における金属薄膜の被覆率を調べた。SEMによる表面観察像を図13に示す。図13から、金属薄膜は試料表面をほぼ完全に覆い尽くしていたことがわかった。金属薄膜の被覆率は98%であった。
【0088】
乾燥工程後において試料を真空装置から取り出し、試料表面を観察したところ、金属薄膜があるはずが、光沢のない青い膜しか見られなった。金属薄膜の被覆率が高すぎたので乾燥処理が十分に行われず、試料内部に水分が残存したため、改質層内部に存在するナノサイズの金属粒子がイオン化した後、水和されて水酸化Cuに変わってしまったのものと考えられる。
【0089】
増膜のための電解めっきは電流密度0.5A/dm2で行ったが、金属薄膜に十分な導電性がないため、増膜することができなかった。また、試料表面の金属イオンを塩化鉄水溶液でエッチング除去した後、旧改質層表面をFTIR分析したところ、1647cm−1付近に表れる開環アミド(C=O)吸収ピーク、1538cm−1付近に表れる開環アミド(N−H)吸収ピークは未処理のポリイミド比べて明らかに大きかったので、熱処理により再イミド化が十分に行われなかったことがわかった。
【0090】
<実験例2>
第1の酸溶液処理工程における処理時間と、還元工程後に得られる金属薄膜の被覆率および厚さとの間の関係を実験的に明らかにし、図9に示した。詳しくは、第1の酸溶液処理工程における処理時間を所定の値に設定したこと以外、実施例1と同様の方法により、改質工程、金属イオン吸着工程、第1の酸溶液処理工程および還元工程を実施し、その結果を図9に示した。
【0091】
図9から処理時間の増加と共に金属薄膜の試料表面における被覆率は減少していたので、第1の酸溶液処理工程の効果が得られていることわかる。図9から金属薄膜が試料表面を96%以上覆い尽くさないようにするためには処理時間を0.5秒間以上行う必要がある。また、図9から金属薄膜の厚さが60nmよりも少なくなると、配線形成工程において増膜を実施できなくなる。これは金属薄膜が電解めっき浴に溶出してしまい、シード層としての役割を果たせなくなるからである。増膜を行うことが可能であった金属薄膜の厚さが60nmの時、処理時間は10秒であった。よって工程(3)にて述べた処理時間は、クエン酸溶液を0.2M、溶液温度25℃で用いた場合、0.5〜10秒としなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明はフレキシブル配線板の製造に利用可能であり、片面フレキシブル配線板、両面フレキシブル配線板を複数枚積層した多層フレキシブル配線板や、ガラスエポキシ基板などの硬質基板とも合わせて積層したリジッド−フレキシブル配線板の製造などにも広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明によるポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法の一例の工程フロー図。
【図2】本発明に用いたポリイミド樹脂の概略断面模式図。
【図3】本発明によるポリイミド樹脂の表面改質後の概略断面模式図。
【図4】本発明によるポリイミド樹脂への金属イオン吸着後の概略断面模式図。
【図5】本発明によるポリイミド樹脂への第1酸溶液処理後の概略断面模式図。
【図6】本発明によるポリイミド樹脂への還元処理後の概略断面模式図。
【図7】本発明によるポリイミド樹脂への再イミド化処理後の概略断面模式図。
【図8】本発明によるポリイミド樹脂への配線形成処理後の概略断面模式図。
【図9】第1の酸溶液処理工程における処理時間と、金属薄膜の被覆率および厚さとの関係を示すグラフ。
【図10】実施例1における金属薄膜析出後の試料表面のSEM像。
【図11】実施例1で作製したポリイミド配線板の断面SEM写真。
【図12】実施例2における金属薄膜析出後の試料表面のSEM像。
【図13】比較例1における金属薄膜析出後の試料表面のSEM像。
【符号の説明】
【0094】
1:ポリイミド樹脂、2:改質層、3:金属イオンを吸着した改質層、4:金属薄膜、5:導体層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法、該方法によって製造された金属薄膜、ならびにポリイミド配線板の製造方法および該方法によって製造されたポリイミド配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などの携帯情報機器に代表される電子機器は、小形化および軽量化が要求されている。この要求に伴って、電子機器に搭載されるプリント配線板として、可撓性を有するフレキシブルプリント配線板(FPC:Flexible Printed Circuit)や、ガラスエポキシ基板などの硬質基板とFPCとを組み合わせたリジット−フレキシブル配線板などの使用量が増加している。FPCの基板材料としては、耐熱性、電気絶縁性、機械的強度に優れるポリイミド基板が広く用いられている。
【0003】
ポリイミド基板を用いたFPCへの配線形成方法としては、従来、基板材料の表面全体に接着剤を介して貼り付けた金属膜を、エッチングにより除去してパターニングするサブトラクティブ法が用いられている。しかしながら、プリント配線板の高密度化に伴い、より微細な配線パターンが要求されているため、オーバーエッチングの発生や、接着剤の密着性が弱いという問題があるサブトラクティブ法に替わる配線形成方法が検討されている。
【0004】
その手法の一つとして、ダイレクトメタライゼーション法を利用したセミアディティブ法がある。このダイレクトメタライゼーション法を用いると、金属薄膜とポリイミドにナノスケールでアンカリングすることにより密着性を改善することができる。全体のプロセスは、ポリイミド基板表面に金属薄膜を形成し、その金属薄膜を給電層として電解Cuめっきを行なって作製した銅張2層基板を用いて、フレキシブルプリント配線板を作製する(例えば、特許文献1)。
【0005】
ダイレクトメタライゼーション法の詳細プロセスは、まず、KOHやNaOHなどのアルカリ性溶液にポリイミド基板を浸漬し、ポリイミド基板表面を加水分解して、改質層を形成する。この改質層は、イミド環が開環したことによって、カルボキシル基を有するポリアミック酸、あるいはポリアミック酸塩の構造を有する。次に、ポリイミド基板を金属イオン含有溶液に浸漬して、カルボキシル基に金属イオンを配位させて金属塩を形成する。そして、この金属塩を還元して金属薄膜を得る。そのようなダイレクトメタライゼーション法で形成された金属薄膜をシード層として、セミアディティブ法により配線パターンを形成する。
【0006】
しかしながら、上記の方法には、以下に示すような問題点があった。
ダイレクトメタライゼーション法では、改質層表層部に存在するポリアミック酸塩を還元剤溶液に浸漬して、金属粒子として析出させるため、金属粒子の析出は改質層表面付近からスタートする。そして、還元剤溶液が改質層内部に浸透していくと共に、深さ方向に金属粒子の析出が進んでいき、最終的に数百nmの金属薄膜になる。このとき、金属薄膜を析出させた後の構造は還元速度に大きく依存し、還元速度が遅い場合には、還元剤が改質層深部に到達するまでの時間を長くとれるので、析出厚さの厚い膜を形成することができる。その結果、金属粒子とポリイミドの絡み合う表面積が大きくなり、高い密着性の配線板にすることができる。その反面、核生成よりも核成長が優勢となるため、金属粒子サイズのばらつきが大きくなり、不均一なサイズの粒子間にある改質されたポリイミドに過度の応力がかかり、ひび割れが生じてしまう。このようなひび割れは改質層をその後の工程で元のポリイミドに戻す処理(以下、再イミド化と称す)を行ったとしても、金属薄膜のポリイミドに対する密着強度を低下させてしまう。それを防止するためには、核成長よりも核生成を優勢にするために、還元速度の速い還元剤溶液を用いなければならない。
【0007】
ところが、逆に還元速度が速いと、改質層内部だけでなく、改質層の上部にも過剰に金属粒子の析出が進み、改質層上部を金属薄膜が覆い尽くしてしまう。その後の工程で改質層内の水分を除去する処理を行うが、そのような構造では改質層上部を覆い尽くしている金属薄膜がバリアとなり、真空乾燥や昇温を行っても水分除去を十分にできなくなる。その結果、改質層の分子構造であるポリアミック酸は水分が周辺に存在することによって酸としての特性を有するため、金属粒子がポリアミック酸に溶解してポリアミック酸金属塩となってしまう。ポリアミック酸ではなくポリアミック酸金属塩の状態では、ベーク処理を行っても改質層が再イミド化されないことはすでに公知である(特許文献1)。その結果、金属薄膜のポリイミドに対する十分な密着強度は得られなかった。
【特許文献1】特開2004−6584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は金属薄膜とポリイミド樹脂との間で十分な密着強度を示す金属薄膜、ポリイミド配線板およびそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は特に、還元速度が速い場合でも、金属薄膜が改質層上部を覆う面積を96%以下である構造にすることで、改質層が十分に再イミド化され、化学的に安定な旧改質層(改質層であった箇所)を有するポリイミド配線板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
第1のアルカリ性溶液によりポリイミド樹脂表面を処理してイミド環を開環し、改質層を形成する改質工程;
金属イオン含有溶液により該改質層を処理する金属イオン吸着工程;
酸溶液により該改質層を処理する第1の酸溶液処理工程;および
還元溶液により該改質層を処理して、改質層に吸着した金属イオンを還元して、金属薄膜を析出させる還元工程;
を含むことを特徴とするポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法、および該方法によって製造された金属薄膜に関する。
【0011】
本発明はまた、
上記金属薄膜の製造方法を実施した後に、
配線パターンを形成する配線形成工程
を実施することを特徴とするポリイミド配線板の製造方法、および該方法によって製造されたポリイミド配線板に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基礎技術にダイレクトメタライゼーション法を採用した結果、ポリイミドと金属薄膜とがナノレベルで噛み合った構造が実現できるため、密着性が優れたポリイミド配線板を高い生産性および信頼性で得ることができる。
また本発明の製造方法では、金属イオン還元工程を終えた段階で改質層上部を金属薄膜が96%以下覆った構造にすることで、改質層内部の水分が蒸発しやすい状態になり、上記課題を解決できる。その結果、改質層が十分に再イミド化され、化学的に安定な旧改質層を有するポリイミド配線板およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明のポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法は、いわゆる直接めっき法(ダイレクトメタライゼーション)を用いている。
【0014】
本発明のポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法は、詳しくは、
(1)第1のアルカリ性溶液によりポリイミド樹脂表面を処理してイミド環を開環し、改質層を形成する改質工程;
(2)金属イオン含有溶液により該改質層を処理して、改質層に該金属イオンを吸着させる金属イオン吸着工程;
(3)酸溶液により該改質層を処理して、改質層に吸着させた金属イオンのうち最表部の金属イオンを除去する第1の酸溶液処理工程;および
(4)還元溶液により該改質層を処理して、改質層に吸着した金属イオンを還元して、金属薄膜を析出させる還元工程;
を含むことを特徴とする。
【0015】
以下、本発明を図1〜図8を参照して説明する。図1は、本発明に係るポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法の製造工程を示すフロー図の一例であり、図2〜図8は、製造工程を説明するためのポリイミド樹脂(基板)の概略断面図の一例である。
【0016】
(1)改質工程
本発明において、直接めっき法を用いるに際し、金属薄膜製造のためにポリイミド樹脂表面を開環処理する必要がある。詳しくは図2に示すようなポリイミド樹脂1を第1のアルカリ性溶液に浸漬することで、図3に示すように表面に改質層2を形成し、水洗する。この工程により、ポリイミド樹脂表面におけるポリイミド分子のイミド環が加水分解によって開環し、カルボキシル基が生成すると同時に、カルボキシル基の水素イオンが第1のアルカリ性溶液中の金属イオンと置換され、改質層が形成される。例えば、化学式(1)で表されるポリイミドがKOH水溶液で処理される場合、加水分解による開環によって生成したカルボキシル基にカリウムイオンが吸着し、化学式(2)で表される構造を有するようになる。
【0017】
【化1】
【0018】
ポリイミド樹脂の構造は特に制限されるものではなく、例えば、上記化学式(1)で表されるような、ピロメリット酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させて製造されたポリイミド樹脂が使用可能である。
【0019】
ポリイミド樹脂の形態は特に制限されず、可撓性を有するフィルム状のものから剛性を有するボード状のものまで、いかなるポリイミド樹脂も使用可能であるが、フレキシブル配線板を製造する観点からは、厚み10〜200μmの可撓性を有するフィルム状のものが好ましく使用される。ポリイミド基板を用いる場合、市販のものを使用することができ、例えば、アピカル(R)(カネカ製)、カプトン(R)(東レデュポン製)、ユーピレックス(R)(宇部興産製)等として入手可能である。
【0020】
第1のアルカリ性溶液はポリイミドのイミド環を開環できる限り特に制限されるものではなく、例えば、K、Na等のアルカリ金属の水酸化物を含有する水溶液、Mg、Ca等のアルカリ土類金属の水酸化物を含有する水溶液等が使用可能である。第1のアルカリ性溶液に含有され、本工程で水素イオンと置換する金属イオンを以下、金属イオンAと呼ぶものとする。
【0021】
本工程に用いられる第1のアルカリ性溶液は通常は、濃度が0.1〜10M(mol/l)、溶液温度が20〜70℃であり、処理時間は1分〜2時間である。好ましくは、溶液温度は30〜50℃、処理時間は3〜7分である。処理温度が高すぎるとポリイミドの主鎖が切れる可能性があり、処理時間が長すぎると改質層の厚さが厚くなりポリイミド基板全体の強度低下のため、プロセス継続が困難になる可能性がある。
【0022】
改質層2の厚さはその後の工程で得られる金属薄膜の厚さと相関がある。さらに後の工程で増膜を行うのに必要な金属薄膜の厚さを得る観点からは、改質層の厚さは1〜5μmが好ましい。
【0023】
水洗は、ポリイミド樹脂表面に付着した第1のアルカリ性溶液を除去するために行う。従って、流水による水洗が望ましい。通常は、1〜5L/minの水量で、5分以上の水洗を行う。
【0024】
(2)金属イオン吸着工程
本工程では、金属イオン含有溶液により前記改質層2を処理して、図4に示すように、該溶液に含有される金属イオンを改質層に吸着させる。詳しくは、改質層2を有するポリイミド樹脂を、金属イオン含有溶液に浸漬して、改質層中の金属イオンAを、当該金属イオン含有溶液中の金属イオンと置換させ、水洗する。図4中、3が金属イオンを吸着した改質層である。
【0025】
金属イオン含有溶液中に含まれる金属イオンは後述の工程で還元されて金属薄膜として析出するものである。用いることができる金属イオンの種類は、樹脂の種類によって決定される。ポリイミド樹脂は弱酸性カチオン交換樹脂に分類され、この樹脂の場合、あらゆる金属イオンを吸着可能である。後述の配線形成工程の電解めっき処理でCuを増膜する観点からは、例えば、Niイオン、Cuイオン、およびそれらの組み合わせを用いることが好ましい。そのような金属イオンを含有する溶液として、具体的には、例えば、NiSO4水溶液、CuSO4水溶液、NiCl2水溶液、およびそれらの混合液などが使用可能である。金属イオン含有溶液に含有され、本工程で金属イオンAと置換する金属イオンを以下、金属イオンBと呼ぶものとする。
【0026】
本工程に用いられる金属イオン含有溶液は通常は、濃度が0.01〜0.1M(mol/l)、処理温度が20〜30℃であり、処理時間は5分以上である。特に本工程での処理時間は、工程(1)における改質処理の条件により適宜設定される。例えば、ポリイミド改質層の厚さが約3μmの場合、少なくとも3分間吸着処理を行えば十分である。
【0027】
水洗は、ポリイミド樹脂表面に付着した金属イオン含有溶液を除去するために行う。水洗は通常、1〜5L/minの水量で、5分以上の条件で行う。
【0028】
(3)第1の酸溶液処理工程
本工程では、酸溶液により該改質層を処理して、改質層に吸着させた金属イオンのうち最表部の金属イオンBを除去する。詳しくは、金属イオンBを吸着した改質層3を有するポリイミド樹脂を、酸溶液に浸漬して、改質層3の最表部中の金属イオンBを、当該酸溶液中の水素イオンと置換させ、水洗する。酸溶液処理は浸漬によって達成されてもよいが、後述の処理時間を確保できる限り特に制限されず、例えば、噴霧処理等であってもよい。図5中、2が金属イオンBを水素イオンに置換させて得られた最表部の改質層2である。以下、最表部の改質層2を抵抗層ということがある。
【0029】
本工程を経た後、後述の還元工程を行うことによって、改質層表面に析出する金属薄膜の被覆率を96%以下、特に20%以上96%以下、好ましくは60%以上80%以下とする。これによって、その後の乾燥工程において改質層内部の水分が蒸発し易くなるので、改質層が十分に再イミド化され、金属薄膜とポリイミド樹脂との密着強度が向上する。化学的に安定な再イミド化層を有するポリイミド配線板およびその製造方法を提供することができる。本工程を行わない場合、還元工程によって改質層内部だけでなく改質層の上部にも過剰に金属の析出が進むので、改質層表面の96%を超えて金属薄膜が覆い尽くしてしまう。そのため、その後に乾燥工程を行っても、当該金属薄膜がバリアとなり、水分除去が難しくなる。したがって、乾燥工程で、改質層内部において、残存水分によりナノサイズの金属粒子が再イオン化する。その結果、後述の配線形成工程で行うめっき処理工程により増膜を行うことができなくなる。たとえ、めっき処理により増膜できたとしても、金属イオンの存在により再イミド化が阻害され、金属薄膜の密着強度が低下する。一方、金属薄膜の被覆率が小さすぎると、後述の配線形成工程で行うめっき処理工程により増膜を行うことができない。
【0030】
後述の還元工程において析出する金属薄膜は金属粒子の集合体により構成されている。本来、金属粒子の析出は、改質層内部の金属イオンBが改質層表面へ拡散していく過程で還元されることにより進行する。改質層最表部の金属イオンBは、改質層表面までの距離が近いので、改質層表面で析出されやすい。これに対して、改質層深部にある金属イオンBは、改質層表面までの距離が遠いので、改質層の内部で還元されやすい。本工程では、ポリイミド樹脂最表層部に吸着した金属イオンBは除去されるので、還元工程において金属粒子の析出は改質層内部で優先的に起こる。その結果、金属薄膜はポリイミド樹脂表面において上記被覆率を達成できる。
【0031】
金属薄膜の被覆率(占有率)は以下の方法によって測定された値を用いている。
金属薄膜表面の6万倍のFE−SEM観察写真(例えば、図10)を10枚ランダムに取得し、金属薄膜4の占有面積を測定した。当該写真における金属薄膜および改質層の総占有面積に対する金属薄膜の占有面積の割合を算出し、被覆率とした。
【0032】
第1の酸溶液処理工程で使用される酸溶液は溶液中、水素イオンが存在するものであれば特に制限されず、例えば、硫酸水溶液、塩酸水溶液、硝酸水溶液、リン酸水溶液、ギ酸水溶液、クエン酸水溶液等が使用できる。ただし、硫酸や硝酸、塩酸などの酸溶液を用いる場合は、酸としての性質が強いので、比較的低い濃度で用いることが望まれる。
【0033】
例えば、金属イオンBが銅イオンのとき、クエン酸、リン酸、ギ酸等が好ましく使用される。
また例えば、金属イオンBがニッケルイオンのとき、クエン酸、リン酸、硫酸)等が好ましく使用される。
【0034】
本工程の処理条件、例えば、使用される酸溶液の種類、濃度、温度および酸溶液とポリイミド樹脂との接触時間(処理時間)等は、還元工程後において上記金属薄膜の被覆率が達成される限り特に制限されない。
例えば、クエン酸水溶液を使用する場合、溶液濃度は0.02〜1M、溶液温度は10〜70℃、処理時間は0.5〜10秒が好適である。特にクエン酸水溶液を濃度0.2M、温度25℃の条件で用いる場合、処理時間は0.5〜10秒であれば、それ以降の工程を実施する上で好ましい。
また例えば、硫酸水溶液を用いる場合、溶液濃度は0.01〜10vol%、溶液温度は10〜50℃、処理時間は0.1〜10秒が好適である。
また例えば、塩酸水溶液を用いる場合、溶液濃度は0.1〜5M、溶液温度は10〜50℃、処理時間は0.1〜5秒が好適である。
また例えば、硝酸水溶液を用いる場合、溶液濃度は0.1〜5M、溶液温度は10〜50℃、処理時間は0.1〜3秒が好適である。
また例えば、リン酸水溶液を用いる場合、溶液濃度は0.1〜10M、溶液温度は15〜50℃、処理時間は0.1〜10秒が好適である。
また例えば、ギ酸水溶液を用いる場合、溶液濃度は0.1〜10M、溶液温度は15〜50℃、処理時間は0.1〜10秒が好適である。
【0035】
本工程において酸溶液は撹拌しながら使用してもよいが、撹拌することなく使用することが好ましい。攪拌することで、金属薄膜付近のCuイオンの濃度勾配が大きくなることが理由で、金属薄膜の溶解速度が速まるからである。
【0036】
本工程の処理条件のうち、例えば処理時間は、本工程の他の条件および還元工程の処理条件を固定し、金属薄膜の被覆率と本工程における酸溶液による処理時間との関係を示すグラフを作成することによって、容易に決定できる。例えば、図9(縦軸は左側)はそのようなグラフの一例である。図9より酸溶液による処理時間を長く設定するほど、金属薄膜の被覆率は低下することが明らかである。図9において、被覆率96%以下を達成する処理時間は0.5秒以上であり、被覆率20%以上を達成する処理時間は10秒以下である。
【0037】
水洗は、ポリイミド樹脂表面に付着した酸溶液を除去するために行う。酸溶液は酸性であるため、そのまま次工程に持ち込むと還元剤のpHの変動をもたらす原因となる。水洗は通常、0〜5L/minの流速で、1〜10秒の条件で行う。ここでいう流速は、試料との相対的な速度を意味しているのではなく、溶液自体の攪拌速度のことである。試料の溶液への投入にかかる時間は少なくとも0.1〜1秒の間で終えるものとする。ここでいう、流量0L/minとは攪拌されていない溶液に、試料を単に浸漬処理するという意味である。
【0038】
(4)還元工程
本工程では、還元溶液により前記改質層2、3を処理して、改質層に吸着した金属イオンを還元させる。詳しくは、最表部に金属イオンBをほとんど含有しない改質層を有するポリイミド樹脂を還元溶液に浸漬する。これによって、改質層の深部に含有される金属イオンBは改質層表面へ拡散していく過程で還元され、図6に示すように、改質層表面で金属粒子が析出し、金属薄膜4が形成される。
【0039】
還元溶液は、金属イオンBとの接触によって当該金属イオンBを還元できる液体であれば特に制限されず、一般的な無電解めっきで使用される還元剤の水溶液が使用可能である。具体的には、例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、ジメチルアミンボランDMAB、トリメチルアミンボラン等のホウ素化合物の水溶液や、次亜リン酸ナトリウムの水溶液などが使用可能である。そのような還元溶液の中でも、比較的、還元速度の速い水素化ホウ素ナトリウムを用いるのがもっとも望ましい。金属粒子の析出に伴うポリイミド基板に生じる応力は微細な金属粒子であった方が周囲に均一に分散され、そのような微細な金属粒子の析出には、還元速度が比較的速い還元溶液が好適なためである。そのような還元溶液は核成長反応よりも核生成反応が優勢となる傾向が強い。
【0040】
例えば、水素化ホウ素ナトリウムを単独で使用する場合、溶液温度は5℃〜30℃、特に10〜30℃が好適である。還元溶液の濃度は0.0002mol/L〜0.01mol/L、望ましくは0.001mol/L〜0.005mol/Lが好適である。処理時間は0.5〜30分間、特に5〜20分間が好適である。
また例えば、ジメチルアミンボランを単独で使用する場合、溶液温度は30〜70℃、特に40〜60℃が好適である。還元溶液の濃度は0.05〜5mol/L、望ましくは0.5〜1mol/Lが好適である。処理時間は1〜30分間、特に5〜15分間が好適である。
【0041】
また例えば、トリメチルアミンボランを単独で使用する場合、溶液温度は30〜70℃、特に40〜60℃が好適である。還元溶液の濃度は0.05〜5mol/L、望ましくは0.5〜1mol/Lが好適である。処理時間は1〜30分間、特に5〜15分間が好適である。
また例えば、次亜リン酸ナトリウムを単独で使用する場合、溶液温度は10〜30℃、特に15〜25℃が好適である。還元溶液の濃度は0.05〜5mol/L、望ましくは0.5〜1mol/Lが好適である。処理時間は1〜30分間、特に5〜15分間が好適である。
【0042】
溶液温度が低すぎると、還元反応において金属の核生成反応よりも核成長反応が優勢となり、金属薄膜の被覆率が大きくなり過ぎる。温度が高すぎると、改質層が剥がれてしまう原因となりやすい。濃度が低すぎたり、処理時間が短すぎると、すべてのCuイオンを還元することができず、金属薄膜の電気伝導率を十分確保できないので、後工程である配線形成工程の中の電解めっき工程を実施できなくなる。濃度が高すぎると、還元速度が速すぎて、金属粒子の析出が試料表面で優先的に起こるので、ポリイミドと金属薄膜がナノレベルで密着したような構造にすることができない。したがって、この場合は、低い密着度のポリイミド配線板になってしまう。また、処理時間が長すぎる場合は、ポリイミド改質層にダメージを与えてしまい、還元処理時に金属薄膜が剥がれてしまう。
【0043】
還元溶液は、還元剤を単独の種類だけでなく、複数の種類で混合して使用しても良い。
例えば、水素化ホウ素ナトリウムをDMABなど他の還元剤と用いる場合は、水素化ホウ素ナトリウム単独で用いる場合よりも、金属薄膜の被覆率は少なくなる傾向にある。そのような場合において、還元溶液は温度20〜60℃で使用可能である。還元剤の濃度について、水素化ホウ素ナトリウムとジメチルアミンボランのそれぞれの濃度は、0.0002〜0.01mol/L、0.05〜5mol/Lであれば使用可能である。処理時間は0.5〜30分間、特に5〜15分間が好適である。
【0044】
還元溶液には、必要に応じてpH調整剤や錯化剤等の添加剤を添加しても良い。
そのような添加剤としては、従来より一般的な無電解めっきで使用される還元溶液に添加され得る添加剤が使用可能である。
【0045】
本工程で析出する金属薄膜の厚みは、前記した被覆率が達成される限り特に制限されるものではなく、通常は60〜196nm、特に112〜144nmである。
【0046】
金属イオンが還元されるのに伴い、金属イオンが吸着されていた改質層の分子構造はポリアミック酸Cu塩からCuイオンが引き離されて、ポリアミック酸になる。
【0047】
還元処理後は通常、ポリイミド樹脂表面に付着した還元溶液を除去するために水洗を行う。水洗は、0〜5L/minの水量で、5分以上の条件で行う。
【0048】
本発明において、還元工程の後、通常は、
(5)第2のアルカリ性溶液により該改質層を処理して、還元工程後の改質層の内部に残留する金属イオンを水酸化物イオンとの反応物として析出させる工程;
(6)酸溶液により該改質層を処理して、前記反応物を改質層から除去する第2の酸溶液処理工程;
(7)該改質層中の水分を除去する乾燥工程;および
(8)イミド環を閉環する再イミド化工程
を実施する。還元工程(4)において、改質層中の金属イオンBは全てが還元されるわけではなく、改質層には金属イオンBが残存するので、アルカリ性溶液処理工程(5)および第2の酸溶液処理工程(6)を行うことによって、再イミド化率を大幅に改善できる。本発明においては、アルカリ性溶液処理工程(5)を必ずしも行わなければならないというわけではなく、還元工程(4)の後、順次、第2の酸溶液処理工程(6)および再イミド化工程(7)を実施してもよい。
【0049】
(5)アルカリ性溶液処理工程
次に、水洗が終了したポリイミド基板を第2のアルカリ性溶液に浸漬する。本工程を行う目的は、改質層内に残存する金属イオンを、第2のアルカリ性溶液内に存在する水酸化物イオンとの反応物として析出させることにある。この工程により、ポリイミド改質層内に残存する金属イオンはすべて金属酸化物となる。この場合、金属イオンの種類がCuイオン、Niイオンのどちらでも、金属酸化物を析出させることができる。
【0050】
本工程で用いる第2のアルカリ性溶液としては、水酸化物イオンが生成するものが使用でき、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を含有するアルカリ性水溶液が使用される。具体的には、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液等が挙げられる。第2のアルカリ性溶液は、金属イオンBとの組み合わせについて、特に制限はなく、上記したアルカリ性水溶液であればよい。
【0051】
第2のアルカリ性溶液の濃度は、工程(2)でポリイミド中に吸着された金属イオンの量に対して同程度の量の水酸化物イオンを含んでいればよく、例えば、0.01mol/L〜2mol/L、望ましくは0.5mol/L〜1mol/Lである。処理時間は、1分〜30分、望ましくは3分〜10分である。処理温度は、10℃〜40℃、望ましくは20℃〜30℃である。温度が高すぎると、ポリイミド改質層がさらに改質され、ポリイミド樹脂と金属薄膜との密着強度低下につながる恐れがある。温度が低すぎると、酸化物を析出させる反応が起こらず、金属イオンが改質層内に残存してしまう。また、本工程で用いる溶液に、酸化防止剤、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム等を添加しても良い。
【0052】
水洗は、ポリイミド樹脂表面に付着した第2のアルカリ性溶液を除去するために行う。水洗は通常、0〜5L/minの水量で、5分以上の条件で行う。
【0053】
(6)第2の酸溶液処理工程
次に、水洗が終了したポリイミド基板を酸溶液に浸漬する。本工程を行う目的は、工程(5)で析出した金属酸化物を酸溶液にて溶出させ、改質層内から金属酸化物を除去することである。
【0054】
第2の酸溶液処理工程で使用される酸溶液は、第1の酸溶液処理工程で使用される酸溶液であり、かつ金属薄膜を溶かしにくいものが望まれる。好ましい具体例として、例えば、硫酸水溶液、硝酸水溶液、クエン酸水溶液等が使用できる。
【0055】
例えば、銅薄膜が析出した場合、クエン酸、硫酸等が好ましく使用される。
また例えば、ニッケル薄膜が析出した場合、硝酸、クエン酸等が好ましく使用される。
【0056】
酸溶液の濃度は、例えば、0.1mol/L〜1.0mol/L、望ましくは0.2mol/L〜0.5mol/Lである。処理時間は1分〜15分、望ましくは2分〜10分である。処理温度は、10℃〜40℃、望ましくは20℃〜30℃である。
【0057】
水洗は、ポリイミド樹脂表面に付着した酸溶液を除去するために行う。水洗は通常、0〜5L/minの水量で、5分以上の条件で行う。
【0058】
(7)乾燥工程
次に、水洗が終了したポリイミド樹脂を乾燥させる。改質層内部に存在する水分は、改質層表面に存在する金属薄膜の隙間を通して有効に除去できる。乾燥方法としては、真空乾燥や加熱乾燥などの方法を用いることできる。どのような乾燥方法を採用した場合であっても、金属薄膜の被覆率は前記範囲内であるので、乾燥を有効に達成できる。その結果、改質層内部の水分除去が十分になされ、工程(8)で実施する熱処理で再イミド化が十分に達成される。
【0059】
本工程を例えば、熱処理により行った場合、温度が80〜140℃、望ましくは、100℃〜120℃、時間は30〜60分である。得られた金属薄膜の酸化防止のため、窒素ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気、真空雰囲気で加熱処理することが望ましい。
また例えば、真空雰囲気で乾燥を行う場合は、真空度を500HPa以下に保った状態で、60分以上行う。
【0060】
(8)再イミド化工程
本工程ではイミド環を閉環する。詳しくは、前工程で得られたポリイミド樹脂を加熱することで、改質層が再イミド化される(再イミド化ベーク処理)。これによって、図7に示すように、機械的強度、耐熱性、耐薬品性に劣る改質層を、元のポリイミド分子構造に戻すことができる。
【0061】
処理条件は、改質層の再イミド化を達成できる限り特に制限されず、例えば、温度が250℃以上、時間は1時間以上である。得られた金属薄膜の酸化防止のため、窒素ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気、真空雰囲気で加熱処理することが望ましい。
【0062】
以上に示した本発明のポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法は、ポリイミド配線板、特にフレキシブル配線板の製造方法に適用可能である。
(9)配線形成工程
上記した本発明に係るポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法によって得られた金属薄膜を有するポリイミド樹脂に対して、例えば、いわゆるサブトラクティブ法またはアディティブ法等によって図8に示すような配線パターン5を形成すればよい(配線形成工程)。
【0063】
詳しくはサブトラクティブ法においては、例えば、本発明で得られた金属薄膜を有するポリイミド樹脂に対して、所望により電解/無電解めっき等により導体層5をさらに形成し、配線領域にレジストパターンを形成した後、金属膜の露出部(非配線領域)をエッチング除去し、レジストパターンを除去すればよい。
【0064】
アディティブ法においては、例えば、本発明で得られた金属薄膜を有するポリイミド樹脂に対して非配線領域にレジストパターンを形成し、金属薄膜の露出部(配線領域)に電解/無電解めっき等により導体層5を形成した後、レジストパターンを除去し、さらに導体層をマスクとして金属薄膜の露出部をエッチング除去すればよい。
【実施例】
【0065】
本発明によるポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法について、実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
<実験例1>
[実施例1]
以下に説明する工程により、ポリイミド基板表面へCu薄膜を形成した。
ポリイミド基板には、125μm厚のポリイミドフィルムを用いた。ポリイミドフィルムとしては、東レ・デュポン社のカプトンHを使用した(図2)。
まず、ポリイミド基板を50℃のKOH水溶液に3分間浸漬し、改質工程を実施した。この際、KOH水溶液は、5M(mol/l)の濃度に設定した。この工程により、ポリイミド基板1の両面には、ポリイミド分子中のイミド環の加水分解により、カルボキシル基にカリウムイオンが配位したカルボン酸カリウム塩が形成された改質層2が形成される(図3)。改質層2の厚さは、ポリイミド基板1の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察することにより、約3μmであることが判った。次に、ポリイミド基板1を、2リットル/分の流水で5分間、水洗した。
【0067】
次に、ポリイミド基板1について、Cuイオン吸着のための処理を実施した。Cuイオン吸着には、硫酸銅水溶液を用いた。処理条件は、濃度が0.05M(mol/l)、温度は25℃、浸漬処理時間は10分である。なお、溶液は攪拌している。この処理により改質層2はCuイオン付改質層3に変わる(図4)。次に、ポリイミド基板の水洗を行った。水洗は、2リットル/分の流水で5分間実施した。
【0068】
次に、ポリイミド基板1について、第1の酸溶液処理工程を実施した。溶液にはスターラー撹拌下のクエン酸水溶液を用いた。処理条件は、濃度が0.2M(mol/l)、温度は25℃、浸漬処理時間は0.5秒間であった。この処理により、Cuイオン付改質層3の最表層のCuイオンが取り除かれ、最表層は改質層2に戻る(図5)。次に、ポリイミド基板の水洗を行った。水洗は、2リットル/分の流水で1秒間(図5)実施した。
【0069】
次に、ポリイミド基板1について、還元処理を行った。還元溶液は、水素化ホウ素ナトリウム水溶液であり、濃度は0.001M(mol/l)、pHは9.2、温度は25℃、浸漬処理時間は30分とした。なお、還元溶液は攪拌を行っている。この処理により、Cuイオンは還元され、改質層2の最表部に金属薄膜4が形成された(図6)。次に、ポリイミド基板を水素化ホウ素ナトリウム還元溶液から取り出し、水洗処理を行った。水洗は、2リットル/分の流水で5分間実施した。
試料表面における金属薄膜4の被覆率(占有比率)を調べた。SEMによる表面観察像を図10に示す。金属薄膜4の被覆率は96%であった。またその断面をSEMにより断面観察したところ、金属薄膜4の厚さは192nmであった。
【0070】
次に、ポリイミド基板1について、アルカリ性溶液処理を行った。アルカリ性溶液は、水酸化ナトリウム水溶液であり、濃度は1mol/L、温度は25℃、浸漬処理時間は3分とした。次に、ポリイミド基板1について、水洗を行った。水洗は、2リットル/分の流水で30分間実施した。
【0071】
次に、ポリイミド基板1について、第2の酸溶液処理工程を行った。酸溶液は、クエン酸水溶液であり、濃度は0.2mol/L、温度は25℃、浸漬処理時間は7分とした。次に、ポリイミド基板1について、水洗を行った。水洗は、2リットル/分の流水で5分間実施した。
【0072】
次に、ポリイミド基板について、乾燥処理を行った。乾燥処理は、まず、窒素ブローによりポリイミド基板表面に付着した水分を除去した。次に、真空(10hPa)雰囲気中で、温度は25℃、時間は3時間の乾燥処理を実施した。
【0073】
次に、ポリイミド基板について、再イミド化処理を行った。再イミド化処理は、窒素ガス雰囲気中で、300℃、1時間実施した(図7)。
【0074】
最後に電解めっきによる増膜、レジスト形成、電解/無電解めっきによる金属配線層形成、レジスト除去、エッチングを行い、配線パターニング処理を行った。その結果、配線部以外の金属薄膜4は取り除かれ、また金属薄膜4および導体層5よりなる配線が形成された(図8)。
【0075】
このようにして作製したポリイミド配線板の断面をSEMにより観察した像を図11に示す。析出したCu薄膜(金属薄膜)は、ポリイミドの深さ方向に150nmの厚さで層を形成している。
さらに、Cu薄膜とポリイミド基板の密着強度を測定するために、配線板についてピール試験を実施した。ピール試験は、JISC6471に規定されている90°引き剥がし試験方法により行った。試験機は、一般的な引張試験機を用いた。詳しくはポリイミドフィルムの裏面を、市販のエポキシ系接着剤を用いて金属板に貼り付け、その金属板をピール試験治具に取り付けた。一部だけ引き剥がした銅パターンと、引っ張り試験機のロードセルと接続した。この後、引っ張り試験を行い、ピール強度を測定した。
ピール強度は、10〜12N/cmを示した。さらに、高温処理(150℃、196時間保持)後の密着強度低下は、約10%であった。ピール試験後の破断面は、Cu薄膜とポリイミド基板の界面であった。改質されていたポリイミド基板部で破断を起こしていないことから、再イミド化処理を行うことにより、ポリイミド基板の機械強度を保ちつつ、ポリイミド基板とCu薄膜層の密着強度を高くすることができた。
【0076】
[実施例2]
本実施例では、以下の処理条件により還元工程を実施したこと以外、実施例1と同様の方法により、ポリイミド配線板を製造した。
還元剤にジメチルアミンボランを用い、濃度は0.5mol/l、pHは8.9、温度は50℃、処理時間は12分とした。そのような条件以外は実施例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0077】
還元工程後の試料表面における金属薄膜4の被覆率を調べた。SEMによる表面観察像を図12に示す。金属薄膜4の被覆率は85%であった。またその断面をSEMにより断面観察したところ、金属薄膜4の厚さは約156nmであった。
配線板についてピール試験を実施例1と同様の方法により実施した。ポリイミド基板とCu薄膜層とのピール強度は12〜14N/cmを示した。高温処理(150℃、196時間保持)後の密着強度低下は、約5%であった。ピール試験後の破断面は、Cu薄膜とポリイミド基板の界面であった。
【0078】
[実施例3]
本実施例では、第1の酸溶液処理工程の処理時間を10秒としたこと以外、実施例1と同様の方法により、ポリイミド配線板を製造した。
【0079】
還元工程後の試料表面における金属薄膜4の被覆率を調べた。SEMによる表面観察像を行ったところ、金属薄膜4の被覆率は20%であった。またその断面をSEMにより断面観察したところ、金属薄膜4の厚さは62nmであった。イミド基板とCu薄膜層とのピール強度は(9〜10N/cm)を示した。高温処理(150℃、196時間保持)後の密着強度低下は、約15%であった。ピール試験後の破断面は、Cu薄膜とポリイミド基板の界面であった。
【0080】
[実施例4]
本実施例では、第1の酸溶液処理工程の処理時間を2秒としたこと以外、実施例1と同様の方法により、ポリイミド配線板を製造した。
【0081】
還元工程後の試料表面における金属薄膜4の被覆率を調べた。SEMによる表面観察像を行ったところ、金属薄膜4の被覆率は80%であった。またその断面をSEMにより断面観察したところ、金属薄膜4の厚さは144nmであった。
配線板についてピール試験を実施例1と同様の方法により実施した。ポリイミド基板とCu薄膜層とのピール強度は(10〜12N/cm)N/cmを示した。高温処理(150℃、196時間保持)後の密着強度低下は、約10%であった。ピール試験後の破断面は、Cu薄膜とポリイミド基板の界面であった。
【0082】
[実施例5]
本実施例では、第1の酸溶液処理工程において25℃および1mol/lの塩酸水溶液を用いたこと、および処理時間を4秒としたこと以外、実施例1と同様の方法により、ポリイミド配線板を製造した。
【0083】
還元工程後の試料表面における金属薄膜4の被覆率を調べた。SEMによる表面観察像を行ったところ、金属薄膜4の被覆率は40%であった。またその断面をSEMにより断面観察したところ、金属薄膜4の厚さは112nmであった。
配線板についてピール試験を実施例1と同様の方法により実施した。ポリイミド基板とCu薄膜層とのピール強度は(10〜12N/cm)を示した。高温処理(150℃、196時間保持)後の密着強度低下は、約5%であった。ピール試験後の破断面は、Cu薄膜とポリイミド基板の界面であった。
【0084】
[実施例6]
本実施例では、第1の酸溶液処理工程において20℃および1mol/lのギ酸水溶液を用いたこと、および処理時間を8秒としたこと以外、実施例1と同様の方法により、ポリイミド配線板を製造した。
【0085】
還元工程後の試料表面における金属薄膜4の被覆率を調べた。SEMによる表面観察像を行ったところ、金属薄膜4の被覆率は30%であった。またその断面をSEMにより断面観察したところ、金属薄膜4の厚さは76nmであった。
配線板についてピール試験を実施例1と同様の方法により実施した。ポリイミド基板とCu薄膜層とのピール強度は10〜12N/cmを示した。高温処理(150℃、196時間保持)後の密着強度低下は、約5%であった。ピール試験後の破断面は、Cu薄膜とポリイミド基板の界面であった。
【0086】
[比較例1]
本比較例では、第1の酸溶液処理工程を行わなかったこと以外、実施例1と同様の方法により、ポリイミド配線板を製造した。
【0087】
還元工程後において試料表面における金属薄膜の被覆率を調べた。SEMによる表面観察像を図13に示す。図13から、金属薄膜は試料表面をほぼ完全に覆い尽くしていたことがわかった。金属薄膜の被覆率は98%であった。
【0088】
乾燥工程後において試料を真空装置から取り出し、試料表面を観察したところ、金属薄膜があるはずが、光沢のない青い膜しか見られなった。金属薄膜の被覆率が高すぎたので乾燥処理が十分に行われず、試料内部に水分が残存したため、改質層内部に存在するナノサイズの金属粒子がイオン化した後、水和されて水酸化Cuに変わってしまったのものと考えられる。
【0089】
増膜のための電解めっきは電流密度0.5A/dm2で行ったが、金属薄膜に十分な導電性がないため、増膜することができなかった。また、試料表面の金属イオンを塩化鉄水溶液でエッチング除去した後、旧改質層表面をFTIR分析したところ、1647cm−1付近に表れる開環アミド(C=O)吸収ピーク、1538cm−1付近に表れる開環アミド(N−H)吸収ピークは未処理のポリイミド比べて明らかに大きかったので、熱処理により再イミド化が十分に行われなかったことがわかった。
【0090】
<実験例2>
第1の酸溶液処理工程における処理時間と、還元工程後に得られる金属薄膜の被覆率および厚さとの間の関係を実験的に明らかにし、図9に示した。詳しくは、第1の酸溶液処理工程における処理時間を所定の値に設定したこと以外、実施例1と同様の方法により、改質工程、金属イオン吸着工程、第1の酸溶液処理工程および還元工程を実施し、その結果を図9に示した。
【0091】
図9から処理時間の増加と共に金属薄膜の試料表面における被覆率は減少していたので、第1の酸溶液処理工程の効果が得られていることわかる。図9から金属薄膜が試料表面を96%以上覆い尽くさないようにするためには処理時間を0.5秒間以上行う必要がある。また、図9から金属薄膜の厚さが60nmよりも少なくなると、配線形成工程において増膜を実施できなくなる。これは金属薄膜が電解めっき浴に溶出してしまい、シード層としての役割を果たせなくなるからである。増膜を行うことが可能であった金属薄膜の厚さが60nmの時、処理時間は10秒であった。よって工程(3)にて述べた処理時間は、クエン酸溶液を0.2M、溶液温度25℃で用いた場合、0.5〜10秒としなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明はフレキシブル配線板の製造に利用可能であり、片面フレキシブル配線板、両面フレキシブル配線板を複数枚積層した多層フレキシブル配線板や、ガラスエポキシ基板などの硬質基板とも合わせて積層したリジッド−フレキシブル配線板の製造などにも広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明によるポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法の一例の工程フロー図。
【図2】本発明に用いたポリイミド樹脂の概略断面模式図。
【図3】本発明によるポリイミド樹脂の表面改質後の概略断面模式図。
【図4】本発明によるポリイミド樹脂への金属イオン吸着後の概略断面模式図。
【図5】本発明によるポリイミド樹脂への第1酸溶液処理後の概略断面模式図。
【図6】本発明によるポリイミド樹脂への還元処理後の概略断面模式図。
【図7】本発明によるポリイミド樹脂への再イミド化処理後の概略断面模式図。
【図8】本発明によるポリイミド樹脂への配線形成処理後の概略断面模式図。
【図9】第1の酸溶液処理工程における処理時間と、金属薄膜の被覆率および厚さとの関係を示すグラフ。
【図10】実施例1における金属薄膜析出後の試料表面のSEM像。
【図11】実施例1で作製したポリイミド配線板の断面SEM写真。
【図12】実施例2における金属薄膜析出後の試料表面のSEM像。
【図13】比較例1における金属薄膜析出後の試料表面のSEM像。
【符号の説明】
【0094】
1:ポリイミド樹脂、2:改質層、3:金属イオンを吸着した改質層、4:金属薄膜、5:導体層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のアルカリ性溶液によりポリイミド樹脂表面を処理してイミド環を開環し、改質層を形成する改質工程;
金属イオン含有溶液により該改質層を処理する金属イオン吸着工程;
酸溶液により該改質層を処理する第1の酸溶液処理工程;および
還元溶液により該改質層を処理して、改質層に吸着した金属イオンを還元し、金属薄膜を析出させる還元工程;
を含むことを特徴とするポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法。
【請求項2】
改質層表面に析出する金属薄膜の被覆率が96%以下である請求項1に記載の金属薄膜の製造方法。
【請求項3】
還元工程の後に、
第2のアルカリ性溶液により該改質層を処理する工程;
酸溶液により該改質層を処理する第2の酸溶液処理工程;
該改質層中の水分を除去する乾燥工程;および
イミド環を閉環する再イミド化工程;
を実施することを特徴とする請求項1または2に記載の金属薄膜の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の金属薄膜の製造方法によって製造された金属薄膜。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の金属薄膜の製造方法を実施した後に、
配線パターンを形成する配線形成工程
を実施することを特徴とするポリイミド配線板の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のポリイミド配線板の製造方法によって製造されたポリイミド配線板。
【請求項1】
第1のアルカリ性溶液によりポリイミド樹脂表面を処理してイミド環を開環し、改質層を形成する改質工程;
金属イオン含有溶液により該改質層を処理する金属イオン吸着工程;
酸溶液により該改質層を処理する第1の酸溶液処理工程;および
還元溶液により該改質層を処理して、改質層に吸着した金属イオンを還元し、金属薄膜を析出させる還元工程;
を含むことを特徴とするポリイミド樹脂表面への金属薄膜の製造方法。
【請求項2】
改質層表面に析出する金属薄膜の被覆率が96%以下である請求項1に記載の金属薄膜の製造方法。
【請求項3】
還元工程の後に、
第2のアルカリ性溶液により該改質層を処理する工程;
酸溶液により該改質層を処理する第2の酸溶液処理工程;
該改質層中の水分を除去する乾燥工程;および
イミド環を閉環する再イミド化工程;
を実施することを特徴とする請求項1または2に記載の金属薄膜の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の金属薄膜の製造方法によって製造された金属薄膜。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の金属薄膜の製造方法を実施した後に、
配線パターンを形成する配線形成工程
を実施することを特徴とするポリイミド配線板の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のポリイミド配線板の製造方法によって製造されたポリイミド配線板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−76740(P2009−76740A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245261(P2007−245261)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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