説明

ポリイミド樹脂

【課題】光透過性及び耐熱性が高いポリイミドフィルムを提供する。
【解決手段】下記式(1)で表わされる、重量平均分子量5000以上のポリアミック酸。式中、R〜Rは、それぞれハロゲン原子、水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルコキシ基、カルボキシ基、又は置換もしくは無置換の炭素数2〜11のアルコキシカルボニル基である。m、nはそれぞれ0以上の繰り返し単位数を表す。Xはカルボン酸残基であり、Adは置換又は無置換のアダマンチル基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミック酸、それから得られるポリイミド及びそれからなるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、高い機械的強度、耐熱性、絶縁性、耐溶剤性を有しているため、液晶表示素子や半導体における保護材料、絶縁材料、カラーフィルタ等の電子材料用薄膜として広く用いられている。
しかし、従来の全芳香族ポリイミド樹脂は、濃い琥珀色を呈して着色するため、高い透明性が要求される電子デバイス分野の厚膜においては問題が生じる。特許文献1は、ポリイミドフィルムの光透過性を改善し、特許文献2は、レジスト用途においてポリイミドの耐熱性及び低誘電率を改善している。
しかし、さらに液晶ディスプレイやLED分野等においては、該用途に適したプロセスが適用でき、優れた光透過性を有し、耐熱性に優れるポリイミドが求められていた。
【0003】
アダマンタンは、シクロヘキサン環が4個、カゴ形に縮合した構造を有し、対称性が高く、安定な化合物であって、その誘導体は特異な機能を示すことから、例えば医薬品原料や高機能性工業材料の原料等として有用である。
具体的には、光ディスク基板、光ファイバー又はレンズ等に用いる試みがなされている(例えば、特許文献3,4)。また、アダマンタンエステル類は、フォトレジスト用樹脂原料として用いる試みがなされている(例えば、特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−100698号公報
【特許文献2】国際公開第2007/111168号パンフレット
【特許文献3】特開平6−305044号公報
【特許文献4】特開平9−302077号公報
【特許文献5】特開平4−39665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、光透過性及び耐熱性が高いポリイミドフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下のポリアミック酸等が提供される。
1.下記式(1)で表わされる、重量平均分子量5000以上のポリアミック酸。
【化1】

式中、R〜Rは、それぞれハロゲン原子、水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルコキシ基、カルボキシ基、又は置換もしくは無置換の炭素数2〜11のアルコキシカルボニル基である。
aは0〜2の整数、b及びcはそれぞれ0〜4の整数、dは0〜14の整数である。a〜dが2以上の場合、複数のR〜Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
m、nはそれぞれ0以上の繰り返し単位数を表す。
Xは、カルボン酸残基であり、Adは、置換又は無置換のアダマンチル基である。
2.下記式(i)及び(ii)で表わされるジアミン化合物、及びテトラカルボン酸化合物を重合反応させて得られる重量平均分子量5000以上のポリアミック酸。
【化2】

式中、R〜Rは、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルコキシ基、カルボキシ基、又は置換もしくは無置換の炭素数2〜11のアルコキシカルボニル基である。
aは0〜2の整数、b及びcはそれぞれ0〜4の整数、dは0〜14の整数である。a〜dが2以上の場合、複数のR〜Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
Adは、置換又は無置換のアダマンチル基である。
3.1又は2に記載のポリアミック酸から得られるポリイミド。
4.下記式(2)で表わされる、重量平均分子量が5000以上のポリイミド。
【化3】

式中、R〜Rは、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルコキシ基、カルボキシ基、又は置換もしくは無置換の炭素数2〜11のアルコキシカルボニル基である。
aは0〜2の整数、b及びcはそれぞれ0〜4の整数、dは0〜14の整数である。a〜dが2以上の場合、複数のR〜Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
m、nはそれぞれ0以上の繰り返し単位数を表す。
Xは、カルボン酸残基であり、Adは、置換又は無置換のアダマンチル基である。
5.3又は4に記載のポリイミドからなるフィルム。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光透過性及び耐熱性が高いポリイミドフィルムが提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のポリアミック酸は下記式(1)で表わされ、重量平均分子量が5000以上である。
【化4】

式中、R〜Rは、それぞれハロゲン原子、水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルコキシ基、カルボキシ基、又は置換もしくは無置換の炭素数2〜11のアルコキシカルボニル基である。
aは0〜2の整数、b及びcはそれぞれ0〜4の整数、dは0〜14の整数である。a〜dが2以上の場合、複数のR〜Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0009】
m、nはそれぞれ0以上の繰り返し単位数を表す。本発明のポリアミック酸はmに係る繰り返し単位のみからなってもよく、又はnに係る繰り返し単位からのみなってもよく、m及びnに係る繰り返し単位の共重合体(ポリアミック酸)であってもよい。
Xはカルボン酸残基であり、Adは、置換又は無置換のアダマンチル基である。
【0010】
は、好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルコキシ基である。
及びRは、好ましくはそれぞれ置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルコキシ基である。
は、好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基である。
【0011】
aは好ましくは0〜1、より好ましくは0である。b,cは好ましくは0〜2、より好ましくは0である。dは好ましくは0〜8、より好ましくは0〜1である。
【0012】
Xとしては、ポリイミドの合成に通常用いられるテトラカルボン酸化合物から、4つのカルボキシ基、これらの無水物構造又はこれらのハロゲン化物構造を除いた構造が挙げられる。
Xは、芳香族構造又は脂環式構造が望ましい。該芳香族構造を構成する芳香族環としては、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、芳香族環が4個以上の多環式芳香族環、及びこれらが結合した芳香族環等が挙げられ、好ましくは、溶媒への溶解性の観点からベンゼン又はナフタレンである。
【0013】
該脂環式構造を構成する脂環式化合物としては、例えばシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ノルボルネン及びアダマンタン等が挙げられ、好ましくは、溶媒への溶解性の観点からシクロヘキサン又はシクロヘプタンである。
【0014】
テトラカルボン酸化合物の具体例としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3,4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸等の脂環式テトラカルボン酸、及びこれらの二無水物並びにこれらのジカルボン酸ジ酸ハロゲン化物等が挙げられる。
【0015】
また、ピロメリット酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸、1,2,5,6−アントラセンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン、2,3,4,5−ピリジンテトラカルボン酸、2,6−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ピリジン等の芳香族テトラカルボン酸及びこれらの酸二無水物、並びにこれらのジカルボン酸ジ酸ハロゲン化物等も挙げられる。尚、これらのテトラカルボン酸化合物は、1種単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
【0016】
Adのアダマンチル基の置換基としては、上記R〜Rと同じ基が挙げられ、好ましくは水素、メチル基又はケトン基である。
【0017】
本発明のポリアミック酸の重量平均分子量は5000以上であり、好ましくは7000以上であり、通常30000以下である。重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定する。
平均分子量がこの範囲であると、塗布溶媒への溶解性がよい。また、重合時の原料濃度を調整することにより、平均分子量を調整することができる。
【0018】
本発明のポリアミック酸は、上記のテトラカルボン酸化合物(好ましくは二無水物)、及び以下の式(i)及び(ii)で表わされるジアミン化合物を重縮合して製造することができる。
【化5】

式中、R〜R、a〜d、Adは式(1)と同じである。
【0019】
重縮合反応の温度は、通常−20〜150℃、好ましくは−5〜100℃の任意の温度を選択することができる。
本発明のポリアミック酸の合成に用いられる溶媒としては、例えば、m−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらは、単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、ポリアミック酸を溶解しない溶媒であっても、均一な溶液が得られる範囲内で上記溶媒に加えて使用してもよい。
【0020】
式(i)のジアミン化合物は、対応する下記式(10)で表わされるニトロ化合物であるアダマンタン誘導体を還元処理して製造することができる。
【化6】

式中、R〜R、a〜c、Adは式(1)と同じである。
【0021】
還元処理については特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができるが、式(10)で表わされるニトロ化合物を溶媒中、還元触媒の存在下で水素ガス等の還元剤により還元する方法を好ましく採用することができる。
還元触媒としては、例えばパラジウム/カーボン(Pd/C)触媒や、ニッケルや白金等の金属触媒をアルミナ、シリカ、ゼオライト、ZSM−5、MCM−41等の担体に担持させたもの等を用いることができる。
【0022】
還元剤としては、通常水素ガスが用いられる。還元処理の反応条件として、反応温度は通常−78〜100℃、好ましくは0℃〜室温であり、反応圧力は通常0.1〜10MPa、好ましくは常圧、反応時間は通常1〜48時間、好ましくは10〜30時間である。
反応温度が低すぎる場合、反応の進行が遅いため長時間を必要とし、反応温度が高すぎる場合、過水添反応等の副反応が進行するおそれがある。また、圧力が10MPa超であると特殊な反応容器を必要とするため好ましくない。このように反応温度、反応圧力を設定することで、上記の時間内で反応を完結することができる。
【0023】
原料濃度としては特に制限はなく、飽和溶解度以下であればよく、通常0.1〜2.0モル/リットルである。0.1モル/リットル未満では生産性が低く非効率的になるおそれがあり、2.0モル/リットル超では、反応時の温度上昇が激しく反応の制御が困難になるおそれがある。
【0024】
式(10)で表わされるニトロ化合物は、対応する式(20)で表されるアダマンタン誘導体、及び式(21)及び/又は式(22)で表されるニトロベンゼン誘導体を、溶媒中アルカリ存在下で反応させて製造することができる。
【化7】

式中、R〜R、a〜c、Adは式(1)と同じである。Yはハロゲン原子を示し、好ましくは臭素原子である。
【0025】
アルカリは特に制限されず、有機、無機いずれも使用することができる。例えば、ナトリウムアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ピリジン、N、N−ジメチルアニリン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、燐酸カリウム、酸化銀、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド等が挙げられる。
【0026】
原料濃度は特に制限はないが、飽和溶解度以下であればよく、通常0.1〜2.0モル/リットルである。
反応温度は通常0〜250℃であり、望ましくは50〜200℃である。温度が低すぎる場合、反応速度が低下し反応時間が長くなる場合がある。温度が高すぎる場合、副反応が増加するおそれがある。
圧力は絶対圧力で通常0.01〜10MPaであり、望ましくは常圧〜1MPaである。圧力が高すぎる場合は、特別な装置が必要となり経済的でない。
反応時間は通常1〜24時間であり、望ましくは2〜12時間である。
【0027】
本発明のポリイミドは、下記式(2)で表わされ、上記本発明のポリアミック酸を加熱により脱水閉環(熱イミド化)することで得ることができる。
【化8】

式中、R〜R、a〜d、X、Adは式(1)と同じである。
【0028】
加熱による方法は、通常100〜300℃、好ましくは120〜250℃の任意の温度で行うことができる。尚、この際、ポリアミック酸を溶媒中でイミドに転化させ、溶剤可溶性のポリイミドとして用いることも可能である。
また、公知の脱水閉環触媒を使用して化学的に閉環する方法も採用することができる。化学的に閉環する方法は、例えば、ピリジンやトリエチルアミン等と、無水酢酸等との存在下で行うことができ、この際の温度は、−20〜200℃の任意の温度を選択することができる。
【0029】
このようにして得られたポリイミド溶液は、そのまま使用することもでき、また、メタノール、エタノール等の貧溶媒を加えて沈殿させ、これを単離したポリイミドを粉末として、あるいはそのポリイミド粉末を適当な溶媒に再溶解させて使用することができる。
再溶解用溶媒は、得られたポリイミドを溶解させるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、m−クレゾール、2−ピロリドン、NMP、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、DMAc、DMF、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0030】
また、単独ではポリイミドを溶解しない溶媒であっても、溶解性を損なわない範囲であれば上記溶媒に加えて使用することができる。その具体例としては、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル等が挙げられる。
【0031】
本発明のポリイミドフィルムは、本発明のポリアミック酸溶液やこれを化学イミド化した後再沈殿させて得られたポリイミドの有機溶媒溶液を、ガラス板等の基材上に塗布し、溶媒を蒸発させることにより作製することができる。
その際、1〜1000Paの減圧下で、50〜100℃で1〜5時間予備焼成した後、100℃超〜160℃で1〜5時間、次いで160℃超〜200℃で1〜5時間、さらに200℃超〜300℃で1〜5時間焼成する多段階昇温法を採用することにより、着色が少なく均一な表面平滑性の高いポリイミドフィルムを作製することができる。
【実施例】
【0032】
実施例1
下記のようにポリアミック酸及びポリイミドを調製した。
【化9】

25℃に設置した攪拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、2,4−ビス(1−アダマンチル)−1,5−ビス(4−アミノフェニルオキシ)ベンゼン3.93g(7mmol)をDMF10.9gに溶解させた。その溶液を攪拌しつDMF10.9gに溶解させたピロメリット酸無水物1.53g(7mmol)を徐々に添加した。さらに、26℃で24時間攪拌して重合反応を行い、固形分20質量%のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸の重量平均分子量は19000であった。
【0033】
この溶液を100mm×100mmのガラス板上に流延した後、減圧乾燥機に入れ、減圧下、80℃/2時間、140℃/2時間、200℃/2時間、及び240℃/2時間の段階的焼成を行った。得られたフィルムの赤外吸収スペクトルから1705.48cm−1(5員環イミド)を確認し、イミド化率を算出したところ、100%であった。
得られたフィルムは、着色が少なく高い透明性及び優れた光沢を有するとともに、平滑性のあるものであった。また、諸物性値は以下の通りであった。
膜厚:130μm
光透過率(光波長:400nm):87%
5%重量減少温度:377℃
10%重量減少温度:390℃
【0034】
尚、重量減少温度は以下のようにして測定した。
硬化した試料をアルミ容器に5mg入れ、示差熱熱質量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、TG/DAT6000)を用い、窒素雰囲気下、25℃から600℃まで、5℃/分で昇温させることにより得られた質量変化曲線にて質量が5%及び10%減少した時の温度を求めた。重量減少温度が高いと耐熱性に優れたものとなる。
【0035】
実施例2
下記のようにポリアミック酸及びポリイミドを調製した。
【化10】

25℃に設置した攪拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、ジアミノアダマンタン1.16g(7mmol)をDMF5.38gに溶解させた。その溶液を攪拌しつDMF5.38gに溶解させたピロメリット酸無水物1.53g(7mmol)を徐々に添加した。さらに、26℃で24時間攪拌して重合反応を行い、固形分20質量%のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸の重量平均分子量は15000であった。
【0036】
この溶液を100mm×100mmのガラス板上に流延した後、減圧乾燥機に入れ、減圧下、80℃/2時間、140℃/2時間、200℃/2時間、及び240℃/2時間の段階的焼成を行った。得られたフィルムの赤外吸収スペクトルから1705.48cm−1(5員環イミド)を確認し、イミド化率を算出したところ、100%であった。
得られたフィルムは、着色が少なく高い透明性及び優れた光沢を有するとともに、平滑性のあるものであった。また、諸物性値は以下の通りであった。
膜厚:115μm
光透過率(光波長:400nm):89%
5%重量減少温度:385℃
10%重量減少温度:397℃
【0037】
以上の諸物性値から、本発明のポリアミック酸は、屈折率が高く、透明性及び耐熱性に優れたイミド化重合体を製造する原料として有用である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のポリアミック酸は半導体素子の層間絶縁膜、保護膜、多層配線基板の層間絶縁膜、フレキシブル配線板のカバーコート、液晶配向膜、液晶シール剤、カラーレジスト、ソルダーレジスト、厚膜レジスト等に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表わされる、重量平均分子量5000以上のポリアミック酸。
【化11】

式中、R〜Rは、それぞれハロゲン原子、水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルコキシ基、カルボキシ基、又は置換もしくは無置換の炭素数2〜11のアルコキシカルボニル基である。
aは0〜2の整数、b及びcはそれぞれ0〜4の整数、dは0〜14の整数である。a〜dが2以上の場合、複数のR〜Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
m、nはそれぞれ0以上の繰り返し単位数を表す。
Xは、カルボン酸残基であり、Adは、置換又は無置換のアダマンチル基である。
【請求項2】
下記式(i)及び(ii)で表わされるジアミン化合物、及びテトラカルボン酸化合物を重合反応させて得られる重量平均分子量5000以上のポリアミック酸。
【化12】

式中、R〜Rは、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルコキシ基、カルボキシ基、又は置換もしくは無置換の炭素数2〜11のアルコキシカルボニル基である。
aは0〜2の整数、b及びcはそれぞれ0〜4の整数、dは0〜14の整数である。a〜dが2以上の場合、複数のR〜Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
Adは、置換又は無置換のアダマンチル基である。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリアミック酸から得られるポリイミド。
【請求項4】
下記式(2)で表わされる、重量平均分子量が5000以上のポリイミド。
【化13】

式中、R〜Rは、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルコキシ基、カルボキシ基、又は置換もしくは無置換の炭素数2〜11のアルコキシカルボニル基である。
aは0〜2の整数、b及びcはそれぞれ0〜4の整数、dは0〜14の整数である。a〜dが2以上の場合、複数のR〜Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
m、nはそれぞれ0以上の繰り返し単位数を表す。
Xは、カルボン酸残基であり、Adは、置換又は無置換のアダマンチル基である。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のポリイミドからなるフィルム。

【公開番号】特開2012−158711(P2012−158711A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20821(P2011−20821)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】