説明

ポリイミド複合フレキシブルシートおよびその製造方法

【課題】ポリイミド前駆体である複数種のポリアミド酸を用い、これらを金属箔上に塗布し、該ポリアミド酸を環化することで、接着性が良く、耐熱性の高い、かつ、サイズ安定性にも優れ、ハロゲンとリンを含有しないフレキシブルシートおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】金属箔2、ガラス転移温度が280〜330℃である第1ポリイミドフィルム3、およびガラス転移温度が190〜280℃である第2ポリイミドフィルム4が、この順序で積層され、さらに前記第2ポリイミドフィルムの上に、ガラス転移温度が190〜280℃である第2ポリイミドフィルム、ガラス転移温度が280〜330℃である第1ポリイミドフィルム、および金属箔が、この順序で積層されてなり、かつ、前記第1ポリイミドフィルムのガラス転移温度が前記第2ポリイミドフィルムのガラス転移温度よりも高いポリイミド複合フレキシブルシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂複合フレキシブルシートの製造方法および該方法により製造されるポリイミド複合フレキシブルシートに関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリイミドフィルムは、耐高温性、優れた化学特性、高絶縁性および優異な機械強度など優れた特性を有するので、多くの技術分野において広く使用されている。例えば、芳香族ポリイミドフィルムは、連続式芳香族ポリイミドフィルム/金属フィルムの複合シートとして、フレキシブルプリント配線板(FPC)の製造に使用され、自動粘着テープのキャリヤーテープ(TAB)およびリードオンチップ(lead-on-chip)(LOC)テープなどに用いられ、特に、フレキシブルプリント配線板はすでにノート型コンピューター、消費型電子製品、携帯電話などの通信設備材料として広く利用されている。
【0003】
プリント配線板の製造中、すでに多くの耐熱性プラスチックフィルム(例えば、芳香族ポリイミドフィルム)が金属箔との積層に使用されている。金属箔との積層に際し、現在多くの周知の芳香族ポリイミドフィルムは、通常、熱硬化性接着剤を用いて、芳香族ポリイミドフィルムと金属箔とを積層させている。その方法としては、主にエポキシ樹脂やアクリル酸系樹脂などを熱硬化性接着剤として用い、これをポリイミドフィルムの両面に塗装し、次に、オーブン中で溶剤を除去し、接着剤をBステージ(即ち、熱硬化性樹脂の中間反応段階)に保ち、更に、加熱圧合方法により金属箔をフィルムの上下両面に張り合わせ、最後にオーブン中高温下で熱硬化させ、Cステージ(即ち、熱硬化性樹脂の最終反応段階)を経て、フレキシブル両面配線板を製造する方法が採用されている。
【0004】
しかし、熱硬化性接着剤の耐熱性は、通常、不足しがちであり、多くは、高くとも200℃以下でしかその接着性を保つことができない。そのため、多くの周知の接着剤は、高温処理を必要とする複合フィルムの製作には用いることができず、例えば、溶接を必要とする場合や高温下で使用されるプリント配線フレキシブルシートなどには用いることができない。利用上必要とされる耐熱性と難燃性を獲得するために、現在、熱硬化性樹脂としてハロゲン含有の難燃剤と臭素含有樹脂やハロゲンフリーの含リン系樹脂などが使用されている。しかし、ハロゲン含有の熱硬化性樹脂は焼却の際、ダイオキシンなどの有毒ガスを生じ、環境を汚染する問題がある。また、熱硬化性樹脂接着剤を介して貼り合わせたフレキシブルシートは、膨張係数が高く、耐熱性不良で、サイズ安定性も悪いなど欠点が多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、熱硬化性接着剤を介してフレキシブルシートを製造する場合の上記欠点に鑑みて、ポリイミド前駆体である複数種のポリアミド酸を用い、これらを金属箔上に塗布し、次いで高温下圧合し、該ポリアミド酸を環化することで、接着性が良く、耐熱性の高い、かつ、サイズ安定性にも優れ、ハロゲンとリンを含有しないフレキシブルシート、およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のポリイミド複合フレキシブルシートは、金属箔、ガラス転移温度が280〜330℃である第1ポリイミドフィルム、およびガラス転移温度が190〜280℃である第2ポリイミドフィルムが、この順序で積層され、
さらに前記第2ポリイミドフィルムの上に、ガラス転移温度が190〜280℃である
第2ポリイミドフィルム、ガラス転移温度が280〜330℃である第1ポリイミドフィルム、および金属箔が、この順序で積層されてなり、
かつ、前記第1ポリイミドフィルムのガラス転移温度が前記第2ポリイミドフィルムのガラス転移温度よりも高いことを特徴としている。
【0007】
また、前記第1ポリイミドフィルムの総厚さ、および前記第2ポリイミドフィルムの総厚さが、それぞれ下記の条件を満たすことが望ましい。
【0008】
【数1】

本発明のポリイミド複合フレキシブルシートの製造方法は、下記の工程からなり、かつ、第1ポリアミド酸樹脂の環化後のガラス転移温度が第2ポリアミド酸樹脂の環化後のガラス転移温度よりも高いことを特徴としている。
【0009】
(a)環化後のガラス転移温度が280〜330℃である第1ポリアミド酸樹脂を金属箔上に均一に塗布した後、オーブン中において90〜140℃に加熱し、次いで150〜200℃に加熱して溶剤を除去することにより、第1ポリアミド酸樹脂層が形成された金属箔を得る工程。
【0010】
(b)工程(a)で得られた金属箔をオーブン内から取り出し、環化後のガラス転移温度が190〜280℃である第2ポリイミド酸樹脂を該金属箔上に形成された第1ポリアミド酸樹脂層上に塗布した後、オーブン中において90〜140℃に加熱し、次いで150〜200℃に加熱して溶剤を除去することにより、第2ポリアミド酸樹脂層が形成された金属箔を得る工程。
【0011】
(c)工程(b)で得られた金属箔を、窒素ガス雰囲気のオーブン中において、まず160〜190℃にて、次に190〜240℃にて、さらに270〜320℃にて、最後に330〜370℃にて加熱し、
該金属箔上に形成された第1ポリアミド酸樹脂層および第2ポリアミド酸樹脂層におけるポリアミド酸のポリイミド化反応を行うことにより、ポリイミドフィルムが形成された金属箔を得る工程。
【0012】
(d)工程(c)で得られた2つの金属箔を、互いにポリイミドフィルムが形成された面を向かい合わせた状態とし、圧着機械またはプレスロールを用いて、該金属箔を320〜370℃、10〜200kgfの圧力下で圧着して、ポリイミド複合フレキシブルシートを得る工程。
【0013】
また、前記第1ポリアミド酸樹脂および第2ポリアミド酸樹脂が、下記式(I)で表されるジアミン;
2N−R1−NH2 (I)
〔式(I)中、R1はフェニレン基、−Ph−X−Ph−基(Xは単結合、ハロゲン原子
で置換されてもよい炭素数1〜4のアルキレン基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、または−SO2−基を示す。)、炭素数2〜14の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜30
の脂環族炭化水素基、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、−Ph−O−R2−O−Ph
−基(R2はフェニレン基または−Ph−X−Ph−基を示し、かつ、Xは単結合、ハロ
ゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜4のアルキレン基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、または−SO2−基を示す。)を示す。〕;
と下記式(II)で表されるジカルボン酸無水物;
【0014】
【化1】

[式(II)中、Yは炭素数2〜12の脂肪族基、炭素数4〜8の脂環族基、炭素数6〜
14の単環または多環芳香族基、>Ph−X−Ph<基(Xは単結合、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜4のアルキレン基、−O−Ph−O−、−O−、−CO−、−S−、−SO−、または−SO2−基を示す。)を示す。]
との反応により得られるのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポリイミド複合フレキシブルシートによれば、接着剤を使用しなくとも、接着性に優れた機械的特性、高耐熱性およびサイズ安定性などを有するポリイミド複合フレキシブルシートを提供することができる。
【0016】
また、本発明のポリイミド複合フレキシブルシートの製造方法によれば、
まず銅箔などの金属箔上に、環化後のガラス転移温度(Tg)が高いポリアミド酸樹脂(a)を塗布することで、金属箔に高い接着性を付与した支持層を形成し、得られるポリイミド複合フレキシブルシートのガラス転移温度を高めることができる。
【0017】
さらに、ポリアミド酸樹脂(a)と比較して環化後のガラス転移温度が低く、かつ機械的性質と接着性に優れたポリアミド酸樹脂(b)を塗布することで、高温高圧下でポリイミド複合フレキシブルシートを作製することができる。
【0018】
このように、本発明によれば、熱硬化性樹脂を利用する際に熱膨張係数が増大するという従来からの問題を改善し、特に、樹脂の熱安定性とサイズ安定性を向上させたポリイミド複合フレキシブルシートおよびその製造方法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に本発明のポリイミド複合フレキシブルシートおよびその製造方法について具体的に説明する。
<本発明のポリイミド複合フレキシブルシート>
本発明のポリイミド複合フレキシブルシートの第一の態様は、金属箔、ガラス転移温度が280〜330℃である第1ポリイミドフィルム、およびガラス転移温度が190〜280℃である第2ポリイミドフィルムが、この順序で積層され、
さらに前記第2ポリイミドフィルムの上に、ガラス転移温度が190〜280℃である第2ポリイミドフィルム、ガラス転移温度が280〜330℃である第1ポリイミドフィルム、および金属箔が、この順序で積層されてなり、
かつ、前記第1ポリイミドフィルムのガラス転移温度が前記第2ポリイミドフィルムのガラス転移温度よりも高いことを特徴とする。
【0020】
すなわち、第一の態様のポリイミド複合フレキシブルシートの構造は、図1に示すよう
に、金属箔/第1ポリイミドフィルム/第2ポリイミドフィルム/第2ポリイミドフィルム/第1ポリイミドフィルム/金属箔となる。
【0021】
また、本発明のポリイミド複合フレキシブルシートの第二の態様は、金属箔、ガラス転移温度が280〜330℃である第1ポリイミドフィルム、ガラス転移温度が190〜280℃である第2ポリイミドフィルム、および金属箔が、この順序に積層されてなり、
かつ、前記第1ポリイミドフィルムのガラス転移温度が前記第2ポリイミドフィルムのガラス転移温度よりも高いことを特徴とする。
【0022】
すなわち、第二の態様のポリイミド複合フレキシブルシートの構造は、図2に示すように、金属箔/第1ポリイミドフィルム/第2ポリイミドフィルム/金属箔となる。
これら本発明のポリイミド複合フレキシブルシートにおける第1ポリイミドフィルムは、モノベンゼン環を有するジアミンモノマーと、モノベンゼン環を有するジカルボン酸無水物モノマーと、その他のジアミンモノマーおよびその他のジカルボン酸無水物モノマーとの反応により得られ、
前記ジアミンモノマー全量と、前記ジカルボン酸無水物モノマー全量とのモル比率が0.5〜2.0、好ましくは0.75〜1.25であり、
前記モノベンゼン環を有するジアミンモノマーと、前記その他のジアミンモノマーとのモル比が60/40〜20/80であり、
かつ、前記モノベンゼン環を有するジカルボン酸無水物モノマーと、前記その他のジカルボン酸無水物モノマーとのモル比が40/60〜20/80であるポリイミドから形成されるのが好ましい。
【0023】
また、これら本発明のポリイミド複合フレキシブルシートにおける第2ポリイミドフィルムは、少なくとも二つのベンゼン環を有するジアミンモノマーと、二つのベンゼン環を有するジカルボン酸無水物モノマーと、その他のジアミンモノマーおよびその他のジカルボン酸無水物モノマーとの反応により得られ、
前記ジアミンモノマー全量と、前記ジカルボン酸無水物モノマー全量とのモル比率が、0.5〜2.0、好ましくは0.75〜1.25であり、
前記少なくとも二つのベンゼン環を有するジアミンモノマーと、前記その他のジアミンモノマーとのモル比が、60/40〜100/0であるポリイミドから形成されるのが好ましい。
【0024】
本発明のポリイミド複合フレキシブルシートに用いられる金属箔の厚さは、得られるポリイミド複合フレキシブルシートの最終用途により決定され、特に制限は無いが、通常12〜70μmの厚さであるのが好ましい。また、金属箔の種類としては特に制限はないが、銅箔であるのが好ましい。
【0025】
本発明の第一の態様であるポリイミド複合フレキシブルシートの場合、第1ポリイミドフィルムの総厚さ、および第2ポリイミドフィルムの総厚さが、それぞれ下記の条件を満たすのが望ましい。なお、「第1ポリイミドフィルムの総厚さ」とは、第一の態様であるポリイミド複合フレキシブルシートに形成されたすべての第1ポリイミドフィルムの厚さを合計した値を意味し、「第2ポリイミドフィルムの総厚さ」とは、第一の態様であるポリイミド複合フレキシブルシートに形成されたすべての第2ポリイミドフィルムの厚さを合計した値を意味する。また、「ポリイミドフィルムの総厚さ」とは、第一の態様であるポリイミド複合フレキシブルシートに形成された、第1ポリイミドフィルムの総厚さと第2ポリイミドフィルムの総厚さとを合計した値、すなわち金属箔を除いたポリイミド複合フレキシブルシートの厚さを意味する。
【0026】
【数2】

本発明の第二の態様であるポリイミド複合フレキシブルシートの場合、第1ポリイミドフィルムの厚さ、および第2のポリイミドフィルムの厚さが、それぞれ下記の条件を満たすのが望ましい。なお、「ポリイミドフィルムの総厚さ」とは、第2の態様であるポリイミド複合フレキシブルシートに形成された、第1ポリイミドフィルムの厚さと第2ポリイミドフィルムの厚さとを合計した値、すなわち金属箔を除いたポリイミド複合フレキシブルシートの厚さを意味する。
【0027】
【数3】

<本発明のポリイミド複合フレキシブルシートの製造方法>
本発明の第一の態様であるポリイミド複合フレキシブルシートの製造方法は、以下に示す(a)〜(d)の工程からなり、かつ、第1ポリアミド酸樹脂の環化後のガラス転移温度が第2ポリアミド酸樹脂の環化後のガラス転移温度よりも高いことを特徴とする。
【0028】
(a)環化後のガラス転移温度が280〜330℃である第1ポリアミド酸樹脂を金属箔上に均一に塗布した後、オーブン中において90〜140℃に加熱し、次いで150〜200℃に加熱して溶剤を除去することにより、第1ポリアミド酸樹脂層が形成された金属箔を得る工程。
【0029】
(b)工程(a)で得られた金属箔をオーブン内から取り出し、環化後のガラス転移温度が190〜280℃である第2ポリイミド酸樹脂を該金属箔上に形成された第1ポリアミド酸樹脂層上に塗布した後、オーブン中において90〜140℃に加熱し、次いで150〜200℃に加熱して溶剤を除去することにより、第2ポリアミド酸樹脂層が形成された金属箔を得る工程。
【0030】
(c)工程(b)で得られた金属箔を、窒素ガス雰囲気のオーブン中において、まず160〜190℃にて、次に190〜240℃にて、さらに270〜320℃にて、最後に330〜370℃にて加熱し、
該金属箔上に形成された第1ポリアミド酸樹脂層および第2ポリアミド酸樹脂層におけるポリアミド酸のポリイミド化反応を行うことにより、ポリイミドフィルムが形成された金属箔を得る工程。
【0031】
(d)工程(c)で得られた2つの金属箔を、互いにポリイミドフィルムが形成された面を向かい合わせた状態とし、圧着機械またはプレスロールを用いて、該金属箔を320〜370℃、10〜200kgfの圧力下で圧着して、ポリイミド複合フレキシブルシートを得る工程。
【0032】
本発明の第二の態様であるポリイミド複合フレキシブルシートの製造方法は、以下に示す(a')〜(d')の工程からなり、かつ第1ポリアミド酸樹脂の環化後のガラス転移温度が第2ポリアミド酸樹脂の環化後のガラス転移温度よりも高いことを特徴とする。
【0033】
(a')環化後のガラス転移温度が280〜330℃である第1ポリアミド酸樹脂を金
属箔上に均一に塗布した後、オーブン中において90〜140℃に加熱し、次いで150〜200℃で加熱して溶剤を除去することにより、第1ポリアミド酸樹脂層が形成された金属箔を得る工程。
【0034】
(b’)工程(a’)で得られた金属箔をオーブン内から取り出し、環化後のガラス転移温度が190〜280℃である第2ポリイミド酸樹脂を該金属箔上に形成された第1ポリアミド酸樹脂塗層上に塗布した後、オーブン中において90〜140℃に加熱し、次いで150〜200℃に加熱して溶剤を除去することにより、第2ポリアミド酸樹脂層が形成された金属箔を得る工程。
【0035】
(c')工程(b’)で得られた金属箔を、窒素ガス雰囲気のオーブン中において、ま
ず160〜190℃にて、次に190〜240℃にて、さらに270〜320℃にて、最後に330〜370℃にて段階的に加熱し、
該金属箔上に形成された第1ポリアミド酸樹脂層および第2ポリアミド酸樹脂層におけるポリアミド酸のポリイミド化反応を行うことにより、ポリイミドフィルムが形成された金属箔を得る工程。
【0036】
(d')工程(c’)で得られた金属箔のポリイミドフィルムが形成された面と、他の
金属箔とを貼り合わせた状態とし、圧着機械またはプレスロールを用いて、該金属箔を320〜370℃、10〜200kgfの圧力下で圧着して、ポリイミド複合フレキシブルシートを得る工程。
【0037】
これら本発明のポリイミド複合フレキシブルシートの製造方法において用いられる第1ポリアミド酸樹脂および第2ポリアミド酸樹脂は、下記ジアミンと下記ジカルボン酸無水物との反応により得られるものであるのが望ましい。すなわち、下記ジアミンから誘導されるジアミンモノマーと、下記ジカルボン酸無水物から誘導されるジカルボン酸無水物モノマーとの反応によりポリアミド酸樹脂が得られ、該ポリアミド酸樹脂をポリイミド化(環化)させてポリイミドとすることによって、本発明のポリイミド複合フレキシブルシートが形成される。
【0038】
[ジアミン]
本発明に用いられるジアミンは、下記式(I)で表され、これからジアミンモノマーが誘導される。
【0039】
2N−R1−NH2 (I)
式(I)中、R1はフェニレン基、−Ph−X−Ph−基(Xは単結合、ハロゲン原子
で置換されてもよい炭素数1〜4のアルキレン基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、または−SO2−基を示す。)、炭素数2〜14の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜30
の脂環族炭化水素基、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、−Ph−O−R2−O−Ph
−基(R2はフェニレン基または−Ph−X−Ph−基を示し、かつ、Xは単結合、ハロ
ゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜4のアルキレン基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、または−SO2−基を示す。)を示す。
【0040】
第1ポリアミド酸樹脂を製造する際には、上記式(I)で表されるジアミンのうち、モノベンゼン環を有するジアミンと、その他のジアミンとを組み合わせ、これら2種以上の
ジアミンを用いる。このようなジアミンを選択することで、第1ポリアミド酸樹脂の環化後のガラス転移温度を第2ポリアミド酸樹脂の環化後のガラス転移温度よりも高くすることが可能となる。
【0041】
また、第2ポリアミド酸樹脂を製造する際には、上記式(I)で表されるジアミンのうち、少なくとも二つ以上のベンゼン環を有するジアミンと、その他のジアミンとを組み合わせ、これら2種以上のジアミンを用いる。このようなジアミンを選択することで、第2ポリアミド酸樹脂の環化後のガラス転移温度を第1ポリアミド酸樹脂の環化後のガラス転移温度よりも低くすることが可能となる。
【0042】
上記式(I)で表されるジアミンのうち、第1ポリアミド酸樹脂を製造する際に用いられるモノベンゼン環を有するジアミンとしては、具体的には、例えば、パラ−フェニレンジアミン(PDA)、4,4'−オキシジアニリン(ODA)が挙げられる。なかでも、
パラ−フェニルジアミン(PDA)が好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0043】
上記式(I)で表されるジアミンのうち、第2ポリアミド酸樹脂を製造する際に用いられる少なくとも二つ以上のベンゼン環を有するジアミンとしては、具体的には、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン(BAPS)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3'−ジヒドロキシビフェニル(BAPB)、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、1,1−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ブタン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4'−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(3−アミノ
フェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフォキシド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテルが挙げられる。
【0044】
なかでも、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン(BAPS)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3'−ジヒドロキシビフェニル(BAPB)が好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0045】
なお、その他のジアミンとしては、特に限定されず、所望するポリイミドの最終用途により決定される。
[ジカルボン酸無水物]
本発明で用いられるジカルボン酸無水物は、下記式(II)で表され、これからジカルボン酸無水物モノマーが誘導される。
【0046】
【化2】

式(II)中、Yは炭素数2〜12の脂肪族基、炭素数4〜8の脂環族基、炭素数6〜14の単環または多環芳香族基、>Ph−X−Ph<基(Xは単結合、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜4のアルキレン基、−O−Ph−O−、−O−、−CO−、−S−、−SO−、または−SO2−基を示す。)を示す。
【0047】
第1ポリアミド酸樹脂を製造する際には、上記式(II)で表されるジカルボン酸無水物のうち、モノベンゼン環を有するジカルボン酸無水物と、その他のジカルボン酸無水物とを組み合わせ、これら2種以上のジカルボン酸を用いる。このようなジカルボン酸を選択することで、第1ポリアミド酸樹脂の環化後のガラス転移温度を第2ポリアミド酸樹脂の環化後のガラス転移温度よりも高くすることが可能となる。
【0048】
また、第2ポリアミド酸樹脂を製造する際には、上記式(II)で表されるジカルボン酸無水物のうち、二つのベンゼン環を有するジカルボン酸無水物と、その他のジカルボン酸無水物とを組み合わせ、これら2種以上のジカルボン酸を用いる。このようなジカルボン酸を選択することで、第2ポリアミド酸樹脂の環化後のガラス転移温度を第1ポリアミド酸樹脂の環化後のガラス転移温度よりも低くすることが可能となる。
【0049】
上記式(II)で表されるジカルボン酸無水物のうち、第1ポリアミド酸樹脂を製造する際に用いられるモノベンゼン環を有するジカルボン酸無水物としては、具体的には、例えば、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、4、4'−オキソジフタル酸二無水物(OD
PA)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブチルテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。なかでも、ピロメリット酸二無水物(PMDA)が好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0050】
上記式(II)で表されるジカルボン酸無水物のうち、第2ポリアミド酸樹脂を製造する際に用いられる二つのベンゼン環を有するジカルボン酸無水物としては、具体的には、例えば、3,3',4,4'− ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,2',3,3'
−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4'−(パラ−フェニルジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4'−(メタ−フェニルジオキシ)ジフタル酸二無水物、2,3,6,7−ナフチルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフチルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフチルテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アンスリルテトラカルボン酸二無水物、または1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。なかでも、4,4'−オキソ
ジフタル酸二無水物(OPDA)、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)が好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0051】
なお、その他のジカルボン酸無水物としては、特に限定されず、所望するポリイミドの最終用途により決定される。
[第1ポリアミド酸樹脂および第2ポリアミド酸樹脂]
第1ポリアミド酸樹脂および第2ポリアミド酸樹脂は、上記ジアミンから誘導されるジアミンモノマーと上記ジカルボン酸無水物から誘導されるジカルボン酸無水物モノマーとの反応により得られる。これらジアミンモノマーとジカルボン酸無水物モノマーとの反応は、非プロトン極性溶剤中で行われるが、非プロトン極性溶剤としては、特に限定はなく、反応物と反応生成物と反応しないものであればよい。具体的には、例えば、N,N'−
ジメチルアセチルアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメ
チルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、クロロホルム(CHCl3)、ジクロロメタンなどが挙げられる。なかでも、N−メチルピロリドン
(NMP)、またはN,N'−ジメチルアセチルアミド(DMAc)などが好ましい。
【0052】
上記ジアミンモノマーとジカルボン酸無水物モノマーとの反応は、通常、室温(25℃)から90℃、好ましくは30〜75℃の温度下で行われ、前記ジアミンと前記ジカルボン酸無水物とのモル比率(前記ジアミンから誘導されるジアミンモノマーの総量/前記ジカルボン酸無水物から誘導されるジカルボン酸無水物モノマーの総量)は0.5〜2.0、より好ましくは0.75〜1.25である。
【0053】
第1ポリアミド酸樹脂は、さらに前記モノベンゼン環を有するジアミンモノマーと、前記その他のジアミンモノマーとのモル比が60/40〜20/80であり、かつ、前記モノベンゼン環を有するジカルボン酸無水物モノマーと、前記その他のジカルボン酸無水物モノマーとのモル比が40/60〜20/80となるように反応させることにより得られる。このようにして、ジアミンおよびジカルボン酸の種類とその量比を選択することにより、第1ポリアミド酸樹脂の環化後のガラス転移温度を第2ポリアミド酸樹脂の環化後のガラス転移温度よりも高くすることが可能となる。
【0054】
第2ポリアミド酸樹脂は、さらに前記少なくとも二つのベンゼン環を有するジアミンモノマーと、前記その他のジアミンモノマーとのモル比が60/40〜100/0となるように反応させることにより得られる。このようにして、ジアミンおよびジカルボン酸の種類とその量比を選択することにより、第2ポリアミド酸樹脂の環化後のガラス転移温度を第1ポリアミド酸樹脂の環化後のガラス転移温度よりも低くすることが可能となる。
【0055】
通常、本発明のポリイミド複合フレキシブルシート、いわゆる両面の銅箔からなる圧合フレキシブルプリント配線シートの製造過程は、図3で示される。すなわち、まずそれぞれのポリアミド酸樹脂を合成し、次いで、順序よくそのポリアミド酸樹脂を塗布し、次にそのポリアミド酸樹脂を環化させてポリイミド樹脂を形成し、その後、ポリイミド樹脂を積層したフレキシブルシートを銅箔とプレスにより貼り合わせ、次いでフレキシブルシートの物性と外観を検査した後、バッチ包装する。
【0056】
上記のフレキシブルシートの製造は、図4〜図6に示される設備で行われる。まず、図4に示す塗布設備によりポリアミド酸樹脂の塗布を行い、巻解ロール(15)を用いて銅箔を上記の塗布設備に送り、塗布ヘッド(16)により位置(11)で塗布し、オーブン(14)を経て第1段階の焼付けを行って溶剤を除去し、次いで、塗布ヘッド(16’)を用いて位置(12)でポリアミド酸樹脂(2)を塗布し、オーブン(14’)で第2段階の焼付けを行って溶剤を除去し、その一端を巻取ロール(17)により巻き取り、それ
ぞれ異なる2層のポリアミド酸樹脂層を塗布した銅箔リールを得る。
【0057】
次に、図5に示す環化装置を用い、上記の銅箔を巻解ロール(21)に巻取り、オーブン(24)の入口先と出口先にそれぞれ設置されているガイドローラー(22、22)を経てオーブン(24)と窒素ガスオーブン(25)中、ヒートプレート(26)を用いて加熱環化させ、別端を巻取ローラー(23)により巻取り、それぞれ異なる2層のポリイミド層を有する銅箔リードを得る。
【0058】
最後に、図6に示す圧着装置を用い、上記により得られた異なる2層のポリイミド層を有するロール状の銅箔を巻き取りローラー(32)上に配置し、同時に、別の巻き取りローラー(31)に同様にして配置してある異なる2層のポリイミド層を有するロール状の銅箔、又はロール状の純銅箔を配置して、それぞれガイドロール(33、34)を用いて高温圧着ローラー(35)を通過させ、二面に銅箔を有するロール状の銅箔を圧着し、さらに、ガイドロール(36、37)により、巻き取りロール(38)に巻き取る。この間、ガイドロール(33、34と36)および高温圧着ローラー(35)は、窒素ガス雰囲気のオーブン(39)内に収納されている。
【実施例】
【0059】
本発明を下記の合成例と実施例により、さらに詳しく説明するが、本発明の範囲はそれらに限定されるものではない。
なお、固有粘度(Inherent Viscosity、以下IVと略す)およびガラス転移温度は、以下の条件に従って求めた。
【0060】
《固有粘度(IV)》
(a)ポリアミド酸溶液の調製
ポリアミド酸0.5gを計りとり、15mlフラスコに入れ、N−メチルピロリドンを加えて全量を15mlとし、攪拌によってポリアミド酸を溶解させた。得られたポリアミック酸溶液を毛細管粘度計(#100 Ubbehold Viscometer)に入れ、25℃の恒温槽に15分間保持した。
【0061】
安全バルブを用いて、該溶液を吸引した後、バルブを開放し、該溶液が2つのマーク間を通過する時間を3回測定し、これらの平均値(t:単位秒)を求めた。
また、溶液としてN−メチルピロリドンのみを用い、上記と同様に平均値(t0:単位秒)を求めた。
【0062】
(b)固形分の測定
まず、アルミニウム基材の重量(W1)を測定した。さらにポリアミド酸溶液10gを該アルミニウム基材に塗布し、再度重量(W2)を測定した。
【0063】
次いで、ポリアミド酸溶液を塗布したアルミニウム基材を190℃のオーブンに入れ、5時間経過後に取り出し、乾燥させた後、10分間冷却した。このポリアミド酸溶液を塗布したアルミニウム基材の重量(W3)を再度測定した。
【0064】
得られたW1〜W3の値より、次式を用いて固形分の重量(SC)を算出した。
SC=[(W3−W1)/(W2−W1)]×100(単位:%)
上記値より、次式を用いて固有粘度(IV)を算出した。
【0065】
C=SC×W×100/15(単位:g/dL)
IV=Ln(t/t0)/C
《ガラス転移温度(Tg)》
各ポリアミド酸樹脂を用い、厚さ12.5μmの薄膜を形成して環化させた後、昇温速
度を10℃/minにて室温から400℃まで昇温させ、熱機械分析器(TMA Q400:Du-Pont TA製)を用いて0.5 Nの重力(force)を加え、環化後のTg値を測定した。
【0066】
[合成例]
(a)ポリアミド酸(1)の合成
攪拌機と窒素導入管を備えた四つ口反応フラスコ中、窒素ガスを流量20cc/minで吹き込みながら、パラ−フェニルジアミン(PDA)を5.4g(0.05モル)反応フラスコに入れ、N−メチルピロリドン(NMP)を用いて溶解させ、15分後、4,4'−オキシジアニリン(ODA)10g(0.05モル)を加え、溶解させると共に温度
を15℃に保持した。
【0067】
別に攪拌子を備えた第一フラスコに、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)8.82g(0.03モル)とNMP15gとを加え、攪拌して溶解させ、その後、この第一フラスコ中の内容物を上記反応フラスコ中に入れ、窒素ガス導入下、攪拌して1時間反応させた。
【0068】
また、別に第二フラスコを準備し、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)16.1g(0.05モル)とNMP30gとを加え、攪拌して溶解させた。この第二フラスコ中の内容物を上記反応フラスコに加え、窒素ガス導入下、攪拌して1時間反応させた。
【0069】
さらに、別に第三フラスコを取り、ピロメリット酸二無水物(PMDA)4.36g(0.02モル)とNMP10gとを加え、攪拌して溶解させた。この第三フラスコ中の内容物を上記反応フラスコに入れ、窒素ガス導入下、攪拌して1時間反応させた。次いで、15℃温度下、さらに4時間反応させ、ポリアミド酸樹脂(1−1)を得た。
【0070】
このポリアミド酸樹脂(1−1)0.5gを取り、NMP100mlに溶かし、25℃でその固有粘度(IV)を測定した結果、0.85dl/gを示し、環化後のガラス転移温度(Tg)の測定結果は290℃であった。
【0071】
表1に示す成分と用量で、ポリアミド酸樹脂(1−1)と同様の製法によりポリアミド酸(1−2)、(1−3)を合成し、その固有粘度(IV)と環化後のガラス転移温度(Tg)を測定した。その結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

(b)ポリアミド酸(2)の合成
攪拌機と窒素導入管を備えた四つ口反応フラスコ中、窒素ガスを20cc/minの流
量で吹き込みながら、2,2'−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホ
ン(BAPP)41g(0.1モル)を加え、N−メチルピロリドン(NMP)で溶解さ
せ、15分後、別に攪拌子を有する第一フラスコ内に、3,3',4,4'− ビフェニル
テトラカルボン酸二無水物(BPDA)2.94g(0.01モル)とNMP15gとを加え、攪拌して溶解させ、次いで、この第一フラスコの内容物を上記の反応フラスコ中に入れ、窒素ガスを継続して導入し、攪拌しながら1時間反応させた。
【0073】
また、別に第二フラスコを取り、3,3',4,4'− ベンゾフェノンテトラカルボン
酸ジ無水物(BTDA)とNMP15gとを加え、攪拌して溶解させる。この第二フラスコの内容物を上記の反応フラスコ内に入れ、窒素ガスを継続して導入しながら、攪拌しながら1時間反応させた。
【0074】
また、別に第三フラスコを準備し、4,4'−オキシジフタル酸ジ無水物(ODPA)
6.2g(0.02モル)とNMP30gを加え、攪拌して溶解させる。この第三フラスコの内容物を上記の反応フラスコ中に加え、窒素ガスを継続して導入しながら攪拌し、1時間反応させる。次いで、15℃温度下で、さらに4時間反応させ、ポリアミド酸樹脂(2−1)を得た。
【0075】
このポリアミド酸樹脂(2−1)0.5gをとり、NMP100mlに溶かし、25℃下で固有粘度(IV)を測定した結果、0.95dl/gを示し、環化後のガラス転移温度(Tg)の測定結果は223℃であった。
【0076】
表3に示す成分と用量で、ポリアミド酸樹脂(2−1)と同様の製法によりポリアミド酸(2−2)、(2−3)、(2−4)、(2−5)、(2−6)、および(2−7)を合成し、その固有粘度(IV)と環化後のガラス転移温度(Tg)を測定した。その結果を表2に示す。
【0077】
【表2】

[実施例1]〜[実施例11]および[比較例1]〜[比較例5]
表3と表4に示す組成により、上記の合成例で得たポリアミド酸樹脂(1)を厚さ12μmの銅箔上に線棒を用いて、厚さ9μmに均一に塗布し、オーブン中、まず120℃で3分間、次に180℃で5分間加熱して溶剤を除去した。ポリアミド酸(1)を塗布し、すでに乾燥を終えた銅箔をオーブン内から取り出し、次いで、ポリアミド酸樹脂(2)を厚さ3μmになるように塗布し、その後、オーブン中、まず120℃で3分間、次に180℃で7分間加熱して溶剤を除去した。
【0078】
さらに、得られた銅箔を窒素ガス雰囲気のオーブン内に入れ、まず180℃で1分間、次に220℃で1時間、さらに300℃で0.6時間、最後に350℃で0.5時間それぞれ放置し、ポリアミド酸のポリイミド化(環化)反応を行い、冷却後取り出し、平坦な
圧着機を用いて一つずつ圧着させ、またはプレスローラーを用いて連続的に圧着させ、340℃と100kgfの圧力下で、得られたポリイミド複合銅箔のポリイミドフィルム面を互いに向かい合わせて貼り合わせ、得られたポリイミド複合銅箔と別な銅箔とを貼り合わせて、フレキシブルシート(二面銅箔〈金属箔〉の軟性プリント回路シート圧着銅箔)を得た。
【0079】
このフレキシブルシートの構成は、銅箔/ポリイミド(1)(280℃≦Tg≦330℃)/ポリイミド(2)(190℃≦Tg≦280℃)/ポリイミド(2)(190℃≦Tg≦280℃)/ポリイミド(1)(280℃≦Tg≦330℃)/銅箔より形成される6層の複合フレキシブルシート、または銅箔/ポリイミド(1)(280℃≦Tg≦330℃)/ポリイミド(2)(190℃≦Tg≦280℃)/銅箔より形成される4層の複合フレキシブルシートである。
【0080】
得られた銅箔は、IPC−TM650 2.2.9に記載の方法により剥離強度を測定し、熱比重分析により熱膨張係数を測定し、さらに、IPC−TM650 2.2.4に記載の方法によりサイズ安定性を測定した。その結果を表3および表4に示す。
【0081】
【表3】

【0082】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】第一の態様であるポリイミド複合フレキシブルシートの構成を示す。
【図2】第二の態様であるポリイミド複合フレキシブルシートの構成を示す
【図3】両面シートからなるフレキシブルプリント配線銅箔シートの商業的生産過程を示す。
【図4】本発明の製造方法を実施する際に使用される塗布設備の概観図を示す。
【図5】本発明の製造方法を実施する際に使用される環化装置の概観図を示す。
【図6】本発明の製造方法を実施する際に使用されるプレス装置の概観図を示す。
【符号の説明】
【0084】
1 :第一の態様であるポリイミド複合フレキシブルシート
2 :金属箔
3 :第1ポリイミドフィルム
4 :第2ポリイミドフィルム
5 :第二の態様であるポリイミド複合フレキシブルシート
6 :金属箔
7 :第1ポリイミドフィルム
8 :第2ポリイミドフィルム
11:ポリアミド酸樹脂1の塗布位置
12:ポリアミド酸樹脂2の塗布位置
14、14’、24、25、29、39:オーブン
15、21、31、32:巻取ローラー
16、16’:塗布ヘッド
17、23、38:巻取ローラー
22、33、34、36、37:ガイドローラー
26:ヒートプレート
35:プレスローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔、ガラス転移温度が280〜330℃である第1ポリイミドフィルム、およびガラス転移温度が190〜280℃である第2ポリイミドフィルムが、この順序で積層され、
さらに前記第2ポリイミドフィルムの上に、ガラス転移温度が190〜280℃である第2ポリイミドフィルム、ガラス転移温度が280〜330℃である第1ポリイミドフィルム、および金属箔が、この順序で積層されてなるポリイミド複合フレキシブルシートであって、
かつ、前記第1ポリイミドフィルムのガラス転移温度が前記第2ポリイミドフィルムのガラス転移温度よりも高いポリイミド複合フレキシブルシート。
【請求項2】
金属箔、ガラス転移温度が280〜330℃である第1ポリイミドフィルム、ガラス転移温度が190〜280℃である第2ポリイミドフィルム、および金属箔が、この順序に積層されてなるポリイミド複合フレキシブルシートであって、
かつ、前記第1ポリイミドフィルムのガラス転移温度が前記第2ポリイミドフィルムのガラス転移温度よりも高いポリイミド複合フレキシブルシート。
【請求項3】
前記第1ポリイミドフィルムを形成するポリイミドが、モノベンゼン環を有するジアミンモノマーと、モノベンゼン環を有するジカルボン酸無水物モノマーと、その他のジアミンモノマーおよびその他のジカルボン酸無水物モノマーとの反応により得られ、
前記ジアミンモノマー全量と、前記ジカルボン酸無水物モノマー全量とのモル比率が0.5〜2.0であり、
前記モノベンゼン環を有するジアミンモノマーと、前記その他のジアミンモノマーとのモル比が60/40〜20/80であり、
かつ、前記モノベンゼン環を有するジカルボン酸無水物モノマーと、前記その他のジカルボン酸無水物モノマーとのモル比が40/60〜20/80である請求項1または2に記載のポリイミド複合フレキシブルシート。
【請求項4】
前記第2ポリイミドフィルムを形成するポリイミドが、少なくとも二つのベンゼン環を有するジアミンモノマーと、二つのベンゼン環を有するジカルボン酸無水物モノマーと、その他のジアミンモノマーおよびその他のジカルボン酸無水物モノマーとの反応により得られ、
前記ジアミンモノマー全量と、前記ジカルボン酸無水物モノマー全量とのモル比率が、0.5〜2.0であり、
前記少なくとも二つのベンゼン環を有するジアミンモノマーと、前記その他のジアミンモノマーとのモル比が、60/40〜100/0である請求項1または2に記載のポリイミド複合フレキシブルシート。
【請求項5】
前記金属箔の厚さが12〜70μmである請求項1または2に記載のポリイミド複合フレキシブルシート。
【請求項6】
前記金属箔が銅箔である請求項5に記載のポリイミド複合フレキシブルシート。
【請求項7】
前記第1ポリイミドフィルムの総厚さ、および前記第2ポリイミドフィルムの総厚さが、それぞれ下記の条件を満たす請求項1に記載のポリイミド複合フレキシブルシート。
【数1】

【請求項8】
前記第1ポリイミドフィルムの厚さ、および前記第2のポリイミドフィルムの厚さが、それぞれ下記の条件を満たす請求項2に記載のポリイミド複合フレキシブルシート。
【数2】

【請求項9】
下記の工程からなり、かつ、第1ポリアミド酸樹脂の環化後のガラス転移温度が第2ポリアミド酸樹脂の環化後のガラス転移温度よりも高い請求項1に記載のポリイミド複合フレキシブルシートの製造方法;
(a)環化後のガラス転移温度が280〜330℃である第1ポリアミド酸樹脂を金属箔上に均一に塗布した後、オーブン中において90〜140℃に加熱し、次いで150〜200℃に加熱して溶剤を除去することにより、第1ポリアミド酸樹脂層が形成された金属箔を得る工程;
(b)工程(a)で得られた金属箔をオーブン内から取り出し、環化後のガラス転移温度が190〜280℃である第2ポリイミド酸樹脂を該金属箔上に形成された第1ポリアミド酸樹脂層上に塗布した後、オーブン中において90〜140℃に加熱し、次いで150〜200℃に加熱して溶剤を除去することにより、第2ポリアミド酸樹脂層が形成された金属箔を得る工程;
(c)工程(b)で得られた金属箔を、窒素ガス雰囲気のオーブン中において、まず160〜190℃にて、次に190〜240℃にて、さらに270〜320℃にて、最後に330〜370℃にて加熱し、
該金属箔上に形成された第1ポリアミド酸樹脂層および第2ポリアミド酸樹脂層におけるポリアミド酸のポリイミド化反応を行うことにより、ポリイミドフィルムが形成された金属箔を得る工程;
(d)工程(c)で得られた2つの金属箔を、互いにポリイミドフィルムが形成された面を向かい合わせた状態とし、圧着機械またはプレスロールを用いて、該金属箔を320〜370℃、10〜200kgfの圧力下で圧着して、ポリイミド複合フレキシブルシートを得る工程。
【請求項10】
下記の工程からなり、かつ、第1ポリアミド酸樹脂の環化後のガラス転移温度が第2ポリアミド酸樹脂の環化後のガラス転移温度よりも高い請求項2に記載のポリイミド複合フレキシブルシートの製造方法;
(a')環化後のガラス転移温度が280〜330℃である第1ポリアミド酸樹脂を金属
箔上に均一に塗布した後、オーブン中において90〜140℃に加熱し、次いで150〜200℃で加熱して溶剤を除去することにより、第1ポリアミド酸樹脂層が形成された金属箔を得る工程;
(b’)工程(a’)で得られた金属箔をオーブン内から取り出し、環化後のガラス転移温度が190〜280℃である第2ポリイミド酸樹脂を該金属箔上に形成された第1ポリアミド酸樹脂塗層上に塗布した後、オーブン中において90〜140℃に加熱し、次いで150〜200℃に加熱して溶剤を除去することにより、第2ポリアミド酸樹脂層が形成された金属箔を得る工程;
(c')工程(b’)で得られた金属箔を、窒素ガス雰囲気のオーブン中において、まず
160〜190℃にて、次に190〜240℃にて、さらに270〜320℃にて、最後に330〜370℃にて段階的に加熱し、
該金属箔上に形成された第1ポリアミド酸樹脂層および第2ポリアミド酸樹脂層におけるポリアミド酸のポリイミド化反応を行うことにより、ポリイミドフィルムが形成された金属箔を得る工程;
(d')工程(c’)で得られた金属箔のポリイミドフィルムが形成された面と、他の金
属箔とを貼り合わせた状態とし、圧着機械またはプレスロールを用いて、該金属箔を320〜370℃、10〜200kgfの圧力下で圧着して、ポリイミド複合フレキシブルシートを得る工程。
【請求項11】
前記第1ポリアミド酸樹脂および第2ポリアミド酸樹脂が、下記式(I)で表されるジアミン;
2N−R1−NH2 (I)
〔式(I)中、R1はフェニレン基、−Ph−X−Ph−基(Xは単結合、ハロゲン原子
で置換されてもよい炭素数1〜4のアルキレン基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、または−SO2−基を示す。)、炭素数2〜14の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜30
の脂環族炭化水素基、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、−Ph−O−R2−O−Ph
−基(R2はフェニレン基または−Ph−X−Ph−基を示し、かつ、Xは単結合、ハロ
ゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜4のアルキレン基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、または−SO2−基を示す。)を示す。〕;
と下記式(II)で表されるジカルボン酸無水物;
【化1】

[式(II)中、Yは炭素数2〜12の脂肪族基、炭素数4〜8の脂環族基、炭素数6〜
14の単環または多環芳香族基、>Ph−X−Ph<基(Xは単結合、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜4のアルキレン基、−O−Ph−O−、−O−、−CO−、−S−、−SO−、または−SO2−基を示す。)を示す。]
との反応により得られる請求項9または10に記載のポリイミド複合フレキシブルシートの製造方法。
【請求項12】
前記第1ポリアミド酸樹脂が、モノベンゼン環を有するジアミンモノマーと、モノベンゼン環を有するジカルボン酸無水物モノマーと、その他のジアミンモノマーおよびその他のジカルボン酸無水物モノマーとの反応により得られ、
前記ジアミンモノマー全量と、前記ジカルボン酸無水物モノマー全量とのモル比率が0.5〜2.0であり、
前記モノベンゼン環を有するジアミンモノマーと、前記その他のジアミンモノマーとのモル比が60/40〜20/80であり、
かつ、前記モノベンゼン環を有するジカルボン酸無水物モノマーと、前記その他のジカ
ルボン酸無水物モノマーとのモル比が40/60〜20/80である請求項9または10に記載のポリイミド複合フレキシブルシートの製造方法。
【請求項13】
前記第2ポリアミド酸樹脂が、少なくとも二つのベンゼン環を有するジアミンモノマーと、二つのベンゼン環を有するジカルボン酸無水物モノマーと、その他のジアミンモノマー及びその他のジカルボン酸無水物モノマーとの反応により得られ、
前記ジアミンモノマー全量と、前記ジカルボン酸無水物モノマー全量とのモル比率が0.5〜2.0であり、
前記少なくとも二つのベンゼン環を有するジアミンモノマーと、前記その他のジアミンモノマーとのモル比が60/40〜100/0である請求項9または10に記載のポリイミド複合フレキシブルシートの製造方法。
【請求項14】
前記金属箔の厚さが12〜70μmである請求項9または10に記載のポリイミド複合フレキシブルシートの製造方法。
【請求項15】
前記金属箔が銅箔である請求項14に記載のポリイミド複合フレキシブルシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−74084(P2008−74084A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107522(P2007−107522)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(595009383)長春人造樹脂廠股▲分▼有限公司 (23)
【Fターム(参考)】