説明

ポリウレタンエラストマー

ポリウレタンエラストマーを提供する。エラストマーは、少なくともプレポリマーと連鎖延長剤の反応生成物であり、この場合のプレポリマーは、少なくとも1つのポリオールと少なくとも1つの脂肪族ジイソシアネートの反応生成物である。連延長剤は、芳香族ジアミンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年4月9日に出願された、「POLYURETHANE ELASTOMERS」と題する、米国特許仮出願第61/043,550号の利益を主張するものであり、この仮出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般には、ポリウレタンエラストマーに関し、より具体的には、脂肪族イソシアネートと芳香族アミン連鎖延長剤とから製造されるポリウレタンエラストマーに関する。
【背景技術】
【0003】
脂肪族ジイソシアネートに基づくポリウレタンエラストマーは、芳香族ジイソシアネートに基づくポリウレタンエラストマーと比較して費用が高く、機械的強度が低いため、限られた用途にしか用いられていない。脂肪族ジイソシアネート、例えば1,6−ヘキサンジイソシアネート(HDI)、メチレンビス(p−シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)は、芳香族ジイソシアネート、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びトルエンジイソシアネート(TDI)と比較して製造に費用がかかる。費用に加えて、脂肪族ジイソシアネートに基づくポリウレタンは、それらの芳香族対応物と比較して低減された機械的強度及び耐熱性を有し得る。脂肪族エラストマーは、芳香族ジイソシアネートに基づくエラストマーより大きな光安定性並びに増加した耐加水分解性及び耐熱崩壊性を示すにもかかわらず、その費用及び性能が、脂肪族ジイソシアネート系エラストマーの使用を少しの用途に限定し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、費用効率がよく、並びに増加した光安定性、増加した耐加水分解性及び増加した耐熱性を維持しながら増加した機械的特性を有するエラストマーが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、少なくとも1つのプレポリマーと少なくとも1つの連鎖延長剤(chain extender)の反応生成物を含む、ポリウレタンエラストマーに備えるものである。プレポリマーは、少なくとも1つのポリオールと少なくとも1つの脂肪族ジイソシアネートの反応生成物を含む。連鎖延長剤は、少なくとも1つの芳香族ジアミンであり得る。脂肪族ジイソシアネートは、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの混合物であり得る。ポリウレタンエラストマーは、44%より大きいベイショアー反発弾性(Bashore Rebound)及び約10%〜約50%の間のハードセグメント含量を有し得る。
【0006】
本発明のもう一つの実施形態において、エラストマーは、30%未満の圧縮永久歪及び約10%〜約50%の間のハードセグメント含量を有し得る。
【0007】
本発明のもう一つの実施形態において、上記エラストマーのうちの少なくとも1つを含み得る物品を提供する。物品は、フィルム、塗料、積層品、ガラス、レンズ、防弾ガラス、建築用造形窓、ハリケーンウィンドウ、防護具、ゴルフボール、ボーリングボール、ローラーブレード車輪、ローラースケート車輪、スケートボード車輪、温室カバー、床用塗料、屋外用塗料、光電池、フェースマスク、対人保護用具、及びプライバシースクリーンのうちの少なくとも1つであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の上に列挙した特徴を詳細に理解できるように、上に簡単に要約した本発明のより詳細な説明を、実施形態を参照して示すこととし、それらの実施形態の一部を添付の図面に示す。一つの実施形態の要素及び特徴が、さらなる詳説なしに他の実施形態に有益に組み込まれている場合があると考えられる。しかし、本発明は他の同等に有効な実施形態を認めることができるため、添付の図面は、本発明の単なる例示的実施形態を示すものであり、従って、その範囲を限定するとものみなすべきではないことに留意しなければならない。
【図1】ETHACURE 100 Curativeを連鎖延長剤として使用するADI系エラストマーの弾性率(ショアー貯蔵弾性率)を表示するグラフである。
【図2】ETHACURE 100 Curativeを連鎖延長剤として使用するADI系エラストマーのtanδ値を表示するグラフである。
【図3】Ethacure 100で連鎖延長したエラストマーの喪失コンプライアンスを表示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態は、費用効率がよく、良好な機械的特性を有すると同時に、良好な光安定性、良好な耐加水分解性及び良好な耐熱性を維持するエラストマーに備えるものである。本発明の実施形態によるエラストマーは、「二段階プロセス」によって製造することができ、その第一段階は、少なくとも1種類のポリオールと少なくとも1種類の脂肪族ジイソシアネートを反応させてプレポリマーを形成することを含む。第二段階では、そのプレポリマーを芳香族ジアミン連鎖延長剤と反応させて、ポリウレタンエラストマーを形成する。この二段階プロセスの結果として、ポリウレタンエラストマーの構造は、交互の、低ガラス転移温度の可撓性連鎖のブロック(ソフトセグメント)と高極性で比較的硬質のブロック(ハードセグメント)からなる。ソフトセグメントは、脂肪族ポリエーテル又はポリエステルから誘導され、室温より低いガラス転移温度を有する。ハードセグメントは、イソシアネートと連鎖延長剤の反応によって形成される。これらの2つの異種ブロックの分離が、ソフトブロックの架橋点として作用する水素結合ハードドメインの領域を生じさせる。
【0010】
本発明の実施形態において有用なポリオールは、2つ又はそれ以上のイソシアネート反応性基、一般には活性水素基、例えば−OH、第一又は第二アミン、及び−SHを含有する化合物である。適するポリオールの代表は一般に公知であり、High Polymers, Vol. XVI; 「Polyurethanes, Chemistry and Technology」, by Saunders and Frisch, Interscience Publishers, New York, Vol. I, pp. 32-42, 44-54 (1962)及びVol II. Pp. 5-6, 198-199 (1964);Organic Polymer Chemistry by K. J. Saunders, Chapman and Hall, London, pp. 323-325 (1973);並びにDevelopments in Polyurethanes, Vol. I, J.M. Burst, ed., Applied Science Publishers, pp. 1-76 (1978).のような出版物に記載されている。適するポリオールの代表としては、ポリエステル、ポリラクトン、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリカーボネートポリオール、及び様々な他のポリマーが挙げられる。
【0011】
実例となるポリエステルポリオールは、アルカン二酸に対してモル過剰の脂肪族グリコールを使用する従来のエステル化プロセスによって調製されるポリ(アルキレンアルカンジオエート)グリコールである。ポリエステルを調製するために利用することができる実例となるグリコールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び他のブタンジオール、1,5−ペンタンジオール及び他のペンタンジオール、ヘキサンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなどである。好ましくは、脂肪族グリコールは2〜約8個の炭素原子を含有する。ポリエステルを調製するために使用することができる実例となる二酸は、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチル−1,6−ヘキサン酸、ピメリン酸、スベリン酸、ドデカン二酸などである。好ましくは、アルカン二酸は、4〜12個の炭素原子を含有する。実例となるポリエステルポリオールは、ポリ(ヘキサンジオールアジペート)、ポリ(ブチレングリコールアジペート)、ポリ(エチレングリコールアジペート)、ポリ(ジエチレングリコールアジペート)、ポリ(ヘキサンジオールオキサレート)、ポリ(エチレングリコールセバケート)(poly(ethylene glycol sebecate))などである。
【0012】
本発明の実施形態の実施の際に有用なポリラクトンポリオールは、現実にはジ−又はトリ−又はテトラ−ヒドロキシルである。そのようなポリオールは、ラクトンモノマー(実例となるものは、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−メチル−ε−カプロラクトン、ζ−エナントラクトンなどである)と、活性水素含有基を有する開始剤(実例となるものは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンなどである)とを反応させる反応によって調製される。そのようなポリオールの製造は、当分野において公知である。例えば、米国特許第3,169,945号、同第3,248,417号、同第3,021,309号から同第3,021,317号参照。好ましいラクトンポリオールは、ポリカプロラクトンポリオールとして公知のジ−、トリ−及びテトラ−ヒドロキシル官能性ε−カプロラクトンポリオールである。
【0013】
ポリエーテルポリオールは、アルキレンンオキシド、例えばエチレン、プロピレン、ブチレンオキシド又はそれらの混合物での適する出発分子のアルコキシル化によって得られるものを含む。開始剤分子の例としては、水、アンモニア、アニリン又は多価アルコール、例えば、62〜399の分子量を有する二価アルコール、特にアルカンポリオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン若しくはトリメチロールエタン、又はエーテル基を含有する低分子量アルコール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール若しくはトリプロピレングリコールが挙げられる。他の一般に使用されている開始剤としては、ペンタエリトリトール、キシリトール、アラビトール、ソルビトール、マンニトールなどが挙げられる。好ましくは、ポリ(プロピレンオキシド)ポリオールとしては、ポリ(オキシプロピレン−オキシエチレン)ポリオールが挙げられ、それを用いる。好ましくは、オキシエチレン含量は、そのポリオールの総重量の約40重量パーセント未満、及び好ましくは約25重量パーセント未満を構成すべきである。エチレンオキシドをポリマー鎖に沿って任意の様式で組み込むことができ、これは、言い換えると、エチレンオキシドを中間ブロック組み込むことができること、末端ブロックの場合は、そのポリマー鎖に沿ってランダムに分布させることができること、又は末端オキシエチレン−オキシプロピレンブロック内にランダムに配置することができることを意味する。これらのポリオールは、従来の方法によって調製される従来の材料である。
【0014】
他のポリエーテルポリオールとしては、ジオールとして市販されている、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールとしても公知の、ポリ(テトラメチレンオキシド)ポリオールが挙げられる。これらのポリオールは、Dreyfuss,P.and M.P.Dreyfuss,Adv.Chem.Series,91,335(1969)に記載されているようにテトラヒドロフランのカチオン性開環及び水での停止から調製される。
【0015】
ヒドロキシル基を含有するポリカーボネートとしては、それ自体公知のもの、例えば、ジオール、例えばプロパンジオール−(1,3)、ブタンジオール−(1,4)及び/若しくはヘキサンジオール−(1,6)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール又はテトラエチレングリコールとジアリールカーボネート、例えばジフェニルカーボネート又はホスゲンとの反応から得られる生成物が挙げられる。
【0016】
本発明の実施形態における使用に適する、実例となる様々な他のポリオールは、スチレン/アリルアルコールコポリマー;ジメチロールジシクロペンタジエンのアルコキシル化付加体;ビニルクロライド/ビニルアセテート/ビニルアルコールコポリマー;ビニルクロライド/ビニルアセテート/ヒドロキシプロピルアクリレートコポリマー;2−ヒドロキシエチルアクリレート、エチルアクリレート、及び/又はブチルアクリレート若しくは2−エチルヘキシルアクリレートのコポリマー;ヒドロキシプロピルアクリレート、エチルアクリレート、及び/又はブチルアクリレート若しくは2−エチルヘキシルアクリレートのコポリマー;などである。
【0017】
一般に、本発明の実施形態で使用するための、ヒドロキシル基を末端に有するポリオールは、200〜10,000の数平均分子量を有する。好ましくは、ポリオールは、300〜7,500の分子量を有する。さらに好ましくは、ポリオールは、400〜5,000の数平均分子量を有する。ポリオールを製造するための開始剤に基づき、ポリオールは、1.5〜8の官能価を有するであろう。好ましくは、ポリオールは、2〜4の官能価を有する。本発明の実施形態の分散液に基づくエラストマーの製造には、ポリオール又はポリオールのブレンドを、そのポリオール又はブレンドの公称官能価が3に等しく又はそれ以下になるように、使用することが好ましい。
【0018】
本発明の様々な実施形態のイソシアネート組成物は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンから調製することができる。好ましくは、イソシアネートは、cis−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、trans−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、cis−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及びtrans−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのうちの2つ又はそれ以上を含むが、但し、その異性体混合物が少なくとも約5重量パーセントの1,4−異性体を含むことを条件とする。好ましい実施形態において、組成物は、1,3−異性体と1,4−異性体の混合物を含有する。好ましい環式脂肪族ジイソシアネートは、以下の構造式I〜IVによって表される:
【0019】
【化1】

【0020】
これらの環式脂肪族ジイソシアネートは、例えば、ブタジエンとアクリロニトリルのディールス・アルダー(Diels-Alder)反応、その後の、アミン、すなわちcis−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、trans−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、cis−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及びtrans−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを形成するための還元アミノ化、続いての、環式脂肪族ジイソシアネート混合物を形成するためのホスゲンとの反応から製造されるような混合物で使用することができる。ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの調製は、米国特許第6,252,121号に記載されている。
【0021】
一つの実施形態において、イソシアヌレートイソシアネート組成物は、5〜90重量パーセントの1,4−異性体を含有する混合物から誘導される。好ましくは、異性体混合物は、10〜80重量パーセントの1,4−異性体を含む。さらに好ましくは少なくとも20、最も好ましくは少なくとも30、及びさらにいっそう好ましくは少なくとも40重量パーセントの1,4−異性体。
【0022】
他の脂肪族イソシアネートも含む場合があり、それらは、その配合物に使用される全多官能性イソシアネートの0.1重量パーセント〜50重量パーセント又はそれ以上、好ましくは0重量パーセント〜40重量パーセント、さらに好ましくは0重量パーセント〜30重量パーセント、さらにいっそう好ましくは0重量パーセント〜20重量パーセント、及び最も好ましくは0重量パーセント〜10重量パーセントにわたり得る。他の脂肪族イソシアネートの例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキサンイソシアネート)(H12MDI)、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0023】
本発明の一つの実施形態において、出発イソシアネートとしては、1,3−及び1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンモノマーと追加の環式又は脂環式イソシアネートとの混合物が挙げられる。一つの実施形態では、1,3−及び1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンモノマーを、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H12MDI、又はそれらの混合物と併用する。ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに加えて、HDI及び/又はIPDIを追加の多官能性イソシアネートとして使用するとき、HDI及び/又はIPDIは、全多官能性イソシアネートの約50重量パーセント以下の量で添加することができる。一つの実施形態において、HDI及び/又はIPDIは、全多官能性イソシアネートの約40重量パーセント以下を構成するように添加することができる。一つの実施形態において、HDI及び/又はIPDIは、全多官能性イソシアネートの約30重量パーセント以下を構成するように添加することができる。
【0024】
イソシアネート、又はイソシアネートの混合物は、イソシアネートのシアネート基の比率対ポリオールのシアネート反応性基の比率(NCO:OH比)が、約2:1〜約20:1になるような比率で、ポリオールと併用することができる。一つの実施形態において、比率は、約2.3:1である。
【0025】
少なくとも1つのポリオールと少なくとも1つのイソシアネートを少なくとも反応させることによって形成されたプレポリマーを、その後、少なくとも1つの芳香属アミン連鎖延長剤と反応させて少なくとも1つのポリウレタンエラストマーを形成することができる。本発明の実施形態のポリウレタンエラストマーの製造に1つ又はそれ以上の連鎖延長剤を使用することができる。本発明の実施形態のために、連鎖延長剤は、1分子につき2つのイソシアネート反応性基と、400未満、好ましくは300未満、及び特に31〜125ダルトンのイソシアネート反応性基あたりの当量とを有する材料である。
【0026】
連鎖延長剤は、少なくとも、芳香族ジアミン又は芳香族ジアミンの組み合わせであり得る。適する芳香族ジアミンの例は、4,4’−メチレンビス−2−クロロアニリン、2,2’,3,3’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノフェニルメタン、p,p’−メチレンジアニリン、p−フェニレンジアミン又は4,4’−ジアミノジフェニル;及びに2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4−ジエチル−6−メチル−1,3−ベンゼンジアミン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルベンゼンアミン)、ジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)、例えばAlbermarle CorporationからのE−300(3,5−ジメチルチオ−2,6−トルエンジアミンと3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミンの混合物)、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)、例えばAlbermarleからのE−100 Ethacure(3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミンと3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミンの混合物)である。芳香族ジアミンは、脂肪族又は環式脂肪族ジアミンより剛性の(すなわち、高いムーニー(Mooney)粘度を有する)製品を生じさせる傾向を有する。連鎖延長剤は、単独で使用される場合もあり、又は混合物で使用される場合もある。
【0027】
連鎖延長剤を、ペンダント型官能基を有するように修飾して、架橋剤特性、難燃特性又は他の望ましい特性をさらにもたらすことができる。適するペンダント基としては、カルボン酸、ホスフェート、ハロゲン化などが挙げられる。
【0028】
本発明の実施形態では、1当量の連鎖延長剤と反応する1当量のイソシアネートに基づき、そのプレポリマー中に存在するイソシアネート官能基の約0〜約100パーセントと反応するために十分な量で連鎖延長剤を利用することができる。残りのイソシアネートを水と反応させることができる。或いは本発明の実施形態では、連鎖延長剤が過剰に存在することがある、すなわち、そこにあるイソシアネート官能基より多くの連鎖延長剤官能基が存在する。従って、プレポリマーは、様々な化学量論比(すなわち、連鎖延長剤の官能基の量に対するプレポリマーのイソシアネート基の量)で延長された鎖であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、少なくとも85%であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、少なくとも90%であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、少なくとも92%であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、少なくとも94%であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、少なくとも95%であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、少なくとも96%であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、少なくとも97%であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、少なくとも98%であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、少なくとも99%であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、少なくとも100%であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、少なくとも101%であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、少なくとも102%であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、少なくとも103%であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、少なくとも105%であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、少なくとも110%であり得る。100%より下の百分率は、イソシアネート基の過剰を示し、一方、100%より上の百分率は、連鎖延長剤官能基の過剰を示す。化学量論比は、一つの実施形態では、95%以下であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、96%以下であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、97%以下であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、98%以下であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、99%以下であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、100%以下であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、101%以下であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、102%以下であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、103%以下であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、105%以下であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、110%以下であり得る。一つの実施形態において、化学量論比は、115%以下であり得る。一定の実施形態において、化学量論比は、約95%〜約102%の間である。
【0029】
水を連鎖延長剤として作用させ、存在するイソシアネート官能基の一部又はすべてと反応させることが望ましい場合がある。連鎖延長剤とイソシアネートとの反応を促進するために、場合によっては触媒を使用することができる。本発明の連鎖延長剤が2つの活性水素基を有するときには、それらは、同時に架橋剤としても機能することができる。
【0030】
本発明の実施形態において、連鎖延長剤は、上述の連鎖延長剤のいずれかの混合物を含む場合がある。連鎖延長剤混合物は、ジオールと、上に列挙したアミンをはじめとする芳香族ジアミンの両方を含む場合がある。
【0031】
結果として生ずるポリウレタンエラストマーは、少なくとも約10%のハードセグメント比を有する熱硬化性材料である。一つの実施形態において、ハードセグメント比は、少なくとも約20%である。一つの実施形態において、ハードセグメント比は、少なくとも約25%である。一つの実施形態において、ハードセグメント比は、少なくとも約30%である。一つの実施形態において、ハードセグメント比は、少なくとも約35%である。一つの実施形態において、ハードセグメント比は、少なくとも約40%である。一つの実施形態において、ハードセグメント比は、少なくとも約45%である。一つの実施形態において、ハードセグメント比は、少なくとも約50%である。ハードセグメント比は、約20%以下である場合がある。一つの実施形態において、ハードセグメント比は、約25%以下である。一つの実施形態において、ハードセグメント比は、約30%以下である。一つの実施形態において、ハードセグメント比は、約35%以下である。一つの実施形態において、ハードセグメント比は、約40%以下である。一つの実施形態において、ハードセグメント比は、約45%以下である。一つの実施形態において、ハードセグメント比は、約50%以下である。一つの実施形態において、ハードセグメント比は、約60%以下である。一定の実施形態において、ハードセグメント比は、約10%〜約45%の間である。他の実施形態において、ハードセグメント比は、約20%である。ハードセグメントは、連鎖延長剤とイソシアネートの間で形成されるポリウレタン部分を指す。ハードセグメントは、ポリマーモジュラス及び極限強度を増加させる、耐変形性をもたらすことが認められる。ハートセグメントの量は、イソシアネート及び連鎖延長剤の全ポリマー重量に対する比率を計算することによって推定される。伸び及びレジリエンスは、ゴム状「ソフト」セグメントに直接関係する。ハードセグメントの増加は、ソフトセグメント含量を減少させ、結果として、PUエラストマーにおけるミクロドメイン構造の変化が生ずる。35%ハードセグメント含量では、ミクロドメイン構造が軟質連続相内に分散されたハードドメインを示すと予想される。一方、45%ハードセグメント含量では、バイコンティニュアス・ミクロドメイン構造が予想される。
【0032】
本発明の様々なエラストマーは、例えばH12MDI系エラストマーと同じハードセグメント含量で、改善された硬度、引張強度、伸び、圧縮永久歪及びベイショアー反発弾性を明示することができる。脂肪族イソシアネートは、構成単位の中で最も費用の高い成分であるので、系の中のより低い脂肪族イソシアネートレベルによって、系の総費用は有意に低下されるだろう。
【0033】
結果として生ずる脂肪族イソシアネート系エラストマーは、改善された圧縮永久歪を有し、これは、圧縮応力の持続作用後に弾性特性を維持するこれらのエラストマーのより大きな能力を示す。これが、それらを、例えばH12MDI系エラストマーより応力付加使用に適するものにする。実際の応力付加使用は、限定された撓みの維持、既知の力の一定した印加、又は断続的圧縮力の結果として生ずる変形と回復の急速反復を伴う場合がある。
【0034】
本発明の実施形態において、エラストマーは、約30%未満のメソッドB圧縮永久歪を有し得る。一つの実施形態において、メソッドB圧縮永久歪は、約29%未満である。一つの実施形態において、メソッドB圧縮永久歪は、約28%未満である。一つの実施形態において、メソッドB圧縮永久歪は、約27%未満である。一つの実施形態において、メソッドB圧縮永久歪は、約26%未満である。一つの実施形態において、メソッドB圧縮永久歪は、約25%未満である。
【0035】
本発明の実施形態において、エラストマーは、少なくとも約44%のベイショアー反発弾性を有する場合がある。一つの実施形態において、ベイショアー反発弾性は、少なくとも約45%である。一つの実施形態において、ベイショアー反発弾性は、少なくとも約46%である。一つの実施形態において、ベイショアー反発弾性は、少なくとも約48%である。一つの実施形態において、ベイショアー反発弾性は、少なくとも約50%である。一つの実施形態において、ベイショアー反発弾性は、少なくとも約52%である。一つの実施形態において、ベイショアー反発弾性は、少なくとも約54%である。一つの実施形態において、ベイショアー反発弾性は、少なくとも約55%である。一つの実施形態において、ベイショアー反発弾性は、少なくとも約56%である。一つの実施形態において、ベイショアー反発弾性は、少なくとも約57%である。一つの実施形態において、ベイショアー反発弾性は、少なくとも約58%である。
【0036】
動的応力付加は、圧縮永久歪を生じさせるが、全体としてのその効果は、動的機械的分析などのヒステリシス試験によって、より綿密にシミュレートされる。
【0037】
ウレタンエラストマーの動的特性は、動的機械的分析装置を使用して分析することができる。動的用途のためによい化合物は、それらの部品を用いることとなる作業温度範囲にわたって低いtanδ値及び一定した弾性率値によって一般に象徴される。tanδ=G’’/G’(式中のG’’は損失弾性率であり、及びG’は貯蔵弾性率である)であるので、より低いtanδは、熱に変換されるエネルギーが、蓄えられるエネルギーよりはるかに低いことを意味する。従って、高速、高耐力用途において、より低い発熱が生ずる。
【0038】
さらに、エラストマーは、少なくとも約100℃の温度で少なくとも10Paの弾性率を有し得る。一つの実施形態において、エラストマーは、少なくとも約100℃の温度で少なくとも10Paの弾性率を有し得る。一つの実施形態において、エラストマーは、少なくとも約125℃又は150℃の温度で少なくとも10Paの弾性率を有し得る。
【0039】
本発明の様々な実施形態のエラストマーは、多数の用途において使用することができる。一部の実施形態において、エラストマーは、フィルム、塗料、被膜、積層品として、又は多成分用途の一成分として利用することができる。
【0040】
本発明の様々な実施形態のエラストマーは、ガラス、レンズ、防弾ガラス、建築用造形窓、ハリケーンウィンドウ、防護具、ゴルフボール、ボーリングボール、ローラーブレード車輪、ローラースケート車輪、スケートボード車輪、温室カバー、塗料、床用塗料、屋外用塗料、光電池、フェースマスク、対人保護用具、プライバシースクリーンなどにおいて使用することができる。
【実施例】
【0041】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例証するために提供するものであり、本発明の範囲を限定するためのものではない。別の指示がない限り、すべての部及び百分率は、重量によるものである。
【0042】
以下の材料を使用した:
ポリオール1:約2000の平均分子量を有するポリカプロラクトンポリエステルジオール。The Dow Chemical CompanyからTONE2241として入手可能。
ADI:国際公開第2007/005594号に従って製造した1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの50/50混合物。
12MDI:4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)。Bayer AGからDesmodur Wとして入手可能。このイソシアネートは、H12MDIとしても公知である。
IPDI:イソホロンジイソシアネート(IPDI)。Rhodiaから入手可能。
E100:主として3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミンと、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミンとの混合物からなる硬化剤。Albemarle CorporationからETHACURE 100 Curativeとして入手可能。
E300:主として3,5−ジエチルチオ−2,6−トルエンジアミンと、3,5−ジエチルチオ−2,4−トルエンジアミンの混合物からなる硬化剤。Albemarle CorporationからETHACURE 300 Curativeとして入手可能。
HB 6580:約2000の平均分子量を有するカプロラクトンポリオールに基づくTDIプレポリマー。このプレポリマーは、3.35〜3.65%のNCO含量、(60℃で)3800cPs、(80℃で)1500cPs、及び(100℃で)680cPsの粘度、並びに(60℃で)1.107g/cm及び(80℃で)1.101g/cmの比重を有する。
V 6060:カプロラクトンポリオールに基づくTDIプレポリマー。3.20〜3.50%の有効NCO含量。Chemtura CorporationからVIBRATHANE 6060として入手可能。
MBCA:Anderson Development Companyから入手可能な、4,4’−メチレン−ビス−(o−クロロアニリン)。
TONEは、The Dow Chemical Companyの商標である。
【0043】
先ず、様々な比率でプレポリマーを調製し、その後、それらを連鎖延長剤と反応させ、硬化させることによって、ポリウレタンエラストマーを得る。85℃で6時間、窒素雰囲気下で、様々なNCO/OH比のポリオール1及びジイソシアネートからプレポリマーを調製する。使用する成分の量を下記の表に示す。ヒドロキシル基とイソシアネートの反応の程度をアミン当量法(NCO含量を決定するための滴定)によって決定する。反応が完了した後、得られたプレポリマーを真空下、70℃に置いて気泡を除去する。その後、Falcktek DAC 400FV Speed Mixerを用いて、そのプレポリマーと硬化剤を異なる化学量論比で十分に混合し、その後、115℃に予熱した型に注入する。それらの様々なプレポリマーの反応性に依存して数時間の硬化の後、得られたポリウレタンエラストマーを離型し、110℃で16時間、空気中でさらに後硬化させる。後硬化の後、それらのエラストマーを室温で少なくとも4週間老化させ、その後、それらを様々な試験に付す。
【0044】
硬度(ショアーA)は、ASTM D2240、ゴム特性についての試験法−デュロメーター硬度(Test Method for Rubber Property - Durometer Hardness)に従って測定する。その値が高いほど、そのエラストマーは硬い。
【0045】
応力−歪特性−−破断点引張強度、極限伸び、100%及び300%モジュラス(100%及び300%伸びでの応力);ASTM D 412、引張り時のゴム特性についての試験法(The Methods for Rubber Properties in Tension)。
【0046】
引裂き強度は、ASTM D 470及びASTM D 624、ゴム特性についての試験法−−引裂き抵抗(Test Methods for Rubber Property -- Tear Resistance)に従って測定する。その値が高いほど、そのエラストマーの引裂き抵抗は高い。
【0047】
圧縮永久歪は、メソッドB、ASTM D 395、ゴム特性についての試験法−−圧縮永久歪(Test Methods for Rubber Property -- Compression Set)によって測定する。その値が高いほど、そのエラストマーは、荷重下で試験したときに永続変形をこうむりやすい。
【0048】
レジリエンス、ベイショアー反発弾性は、ASTM D 2632、ゴム特性について試験法−−垂直反発弾性によるレジリエンス(Test Methods for Rubber Property -- Resilience by Vertical Rebound)に従って測定する。その値が高いほど、そのエラストマーのレジリエンスは高い。
【0049】
弾性率は、周期的な変形のもとで材料によって蓄えられるエネルギーを示すために用いられる。それは、印加応力と同相である応力歪応答部分である。貯蔵弾性率は、印加応力が除去されたときに完全に回復するポリマー構造部分に関係する。貯蔵弾性率は、引張りに矩形形状を使用し、商品呼称RSA IIIでTA Instrumentsから入手できる市販のDMA計器を使用する、動的機械的分析(DMA)試験を用いて決定する。試験タイプは、3.0℃/分の昇温速度で−115.0℃の初期温度及び250.0℃の最終温度を伴う動的昇温法である。
【0050】
tanデルタは、動的機械的分析における印加応力と歪応答の間の位相角のタンジェントを示すために用いられる。高いtanδ値は、材料挙動に高粘性成分があり、従って、何らかの摂動に対する強い制動が観察されるであろう。tanデルタは、弾性率について説明したのと同じ計器及び方法論を用いて決定する。
【0051】
実施例1並びに比較例1及び2
表1は、20%ハードセグメント含量のADI(E1)、IPDI(C1)及びH12MDI(C2)に基づくエラストマーの機械的特性及びそれらを製造するために使用した成分を与えるものである。95%の化学量論比でEthacure 100(すなわち、Ethacureのアミノ基の量(98部)に対してプレポリマーのイソシアネート基のわずかに過剰な量(100部))を用いてこれらのエラストマーを連鎖延長する。ハードセグメント含量は比較的低いが、芳香族アミン連鎖延長剤の使用は、これらのエラストマーについての硬度を向上させる。これらのエラストマーは、類似の硬度、引張強度、引裂き強度及び伸びを明示する。しかし、ADI系エラストマー(E1)は、改善されたレジリエンス及び圧縮永久歪を示す。アミン連鎖延長ADI系エラストマー(E1)は、改善されたレジリエンス及び圧縮永久歪を示すので、動的及び静的応力付加用途により適する。
【0052】
【表1】

【0053】
実施例2並びに比較例3及び4
表1は、20%ハードセグメント含量のADI(E2)、IPDI(C3)及びH12MDI(C4)に基づくエラストマーの機械的特性及びそれらを製造するために使用した成分を与えるものである。Ethacure 300でこれらのエラストマーを連鎖延長する。Ethacure 100連鎖延長エラストマーと比較すると、Ethacure 300連鎖延長エラストマーのほうが低い硬度を有する。この場合、ADI(E2)系エラストマーは、引張強度、伸び、引裂き強度、圧縮永久歪及びレジリエンスの点でIPDI(C3)及びH12MDI(C4)系エラストマーに勝る明らかな利点を明示する。
【0054】
【表2】

【0055】
比較例5及び6
一般に、注型エラストマー用途において、脂肪族イソシアネートは、芳香族イソシアネートに基づくものより低い硬度、低い軟化温度及び低減された機械的強度を有する弱いポリマーを生じさせることが多い。表3は、類似したハードセグメント含量の、AID(E1及びE2)系エラストマーとTDI(C5及びC6)に基づくものの性能を比較するものである。ADI系エラストマーは、芳香族系エラストマー(C5)と比較して、改善されたレジリエンス、匹敵する応力−歪特性及びわずかに劣る圧縮永久歪を明示する。これらの差は、Ethacure 100で連鎖延長したADI系エラストマーではさらに顕著である。一方、4,4’−メチレン−ビス−(o−クロロアニリン)(C6)で連鎖延長したVibrathane 6060と比較すると、ADI系エラストマーは、改善された応力−歪特性、引裂き抵抗及びレジリエンスを示すが、その圧縮永久歪は、Vibrathane 6060より高い。Viburathane 6060の低い圧縮永久歪は、このエラストマーのより高い架橋密度に関係するだろう。
【0056】
【表3】

【0057】
動的粘弾特性
Ethacure 100の連鎖延長剤としての使用を伴うADI(E1)、(IPDI)及びH12MDI(C2)系エラストマーについての、図1は、弾性率(剪断貯蔵弾性率)を示し、図2は、20%ハードセグメント含量を有するエラストマーのtanδ値を示す。これらのエラストマーは、広い作業温度範囲にわたって弾性率を維持する高い能力を示す。これは、図1に示すような、すべてのアミン連鎖延長エラストマーについての低いガラス転移温度(−48C)及びより高い軟化温度(155°)によって明白である。しかし、ADI系エラストマーは、IPDI及びH12MDI系エラストマーより広い作業温度範囲にわたって一定した弾性率を維持する点で向上した能力を明示する。加えて、ADI系エラストマーは、図2に示すように作業温度範囲にわたって全体的により低いtanδ値も表示した。これは、AID系エラストマーについてのより低い発熱性、及び従って、より低い使用温度を含意する。さらに、ADI系エラストマーは、IPDI及びH12MDI系エラストマーよりはるかに低い温度で発生する狭いガラス転移ピークを有した。これは、ADI系エラストマーにおける相分離増大を含意する。
【0058】
損失コンプライアンスは、ポリウレタンエラストマーにおける発熱性に直接関係する。図3は、Ethacure 100で連鎖延長した3つのエラストマーの喪失コンプライアンスを示すものである。喪失コンプライアンスは、ソフトセグメントのガラス転移温度でピークに達する。IPDI系エラストマー(C1)は、一般に、作業温度範囲にわたってより高い喪失コンプライアンスを有し、及びハードセグメント融解のため130℃で再び上昇する前に約75℃に追加のピークを有する。H12MDI系エラストマー(C2)の損失コンプライアンスは、約50℃で最小になり、その後、温度上昇に伴って徐々に増加した後、140℃を超えて急上昇する。損失コンプライアンスがその最小値に達する温度は、広く臨界点と呼ばれている。一般に、臨界点より下の温度で材料を使用し続けたい。部品は動的荷重下で加熱する傾向があり、これが応答をより高い温度領域にシフトさせることとなるからである。H12MDI系エラストマーによって示される上昇傾向は、50℃より高い温度で熱損失を増加させ、従って、それを大部分の動的用途に適さないものにするであろう。対照的に、ADI系エラストマー(E1)は、作業温度範囲で低い喪失コンプライアンス値を一般に有する。その喪失コンプライアンスは、約125℃で最小化される。この材料は、100℃より上の温度で、IPDI及びH12MDI系エラストマーよりはるかに低い喪失コンプライアンスも有する。より高い臨界点温度、及び高温領域でのより低い損失コンプライアンス値を有するADI系エラストマーは、高温動的使用にとって理想的である。
【0059】
上述は、本発明の実施形態に関するが、本発明の基本範囲を逸脱することなく本発明の他の及びさらなる実施形態を考え出すことができる。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともプレポリマーと連鎖延長剤の反応生成物を含み(この場合、前記プレポリマーは少なくとも1つのポリオールと少なくとも1つの脂肪族ジイソシアネートの反応生成物を含み、前記連鎖延長剤は芳香族ジアミンを含み、前記脂肪族ジイソシアネートは1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとの混合物を含む)、並びに44%より大きいベイショアー反発弾性(Bashore Rebound)及び約10%〜約50%の間のハードセグメント含量を有する、ポリウレタンエラストマー。
【請求項2】
少なくともプレポリマーと連鎖延長剤の反応生成物を含み(この場合、前記プレポリマーは少なくとも1つのポリオールと少なくとも1つの脂肪族ジイソシアネートの反応生成物を含み、前記連鎖延長剤は芳香族ジアミンを含む)、並びに30%未満の圧縮永久歪及び約10%〜約50%の間のハードセグメント含量を有する、ポリウレタンエラストマー。
【請求項3】
前記脂肪族ジイソシアネートが、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとの混合物を含む、請求項2に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項4】
前記ベイショアー反発弾性が、少なくとも約48%である、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項5】
前記ベイショアー反発弾性が、少なくとも約55%である、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項6】
前記圧縮永久歪が、27%未満である、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項7】
前記圧縮永久歪が、25%未満である、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項8】
前記ポリオールが、ポリカプロラクトンポリエステルジオールを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項9】
前記脂肪族ジイソシアネートが、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとの混合物を、約80:20〜約20:80の1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに対する重量比で含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項10】
前記比率が、約55:45である、請求項9に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項11】
前記比率が、約45:55である、請求項9に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項12】
前記連鎖延長剤が、1,4−ブタンジオールを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項13】
前記連鎖延長剤が、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン及び3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミンを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項14】
前記連鎖延長剤が、3,5−ジメチルチオ−2,6−トルエンジアミン及び3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミンを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマーを含む、物品。
【請求項16】
フィルム、塗料、積層品、ガラス、レンズ、防弾ガラス、建築用造形窓、ハリケーンウィンドウ、防護具、ゴルフボール、ボーリングボール、ローラーブレード車輪、ローラースケート車輪、スケートボード車輪、温室カバー、床用塗料、屋外用塗料、光電池、フェースマスク、対人保護用具、及びプライバシースクリーンのうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載の物品。
【請求項17】
少なくともポリオールと脂肪族ジイソシアネートを反応させてプレポリマーを形成すること、及び
前記プレポリマーと連鎖延長剤を反応させて、請求項1から14のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマーを形成すること
を含む、ポリウレタンエラストマーの形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−518898(P2011−518898A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504142(P2011−504142)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/039846
【国際公開番号】WO2009/126673
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】