説明

ポリウレタン分散体に基づく水性コーティング組成物

【課題】イソシアネート架橋剤と連動して、ソフトフィール効果および同時に特に皮膚保護および皮膚ケアクリーム、特に日焼け防止クリームに対する耐性を有するコーティング組成物を製造する適当なポリウレタン成分を提供する。
【解決手段】アミド構造単位含有水希釈性ヒドロキシ官能性ポリウレタン、それらの製造方法、それらから製造される水性コーティング組成物、およびコーティング基材のためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミド構造単位含有水希釈性ヒドロキシ官能性ポリウレタン、それらの製造方法、それらから製造された水性コーティング組成物、およびコーティング基材のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
何年もの間、乗用車分野における軽量化の努力は、内装においても同様に、プラスチックの使用の増大に連動している。審美的および技術的要求のため、車中のプラスチック成分は、典型的に、外的影響、例えば日光および化学薬品、熱および機械的暴露に対してプラスチックを保護するため、特定の陰影および色彩効果を得るため、プラスチック表面における欠陥を覆うため、またはプラスチック表面に心地よい感触(触覚(tactility))を与えるため、被覆される。車の内装のプラスチック成分の触覚特性を増強するため、近年、いわゆるソフトフィールコーティング材料が次第に使用されてきている。本発明の目的のための「ソフトフィール効果」は、被覆表面の特定の触感(触覚)を示す。この触覚は、ビロードのような、ソフトな、ゴムのような、または暖かい、のような用語を使用して説明することができる。一方、例えば、塗装車体表面、あるいは未塗装ポリマーシートまたはプレキシガラス、または通例のクリアコートまたはトップコート材料で被覆された同様のプレートまたはプレキシガラスは、冷たいおよび滑らかな感じがする。
【0003】
ポリウレタン化学に基づく水性ソフトフィールコーティング材料は、欧州特許EP−A0669352(特許文献1)中に例示されている。同様に、優れたソフトフィール効果として、これらのコーティング材料も、高安定性のプラスチック基材に対する保護効果を有するコーティングを生じさせる。
【0004】
その間に、自動車内装分野のためのソフトフィールコーティング材料に課せられた要求、特に皮膚保護および皮膚ケアに使用されるクリーム(例えばサンクリームまたはサンローション)に対する耐性に関する要求は、最新式のコーティング材料によっても、これらの要求を全く満たすことができないか、またはソフトフィール効果に関する減損を伴ってのみ満たされる程度にまで上昇している。
【0005】
顕著なソフトフィール効果を伴いつつ、同時に良好な耐性、特に皮膚保護および皮膚ケアに使用されるクリームに対する耐性を有する水性コーティング組成物に対する要求は、存在し続けている。
【0006】
驚くべきことに、今回、アミド構造単位を含んでなる水希釈性ヒドロキシ官能性ポリウレタンが、例えば、皮膚保護および皮膚ケアに使用されるクリーム、例えばサンクリームまたはサンローションに対する優れた耐性、および同時に顕著なソフトフィール効果を特徴とするコーティング材料を製造するのに適当であることが見出された。
【0007】
米国特許US−A5,780,559(特許文献2)は、末端アミド基を含有し、およびメラミン樹脂を使用して架橋され得るフィルム形成ポリウレタンを開示する。該コーティングの耐酸性および硬度は高い。しかしながら、特許文献2に開示されたポリウレタンは、水系における使用に適当ではない。さらに、特許文献2に記載されたフィルム形成ポリマーは、自動車内装分野における適用に適当ではない。なぜなら、この架橋に必要とされる温度は、自動車内装分野において典型的に使用されるプラスチック材料に用いることができないためである。
【0008】
米国特許US−A2002/0068789(特許文献3)は、アミド基含有ポリウレタンの水性分散体を開示するが、本発明による構造を含有しない。それらは、アミド基に対して反応性である架橋剤を用いて反応される。特に乗用車分野においてOEMコーティングとして使用される熱硬化性1成分系が得られる。
【特許文献1】欧州特許EP−A0669352
【特許文献2】米国特許US−A5,780,559
【特許文献3】米国特許US−A2002/0068789
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、イソシアネート架橋剤と連動して、ソフトフィール効果および同時に特に皮膚保護および皮膚ケアクリーム、特に日焼け防止クリームに対する耐性を有するコーティング組成物を製造する適当なポリウレタン成分を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本目的は、本発明の水希釈性ポリウレタンを通じて達成される。
本発明は、式(I):
【0011】
【化1】

〔式中
R1は、2〜18個の炭素原子を有する脂肪族または脂環族基であり、および
R2は、3〜5個の炭素原子を有する脂肪族基である〕
で示される構造単位を含んでなる水希釈性ヒドロキシ官能性ポリウレタンを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のポリウレタンは、(CO)NHとして計算して2.0重量%〜20重量%、好ましくは2.0重量%〜15重量%、特に好ましくは3.0〜10重量%のアミド基含量を有する。
【0013】
好ましくは、合成成分として
A1)314〜5000Daの数平均分子量Mnを有する少なくとも1つのアミド基含有ポリオール25重量%〜80重量%(好ましくは30重量%〜60重量%)、
A2)ポリエステル、ポリカーボネートおよびポリエーテルの群から選択される400〜6000Daの数平均分子量Mnを有する少なくとも1つのポリオール0重量%〜60重量%(好ましくは10重量%〜50重量%)、
A3)62〜400Daの数平均分子量を有し、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つの低分子量ポリオール0重量%〜20重量%(好ましくは1重量%〜15重量%)、
A4)イソシアネート基に対して反応性の少なくとも2つの基、および陰イオンを形成し得る少なくとも1つの基を有する少なくとも1つの化合物2重量%〜10重量%(好ましくは3重量%〜8重量%)、および
A5)ポリイソシアネート5重量%〜50重量%(好ましくは8重量%〜30重量%)
〔成分A1)〜A5)の合計は100%である〕
を含有する水希釈性ヒドロキシ官能性ポリウレタンが挙げられる。
【0014】
成分A1)として適当なアミド基含有ポリオールの例は、ジオールならびに適切であればトリオールおよびテトラオールから、およびジカルボン酸ならびに適切であればトリカルボン酸およびテトラカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸またはラクトンから合成されるポリエステルポリオールである。ポリエステルポリオールを製造するために、遊離ポリカルボン酸の代わりに、対応するポリカルボン酸無水物または対応する低級アルコールのポリカルボン酸エステルも使用することができる。
【0015】
適当なジオールの例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、ならびに1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオールおよび異性体、ネオペンチルグリコールであり、最後の3つの化合物が好ましい。適切であれば同様に使用され得るポリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトールまたはトリスヒドロキシエチル−イソシアヌレートが挙げられる。
【0016】
適当なジカルボン酸の例としては、以下のものが挙げられる:フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マロン酸、スベリン酸、2−メチル−コハク酸、およびそれらの可能性のある無水物。しかしながら、本発明の目的のため、無水物は、表現「酸」に包含される。また、ポリオールの平均OH官能価が≧2である場合、モノカルボン酸、例えば安息香酸およびヘキサンカルボン酸を使用することもできる。飽和脂肪族または芳香族酸が好ましく、例えばアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロ−およびテトラヒドロフタル酸またはイソフタル酸が好ましい。適切であれば少量でのさらなる使用のためのポリカルボン酸として、トリメリト酸を挙げることができる。
【0017】
末端ヒドロキシル基を有するポリエステルポリオールを製造する場合に共反応体として使用され得るヒドロキシカルボン酸の例は、ヒドロキシカプロン酸およびヒドロキシ酪酸である。適当なラクトンは、カプロラクトン、ブチロラクトンおよびそれらの同族体などである。
【0018】
しかしながら、本発明に必要不可欠なことは、本発明のポリウレタンを製造する場合、1以上のアミド基含有ポリオール成分を使用することである。例えば、ポリアミンとラクトンとの反応によって、適当なアミド基含有ポリオールを得ることができる。好ましいポリアミンは、脂肪族ジアミン、例えばエチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン(Dytec(登録商標) A、DuPont/バートホンブルク)、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン)、ピペラジン、1,4−ジアミノ−シクロヘキサンまたはビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンの異性体およびそれらの混合物、ならびにLaromin(登録商標) C260(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルシクロヘキシルメタン、BASF AG、独国)である。適当なラクトンは、工業規模で利用可能な全てのラクトン、特にε−カプロラクトンである。
【0019】
本発明のポリウレタンは、好ましくは1,6−ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチル−シクロヘキサン(イソホロンジアミン)、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンの異性体、およびそれらの混合物からなる群から選択される化合物と、ε−カプロラクトンとの反応生成物を含んでなる。この場合、典型的に、該アミンのアミノ基当たり少なくとも1つの、好ましくは1〜5つの、より好ましくは1つのε−カプロラクトン分子を添加する。
【0020】
上記ジアミンとε−カプロラクトンとの反応生成物を、さらなる反応をせずとも、合成成分A1)として直接使用することができる。
【0021】
さらなる好ましい実施態様において、アミド基含有ポリオール成分は、成分A1)としての使用に適当なアミド基含有ポリエステルポリオールの形成において、合成成分として使用される。
【0022】
成分A1)は、(CO)NHとして計算して少なくとも7.5重量%、好ましくは少なくとも9重量%のアミド基含量を有する式(I)で示される構造単位を含んでなる。アミド基含有ポリオールA1)は、314〜5000Da、好ましくは398〜2000およびより好ましくは398〜1250の数平均分子量Mnを有する。
【0023】
成分A2)として使用することができるポリエステルポリオールは、400〜6000Da、好ましくは600〜3000Da、より好ましくは1500〜2200Daの数平均分子量Mnを有し、それらのヒドロキシル価は、20〜400mgKOH/g、好ましくは50〜200mgKOH/gおよびより好ましくは80〜160mgKOH/gであり、およびそれらは、1.5〜3.5、好ましくは1.8〜2.7およびより好ましくは1.95〜2.5のOH官能価を有する。
【0024】
非常に適当な例は、A1)に関して既に記載したような、ジオールならびに適切であればポリオールの、ジカルボン酸ならびに適切であればポリカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸またはラクトンの、従来の重縮合物である。
【0025】
また、ポリオール成分として適当なものは、ラクトンのホモポリマーまたはコポリマーであり、これらは、好ましくはラクトンまたはラクトン混合物、例えばγ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンおよび/またはメチル−ε−カプロラクトンと、2および/またはそれより多くの官能価を有する適当なスターター分子、例えば、ポリエステルポリオールのための合成成分として上記で特定された低分子量多価アルコールなどとの付加によって得られる。
【0026】
さらに、成分A2)として適当なものは、例えば、炭酸誘導体、例えば炭酸ジフェニル、炭酸ジメチルまたは炭酸ジエチルなど、またはホスゲンと、ポリオール、好ましくはジオールとの反応によって得ることができるヒドロキシル含有ポリカーボネートである。このような適当なジオールとしては、例えば、ブタン−1,4−ジオールおよびヘキサン−1,6−ジオール、ならびにラクトン変性ジオールが挙げられる。成分A2)として特に好ましいものは、20〜172mgKOH/g、より好ましくは28〜112mgKOH/gのヒドロキシル価、および1.6〜3、好ましくは1.9〜2.3およびより好ましくは1.95〜2の平均官能価を有するポリカーボネートポリオールである。
【0027】
ポリウレタン樹脂を合成するのに使用する低分子量ポリオールA3)は、通常、ポリマー鎖を硬化および/または分岐する効果を有し、および一般に、62〜400Da、好ましくは62〜200Daの数平均分子量を有する。それらは、脂肪族、脂環族または芳香族基を含有し得る。その例としては、1分子当たり20個までの炭素原子を有する低分子量ポリオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、ハイドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシ−フェニル)プロパン)、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシ−シクロヘキシル)プロパン)およびそれらの混合物、ならびにトリメチロール−プロパン、グリセロールまたはペンタエリスリトールが挙げられる。同様に、エステルジオール、例えばδ−ヒドロキシブチル−ε−ヒドロキシ−カプロン酸エステル、ω−ヒドロキシヘキシル−γ−ヒドロキシ酪酸エステル、β−ヒドロキシエチルアジペートまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートも使用することができる。
【0028】
成分A4)として適当なイオン性または潜在的イオン性化合物は、例えば、ジヒドロキシカルボン酸、ジアミノカルボン酸、ジヒドロキシスルホン酸、ジアミノスルホン酸およびそれらの塩、例えば、2−(2−アミノエチル−アミノ)エタンスルホン酸、エチレンジアミン−プロピル−またはブチルスルホン酸、1,2−または1,3−プロピレンジアミン−β−エチルスルホン酸、3,5−ジアミノ安息香酸、欧州特許EP−A0916647の実施例1の親水性化剤およびそれらのアルカリ金属塩および/またはアンモニウム塩など;親水性合成成分としての、重亜硫酸ナトリウムとブタ−2−エン−1,4−ジオールの付加生成物、2−ブテンジオールおよびNaHSOのプロポキシル化付加生成物(例えば独国特許DE−A2446440、5〜9頁、式I〜III)である。好ましいイオン性または潜在的イオン性化合物A4)は、カルボキシル基および/またはカルボキシレート基を有するものである。好ましいイオン性化合物A4)は、ジヒドロキシカルボン酸、特にα,α−ジメチロールアルカン酸、例えば2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロールペンタン酸またはジヒドロキシコハク酸である。特に好ましくは、2,2−ジメチロールプロピオン酸および2,2−ジメチロール酪酸である。
【0029】
成分A5)の適当なポリイソシアネートは、好ましくは≧2のイソシアネート官能価を有する、当業者に自体既知の芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環族ポリイソシアネートである。これらは、イミノオキサジアジンジオン、イソシアヌレート、ウレトジオン、ウレタン、アロファネート、ビウレット、尿素、オキサジアジントリオン、オキサゾリジノン、アシル尿素および/またはカルボジイミド構造も含有し得る。これらのポリイソシアネートは、個々にまたは任意の所望の互いの混合物で使用することができる。
【0030】
適当なポリイソシアネートの例は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4および/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネートまたはそれらの混合物、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネートおよび1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の異性体、またはウレトジオン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造を有する上記ジイソシアネートに基づく、2つより多くのイソシアネート基を有する誘導体である。
【0031】
上記種類のポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物は、好ましくは専ら脂肪族的におよび/または脂環族的に結合したイソシアネート基を含有するものである。特に好ましいものは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネートの異性体、およびそれらの混合物である。
【0032】
本発明の水希釈性ポリウレタンの製造は、原理上既知の方法によって行う。例えば、それらを、まず、成分A5)および成分A1)〜A4)の1以上の化合物からイソシアネート官能性プレポリマーを製造し、次いで、第二の反応工程において、非水性媒体中、A1)〜A4)の化合物の1つ、好ましくはA3)およびA4)の化合物の1つと反応させることによって、OH官能性ポリウレタンを得ることにより、製造することができる。
あるいは、例えば欧州特許EP−A0427028第4頁第54行〜第5頁第1行に記載されるように、製造を、非水性媒体中、成分A1)〜A5)を対応するモル比で反応させることによって、OH含有ポリウレタン樹脂を直接形成することにより行うことができる。
【0033】
ウレタン化反応またはプレポリマー製造は、通常、用いるイソシアネートの反応性に応じて、30℃〜140℃の温度にて行う。ウレタン化反応を、NCO−OH反応を促進するための当業者に既知の種類の適切な触媒を使用して促進することができる。触媒の例は、第3級アミン(例えばトリエチルアミン)、有機錫化合物(例えばジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジラウレートまたは錫ビス(2−エチルヘキサノエート))、または他の有機金属化合物である。
【0034】
また、ウレタン化反応を、イソシアネートに対して不活性である溶媒の存在下に行うことができる。この目的に特に適当な溶媒は、水と相溶性であるもの、例えばエーテル、ケトンおよびエステルならびにN−メチル−またはN−エチルピロリドンなどである。適当には、この溶媒の量は、いずれの場合もポリウレタン樹脂および溶媒の合計に基づいて、30重量%を超えず、および好ましくは≦25重量%、より好ましくは≦10重量%である。該ポリイソシアネートは、残りの成分の溶液に添加することができる。
【0035】
成分A4)を介してポリウレタン樹脂中に組み込まれる酸基は、少なくとも部分的に中和することができる。中和に特に適当なものは、第3級アミンであり、その例は、各アルキル基中に1〜12個(好ましくは1〜6個)の炭素原子を有するトリアルキルアミンである。その例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリプロピルアミンおよびジイソプロピルエチルアミンである。また、該アルキル基は、例えば、ヒドロキシル基を有していてもよく、例えばジアルキルモノアルカノールアミン、アルキルジアルカノールアミンおよびトリアルカノールアミンであり得る。その例は、ジメチルエタノールアミンであり、これは好ましくは中和剤として役立つ。また、中和剤として、適切であれば無機塩基(例えばアンモニアまたは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)を使用することができる。該中和剤は、通常、プレポリマーの酸基に対して0.3:1〜1.6:1、好ましくは0.5:1〜1.3:1のモル比で使用する。
【0036】
COOH基を、ウレタン化反応の前、間または後に中和することができる。該中和工程は、好ましくはウレタン化反応に続いて、一般に室温と120℃の間、好ましくは60〜100℃にて行う。また、非中和形態の水希釈性ポリウレタン樹脂を提供することもでき、および例えば、水性コーティング組成物を製造する場合、例えば本発明の水希釈性ポリウレタンを実質的にOH非含有のポリウレタン分散体に組み込む場合にのみ、中和を行うこともできる。
【0037】
本発明の水希釈性ポリウレタン樹脂は、通常、1,000〜30,000Da(好ましくは1,500〜10,000Da)の数平均分子量Mn、10〜80(好ましくは15〜40)の酸価、および15〜165mgKOH/g(好ましくは30〜125mgKOH/g)のOH価を有する。
【0038】
本発明のポリウレタン樹脂は、水性分散体の形態および水希釈性有機溶液の形態の両方で使用することができる。後者の場合、水希釈性ポリウレタンの固形分は、50重量%〜90重量%、好ましくは70重量%〜90重量%およびより好ましくは75重量%〜90重量%である。100重量%までの残りは、上記種類の有機溶媒ならびに適切であればコーティング材料に典型的である助剤および添加剤からなる。
【0039】
したがって、本発明は、本発明の水希釈性ヒドロキシ官能性ポリウレタンを含んでなり、50重量%〜90重量%の水希釈性ポリウレタン固形分を有し、有機溶媒ならびに適切であればコーティング材料に典型的である助剤および添加剤からなる残りで100重量%となる有機溶液を提供する。
【0040】
本発明のポリウレタン樹脂が水性分散体の形態であることが望まれる場合、それらを、水の添加または水中への導入によって、(上記中和剤によるカルボン酸基の少なくとも部分的中和に続いて)安定性水性分散体に容易に変換することができる。該水性分散体は、35重量%〜70重量%、好ましくは40重量%〜65重量%、より好ましくは50〜60重量%の固体を有する。
【0041】
同様に、本発明は、本発明の水希釈性ヒドロキシ官能性ポリウレタンを含んでなり、35重量%〜70重量%の水希釈性ポリウレタン固形分を有し、水、適切であれば有機溶媒、ならびに適切であればコーティング材料に典型的である助剤および添加剤からなる残りで100重量%となる分散体を提供する。
【0042】
本発明の水希釈性ポリウレタンを、水性コーティング組成物に加工することができる。その結果として、本発明のポリウレタン樹脂を含んでなる水性コーティング組成物ならびに少なくとも1つの架橋剤、好ましくはポリイソシアネート架橋剤、より好ましくは遊離イソシアネート基を有するポリイソシアネート架橋剤も同様に、本発明によって提供される。
【0043】
適当な架橋剤の例は、ポリイソシアネート架橋剤、アミドおよびアミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、アルデヒドおよびケトン樹脂、例えばフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、レゾール、フラン樹脂、尿素樹脂、カルバミド酸エステル樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シアナミド樹脂またはアニリン樹脂である。
【0044】
使用される好ましい架橋剤は、遊離および/またはブロックトイソシアネート基を有するポリイソシアネートである。好ましくは、例えばイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)メタンまたはそれらの混合物に基づくブロックされていないイソシアネート基を有する架橋樹脂、ならびにウレトジオン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、カルボジイミド、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造で変性された上記ポリイソシアネートの架橋樹脂が挙げられる。
【0045】
特に好ましいのは、適切であれば親水性変性を有する、上記種類の低粘度ポリイソシアネートの使用である。例えば半化学量論的量の1価の親水性ポリエーテルアルコールを用いる反応によって、ポリイソシアネートの親水性化が可能である。この種類の親水性化ポリイソシアネートの製造は、例えば欧州特許EP−A0540985(第3頁第55行〜第4頁第5行)中に記載されている。また、非常に適当なものは、欧州特許EP−A959087(第3頁第39〜51行)中に記載されているアロファネート基含有ポリイソシアネートであり、これらは、アロファネート化条件下、低モノマー含量ポリイソシアネートとポリエチレンオキシドポリエーテルアルコールを反応させることによって製造される。また、適当なものは、独国特許DE−A10007821(第2頁第66行〜第3頁第5行)中に記載されているトリイソシアナトノナンに基づく水分散性ポリイソシアネート混合物、ならびに、例えば独国特許DE−A10024624(第3頁第13〜33行)に開示されているようなイオン性基(スルホネート基、ホスホネート基)で親水性化されたポリイソシアネートである。
【0046】
これらのポリイソシアネートは、一般に、23℃にて200〜15,000mPas(好ましくは500〜7,500mPas)の粘度を有する。必要な場合、該ポリイソシアネートは、粘度を開始時の範囲内に数値を低下させるために、少量の不活性溶媒とブレンドして用いることができる。同様に、トリイソシアナトノナンを、単独でまたは混合物の状態で、架橋剤成分として使用することができる。
【0047】
かくして得られる本発明のポリウレタンを含んでなる水性コーティング組成物は、フィルムの表面品質および耐性に関する要求が存在する水性塗料およびコーティング系が使用される全ての分野に適当である。その例は、鉱物建築材料の表面のコーティング、木材および木材ベースの材料のニス塗りおよび封止、金属表面のコーティング(金属コーティング)、アスファルトまたは瀝青質被覆のコーティングおよび塗装、種々のプラスチック表面の塗装および封止(プラスチックコーティング)、ならびに高光沢ワニスである。しかしながら、特に、それらは、高い耐溶媒性および、特に(日焼けローション試験において)サンローションに対して高い耐性を保証するソフトフィール効果コーティング材料を製造するのに適当である。この種類のコーティング組成物は、好ましくは典型的に室温と130℃との間の温度で硬化するプラスチックコーティングまたは木材コーティングにおいて使用される。
【0048】
本発明の水希釈性ポリウレタンを含んでなる水性コーティング組成物は、典型的に、1回被覆仕上げまたは多重被覆建築物のクリアコートまたはトップコート(最上位コート)において用いられる。
【0049】
コーティングは、種々の噴霧法、例えば圧縮空気噴霧法、無気噴霧法または静電噴霧法によって、例えば1成分または適切であれば二成分噴霧ユニットを使用して製造することができる。しかしながら、本発明の結合剤分散体を含んでなる塗装およびコーティング組成物は、他の方法、例えば刷毛塗り、ローリングまたはナイフコーティングなどによって付与することもできる。
【実施例】
【0050】
他に示さない限り、全ての百分率は重量基準である。
粘度測定を、DIN 53019にしたがって、Paar−Physica MRC 51コーンプレート粘度計(Anton Paar、シュトゥットガルト、独国)を使用して剪断速度40s−1にて行った。
平均粒度を、レーザー相関分光法(Zetasizer(登録商標) 1000、Malvern Instruments、ヘレンベルク、独国)によって決定した。
ヒドロキシル価(OH−N):単位mgKOH/g;DIN 53240による決定方法。
酸価(A−N):単位mgKOH/g;DIN ISO 3682による決定方法。
【0051】
〔原料〕
Acematt(登録商標) OK 412:艶消剤(Degussa、フランクフルト)
Aquacer(登録商標) 535:ワックスエマルジョン(Byk Chemie、ヴェーゼル)
Bayblend(登録商標) T65:ポリカーボネート(PC)およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)に基づく無定形熱可塑性ポリマー・ブレンド(Bayer MaterialScience、レバークーゼン)
Bayferrox(登録商標) 318 M:顔料(Lanxess AG、レバークーゼン)
Bayhydrol(登録商標) PR 650:50%水性脂肪族ポリウレタン樹脂分散体(Bayer MaterialScience、レバークーゼン)
Bayhydrol(登録商標) PT 355:55%水性脂肪族ヒドロキシ官能性ポリエステル−ポリウレタン分散体、固体のOH含量1.5%(Bayer MaterialScience、レバークーゼン)
Bayhydur(登録商標) 3100:親水的変性脂肪族ポリイソシアネート(Bayer MaterialScience、レバークーゼン)
Byk(登録商標) 348:湿潤剤(Byk Chemie、ヴェーゼル)
Desmophen(登録商標) C1200:直鎖状脂肪族ポリカーボネート−ポリエステル、OH−N=56(Bayer MaterialScience、レバークーゼン)
Desmorapid(登録商標) SO:ウレタン化触媒(Bayer MaterialScience、レバークーゼン)
Entschauumer DNE:消泡剤(K.Obermayer、バード・ベルレブルグ)
PACM(登録商標) 20:ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンの異性体混合物(DuPont、バートホンブルク)
Pergopak(登録商標) M3:充填艶消剤(Martinswerk、ベルクハイム)
Silitin(登録商標) Z 86:充填剤(Hoffmann & Soehne、ノイブルク)
Talc IT Extra:充填剤(Norwegian Talc、フランクフルト)
Tego(登録商標) Wet KL 245:湿潤剤(水中50%;Tego Chemie、エッセン)
【0052】
〔実施例1〕アミド基含有ジオール
攪拌機、加熱ジャケット、温度計、蒸留塔および窒素注入口を有する5Lの反応容器に、460gのε−カプロラクトンを充填し、およびこの最初の充填物を、10〜12L/時間の窒素流下、140℃に加熱した。次いで、420gのPACM(登録商標) 20を、温度が160℃を超えないような速度で滴下した。攪拌を140℃にて4時間続けた。室温まで冷却することにより、ジアミンジオールを透明な粘性樹脂として得た。
アミド基含量(CONHに基づく):19.6重量%
【0053】
〔実施例2〕アミド基含有ジオール
攪拌機、加熱ジャケット、温度計、蒸留塔および窒素注入口を有する5Lの反応容器に、460gのε−カプロラクトンを充填し、およびこの最初の充填物を、10〜12L/時間の窒素流下、140℃に加熱した。次いで、340gの1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン)を、温度が160℃を超えないような速度で滴下した。攪拌を140℃にて4時間続けた。室温まで冷却することにより、ジアミンジオールを透明な粘性樹脂として得た。
アミド基含量(CONHに基づく):21.5重量%
【0054】
〔実施例3〕アミド基含有ポリエステルジオール
攪拌機、加熱ジャケット、温度計、蒸留塔および窒素注入口を有する5Lの反応容器に、970gのε−カプロラクトンおよび893gのPACM(登録商標) 20を充填し、およびこの最初の充填物を、10〜12L/時間の窒素流下、120℃にて溶解させた。次いで、攪拌機を作動させ、および温度を140℃まで2時間にわたって上昇させた。該混合物を攪拌しながら140℃にて6時間放置した。次いで、252gの無水フタル酸、994gのアジピン酸、1034gのヘキサン−1,6−ジオールおよび133gのネオペンチルグリコールを添加し、および該反応混合物を220℃に8時間にわたって加熱した。それを、酸価(A−N)が3未満に低下するまで220℃に保持した。これにより、2.7のA−Nおよび176のOH−Nを有する高粘性透明ポリエステル樹脂を得た。
アミド基含量(CONHに基づく):9.1重量%
【0055】
〔実施例4〕アミド基含有ポリエステルジオール
攪拌機、加熱ジャケット、温度計、蒸留塔および窒素注入口を有する5Lの反応容器に、1797gのε−カプロラクトンおよび1656gのPACM(登録商標) 20を充填し、およびこの最初の充填物を、10〜12L/時間の窒素流下、120℃にて溶解させた。次いで、攪拌機を作動させ、および温度を140℃まで2時間にわたって上昇させた。該混合物を攪拌しながら140℃にて6時間放置した。次いで、156gの無水フタル酸、614gのアジピン酸、366gのヘキサン−1,6−ジオールおよび82gのネオペンチルグリコールを添加し、および該反応混合物を220℃に8時間にわたって加熱した。それを、酸価(A−N)が3未満に低下するまで220℃に保持した。これにより、2.5のA−Nおよび165のOH−Nを有する高粘性透明ポリエステル樹脂を得た。
アミド基含量(CONHに基づく):15.0重量%
【0056】
〔実施例5〕本発明のポリウレタン
冷却、加熱および攪拌装置を有する5lの反応容器に、窒素雰囲気下、570gのDesmophen(登録商標) C1200、585gの実施例3からのアミド官能性ポリエステル、60gのジメチロールプロピオン酸および45gのトリメチロールプロパンを充填した。この最初の充填物を130℃に加熱し、および30分間均質化した。次いで、それを80℃まで冷却し、および1.1gのDesmorapid(登録商標) SOおよび240gのヘキサメチレンジイソシアネートを、激しく攪拌しながら添加した。該反応の発熱を利用して、該混合物を140℃まで温度上昇させた。それを、イソシアネート基がもはや検出できなくなるまでこの温度に維持した。
次いで、得られたポリウレタンを、90℃〜100℃まで冷却し、19gのジメチルエタノールアミンを添加し、および分散を1230gの水を用いて室温にて行った。得られた分散体は、55重量%の固形分を有し、および樹脂固体に基づいて、53のOH−Nおよび18.1のA−Nを有した。
アミド基含量(CONHに基づく):3.5重量%
【0057】
〔実施例6〕本発明のポリウレタン
冷却、加熱および攪拌装置を有する5lの反応容器に、窒素雰囲気下、1084gの実施例3からのアミド官能性ポリエステル、60gのジメチロールプロピオン酸および45gのトリメチロールプロパンを充填した。この最初の充填物を130℃に加熱し、および30分間均質化した。次いで、それを80℃まで冷却し、および1.1gのDesmorapid(登録商標) SOおよび310gのヘキサメチレンジイソシアネートを、激しく攪拌しながら添加した。該反応の発熱を利用して、該混合物を140℃まで温度上昇させた。それを、イソシアネート基がもはや検出できなくなるまでこの温度に維持した。
次いで、得られたポリウレタンを90℃〜100℃まで冷却し、19gのジメチルエタノールアミンを添加し、および分散を1045gの水を用いて室温にて行った。得られた分散体は、59重量%の固形分を有し、および樹脂固体に基づいて、50のOH−Nおよび18.8のA−Nを有した。
アミド基含量(CONHに基づく):6.8重量%
【0058】
〔実施例7〕本発明のポリウレタン
冷却、加熱および攪拌装置を有する5lの反応容器に、窒素雰囲気下、570gのDesmophen(登録商標) C1200、585gの実施例4からのアミド官能性ポリエステル、60gのジメチロールプロピオン酸および45gのトリメチロールプロパンを充填した。この最初の充填物を130℃に加熱し、および30分間均質化した。次いで、それを80℃まで冷却し、および1.1gのDesmorapid(登録商標) SOおよび240gのヘキサメチレンジイソシアネートを、激しく攪拌しながら添加した。該反応の発熱を利用して、該混合物を140℃まで温度上昇させた。それを、イソシアネート基がもはや検出できなくなるまでこの温度に維持した。
【0059】
次いで、得られたポリウレタンを90℃〜100℃まで冷却し、19gのジメチルエタノールアミンを添加し、および分散を1160gの水を用いて室温にて行った。得られた分散体は、55重量%の固形分を有し、および樹脂固体に基づいて、46のOH−Nおよび18.1のA−Nを有した。
アミド基含量(CONHに基づく):5.9重量%
【0060】
〔実施例8〕本発明のポリウレタン
冷却、加熱および攪拌装置を有する5lの反応容器に、窒素雰囲気下、570gのDesmophen(登録商標) C1200、585gの実施例1からのアミド官能性ジオール、60gのジメチロールプロピオン酸および45gのトリメチロールプロパンを充填した。この最初の充填物を130℃に加熱し、および30分間均質化した。次いで、それを80℃まで冷却し、および1.1gのDesmorapid(登録商標) SOおよび240gのヘキサメチレンジイソシアネートを、激しく攪拌しながら添加した。該反応の発熱を利用して、該混合物を140℃まで温度上昇させた。それを、イソシアネート基がもはや検出できなくなるまでこの温度に維持した。次いで、得られたポリウレタンを90℃〜100℃まで冷却し、19gのジメチルエタノールアミンを添加し、および分散を1160gの水を用いて室温にて行った。得られた分散体は、54重量%の固形分を有し、および樹脂固体に基づいて、72.5のOH−Nおよび18.1のA−Nを有した。
アミド基含量(CONHに基づく):7.6重量%
【0061】
〔適用例〕
2成分ソフトフィールコーティング材料の組成式
【0062】
【表1】

【0063】
〔ソフトフィールコーティング材料の分散体〕
コーティング材料を製造するために、表1(成分1および2)に示す結合剤を、表1の量的数値にしたがって表1に示す添加剤および脱塩水を用いてビーズミル中で分散させて、水性ミルベースを得る。室温にて16時間の放置時間後、酢酸メトキシプロピル中の75%濃度のポリイソシアネート架橋剤Bayhydur(登録商標) 3100の溶液(成分3、表1に示す量)を、溶解機を使用してこのミルベース中に組み込む。
かくして得られるコーティング材料を、噴霧により平面に付与し(乾燥フィルム厚み40μm〜50μm)、次いで、55%相対大気湿度での10分間のフラッシュオフ時間の後、80℃にて30分間、次いで60℃にて16時間乾燥させる。
これにより、顕著にソフトフィールの効果を有する均一なマットコーティングフィルムを得る。これをビロードのような滑らかさと説明することができる。
【0064】
〔耐溶媒性の決定〕
耐溶媒性を決定するため、上記表1のソフトフィールコーティング材料を上記のようにガラスに付与し、および乾燥させた。試験目的のため、溶媒を浸した綿パッドをコーティング上に置く。低沸点溶媒の場合、綿パッドを腕時計のガラスでさらに覆う。1分間の暴露時間後、評価を行う。次いで、綿パッドを除去し、および残留溶媒をセルロースクロスを使用して拭き取る。次いで、試験領域を、検査および指の爪で引っ掻くことによって直ちに格付けする(評価について以下参照)。
【0065】
【表2】

【0066】
〔評価〕
0:変化無し、損傷無し
1:わずかな変性(膨れの環は非常に弱く、光のもとでの反射によってのみ目に見え、指の爪によって軟化を確認できない)
2:非常に小さい変性(膨れの環は明るい所で目に見え、指の爪の引っ掻き跡が目に見える)
3:著しい変性(完全な膨れの環が明らかに目に見え、指の爪による引っ掻き跡が目に見え、軟化が確認される)
4:激しい変性(完全な膨れの環が顕著に目立ち、指の爪による引っ掻きが基材まで可能であり、粘着性)
5:破損(コーティング材料表面脱離/破損)。
【0067】
実施例9〜11のアミド官能性ポリウレタン樹脂含有コーティング材料は、標準(実施例12)よりも実質的に良好な耐溶媒性によって区別される。
【0068】
〔耐クリーム性の決定〕
耐溶媒性を決定するため、上記表1のソフトフィールコーティング材料を上記のようにBayblend(登録商標) T65試験シートに付与し、および乾燥させた。
【0069】
約1mlの各試験媒体(Coppertone Waterbabies SPF30耐水性、製造業者:Schering−Plough HealthCare Products Inc.;Delial Plus Vitamin SF30耐水性、製造業者:L’Oreal Deutschland GmbH、40474デュッセルドルフ;Kamill Classic Hand & Nail Cream、製造業者:Burnus GmbH、40474デュッセルドルフ)を、ソフトフィールコーティング材料の直径2cmの金属環の範囲内に付与する。80℃で1時間の暴露時間後、クリームを綿クロスで拭き取り、および損傷を、以下に示す基準にしたがって視覚的に評価した。
【0070】
【表3】

【0071】
〔評価〕
1:変化無し
2:一時的損傷
3:斑紋/光沢の損失/変色
4:軟化
5:膨れ/基材からの脱離
6:破壊
【0072】
本発明を上記で例示の目的をもって詳細に説明したが、このような詳説が単にその目的のためであって、本発明は、特許請求の範囲によって限定され得る場合を除いて、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、当業者によって変形がなされ得ると理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

〔式中
R1は、2〜18個の炭素原子を有する脂肪族または脂環族基であり、および
R2は、3〜5個の炭素原子を有する脂肪族基である〕
で示される少なくとも1つの構造単位を含んでなる、水希釈性ヒドロキシ官能性ポリウレタン。
【請求項2】
ポリウレタンは、(CO)NHとして計算して2.0重量%〜20重量%のアミド基含量を有する、請求項1に記載の水希釈性ヒドロキシ官能性ポリウレタン。
【請求項3】
ポリウレタンは、
A1)314〜5000Daの数平均分子量Mnを有する少なくとも1つのアミド基含有ポリオール25重量%〜80重量%、
A2)ポリエステル、ポリカーボネートおよびポリエーテルの群から選択される400〜6000Daの数平均分子量Mnを有する少なくとも1つのポリオール0重量%〜60重量%、
A3)62〜400Daの数平均分子量を有し、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つの低分子量ポリオール0重量%〜20重量%、
A4)イソシアネート基に対して反応性の少なくとも2つの基、および陰イオンを形成し得る少なくとも1つの基を有する少なくとも1つの化合物2重量%〜10重量%、および
A5)ポリイソシアネート5重量%〜50重量%
〔成分A1)〜A5)の合計は100%である〕
の反応生成物である、請求項1に記載の水希釈性ヒドロキシ官能性ポリウレタン。
【請求項4】
成分A1)は、a)1,6−ヘキサメチレン−ジアミン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン)、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンの異性体、およびそれらの混合物からなる群から選択される1以上の化合物と、b)ε−カプロラクトンとの反応生成物を含んでなる、請求項1に記載の水希釈性ヒドロキシ官能性ポリウレタン。
【請求項5】
成分A1)はアミド基含有ポリエステルポリオールである、請求項1に記載の水希釈性ヒドロキシ官能性ポリウレタン。
【請求項6】
成分A1)は、式(I)で示される構造単位を含んでなり、および(CO)NHとして計算して少なくとも7.5重量%のアミド基含量を有する、請求項1に記載の水希釈性ヒドロキシ官能性ポリウレタン。
【請求項7】
水希釈性ポリウレタン固形分は、50重量%〜90重量%であり、および100重量%までの残りのものは、有機溶媒および必要に応じて助剤および添加剤を含んでなる、請求項1に記載の水希釈性ヒドロキシ官能性ポリウレタンを含んでなる有機溶液。
【請求項8】
水希釈性ポリウレタン固形分は、35重量%〜70重量%であり、および100重量%までの残りのものは、水、有機溶媒および必要に応じて助剤および添加剤を含んでなる、請求項1に記載の水希釈性ヒドロキシ官能性ポリウレタンを含んでなる分散体。
【請求項9】
請求項8に記載の分散体および少なくとも1つの架橋剤を含んでなる、水性コーティング組成物。
【請求項10】
架橋剤はポリイソシアネートである、請求項9に記載の水性コーティング組成物。
【請求項11】
ポリイソシアネートは、ブロックされていない形態である、請求項10に記載の水性コーティング組成物。
【請求項12】
最上位トップ層として請求項1に記載の水希釈性ヒドロキシ官能性ポリウレタンを含んでなる、クリアコートまたはトップコート材料を有する多層コーティング組成物。

【公開番号】特開2008−169373(P2008−169373A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−254221(P2007−254221)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】