説明

ポリウレタン多孔性構造体及びその製造方法

【課題】本発明は、界面活性剤や有機溶媒を使用することなく、水洗作業や熱処理が不要又は軽減された強靭で緻密な連続気孔を有するポリウレタン多孔性構造体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリオール、イソシアネート及び4.1〜7.0重量%の親水性鎖長剤を重合して得られた末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物100重量部と窒素原子を3個以上有し、その内活性水素を有する窒素原子が2個以上であるポリアミン化合物0.1〜4.0重量部が架橋反応されてなることを特徴とするポリウレタン多孔性構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強靭で緻密な連続気孔を有するポリウレタン多孔性構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタン多孔性構造体の製造方法としては、(A)水溶性有機溶剤を用いたポリウレタン樹脂を水中にてゲル化させた後、水洗、乾燥する湿式法や有機溶剤中にてゲル化させた後、加熱して有機溶剤を揮散せしめる乾式法により製造する方法、(B)ポリウレタン樹脂中に多量の界面活性剤を添加して乳化、分散させ、一次架橋剤として水性ポリイソシアネート等を反応させ、二次架橋剤としてポリアミン化合物や無機化合物等を反応させた後、加熱によりゲル化させ水洗乾燥して製造する方法(例えば、特許文献1、2及び3参照。)、(C)ポリウレタン水分散体に結晶水を吸収しうる塩類と、水溶性の塩類とを混合した後、熱処理によりゲル化させ、無機化合物を水洗して製造する方法(例えば、特許文献4参照。)等が知られている。
【特許文献1】特開2003−048940号公報
【特許文献2】特開2006−328288号公報
【特許文献3】特許第3981242号公報
【特許文献4】特許第2519192号公報
【0003】
上記(A)の製造方法では、ポリウレタン樹脂を水中でゲル化させるための水溶性有機溶剤としてジメチルホルムアミド(DMF)が一般的に使用されるが、このDMFは引火性や毒性が強く、得られるポリウレタン多孔性構造体から完全に除去する必要があるため水洗作業に多くの時間と労力を費やしている。又、大量の有機溶剤を含んだ排水が発生するため多額の排水処理費用が必要であり作業環境悪化など環境問題やコストの観点からも極めて非生産的であった。
【0004】
上記(B)及び(C)の製造方法においても同様に、ポリウレタン水分散体を得る目的やウレタン樹脂をゲル化させる目的で使用した界面活性剤及び、例えばヒドロキシエチルセルロースや水性ポリイソシアネートなどの水性ポリマー、イソシアネートブロック剤、有機溶剤等がポリウレタン多孔性構造体に残留すると、ポリウレタン多孔性構造体の変形や着色、性能劣化、人に対する毒性、作業環境悪化など種々問題を引き起こす要因となるために、それら不要となった成分を完全に除去することが必須となりそれに伴う水洗作業や対応設備が必要となっていた。更に、(B)及び(C)の製造方法では、ポリウレタン樹脂のゲル化物を得るために熱処理が必須事項となっており、そのために加温方法の検討や、高温加熱設備が必要となっていた(例えば、特許文献5参照。)。
【特許文献5】特開2003−048939号公報
【0005】
更に、一次架橋剤を使用せず、親水性鎖長剤を使用したポリウレタン多孔性構造体の製造方法も提案されており、例えば、ポリオール、鎖長剤、イソシアネート及び0.1〜4重量%の親水性鎖長剤を反応成分として重合する工程、得られた末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを水と混合して分散する工程、得られたウレタンプレポリマー水分散体をポリアミン化合物で架橋する工程、及び得られたゲル化物から水分を除去する工程を含有するポリウレタン多孔質体の製造方法(例えば、特許文献6参照。)が提案されている。
【特許文献6】特許第3641270号公報
【0006】
上記製造方法では一次架橋剤を使用せず、架橋剤としてポリアミン化合物のみを用いて架橋するのであるから、用いる成分数を減少できるので製造コストの観点から好ましい製造方法である。しかしながら、上記製造方法でも、依然としてポリウレタン水分散体を得るために界面活性剤を使用しているので、ポリウレタン多孔性構造体から完全に除去することが必須となりそれに伴う水洗作業や対応設備が必要となっていた。又、上記製造方法では、親水性鎖長剤を4重量%以上添加するとウレタンプレポリマー水分散体のゲル化特性が低下し、好適なポリウレタン多孔性構造体が得られなかった。
【0007】
本発明者等は、親水性鎖長剤を4.1〜7.0重量%と多量に添加し、架橋剤として窒素原子を3個以上有し、その内活性水素を有する窒素原子が2個以上であるポリアミン化合物を添加すれば、界面活性剤を使用することなく好適なポリウレタン多孔性構造体が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記欠点に鑑み、界面活性剤や有機溶媒を使用することなく、水洗作業や熱処理が不要又は軽減された強靭で緻密な連続気孔を有するポリウレタン多孔性構造体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、
[1]ポリオール、イソシアネート及び4.1〜7.0重量%の親水性鎖長剤を重合して得られた末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物100重量部と窒素原子を3個以上有し、その内活性水素を有する窒素原子が2個以上であるポリアミン化合物0.1〜4.0重量部が架橋反応されてなることを特徴とするポリウレタン多孔性構造体、
[2]親水性鎖長剤が、アニオン性鎖長剤、ノニオン性鎖長剤又はカチオン性鎖長剤であることを特徴とする前記[1]記載のポリウレタン多孔性構造体、
[3]アニオン性鎖長剤が、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール吉草酸又は1,4−ブタンジオール−2−スルホン酸であることを特徴とする前記[2]記載のポリウレタン多孔性構造体、
[4]ポリアミン化合物が、N,N−ビス(3−アミノプロピル)ラウリルアミン、3,3’−ジアミノジプロピルアミン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン、N,N−ビス(2−アミノプロピル)−N−メチルアミン又はジエチレントリアミンであることを特徴とする前記[1]、[2]又は[3]記載のポリウレタン多孔性構造体、
[5](1)ポリオール、イソシアネート及び4.1〜7.0重量%の親水性鎖長剤を重合反応して末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物を得る工程、(2)得られた末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物と水とを分散する工程、及び、(3)得られたポリウレタン共重合物と水との分散体に、ポリウレタン共重合物100重量部に対し窒素原子を3個以上有し、その内活性水素を有する窒素原子が2個以上であるポリアミン化合物0.1〜4.0重量部を添加し、該ポリウレタン共重合物を該ポリアミン化合物で架橋反応してゲル化物を得る工程を含むことを特徴とするポリウレタン多孔性構造体の製造方法、及び
[6]ゲル化物を得る工程(3)の温度が室温以上であることを特徴とする前記[5]記載のポリウレタン多孔性構造体の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリウレタン多孔性構造体の構成は上述の通りであり、末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物は4.1〜7.0重量%と多量の親水性鎖長剤が共重合されており、この末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物が窒素原子を3個以上有し、その内活性水素を有する窒素原子が2個以上であるポリアミン化合物により架橋反応してゲル化されているため、強靭で緻密な連続気孔を有する多孔性構造体を形成している。又、界面活性剤や有機溶剤を含有していないため経時による変形、着色、性能劣化等が発生しにくく、毒性も低いことから作業者にやさしく、環境に対する負荷を抑えることができる。従って本発明のポリウレタン多孔性構造体の製造方法においては界面活性剤などの性能劣化や有毒成分を使用していないので水洗作業が不要であり、またポリウレタン共重合物をポリアミン化合物で架橋反応させてゲル化物を得る際の加熱処理も不要であることから作業時間や作業工程の大幅軽減、作業環境保全、排水量抑制など作業効率の改善ができ低コストで製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で使用される末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物は、ポリオール、イソシアネート及び4.1〜7.0重量%の親水性鎖長剤を重合して得られたポリウレタン共重合物である。
【0012】
上記ポリオールは、通常のポリウレタンの製造に使用され、分子中にヒドロキシル基を2個以上有するものであれば特に限定されないが、得られるポリウレタン多孔性構造体に緻密な連続気孔を形成させる観点から、数平均分子量は50〜5000が好ましく、より好ましくは50〜4000であり、特に好ましくは50〜3000である。このポリオールとしては、例えば、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、シリコーン系ポリオール、ひまし油系ポリオール等やポリウレタン製造に一般的に用いられる鎖長剤が挙げられる。これらは単独で又は2種以上が混合して用いられる。
【0013】
上記ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンイソフタレートアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリヘキサンジオールアジペート、ポリ−3−メチルペンタンジオールアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリネオペンチルグリコールアジペート、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール、ポリ−3−メチルバレロラクトンジオール等が挙げられる。
【0014】
上記ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、ポリブタンジオールカーボネート、ポリヘキサンジオールカーボネート、ポリノナンジオールカーボネート、ポリ−3−メチルペンタンジオールカーボネート、ポリブタンジオールヘキサンジオールカーボネート等が挙げられる。
【0015】
上記ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン−ポリプロピレングリコール、ポリエチレン−テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ−2−メチルテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等が挙げられる。
【0016】
上記ポリオレフィン系ポリオールとしては、例えば、ポリブタジエングリコール、ポリイソプレングリコール及びその水素化合物等が挙げられる。上記シリコーン系ポリオールとしては、ポリシロキサン主鎖に水酸基を導入したもので、導入した水酸基はポリシロキサン主鎖の両末端又は片末端にあれば良い。
【0017】
上記イソシアネートは、通常のポリウレタン樹脂製造に使用され、末端にイソシアネート基を2つ以上有するものであれば特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネート並びにこれらの水素添加物及び変性物等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上が混合して用いられる。
【0018】
イソシアネートの末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物中の含有量は、得られるポリウレタン共重合物がイソシアネート基を有する限り特に限定されない。ポリオール及び親水性鎖長剤が各々有する活性水素と定量的に反応するよう配合すれば良い。
【0019】
上記親水性鎖長剤としては、アニオン性鎖長剤、ノニオン性鎖長剤及びカチオン性鎖長剤が挙げられ、これらは単独で又は2種以上が混合して用いられる。アニオン性鎖長剤としては、例えば、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール吉草酸、1,4−ブタンジオール−2−スルホン酸等の分子内にカルボキシル基、スルホン酸基等のアニオン性親水性基を1個以上有するポリヒドロキシ化合物が挙げられ、ノニオン性鎖長剤としては、例えば、エチレンオキサイド化合物等が挙げられ、カチオン性鎖長剤としては、例えば、N−メチルジエタノールアミン等が挙げられる。強靭で緻密な連続気孔を有するポリウレタン多孔性構造体を得るためにはアニオン性鎖長剤が好ましい。
【0020】
親水性鎖長剤の末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物中の含有量は、末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物と水との分散性及びゲル化特性が優れ、強靭で緻密な連続気孔ポリウレタン多孔性構造体を得る観点から、4.1〜7.0重量%であり、好ましくは4.1〜6.0重量%、より好ましくは4.1〜5.0重量%である。即ち、親水性鎖長剤の含有量が4.1重量%未満では得られるポリウレタン共重合物と水との分散性が低下する恐れがある。一方、親水性鎖長剤の配合量が7.0重量%を上回ると、得られる末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物の粘度増大、ゲル化特性損失などを引き起こす恐れがある。尚、ここでいう末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物とは、共重合物を構成しているポリマー成分のことであって水などの希釈剤及び共重合に供しない添加剤などは含まれない。
【0021】
本発明のポリウレタン多孔性構造体は、上記末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物100重量部と窒素原子を3個以上有し、その内活性水素を有する窒素原子が2個以上であるポリアミン化合物0.1〜4.0重量部が架橋反応されてなることを特徴とする。
【0022】
上記ポリアミン化合物は、窒素原子を3個以上有し、その内活性水素を有する窒素原子が2個以上であるポリアミン化合物であり、例えば、N,N−ビス(3−アミノプロピル)ラウリルアミン、3,3’−ジアミノジプロピルアミン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン、N,N−ビス(2−アミノプロピル)−N−メチルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、2−アミノエチル(3−アミノプロピル)アミン、N−(3−アミノプロピル)−N−シクロヘキシル−1,3−プロパンジアミン、N−ベンジル−N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)−N,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ビスアミノプロピル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ビスアミノプロピル−1,4−ブタンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上が混合して用いられる。
【0023】
強靭で緻密な連続気孔を有するポリウレタン多孔性構造体を得るためには、N,N−ビス(3−アミノプロピル)ラウリルアミン、3,3’−ジアミノジプロピルアミン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン、N,N−ビス(2−アミノプロピル)−N−メチルアミン、ジエチレントリアミン等の窒素原子を3個有し、その内活性水素を有する窒素原子が2個または3個のポリアミン化合物が好ましい。
【0024】
ポリアミン化合物の架橋反応量は、末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物の活性イソシアネート基当量に対してポリアミン化合物の活性水素当量が0.1〜100%が好ましく、より好ましくは5〜80%である。従って、末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物100重量部に対し0.1〜4.0重量部が架橋反応されている。
【0025】
本発明のポリウレタン多孔性構造体の製造方法は、(1)ポリオール、イソシアネート及び4.1〜7.0重量%の親水性鎖長剤を重合反応して末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物を得る工程、(2)得られた末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物と水とを分散する工程、及び、(3)得られたポリウレタン共重合物と水との分散体に、ポリウレタン共重合物100重量部に対し窒素原子を3個以上有し、その内活性水素を有する窒素原子が2個以上であるポリアミン化合物0.1〜4.0重量部を添加し、該ポリウレタン共重合物を該ポリアミン化合物で架橋反応してゲル化物を得る工程を含むことを特徴とする。
【0026】
上記末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物を得る工程(1)は、上記ポリオール、イソシアネート及び4.1〜7.0重量%の親水性鎖長剤を重合反応する工程である。上記重合反応は、公知の方法で製造することができ、特に限定されないが、例えば、分子内に活性水素を含まない有機溶剤の存在下又は非存在下で、ポリオール、イソシアネート及び親水性鎖長剤を、ワンショット法又は多段法により、好ましくは20℃〜150℃、より好ましくは60〜120℃で、2〜10時間、反応させる方法等が挙げられる。ここで、各成分の添加順序は特に限定されない。又、反応終点は、イソシアネート含有量でモニターするのが好ましい。
【0027】
上記有機溶剤は、末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物の製造時の粘度を下げる目的で使用してもよく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N−メチルピロリドン、トルエン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、イソパラフィンなどの石油系溶剤等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上が混合して用いられる。
【0028】
又、上記ポリオール、イソシアネート及び4.1〜7.0重量%の親水性鎖長剤を重合反応する際に、重合鎖長を長くし、強靭で緻密な連続気孔を有するポリウレタン多孔性構造体を得るために上記親水性鎖長剤以外の鎖長剤を添加してもよい。上記鎖長剤は、通常のポリウレタン樹脂製造に使用されるヒドロキシル基やアミノ基など水素原子を分子中に2個以上有するものであれば特に限定されず、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の低分子量多価アルコール類、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの低分子量ポリアミン類が挙げられる。これらは単独で又は2種以上が混合して用いられる。
【0029】
上記鎖長剤の添加量は、強靭で緻密な連続気孔を有するポリウレタン多孔性構造体を得る観点から、末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物100重量部に対して0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜4重量%である。
【0030】
又、親水性鎖長剤としてアニオン性鎖長剤を用いた場合、末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物と水との分散性向上の観点から中和剤を添加するのが好ましい。中和剤としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の低級アルキルアミン類、トリエタノールアミン等のアミノアルコール類、アンモニア水や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機中和剤等が挙げられ、トリメチルアミン及びトリエチルアミンが乾燥性の観点から好ましい。中和剤の添加は、特に限定されないが、親水性鎖長剤のアニオン性親水基と同等量若しくは同等量以下であることが好ましい。
【0031】
次の工程(2)は、工程(1)で得られた末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物と水とを分散する工程である。
【0032】
末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物と水とを分散する方法は、特に限定されず、例えば、末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物と水とを、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ホモジナイザー等の分散装置を用いて、混合、分散する方法等が挙げられる。
【0033】
水に末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物を分散させる際の、水に対する末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物の分散量は、特に限定されないが、ポリウレタン多孔性構造体の見かけ密度を制御する観点から、水100重量部に対し5〜100重量部が好ましく、より好ましくは30〜100重量部であり、特に好ましくは40〜80重量部である。
【0034】
又、末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物中に水を分散させる際の、末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物に対する水の分散量は、特に限定されないが、末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物100重量部に対し1〜100重量部が好ましく、より好ましくは1〜10重量部である。
【0035】
3番目のゲル化物を得る工程(3)は、工程(2)で得られた末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物と水との分散体に、該ポリウレタン共重合物100重量部に対し窒素原子を3個以上有し、その内活性水素を有する窒素原子が2個以上であるポリアミン化合物0.1〜4.0重量部を添加し、該ポリウレタン共重合物を該ポリアミン化合物で架橋反応してゲル化物を得る工程である。
【0036】
上記ゲル化物を得る工程(3)では、工程(2)で得られた末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物と水との分散体に、該ポリウレタン共重合物100重量部に対し窒素原子を3個以上有し、その内活性水素を有する窒素原子が2個以上であるポリアミン化合物0.1〜4.0重量部を添加し混合する。混合する方法は、特に限定されず、例えば、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ホモジナイザー等の分散装置を用いて混合する方法が挙げられる。
【0037】
上記混合する際に、架橋剤としてアミノ基を2個有するアミン化合物を併用してもよい。
該アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジアミノペンタン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノヘプタン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、ポリエチレンジアミン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン、1,4−ビス(3−アミノプロポキシ)ブタン、2−ヒドロキシルアミノプロピルアミン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,3−ビス(3−アミノプロポキシ)−2,2−ジメチルプロパン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ヒドラジンヒドラート、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2−アミノメチルピペラジン、4−アミノメチルピペリジン、3−アミノピロリジン、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上が混合して用いられる。
【0038】
更に、混合する際に、ゲル化を促進するためにゲル化促進剤を添加してもよい。ゲル化促進剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどの金属塩化物、硫酸ナトリウム、硫酸銅、硫酸アルミニウム、硫酸鉄などの金属硫酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどの金属炭酸化物、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化バリウムなどの金属水酸化物、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、シリカ、コロイダルシリカ、ゼオライトなどの非金属酸化物、ケイフッ化ナトリウム、ケイフッ化カリウムなどのケイフッ化物等が挙げられ、所望の性能や水洗作業の軽減若しくは無水洗によりポリウレタン多孔性構造体を得るためには、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、ケイフッ化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム及びコロイダルシリカが好ましく、より好ましくは塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸カルシウムである。これらは水溶液もしくは水分散体として単独で又は2種以上が混合して用いられる。
【0039】
末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物と水との分散体に、窒素原子を3個以上有し、その内活性水素を有する窒素原子が2個以上であるポリアミン化合物を添加し混合すると、末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物がポリアミン化合物により架橋反応してゲル化物が得られるが、所定形状のポリウレタン多孔性構造体を得るには、末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物と水との分散体と窒素原子を3個以上有し、その内活性水素を有する窒素原子が2個以上であるポリアミン化合物との混合液を所定形状の成形型に流し込んで架橋反応を進行させゲル化すればよい。架橋反応は室温又は加熱しながら数時間静置しておけばよいが、室温で10時間以上静置しておくのが好ましい。
【0040】
本発明のポリウレタン多孔性構造体を製造する際には、目的を損なわない範囲で消泡剤、増粘剤、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌剤、着色剤等の従来よりポリウレタン多孔性構造体を製造する際に用いられている添加剤が添加されてもよく、これらは単独で又は2種以上が混合して添加されていてもよい。
【0041】
架橋反応して得られたゲル化物は、そのウレタン樹脂中に水を含有するポリウレタン多孔性構造体であるので、得られたゲル化物から水分を除去してもよい。水分を除去する方法としては、ゲル化物を機械的に絞って大部分の水を除去した後、室温下で自然乾燥させればよいが、水除去時間を短縮するために、ゲル化物を機械的に絞って大部分の水を除去した後、熱風乾燥機等を用いて60℃以上で乾燥させてもよい。尚、得られたゲル化物中には界面活性剤を含有していないので、基本的に洗浄する必要はないが、消泡剤、増粘剤、pH調整剤等が含まれているときは、乾燥工程の前に、脱水装置や洗濯機等を用いてこれらの成分を水洗しておくことが好ましい。
【実施例】
【0042】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜3、比較例1〜5)
攪拌器、還流冷却管、温度計および窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、表1に示した所定量の、イソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート、ポリオールとしてポリカーボネート系ポリオール(株式会社クラレ製、商品名「クラレポリオールC−2065N」、数平均分子量2000)、ポリエステル系ポリオール(ダイセル化学株式会社製、商品名「プラクセル220」、数平均分子量2000)及びポリエーテル系ポリオール(三菱化学株式会社製、商品名「PTMG2000」、数平均分子量2000)、鎖長剤としてトリメチロールプロパン並びに親水性鎖長剤として2,2-ジメチロールブタン酸及び2,2−ジメチロールプロピオン酸を表1の割合でそれぞれ供給し均一に混合した後、80℃で6時間反応した。反応終了後に50℃まで冷却し、中和剤として表1に示した所定量のトリエチルアミンを加えて20分間中和し、次いで、表1に示した所定量の蒸留水を加えて乳化分散させ、更に追加の鎖長剤として表1に示した所定量のエチレンジアミンを添加し30分間攪拌し反応させることで末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物と水との分散体1〜5を得た。
【0043】
【表1】

【0044】
得られた末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物と水との分散体1〜5の100重量部に表2及び表3に示した所定量の蒸留水、架橋剤としてN,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン水溶液(10重量%)及びエチレンジアミン水溶液(10重量%)を添加混合した後、更に、塩化カルシウム水溶液(10重量%)を添加混合した。得られた水分散体を、成形型に流し込み室温にて12時間静置してゲル化合物を得た。次いで、得られたゲル化物を手で絞って水を除去した後、60℃で3時間乾燥してポリウレタン多孔性構造体を得た。
【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
得られたポリウレタン多孔性構造体のゲル化の状態、気孔状態及び強度・風合いを観察し結果を表4に示した。実施例1〜3では、得られたポリウレタン多孔性構造体は全て均一で緻密な連続気孔を有しており、十分な強度と風合いを持ったポリウレタン多孔性構造体を得ることができた。一方、比較例1〜5では、ゲル化せずに液層分離を生じる事象やゲル化スピードをコントロールしにくい事象、生じる孔の大きさにバラツキが多い事象など、所望とする強靭で緻密で均一な連続気孔を有するポリウレタン多孔性構造体を得ることが出来なかった。
【0048】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のポリウレタン多孔性構造体は、吸水性ロール、化粧用パフ、各種半導体又は光学材料等の研磨パット、インキ保持体、電子機器製造関連資材、人工皮革基材、農業資材等の緻密な連続気孔を有するポリウレタン多孔性構造体の性質を利用した各種製品分野に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、イソシアネート及び4.1〜7.0重量%の親水性鎖長剤を重合して得られた末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物100重量部と窒素原子を3個以上有し、その内活性水素を有する窒素原子が2個以上であるポリアミン化合物0.1〜4.0重量部が架橋反応されてなることを特徴とするポリウレタン多孔性構造体。
【請求項2】
親水性鎖長剤が、アニオン性鎖長剤、ノニオン性鎖長剤又はカチオン性鎖長剤であることを特徴とする請求項1記載のポリウレタン多孔性構造体。
【請求項3】
アニオン性鎖長剤が、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール吉草酸又は1,4−ブタンジオール−2−スルホン酸であることを特徴とする請求項2記載のポリウレタン多孔性構造体。
【請求項4】
ポリアミン化合物が、N,N−ビス(3−アミノプロピル)ラウリルアミン、3,3’−ジアミノジプロピルアミン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン、N,N−ビス(2−アミノプロピル)−N−メチルアミン又はジエチレントリアミンであることを特徴とする請求項1、2又は3記載のポリウレタン多孔性構造体。
【請求項5】
(1)ポリオール、イソシアネート及び4.1〜7.0重量%の親水性鎖長剤を重合反応して末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物を得る工程、
(2)得られた末端イソシアネート基含有ポリウレタン共重合物と水とを分散する工程、及び、
(3)得られたポリウレタン共重合物と水との分散体に、ポリウレタン共重合物100重量部に対し窒素原子を3個以上有し、その内活性水素を有する窒素原子が2個以上であるポリアミン化合物0.1〜4.0重量部を添加し、該ポリウレタン共重合物を該ポリアミン化合物で架橋反応せしめゲル化物を得る工程
を含むことを特徴とするポリウレタン多孔性構造体の製造方法。
【請求項6】
ゲル化物を得る工程(3)の温度が室温以上であることを特徴とする請求項5記載のポリウレタン多孔性構造体の製造方法。

【公開番号】特開2009−249470(P2009−249470A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97804(P2008−97804)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(591195592)大同化成工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】