説明

ポリウレタン樹脂用水性プライマー組成物及びそれを用いた成型品

【課題】ポリウレタン樹脂との接着性を確保し、臭気がなく、引火の危険性のない、水性プライマー組成物を提供すること。
【解決手段】ポリウレタンディスパージョン(A)、スルホン酸化合物(B)、ピロリドン化合物である界面活性剤(C)、および水(D)を含んでなるポリウレタン樹脂用水性プライマー組成物は、基材とポリウレタン樹脂を注入した成型品において、基材とポリウレタン樹脂との良好な接着性を発揮する。ポリウレタンディスパージョン(A)は、ポリオールとポリイシシアネートとを反応させて得られるポリウレタンを水中に分散もしくは溶解させたものであることが好ましい。スルホン酸化合物(B)は、脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸または脂環族スルホン酸であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンディスパージョン(A)及びスルホン酸化合物(B)とピロリドン化合物である界面活性剤(C)と水(D)を含有するポリウレタン樹脂用水性プライマー組成物及びそれを用いた成型品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電着塗装された材料と断熱材として用いられるポリウレタン樹脂を接着するためのプライマー組成物としては、有機溶剤系のプライマー(例えば、特開平10−60310号公報)や水性プライマー(例えば、特開2007−45976)が用いられていた。
【0003】
この有機溶剤系のプライマーや水性プライマーは、電着塗装された材料とポリウレタン樹脂に対し、良好な接着性を付与している。しかし近年、アルミ材に施す電着塗装については高硬度電着塗装を施したアルミ材料が増大してきており、この材料とポリウレタン樹脂との接着性は従来からのプライマーでは充分な接着性の確保が困難になっている。
なお、ここでいう高硬度電着塗装とは、従来品より皮膜断面の樹脂分子間の結合力を増強することで、塗膜の硬度を高め傷つき難くし、傷発生荷重の試験では従来品の約2倍の強度、鉛筆引っかき抵抗性は硬度5H以上(JIS規格はH以上)のものを言う。
このため、このような有機溶剤系のプライマーや従来水性プライマーに代えて、接着性を維持させ、溶剤臭が無く、引火の危険性がなく、良好な衛生環境が確保できるような新しい水性のプライマー組成物が望まれるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−60310号公報
【特許文献2】特開2007−45976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高硬度電着塗装を施したアルミ型材に対してポリウレタン樹脂との充分な接着性を確保すること、更には、臭気が無く、引火の危険性がない、良好な衛生環境が確保できる水性プライマー組成物を提供することにある。
また、水性プライマー組成物の基材、特に高硬度電着塗装されたアルミ金属の表面への塗布時に起こるはじき(材料面上で凝集した点状あるいは球状の不連続部分ができ均一に付着していない状態)を無くし、均一に塗布できることで、基材とポリウレタン樹脂を良好に接着する水性プライマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる問題を解決するために検討を重ねた結果、下記の水性プライマー組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、ポリウレタンディスパージョン(A)、スルホン酸化合物(B)、ピロリドン化合物である界面活性剤(C)および水(D)を含んでなるポリウレタン樹脂用水性プライマー組成物を提供する。
加えて、本発明は、基材とポリウレタン樹脂からなる成型品において、請求項1に記載の水性プライマー組成物を使用して、基材の上にポリウレタン樹脂が形成されていることを特徴とする成型品をも提供する。
さらに、本発明は、基材とポリウレタン樹脂からなる成型品を製造する方法であって、請求項1に記載の水性プライマー組成物を使用することを特徴とする方法をも提供する。
【0008】
ポリウレタンディスパージョンとスルホン酸化合物だけでは、基材表面ではじきが発生するため、基材とポリウレタン樹脂において均一な状態での接着にならず、満足な接着な強度が得られない。また一方、界面活性剤だけでは、基材表面でのはじきが無いものの基材とポリウレタン樹脂の接着効果が得られない。ポリウレタンディスパージョン、スルホン酸化合物と界面活性剤であるピロリドン化合物を併用することで、初めて、基材とポリウレタン樹脂において均一な接着および満足な接着強度が得られ、成型品での接着不良の問題がなくなる。
【発明の効果】
【0009】
このようにして得られる本発明の水性プライマー組成物は、高硬度電着塗装基材とポリウレタン樹脂に対し、良好な接着性を付与し、それを用いた成型品などであっても良好に接着することができる。また、水性であるため、臭気、引火の危険性がなく、良好な衛生環境が確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の詳細を説明する。
【0011】
本発明の水性プライマー組成物に用いるポリウレタンディスパージョン(A)は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等のポリオールとポリイシシアネートとを反応させて得られるポリウレタンを、必要に応じてジオール、ジアミン等のような2個以上の活性水素をもつ低分子量化合物である鎖伸長剤の存在下で鎖伸長し、水中に安定に分散もしくは溶解させたものが好適に使用でき、従来公知のものを広く使用できる。ポリウレタン樹脂を水中に安定に分散もしくは溶解させる方法としては、例えば下記方法が利用できる。
【0012】
ポリウレタンポリマーの側鎖または末端にカルボキシル基等のアニオン性基又はアミノ性基のカチオン性基を導入し、該イオン性基の一部又は全部を中和することにより親水性を付与し自己乳化により水中に分散または溶解する方法。
ポリウレタン主原料のポリオールとしてポリエチレングリコールのごとき親水性ポリオールを使用して水に可溶なポリウレタンとし、水中に分散又は溶解する方法。
【0013】
ポリイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。また、これらジイソシアネートのアダクト変性体、ビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、カルボジイミド変性体等のいわゆる変性ポリイソシアネートも使用できる。更に、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、クルードトルエンジイソシアネート等のような、いわゆるポリメリック体といわれるポリイソシアネートも使用できる。これらのポリイソシアネートは単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0014】
ポリオールの例は、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等である。ポリオールの分子量は、数平均分子量で300〜10000、好ましくは400〜5000、さらに好ましくは400〜2500であってよい。
【0015】
ポリエステルポリオールは、好ましくは400〜6000、より好ましくは600〜3000の数平均分子量を有する。ポリエステルポリオールの水酸基価は、好ましくは22〜400,より好ましくは50〜200、最も好ましくは80〜160mgKOH/gである。ポリエステルポリオールは1.5〜6、より好ましくは1.8〜3,特に好ましくは2の数平均OH官能価を有する。
【0016】
適当な化合物にはジオール及び所望によりポリ(トリ、テトラ)オール、並びにジカルボン酸及び所望により(トリ、テトラ)カルボン酸又はポリエステルを製造するための低級アルコールとの対応するポリカルボン酸のエステルを使用することもできる。
【0017】
適当なジオールの例には、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)、プロパンジオール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサンー1,6−ジオール、ネオペンチルグリコール又はヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルが包含され、最後の3つの化合物が好ましい。場合により共に使用されるポリオールとして、例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、エリトリトール、ペンタエリトリトール、トリメチロールベンゼン又はトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートを挙げることができる。
【0018】
適当なジカルボン酸にはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、テトラクロロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マロン酸、スベリン酸、2−メチルコハク酸、3,3−ジエチルグルタル酸、及び2,2−ジメチルコハク酸が包含される。これら酸の無水物も、存在するなら使用することができる。本発明にとっては、無水物も「酸」に包含される。モノカルボン酸、例えば安息香酸及びヘキサンカルボン酸も、ポリオールの平均官能価が2より大きいなら、使用することができる。
【0019】
適当なポリカーボネートポリオールの例は、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネートなどの炭酸エステルを原料に用いる。アルキレンカーボネートとしては、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネートなどがある。またジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n−ブチルカーボネートなどが、ジアルキレンカーボネートとしては、ジフェニルカーボネートなどがある。そのなかでも、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートを用いるのが好ましい。
【0020】
適当なポリエーテルポリオールの例は、反応性水素原子を含有する出発化合物を、アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド;プロピレンオキシド;ブチレンオキシド;スチレンオキシド;テトラヒドロフランまたはエピクロロヒドリンと、あるいはこれらのアルキレンオキシドの混合物と反応させることによって、既知の方法で得られる。該ポリエーテルは、約10重量%を超えるエチレンオキシド単位を含有しないことが好ましい。最も好ましくは、エチレンオキシドを添加せずに得られるポリエーテルが使用される。
【0021】
ポリオールの量は、これに限定されるものではないが、合成されるポリウレタン樹脂中の20〜70重量%、例えば30〜60重量%であってよい。
【0022】
鎖伸長剤を必要に応じて使用する。鎖伸長剤は、ジオール、ジアミン等のような2個以上の活性水素をもつ低分子量化合物である。鎖延長剤の具体例は、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4-ブチレンジアミンおよびピペラジン、アルキレンオキシドジアミンのようなアルキレンジアミン類である。
【0023】
アルキレンオキシドジアミンとしては、ジプロピルアミンプロピレングリコール、ジプロピルアミンジプロピレングリコール、ジプロピルアミントリプロピレングリコール、ジプロピルアミンポリ(プロピレングリコール)、ジプロピルアミンエチレングリコール、ジプロピルアミンポリ(エチレングリコール)、ジプロピルアミン1,3-プロパンジオール、ジプロピルアミン2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジプロピルアミン1,4-ブタンジオール、ジプロピルアミン1,3-ブタンジオール、ジプロピルアミン1,6-ヘキサンジオールおよびジプロピルアミンシクロヘキサン-1,4-ジメタノールが挙げられる。
【0024】
また2つのイソシアネート反応性基およびイオン性基またはイオン性基を形成し得る基を含有する化合物も鎖伸長剤として用いることができる。イオン性または潜在的イオン性基は、第三級または第四級アンモニウム基、そのような基に変換可能な基、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基およびスルホネート基からなる群から選択され得る。
適当な化合物としては、ジアミノスルホネート、例えばN-(2-アミノエチル)-2-アミノエタンスルホン酸のナトリウム塩(AAS)またはN-(2-アミノエチル)-2-アミノプロピオン酸のナトリウム塩などが挙げられる。また、これら列挙した鎖伸長剤の混合物も使用できる。
【0025】
鎖伸長剤の量は、特に限定されるものではないが、ポリウレタン樹脂中の0.1〜20重量%、例えば0.5〜15重量%であってよい。
【0026】
ポリウレタンディスパージョン(またはポリウレタン液)(A)は、ポリウレタン樹脂を水に分散または溶解させたものである。ポリウレタンディスパージョン(A)において、ポリウレタン樹脂の量は、約10〜70重量%、特に約30〜50重量%であってよい。ポリウレタン樹脂の量は、水性プライマー組成物において、約0.01〜7.0重量%、特に約0.04〜4.0重量%であってよい。一般に、ポリウレタンディスパージョン(A)の量は、水性プライマー組成物における水(D)100重量部に対して0.1〜10重量部であることが好ましい。
【0027】
ポリウレタンディスパージョン(A)は、ポリウレタン樹脂に加えて、媒体として水を含有するが、さらにイソシアネート反応基を含有しない有機溶剤、例えば、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、N-メチルピロリドン等を含有してもよい。有機溶剤の量は特に限定されるものではないが、ポリウレタンディスパージョン中の水100重量部に対して10〜100重量部であってよい。
【0028】
ポリウレタンディスパージョン(A)(樹脂分;例えば約30〜50重量%)の量は、水(D)100重量部に対して、ポリウレタンディスパージョン0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。ポリウレタンディスパージョンが0.1〜10重量部の範囲であれば、10重量部以上で見られることがあるポリウレタンディスパージョンの樹脂成分の析出も起こりにくく、安定性も良い。
【0029】
本発明に用いるスルホン酸化合物(B)は、スルホ基(−SOH)および炭化水素基を有する有機化合物である。この炭化水素基は、置換基、例えば、水酸基やアミノ基等を有していてもよい。炭化水素基の例は、アルキル基などの脂肪族炭化水素基(炭素数例えば2〜20)、フェニル基などの芳香族炭化水素基(炭素数例えば6〜30)、アルキルベンゼン基などの芳香脂肪族基(炭素数例えば7〜30)、シクロアルキル基などの脂環族炭化水素基(炭素数例えば5〜30)である。スルホン酸化合物(B)は、水溶性であれば特に限定されるものではない。
【0030】
本発明に用いられるスルホン酸化合物(B)の具体例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、オクタンスルホン酸などの脂肪族スルホン酸;ベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸などの芳香族スルホン酸;クロルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−4−スルホン酸、2−ナフチルアミン−1−スルホン酸、トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリドデシルベンゼンスルホン酸、テトラドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルトルエンスルホン酸などの核置換基(例えば、塩素などのハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1〜20のアルキル基)を有する芳香族スルホン酸;フェニルペンチルスルホン酸、フェニルヘキシルスルホン酸、フェニルヘプチルスルホン酸、フェニルオクチルスルホン酸、フェニルノニルスルホン酸等の芳香脂肪族スルホン酸;シクロヘキサンスルホン酸などの脂環式スルホン酸などが挙げられる。価格や作業性の面などで良くまた接着性も良好であるので、ドデシルベンゼンスルホン酸が好ましい。
【0031】
本発明に用いるスルホン酸化合物(B)は、有機溶剤を用いずに水だけを使用して溶解する。スルホン酸化合物を水に溶解する方法は、常温でスルホン酸化合物に水を加えた後、混合物を撹拌すれば良い。
このように、有機溶剤を用いずに水だけを用いてスルホン酸化合物を溶解することで、有機溶剤の臭気や引火の危険性が無くなり、作業環境やVOC問題など大きくも改善される。
【0032】
スルホン酸化合物(B)の量は、水(D)100重量部に対して、0.005〜30重量部、好ましくは0.05〜20重量部、更に好ましくは0.1〜10重量部であってよい。スルホン酸化合物(B)が0.005〜30重量部の範囲であれば、30重量部以上で見られることがある乾きにくさ(べたつき)も無く、より高い接着強度が得られる。
【0033】
界面活性剤(C)は、非イオン性と両性の両方の性質を有する界面活性剤であるピロリドン化合物である。ピロリドン化合物は、ピロリドン環と炭素数1〜20の炭化水素置換基(特に、アルキル基)を有する化合物であることが好ましい。炭化水素置換基の炭素数は、4〜16、特に8〜12であることが好ましい。ピロリドン化合物の具体例は、N−(n−オクチル)−2−ピロリドン、N−(n−ドデシル)−2−ピロリドンである。
界面活性剤(C)の存在によって、水性プライマー組成物を基材に塗布しても、基材表面でのはじきも無く、速やかに均一に広がっていく優れた効果が得られる。
【0034】
界面活性剤(C)は、ポリウレタンディスパージョン(A)とスルホン酸化合物(B)と水(D)を含んでなる液(例えば、水分散液または水溶液)に加えて使用する。
界面活性剤(C)の量は、水(D)100重量部に対して、0.01〜2.0重量部、好ましくは0.05〜1.5重量部、更に好ましくは0.1〜1.0重量部であってよい。
界面活性剤(C)の量が0.01〜2.0重量部の範囲であれば、基材表面上で水性プライマー組成物が基材表面にはじかれることもなくより均一に塗布でき、結果、基材とポリウレタン樹脂との間で均一に接着することでより高い接着強度が得られる。
【0035】
界面活性剤(C)は、単独で使用しても良く、また、2種以上併用しても良い。
界面活性剤(C)として、ピロリドン化合物に加えて、他の界面活性剤を組合せて使用してもよい。
他の界面活性剤の例は、オキシエチレン基を有する界面活性剤(特に、非イオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤)が好ましく用いられ、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、その他のポリオキシエチレン誘導体が挙げられる。これらのオキシエチレン系界面活性剤の中でも特に好ましいのはアニオン性界面活性剤であり、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。
【0036】
他の界面活性剤を用いることで、水性プライマー組成物中でのピロリドン化合物の水に対する相容性または分散性の向上が得られる。
ピロリドン化合物と他の界面活性剤の合計量は、水(D)100重量部に対して、0.01〜2.0重量部、好ましくは0.05〜1.5重量部、更に好ましくは0.1〜1.0重量部であってよい。他の界面活性剤の量は、ピロリドン化合物と他の界面活性剤の合計量100重量部に対して、0.1〜30重量部、例えば1〜20重量部であってよい。
【0037】
また、水性プライマー組成物は、その目的や用途に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤などの添加剤を含有しても良い。添加剤の量は、水(D)100重量部に対して0.5〜10重量部であってよい。
【0038】
水性プライマー組成物を基材表面上に塗布した後、ポリウレタン樹脂をその基材表面上に塗布あるいは注入することによって成型品が得られる。成型品において、基材とポリウレタン樹脂との間に良好な接着性を発揮する。また、水性プライマー組成物は、水性であるため、臭気等も無く、引火の危険性がなく、またVOCの問題が大きく改善されることから、良好な衛生環境が確保できる。
【0039】
基材としては、種々の材料が使用できる。基材の例は、金属(例えば、アルミニウム、メッキされていてよい鉄または鋼、ステンレス)、ガラス、セラミック、プラスチック、ゴム、木材、繊維などである。基材は、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂が塗装(特に、高硬度電着塗装)された金属であることが特に好ましい。
本発明の水性プライマー組成物は、水溶性の塗料(樹脂)が電着塗装された材料と、断熱樹脂であるポリウレタン樹脂を接着するためのプライマーとして用いることが好ましい。
【0040】
断熱樹脂として用いるポリウレタン樹脂は、種々の性能、例えば断熱性や樹脂強度(硬度)が良好であるポリウレタン樹脂であることが好ましい。ポリウレタン樹脂は、一般的なポリオール混合物であるポリオール、架橋剤、触媒、整泡剤、場合により水を含んだ主剤成分と、有機ポリイソシアネートを硬化剤として、主剤成分と硬化剤の2液を混合させ反応硬化させるものなどであってよい。
【0041】
ポリウレタン樹脂は、非発泡または発泡のいずれであってもよい。ポリウレタン樹脂の密度は限定されないが、一般に0.035〜1.10g/cmであってよい。
ポリウレタン樹脂の反応性は、ライズタイムで10〜120秒にするのが好ましい。特に好ましくは15〜60秒である。更に好ましいのは20〜35秒である。(ライズタイムとは、25℃液温で主剤と硬化剤を混合し、その混合開始から反応硬化までの時間を言う)
【0042】
基材表面上への水性プライマー組成物の塗布方法は、刷毛塗り、スプレー等公知の方法で塗布すれば良く特に制限されない。均一に塗布することを考慮すればスプレーが好ましい。
水性プライマー組成物の塗布量としては、出来るだけ少量で均一塗布できることが望ましく、10g/m〜100g/mであることが好ましい。
【0043】
本発明の水性プライマー組成物を基材表面上に塗布する時の基材表面の温度は特に制限されるものではないが、ポリウレタン樹脂の反応硬化を考慮すると5℃〜40℃の範囲が好ましい。特に好ましいのは10℃〜35℃である。5℃〜40℃の範囲であれば、ポリウレタン樹脂の反応硬化を阻害することも無いので都合が良い。
【0044】
この時、基材表面上に塗布した水性プライマー組成物は、風などによる乾燥を行わなくても良いし、行っても良く、乾燥の有無に関係なく良好な接着性が得られる。
【0045】
また、水性プライマー組成物を塗布した後のポリウレタン樹脂を注入するタイミングは、塗布後直ちに行っても良いが、好ましいのは塗布から5分以上経過後である。
【0046】
このようにして、ポリウレタンディスパージョン(A)及びスルホン酸化合物(B)とピロリドン化合物である界面活性剤(C)と水(D)を含有することを特徴とする水性プライマー組成物を使用して、基材とポリウレタン樹脂を良好に接着させた成型品が得られる。
成型品の用途の例は、建材、例えば、断熱窓枠(例えば、アルミサッシ)、外壁(例えば、メッキされていてよい鋼)である。成型品は、断熱窓枠などの建材に用いられても衛生環境面において良好である。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。尚、実施例および比較例において、特記しない限り、「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を示す。
【0048】
基材(塗料が電着塗装された金属)とポリウレタン樹脂による成型品の作成条件、ポリウレタン樹脂原料配合、接着性(剥離状態)の評価方法および評価の基準を、次のようにして行った。
【0049】
成型品の作成条件
(1)アクリル樹脂が電着塗装された35℃に温調されたアルミニウム板材に、水性プライマー組成物を1回スプレーして、水性プライマー組成物を乾かさずに、15分後にポリウレタン樹脂を成型し、室温にて反応硬化させ、成型品の作成を行った。
(2)水性プライマー組成物をスプレーし、15分後に水性プライマー組成物を風乾(35℃、5分)した以外は、上記(1)と同様にして成型品を作成した。
【0050】
ポリウレタン樹脂用原料配合
次の2液反応硬化型ポリウレタン樹脂を使用した。
(1)主剤
ポリオキシプロピレントリオール(3f、MW450) 100 部
[住化バイエルウレタン(株)社製・スミフェンTM]
トリエチレンジアミンの33%ジプロピレングリコール溶液 2.0 部
ジブチル錫ジラウレート 0.1 部
(2)硬化剤
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート
[住化バイエルウレタン(株)社製・スミジュール44V20]
(3)主剤と硬化剤の混合比
主剤/硬化剤=55/45 部
(4)反応性(25℃原料温度)
ライズ タイム 30秒
(5)密度 1.05g/cm
(6)硬度 ショアーD 65
【0051】
水性プライマー組成物の塗布状態の判断基準
アクリル/メラミン樹脂が電着塗装されたアルミニウム板材面上への水溶性プライマー組成物の塗布状態を目視にて行い、次のように判断をした。
○:アルミニウム板材面上ではじきも無く均一に塗布されていて良好
×:アルミニウム板材面上ではじきが見られ均一でないため不良
【0052】
せん断剥離強度の評価方法および評価基準
(1)水性プライマー組成物を乾かさなかったアルミ板材品は、作成60分後にオートグラフにより、20℃、せん断剥離強度速度(引張速度)5mm/分の条件でせん断剥離強度を測定した。
(2)水性プライマー組成物を塗布後風乾した成型品は、作成60分後にせん断剥離強度を測定した以外は、上記(1)と同様にした。
(3)せん断剥離強度の評価基準としては次の通り。
せん断剥離強度が2.5MPa以上であれば良好である。
【0053】
接着性(剥離状態)評価の基準は次の通り。
◎ :アクリル/メラミン樹脂部が材料破壊状態で良好
〇 :ウレタン樹脂部での界面剥離状態が多くみられ良好
× :ウレタン樹脂部の全面が界面剥離状態で不良
【0054】
実施例1
水100部にポリウレタンディスパージョン:製品名 ディスパコール U54 (脂肪族イソシアネート/ポリエステルポリオール、バイエルマテリアルサイエンス社製)1.0部を加え混合し、ドデシルベンゼンスルホン酸1.0部、n−オクチルピロリドン(インターナショナル・スペシャルティ・プロダクツ社製・SURFADONE LP)0.1部を加えて、水性プライマー組成物を作成した。
この水性プライマー組成物を、アクリル/メラミン樹脂が電着塗装された35℃のアルミニウム板材の面にスプレーによる塗布を行った。水性プライマー組成物の塗布量は20g/mで、塗布された水性プライマー組成物は、アルミニウム窓枠型材の面ではじくことも無く均一な状態であった。
塗布した水性プライマー組成物は風乾を行わずに、水性プライマー組成物の塗布15分後に、2液型ポリウレタン樹脂用原料を注入し、室温にて反応硬化させて 成型品を作成した。
作成60分後に、せん断剥離強度と接着性(状態)を確認したところ、せん断剥離強度
が3.4MPaと良好であり、またアクリル/メラミン樹脂塗膜部のほぼ全面が材料破壊状態であり良好な接着性を示した。
また、水性プライマー組成物を塗布後風乾した場合は、せん断剥離強度が3.3MPaと良好であり、またアクリル/メラミン樹脂塗膜部のほぼ全面が材料破壊状態であり同様に良好な接着性を示した。
【0055】
実施例2
ポリウレタンディスパージョンを 製品名NeoRez R-9403 (芳香族イソシアネート/ポリエーテルポリオール、DSM社製)1.0部にした以外は、実施例1と同様にして成型品を作成した。
この時も、塗布された水性プライマー組成物は、アルミニウム窓枠型材の上ではじくことも無く均一な状態であった。
せん断剥離強度と接着性(状態)を確認したところ、せん断剥離強度が2.8MPAと良好であり、またアクリル/メラミン樹脂塗膜部が部分材料破壊状態であり良好な接着性を示した。
また、水性プライマー組成物を塗布後風乾した場合は、せん断剥離強度が2.8MPaと良好であり、またアクリル/メラミン樹脂塗膜部が部分材料破壊状態であり良好な接着性を示した。
【0056】
実施例3
ポリウレタンディスパージョンを製品名NeoRez R−966(脂肪族イソシアネート/ポリエーテルポリオール、DSM社製)1.0部にした以外は、実施例1と同様にして成型品を作成した。
この時も、塗布された水性プライマー組成物は、アルミニウム板材の面上ではじくことも無く均一な状態であった。
せん断剥離強度と接着性(状態)を確認したところ、せん断剥離強度が2.6MPaと良好であり、またアクリル/メラミン樹脂塗膜部は界面剥離状態であるが良好な接着性を示した。
また、水性プライマー組成物を塗布後風乾した場合は、せん断剥離強度が2.5MPaと良好であり、またアクリル/メラミン樹脂塗膜部は界面剥離状態であるが良好な接着性を示した。
【0057】
実施例4
ポリウレタンディスパージョンを製品名ディスパコールU54(脂肪族イソシアネート/ポリエステルポリオール、バイエルマテリアルサイエンス社製)、その添加量を0.5部にした以外は、実施例1と同様にして成型品を作成した。
この時も、塗布された水性プライマー組成物は、アルミニウム窓枠型材の上ではじくことも無く均一な状態であった。
せん断剥離強度と接着性(状態)を確認したところ、せん断剥離強度が2.8MPaと良好であり、アクリル/メラミン樹脂塗膜部は界面剥離状態であるが良好な接着性を示した。
また、水性プライマー組成物を塗布後風乾した時は、せん断剥離強度が2.7MPaと良好であり、アクリル/メラミン樹脂塗膜部は界面剥離状態であるが良好な接着性を示した。
【0058】
実施例5
ポリウレタンディスパージョンを製品名ディスパコール U54 (脂肪族イソシアネート/ポリエステルポリオール、バイエルマテリアルサイエンス社製)の添加量を1.5部にした以外は、実施例1と同様にして成型品を作成した。
この時も、塗布された水性プライマー組成物は、アルミニウム窓枠型材の上ではじくことも無く均一な状態であった。
せん断剥離強度と接着性(状態)を確認したところ、せん断剥離強度が2.6MPaと良好であり、またアクリル/メラミン樹脂塗膜部が部分材料破壊状態であり良好な接着性を示した。
また、水性プライマー組成物を塗布後風乾した時は、せん断剥離強度が2.6MPaと良好であり、アクリル/メラミン樹脂塗膜部も部分材料破壊状態であり良好な接着性を示した。
【0059】
比較例1
水100部に対してポリウレタンディスパージョンを用いずに、実施例1と同様の条件で、成型品を作成した。
せん断剥離強度と接着性(状態)を確認したところ、せん断剥離強度が2.2MPaと低く、またポリウレタン樹脂の全面が界面剥離の状態であり接着性不良であった。
【0060】
比較例2
水100部に対して、ポリウレタンディスパージョン:製品名ディスパコールU54(脂肪族イソシアネート/ポリエステルポリオール、バイエルマテリアルサイエンス社製)、その量を1.0部にし、ドデシルベンゼンスルホン酸を加えなかった以外は、実施例1と同様にして成型品を作成した。
せん断剥離強度と接着性(状態)を確認したところ、せん断剥離強度が0.4MPaと低く、またポリウレタン樹脂の全面が界面剥離の状態であり接着性不良であった。
【0061】
比較例3
水100部に対してn−オクチルピロリドンを用いずに、実施例1と同様の条件で、成型品を作成した。
混合液は、アルミニウム板材の面上で殆どがはじかれて球状になり、塗布されていない部分が殆どで有り均一な塗布状態にならなかった。
せん断剥離強度と接着性(状態)を確認したところ、せん断剥離強度が1.2MPaと低く、ポリウレタン樹脂面の大部分に界面剥離が見られ接着性は良好とは言えない状態であった。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のプライマー組成物は、電着塗装された材料と断熱材として用いられるポリウレタン樹脂との接着において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンディスパージョン(A)、スルホン酸化合物(B)、ピロリドン化合物である界面活性剤(C)、および水(D)を含んでなるポリウレタン樹脂用水性プライマー組成物。
【請求項2】
ポリウレタンディスパージョン(A)の量が、水(D)100重量部に対して0.1〜10重量部、スルホン酸化合物(B)の量が、水(D)100重量部に対して0.005〜30重量部、ピロリドン化合物である界面活性剤(C)の量が、水(D)100重量部に対して0.01〜2.0重量部である請求項1に記載の水性プライマー組成物。
【請求項3】
ポリウレタンディスパージョン(A)が、ポリオールとポリイシシアネートとを反応させて得られるポリウレタンを水中に分散もしくは溶解させたものである請求項1に記載の水性プライマー組成物。
【請求項4】
ピロリドン化合物がピロリドン環と炭素数1〜20の炭化水素置換基を有する化合物である請求項1に記載の水性プライマー組成物。
【請求項5】
スルホン酸化合物(B)が、脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸、芳香脂肪族スルホン酸または脂環式スルホン酸である請求項1に記載の水性プライマー組成物。
【請求項6】
基材とポリウレタン樹脂からなる成型品において、請求項1に記載の水性プライマー組成物を使用して、基材の上にポリウレタン樹脂が形成されていることを特徴とする成型品。
【請求項7】
基材とポリウレタン樹脂からなる成型品を製造する方法であって、請求項1に記載の水性プライマー組成物を使用することを特徴とする方法。

【公開番号】特開2011−79967(P2011−79967A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233421(P2009−233421)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000183299)住化バイエルウレタン株式会社 (33)
【Fターム(参考)】