説明

ポリウレタン発泡体

【課題】 酸化防止剤が添加されていることにより、熔解処理時におけるポリウレタン発泡体の組成物の酸化が抑えられ、又、ポリウレタン発泡体の黄色変色も抑制することができる熔解処理をしたポリウレタン発泡体を提供する。
【解決手段】
100質量部のポリオール類に対してフェノール系酸化防止剤が8〜29質量部を含ませてなる熔解処理されたポリウレタン発泡体とする。このように構成すると、熔解処理時に、ポリウレタン発泡体の未反応の末端ヒドロキシル基の酸化により生ずるラジカルが、フェノール系酸化防止剤により捕捉されて酸化が抑制されるため、アルデヒド類や酸の揮発性有機化合物の発生が抑制され、ラジカルによる黄色変色が抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン発泡体に関し、特に、セル膜が除去されたポリウレタン発泡体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン発泡体を製造する場合、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤を主成分とし、整泡剤や、第3級アミンや各種添加剤を使用して、発泡し、その後、硬化して形成している。そして、より通気度の高いポリウレタン発泡体を得る場合には、発泡した後、熔解処理がされている。
【0003】
この熔解処理は、セル膜を吹飛ばしてポリウレタン発泡体に形成されている骨格構造だけを残すものである。例えば、熔解処理は、多数のオープンセルからなるポリウレタン発泡体を防爆容器中に収納し、該容器中に充填したプロパンガスと酸素の混合気に点火してこれを爆発させる。この爆発に伴なう圧力により、ポリウレタン発泡体における多数のセルを隔てているセル膜を吹飛ばし、立体網目状の骨格構造だけを残留させることにより、セル膜が除去されたポリウレタン発泡体が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、住宅や、自動車内装材料においては、揮発性有機化合物(VOC)の環境基準が設けられており、特に、シックハウス症候群の要因とされているホルムアルデヒドや、アセトアルデヒドの規定がなされている。ところで、ポリウレタン発泡体は、ポリオールを出発原料として使用しているが、前記熔解処理時の爆破において、ポリウレタン発泡体の組成物の一部が解離して刺激臭のあるアルデヒド類や、酸が発生することが確認されており、これらが、揮発性有機化合物(VOC)や「におい」の原因となる。
【0005】
従来は、熔解処理が施されたポリウレタン発泡体には独特のにおいが残り、刺激臭のあるアルデヒド類や、酸がそのまま残留することがあり、これらを除去することが望まれている。
【0006】
そこで本発明の目的とするところは、酸化防止剤が添加されていることにより、熔解処理時におけるポリウレタン発泡体の組成物の酸化が抑えられ、又、ポリウレタン発泡体の黄色変色も抑制することができる熔解処理をしたポリウレタン発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、100質量部のポリオール類に対してフェノール系酸化防止剤が8〜29質量部、含まれてなる熔解処理されたポリウレタン発泡体を要旨とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記熔解処理が、爆破処理であることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、JIS Z8808に準拠して測定したアセトアルデヒドの揮発量が、0.03ppm以下であることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項において、JIS Z8808に準拠して測定したプロピオン酸の揮発量が、発生源として1.0ppm以下であることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項において、前記ポリオール類は、ポリエーテルポリオールであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、熔解処理時に、ポリウレタン発泡体の未反応の末端ヒドロキシル基の酸化により生ずるラジカルが、フェノール系酸化防止剤により捕捉されて酸化が抑制されているため、アルデヒド類や酸の揮発性有機化合物の発生が抑制され、ラジカルによる黄色変色が抑制できる。
【0012】
請求項2の発明によれば、爆破処理時に、ポリウレタン発泡体の未反応の末端ヒドロキシル基の酸化により生ずるラジカルが、フェノール系酸化防止剤により捕捉されることにより、酸化が抑制されているため、アルデヒド類や酸の揮発性有機化合物の発生が抑制され、ラジカルによる黄色変色が抑制できる。
【0013】
請求項3の発明によれば、アセトアルデヒドの揮発量が、0.03ppm以下にされていることにより、アセトアルデヒドの室内濃度指針値をクリアすることができる。
請求項4の発明によれば、プロピオン酸の揮発量が、1.0ppm以下とされていることにより、発生源として感知できるプロピオン酸のにおいが軽減できる。
【0014】
請求項5の発明によれば、前記ポリオール類は、ポリエーテルポリオールとすることにより、イソシアネートとの反応性が高いため、好適なポリウレタン発泡体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態におけるポリウレタン発泡体(以下、単に発泡体ともいう)は以下のようにして製造される。すなわち、ポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤、触媒、金属触媒、整泡剤等を含有するポリウレタン発泡体原料に対し、酸化防止剤を配合し、前記ポリウレタン発泡体原料を反応させ発泡及び硬化させることにより製造される。
【0016】
ここで、本実施形態のポリウレタン発泡体は、連続気泡構造を有し、復元性を有しない発泡体を意味する。
まず、前記ポリウレタン発泡体原料について説明する。
【0017】
(ポリオール類)
ポリオール類としては、ポリエーテルポリオールが用いられる。
ポリエーテルポリオールとしては、多価アルコールにプロピレンオキシドとエチレンオキシドとを付加重合させた重合体よりなるポリエーテルポリオール、その変性体等が用いられる。変性体としては、前記ポリエーテルポリオールにアクリロニトリル又はスチレンを付加させたもの、或はアクリロニトリルとスチレンの双方を付加させたもの等が挙げられる。ここで、多価アルコールは1分子中に水酸基を複数個有する化合物である。多価アルコールとしては、グリセリン、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
【0018】
ポリエーテルポリオールとして具体的には、グリセリンにプロピレンオキシドを付加重合させ、更にエチレンオキシドを付加重合させたトリオール、ジプロピレングリコールにプロピレンオキシドを付加重合させ、更にエチレンオキシドを付加重合させたジオール等が挙げられる。これらのポリエーテルポリオールは、末端に第1級の水酸基を有していることから、ポリイソシアネートとの反応性が高い。ポリエーテルポリオールの平均分子量は2000〜4000であることが好ましい。この平均分子量が2000未満の場合には得られるポリウレタン発泡体の強度等の物性が低下し、4000を越える場合にはポリウレタン発泡体の単位量当りの水酸基の数が少なくなってポリイソシアネートとの反応性が低下する傾向を示す。
【0019】
ポリエーテルポリオール中のポリエチレンオキシド単位は14〜20モル%であることが好ましい。ポリエチレンオキシド単位が14モル%未満ではポリエーテルポリオールの親水性が低下し、20モル%を越えると親水性が高くなり過ぎてポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとの反応性が低下する傾向を示して好ましくない。このポリオールは、原料成分の種類、分子量、縮合度等を調整することによって、水酸基の官能基数や水酸基価を変えることができる。
【0020】
(ポリイソシアネート類)
次に、ポリエーテルポリオールと反応させるポリイソシアネート類はイソシアネート基を複数有する化合物であって、具体的にはトリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、これらの変性物等が用いられる。
【0021】
ポリイソシアネートのイソシアネートインデックスは100〜130程度の範囲である。ここで、イソシアネートインデックスは、ポリオールの水酸基及び発泡剤としての水に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の比を百分率で表したものである。
【0022】
(発泡剤)
上記発泡剤はポリウレタン樹脂を発泡させてポリウレタン発泡体とするためのもので、例えば水のほかペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、炭酸ガス等が用いられる。これらの発泡剤うち、ポリイソシアネート類と速やかに反応して十分な炭酸ガスを発生でき、取扱いが良好である点から水が好ましい。
【0023】
(触媒)
触媒はポリオール類とポリイソシアネート類とのウレタン化反応を促進するためのものである。触媒として具体的には、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、N,N´,N´−トリメチルアミノエチルピペラジン等の3級アミン、オクチル酸スズ(スズオクトエート)等の有機金属化合物、酢酸塩、アルカリ金属アルコラート等が単独、或いは混合して用いられる。
【0024】
(整泡剤)
整泡剤としては、ポリウレタン発泡体の生成に一般に使用されるものを用いることができる。たとえば、整泡剤として、シリコーン化合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリエーテルシロキサン、フェノール系化合物等が用いられる。なかでも、線状、或いは分枝ポリエーテル−シロキサン共重合体が好ましく、特に、連通性を高めるためには整泡力の低い線状ポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体がより好ましい。整泡剤は0.5〜2.5質量部を用いることが好ましい。
【0025】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤が好ましい。フェノール系酸化防止剤は、ラジカルを捕捉して酸化を停止させる作用を有する物質で、特に制限はない。すなわち、フェノール系酸化防止剤は、ラジカルに水素を供与して、フェノキシラジカルになり、このフェノキシラジカルは、オルト位の置換基に保護されて安定したラジカルになる。このオルト位置換基が大きいほど(嵩高いほど)フェノキシラジカルは安定する。たとえば、オルト位置換基は、t−ブチル基等が挙げられる。
【0026】
ところで、ポリウレタン発泡体が熔解処理時に発生する酸素及び窒素由来ラジカルによって、ポリウレタン発泡体の未反応の末端ヒドロキシル基が酸化されることにより、アルデヒド類や、酸が発生すると推測される。このため、このフェノール系酸化防止剤により、前記ラジカルを捕捉することにより、酸化を停止させることができる。
【0027】
このフェノール系酸化防止剤としては、下記のものを挙げることができ、これら中から、1つ、又は2つ以上組み合わせて使用してもよい。
4,4−メチレン−ビス−(6−t−ブチル−2−メチルフェノール)、4,4−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、4,4′−チオ−ビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2−t−ブチルハイドロキノン等。
【0028】
フェノール系酸化防止剤は、ポリオール類100質量部に対して、8〜29部質量部が好ましい。フェノール系酸化防止剤が8質量部未満であると、フェノール系酸化防止剤が少なくて、酸化防止の抑制が良好に行われず、アセトアルデヒドをはじめとするアルデヒド類や、刺激臭のあるプロピオン酸の発生量が多くなる。又、フェノール系酸化防止剤が、29部質量部を超えると、フェノール系酸化防止剤がポリオール類とポリイソシアネート類の発泡を阻害するため、ポリウレタン発泡体の物理強度が低下する。
【0029】
(ポリウレタン発泡体の製造)
ポリウレタン発泡体の製造は、下記のように行う。
ポリウレタン発泡体を製造する場合には、ポリオール類とポリイソシアネート類とを直接反応させるワンショット法、或いはポリオール類とポリイソシアネート類とを事前に反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを得、それにポリオール類を反応させるプレポリマー法のいずれも採用される。
【0030】
いずれの場合も、酸化防止剤をポリオール類に混合して十分に攪拌するものとする。そして、ポリオール類とポリイソシアネート類の混合液、或いはプレポリマーと、ポリオール類とをの混合液に、発泡剤を混和し、整泡剤、触媒、金属触媒を添加することにより、発泡させる。
【0031】
ポリウレタン発泡体としては、スラブポリウレタン発泡体が好ましい。ポリウレタン発泡体は混合攪拌された反応原料(反応混合液)をベルトコンベア上に吐出し、該ベルトコンベアが移動する間に反応原料が常温、大気圧下で自然発泡し、硬化することで得られる。その後、乾燥炉内で硬化(キュア)し、所定形状に裁断される。
【0032】
ポリウレタン発泡体に施される熔解処理は、一種の爆破処理によりセル膜を吹飛ばして骨格構造だけを残すものである。例えば、多数のオープンセルからなるポリウレタン発泡体を防爆容器中に収納し、該容器中に充填したプロパンガスと酸素の混合気に点火してこれを爆発させる。この爆発に伴なう圧力により、ポリウレタン発泡体における多数のセルを隔てているセル膜を吹飛ばし、立体網目状の骨格構造だけを残留させることで、熔解処理済みのポリウレタン発泡体が得られる。
【0033】
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
・ 実施形態においては、フェノール系酸化防止剤がラジカルを捕捉して酸化を停止させるため、熔解処理済みのポリウレタン発泡体のアルデヒド類や、プロピオン酸の発生が抑制できる。
【0034】
・ 実施形態において、フェノール系酸化防止剤を、ポリオール類100質量部に対して、8〜29部質量部とすることにより、酸化防止の抑制が良好に行われるため、熔解処理済みのポリウレタン発泡体のアルデヒド類や、プロピオン酸の発生量を好適に少なくすることができる。
【0035】
・ 実施形態において、フェノール系酸化防止剤がラジカルを捕捉して酸化を停止させるため、ポリウレタン発泡体のラジカルによる黄色変色が抑制できる。
・ 実施形態において、フェノール系酸化防止剤を、ポリオール類100質量部に対して、8〜29部質量部とすることにより、発泡が良好に行われているため、ポリウレタン発泡体の物理的強度を、フェノール系酸化防止剤を添加していないものと比較しても同程度の物理的強度を得ることができる。
【実施例】
【0036】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜4並びに比較例1〜7)
まず、各実施例及び比較例で用いたポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤、整泡剤、触媒、金属触媒よりなるポリウレタン発泡体原料を以下に示す。なお、2種類の酸化防止剤をそれぞれA,Bとする。
【0037】
ポリオール:商品名;GP−3050F、官能基数3、水産基価56.1(mgKOH/g)、分子量3000、三洋化成工業(株)製。なお、「GP−3050F」は、グリセリンと、プロピレンオキシド,エチレンオキシドの縮合物である。
【0038】
ポリイソシアネート:商品名;T−80、[2,4−TDI/2,6−TDIの80/20(質量比混合物)]、イソシアネートインデックス117、日本ポリウレタン(株)製。
【0039】
発泡剤:水道水。
触媒: アミン系触媒:トリエチレンジアミン;商品名;33LV(Air products社製)
金属触媒:オクチル酸第1スズ:商品名;MRH−110(城北化学(株)製)
整泡剤:シリコーン系整泡剤:商品名;SZ−1136,東レダウコーニング(株)製。
【0040】
酸化防止剤A:tributylhydroxytoluene(BHT)
酸化防止剤B:2,5-Di-tert-butylhydroquinone
なお、各実施例及び比較例の製造は、前記実施形態で説明した方法で行った。
【0041】
【表1】

(実施例及び比較例の評価方法)

密度(kg/m3)は、JIS K7222で測定し、硬さ(N)は、JIS K6400−2(A法)で測定し、引っ張り(kPa)及び伸び(%)は、JIS K6400−5で測定した。

アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、プロピオン酸の分析方法は下記の通りである。すなわち、1Lのガラスデシタケータにサンプル(サイズ:5×30×30(mm))を入れた後、窒素置換を実施し、65℃の恒温槽に2時間放置する。その後、ガラスデシタケータ中のガスを吸引し、ガスクロマトグラフを用いて、JIS Z8808に準じて、分析を実施する。
【0042】
黄色変色性は、熔解処理後のポリウレタン発泡体の中心と外部との色を目視で比較した。
【0043】
【表2】

表1、2中、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、プロピオン酸の量の単位は、[ppm]である。なお、厚生労働省の2002年1月22日に設定された、アセトアルデヒドの室内濃度指針値は、48μg/m(0.03ppm)である。以下、48μg/m(0.03ppm)をアセトアルデヒドの室内濃度指針値という。
【0044】
比較例1は、酸化防止剤A,Bを配合しておらず、熔解処理を行わなかったポリウレタン発泡体である。比較例1の場合、アセトアルデヒドやプロピオン酸が大量に発生することはなかった。比較例2では、比較例1を、熔解処理したものであり、アルデヒド類、及びプロピオン酸が大量に発生している。又、比較例2では、黄色変色性が悪化している。
【0045】
比較例3では、酸化防止剤Aを使用したが、酸化防止剤Aの使用量が少なく、アルデヒド類、プロピオン酸の大量発生の抑制がされておらず、又、黄色変色性も悪化している。
比較例4では、比較例3よりも、酸化防止剤Aの使用量を増加したが、酸化防止剤Aの使用量が少なく、アセトアルデヒドの揮発量(発生量)は、0.59ppmであり、アセトアルデヒドの室内濃度指針値より大きい。
【0046】
比較例5は、酸化防止剤Aの使用量を多くすることにより、アセトアルデヒドの室内濃度指針値よりも、アセトアルデヒドの揮発量(発生量)を抑制できた。しかし、比較例5は、発泡状態がやや不良となり、引張(kPa)、伸び(%)に関する物理的強度が、酸化防止剤を添加していない比較例2や、実施例1〜4と比して同程度の物理的強度を得ることができず、物理的強度の低下がみられる。
【0047】
比較例6は、酸化防止剤Bを使用したが、酸化防止剤Bの使用量が少なく、アセトアルデヒドの揮発量(発生量)は、0.62ppmであり、アセトアルデヒドの室内濃度指針値より大きい。
【0048】
比較例7は、酸化防止剤Bの使用量を多くすることにより、アセトアルデヒドの室内濃度指針値よりも、アセトアルデヒドの揮発量(発生量)を抑制できた。しかし、比較例7は、発泡状態がやや不良となり、引張(kPa)、伸び(%)に関する物理的強度が、酸化防止剤を添加していない比較例2や、実施例1〜4と比して同程度の物理的強度を得ることができず、物理的強度の低下がみられる。
【0049】
実施例1,2は、酸化防止剤Aを使用した例、実施例3,4は、酸化防止剤Bを使用した例である。実施例1〜4は、アセトアルデヒドの揮発量(発生量)は、アセトアルデヒドの室内濃度指針値を下回るとともに、プロピオンアルデヒド、プロピオン酸の揮発量(発生量)は、熔解処理を行った比較例2〜6のいずれよりも少なく、低減効果が確認できるとともに、黄色変色性についても、変色がみられず良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
100質量部のポリオール類に対してフェノール系酸化防止剤が8〜29質量部、含まれてなる熔解処理されたポリウレタン発泡体。
【請求項2】
前記熔解処理が、爆破処理であることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン発泡体。
【請求項3】
JIS Z8808に準拠して測定したアセトアルデヒドの揮発量が、0.03ppm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリウレタン発泡体。
【請求項4】
JIS Z8808に準拠して測定したプロピオン酸の揮発量が、発生源として1.0ppm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載のポリウレタン発泡体。
【請求項5】
前記ポリオール類は、ポリエーテルポリオールであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載のポリウレタン発泡体。

【公開番号】特開2007−23223(P2007−23223A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210405(P2005−210405)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】