説明

ポリエステル、顔料組成物及びトナー

【課題】アゾ顔料の非水溶性溶剤に対する分散性を改善する顔料分散剤を提供する。
【解決手段】式(1)で表されるユニット等を1以上有する窒素を含むポリエステル。


[式中、R1は炭素原子数が1乃至6のアルキル基、又はフェニル基を表す。R2乃至R6の少なくとも1つはCOOR7基、又はCONR89基で、その他は水素原子であり、R7乃至R9は水素原子、又は炭素原子数が1乃至3のアルキル基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル、該ポリエステルを含有する顔料組成物、及び該顔料組成物を着色剤とするトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真記録方法において、アゾ顔料と結着樹脂とを有するトナーの顔料分散性を向上させる方法として、着色剤であるアゾ顔料に親和性を有する部位と、溶媒及び結着樹脂に親和性のあるオリゴマー或いはポリマーとが共有結合で結合しているポリマー分散剤が用いられてきた(特許文献1参照)。また、Solsperse(登録商標)として知られる酸又は塩基性部位を有する櫛型ポリマー分散剤を使用した例が開示されている(特許文献2参照)。一方、インクジェット記録方法において、アゾ顔料の分散剤として、アゾ顔料の分子量の95%より小さい分子量の発色団を水溶性ポリマーの側鎖、もしくは末端に結合させた、ポリマー分散剤を用いた例が開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3984840号公報
【特許文献2】WO1999/042532号公報
【特許文献3】米国特許第7582152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献2もしくは特許文献3に記載の顔料分散剤はアゾ顔料への吸着性が不十分なため、その分散性が十分でない。また、特許文献1に記載の顔料分散剤については水溶性ポリマーが使用され、非水溶性溶剤を分散剤としたものに対する分散性が十分でない。さらに、トナーを重合する際などの水系媒体中で処理を施す過程を経る場合に、顔料が染み出すなどの課題を有している。
【0005】
本発明の目的は、顔料に対する高い親和性を有し、顔料分散性を十分に向上させることができるポリエステルを提供することである。また、本発明は、結着樹脂や非水溶性溶剤等に対する高い親和性を併せ持つ顔料組成物を提供することを目的とする。また、該顔料組成物をトナー用着色剤として適用する事で、良好な色調のトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記式(1)又は式(2)で表されるユニットを1ユニット以上有するポリエステルに関する。
【0007】
【化1】

【0008】
【化2】

[式(1)又は式(2)において、R1は炭素原子数が1乃至6のアルキル基、又はフェニル基を表す。R2乃至R6は水素原子、COOR7基、又はCONR89基を表す。但し、R2乃至R6の少なくとも1つはCOOR7基、又はCONR89基である。R7乃至R9は水素原子、又は炭素原子数が1乃至3のアルキル基を表す。]
【0009】
また、本発明は、上記ポリエステルを含有する顔料組成物及びトナーに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、顔料に対する高い親和性を有し、顔料分散性を十分に向上させることができるポリエステルを提供することができる。また、本発明によれば、結着樹脂や非水溶性溶剤等に対する高い親和性を併せ持つ顔料組成物を提供することができる。また、該顔料組成物をトナー用着色剤として適用する事で、良好な色調のトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】アゾ色素骨格を有するポリエステル(26)のCDCl3中、室温、400MHzにおける1H NMRスペクトルを表す図である。
【図2】アゾ色素骨格を有するポリエステル(27)のCDCl3中、室温、400MHzにおける1H NMRスペクトルを表す図である。
【図3】アゾ色素骨格を有するポリエステル(28)のCDCl3中、室温、400MHzにおける1H NMRスペクトルを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のアゾ色素骨格を有するポリエステルの構成について説明する。本発明のアゾ色素骨格を有するポリエステルは、アゾ顔料への親和性が高い下記式(1)又は(2)式で表わされるユニットが、非水溶性溶剤への親和性が高いポリエステルに1ユニット以上結合している。
【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

[式(1)又は式(2)において、R1は炭素原子数が1乃至6のアルキル基、又はフェニル基を表す。R2乃至R6は水素原子、COOR7基、又はCONR89基を表す。但し、R2乃至R6の少なくとも1つはCOOR7基、又はCONR89基である。R7乃至R9は水素原子、又は炭素原子数が1乃至3のアルキル基を表す。]
【0015】
まず、上記式(1)又は式(2)で表されるアゾ色素骨格ユニットについて詳細に説明する。
【0016】
上記式(1)又は式(2)中のR1におけるアルキル基としては、炭素原子数が1乃至6であれば特に限定されるものではない。炭素原子数が1乃至6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0017】
上記式(1)又は式(2)中のR1の置換基は、官能基を有していても良い。官能基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、シアノ基、トリフルオロメチル基が挙げられる。
【0018】
上記式(1)又は式(2)中のR1は、顔料への親和性の観点からメチル基であることが好ましい。
【0019】
本発明のアゾ色素骨格を有するポリエステルは、上記式(1)又は式(2)で表されるユニットにおける−NH−基が、ポリエステル中のCOOH基とアミド結合を形成している。
【0020】
上記式(1)又は式(2)のユニット中の、−NH−基の置換位置は顔料への親和性の点で、アシルアセトアミド基に対し4−位である場合が好ましい。
【0021】
上記式(1)又は式(2)中のR2乃至R6は、水素原子、COOR7基、CONR89基から選択され、このうち少なくとも1つがCOOR7基又はCONR89基である。顔料への親和性の観点から、R2及びR5がCOOR7基であり、R3、R4、R6が水素原子である場合が好ましい。
【0022】
COOR7基及びCONR89基におけるR7乃至R9のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
【0023】
COOR7基及びCONR89基におけるR7乃至R9は、上記に列挙した置換基、及び水素原子から任意に選択できるが、顔料への親和性の観点から、R7及びR8がメチル基であり、R9がメチル基、又は水素原子である場合が好ましい。その中でも、R2がCOOH基又はCOOCH3基である場合が特に好ましい。
【0024】
上記式(1)又は式(2)で表されるアゾ色素骨格ユニットは、下記式(7)で表されるユニットであることが、顔料への親和性の点で好ましい。
【0025】
【化5】

【0026】
次に、本発明のアゾ色素骨格を有するポリエステルにおける、上記式(1)又は式(2)で表されるユニット以外の部位(以下、ポリエステル部位とも言う)について説明する。
【0027】
ポリエステル部位は、直鎖状、分岐状、架橋構造を有するポリエステルのいずれでも良い。
【0028】
ポリエステル部位は、非水溶性溶剤への親和性の観点から、下記式(3)と下記式(4)の単量体単位を含む縮重合体である場合、もしくは下記式(6)の単量体単位を含む縮重合体であることが好ましい。
【0029】
【化6】

[式(3)中、L1は二価の連結基を表す。]
【0030】
【化7】

[式(4)中、L2は二価の連結基を表す。]
【0031】
【化8】

[式(6)中、L3は二価の連結基を表す。]
【0032】
式(3)中のL1は二価の連結基を表すが、好ましいのはL1がアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基である場合である。
【0033】
上記式(3)中のL1におけるアルキレン基としては、以下のものが挙げられる。メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、ネオペンチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、1,3−シクロペンチレン、1,3−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレン基。
【0034】
上記式(3)中のL1におけるアルケニレン基としては、ビニレン基、プロペニレン基、2−ブテニレン基が挙げられる。
【0035】
上記式(3)中のL1におけるアリーレン基としては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−フェニレン基、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基、4,4’−ビフェニレン基が挙げられる。
【0036】
上記式(3)中のL1の置換基は、非水溶性溶剤への親和性を著しく阻害しない限りは更に置換基により置換されていても良い。この場合、置換しても良い置換基としては、メチル基、ハロゲン原子、カルボキシル基、トリフルオロメチル基及びそれらの組合せが挙げられる。
【0037】
上記式(3)中のL1は、非水溶性溶剤への親和性の観点から、炭素原子数が6以上のアルキレン基又はフェニレン基である場合が好ましい。
【0038】
上記式(4)中のL2は二価の連結基を表すが、非水溶性溶剤への親和性の観点から、L2がアルキレン基又はフェニレン基である場合、若しくは上記式(4)が下記式(5)で表される場合が好ましい。
【0039】
【化9】

[式(5)において、R10はエチレン基又はプロピレン基を表す。x、yはそれぞれ0以上の整数値であり、且つx+yの平均値は2乃至10である。]
【0040】
上記式(4)中のL2におけるアルキレン基としては、以下のものが挙げられる。メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、ネオペンチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、1,3−シクロペンチレン、1,3−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレン基。
【0041】
上記式(4)中のL2におけるフェニレン基としては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−フェニレン基が挙げられる。
【0042】
上記式(4)中のL2の置換基は、非水溶性溶剤への親和性を著しく阻害しない限りは更に置換基により置換されていても良い。この場合、置換しても良い置換基としては、メチル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子及びそれらの組合せが挙げられる。
【0043】
上記式(4)は、非水溶性溶剤への親和性の観点から、上記式(3)が上記式(4)のビスフェノール誘導体である場合が好ましい。
【0044】
上記式(6)中のL3は二価の連結基を表し、L3がアルキレン基、アルケニレン基である場合が好ましい。
【0045】
上記式(6)中のL3におけるアルキレン基としては、以下のものが挙げられる。メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、ネオペンチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、1,4−シクロヘキシレン基。
上記式(6)中のL3におけるアルケニレン基としては、以下のものが挙げられる。ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘキサジエニレン基、ヘプテニレン基、オクタニレン基、デセニレン基、オクタデセニレン基、エイコセニレン基、トリアコンテニレン基。これらのアルケニレン基は直鎖状、分岐状、及び環状のいずれの構造であっても良い。また、二重結合の位置はいずれの箇所でも良く、少なくとも一つ以上の二重結合を有していれば良い。
【0046】
上記式(6)中のL3の置換基は、非水溶性溶剤への親和性を著しく阻害しない限りは更に置換基により置換されていても良い。この場合、置換しても良い置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子及びそれらの組合せが挙げられる。
【0047】
上記式(6)中のL3は、非水溶性溶剤への親和性の観点から、炭素原子数6以上のアルキレン基、アルケニレン基である場合が好ましい。
【0048】
上記式(1)又は式(2)で示されるユニットを有するポリエステルは、分子量が大きい方が顔料の分散性を向上させる効果が高いが、分子量があまりに大きすぎると非水溶性溶剤への親和性が悪化する。従って、顔料の分散性を向上させる観点で数平均分子量(Mn)が500以上であることが好ましい。また、ポリエステルの数平均分子量(Mn)は200000以下である場合が好ましい。さらに、製造容易性の点を考慮すると、該共重合体の数平均分子量は2000乃至50000の範囲であることがより好ましい。
【0049】
上記式(1)で表されるアゾ色素骨格ユニットには、下記図に示されるように、下記式(9)及び(10)等で表される互変異性体が存在する。本発明のアゾ色素骨格を有するポリエステルは、これらの互変異性体をユニットとして含有していても良い。
【0050】
【化10】

【0051】
上記式(2)で表されるアゾ色素骨格ユニットには、下記図に示されるように、下記式(11)及び(12)等で表される互変異性体が存在する。本発明のアゾ色素骨格を有するポリエステルは、これらの互変異性体をユニットとして含有していても良い。
【0052】
【化11】

【0053】
式(1)又は式(2)で表されるアゾ色素骨格ユニットは、公知の方法に従って合成する事ができる。以下に合成スキームの一例を示す。
【0054】
【化12】

[式(13)乃至(18)中のR1、R2乃至R6は、上記式(1)又は式(2)におけるR1、R2乃至R6と同様である。nは1又は2の整数値を表し、式(19)のP1は、カルボキシル基を有するポリエステルを表す。Zは脱離基を表す。]
【0055】
上記に例示したスキームでは、式(13)で表されるニトロアニリン誘導体と式(14)で表されるアセト酢酸類縁体をアミド化し、アセトアセトアニリド類縁体である中間体(15)を合成する工程1;中間体(15)とアニリン誘導体(16)をジアゾカップリングさせ、アゾ化合物(17)を合成する工程2;アゾ化合物(17)中のニトロ基を還元し、アニリン類縁体である中間体(18)を合成する工程3;中間体(18)中のアミノ基と、別途合成したポリエステルP1中のカルボキシル基をアミド化する工程4によって、式(1)又は式(2)で示されるユニットを有するポリエステルを合成する。
【0056】
まず、工程1について説明する。工程1では公知の方法を利用できる[例えば、Datta E. Ponde、外 4名、「The Journal of OrganicChemistry」、(米国)、American Chemical Society、1998年、第63巻、第4号、1058−1063頁]。又、式(15)中のR1がメチル基の場合は原料(14)の替わりにジケテンを用いた方法によっても合成可能である[例えば、Kiran Kumar Solingapuram Sai、外 2名、「The Journal of Organic Chemistry」、(米国)、American Chemical Society、2007年、第72巻、第25号、9761−9764頁]。
【0057】
上記ニトロアニリン誘導体(13)及びアセト酢酸類縁体(14)は、それぞれ多種市販されており容易に入手可能である。又、公知の方法によって容易に合成する事ができる。
【0058】
工程1は無溶剤でおこなう事も可能であるが、反応の急激な進行を防ぐために溶剤の存在下でおこなう事が好ましい。溶剤としては、以下のものが挙げられる。メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等の含ハロゲン炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の酸類;水。また、上記溶剤は2種以上を混合して用いる事ができ、基質の溶解性に応じて、混合使用の際の混合比は任意に定める事ができる。上記溶剤の使用量は、反応速度の点で上記式(13)で表される化合物に対し1.0乃至20質量倍の範囲が好ましい。
【0059】
本工程は、通常0℃乃至250℃の温度範囲でおこなわれ、通常24時間以内に完結する。
【0060】
次に、工程2について説明する。工程2では公知の方法を利用できる。具体的には、下記に示す方法が挙げられる。先ず、メタノール溶剤中、アニリン誘導体(16)を塩酸又は硫酸等の無機酸の存在下、亜硝酸ナトリウム又はニトロシル硫酸等のジアゾ化剤と反応させて、対応するジアゾニウム塩を合成する。更に、このジアゾニウム塩を中間体(15)とカップリングさせて、アゾ化合物(17)を合成する。
【0061】
上記アニリン誘導体(16)は、多種市販されており容易に入手可能である。又、公知の方法によって容易に合成する事ができる。
【0062】
工程2は無溶剤でおこなう事も可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下でおこなう事が好ましい。溶剤としては、工程1で挙げた溶剤と同様のものが用いられる。溶剤の使用量は、反応速度の点で上記式(16)で表される化合物に対し1.0乃至20質量倍の範囲が好ましい。
【0063】
工程2は、通常−50℃乃至100℃の温度範囲でおこなわれ、通常24時間以内に完結する。
【0064】
次に、工程3について説明する。工程3では公知の方法を利用できる。金属化合物等を用いる方法としては、「実験化学講座」(丸善(株)、第1版、第17−2巻、162−179頁)に記載の方法が挙げられる。接触水素添加法としては、「実験化学講座」(丸善(株)、第1版、第15巻、390−448頁)、又はWO2009/060886号に記載の方法が挙げられる。
【0065】
工程3は無溶剤でおこなう事も可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下でおこなう事が好ましい。溶剤としては、工程1で挙げた溶剤と同様のものが用いられる。溶剤の使用量は、反応速度の点で上記式(17)で表される化合物に対し1.0乃至20質量倍の範囲が好ましい。
【0066】
工程3は、通常0℃乃至250℃の温度範囲でおこなわれ、通常24時間以内に完結する。
【0067】
次に、工程4について説明する。工程4では公知の方法を利用できる。カルボン酸クロライドを経由する方法としては、Norman O.V.Sonntag、「Chemical Reviews」、(American Chemical Society、1953年、第52巻、第2号、237−416頁)、に記載の方法が挙げられる。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等を用いる方法としては、John C. Sheehan、外 2名、「The Journal of Organic Chemistry」、(American Chemical Society、1961年、第26巻、第7号、2525−2528頁)に記載の方法が挙げられる。
【0068】
工程4は無溶剤でおこなう事も可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下でおこなう事が好ましい。溶剤としては、工程1で挙げた溶剤と同様のものが用いられる。溶剤の使用量は、反応速度の点で上記式(18)で表される化合物に対し1.0乃至20質量倍の範囲が好ましい。
【0069】
工程4は、通常0℃乃至250℃の温度範囲でおこなわれ、通常24時間以内に完結する。
【0070】
各工程で得られた上記式(1)、(2)、(15)、(17)、及び(18)で表される化合物は、通常の有機化合物の単離、精製方法を用いる事ができる。単離、精製方法としては、有機溶剤を用いた再結晶法や再沈殿法、シリカゲル等を用いたカラムクロマトグラフィーが挙げられる。これらの方法を単独、又は2つ以上組み合わせて精製をおこなう事により、高純度で化合物を得る事が可能である。
【0071】
一般式(15)、(17)、及び(18)で表される化合物は、核磁気共鳴分光分析[ECA−400、日本電子(株)製]、ESI−TOF MS(LC/MSD TOF、Agilent Technologies社製)、HPLC分析[LC−20A、(株)島津製作所製]により同定、定量をおこなった。
【0072】
一般式(1)又は(2)で表される化合物は、高速GPC[HLC8220GPC、東ソー(株)製]、核磁気共鳴分光分析[ECA−400、日本電子(株)製]、JIS K−0070に基づく酸価測定[自動滴定測定装置COM−2500、平沼産業(株)製]により同定、定量をおこなった。
【0073】
次に上記P1で表されるポリエステルの製造方法に関して説明する。P1で表されるポリエステルの製造方法は特に限定されず、従来公知の種々の方法を利用することができる。例えば、P1が上記式(3)で表される単量体単位と式(4)で表される単量体単位から構成される場合、ジカルボン酸類とジオール類を、溶剤中、不活性ガス雰囲気下で縮重合する事により製造できる。又、P1が上記式(6)で表される単量体単位から構成される場合、ヒドロキシカルボン酸類、若しくはラクトン類を、溶剤中、不活性ガス雰囲気下で縮重合若しくは開環重合する事により製造できる。
【0074】
1で表されるポリエステルの製造において、重合反応を促進するために、触媒の存在下で反応を行うことが好ましい。触媒としては、三酸化アンチモン、酸化ジ−n−ブチルスズ、シュウ酸第一スズ、ジ(2−エチルヘキサン酸)スズ、酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、酢酸マンガン、ジ(2−エチルヘキサン酸)亜鉛、酢酸亜鉛が挙げられる。これら触媒の添加量は、得られるポリエステルに対して、0.001乃至0.5モル%の範囲内であることが好ましい。
【0075】
上記重合反応に使用する溶剤は、重合反応によって生成する水と分液分離できるものが好ましい。トルエン、キシレン、メシチレン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、1,2−ジブロモベンゼン、1,3−ジブロモベンゼン、ヨードベンゼン、1,2−ジヨードベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテルを用いる事ができる。又、上記溶剤は2種以上を混合して用いる事ができ、混合使用の際の混合比は任意に定める事ができる。
【0076】
上記重合反応は、使用する溶剤を還流し、反応で副生する水、又はアルコールを系外に除去する事が、反応速度、得られるポリエステルの重合度の点で好ましい。そのため、使用する溶剤の還流温度付近で反応を行うことが好ましい。
【0077】
上記自己縮合型重合反応は、反応系中にモノカルボン酸を添加し、未反応ヒドロキシル基をエステル化する事で、該ポリエステルの分子量の制御や、分散剤とした場合の顔料分散性を向上させる事が可能である。ヒドロキシル基末端の反応停止剤として使用できるモノカルボン酸としては、分岐状脂肪族カルボン酸が好ましく、これを用いることで顔料分散性が向上する。
【0078】
上記重合反応は、反応系中に三価以上の多価カルボン酸、又は多価アルコールを添加する事で、架橋したポリエステル縮重合体を合成し、分散媒体との親和性を向上させる事も可能である。
【0079】
三価以上の多価カルボン酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、及びこれらの酸無水物、低級アルキルエステルが挙げられる。
【0080】
三価以上の多価アルコールとしては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
【0081】
本発明のアゾ色素骨格を有するポリエステルは、アゾ顔料、特にアセトアセトアニリド系顔料との親和性が高く、且つ非水溶性溶剤への親和性も高い事から、単独で、又は2種以上を組み合わせて顔料分散剤として用いる事ができる。
【0082】
また、本発明のアゾ色素骨格を有するポリエステルは、アゾ顔料と共に顔料組成物として用いることができる。本発明の顔料組成物は、塗料、インキ、トナー、樹脂成形品に用いることができる。
【0083】
アゾ顔料としては、モノアゾ顔料、ビスアゾ顔料、又はポリアゾ顔料等が挙げられる。その中でも、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Yellow 93、C.I.Pigment Yellow 128、C.I.Pigment Yellow 155、C.I.Pigment Yellow 175、C.I.Pigment Yellow 180に代表されるアセトアセトアニリド系顔料は、上記式(1)で表されるユニット有するポリエステルである顔料分散剤との親和性が良好であり好ましい。特に下記式(8)で表されるC.I.Pigment Yellow 155は、上記式(1)又は式(2)で表されるユニットを有するポリエステルによる分散効果が高い事からより好ましい。上記アゾ顔料は単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0084】
【化13】

【0085】
尚、アゾ顔料としては、上記のようなイエロー顔料以外の顔料であっても、本発明の顔料分散剤と親和性がある顔料であれば好適に用いる事ができる。
【0086】
イエロー顔料以外の顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.Pigment Orange 1、C.I.Pigment Orange 5、C.I.Pigment Orange 13、C.I.PigmentOrange 15、C.I.Pigment Orange 16、C.I.Pigment Orange 34、C.I.Pigment Orange 36、C.I.Pigment Orange 38、C.I.Pigment Orange 62、C.I.Pigment Orange 64、C.I.Pigment Orange 67、C.I.Pigment Orange 72、C.I.Pigment Orange 74、C.I.Pigment Red 2、C.I.Pigment Red 3、C.I.Pigment Red 4、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 16、C.I.Pigment Red 17、C.I.Pigment Red 23、C.I.Pigment Red 31、C.I.Pigment Red 32、C.I.Pigment Red 41、C.I.Pigment Red 17、C.I.Pigment Red 48、C.I.Pigment Red 48:1、C.I.Pigment Red 48:2、C.I.Pigment Red 53:1、C.I.Pigment Red 57:1、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 144、C.I.Pigment Red 146、C.I.Pigment Red 166、C.I.Pigment Red 170、C.I.Pigment Red 176、C.I.Pigment Red 185、C.I.Pigment Red 187、C.I.Pigment Red 208、C.I.Pigment Red 210、C.I.Pigment Red 220、C.I.Pigment Red 221、C.I.Pigment Red 238、C.I.Pigment Red 242、C.I.Pigment Red 245、C.I.Pigment Red 253、C.I.Pigment Red 258、C.I.Pigment Red 266、C.I.Pigment Red 269、C.I.Pigment Violet 13、C.I.Pigment Violet 25、C.I.Pigment Violet 32、C.I.Pigment Violet50、C.I.Pigment Blue 25、C.I.Pigment Blue26、C.I.Pigment Brown 23、C.I.Pigment Brown 25、C.I.Pigment Brown。
【0087】
これらは粗製顔料であっても良く、又、本発明の顔料分散剤の効果を著しく阻害するものでなければ調製された顔料組成物であっても良い。
【0088】
本発明の顔料組成物における顔料とアゾ色素骨格を有するポリエステルとの重量組成比は、100:1乃至100:100の範囲であることが好ましい。更に好ましくは、100:10乃至100:50の範囲である。
【0089】
本発明の顔料組成物は湿式、又は乾式にて製造が可能である。特に、上記式(1)で表されるユニットを有するポリエステルは、非水溶性溶剤と高い親和性を有しているので、湿式による製造が好ましい。具体的には、下記のようにして得られる。分散媒中に顔料分散剤、及び必要に応じて樹脂を溶かし込み、撹拌しながら顔料粉末を除々に加え十分に分散媒になじませる。更にニーダー、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、ディゾルバー、アトライター、サンドミル、ハイスピードミル等の分散機により機械的剪断力を加える事で、顔料を安定に均一な微粒子状に微分散させる。
【0090】
本発明の顔料組成物に使用することができる分散媒としては、上記式(1)のユニットを有するポリエステルの高い顔料分散効果を得るために、非水溶性溶剤を用いることが好ましい。該非水溶性溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類;ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラブロモエタン等の含ハロゲン炭化水素類が挙げられる。
【0091】
顔料組成物に使用する分散媒は重合性単量体であっても良い。具体的には、以下のものが挙げられる。スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸‐n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸‐n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸‐2‐エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸−2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン、ビニルナフタリン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド。
【0092】
本発明の顔料組成物に用いることができる樹脂としては、以下のものが挙げられる。ポリスチレン樹脂、スチレン共重合体、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂。その他、ポリウレタン樹脂やポリペプチド樹脂も挙げられる。また、これらの樹脂を2種以上混合して用いる事ができる。
【0093】
本発明の顔料組成物は、製造時に更に助剤を添加しても良い。助剤としては、表面活性剤、顔料及び非顔料分散剤、充填剤、標準化剤(standardizers)、樹脂、ワックス、消泡剤、静電防止剤、防塵剤、増量剤、濃淡着色剤(shading colorants)、保存剤、乾燥抑制剤、レオロジー制御添加剤、湿潤剤、酸化防止剤、UV吸収剤、光安定化剤、若しくはこれらの組み合わせが挙げられる。また、本発明の顔料分散剤は粗製顔料製造の際に予め添加しておいても良い。
【0094】
本発明の顔料組成物は、非水溶性溶剤と共に、顔料分散体として使用することができる。顔料組成物を非水溶性溶剤に分散させても良いし、顔料組成物の各構成成分を非水溶性溶剤に分散させても良い。具体的には、下記のようにして得ることが好ましい。分散媒中に、必要に応じて顔料分散剤及び樹脂を溶かし込み、撹拌しながら顔料、又は顔料組成物粉末を除々に加え十分に分散媒になじませる。更にボールミル、ペイントシェーカー、ディゾルバー、アトライター、サンドミル、ハイスピードミル等の分散機により機械的剪断力を加える事で、顔料を安定に均一な微粒子状に微分散する事ができる。
【0095】
顔料分散体に使用することができる非水溶性溶剤としては、以下のものが挙げられる。酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類;ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラブロモエタン等の含ハロゲン炭化水素類。
【0096】
顔料分散体に用いる非水溶性溶剤は、重合性単量体であっても良い。具体的には、以下のものが挙げられる。スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸‐n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸‐n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸‐2‐エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸−2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン、ビニルナフタリン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド。
【0097】
顔料分散体に使用し得る樹脂としては顔料組成物の目的用途に応じて決められるものであり、特に限定されない。具体的には、ポリスチレン樹脂、スチレン共重合体、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられる。その他、ポリウレタン樹脂やポリペプチド樹脂が挙げられる。又、これらの樹脂を2種以上混合して用いる事ができる。
【0098】
次に、トナーについて説明する。本発明の顔料組成物は、結着樹脂、着色剤及び離型剤(ワックス成分)を有するトナー粒子を含有するトナーの着色剤として、好適に用いることができる。本発明の顔料組成物を用いる事により、トナー粒子中の顔料の分散性が良好に保たれるため、良好な色調を有するトナーを得ることができる。
【0099】
トナーの結着樹脂としては、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。重合法により直接トナー粒子を得る方法においては、それらを形成するための単量体が用いられる。具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリロニトリル、メタクリル酸アミド等のメタクリレート系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、アクリル酸アミド等のアクリレート系単量体、ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン等のオレフィン系単量体が挙げられる。これらは、単独、又は理論ガラス転移温度(Tg)が、40乃至75℃の範囲を示すように単量体を適宜混合して用いられる[J.Brandrup、E.H.Immergut編、「ポリマーハンドブック」、(米国)、第3版、John Wiley&Sons、1989年、209−277頁を参照]。トナーの結着樹脂は、ポリスチレン等の非極性樹脂にポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂等の極性樹脂を併用して用いる事で、着色剤や荷電制御剤、ワックス等の添加剤のトナー内分布を制御する事ができる。例えば、懸濁重合法等により直接トナー粒子を製造する場合には、分散工程から重合工程に至る重合反応時に該極性樹脂を添加する。該極性樹脂は、トナー粒子となる重合性単量体組成物と水系媒体の極性のバランスに応じて添加する。その結果、該極性樹脂がトナー粒子の表面に薄層を形成するなど、トナー粒子表面から中心に向けその樹脂濃度が連続的に変化するように制御する事ができる。この時、本発明の顔料組成物を含む着色剤や荷電制御剤と相互作用を有するような極性樹脂を用いる事によって、トナー粒子中への上記着色剤の存在状態を望ましい形態にする事が可能である。
【0100】
更に、本発明においては、トナー粒子の機械的強度を高めると共に、トナー粒子を構成するポリマーの分子量を制御するために、結着樹脂の合成時に架橋剤を用いる事もできる。
【0101】
二官能の架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート、及びこれらジアクリレートをジメタクリレートに代えたものが挙げられる。
【0102】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0103】
これらの架橋剤は、トナーの定着性、耐オフセット性の点で、上記単量体100質量部に対して、好ましくは0.05乃至10質量部の範囲、より好ましくは0.1乃至5質量部の範囲で用いる。
【0104】
トナーの着色剤としては、本発明の顔料組成物以外にも、本発明の顔料組成物の分散性を阻害しない限りは、他の着色剤を併用する事できる。
【0105】
併用できる着色剤としては、以下のものが挙げられる。C.I.Pigment Yellow 12、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 14、C.I.Pigment Yellow 15、C.I.Pigment Yellow 17、C.I.Pigment Yellow 62、C.I.Pigment Yellow 83、C.I.Pigment Yellow 94、C.I.Pigment Yellow 95、C.I.Pigment Yellow 97、C.I.Pigment Yellow 109、C.I.Pigment Yellow 110、C.I.Pigment Yellow 111、C.I.Pigment Yellow 120、C.I.Pigment Yellow 127、C.I.Pigment Yellow 129、C.I.Pigment Yellow 147、C.I.Pigment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 154、C.I.Pigment Yellow 168、C.I.Pigment Yellow 174、C.I.Pigment Yellow 176、C.I.Pigment Yellow 181、C.I.Pigment Yellow 191、C.I.Pigment Yellow 194、C.I.Pigment Yellow 213、C.I.Pigment Yellow 214、C.I.バットイエロー1、3、20、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、C.I.Solvent Yellow 9、C.I.Solvent Yellow 17、C.I.Solvent Yellow 24、C.I.Solvent Yellow 31、C.I.Solvent Yellow 35、C.I.Solvent Yellow 58、C.I.Solvent Yellow 93、C.I.Solvent Yellow 100、C.I.Solvent Yellow 102、C.I.Solvent Yellow 103、C.I.Solvent Yellow 105、C.I.Solvent Yellow 112、C.I.Solvent Yellow 162、C.I.Solvent Yellow 163。
【0106】
ワックス成分としては、以下のものが挙げられる。パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス及びその誘導体;モンタンワックス及びその誘導体;フィッシャー・トロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体;カルナバワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス及びそれらの誘導体。誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含まれる。また、高級脂肪族アルコール等のアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物ワックス、動物ワックスが挙げられる。これらは単独、又は2種以上を併用することができる。
【0107】
上記ワックス成分は、結着樹脂100質量部に対する含有量が総量で2.5乃至15.0質量部の範囲である事が好ましく、3.0乃至10.0質量部の範囲である事がより好ましい。
【0108】
トナーには、必要に応じて電荷制御剤を混合して用いる事も可能である。これにより、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
【0109】
電荷制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる電荷制御剤が好ましい。更に、トナー粒子を直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない電荷制御剤が特に好ましい。
【0110】
トナーを負帯電に制御する荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体、サリチル酸誘導体及びその金属錯体、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸や、その金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類、尿素誘導体、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系電荷制御剤。また、トナーを正帯電に制御する荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。ニグロシン及び脂肪酸金属塩等によるニグロシン変性物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等)、高級脂肪酸の金属塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド、ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類、樹脂系帯電制御剤。これらを単独で又は2種類以上組み合わせて用いる事ができる。
【0111】
トナーには、流動化剤として無機微粉体を添加しても良い。無機微粉体としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ又はそれらの複酸化物や、これらを表面処理したものが使用できる。
【0112】
トナーを構成するトナー粒子の製造方法としては、粉砕法、懸濁重合法、懸濁造粒法、乳化重合法が挙げられる。製造時の環境負荷および粒径の制御性の観点から、これらの製造方法のうち、特に懸濁重合法、懸濁造粒法などの、水系媒体中で造粒する製造法が好ましい。
【0113】
懸濁重合法においては、下記のようにしてトナー粒子を製造する。まず、顔料組成物を含む着色剤、重合性単量体、ワックス成分および重合開始剤等を混合して重合性単量体組成物を調製する。次に、該重合性単量体組成物を水系媒体中に分散して重合性単量体組成物の粒子を造粒する。そして、水系媒体中にて重合性単量体組成物の粒子中の重合性単量体を重合させてトナー粒子を得る。
【0114】
重合性単量体組成物は、着色剤を第1の重合性単量体に分散させた分散液を、第2の重合性単量体と混合して調製されたものである事が好ましい。着色剤を第1の重合性単量体により十分に分散させた後で、他のトナー材料と共に第2の重合性単量体と混合する事により、トナー粒子中の顔料の分散状態が良好になる。
【0115】
懸濁重合法に用いられる重合開始剤としては、公知の重合開始剤を挙げる事ができ、アゾ化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、有機金属化合物、光重合開始剤などが挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(イソブチレート)等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ジtert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−へキシルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエートなどの有機過酸化物系重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物系重合開始剤;過酸化水素−第1鉄系、BPO−ジメチルアニリン系、セリウム(IV)塩−アルコール系等のレドックス開始剤。光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ケタール系が挙げられる。重合開始剤は、単独又は2つ以上組み合わせて使用する事ができる。
【0116】
重合開始剤の濃度は、重合性単量体100質量部に対して0.1乃至20質量部の範囲である場合が好ましく、より好ましくは0.1乃至10質量部の範囲である場合である。
【0117】
懸濁重合法で用いられる水系媒体には、分散安定化剤を含有させる事が好ましい。無機系の分散安定化剤としては、以下のものが挙げられる。リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ。有機系の分散安定化剤としては、以下のものが挙げられる。ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン。又、ノニオン性、アニオン性、カチオン性の界面活性剤の利用も可能であり、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムが挙げられる。
【0118】
分散安定化剤のうち、酸に対して可溶性のある難水溶性無機分散安定化剤を用いる事が好ましい。また、難水溶性無機分散安定化剤を用い、水系分散媒体を調製する場合に、これらの分散安定化剤が重合性単量体100質量部に対して0.2乃至2.0質量部の範囲となるような割合で使用する事が該重合性単量体組成物の水系媒体中での液滴安定性の点で好ましい。また、重合性単量体組成物100質量部に対して300乃至3000質量部の範囲の水を用いて水系媒体を調製する事が好ましい。
【0119】
難水溶性無機分散安定化剤が分散された水系媒体を調製する場合には、細かい均一な粒度を有する分散安定化剤粒子を得るために、水中にて高速撹拌下で、難水溶性無機分散安定化剤を生成させて調製する事が好ましい。例えば、リン酸カルシウムを分散安定化剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸カルシウムの微粒子を形成する事で、好ましい分散安定化剤を得る事ができる。
【0120】
トナー粒子を得るための方法として、懸濁造粒法を用いることも好ましい。懸濁造粒法の製造工程では加熱工程を有さないため、低融点ワックスを用いた場合に起こる樹脂とワックス成分の相溶化を抑制し、相溶化に起因するトナーのガラス転移温度の低下を防止する事ができる。また、懸濁造粒法は、結着樹脂となるトナー材料の選択肢が広く、一般的に定着性に有利とされるポリエステル樹脂を主成分にする事が容易である。そのため、懸濁重合法を適用できない樹脂組成のトナーを製造する場合に有利な製造方法である。
【0121】
懸濁造粒法においては、下記のようにしてトナー粒子を製造する。まず、顔料組成物を含む着色剤、結着樹脂、ワックス成分等を、溶剤中で混合して溶剤組成物を調製する。次に、該溶剤組成物を水系媒体中に分散して溶剤組成物の粒子を造粒してトナー粒子懸濁液を得る。そして、得られた懸濁液を加熱、又は減圧によって溶剤を除去する事でトナー粒子を得る。
【0122】
溶剤組成物は、上記着色剤を第1の溶剤に分散させた分散液を、第2の溶剤と混合して調製されたものである事が好ましい。即ち、着色剤を第1の溶剤により十分に分散させた後で、他のトナー材料と共に第2の溶剤と混合する事により、トナー粒子中の顔料の分散状態が良好になる。
【0123】
懸濁造粒法に用いる事ができる溶剤としては、以下のものが挙げられる。トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等の含ハロゲン炭化水素類;メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ベンジルアルコールエチルエーテル、ベンジルアルコールイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類。これらを単独又は2種類以上混合して用いる事ができる。これらのうち、上記トナー粒子懸濁液中の溶剤を容易に除去するため、沸点が低く、且つ上記結着樹脂を十分に溶解できる溶剤を用いる事が好ましい。
【0124】
上記溶剤の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、50乃至5000質量部の範囲である場合が好ましく、120乃至1000質量部の範囲である場合がより好ましい。
【0125】
懸濁造粒法で用いられる水系媒体には、分散安定化剤を含有させる事が好ましい。分散安定化剤としては、懸濁重合法に用いられる分散安定剤と同様のものが用いられる。
【0126】
分散剤の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.01乃至20質量部の範囲である場合が、溶剤組成物の水系媒体中での液滴安定性の点で好ましい。
【0127】
トナーの重量平均粒径(以下、D4と記載する)は3.00乃至15.0μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは4.00乃至12.0μmの範囲である。
【0128】
トナーのD4と個数平均粒径(以下、D1と記載する)の比(以下、D4/D1と記載する)は、1.35以下、好ましく1.30以下が良い。
【0129】
トナーのD4とD1は、トナー粒子の製造方法によってその調整方法は異なる。例えば、懸濁重合法の場合は、水系分散媒体調製時に使用する分散剤濃度や反応撹拌速度、又は反応撹拌時間等をコントロールする事によって調整する事ができる。
【0130】
磁性トナーを得る場合には、トナー粒子に磁性材料を含有させる。磁性材料としては、以下のものが挙げられる。マグネタイト、マグヘマイト、フェライトのような酸化鉄、又は他の金属酸化物を含む酸化鉄、Fe、Co、Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、Vのような金属との合金およびこれらの混合物。
【実施例】
【0131】
実施例、比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例における記載で「部」及び「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0132】
以下に本実施例で用いられる測定方法を示す。
【0133】
(1)分子量測定
本発明に使用するポリエステル、及びアゾ色素骨格ユニットを有するポリエステルの分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、ポリスチレン換算で算出する。SECによる分子量の測定を以下に示す。
【0134】
サンプル濃度が1.0質量%になるようにサンプルを下記溶離液に加え、室温で24時間静置した溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブレンフィルターで濾過したものをサンプル溶液とする。そして、このサンプル溶液について以下の条件で測定を行う。
装置:高速GPC装置(HLC−8220GPC)[東ソー(株)製]
カラム:TSKgel α−Mの2連[東ソー(株)製]
溶離液:DMF(20mM LiBr含有)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40℃
試料注入量:0.10ml
【0135】
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂[東ソー(株)製TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500]により作成した分子量校正曲線を使用する。
【0136】
(2)酸価測定
ポリエステルの酸価は以下の方法により求められる。
【0137】
基本操作はJIS K−0070に基づく。
1)試料0.5乃至2.0gを精秤する。このときの質量をW(g)とする。
2)300mlのビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(4/1)の混合液150mlを加え、試料を溶解させる。
3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用い、電位差滴定測定装置を用いて滴定を行う[例えば、平沼産業(株)製自動滴定測定装置COM−2500などが利用できる]。
4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とする。同時にブランクを測定して、この時のKOHの使用量をB(ml)とする。
5)次式により酸価を計算する。fはKOH溶液のファクターである。
【0138】
【数1】

【0139】
(3)組成分析
実施例におけるポリエステル、及びアゾ色素骨格ユニットを有するポリエステルの構造決定は以下の装置を用いて行った。
1H NMR(日本電子(株)製ECA−400(使用溶剤 重クロロホルム))
【0140】
〔実施例1〕
下記方法で、ポリエステル樹脂を得た。
【0141】
<ポリエステル樹脂の合成例1>
式(3)におけるL1がp−フェニレン基で表される単量体単位と、式(5)で表される単量体単位(但し、R10がエチレン基、x、yはそれぞれ1である)をそれぞれ含む樹脂(A)を下記方法に従って製造した。
【0142】
四口フラスコ中、オキシエチレン化ビスフェノールA31.6g、テレフタル酸14.8g、架橋剤としてグリセリン5.5g、触媒として酸化ジ−n−ブチルスズ0.5mgを、不活性ガスとして窒素ガスを導入しながら200℃で加熱溶融し撹拌した。副生する水の流出が終了した後、約1時間かけて230℃まで昇温し、2時間加熱撹拌し、溶融状態で樹脂を取り出した。常温で冷却し、水洗する事により樹脂(A)を得た。上述した方法により、樹脂(A)の物性を測定した。以下に測定結果を示す。
【0143】
[樹脂(A)の分析結果]
分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=10508、数平均分子量(Mn)=3543
酸価測定の結果:
11.6mgKOH/g
[3]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温)の結果:δ[ppm]=8.06(3.7H、s)、7.15(4H、d)、6.89(4H、d)、5.48−5.32(0.6H、m)、4.72−3.63(2.4H、m)、1,68(6H、s)、1.47(4H、d)、1.42−1.22(4H、m)
<ポリエステル樹脂の合成例2>
12−ヒドロキシステアリン酸から誘導される単量体単位を含む樹脂Bを下記方法に従って製造した。
【0144】
四口フラスコに、12−ヒドロキシステアリン酸200部、ヒドロキシル基末端封止用のステアリン酸8.24部、キシレン56.8部を加え、140℃で加熱溶解した。混合液中に、触媒としてチタンテトライソプロポキシド0.485部を添加し、180℃まで液温を上昇させた。液温を保持し、反応で副生する水を除去しながら、42時間撹拌した。反応終了後、キシレンを留去し、減圧乾燥する事で樹脂(B)を得た。上述した方法により、樹脂(B)の物性を測定した。以下に測定結果を示す。
【0145】
[樹脂(B)の分析結果]
分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=5069、数平均分子量(Mn)=2636
酸価測定の結果:
31.9mgKOH/g
[3]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温)の結果:δ[ppm]=4.99(1H、m)、2,19(2H、t)、2.10(0.5H、t)、1,61−1.42(7H、m)、1.28−1.15(28H、m)、0.88(4H、t)
【0146】
<ポリエステル樹脂の合成例3>
ε−カプロラクトンから誘導される単量体単位を含む樹脂(C)を下記方法に従い製造した。
【0147】
四口フラスコに、ε−カプロラクトン16.4部、ヒドロキシル基末端封止用のα−リノレン酸2.0部を撹拌混合し、液温を140℃に昇温し加熱溶融した。混合液中に、触媒としてチタンテトライソプロポキシド0.04部を添加し、17時間撹拌した。液温を180℃まで昇温し、更に17時間撹拌した。反応終了後、THFで希釈し、メタノールで再沈させ、析出した沈殿を濾別する事で樹脂(C)を得た。上述した方法により、樹脂(C)の物性を測定した。以下に測定結果を示す。
【0148】
[樹脂(C)の分析結果]
分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=12128、数平均分子量(Mn)=2354
酸価測定の結果:
10.3mgKOH/g
[3]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温)の結果:δ[ppm]=5.37−5.29(6H、m)、5.00−4.94(0.2H、m)、4.21(0.8H、t)、4.03(140H、t)、3.84(1H、t)、3.62(0.4H、t)、2.79−2.72(4H、m)、2.43(1H、t)、2.27(140H、t)、2.06(8H、t)、1.62(280H、m)、1.33(210H、m)、1.19(3H、m)
【0149】
上記樹脂(A)乃至(C)に準じた方法で、下記表1に記載する樹脂(D)乃至(H)を得た。結果を以下に示す。
【0150】
【表1】

【0151】
〔実施例2〕
下記の方法で、式(1)又は式(2)で表されるアゾ色素骨格ユニットを有するポリエステルを得た。
【0152】
<アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステルの合成例1>
下記構造で表されるアゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(26)を下記スキームに従い製造した。
【0153】
【化14】

【0154】
クロロホルム30部にp−ニトロアニリン(20)3.11部を加え、10℃以下に氷冷し、ジケテン(21)1.89部を加えた。その後、65℃で2時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出し、濃縮して化合物(22)4.80部を得た(収率96.0%)。
【0155】
2−アミノテレフタル酸ジメチル(23)4.25部に、メタノール40.0部、濃塩酸5.29部を加えて10℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ナトリウム2.10部を水6.00部に溶解させたもの加えて同温度で1時間反応させた。次いでスルファミン酸0.990部を加えて更に20分間撹拌した(ジアゾニウム塩溶液)。メタノール70.0部に、上記化合物(22)4.51部を加えて、10℃以下に氷冷し、上記ジアゾニウム塩溶液を加えた。その後、酢酸ナトリウム5.83部を水7.00部に溶解させたものを加えて、10℃以下で2時間反応させた。反応終了後、水300部を加えて30分間撹拌した後、固体を濾別し、N,N−ジメチルホルムアミドからの再結晶法により精製する事で化合物(24)8.65部を得た(収率96.1%)。
【0156】
N,N−ジメチルホルムアミド150部に上記化合物(24)8.58部およびパラジウム−活性炭素(パラジウム5%)0.4部を加えて、水素ガス雰囲気下(反応圧力0.1乃至0.4MPa)、40℃で3時間撹拌した。反応終了後、溶液を濾別し、濃縮して化合物(25)7.00部を得た(収率87.5%)。
【0157】
脱水テトラヒドロフラン200部に化合物(25)を1.27部加えて、80℃まで加熱し溶解した。溶解後50℃に温度を下げ、脱水テトラヒドロフラン30部に溶解した樹脂(A)18.8部を加え、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩(EDC・HCl)3.0部を加えて50℃で5時間撹拌した。液温を徐々に常温に戻し、一晩撹拌する事により反応を完結させた。反応終了後、溶液を濃縮し、クロロホルムで抽出し有機相を水洗した後、溶液を濃縮し、メタノールでの再沈殿による精製で、アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(26)を得た。得られたものが上記式で表される構造を有する事は、上記した各装置を用い確認した。以下に、分析結果を示す。また、アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(26)の1HNMRスペクトルを図1に示す。
【0158】
[アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(26)の分析結果]
分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=15083、数平均分子量(Mn)=7337
酸価測定の結果:
0.150mgKOH/g
[3]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温)の結果(図1参照):δ[ppm]=15.62(s、1H)、11.42(s、1H)、8.60(s、1H)、8.02(m、166H)、7.13(m、178H)、6.81(m、178H)、5.49−5.29(m、76H)、4.71(m、7H)、4.44(m、24H)、3.91(m、228H)、2.68(s、3H)、1.60−1.22(m、630H)
【0159】
上記分析結果より、樹脂(A)のカルボキシル基へのアゾ色素骨格ユニットの導入率は98.7%であった。
【0160】
<アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステルの合成例2>
アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(26)における樹脂(A)を樹脂(B)に変更する事以外は同様の操作をおこなって、アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(27)を合成した。以下に、分析結果を示す。また、アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(27)の1HNMRスペクトルを図2に示す。
【0161】
[アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(27)の分析結果]
分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=6769、数平均分子量(Mn)=5485
酸価測定の結果:
0.0495mgKOH/g
[3]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温)の結果(図2参照):δ[ppm]=15.60(s、1H)、11.33(s、1H)、8.58(s、1H)、8.13(d、1H)、7.77(d、1H)、7.66(d、2H)、7.53(s、3H)、4.86(t、15H)、4.05(s、3H)、3.97(s、3H)、3.66(s、2H)、2.66(s、3H)、2.34(s、4H)、2.27(t、32H)、1.72(brs、6H)、1.61(m、34H)、1.50(m、61H)、1.25(m、383H)、0.87(t、50H)
【0162】
上記分析結果より、樹脂(B)のカルボキシル基へのアゾ色素骨格ユニットの導入率は99.8%であった。
【0163】
<アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステルの合成例3>
上記アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(26)における樹脂(A)を樹脂(C)に変更する事以外は同様の操作をおこなって、アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(28)を合成した。以下に、分析結果を示す。また、アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(28)の1HNMRスペクトルを図3に示す。
【0164】
[アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(28)の分析結果]
分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=14846、数平均分子量(Mn)=7117
[2]酸価測定の結果:
1.26mgKOH/g
[3]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温)の結果(図3参照):δ[ppm]=15.58(s、1H)、11.32(s、1H)、8.57(s、1H)、8.11(d、1H)、7.75(d、1H)、7.64(d、2H)、7.49(d、3H)、5.36−5.29(m、7H)、4.20(s、1H)、3.99(t、141H)、2.75(t、5H)、2.64(s、4H)、2.43(s、2H)、2.27(t、141H)、2.06(m、8H)、1.74(s、2H)、1.61(m、275H)、1.35(m、156H)、0.94(t、3H)
【0165】
上記分析結果より、樹脂(C)のカルボキシル基へのアゾ色素骨格ユニットの導入率は87.8%であった。
【0166】
アゾ色素骨格ユニットの構造やポリエステル樹脂を変更し、その他はアゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(26)の製造例と同様の操作を行い、表2に示すような構造を有するポリエステル(29)乃至(48)を製造した。
【0167】
【表2】

[表2において、アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(26)乃至(37)、(39)乃至(48)のR1乃至R6は、式(1)におけるR1乃至R6に対応する。アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(38)のR1乃至R6は、式(2)におけるR1乃至R6に対応する。また、1乃至6位は、式(1)又は式(2)中のアシルアセトアミド基が置換しているアリール基におけるアシルアセトアミド基に対する置換位置を表す。Phは無置換のフェニル基を表し、(n)、(i)はそれぞれのアルキル基が直鎖状、分岐状である事を表す。]
【0168】
〔比較例1〕
下記式(49)及び(50)で表される比較アゾ色素骨格ユニットを上記合成方法に従い合成した後、樹脂(A)のカルボキシル基と反応させることで比較用ポリエステル(51)、(52)を得た。ポリエステル(51)、(52)のアゾ色素骨格ユニットの導入率はそれぞれ85.6%、90.2%であった。
【0169】
【化15】

【0170】
〔実施例3〕
本発明の顔料分散体を下記の方法で調製した。
【0171】
<顔料分散体の調製例1>
アゾ顔料として前記式(8)で表される顔料18.0部、顔料分散剤としてアゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(26)3.6部、非水溶性溶剤としてスチレン180部、ガラスビーズ(φ1mm)130部を混合し、アトライター[日本コークス工業(株)製]で3時間分散させ、メッシュで濾過して顔料分散体(a)を得た。
【0172】
<顔料分散体の調製例2乃至22>
顔料分散体の調製例1において、アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(26)を、アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(27)乃至(48)に変更した。それ以外は顔料分散体の調製例1と同様の操作をおこなって、顔料分散体(b)〜(w)を得た。
【0173】
<顔料分散体の調製例23、24>
顔料分散体の調製例1において、スチレンをトルエン又はアクリル酸ブチルに変更した以外は、顔料分散体の調製例1と同様の操作をおこなって、顔料分散体(x)及び(y)を得た。
【0174】
<顔料分散体の調製例25、26>
顔料分散体の調製例1において、式(8)で表される顔料を下記式(53)および(54)で表される顔料に変更した。それ以外は顔料分散体の調製例1と同様の操作をおこなって、顔料分散体(z)及び(aa)を得た。
【0175】
【化16】

【0176】
〔比較例2〕
基準用及び比較用の顔料分散体を下記方法により調製した。
【0177】
<基準用の顔料分散体の調製例1>
顔料分散体の調製例1において、アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(26)を加えない事以外は、顔料分散体の調製例1と同様の操作をおこなって、基準用の顔料分散体(ab)を得た。
【0178】
<基準用の顔料分散体の調製例2、3>
顔料分散体の調製例23、24において、アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(26)を加えない事以外はそれぞれ同様の操作をおこなって、基準用の顔料分散体(ac)及び(ad)を得た。
【0179】
<基準用の顔料分散体の調製例4、5>
顔料分散体の調製例25、26において、アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(26)を加えない事以外はそれぞれ同様の操作をおこなって、基準用の顔料分散体(ae)及び(af)を得た。
【0180】
<比較用の顔料分散体の調製例1乃至3>
顔料分散体の調製例1において、アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(26)を、ポリマー分散剤 Solsperse 24000SC(登録商標)(Lubrizol社製)、比較用ポリエステル(51)、(52)にそれぞれ変更した。それ以外は顔料分散体の調製例1と同様の操作をおこなって、比較用顔料分散体(ag)乃至(ai)を得た。
【0181】
〔実施例4〕
顔料分散体(a)乃至(aa)を下記の方法で評価した。
【0182】
<顔料分散性評価>
顔料分散体の塗工膜の光沢試験を行うことで、顔料分散体の顔料分散性を評価した。顔料分散体をスポイトですくい取り、スーパーアート紙[SA金藤 180kg 80×160、王子製紙(株)製]上部に直線上に載せ、ワイヤーバー(#10)を用いて均一にアート紙上に塗工し、乾燥後の光沢(反射角:60°)を光沢計 Gloss Meter VG2000[日本電色工業(株)製]により測定した。顔料がより微細に分散するほど塗工膜の平滑性が向上し光沢が向上する事から、顔料分散剤を加えていない顔料分散体(ab)乃至(af)の塗工膜の光沢を基準値として、顔料分散体の塗工膜の光沢向上率を求めた。なお、顔料分散体(a)乃至(w)については顔料分散体(ab)の塗工膜の光沢を基準値とし、顔料分散体(x)、(y)については顔料分散体(ac)、(ad)の塗工膜の光沢を基準値とし、顔料分散体(z)、(aa)については顔料分散体(ae)、(af)の塗工膜の光沢を基準値とした。そして、顔料分散体の顔料分散性を下記の基準で評価した。
A:光沢向上率が20%以上である。
B:光沢向上率が10%以上20%未満である。
C:光沢向上率が1%以上10%未満である。
D:光沢向上率が1%未満(光沢が低下した場合も含む)である。
【0183】
光沢向上率が10%以上であれば良好な顔料分散性であると判断した。
【0184】
本発明の顔料分散体の評価結果を表3に示す。
【0185】
〔比較例3〕
比較用の顔料分散体(ag)乃至(ai)を実施例4と同様に評価した。評価結果を表3に示す。
【0186】
【表3】

【0187】
表3より、式(1)又は式(2)で表される構造を有するユニットを有するポリエステルを含有する顔料分散体は、アゾ顔料の良好な分散性が得られていることから、本発明のアゾ色素骨格ユニットを有するポリエステルがアゾ顔料分散剤として有用である事が確認された。
【0188】
比較用顔料分散体(ah)、(ai)と本発明の顔料分散体との比較から、ポリエステル残基の結合位置が顔料分散性に影響する事がわかった。
【0189】
<顔料分散体の調製例27>
アゾ顔料として前記式(8)で表される顔料42.0部、顔料分散剤としてアゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(26)8.4部をハイブリダイゼーションシステム NHS−0[(株)奈良機械製作所製]によって、乾式混合し、顔料組成物を調製した。得られた顔料組成物の18.0部を、スチレン180部と混合し、ペイントシェーカー[(株)東洋精機製作所製]で1時間分散させ、メッシュで濾過して顔料分散体を得た。得られた顔料分散体に対して、上記の顔料分散性の評価を行ったところ、良好な顔料分散性が得られることが確認された。
【0190】
〔実施例5〕
下記方法で懸濁重合法によってイエロートナーを製造した。
【0191】
<イエロートナーの製造例1>
高速撹拌装置T.K.ホモミクサー[プライミクス(株)製]を備えた2リットル用4つ口フラスコ中にイオン交換水710部と0.1mol/l−Na3PO4水溶液450部を添加し、回転数を12000rpmに調整し、60℃に加温した。ここに1.0mol/l−CaCl2水溶液68部を徐々に添加し、微小な難水溶性分散安定剤Ca3(PO42を含む水系媒体を調製した。次に下記組成物を60℃に加温し、高速撹拌装置T.K.ホモミクサー[プライミクス(株)製]を用いて5000rpmにて均一に溶解・分散した。
・顔料分散体(a) 132.0部
・スチレン単量体 46.0部
・n−ブチルアクリレート単量体 34.0部
・極性樹脂[飽和ポリエステル樹脂(テレフタル酸−プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA、酸価15、ピーク分子量6000)] 10.0部
・エステルワックス(DSC測定における最大吸熱ピークのピーク温度:70℃、Mn:704)
25.0部
・サリチル酸アルミニウム化合物[オリエント化学工業(株)製、商品名:ボントロンE−88]
2.0部
・ジビニルベンゼン単量体 0.1部
上記材料に重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10部を加え、上記水系媒体中に投入し、回転数12000rpmを維持しつつ15分間造粒した。その後、高速撹拌器からプロペラ撹拌羽根に撹拌器を変え、液温を60℃で重合を5時間継続させた後、液温を80℃に昇温させ8時間重合を継続させた。重合反応終了後、80℃、減圧下で残存単量体を留去した後、30℃まで冷却し、重合体微粒子分散液を得た。
【0192】
得られた上記重合体微粒子分散液を洗浄容器に移し、撹拌しながら、希塩酸を添加し、pH1.5で2時間撹拌し、Ca3(PO42を含むリン酸とカルシウムの化合物を溶解させた後に、濾過器で固液分離し、重合体微粒子を得た。これを水中に投入して撹拌し、再び分散液とした後に、濾過器で固液分離した。重合体微粒子の水への再分散と固液分離とをCa3(PO42を含むリン酸とカルシウムの化合物が十分に除去されるまで繰り返しおこなった。その後、最終的に固液分離した重合体微粒子を、乾燥機で十分に乾燥してイエロートナー粒子を得た。
【0193】
得られたイエロートナー粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカ微粉体1.0部(数平均一次粒子径7nm)、ルチル型酸化チタン微粉体0.15部(数平均一次粒子径45nm)、ルチル型酸化チタン微粉体0.5部(数平均一次粒子径200nm)をヘンシェルミキサー[日本コークス工業(株)製]で5分間乾式混合して、イエロートナー(1)を得た。
【0194】
<イエロートナーの製造例2乃至23>
上記イエロートナーの製造例1における顔料分散体(a)を顔料分散体(b)乃至(w)にそれぞれ変更する事以外は、イエロートナーの製造例1と同様にして、イエロートナー(2)乃至(23)を得た。
【0195】
<イエロートナーの製造例24、25>
上記イエロートナーの製造例1における顔料分散体(a)を顔料分散体(z)、(aa)にそれぞれ変更する事以外は、イエロートナーの製造例1と同様にして、イエロートナー(24)、(25)を得た。
【0196】
〔実施例6〕
下記方法で懸濁造粒法による本発明のイエロートナーを製造した。
【0197】
<イエロートナーの製造例26>
酢酸エチル180部、上記式(8)の顔料12部、本発明のアゾ化合物(26)2.4部、ガラスビーズ(φ1mm)130部を混合し、アトライター[日本コークス工業(株)製]により3時間分散させ、メッシュで濾過する事で顔料分散体(aj)を調製した。 上記組成をボールミルで24時間分散する事により、トナー組成物混合液200部を得た。
・上記顔料分散液(aj) 96.0部
・極性樹脂[飽和ポリエステル樹脂(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとフタル酸の重縮合物、Tg:75.9℃、Mw:11000、Mn:4200、酸価:11mgKOH/g)]
85.0部
・炭化水素ワックス(フィッシャー・トロプシュワックス、DSC測定における最大吸熱ピークのピーク温度:80℃、Mw:750) 9.0部
・サリチル酸アルミニウム化合物[オリエント化学工業(株)製、商品名:ボントロンE−88]
2.0部
・酢酸エチル(溶剤) 10.0部
下記組成をボールミルで24時間分散する事により、カルボキシメチルセルロースを溶解し、水系媒体を得た。
・炭酸カルシウム(アクリル酸系共重合体で被覆) 20.0部
・カルボキシメチルセルロース[セロゲンBS−H、第一工業製薬(株)製]0.5部
・イオン交換水 99.5部
該水系媒体1200部を、高速撹拌装置T.K.ホモミクサー[プライミクス(株)製]に入れ、回転羽根を周速度20m/secで撹拌しながら、上記トナー組成物混合液1000部を投入し、25℃一定に維持しながら1分間撹拌して懸濁液を得た。
【0198】
上記懸濁液2200部をフルゾーン翼[(株)神鋼環境ソリューション製]により周速度45m/minで撹拌しながら、液温を40℃一定に保ち、ブロワーを用いて上記懸濁液面上の気相を強制吸気し、溶剤除去を開始した。その際、溶剤除去開始から15分後に、イオン性物質として1%に希釈したアンモニア水75部を添加し、続いて溶剤除去開始から1時間後に上記アンモニア水25部を添加し、続いて溶剤除去開始から2時間後に上記アンモニア水25部を添加し、最後に溶剤除去開始から3時間後に上記アンモニア水25部を添加し、アンモニア水の総添加量を150部とした。更に液温を40℃に保ったまま、溶剤除去開始から17時間保持し、懸濁粒子から溶剤(酢酸エチル)を除去したトナー分散液を得た。
【0199】
溶剤除去工程で得られたトナー分散液300部に、10mol/l塩酸80部を加え、更に0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液により中和処理後、吸引濾過によるイオン交換水洗浄を4回繰り返して、トナーケーキを得た。得られたトナーケーキを真空乾燥機で乾燥し、目開き45μmの篩で篩分しイエロートナー粒子を得た。これ以降の操作は上記イエロートナーの製造例1と同様にしてイエロートナー(26)を得た。
【0200】
<イエロートナーの製造例27乃至48>
イエロートナーの製造例4において、アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(26)を(27)乃至(48)にそれぞれ変更する事以外は、同様の操作で、イエロートナー(27)〜(48)を得た。
【0201】
<イエロートナーの製造例49、50>
式(8)の顔料を上記式(53)乃至(54)にそれぞれ変更する事以外は、上記イエロートナーの製造例4と同様にして、イエロートナー(49)及び(50)を得た。
【0202】
〔比較例4〕
基準用及び比較用のイエロートナーを下記方法により製造した。
【0203】
<基準用イエロートナーの製造例1>
アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(26)を加えない事以外は、イエロートナーの製造例1と同様にして、基準用イエロートナー(51)を得た。
【0204】
<基準用イエロートナーの製造例2、3>
アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(26)を加えない事以外は、イエロートナーの製造例24、25と同様にして、基準用イエロートナー(52)及び(53)を得た。
【0205】
<比較用イエロートナーの製造例1乃至3>
アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(26)を、「Solsperse 24000SC(登録商標)(Lubrizol社製)」、(51)、(52)にそれぞれ変更する事以外は、イエロートナーの製造例1と同様にして、比較用イエロートナー(54)乃至(56)を得た。
【0206】
〔比較例5〕
実施例6で製造したイエロートナーに対して、評価の基準値となる基準用のイエロートナー及び比較用のイエロートナーを下記方法により製造した。
【0207】
<基準用イエロートナーの製造例4>
アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(26)を加えない事以外は、イエロートナーの製造例26と同様にして、基準用イエロートナー(57)を得た。
【0208】
<基準用イエロートナーの製造例5、6>
アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(26)を加えない事以外は、イエロートナーの製造例49、50と同様にして、基準用イエロートナー(58)及び(59)を得た。
【0209】
<比較用イエロートナーの製造例4乃至6>
イエロートナーの製造例26において、アゾ色素骨格ユニットを有するポリエステル(26)を、「Solsperse 24000SC(登録商標)(Lubrizol社製)」、比較用ポリエステル(51)、(52)にそれぞれ変更した。それ以外は、イエロートナーの製造例26と同様にして、比較用イエロートナー(60)乃至(62)を得た。
【0210】
〔実施例7〕
<イエロートナーの色調評価>
イエロートナー(1)乃至(50)について、それぞれイエロートナー5部に対し、アクリル樹脂で被覆されたフェライトキャリア95部を混合し、現像剤とした。カラー複写機CLC−1100改造機[キヤノン(株)製、定着オイル塗布機構を除いた]を用いて、温度25℃/湿度60%RHの環境下において画像出しをおこなった。そしてその画像をCIE(国際照明委員会)により規定されたL***表色系におけるL*、C*を反射濃度計Spectrolino(GretagMacbeth製)にて、光源:D50、視野:2°の条件で測定した。トナーの色調はL*=95.5におけるC*の向上率で評価した。
【0211】
イエロートナー(1)乃至(23)の画像のC*の向上率は、基準用イエロートナー(51)の画像のC*を基準値とした。イエロートナー(24)の画像のC*の向上率は、基準用イエロートナー(52)の画像のC*を基準値とした。イエロートナー(25)の画像のC*の向上率は、基準用イエロートナー(53)の画像のC*を基準値とした。
【0212】
イエロートナー(26)乃至(48)の画像のC*の向上率は、基準用イエロートナー(57)の画像のC*を基準値とした。イエロートナー(49)の画像のC*の向上率は、基準用イエロートナー(58)の画像のC*を基準値とした。イエロートナー(50)の画像のC*の向上率は、基準用イエロートナー(59)の画像のC*を基準値とした。
【0213】
以下に、イエロートナーの色調の評価基準を示す。
A:C*の向上率が5%以上である。
B:C*の向上率が1%以上5%未満である。
C:C*の向上率が1%未満である。
D:C*が低下する。
【0214】
*の向上率が1%以上であれば良好な色調であると判断した。
【0215】
懸濁重合法によって製造されたイエロートナーの評価結果を表4に、懸濁造粒法によって製造されたイエロートナーの評価結果を表5に示す。
【0216】
〔比較例6〕
<比較用イエロートナーの色調評価>
比較用イエロートナー(54)乃至(56)、(60)乃至(62)を実施例7と同様の方法で評価した。
【0217】
比較用イエロートナー(54)乃至(56)の画像のC*の向上率は、基準用イエロートナー(51)の画像のC*を基準値とした。
【0218】
比較用イエロートナー(60)乃至(62)の画像のC*の向上率は、基準用イエロートナー(57)の画像のC*を基準値とした。
【0219】
【表4】

【0220】
【表5】

【0221】
表4及び表5より、本発明のアゾ色素骨格ユニットを有するポリエステルを顔料分散剤として使用したトナーは彩度が高く、良好な色調である事がわかった。この事から、本発明のアゾ色素骨格ユニットを有するポリエステルがトナー用のアゾ顔料分散剤として有用である事が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0222】
本発明のアゾ色素骨格ユニットを有するポリエステルは、アゾ顔料を非水溶性溶剤に分散させるための分散剤としてとりわけ好適に用いられる。また、該ポリエステルは、顔料分散剤として使用されるだけでなく、電子写真トナー、インクジェットインク、感熱転写記録シート、カラーフィルター用の着色剤、光記録媒体用の色素としても使用する事ができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)又は式(2)で表されるユニットを1ユニット以上有するポリエステル。
【化1】

【化2】

[式(1)又は式(2)において、R1は炭素原子数が1乃至6のアルキル基、又はフェニル基を表す。R2乃至R6は水素原子、COOR7基、又はCONR89基を表す。但し、R2乃至R6の少なくとも1つはCOOR7基、又はCONR89基である。R7乃至R9は水素原子、又は炭素原子数が1乃至3のアルキル基を表す。]
【請求項2】
前記式(1)又は式(2)において、R2がCOOH基、又はCOOCH3基である請求項1に記載のポリエステル。
【請求項3】
前記式(1)又は式(2)において、R1がメチル基である請求項1又は2に記載のポリエステル。
【請求項4】
前記ポリエステルが、下記式(3)と下記式(4)で示されるユニットを有する重合体である請求項1乃至3の何れか1項に記載のポリエステル。
【化3】

[式(3)において、L1は二価の連結基を表す。]
【化4】

[式(4)において、L2は二価の連結基を表す。]
【請求項5】
前記式(3)におけるL1がアルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基であり、
前記式(4)におけるL2がアルキレン基又はフェニレン基であるか、もしくは前記式(4)が下記式(5)で示されるユニットである請求項4に記載のポリエステル。
【化5】

[式(5)において、R10はエチレン基又はプロピレン基を表す。x、yはそれぞれ0以上の整数値であり、且つx+yの平均値は2乃至10である。]
【請求項6】
前記ポリエステルが、下記式(6)で示されるユニットを有する重合体である請求項1乃至3の何れか1項に記載のポリエステル。
【化6】

[式(6)において、L3は二価の連結基を表す。]
【請求項7】
前記式(6)におけるL3が、アルキレン基又はアルケニレン基である請求項6に記載のポリエステル。
【請求項8】
前記ポリエステルが、前記式(1)で表されるユニットとして、下記式(7)で表わされるユニットを有する請求項1、4乃至7の何れか1項に記載のポリエステル。
【化7】

【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載のポリエステルとアゾ顔料とを含有する顔料組成物。
【請求項10】
上記アゾ顔料が下記式(8)で表されるアゾ顔料であることを特徴とする請求項9に記載の顔料組成物。
【化8】

【請求項11】
結着樹脂、着色剤及び離型剤を有するトナー粒子であって、該着色剤が請求項9又は10に記載の顔料組成物を含有するトナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−67284(P2012−67284A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180072(P2011−180072)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】