説明

ポリエステル極細繊維

【課題】本発明の目的は、高強度で寸法安定性に優れたポリエステル極細繊維を提供することにある。
【解決手段】単糸繊維径が10〜1000nmで、単糸繊維径のばらつき(CV%)が0〜25%、極細繊維束として引張強度が4.0cN/dtex以上、破断伸度が10〜80%、150℃での乾熱収縮率が5%以下であるポリエステル極細繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度で、寸法安定性に優れたポリエステル極細繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衣料用布帛や人工皮革、フィルターなどの産業用資材には柔軟性や審美性、緻密性を発現させる為に極細繊維が用いられてきた。極細繊維の素材としては、汎用的にはナ
イロン6やナイロン66などのポリアミドや、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエ
ステルが用いられている。しかし、ポリアミドからなる極細繊維は、この素材固有の特性
から黄変などの耐候性が悪く用途が限定されるという問題があった。他方ポリエステルからなる極細繊維は、優れた耐候性を有するものの柔軟性やしなやかさに欠けるという問題があった。
【0003】
そこで、柔軟性をますためには繊度をさらに細くする必要があるが、ポリエステル極細繊維の製造方法として、特許文献1(W02005/095686号公報)では、1フィラメント当たり100島以上の島数を有する海島複合繊維から、海成分を除去することで、柔軟でしなやかな超極細ポリエステル繊維とすることが提案されている。確かに本方法により、実用強度があり、柔軟性を有するポリエステル極細繊維を得ることができるが、産業資材用途に用いるには強度、熱寸法安定性共にいまだ満足できるものではなく、更なる向上が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】W02005/095686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、産業資材用途に適する柔軟で高強度、熱寸法安定性に優れたポリエステル極細繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するため検討した結果本発明に到達した。
すなわち本発明は、単糸繊維径が10〜1000nmで、単糸繊維径のばらつき(CV%)が0〜25%、極細繊維束として引張強度が4.0cN/dtex以上、破断伸度が10〜80%、150℃での乾熱収縮率が5%以下であることを特徴とするポリエステル極細繊維であり、好ましくはポリエステルがポリエチレンナフタレートであり、また別の発明の形態として、上記ポリエステル極細繊維を含む繊維製品、が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリエステル極細繊維は、単糸径が10〜1000nmであることにより、肌触りや柔らかさなどの風合い、および摩擦性、吸着性、吸水性、防透性、防風性などの機能性に優れた極細繊維構造体となる。また、引張強度が4.0cN/dtex以上であることにより、特に産業用途など機械的強度が必要とされる分野で使用可能である。さらに、150℃での乾熱収縮率が5%以下であることにより、寸法安定性が向上する。また、極細繊維の主成分がポリエチレンナフタレートである極細繊維とすることで、高モジュラス、高強度となり、耐熱性、耐薬品性、耐振性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のポリエステル極細繊維について詳述する。
本発明のポリエステル極細繊維は海島型複合繊維の海成分を溶解除去して得られる島成分ポリエステルからなる極細繊維(束)である。
【0009】
本発明のポリエステル極細繊維の単糸繊維径は10〜1000nmである。単糸繊維径が10nm未満の場合には、繊維構造自身が不安定で、物性及び繊維形態が不安定になるので好ましくなく、一方1000nmを越える場合には超極細繊維特有の柔らかさや風合いが得られず、好ましくない。海島型複合繊維断面内の各島成分径により単糸繊維径は決まるが、その径が均一であるほどポリエステル極細繊維からなるハイマルチフィラメント糸の品位及び耐久性が向上する。
【0010】
また、本発明のポリエステル極細繊維束を構成する単糸繊維繊度のばらつきを表すCV%値は、0〜25%であることが必要である。より好ましくは0〜20%、さらに好ましくは0〜15%である。このCV値が低いことは、繊度のばらつきが少ないことを意味する。ここで海島成分の溶融粘度比を0.8〜2.5とすることによりCV%を上記の範囲とすることが可能となったものである。
【0011】
本発明のポリエステル極細繊維は、ナノレベルの繊維径でばらつきも少なく、用途に合わせた商品設計が可能となる。例えば、フィルター用途では、単糸繊維径において吸着できる物質を選択しておけば、用途に合わせて繊維径の設計をすることが可能になり、非常に効率的に商品設計を行うことが可能になる。
【0012】
本発明のポリエステル極細繊維の繊維束としての引張り強度は4.0cN/dtex以上であり、その切断伸度が10〜80%であることが必要である。前記極細繊維の物性、特に引張り強度が4.0cN/dtex以上であることが重要である。引張り強さが4.0cN/dtex未満の場合、用途が限定されてしまう。超極細で柔軟性がある上に高強度であることにより様々な用途に応用展開可能となる。
【0013】
本発明のポリエステル極細繊維の150℃での乾熱収縮率が5%以下であることが必要である。ポリエステル極細繊維の150℃での乾熱収縮率が5%を超える場合熱寸法安定性が悪く用途が限定されてしまう。
【0014】
本発明のポリエステル極細繊維の製造方法について詳述する。
海島型複合繊維の海成分ポリマーとしては島成分ポリマーよりも溶解性が高い組合せである限り、適宜選定できるが、特に溶解速度比(海/島)が200以上であることが好ましい。この溶解速度比が200未満の場合には、繊維断面中央部の海成分を溶解させている間に繊維断面表層部の島成分の一部も溶解されるため、海成分を完全に溶解除去するためには、島成分の何割かも減量されてしまうことになり、島成分の太さ斑や溶剤浸食による強度劣化が発生して、毛羽及びピリングなどを生じ、製品の品位を低下させることがある。
【0015】
次に島成分数は、多いほど海成分を溶解除去して極細繊維を製造する場合の生産性が高
くなり、しかも得られる極細繊維も顕著に細くなって、超微細繊維特有の柔らかさ、滑ら
かさ、光沢感などを発現することができるので、島成分数は100以上であることが重要
であり好ましくは500以上である。ここで島成分数が100未満の場合には、海成分を
溶解除去しても極細単繊維からなるハイマルチフィラメント糸を得ることができず、本発
明の目的を達成することができない。なお、島成分数があまりに多くなりすぎると、紡糸
口金の製造コストが高くなるだけでなく、紡糸口金の加工精度自体も低下しやすくなるの
で、島成分数を1000以下とすることが好ましい。
【0016】
その際の海成分用易溶解性ポリマーとしては、ポリ乳酸、超高分子量ポリアルキレンオ
キサイド縮合系ポリマー、ポリエチレングリコール系化合物共重合ポリエステル、及び、
ポリエチレングリコール系化合物と5一ナトリウムスルホイソフタル酸との共重合ポリエ
ステルから選択される少なくとも1種のアルカリ水溶液易溶解性ポリマーを含むことが好
ましい。
【0017】
本発明の海島型複合繊維において、前記ポリエチレングリコール系化合物と、5−ナト
リウムスルホイソフタル酸との共重合ポリエステルが、6〜12モル%の5一ナトリウム
スルホン酸および3〜10重量%の分子量4000〜12000のポリエチレングリコー
ルが共重合されているポリエチレンテレフタレート共重合体から選ばれることが好ましい。
【0018】
一方、島成分ポリマーは上述の通りポリエステルであるが、ポリエステルとして全芳香族ポリエステル、ポリエチレンナフタレート等が好ましい。ポリエチレンナフタレートとしては、例えばナフタレン−2,6−ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を触媒の存在下適当な反応条件のもとにエチレングリコールと重縮合させることによって合成されるポリエチレン−2,6−ナフタレートが挙げられる。さらには、全繰り返し単位中の少なくとも90モル%がエチレン−2,6−ナフタレート単位であるポリエチレンナフタレート(以下PENという)から形成されることが好ましく、少なくとも95モル%がエチレン−2,6−ナフタレート単位であることが最も好ましい。また、本発明の目的を阻害しない範囲内、例えば全酸成分を基準として10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下の範囲内で第三成分が共重合されたものであってもよい。好ましく用いられる共重合成分としては、例えば、酸成分としてイソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p一オキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を挙げることができ、また、ジオール成分としてエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等を挙げることができる。さらに、上記ポリエチレンナフタレート中には少量の他の重合体や酸化防止剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤その他の添加剤が含有されていてもよい。
【0019】
また前記ポリエチレンナフタレートは、極限粘度[η]が0.45〜1.0のものを使用することが好ましい。ここで極限粘度[η]は、ポリマーをフェノールとオルトジクロロベンゼンとの混合溶媒(混合比6:4)に溶解し、35℃で測定した粘度から求めた値である。極限粘度[η]が1.0を超えると溶融粘度が異常に高くなって溶融紡糸が困難となり、[η]が0.45未満では目的とする高融点を有し、物性も良好な繊維が得られないので好ましくない。
【0020】
上記の海成分ポリマーと島成分ポリマーからなる海島型複合繊維は、ポリマーの溶融粘度比(海/島)は、0.8〜2.0範囲内にあることが好ましい。0.8倍未満の場合には、海成分の複合質量比率が50%未満のように低くなると、溶融紡糸時に島成分が互いに接合しやすくなり、一方それが2.0倍を越える場合には、粘度差が大きすぎるために紡糸工程の安定性が低下しやすい。
【0021】
さらに、海島型複合繊維は、海成分の複合質量比率が50%未満であることが好ましい。その海島複合質量比率(海:島)は、30:70〜5:95の範囲内にあることが好ましい。上記範囲内にあれば、島成分間の海成分の厚さを薄くすることができ、海成分の溶解除去が容易となり、島成分の極細繊維への転換が容易になる。ここで海成分の割合が50%を越える場合には、海成分の厚さが厚くなりすぎ、一方5%未満の場合には海成分の量が少なくなりすぎて、島間に相互接合が発生しやすくなる。
【0022】
海成分、島成分は別々に溶融し、口金内で海島型に複合し、吐出される。その後、冷却
風などによって固化させた後、好ましくは400〜6000m/分の速度、より好ましく
は1000〜3000m/分で未延伸糸として引き取る。紡糸速度は低い方が得られる繊維強度が高くなり好ましいが、400m/分以下では生産性が不十分であり、また、6000m/分以上では紡糸安定性が不良になる。
【0023】
得られた未延伸糸は、一旦巻き取った後、あるいは、巻き取ることなく引き続いて延
伸工程を通した後に巻き取る方法のいずれかの方法で延伸される。延伸温度は100〜150℃、好ましくは110℃〜130℃の予熱ローラー上で予熱し、延伸倍率1.1〜6.0倍、好ましくは1.2〜5.0倍で延伸し、糸温度として120〜250℃、好ましくは180〜220℃で熱セットを実施することが好ましい。スリット型ヒーターであれば200〜250℃が好ましく用いられる。予熱温度不足の場合には、目的とする高倍率延伸を達成することができなくなり、セット温度が低すぎると、得られる延伸糸の収縮率が高すぎるため好ましくない。また、セット温度が高すぎると、得られる延伸糸の物性が著しく低下するため好ましくない。
【0024】
海成分を除去するには、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カ
リウムのようなアルカリ金属化合物水溶液で処理することが好ましく、なかでも水酸化ナ
トリウムおよび水酸化カリウムが特に好ましく用いられる。アルカリ水溶液の濃度、処理
温度、処理時間は、使用するアルカリ化合物の種類により異なるが、濃度は10〜300
g/L、温度は40℃〜180℃、処理時間は2分〜20時間の範囲で行うのが好ましい。
【0025】
一般的には海島型複合繊維を含む製編織物または短繊維として紡績糸や不織布として布帛などの繊維構造体とした後アルカリ金属化合物水溶液処理することが好ましい。公知のアルカリ減量装置を用いて処理することができる。
【0026】
上記の海成分を除去後の島成分からなる繊維構造体は超極細ポリエステル繊維構造体であり、フィルター、有害物質除去製品、電池用セパレーターなどの環境・産業資材用途や、カーシートなどの車輌内装品、カーペット、ソファー、カーテンなどのインテリア製品、化粧品、化粧品マスク、ワイピングクロス、健康用品などの生活用途や研磨布、縫合糸、スキャフォールド、人工血管、血液フィルターなどの医療用途、およびジャケット、スカート、パンツ、下着などの衣料、スポーツ衣料、衣料資材などに用いられる。
【実施例】
【0027】
本発明を下記実施例によりさらに詳細に説明する。
下記実施例及び比較例において、下記の測定及び評価を行った。
【0028】
(1)平均単糸繊維径
海成分溶解除去後の微細繊維の30000倍のTEM観察により、繊維径を求めた。ここで繊維径は膠着していない単糸の繊維径を測定した。ランダムに選択した100本の微細繊維の繊維径データにおいて、平均単糸繊維径rを算出した。
【0029】
(2)平均単糸繊維径のばらつきCV%
平均単糸繊維径を求めるに際し、その標準偏差σを算出し、以下で定義する繊維径変動係数CV%を算出した。
CV%=標準偏差σ/平均単糸繊維径r×100(%)
【0030】
(3)極細繊維の繊度
海島型複合繊維の繊度D(前記(1)断面観察に記載の方法により測定)及び、海ポリマーを溶解させた際の減量率Raから、得られた極細繊維の繊度を下記式により算出した。
極細繊維の繊度=D×(1−Ra)
【0031】
(4)極細繊維の引張強度および破断伸度
海島型複合繊維から、質量1g以上の筒編みを作成し、この編物を溶剤処理し、海成分を除去した。得られた極細繊維からなる編物をほどき、得られた極細繊維の荷重−伸度曲線チャートを、室温、初期試料長=200mm、引張速度=200mm/分の条件下で作成した。上記チャートから、極細繊維の引張強度(cN/dtex)及び破断伸度(%)を求めた。
【0032】
(5)乾熱収縮率
極細繊維を、試料を枠周1.125mmの検尺機を用いて、10回捲きつけて、かせを作成し、荷重1/30cN/dtex下における、長さL0を測定した。かせから前記荷重を除き、フリー状態で恒温乾燥機中に入れ、150℃で30分間の加熱処理を施した。この乾燥されたかせに1/30cN/dtexの荷重をかけて、乾熱処理後のかせの長さL1を測定した。この極細繊維の乾熱収縮率HDSを下記式から算出した。
HDS(%)=[(L0−L1)/L0]×100
【0033】
(6)溶融粘度
ポリマーを乾燥し、溶融紡糸用押出機の溶融温度に設定されたオリフィス中にセットし、5分間溶融状態に保持したのち、所定水準の荷重下で押出し、このときのせん断速度と溶融粘度とをプロットした。上記操作を、複数水準の荷重下において繰り返した。上記データに基いて、剪断速度が1000秒−1のときの溶融粘度を見積もる。
【0034】
[実施例1]
島成分として固有粘度0.62(35℃、オルソクロロフェノール中)のポリエチレンナフタレート、海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸9モル%と数平均分子量4000のポリエチレングリコール3重量%を共重合した固有粘度0.49のポリエチレンテレフタレートを用い、W02005/095686号公報の方法を用いて海島型複合繊維を得た。海成分と島成分それぞれの溶融粘度は、283Pa・s、250Pa・sであり、ポリマーの溶融粘度比(海/島)は、0.9であった。別々に溶融後、複合口金内で合流させ、海:島=30:70、島数=900の海島型複合未延伸繊維を、紡糸温度300℃、紡糸速度1000m/分で溶融紡糸し、巻き取った。得られた未延伸糸を、延伸温度130℃、延伸倍率3.9倍でローラー延伸し、次いで200℃の非接触型ヒーターで熱セットして巻き取り、海島型複合延伸糸を得た。延伸工程においても毛羽や断糸の発生はなく、全ての未延伸糸は問題なく延伸可能であった。得られた海島型複合延伸糸は62dtex/10filであり、筒編みを作成し、98℃、3.5g/lのアルカリ溶液中で1分間減量処理したところ、海成分のみが溶出されており島成分の平均単糸繊維径は700nm,CV%は12%、強度は5.8cN/dtex、伸度は25%、乾熱収縮率は1.5%であった。
【0035】
[実施例2]
島成分として固有粘度0.50(35℃、オルソクロロフェノール中)のポリエチレンナフタレート用いた以外は実施例1と同様に行った。海成分と島成分それぞれの溶融粘度は、212Pa・s、213Pa・sであり、ポリマーの溶融粘度比(海/島)は、1.0であった。別々に溶融後、複合口金内で合流させ、海:島=30:70、島数=900の海島型複合未延伸繊維を、紡糸温度300℃、紡糸速度1000m/分で溶融紡糸し、巻き取った。得られた未延伸糸を、延伸温度130℃、延伸倍率3.9倍でローラー延伸し、次いで200℃の非接触型ヒーターで熱セットして巻き取り、海島型複合繊維を得た。延伸工程においても毛羽や断糸の発生はなく、全ての未延伸糸は問題なく延伸可能であった。得られた海島型複合延伸糸は62dtex/10filであり、筒編みを作成し、98℃、3.5g/1のアルカリ溶液中で1分間減量処理したところ、海成分のみが溶出されており、島成分の平均単糸繊維径は700nm、CV%は12%、強度は4.5cN/dtex、伸度は23%、乾熱収縮率は2.0%であった。
【0036】
[比較例1]
島成分として固有粘度1.02(35℃、オルソクロロフェノール中)のポリエチレンテレフタレート、海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸9モル%と数平均分子量4000のポリエチレングリコール3重量%を共重合した固有粘度0.46のポリエチレンテレフタレートを用いた以外は実施例1と同様の方法で行った。海成分と島成分それぞれの溶融粘度は、212Pa・s、351Pa・sであり、ポリマーの溶融粘度比(海/島)は、0.6であった。別々に溶融後、複合口金内で合流させ、海:島=30:70、島数=900の海島型複合未延伸繊維を、紡糸温度300℃、紡糸速度1000m/分で溶融紡糸し、巻き取った。得られた未延伸糸を、延伸温度100℃、延伸倍率4.5倍でローラー延伸し、次いで180℃の非接触型ヒーターで熱セットして巻き取り、海島型複合繊維を得た。延伸工程においても毛羽や断糸の発生はなく、全ての未延伸糸は問題なく延伸可能であった。得られた海島型複合延伸糸は56dtex/10filであり、筒編みを作成し、98℃、3.5g/Lのアルカリ溶液中で1分間減量処理したところ、海成分のみが溶出されており、島成分の平均単糸繊維径は700nm、CV%は12%、強度は5.5cN/dtex、伸度は29%、乾熱収縮率は6.0%であった。
【0037】
[比較例2]
島成分として固有粘度0.50(35℃、オルソクロロフェノール中)のポリエチレンナフタレート、海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸9モル%と数平均分子量4000のポリエチレングリコール3重量%を共重合した固有粘度0.42のポリエチレンテレフタレートを用いた以外は実施例1と同様の方法で行った。海成分と島成分それぞれの溶融粘度は、114Pa・s、213Pa・sであり、ポリマーの溶融粘度比(海/島)は、0.54であった。
別々に溶融後、複合口金内で合流させ、海:島=50:50、島数=900の海島型複合未延伸繊維を、紡糸温度300℃、紡糸速度1000m/分で溶融紡糸し、巻き取った。
得られた未延伸糸を、延伸温度130℃・延伸倍率3・7倍でローラー延伸し、次いで200℃の非接触型ヒーターで熱セットして巻き取り、海島型複合延伸糸を得た。延伸工程においても毛羽や断糸の発生はなく、全ての未延伸糸は問題なく延伸可能であった。得られた海島型複合延伸糸は64dtex/10filであり、筒編みを作成し、98℃、3.5g/lのアルカリ溶液中で3分間減量処理したところ、海成分のみが溶出されており、島成分の平均繊維径は610nm,CV%は15%、強度は3.8cN/dtex、伸度は30%、乾熱収縮率は2.8%であった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のポリエステル極細繊維は、フィルター、有害物質除去製品、電池用セパレーターなどの環境・産業資材用途や、カーシートなどの車輌内装品、カーペット、ソファー、カーテンなどのインテリア製品、化粧品、化粧品マスク、ワイピングクロス、健康用品などの生活用途や研磨布、縫合糸、スキャフォールド、人工血管、血液フィルターなどの医療用途、およびジャケット、スカート、パンツ、下着などの衣料、スポーツ衣料、衣料資材に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単糸繊維径が10〜1000nmで、単糸繊維径のばらつき(CV%)が0〜25%、極細繊維束として引張強度が4.0cN/dtex以上、破断伸度が10〜80%、150℃での乾熱収縮率が5%以下であることを特徴とするポリエステル極細繊維。
【請求項2】
ポリエステルがポリエチレンナフタレートである請求項1記載のポリエステル極細繊維。
【請求項3】
請求項1〜2いずれかに記載のポリエステル極細繊維を含む繊維製品。

【公開番号】特開2012−193476(P2012−193476A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59126(P2011−59126)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】