説明

ポリエステル樹脂とその製造方法、およびそれよりなるラミネート用ポリエステルフィルム

【課題】 レトルト処理時のオリゴマーの析出が極めて少なく、かつ、製造時にペレットがブロッキングすることの無いポリエステル樹脂、およびその製造方法、並びにこのポリエステル樹脂を用いたラミネート用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 ポリエチレンテレフタレートにイソフタル酸が4〜20mol%共重合されたポリエステル樹脂であって、総オリゴマーの含有量が1.8質量%以下であり、かつ、融解吸熱量ΔHが30J/g以上であることを特徴とするポリエステル樹脂。溶融重合工程により得られるストランドをカッティングし、得られたペレットを固相重合するポリエステル樹脂の製造方法において、ストランドを、延伸速度0.5〜200m/min、延伸倍率2倍以上の条件で延伸した後、カッティングすることを特徴とする上記ポリエステル樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レトルト処理時のオリゴマーの析出が極めて少なく、かつ、製造時にペレットがブロッキングすることのないポリエステル樹脂、およびその製造方法、並びにこのポリエステル樹脂を用いたラミネート用ポリエステルフィルムを提供しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストアや自動販売機の普及にともなって、炭酸飲料、果汁飲食品、コーヒー飲料やインスタント食品などのレトルト処理飲食品の販売量が著しく伸びている。これらの飲食品は、衛生面から飲料や食品を容器に充填してレトルト殺菌処理(通常120〜130℃のスチーム処理)したり、暖かい状態で食べるために容器に入れたまま加熱してレトルト処理するものが多い。
【0003】
従来、金属缶などの飲食品用容器の内面及び外面には、中身の風味やフレーバー性を保つと同時に、容器素材の腐食を防止するために、溶剤型塗料が塗布されていた。しかし、溶剤型塗料が塗布された容器においては、塗膜に残存する微量の揮発成分が飲食品に移行し、フレーバー性に悪影響を及ぼすという問題があった。
この問題を改善するために、従来の塗装に代えてポリエステルフィルムを金属板にラミネートする方法が提案され、ラミネート金属板を成形した金属缶は、耐フレーバー性に優れ、内面塗装工程や水洗工程がないため、産業廃棄物が少なく環境保護の面で好ましいだけでなく、大幅なコストダウンを図れるということで注目されている。
【0004】
ラミネート用ポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリブチレンテレフタレート(PBT)とのブレンド物からなるフィルムや、1,4−ブタンジオールを共重合したPETフィルムが提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。しかしこれらのフィルムを缶の内貼りに使用した場合、レトルト処理により、テトラヒドロフランが発生し、中身の味が極端に悪化するといった問題があった。
【0005】
また、ポリエステルフィルムを用いて缶の継目まで完全に被覆するには、フィルムの熱収縮が大きいことが必要であるため、例えば、PETにイソフタル酸(IPA)等を共重合したポリエステルフィルムが使用されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、このフィルムを貼り合わせた缶は、レトルト処理により、フィルム中のエチレンテレフタレート環状オリゴマー(主に三量体)や、IPA等を含んだ共重合オリゴマーがフィルム表面に多量に析出し、缶の中身を汚染するという問題があった。
【0006】
オリゴマー含有量の少ないポリエステル樹脂を得る方法としては、溶融重合したポリエステル(プレポリマー)のペレットを減圧下又は不活性ガス流通下にポリエステルの融点以下の温度で加熱して固相重合する方法が一般的である。
【0007】
しかし、IPAを共重合したPET系共重合ポリエステルは、融点が低いため固相重合反応温度を高くできず、オリゴマー含有量を減少させにくいという問題があった。また、IPAを共重合したPET系共重合ポリエステルのような結晶性が低いプレポリマーの場合、結晶化や固相重合工程時に設備内でペレットが融着し、ブロッキングが発生しやすいという問題があった。
【特許文献1】特開平5−331302号
【特許文献2】特開平7−52242号
【特許文献3】特開平2−57339号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、レトルト処理時のオリゴマーの析出が極めて少なく、かつ、製造時にペレットがブロッキングすることのないポリエステル樹脂、およびその製造方法、並びにこのポリエステル樹脂を用いたラミネート用ポリエステルフィルムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、イソフタル酸を共重合したポリエステル樹脂を固相重合する前に、所定の条件で延伸することにより、この目的が達成されることを見いだし本発明に到達した。
すなわち本発明は以下のとおりである。
(1) PETにIPAが4〜20mol%共重合されたポリエステル樹脂であって、総オリゴマーの含有量が1.8質量%以下であり、かつ、融解吸熱量ΔHが30J/g以上であることを特徴とするポリエステル樹脂。
(2) 溶融重合工程により得られるストランドをカッティングし、得られたペレットを固相重合するポリエステル樹脂の製造方法において、ストランドを、延伸速度0.5〜200m/min、延伸倍率2倍以上の条件で延伸した後、カッティングすることを特徴とする(1)記載のポリエステル樹脂の製造方法。
(3) (1)記載のポリエステル樹脂よりなるラミネート用ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、PETにIPAが4〜20mol%共重合されたポリエステル樹脂を製造するに際し、ペレットをブロッキングさせることなく、オリゴマー量の少ないポリエステル樹脂を製造することができ、金属缶などの飲食品用容器のフィルム等に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂は、PETにIPAが4〜20mol%共重合されていることが必要であり、6〜18mol%共重合されていることが好ましい。IPAの共重合割合が4mol%未満であると、フィルムと缶との接着性が劣るため好ましくない。また、IPAの共重合割合が20mol%を超えると、ポリマーが非晶性となり延伸しても固相重合時にブロッキングを抑制することができなくなるため好ましくない。また、フィルム化の際に配向しにくく、実用に供することのできる強度のフィルムとすることができないため好ましくない。
【0012】
本発明のポリエステル樹脂には、発明の効果を損なわない範囲で、以下のような成分を共重合してもよい。酸成分としては、(無水)フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、(無水)コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、炭素数20〜60のダイマー酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、(無水)シトラコン酸、メサコン酸等の脂肪族ジカルボン酸、(無水)ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸等の脂環族ジカルボン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、乳酸、β−ヒドロキシ酪酸、ε−カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸や、(無水)トリメリット酸、トリメシン酸、(無水)ピロメリット酸等の多官能カルボン酸を挙げることができる。また、アルコール成分としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール等の脂環族ジオール、ビスフェノールAやビスフェノールSのエチレンオキシド、あるいはプロピレンオキシド付加物等の芳香族ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多官能アルコール等を挙げることができる。
【0013】
また、本発明のポリエステル樹脂は、エチレンテレフタレート環状オリゴマー(主に三量体)や、IPA等を含んだ共重合オリゴマーからなる総オリゴマーの含有量が1.8質量%以下である必要があり、1.5質量%以下であることが好ましく、1.2質量%以下であることがさらに好ましい。総オリゴマーの含有量が1.8質量%を超えると、このポリエステル樹脂を缶にラミネートした際、レトルト処理により、フィルム中のエチレンテレフタレート環状オリゴマー(主に三量体)や、IPA等を含んだ共重合オリゴマーがフィルム表面に多量に析出し、缶の中身を汚染するため好ましくない。
【0014】
さらに、本発明のポリエステル樹脂は、その融解吸熱量ΔHが30J/g以上であることが必要であり、32J/g以上であることが好ましい。融解吸熱量が30J/g未満であると、固相重合した際にペレットのブロッキングが避けられず、操業性が非常に悪いものとなるため好ましくない。
IPAを4〜20モル%共重合したポリエステル樹脂は、完全な非晶性ではないが結晶性が低く、融解吸熱量ΔHが0.5〜25J/gと小さい。しかし、低結晶性のポリエステル樹脂でも、溶融重合後に得られるストランドを、本発明の方法にて所定の条件で延伸処理を施すことによって、融解吸熱量ΔHが30J/g以上となるまで配向結晶化し、固相重合工程でのペレットのブロッキングを完全に抑制することができる。
【0015】
本発明のポリエステル樹脂は、常法によって溶融重合することができる。例えば、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)をエステル化反応させて得られる生成物に、IPAまたはそのEGとのエステル化物を加えて重縮合反応させる方法、あるいはテレフタル酸ジメチルとEGとをエステル交換反応させて得られる生成物に、IPAまたはそのEGとのエステル化物を加えて重縮合反応させる方法などが好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
触媒としては、通常アンチモン、ゲルマニウム、スズ、チタン、亜鉛、アルミニウム、コバルト等の金属化合物が用いられ、重縮合反応は0.12〜12hPa程度の減圧下、250〜290℃の温度で、所定の極限粘度のものが得られるまで行われる。
【0017】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、ヒンダードフェノール系化合物のような抗酸化剤、コバルト化合物、蛍光剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような顔料、酸化セリウムのような耐光性改良剤、難燃剤、制電剤、抗菌剤、セラミック等種々の改質剤や添加剤を含有していてもよい。
【0018】
本発明において、溶融重合後に得られるポリエステルストランドは、ペレット化して固相重合する前に、延伸処理することが必要である。延伸工程における延伸速度は0.5〜200m/minであることが必要であり、1〜100m/minであることが好ましく、10〜50m/minであることが最も好ましい。延伸速度が200m/minを超えると、固相重合でオリゴマー量を低減しにくくなるため好ましくない。また、延伸速度が0.5m/minより小さいと、延伸による配向結晶化が不十分であり、固相重合時にペレットにブロッキングが発生することがあるため好ましくない。
また、延伸倍率は2倍以上であることが必要である。延伸倍率が2倍より小さいと、ポリエステルの配向結晶化が不十分であり、固相重合時にペレットにブロッキングが発生する場合があるため好ましくない。
延伸処理温度はポリエステル樹脂のガラス転移温度より5〜15℃低い温度であることが好ましい。処理温度がガラス転移温度より高いとストランドが軟化し配向結晶化しにくくなり、逆に低すぎると延伸できずにストランドが切断してしまう場合があるため好ましくない。
【0019】
ストランドを延伸処理し、ペレットを得る方法としては、溶融重合の反応缶から払い出したポリエステルのストランドを冷却バスに通過させ、上述の温度と延伸倍率でローラー間にて延伸処理した後、カッティングする方法がある。例えば、重縮合反応終了後、反応缶から払い出したポリエステルのストランドを、冷却バスで室温程度まで冷却した後、まず第1ローラーを通過させ50〜80℃に加温し、続いて第1ローラーより回転速度が速い第2ローラーを通過させることにより、延伸速度0.5〜200m/minで、2倍以上に延伸処理する。次に、このストランドを造粒機等を用いてカッティングすることによってペレット化する。
【0020】
本発明では、上記ペレットを乾燥した後、固相重合する必要がある。乾燥は固相重合温度より30℃以上低い温度で3〜8時間程度行えばよい。固相重合は4時間以上行うことが好ましい。固相重合時間が4時間未満であると、オリゴマーが十分に減少しないため好ましくない。
また、固相重合温度はポリエステル樹脂の融点より10℃以上低い温度とすることが好ましい。これより高い温度では、ペレットが融着するため好ましくない。
本発明において固相重合は、不活性ガス雰囲気下または減圧下で行えばよい。この不活性ガスとは、ポリエステル樹脂ペレットの固相重合においてポリエステルの劣化を生じないような気体を意味し、一般には経済的に安価な窒素を用いるのが好ましい。
本発明で使用する固相重合装置は、回転式、流動床式、種々の撹拌翼を有する反応器等のポリエステルを均一に加熱できるものが好ましい。
【0021】
次に、本発明のポリエステルフィルムの一般的な成形方法を以下に説明する。上記ポリエステル樹脂を十分に乾燥させた後、押出機にてポリエステル樹脂の融点より10〜80℃高い温度で溶融押出し、T型あるいは円形口金等を用いて、シート状または円筒状に口金より吐出させ、冷却ロールまたは水等の冷媒中に導いて冷却固化させ、未延伸フィルムを得る。続いて、この未延伸フィルムを少なくとも1軸方向に延伸する。1軸に延伸する場合は、オーブン等を用いて幅方向に延伸することが望ましく、2軸に延伸する場合には、延伸ロール等を用いて長手方向に延伸し、続いて幅方向に延伸する逐次2軸延伸、両方向に実質的に同時に延伸する同時2軸延伸のいずれでもよい。その後、本発明の目的を損なわない程度で、熱処理や乾燥、表面処理等の工程を施してもよい。また、ポリエステルフィルムは単層であっても積層であっても構わない。
このようにして得られた本発明のポリエステルフィルムは、金属板、紙または樹脂シートにラミネートし、これを成形することによって飲食品用容器とすることができる。ポリエステルフィルムを金属板にラミネートする方法に特に限定はないが、例えば、金属板を加熱しておき、フィルムを貼合わせた後、急冷し、金属板に接するフィルムの少なくとも表層部を溶融して融着させればよい。あるいは、ポリエステルフィルムに接着層を積層した後、金属板とラミネートしてもよい。
【0022】
上述のように、結晶性が低いポリエステル樹脂のペレットを固相重合する場合、通常ペレットのブロッキングが問題となることが多いが、本発明の方法では、延伸処理によってポリエステルの配向結晶化が進行しているために、ブロッキングが抑制され、操業性良く固相重合製品を得ることができる。ポリエステルの配向結晶化が進みすぎると、ブロッキングは抑制されるが、ポリエステル中の環状オリゴマーやポリエステル鎖の末端基の自由度が失われ、環状オリゴマーの開環反応が遅くなるため、延伸後に固相重合を施してもオリゴマーが減少しにくくなる。しかし、本発明で規定する範囲の延伸速度で延伸することで、延伸によるこのような弊害を回避し、固相重合によってブロッキングすることなくオリゴマーを低減したポリエステル樹脂ペレットを得ることができる。通常の繊維の延伸とは異なり、延伸倍率を高くした場合には、ポリエステルのストランドの単位長さ当たりの配向が進むよりも、延伸に参加したポリエステル分子の量が増加する傾向にあるため、ストランド延伸の場合には固相重合時の環状オリゴマー減少量にはあまり影響しないと考えられる。
【実施例】
【0023】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、特性値等の測定及び評価方法は次の通りである。
(a)極限粘度
フェノール/四塩化エタン(1/1、質量比)を溶媒として、温度20.0℃で測定した溶液粘度から求めた。
(b)融解吸熱量ΔH
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC−7型)を用いて、25℃から280℃の範囲で昇温速度20℃/分で測定した。
(c)IPAの共重合量
ポリエステル樹脂を、重水素化ヘキサフルオロイソプロパノール/重水素化クロロホルム(1/25、容量比)の混合溶媒に溶解し、NMR装置(日本電子社製LA−400型)で1H−NMR測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピークの積分強度から、IPAの共重合割合を求めた。
(d)総オリゴマーの含有量
ポリエステルフィルムをヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム(1/1、容量比)に溶解し、さらにアセトニトリルを加えてポリマー成分を沈澱させ、メンブランフィルターで濾過した濾液を高速液体クロマトグラフ(ウォーターズ社製2695)を用い、UV−230nmで定量した。
(e)フィルムと缶との接着性
フィルムがラミネートされた飲料用缶30個を目視で検査し、接着していない箇所の有無を確認した。30個中、接着していない箇所が1箇所以上ある場合を不合格とした。
(f)レトルト処理時のオリゴマー析出の有無
フィルムがラミネートされた飲料用缶30個を125℃で30分間レトルト処理し、缶の表面へのオリゴマーの析出の有無を目視により確認した。30個中、オリゴマーの析出が1箇所以上ある場合を不合格とした。
(g)固相重合時のブロッキングの有無
固相重合後のペレットを目視で検査し、ブロッキングの有無を確認した。ペレット1kg中に、ブロッキングしたペレットの1g以上の塊が1個以上見られた場合を不合格とした。
【0024】
実施例1
PETオリゴマーの存在するエステル化反応缶に、TPAとEGとのモル比1/1.6のスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.1MPa、滞留時間8時間の条件で、エステル化反応を行い、反応率95%のPETオリゴマーを連続的に得た。
このPETオリゴマー60kgとIPA5kgを重縮合反応缶に移送した後、三酸化アンチモンを18g(全酸成分1モルに対して2×10-4モルとなる量)添加し、反応器を徐々に減圧にして60分後に1.2hPa以下とし、温度280℃で攪拌しながら2時間重合反応を行った。
次に、反応缶から払い出したポリエステルのストランドを、冷却バスで室温程度まで冷却した後、まず第1ローラーを通過させ70℃に加温し、第1ローラーと第2ローラー間で、延伸速度20m/minで2.5倍に延伸処理した。続いて、このストランドを造粒機でカッティングすることによりペレット化した。
得られたペレットを回転式固相重合装置に仕込み、70℃で2時間予備乾燥し、続いて130℃で4時間乾燥させた後、0.65hPa、190℃の条件で8時間固相重合することにより、極限粘度が1.07のポリエステル樹脂を得た。固相重合時にペレットのブロッキングは見られなかった。
次いで、ペレット化した該ポリエステル樹脂を、真空乾燥機により130℃で4時間乾燥した後、285℃で押出機より押出し急冷固化して、平均厚さ170μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを縦方向に90℃で4倍に延伸した後、テンターに導き105℃で加熱して横方向に4倍に延伸した。延伸後、235℃にて熱処理を行い、その後冷却して捲取り、平均厚さ約12μmのフィルムとした。
TFS(ティンフリースチール、厚さ0.3mm)を180℃に加熱し、その両面に得られたフィルムを貼り合わせて、フィルムをラミネートした金属板を作成した。これを円形に打ち抜き、薄肉深絞り成形を行って、直径100mm、深さ120mmの飲料用缶を作成した。得られた飲料用缶において、フィルムと缶との接着性は良好であった。また飲料用缶を125℃×30分間の条件でレトルト処理したところ、オリゴマーの析出は認められなかった。
得られたポリエステル樹脂およびポリエステルフィルムの評価結果等を表1に示す。
【0025】
実施例2〜6、比較例1〜7
IPAの共重合割合、延伸倍率および延伸速度を表1に示すように変更した以外は、実施例1に準じた方法でポリエステル樹脂とポリエステルフィルムを製造した。
得られたポリエステル樹脂およびポリエステルフィルムの評価結果等を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
実施例1〜6では、いずれも固相重合時にペレットのブロッキングが発生することなく、良好なポリエステル樹脂が得られた。ポリエステルフィルムの性能にも問題は生じなかった。
比較例1および2では、延伸倍率が低いため、ポリエステル樹脂の融解吸熱量ΔHが小さくなり、固相重合時にペレットのブロッキングが起こった。
比較例3では、IPA共重合割合が低いため、得られたフィルムは、缶との接着性が低下した。
比較例4、5では、延伸速度が速いため、固相重合後のポリエステル樹脂中のオリゴマー量が多くなり、レトルト処理時にオリゴマー析出が認められた。
比較例6では、IPAの共重合割合が高いため、固相重合時にペレットのブロッキングが発生した。
比較例7では、延伸速度が遅いため、延伸処理での配向結晶化が十分に進まず、ポリエステル樹脂の融解吸熱量ΔHが小さくなり、固相重合時にペレットのブロッキングが発生した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレートにイソフタル酸が4〜20mol%共重合されたポリエステル樹脂であって、総オリゴマーの含有量が1.8質量%以下であり、かつ、融解吸熱量ΔHが30J/g以上であることを特徴とするポリエステル樹脂。
【請求項2】
溶融重合工程により得られるストランドをカッティングし、得られたペレットを固相重合するポリエステル樹脂の製造方法において、ストランドを、延伸速度0.5〜200m/min、延伸倍率2倍以上の条件で延伸した後、カッティングすることを特徴とする請求項1記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のポリエステル樹脂よりなるラミネート用ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2006−63180(P2006−63180A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246816(P2004−246816)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000228073)日本エステル株式会社 (273)
【Fターム(参考)】