説明

ポリエステル樹脂の製造方法、結晶化ポリエステルプレポリマーペレット及びポリエステル樹脂ペレット

【課題】固相重縮合速度を低下させることなく、ポリエステルプレポリマーペレットを結晶化や固相重縮合等の加熱処理に供する際の融着を抑制し、熱成形により透明性の高い成形品を得ることが可能なポリエステル樹脂ペレットを提供する。
【解決手段】ジカルボン酸成分とジオール成分とを溶融重縮合して得られたポリエステルプレポリマーペレットに熱水処理及び加熱処理をこの順に行うポリエステル樹脂の製造方法。該熱水処理を行うに際し、固有粘度が0.10dl/g以上1.0dl/g以下で、密度が1.36g/cm以下のポリエステルプレポリマーペレットを、該ポリエステルプレポリマーペレットのガラス転移温度より高く100℃未満の温度の熱水に、以下の式(1)を満たす条件で接触させる。
40 ≦ (T−Tg)t ≦ 6000 (1)
(t:熱水処理時間(秒)、T:熱水温度(℃)、Tg:ポリエステルプレポリマーペレットのガラス転移温度(℃))

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂の製造方法、結晶化ポリエステルプレポリマーペレット及びポリエステル樹脂ペレットに関する。詳しくは、結晶化や固相重縮合等の加熱処理時におけるペレットの融着を抑制し、且つ、透明性の高いポリエステル樹脂成形品を得ることができる、ポリエステル樹脂ペレットの製造方法、結晶化ポリエステルプレポリマーペレット及びポリエステル樹脂ペレットに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂は、例えば繊維、生地、成形用樹脂及び飲料用ボトルなどの材料として、幅広く用いられている。そして各種用途に必要な成形加工性、機械的特性を引き出すために、ポリエステル樹脂の重縮合度(通常は分子量や固有粘度で表される)を所定のレベルまで上げることが行われている。その方法としては例えば、溶融重縮合によりポリエステル樹脂のプレポリマー(ポリエステルプレポリマー)を得た後、このプレポリマーをペレット化し、固相重縮合により重縮合度を上げる方法が知られており、この様な方法は工業的規模でのポリエステル樹脂ペレット生産において、広く用いられている。
【0003】
この方法においては、一般的に、ポリエステルプレポリマーペレットを固相重縮合工程に供する前に、結晶化工程及び乾燥工程を設け、ペレットの融着や加水分解を抑制する方法がとられている。結晶化工程や乾燥工程においては、ポリエステルプレポリマーペレット同士が融着する場合があるので、この様な融着を回避するために、様々な改良方法が提案されている。例えば、ポリエステルプレポリマーペレットをそのガラス転移温度(Tg)よりも10℃以上低い温度の温水に浸漬し、水を特定の線速度以上で流しながら、Tgよりも15℃を越える温度まで1時間当たり100℃を超えない速度で昇温することで、融着を回避する方法が提案されている(特許文献1参照)。更には、乾燥工程前に、ポリエステルプレポリマーペレットを110℃以上の加熱水蒸気で処理する方法(特許文献2参照)や、80℃〜100℃の水または水蒸気で5分〜25分処理する方法も提案されている(特許文献3参照)。
【0004】
一方、主にポリエステル樹脂やその成形品の品質改良を目的として、ポリエステル樹脂ペレットを水に接触させ、オリゴマーやアセトアルデヒド等を低減させる方法も提案されている(特許文献4,5,6参照)。
【特許文献1】特開平1−180309号公報
【特許文献2】特開昭59−25815号公報
【特許文献3】英国特許836742号公報
【特許文献4】特開平7−233248号公報
【特許文献5】特開平7−286046号公報
【特許文献6】特開2004−67964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の方法では、設備が大掛かりになる上、処理に長時間を要するため、工業規模での実施には不向きであるという問題があった。また、特許文献2に記載の方法では、固相重縮合工程での重縮合速度が低下してしまうという問題があり、特許文献3に記載の方法では、熱水から取り出した直後にペレット同士の融着が生じたり、固相重縮合速度が低下したりするという問題があった。
【0006】
一方、特許文献4,5,6にはポリエステル樹脂プレポリマーペレットの融着防止に関する記載はなく、且つ、記載されている熱水処理時間は30分以上と長いため、工業的規模での実施には不向きな処理であり、更には、この様な処理を受けたポリエステルプレポリマーペレットは、固相重縮合速度が低下してしまう問題もあった。
【0007】
本発明はこの様な課題に鑑みてなされたものであり、固相重縮合速度を低下させることなく、ポリエステルプレポリマーペレットを結晶化や固相重縮合等の熱処理に供する際の融着を抑制し、熱成形により透明性の高い成形品を得ることが可能なポリエステル樹脂ペレットを製造する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討の結果、ポリエステル樹脂ペレットを製造する際に、特定範囲の固有粘度と密度を有するポリエステルプレポリマーペレットに特定の熱水処理を行うことで、その後の加熱処理により結晶化させる際の融着を抑制可能であり、また、前記の熱水処理及び加熱処理により結晶化されたポリエステルプレポリマーに特定の加熱処理を行って固相重縮合させることにより、熱成形により透明性の高い成形品を得ることが可能なポリエステル樹脂を得ることができることを見出した。
【0009】
更に、本発明者らは、微細球晶を含有する表面結晶層を特定の厚さで有する結晶化したポリエステルプレポリマーペレットは、熱処理の際に融着しにくい傾向があり、また、微細球晶を含有する表面結晶層を特定の厚さで有するポリエステル樹脂ペレットは、熱成形により、透明性に優れた成形品となる傾向にあることを見出した。
【0010】
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0011】
[1] ジカルボン酸成分とジオール成分とを溶融重縮合して得られたポリエステルプレポリマーペレットに熱水処理及び加熱処理をこの順に行うポリエステル樹脂の製造方法において、該熱水処理を行うに際し、固有粘度が0.10dl/g以上1.0dl/g以下で、密度が1.36g/cm以下のポリエステルプレポリマーペレットを、該ポリエステルプレポリマーペレットのガラス転移温度より高く100℃未満の温度の熱水に、以下の式(1)を満たす条件で接触させることを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
40 ≦ (T−Tg)t ≦ 6000 (1)
(式中、tは熱水処理時間(秒)、Tは熱水温度(℃)、Tgはポリエステルプレポリマーペレットのガラス転移温度(℃)を示す。)
【0012】
[2] 前記ポリエステルプレポリマーペレットが、チタン化合物及び/又はゲルマニウム化合物を含む重縮合触媒を用いた溶融重縮合により得られたものであることを特徴とする[1]に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【0013】
[3] 前記ポリエステルプレポリマーペレットの平均粒径が0.5mm以上10mm以下であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【0014】
[4] 前記熱水処理時間t(秒)が、1秒以上300秒以下であることを特徴とする[1]乃至[3]の何れかに記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【0015】
[5] 前記加熱処理を、120℃以上245℃以下の温度で行うことを特徴とする[1]乃至[4]の何れかに記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【0016】
[6] 前記加熱処理が結晶化工程を含み、該結晶化工程において、厚さが15μm以上110μm以下の表面結晶層を有し、固有粘度が0.10dl/g以上1.0dl/g以下の結晶化ポリエステルプレポリマーペレットを得ることを特徴とする[1]乃至[5]の何れかに記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【0017】
[7] 前記加熱処理が固相重縮合工程を含み、該固相重縮合工程において、厚さが15μm以上110μm以下の表面結晶層を有し、固有粘度が0.60dl/g以上1.5dl/g以下のポリエステル樹脂ペレットを得ることを特徴とする[1]乃至[6]の何れかに記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【0018】
[8] 前記加熱処理が、結晶化工程と固相重縮合工程とをこの順に含むことを特徴とする[1]乃至[7]の何れかに記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【0019】
[9] 前記結晶化工程において、厚さが15μm以上110μm以下の表面結晶層を有し、固有粘度が0.10dl/g以上0.40dl/g以下の結晶化ポリエステルプレポリマーペレットを得、前記固相重縮合工程において、厚さが15μm以上110μm以下の表面結晶層を有し、固有粘度が0.60dl/g以上1.5dl/g以下のポリエステル樹脂ペレットを得ることを特徴とする[8]に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【0020】
[10] 前記熱水処理に供されるポリエステルプレポリマーペレットの末端カルボキシル基濃度が50当量/トン以下である[9]に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【0021】
[11] 厚さが15μm以上110μm以下の表面結晶層を有し、固有粘度が0.10dl/g以上1.0dl/g以下である結晶化ポリエステルプレポリマーペレット。
【0022】
[12] 厚さが15μm以上110μm以下の表面結晶層を有し、固有粘度が0.60dl/g以上1.5dl/g以下であるポリエステルペレット。
【発明の効果】
【0023】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法に従って、ポリエステルプレポリマーペレットを熱水処理した後加熱処理してポリエステル樹脂ペレットを製造するに当たり、特定範囲の固有粘度と密度を有するポリエステルプレポリマーペレットに特定の条件で熱水処理を行うことにより、その後、ポリエステルプレポリマーペレットを結晶化や固相重縮合等の加熱処理に供する際のポリエステルプレポリマーペレット同士の融着が抑制される。しかも、この熱水処理により、固相重縮合速度の著しい低下を引き起こすこともない。
【0024】
本発明の結晶化ポリエステルプレポリマーペレットは、加熱処理に供する際の融着が抑制され、且つ、固相重縮合速度の著しい低下のないものであり、また、本発明のポリエステル樹脂ペレットを用いることにより、透明性の高いポリエステル樹脂成形品を得ることができる。
これは、特定条件の熱水処理によりペレット最表面に可塑化された高結晶化速度を有する層が形成されることによると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
なお、本発明においては、後に詳述する溶融重縮合により得られるポリエステルを「ポリエステルプレポリマー」、このポリエステルプレポリマーを造粒して得られるペレットを「ポリエステルプレポリマーペレット」、ポリエステルプレポリマーペレットを結晶化させたものを「結晶化ポリエステルプレポリマーペレット」、固有粘度が0.60dl/g以上であり結晶化したポリエステルペレットを「ポリエステル樹脂ペレット」とそれぞれ称する。ただし、これらの呼称において、「ポリエステル」あるいは「ポリエステル樹脂」を略して表現する場合もある。
【0026】
[ポリエステルプレポリマーペレットの製造]
本発明に用いるポリエステルプレポリマーやポリエステル樹脂の原料となる、ジカルボン酸成分とジオール成分とに制限はなく、任意のものを使用することができる。中でも、ジカルボン酸成分としてはテレフタル酸及びその誘導体を主たる成分とするものであることが好ましく、またジオール成分としては、エチレングリコールを主たる成分とするものであることが好ましい。ここで、主たる成分とは、例えばジカルボン酸成分やジオール成分におけるその割合が、90モル%以上であることを示し、中でも95モル%以上、特に99モル%以上であることが好ましい。
【0027】
テレフタル酸の誘導体としては、例えばエステル形成性誘導体が挙げられ、具体的にはテレフタル酸ジメチルエステル等の、テレフタル酸と、各々のアルキル基が炭素数1〜4程度のアルキル基であるアルキルエステル類;テレフタル酸ジクロライド等のハロゲン化物等が挙げられる。
【0028】
また、本発明に用いるポリエステルプレポリマーやポリエステル樹脂を得るに際し、その効果を損ねない範囲で、テレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分やエチレングリコール成分以外のジオール成分等の他の共重合成分を原料中に含んでいてもよい。一般的に、この様な他の共重合成分の含有量は、得られるポリエステル樹脂全体において10モル%以下、中でも5モル%以下であることが好ましい。
【0029】
テレフタル酸またはその誘導体以外のジカルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類や、その各アルキル基が炭素数1〜4程度のアルキル基であるアルキルエステル類やハロゲン化物等のエステル形成性誘導体;ヘキサヒドロテレフタル酸等の脂環式ジカルボン酸類や、その各アルキル基が炭素数1〜4程度のアルキル基であるアルキルエステル類やハロゲン化物等のエステル形成性誘導体;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸類や、その各アルキル基が炭素数1〜4程度のアルキル基であるアルキルエステル類やハロゲン化物等のエステル形成性誘導体;等が挙げられる。
【0030】
エチレングリコール以外のジオール成分としては、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオール類;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメチロール等の脂環式ジオール類;キシレングリコール等の芳香族ジオール類;2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキサイド付加物またはプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0031】
更に、上述した様なジカルボン酸成分やジオール成分以外の共重合成分としては、例えばステアリルアルコール、ステアリン酸、安息香酸等の単官能成分、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール等の三官能以上の多官能成分等が挙げられる。
【0032】
本発明において、熱水処理に供するポリエステルプレポリマーペレットの製造方法は、特に制限はなく、例えば従来公知の任意の方法を使用することができる。本発明において、ポリエステルプレポリマーペレットに用いるポリエステプレポリマーは、ジカルボン酸成分とジオール成分とを溶融重縮合して得られ、例えば、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体等のジカルボン酸成分と、エチレングリコール等のジオール成分とを、エステル化反応またはエステル交換反応させた後、重縮合触媒を用いて溶融縮合反応をさせることにより得られる。
【0033】
ポリエステルプレポリマーの製造方法としては、例えばテレフタル酸またはその誘導体を主成分とするジカルボン酸とエチレングリコールを主成分とするジオールとを、エステル化反応槽で、通常240〜280℃程度の温度条件下、通常、常圧〜0.5MPa程度の加圧下、攪拌下にて1〜10時間程度エステル化反応させる方法が挙げられる。この場合、ジカルボン酸成分に対するジオール成分のモル比率は通常1以上、中でも1.05以上であることが好ましく、通常1.6以下、中でも2以下であることが好ましい。
【0034】
また、別の製造方法としては、エステル交換反応触媒の存在下にジカルボン酸成分とジオール成分とをエステル交換反応させた後、得られたエステル化反応生成物を、又はエステル交換反応生成物としてのポリエステル低分子量体を、重縮合槽に移送し、重縮合触媒の存在下に、通常250〜290℃程度の温度で、常圧から漸次減圧として最終的に通常1333〜13.3Pa程度の減圧下として1〜20時間程度攪拌下に溶融重縮合させる方法が挙げられる。
【0035】
この様な製造方法は、連続式、または回分式の何れで行ってもよく、またエステル化反応槽および重縮合槽は各々、一段でも多段でもよい。
【0036】
エステル化反応においては、触媒を使用してもしなくてもよく、製造条件等に応じて適宜選択し決定すればよい。エステル化反応触媒としては、例えば二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、蓚酸ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド等のゲルマニウム化合物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモントリスエチレングリコキシド等のアンチモン化合物、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラ−n−プロポキシド、チタニウムテトラ−i−プロポキシド、チタニウムテトラ−n−ブトキシド、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム等のチタン化合物、三酸化タングステン、パラタングステン酸、メタタングステン酸、タングステン酸、ケイタングステン酸、リンタングステン酸及びそれらの塩等のタングステン化合物等、従来公知の触媒が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0037】
エステル交換反応触媒としてはチタン、タングステン、マグネシウム、カルシウム、マンガン、リチウム、亜鉛などの、従来公知の金属化合物の一種または複数種を用いることができる。具体的には、これら金属の有機酸塩、アルコラート、炭酸塩などが挙げられ、中でも酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸マンガン、酢酸リチウムやこれらの水和物等が好ましい。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0038】
ポリエステルの重縮合反応触媒としては、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、蓚酸ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド等のゲルマニウム化合物;チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラ−n−プロポキシド、チタニウムテトラ−i−プロポキシド、チタニウムテトラ−n−ブトキシド等のチタンアルコキシド類や、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム等のチタン化合物;三酸化タングステン、パラタングステン酸、メタタングステン酸、タングステン酸、ケイタングステン酸、リンタングステン酸及びそれらの塩等のタングステン化合物;蟻酸コバルト、酢酸コバルト、ステアリン酸コバルト、蓚酸コバルト、炭酸コバルト、臭化コバルト等のコバルト化合物;酢酸錫、蓚酸錫、臭化錫などの錫化合物;等が挙げられる。これらは単独か又は2種以上を任意の割合で併用して使用してもよく、中でも、重縮合反応速度が大きいという点でチタン化合物及び/又はゲルマニウム化合物が好ましく、特に、縮重縮合反応速度が大きく、環境への負荷が少なくアセトアルデヒド等の副生成物量を抑制でき、更にポリエステルプレポリマーの結晶化速度を小さく抑えられ、本発明の効果が顕著となる点からチタン化合物が好ましく、特にチタンアルコキシド類が入手や取り扱いの点で好ましい。
【0039】
ポリエステルの重縮合反応における触媒の使用量は、その触媒に由来する金属原子としての含有量が、得られるポリエステルに対して、通常、1〜500質量ppm程度となる量が好ましい。この触媒量が少なすぎると重縮合反応が進まない場合があり、逆に触媒量が多すぎても副反応による着色等が発生する場合がある。
【0040】
また、エステル化反応及び/又はエステル交換反応、及び、重縮合反応時には、安定剤としてリン化合物を用いてもよい。
【0041】
リン化合物としては例えばトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのリン酸エステル類;トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類;メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジオクチルホスフェートなどの酸性リン酸エステル類;リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0042】
この様なリン化合物の使用量は、リン化合物に由来するリン原子としての含有量が、得られるポリエステルに対して、通常、1〜200質量ppm程度となる量が好ましい。
【0043】
また、エーテル結合生成抑制剤として塩基性化合物を用いてもよい。この塩基性化合物としては、例えばトリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の第三級アミン類;水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラn−ブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム等の水酸化第四級アンモニウム類;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸マグネシウム等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0044】
溶融重縮合により得られたポリエステルプレポリマーは、溶融状態からストランド状に抜き出して、水冷しながらもしくは水冷後、カッターで切断してポリエステルプレポリマーペレットとしてもよいし、溶融液滴を水中に落下させてプレポリマーペレットとしてもよい。また、溶融状態のポリエステルプレポリマーをダイホールから水中に吐出させて冷却しつつ、ダイホール表面に隣接して設置されたカッターで切断し、ポリエステルプレポリマーとしてもよい。このようにして得られる非晶または低結晶性のペレットは、次いで必要に応じて脱水等により付着水を除去して、ポリエステルプレポリマーペレットとして、次の熱水処理に供される。
【0045】
本発明において、熱水処理に供されるポリエステルプレポリマーペレットの大きさは任意であるが、平均粒径が0.5mm以上が好ましく、更に好ましくは0.6mm以上であり、10mm以下が好ましく、更に好ましくは8mm以下であることが好ましい。平均粒径がこの範囲の場合、ペレットが空中へ浮遊、飛散する問題や、固相重縮合速度が低下する等の問題がなく、好ましい。
ここで、ポリエステルプレポリマーペレットの平均粒径はJISK0069に記載の乾式ふるい分け試験法により、積算分布曲線を作成し、積算百分率が50%になるときの値を平均粒径とする。
【0046】
また、本発明において、熱水処理に供されるポリエステルプレポリマーペレットの固有粘度は、0.10dl/g以上、好ましくは0.15dl/g以上、更に好ましくは0.18dl/g以上であり、1.0dl/g以下、好ましくは0.90dl/g以下である。固有粘度がこの範囲の場合、溶融状態のポリエステルプレポリマーからポリエステルプレポリマーペレットを得ることが容易であり、また、本発明の効果が大きい。
【0047】
前記のポリエステルプレポリマーの製造方法において、触媒の種類や量、あるいは溶融重縮合反応を行う際の温度、圧力及び滞留時間等を適宜選択することにより、ポリエステルプレポリマーペレットの固有粘度を所定の範囲にすることが可能である。
【0048】
なお本発明において、固有粘度は、試料約0.25gを、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(質量比 1/1)の混合溶媒約25mlに、濃度が1.00×10−2kg/lとなるように、非晶状態のポリエステルプレポリマーは110℃、30分で、加熱処理後のポリエステルプレポリマー又はポリエステルは140℃、30分でそれぞれ溶解させた後、30℃まで冷却し、全自動溶液粘度計(センテック社製「2CH型DJ504」)にて、濃度が1.00×10−2kg/lの試料溶液及び溶媒のみの落下秒数を測定し、下式により算出して求められる。
IV=[(1+4Kηsp0.5−1]/(200KC)
ここで、 ηsp=η/η−1 であり、ηは試料溶液の落下秒数、ηは溶媒の落下秒数、Cはポリマー溶液濃度(kg/L)、Kはハギンズの定数である。Kは0.33を採用した。
【0049】
また、本発明において、熱水処理に供されるポリエステルプレポリマーペレットの密度は、1.36g/cm以下、好ましくは1.35g/cm以下である。密度が1.36g/cmを超える場合、後に詳述する表面結晶層の形成が困難であり、本発明の効果が得にくいため、好ましくない。なお、通常、密度の下限は1.30g/cmである。
【0050】
ポリエステルプレポリマーからポリエステルプレポリマーペレットを得るに際し、冷却水の温度やポリエステルプレポリマーと冷却水の接触時間を調節したり、あるいは、ポリエステルプレポリマーペレットの粒径を調節し、冷却水による冷却効率を調整する等の方法により、ポリエステルプレポリマーペレットの密度を所定の範囲にすることが可能である。
【0051】
なお本発明において、密度は、測定セルに試料6〜8gを精秤し、測定温度23℃にて乾式自動密度測定装置(島津製作所製「Accupyc1330」)を用いて測定することにより求められる。
【0052】
また、本発明において、熱水処理に供されるポリエステルプレポリマーペレットの末端カルボキシル基濃度は50当量/トン以下であることが好ましい。末端カルボキシル基濃度は、より好ましくは40当量/トン以下、更に好ましくは35当量/トン以下、特に好ましくは30当量/トン以下である。熱水処理に供されるポリエステルプレポリマーの末端カルボキシル基濃度が50当量/トンを超えると、その後工程である固相重縮合工程において重縮合反応速度が小さくなる傾向がある。
【0053】
[熱水処理]
本発明においては、上述のようにして製造された、固有粘度が0.10dl/g以上1.0dl/g以下で、密度が1.36g/cm以下のポリエステルプレポリマーペレットを、該ポリエステルプレポリマーペレットのガラス転移温度Tgより高く100℃未満の温度Tの熱水に、以下の式(1)を満たす条件で接触させることにより熱水処理を行う。
40 ≦ (T−Tg)t ≦ 6000 (1)
(式中、tは熱水処理時間(秒)、Tは熱水温度(℃)、Tgはポリエステルプレポリマーペレットのガラス転移温度(℃)を示す。)
【0054】
なお、本発明の効果が得られる理由は、本発明に係る特定条件での熱水処理を行うことにより、ポリエステルプレポリマーペレットの表面のみが可塑化し、非晶部分の配列が高まり、微小結晶核の発生が促進されること、更には、その後加熱処理を行うことにより、可塑化され配列の進んだ非晶層が結晶化し、ペレットの表面に、球晶数が通常の結晶層の10〜100倍程度多い表面結晶層が形成されるため、該表面結晶層の結晶化速度が非常に大きくなり、温度上昇の際の非晶部分の「べたつき」が抑制できるためと考えられる。ここで、熱水処理によりプレポリマーペレットに与える熱の総量に対応するパラメータ((T−Tg)t)を適当な範囲とすることによって、前記可塑化した非晶層の厚みが特定の範囲となり、その後の加熱処理で形成される表面結晶層の厚さを最適な範囲にすることで、固層重縮合時に生ずる副生成物のペレット外への排出を実質的に阻害せず、固相重縮合反応速度の低下が抑制可能となると考えられる。
【0055】
本発明の熱水処理方法に用いる熱水の温度T(℃)は100℃未満であり、より好ましくは95℃以下である。熱水処理温度T(℃)の下限は、ポリエステルプレポリマーペレットのガラス転移温度Tg(℃)よりも高く、中でもTgより1℃以上、特に5℃以上高いことが好ましいが、熱水の温度の下限は60℃、中でも65℃であることが好ましい。
ポリエステルプレポリマーペレットのTg以下の温度の熱水で処理を行う場合、後の加熱処理の乾燥工程や結晶化工程におけるペレット同士の融着を抑制するためには、熱水処理に長時間を要し、本発明の効果が得られにくい傾向となる。また、100℃以上の温度の熱水ないし蒸気での処理は、触媒の失活を伴うため固相重縮合速度が低下する場合があり、好ましくない。
【0056】
なお、ポリエステルプレポリマーペレットのガラス転移温度Tgは、示差走査熱量計にて、室温から昇温速度20℃/分で300℃まで昇温する際の熱量曲線の、ガラス転移による比熱変化の中間点での接線と比熱変化前の点での接線との交点の温度をTgとすることで求める。
【0057】
本発明の熱水処理における熱水処理時間t(秒)と、熱水の温度T(℃)、ポリエステルプレポリマーペレットのガラス転移温度Tg(℃)との関係式である前記式(1)において、(T−Tg)tは、ペレットに与える熱の総量に対応するパラメータであり、その下限は40、好ましくは80、更に好ましくは100であり、上限は6000、好ましくは4000、更に好ましくは2000、特に好ましくは1000である。
【0058】
(T−Tg)tが40未満の場合、ポリエステルプレポリマーペレットに与えられる熱量が不十分であるため表面結晶層の形成が不十分となり、融着抑制効果が得られない。また、(T−Tg)tが6000を超える場合、固相重縮合速度が低下する場合があるため、好ましくない。
【0059】
なお、熱水処理時間t(秒)は1秒以上、好ましくは5秒以上であり、300秒以下、好ましくは250秒以下である。この範囲の場合、本発明に係る熱水処理による効果を比較的小規模の装置を用いて得ることができ、工業的規模での実施が容易となるため、特に好ましい。
【0060】
本発明に係る熱水処理の具体的な方法としては、例えば、ポリエステルプレポリマーの溶融重縮合槽から抜き出したストランド状のポリエステルプレポリマーをストランドカットすることで得られたペレットを、脱水工程まで搬送する配管内またはその途中に設けたタンク内で熱水に接触させる方法や、ペレット化後に一旦付着水を脱水したポリエステルプレポリマーペレットを熱水処理槽に入れ、熱水と接触させる方法が挙げられる。
【0061】
[加熱処理]
本発明においては、上述のような熱水処理を施したポリエステルプレポリマーペレットを次いで加熱処理に供する。
【0062】
本発明において、加熱処理とは、乾燥工程、昇温工程、結晶化工程、固相重縮合工程等を含み、常温を超える温度条件下で固体状態のポリエステルプレポリマーペレットを処理する工程をいう。
また、加熱処理の温度の下限は通常120℃、好ましくは125℃、上限は通常245℃、好ましくは240℃である。この加熱処理温度は、加熱処理の目的に応じて、適宜、好ましい温度を選択してもよいし、段階的に温度を変えてもよい。
【0063】
熱水処理後のポリエステルプレポリマーペレットの加熱処理においては、これを固相重縮合して所望の重縮合度のポリエステル樹脂ペレットとしてもよい。固相重縮合する際には、通常、熱水処理工程を経たポリエステルプレポリマーペレットを結晶化させ、乾燥した後に固相重縮合を行う。なお、乾燥は、結晶化と同時に行ってもよい。
結晶化は、通常、ペレットを攪拌下又は流動下に加熱して行う。結晶化の温度は通常、120℃以上、好ましくは130℃以上200℃以下、好ましくは190℃以下であり、保持時間は通常、1〜60分間である。結晶化する際の温度及び時間がこの範囲である場合、ペレット同士が融着しにくく、かつ、比較的短時間で十分な結晶化度に到達するため、一層好ましい。また、必要に応じて乾燥や固相重縮合等を実施する場合も融着しにくい傾向にあるため、一層好ましい。
【0064】
結晶化後、必要に応じて、結晶化ポリエステルプレポリマーペレットを乾燥させる。乾燥は140℃以上、190℃以下の温度で、好ましくは窒素、アルゴン等の不活性ガス流通下にて行う。乾燥時間は通常、30分〜6時間である。乾燥する際の温度及び時間がこの範囲である場合、比較的短時間で乾燥でき、また、加水分解等が起こりにくいため、一層好ましい。
【0065】
更に、必要に応じて、固相重縮合を行う。固相重縮合の温度は従来公知の温度範囲から適宜選択し決定すればよいが、一般的には190℃以上、中でも195℃以上であることが好ましく、245℃以下、中でも240℃以下にて行うことが好ましい。固相重縮合雰囲気の圧力は、窒素、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガス雰囲気中で行う際には、通常、大気圧以上、大気圧よりも100kPa、好ましくは20kPa高い圧力以下とする。また、減圧雰囲気下で反応を行なう場合には、通常、絶対圧力が0.01〜2kPa、好ましくは0.03〜1kPaとする。
固相重縮合時間は、温度が高いほど短時間で所望の物性に到達するが、通常1〜30時間、好ましくは5〜25時間である。
これらの温度、圧力を適宜選択し、所望の重縮合度を有するポリエステル樹脂ペレットを得ることができる。
【0066】
本発明においては、加熱処理が結晶化工程と固相重縮合工程とをこの順に含むのが好ましく、結晶化工程で後述する表面結晶層と固有粘度を有する結晶化ポリエステルプレポリマーペレットを得、また、固相重縮合工程で、後述する表面結晶層と固有粘度を有するポリエステル樹脂ペレットを得ることが好ましい。とりわけ、この場合において、熱水処理に供するポリエステルプレポリマーペレットの末端カルボキシル基濃度が50当量/トン以下であることが固相重縮合工程において、重縮合反応速度が大きくなるので好ましい。
【0067】
[結晶化ポリエステルプレポリマーペレット・ポリエステル樹脂ペレット]
次に、本発明の結晶化ポリエステルプレポリマーペレット、及び、本発明のポリエステル樹脂ペレット(以下、まとめて「本発明のペレット」と記載することがある)に関して説明する。
【0068】
本発明の結晶化ポリエステルプレポリマーペレットの固有粘度は、0.10dl/g以上、好ましくは0.15dl/g以上、更に好ましくは0.18dl/g以上であり、1.0dl/g以下、好ましくは0.90dl/g以下、より好ましくは0.40dl/g以下である。
また、本発明のポリエステル樹脂ペレットの固有粘度は、0.60dl/g以上、好ましくは0.65dl/g以上、更に好ましくは0.68dl/g以上であり、1.5dl/g以下、好ましくは1.4dl/g以下である。
本発明のペレットの固有粘度は通常この範囲であり、また、固有粘度がこの範囲である場合、本発明の効果が大きい。
【0069】
一般に、ポリエステルのペレットを結晶化させると、その最表面に厚さ10μm程度のトランスクリスタル層が生成し、それ以外の部分は、通常、直径が5〜100μm程度の球晶を有する結晶層(本発明においては「内部結晶層」という)となる(図2参照)。
これに対し、本発明のペレットは、トランスクリスタル層と内部結晶層との間に、結晶核や直径が5μm未満の微細な球晶を含有する結晶層を有することを特徴とする(図1参照)。
本発明においては、この結晶層のことを、「含有される球晶の直径が5μm未満である表面結晶層」、あるいは、単に「表面結晶層」といい、また、「表面結晶層の厚さ」とは、この「表面結晶層」の厚さにトランスクリスタル層の厚さを加えたものとする。
【0070】
本発明のペレットは、含有される球晶の直径が5μm未満である表面結晶層を有し、表面結晶層の厚さが15μm以上、好ましくは20μm以上、更に好ましくは25μm以上であり、110μm以下、好ましくは105μm以下である。ここで、表面結晶層の厚さが15μm未満の場合、表面結晶層中の非晶部分により生ずるべたつきの抑制が不十分となり、ペレット同士の融着抑制効果が発現しないため、好ましくない。また、110μmを超える場合、固相重縮合時に生じる副生成物がペレット外に排出される速度が低下するために、固相重縮合反応の速度が低下してしまうため、好ましくない。
熱水処理の温度や時間等を適宜選択して(T−Tg)tの値を調整することにより、表面結晶層の熱さを所望の範囲とすることが可能である。
【0071】
本発明のペレットの表面結晶層の厚さは、以下の方法により、光学顕微鏡にてペレットの断面を観察することで測定する。
【0072】
結晶化後のペレット1粒を、全体にエポキシ樹脂(コニシ社製ボンドクイック5)で密着被覆し、40℃のオーブン中で2時間放置することでエポキシ樹脂を硬化させ、測定用試料とする。これをライツ社製光学顕微鏡用ミクロトームの刃に対してペレット表面部分が垂直になるよう固定し、チップ中心付近を厚さ約5μmに切り出す。得られた切片をピンセットでスライドガラス上に取り出し、オイル浸漬後カバーガラスを載せ加圧して平滑にしてペレット断面観察試料とする。ペレット断面観察試料を偏光顕微鏡のクロスニコル下で観察しフォーカスを合わせ、表面付近の結晶の形態をポラロイドフィルムにより倍率400倍で写真撮影する。撮影された写真において、直径が5μm以上の球晶を含有する部分を内部結晶層と見做し、内部結晶層の最外面とペレット表面との垂直距離を測定し、光学顕微鏡用10μmスケールにより補正し表面結晶層の厚さとする。
なお、本方法によって定量的に測定できる長さの下限は5μmであるため、表面結晶層に含有される球晶の直径は、定量的に測定することはできない。
【0073】
本発明のペレットの表面結晶層の厚さは、好ましくはペレットの短径の40%以下、更に好ましくは35%以下である。ペレットの短径に対する表面結晶層の厚さがこの範囲である場合、固相重縮合速度の低下がなく、一層好ましい。ここで、「ペレットの短径」とは、ペレットの形状に応じ、以下の通り定義する。
即ち、ペレットが球状の場合はその直径、ペレットが半球状の場合はその半径、ペレットが楕円球状の場合はその最短径である。また、ペレットが楕円柱(円柱を含む)、直方体(正六面体を含む)、及びこれらの中間の形状を有する場合は、底面の短径又は短辺と、高さのうち、長くない方である。ここで、「楕円柱」とは、底面が楕円形を有する柱体のことであり、「直方体」とは、底面が長方形を有する柱体のことである。また、「これら中間の形状」とは、底面が、底面の長径と短径に等しい長辺と短辺を有する長方形に内接する形状を有する柱体のことである。
【0074】
本発明のペレットは、本発明のポリエステル樹脂の製造方法により、より効率的に製造することができる。
具体的には、例えば固有粘度が0.10dl/g以上1.0dl/g以下であり、密度が1.36g/cm以下であるポリエステルプレポリマーペレットを、該ポリエステルプレポリマーペレットのガラス転移温度より高く100℃未満の温度の熱水に、前記式(1)を満たす条件で接触させる熱水処理を行い、その後、脱水して付着水を除去後、ペレットを攪拌下又は流動下、120℃以上200℃以下の温度、1〜60分間の保持時間で結晶化させることにより、本発明の結晶化ポリエステルプレポリマーペレットを、より効率的に得ることができる。
また、この結晶化ポリエステルプレポリマーペレットを、不活性ガス雰囲気下、190℃以上245℃以下の温度、1〜30時間の保持時間で固相重縮合させて、固有粘度を0.60dl/g以上1.5dl/g以下とすることにより、本発明のポリエステル樹脂ペレットを、より効率的に得ることができる。
この結晶化工程及び固相重縮合工程において、温度、圧力及び保持時間等を適宜調整することで、所望の固有粘度を有するポリエステル樹脂ペレットを得ることができる。
【0075】
本発明のペレットの別の製造方法としては、前記製造方法における熱水処理条件を変えて、例えば、ポリエステルプレポリマーペレットのTg以下の温度の水にポリエステルプレポリマーペレットを長時間浸漬する方法、エタノールやアセトン等の有機溶剤に浸漬する方法、100℃以上の蒸気と接触させる方法等が挙げられる。しかし、これらの方法は、処理に長時間を要したり、有機溶剤の除去装置が必要であったり、処理中にペレット同士が融着しやすいといった問題がある場合がある。従って、本発明のポリエステル樹脂の製造方法により本発明のペレットを得ることが、最適な方法と言える。
【実施例】
【0076】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。尚、以下の実施例中「部」とあるのは質量部を意味する。
又、本発明における各種物性の測定方法及び評価方法は以下に示すとおりである。
【0077】
(1) 固有粘度(IV)
試料約0.25gを、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(質量比 1/1)の混合溶媒約25mlに、濃度が1.00×10−2kg/lとなるように、非晶状態のポリエステルプレポリマーは110℃、30分で、加熱処理後のポリエステルプレポリマー又はポリエステルは140℃、30分でそれぞれ溶解させた後、30℃まで冷却し、全自動溶液粘度計(センテック社製「2CH型DJ504」)にて、濃度が1.00×10−2kg/lの試料溶液及び溶媒のみの落下秒数を測定し、下式により算出した。
IV=[(1+4Kηsp0.5−1]/(200KC)
ここで、 ηsp=η/η−1 であり、ηは試料溶液の落下秒数、ηは溶媒の落下秒数、Cはポリマー溶液濃度(kg/L)、Kはハギンズの定数である。Kは0.33を採用した。
【0078】
(2) 密度
試料の密度は、測定セルに試料6〜8gを精秤し、測定温度23℃にて乾式自動密度測定装置(島津製作所製「Accupyc1330」)を用いて測定した。
【0079】
(3) 末端カルボキシル基濃度 (AV)
試料を粉砕した後、熱風乾燥機にて140℃で15分間乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した試料から、0.1gを精秤して試験管に採取し、ベンジルアルコール3mLを加えて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら195℃、3分間で溶解させ、次いで、クロロホルム5mLを徐々に加えて室温まで冷却した。この溶液にフェノールレッド指示薬を1〜2滴加え、乾燥窒素ガスを吹き込みながら攪拌下に、0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で滴定し、黄色から赤色に変じた時点で終了とした。また、ブランクとして、ポリエステル樹脂試料を使用せずに同様の操作を実施し、これらの結果を用いて以下の式により末端カルボキシル基濃度を算出した。
AV(当量/トン)=(A−B)×0.1×f/W
〔ここで、Aは、試料を用いた場合の滴定に要した0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、Bは、ブランクでの滴定に要した0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、Wは、ポリエステル樹脂試料の量(g)、fは、0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価である。〕
なお、0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価(f)は、試験管にメタノール5mLを採取し、フェノールレッドのエタノール溶液を指示薬として1〜2滴加え、0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液0.4mLで変色点まで滴定し、次いで、力価既知の0.1規定の塩酸を標準液として0.2mL採取して加え、再度、0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で変色点まで滴定し(以上の操作は、乾燥窒素ガスを吹き込みながら行った。)、以下の式により算出した。
力価(f)=0.1規定の塩酸の力価×0.1規定の塩酸の採取量(μL)
/0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の滴定量(μL)
【0080】
(4) ジエチレングリコール(DEG)共重合量(モル%)
試料となるポリエステルプレポリマー粒子5.00gに、4規定−水酸化カリウム/メタノール溶液50mLを加えて還流冷却器をセットし、マグネチックスターラ付きホットプレート(表面温度200℃)上で攪拌しながら、2時間加熱還流し加水分解する。放冷後、高純度テレフタル酸約20gを加えて、十分振とうして中和し、pHを9以下としたスラリーを、グラスフィルター(11G−4)を用いて濾過した後、メタノール2mLで2回洗浄して濾液と洗液を合わせ、ガスクロマトグラフィーへの供試液とする。供試液1μlをマイクロシリンジにて、島津製作所社製ガスクロマトグラフィー(形式GC−14APF)に注入し、エチレングリコール(EG)及びジエチレングリコール成分のピークの面積から、全グリコール成分に対するジエチレングリコール成分のモル%を、下式に従い計算した。
DEGの共重合モル%=(ADEG×CfDEG)/(Σ(A×C))×100
DEG : ジエチレングリコール成分の面積(μV・秒)
fDEG : そのグリコール成分の補正係数
A : 各グリコール成分の面積(μV・秒)
: 各グリコール成分の補正係数
【0081】
(5) イソフタル酸共重合量(モル%)
核磁気共鳴装置(日本電子社「JNM−EX270型」)を用いて、試料となるポリエステルプレポリマー粒子をトリフルオロ酢酸に溶解させた溶液のH−NMRを測定して各ピークを帰属し、ピークの積分値から、全カルボン酸成分に対するイソフタル酸成分のモル%を共重合量とした。
【0082】
(6) ガラス転移温度(Tg)
パーキンエルマー社製示差走査熱量計「DSC7」を用い測定した。乾燥したプレポリマー10mgを、フェザー製ステンレス剃刀刃を用いて可能な限り剪断をかけずに切り出し、アルミニウム製固体用標準パンに入れて作製した試料をサンプルとした。ブランクには空のパンを用い、窒素雰囲気下、室温から昇温速度20℃/分で300℃まで昇温した。Tgは、熱量曲線のガラス転移による比熱変化挙動から求められる。具体的にはガラス転移による比熱変化の中間点での接線と比熱変化前の点での接線との交点の温度をTgとした。
【0083】
(7) 平均粒径
JISK0069に記載の乾式ふるい分け試験法により、積算分布曲線を作成し、積算百分率が50%になるときの値を平均粒径とした。
【0084】
(8) 表面結晶層の厚さ測定
結晶化後のペレット1粒を、全体にエポキシ樹脂(コニシ社製ボンドクイック5)で密着被覆し、40℃のオーブン中で2時間放置することでエポキシ樹脂を硬化させ、測定用試料とした。
これをライツ社製光学顕微鏡用ミクロトームの刃に対してペレット表面部分が垂直になるよう固定し、チップ中心付近を厚さ約5μmに切り出した。得られた切片をピンセットでスライドガラス上に取り出し、オイル浸漬後カバーガラスを載せ加圧して平滑にしてペレット断面観察試料とした。
ペレット断面観察試料を偏光顕微鏡のクロスニコル下で観察しフォーカスを合わせ、表面付近の結晶の形態をポラロイドフィルムにより倍率400倍で写真撮影した。
撮影された写真において、直径が5μm以上の球晶を含有する部分を内部結晶層と見做し、内部結晶層の最外面とペレット表面との垂直距離を測定し、光学顕微鏡用10μmスケールにより補正し結晶表面層の厚さとした。
なお、本方法によって定量的に測定できる長さの下限は5μmであるため、表面結晶層に含有される球晶の直径は、定量的に測定することはできない。
【0085】
(9) 熱水処理後融着評価
プレポリマーペレット15gに熱水処理を行い、熱水処理後のペレット全量を直径160mm、深さ45mmの半球面形のざるに抜き出し、空冷した後に、プレポリマーペレットが融着し合い10粒以上が1つの塊となった塊が存在した場合、融着あり(×)とし、全く融着が観察されないか、10粒未満の塊のみしか存在しないものを融着なし(○)とした。
【0086】
(10) 加熱融着試験
熱水処理後のプレポリマーペレット7gをバットに広げ、イナートオーブン中で143℃で、3分間加熱結晶化させた後、取出し空冷した。これを50mlビーカーに詰め、ビーカー開口部に1平方センチメートル当たり50gの圧が均一にかかるように錘を載せ、175℃に加熱し20Nリットル/分の流量で窒素を流通させたイナートオーブン中で30分間加熱した後に取り出した。室温に戻した後、ビーカーからペレットを取り出したとき、ペレットが融着し合い10粒以上が1つの塊となった塊が存在した場合、融着あり(×)とし、全く融着が観察されないか、10粒未満の塊のみしか存在しないものを融着なし(○)とした。
【0087】
(11) ヘーズ
固祖重縮合終了後のペレットを厚さ2mm、一辺が30mmの正方形のスペーサーに詰め、厚さ50μmのカプトンフィルムで両面を挟み、290℃に加熱したプレス機中で予備加熱のため5分間放置した後、10.1MPaで加圧して5分間放置後、直ちに25℃の水冷プレスに移し10.1MPaで加圧し3分間冷却した。
その後、取り出したプレスシートのヘーズをヘーズメータ(日本電色社製「NDH−300A」)を用いて測定した。
【0088】
(実施例1)
テレフタル酸及びエチレングリコールを、テレフタル酸13.0部とエチレングリコール7.29部となる様にスラリー調製槽に連続的に供給し、正リン酸0.00135部を前記調製物に連続的に加えてスラリーを調製した。該スラリーを第一段のエステル化反応槽へ連続的に供給し、略常圧下、260℃で連続的にエステル化反応を行い、エステル反応率84%のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート及びその低重縮合体を調製した。反応物を第二段のエステル化反応槽に連続的に供給し、二酸化ゲルマニウム0.00080部を該反応物に連続的に加えて、略常圧下、255℃で連続して反応を行い、エステル反応率95%のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート及びその低重縮合体を調製した。
【0089】
更に、反応物を第一段の重縮合反応槽に連続的に供給し、2.6kPaの減圧下、270℃で平均滞留時間1.2時間連続的に反応を行った。次いで、反応物を第二段の重縮合反応槽に連続的に供給し、0.5kPaの減圧下で278℃、平均滞留時間1.2時間として溶融重縮合反応を行い、引き続き第三段の重縮合反応槽で280℃、0.3kPaで平均滞留時間1.2時間として反応を行い、ポリエステルプレポリマーを得た。このポリエステルプレポリマーを、重縮合反応槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷後、カッターで切断してペレット状にすることにより、ポリエステルプレポリマーペレットを得た。
【0090】
このポリエステルプレポリマーペレットの固有粘度は0.64dl/g、密度は1.34g/cm、ガラス転移温度(Tg)は73℃、平均粒径は3.5mmであった。
【0091】
このプレポリマーペレットをウォーターバスにより83℃に加温した熱水中に投入し、30秒間攪拌しながら保持した後、直ちにざるに取り出して水分を切り、静置し空冷することにより熱水処理を行った。
熱水処理を行ったプレポリマーペレットを「熱水処理プレポリマーペレット」という。
【0092】
空冷後、熱水処理プレポリマーペレットに融着はみられなかった。
熱水処理プレポリマーペレットを用いて加熱融着試験したところ、融着はみられなかった。
【0093】
熱水処理プレポリマーペレットをステンレス製バットに広げ、20Nリットル/分の窒素気流下にて、イナートオーブン(ヤマトDN410I)中、160℃で3時間加熱して結晶化させた後、205℃まで10℃/分の速度で昇温し、205℃で20時間固相重縮合させ、次いで、室温まで冷却する加熱処理を行い、ポリエステル樹脂ペレットを得た。
このポリエステル樹脂ペレットの固有粘度は0.83dl/g、ペレット短径は2.8mm、表面結晶層の厚さは50μm、ヘーズは2.3%であった。
これらの結果をまとめて表1に示す。
【0094】
(実施例2)
実施例1において、スラリー調製槽に加えるリン化合物をエチルアシッドホスフェートとしてその量を0.000273部に変更し、第二段のエステル化反応槽に加える化合物を酢酸マグネシウム四水和物としてその量を0.000535部に変更し、更に、テトラ−n−ブチルチタネート0.00429部を第二段のエステル化反応槽から第一段の重縮合反応槽へ移送する途中の配管へ加えた以外は、実施例1と同様にしてポリエステルプレポリマーペレットを得た。
このポリエステルプレポリマーペレットの固有粘度は0.62dl/g、密度は1.34g/cm、ガラス転移温度Tgは72℃、平均粒径は3.7mmであった。
【0095】
このプレポリマーペレットをウォーターバスにより83℃に加温した熱水中に投入し、30秒間攪拌しながら保持した後、直ちにざるに取り出し、水分を切り、静置し空冷することにより熱水処理を行った。空冷後、この熱水処理プレポリマーペレットに融着はみられなかった。
この熱水処理プレポリマーペレットの加熱融着試験結果、及び、実施例1と同条件で加熱処理を行った結果をまとめて表1に示す。
【0096】
(実施例3)
実施例2において、スラリー調製槽に供給するジカルボン酸とジオールをテレフタル酸12.6部、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸0.473部、エチレングリコール7.31部に変更した以外は、実施例2と同様にしてポリエステルプレポリマーペレットを得た。
このポリエステルプレポリマーペレットの固有粘度は0.59dl/g、密度は1.34g/cm、ガラス転移温度Tgは70℃、平均粒径は2.4mmであった。
【0097】
このプレポリマーペレットをウォーターバスにより80℃に加熱した熱水中に投入し、80秒間攪拌しながら保持した後、直ちにざるに取り出し、水分を切り、静置し空冷することにより熱水処理を行った。空冷後、熱水処理プレポリマーペレットに融着はみられなかった。
この熱水処理プレポリマーペレットの加熱融着試験結果、及び、実施例1と同条件で加熱処理を行った結果をまとめて表1に示す。
【0098】
(比較例1)
実施例1で得られたポリエステルプレポリマーペレットを、熱水処理を行わない以外は実施例1と同条件にて、加熱融着試験、及び、加熱処理を行った。これらの結果をまとめて表1に示す。
この比較例1では、熱水処理を行わなかったため、表面結晶層の厚さが8μmと小さく、加熱融着試験で融着が見られた。
【0099】
(比較例2)
実施例1で得られたポリエステルプレポリマーペレットを、熱水処理の条件を表1の条件に変更した以外は実施例1と同条件にて、加熱融着試験、及び、加熱処理を行った。これらの結果をまとめて表1に示す。
この比較例2では、熱水処理で与える熱の総量に対応するパラメータ((T−Tg)t)が12000と大きかったため、空冷後のプレポリマーペレットには融着がみられた。また、表面結晶層の厚さが190μmと大きく、実施例1に比較して固相重縮合速度が低下する結果となった。
【0100】
(比較例3)
実施例1で得られたポリエステルプレポリマーペレットを、熱水処理の条件を表1の条件に変更した以外は実施例1と同条件にて、加熱融着試験、及び、加熱処理を行った。これらの結果をまとめて表1に示す。
この比較例3では、熱水処理における熱水の温度がポリエステルプレポリマーペレットのTgより低かったため、表面結晶層の厚さが8μmと小さく、加熱融着試験で融着が見られた。
【0101】
(比較例4)
実施例1で得られたポリエステルプレポリマーペレットを130℃に加温した蒸気中で30秒間保持した後、直ちにざるに取り出し、水分を切り、静置し空冷する処理を行った。空冷後のペレットには融着がみられた。
この処理を行ったプレポリマーペレットの加熱融着試験結果、及び、実施例1と同条件で加熱処理を行なった結果をまとめて表1に示す。
この比較例4では、熱水処理に相当する処理で130℃という高温の蒸気に接触させたため、表面結晶層の厚さが150μmと大きく、実施例1に比較して固相重縮合速度が低下する結果となった。
【0102】
(比較例5)
実施例2で得られたポリエステルプレポリマーペレットを、熱水処理の条件を表1の条件に変更した以外は実施例2と同条件にて、加熱融着試験、及び、加熱処理を行った。これらの結果をまとめて表1に示す。
この比較例5では、熱水処理で与える熱の総量に対応するパラメータ((T−Tg)t)が21600と大きかったため、表面結晶層の厚さが210μmと大きく、実施例2に比較して固相重縮合速度が低下する結果となった。
【0103】
【表1】

【0104】
(実施例4)
<チタン−マグネシウム−リン系重縮合触媒の調製>
300mL摺り栓付きの三角フラスコ中に、エタノール(特級、純度99.6%以上)を50g入れ、次に酢酸マグネシウム・4水和物8.58gを添加し、スターラーで20分間攪拌して、ほぼ均一に溶解させた。次に、ジブチルホスフェート(商品名:DBP、城北化学工業社製)を15分掛けて8.41g入れ、更に、テトラ−n−ブトキシチタネート13.64gを5分掛けて添加し、10分間攪拌することで均一溶液を得た。次に、エバポレーターを用いて、オイルバスを60℃に設定して、内容物が55.61gとなるまでエタノールを留去した。次に、エチレングリコール31.56gを添加した。このエチレングリコール溶液中の低沸物を圧力1.3kPaA(Aは絶対圧力であることを示す)にて40分掛けて留去し、48.62gの流動性あるチタン−マグネシウム−リン系重縮合触媒を得た。この重縮合触媒液中のチタン濃度は、チタン原子として3.8重量%であった。
【0105】
<ポリエステルプレポリマーペレットの製造>
撹拌機、エチレングリコール仕込み配管及びテレフタル酸仕込み配管を具備するスラリー調製槽;スラリーやエステル化反応物を各エステル化反応槽へ移送する各配管;撹拌機、分離塔、原料受入れ口、触媒仕込み配管、反応物移送配管を具備する完全混合型第一及び第二エステル化反応槽;エステル化反応物(オリゴマー)を溶融重縮合反応槽へ移送する配管;撹拌機、分離塔、オリゴマー受入れ口、触媒仕込み配管を具備する完全混合型第一溶融重縮合反応槽;撹拌機、分離塔、ポリマー受入れ口、ポリマー抜き出し口を具備するプラグフロー型第二及び第三溶融重縮合反応槽;プレポリマーを抜き出し口よりギヤポンプを介してダイプレートからストランド状に取り出し水冷下ストランドカットする粒子化装置(ストランドカッターはリーター・オートマチック社製ペレタイザー(P−USG100))を備えたポリエステルプレポリマー連続製造装置を用いた。
前記のポリエステルプレポリマー連続製造装置を用いて、ジカルボン酸とジオールとをエステル化反応し、更に溶融重縮合反応することにより得られた溶融状態のポリエステルプレポリマーをダイプレートからストランド状に取り出し切断することで、ポリエステルプレポリマーペレットを製造した。具体的には以下の通りである。
【0106】
スラリー調製槽にて、得られるポリエステルに対してチタン原子として4質量ppmとなる量のテトラ−n−ブチルチタネートを含有するテレフタル酸/イソフタル酸/エチレングリコール(モル比0.985:0.015:1.5)スラリーを調製した。また、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート400質量部をエステル化第一槽に仕込み窒素雰囲気下で溶融し、温度262℃、圧力96kPaG(Gは大気圧に対する相対圧力であることを示す)に保たれた中へ、前記のスラリー調製槽で調製されたスラリーを135質量部/時間で、ポリエステルとしての平均滞留時間が4.5時間になるように連続的に仕込み、分離塔から生成する水を留去しながらエステル化反応を行いつつ、反応液を連続的にエステル化第二反応槽へ移送した。
【0107】
第二エステル化反応槽では、温度260℃、圧力5kPaG下、滞留時間1.5時間でエステル化反応を行い、移送配管を通じ完全混合型第一溶融重縮合反応槽へ連続的に移送すると同時に、この移送配管に、上記にて調製したチタン−マグネシウム−リン系重縮合触媒のエチレングリコール希釈液(濃度:チタン原子として0.02質量%))を、得られるポリエステルプレポリマーに対して、チタン、マグネシウム、リンとしてそれぞれ4質量ppm、2質量ppm、2.6質量ppmとなる量を連続的に添加した。
【0108】
第一溶融重縮合反応槽では、温度270℃、圧力4.4kPaA(Aは絶対圧力であることを示す)下、滞留時間1.0時間にて反応を行い、移送配管を通じ第二溶融重縮合反応槽へ連続的に移送した。第二溶融重縮合反応槽では温度270℃、圧力4.4kPaA下、滞留時間1.0時間にて溶融重縮合反応を行い、移送配管を通じ第三溶融重縮合反応槽へ移送した。第三溶融重縮合反応槽では温度270℃、圧力4.4kPaA下、滞留時間0.8時間にて溶融重縮合反応を行った。
【0109】
このようにして得られた溶融ポリエステルプレポリマーをそのまま、ギヤポンプ及び抜き出し配管を通じてダイヘッドへ導き、ダイホールからストランド状に取り出し、水冷後、リーター・オートマチック社製ペレタイザー(P−USG100)により造粒した。造粒方法はストランドカット法であり、具体的には、ストランド状ポリエステルプレポリマーを水と接触させて冷却させながら、水と共にカッター方向に搬送し、カッター前に設置された一対の引取ロールにて挟むことで引き取り、カッターに供給し、固定歯と回転歯とを有するカッターにて切断することにより、ポリエステルプレポリマーペレットを得た。ここで、溶融ポリエステルプレポリマーの吐出量は100kg/時、温度は270℃とし、3mmφの円形ダイホールが6穴あるダイプレートから、水平方向から下向きに45°の角度を吐出方向として、ストランド状に吐出させた。
【0110】
このストランド状ポリエステルプレポリマーを、100mm以上の空冷距離を経てストランドカッターの水冷却ゾーンに着水させ、50℃の水で冷却しながら搬送し、引取ロールにて引き取り、カッターに供給した。ストランドの引取速度は3.2m/秒であり、カッターは、引取ロールと回転歯の回転数の比を調整し、ペレットの引取方向の長さが1.25mmとなるようにして粒子化した。
その結果、長さ1.25mm、幅1.2mm、厚さ0.9mmのほぼ直方体の両端に半円柱を付けた形状に近い楕円柱状のポリエステルプレポリマーペレットを得た。このポリエステルプレポリマーペレットを「プレポリマーペレット(A)」という。
【0111】
このプレポリマーペレット(A)の固有粘度は0.29dL/g、末端カルボキシル基濃度は26当量/トン、密度は1.34g/cm、ガラス転移温度(Tg)は72℃、イソフタル酸の共重合量は1.5モル%、ジエチレングリコールの共重合量は2.0モル%、平均粒径は1.1mmであった。
【0112】
<熱水処理工程>
このプレポリマーペレット(A)をウォーターバスにより83℃に加温した熱水中に投入し、30秒間攪拌しながら保持した後、直ちにざるに取り出して水分を切り、静置し空冷することにより熱水処理を行った。
熱水処理を行ったプレポリマーペレット(A)を「熱水処理プレポリマーペレット(A)」という。
【0113】
空冷後、熱水処理プレポリマーペレット(A)に融着はみられなかった。熱水処理プレポリマーペレット(A)を用いて加熱融着試験したところ、融着はみられなかった。
【0114】
<結晶化工程>
熱水処理プレポリマーペレット(A)30gを、底面が130mm×170mmの角形で、深さが30mmのステンレス製バットに広げて置き、これを内部のガス温度が180℃のイナートオーブン(タバイエスペック社製IPHH−201M型)に入れ、イナートオーブンの内部に流通させる窒素の流量を50NL/分、温度を180℃として、1時間の結晶化処理を行った。
結晶化処理を行った熱水処理プレポリマーペレット(A)を「結晶化処理プレポリマーペレット(A)」という。
【0115】
この結晶化処理プレポリマーペレット(A)の固有粘度は0.29dL/g、ペレット短径は0.9mm、表面結晶層の厚さは25μmであった。
【0116】
<加熱処理装置>
上記の、結晶化処理プレポリマーペレット(A)を、図3に示すガラス製加熱処理装置を用いて加熱することにより固相重縮合を行った。
以下、該加熱処理装置について説明する。
図3に示す加熱処理装置において、試料(結晶化処理プレポリマーペレット(A))は、試料充填部の内径が45mmのガラス製加熱処理管(1)に充填されている。加熱処理管(1)には、ガス流量計(2)、窒素導入管(3)、窒素予熱管(4)を経由して、オイルバス(5)に充填されたオイルにより加熱された窒素が導入される。導入された窒素は、加熱処理管(1)下部にある分散板(6)により分散され、加熱処理管(1)内部で略均一な線速度を有する上昇流となって、試料層(7)を通過する。試料層(7)を通過した窒素は、加熱処理管(1)上部にあるフィルター(8)を経由して、ガスパージ口(9)から加熱処理管(1)の外部に排出される。加熱処理管(1)は枝管(10)を有しており、その上部にある開口部(通常はガラス栓にて閉止してある)から試料の投入や試料の採取が可能である。また、加熱処理管(1)内部の試料の温度は、熱電対(11)を備えた温度計(12)で測定できる。本実施例の範囲の温度、空塔線速度においては、加熱処理管(1)の内部温度は、オイルバス中のオイル温度よりも2℃低い温度となるため、目標とする固相重縮合温度に対して、オイルの温度は2℃高い温度に調節した。
【0117】
<固相重縮合工程>
上記の加熱処理装置の加熱処理管(1)に、枝管(10)の開口部より、上記結晶化処理プレポリマーペレット(A)30gを仕込み、窒素を流通して内部を窒素置換した。その後、加熱処理管(1)内の窒素の空塔線速度(ここで「空塔線速度」とは、試料層の空塔線速度を意味する(以下同様))が210℃で0.30m/秒となるように窒素の流量をガス流量計(2)で設定し、オイルの温度が212℃に調節された第一のオイルバス(5)に加熱処理装置を浸漬した。この時点を固相重縮合工程の開始とする。
【0118】
固相重縮合工程の開始から2時間経過後、窒素の空塔線速度が235℃で1.0m/秒となるように窒素の流量を変更し、オイルの温度が237℃に調節された第二のオイルバス(5)に加熱処理装置を移した。
【0119】
第二のオイルバス(5)に加熱処理装置を移してから10分経過後、窒素の空塔線速度が220℃で0.30m/秒となるように窒素の流量を変更し、オイルの温度が222℃に調節された第三のオイルバス(5)に加熱処理装置を移した。
【0120】
第三のオイルバス(5)に加熱処理装置を移してから16時間経過後、加熱処理管(1)をオイルバスから取り出し、室温まで冷却し、ポリエステル樹脂ペレットを得た。
このポリエステル樹脂ペレットの固有粘度は0.78dL/g、ペレット短径は0.9mm、表面結晶層の厚さは25μm、ヘーズは3.2%であった。
これらの結果をまとめて表2に示す。
【0121】
(実施例5、6)
実施例4で得られたプレポリマーペレット(A)を、熱水処理の条件を表2の条件にそれぞれ変更した以外は実施例4と同条件にて、加熱融着試験、及び、加熱処理(結晶化及び固相重縮合)を行った。
これらの結果をまとめて表2に示す。
【0122】
(実施例7,8)
実施例4,5において、第三のオイルバス(5)での加熱処理条件のうち、窒素の空塔線速度を230℃で0.30m/秒とし、オイルの温度を232℃としたこと以外は、それぞれ同条件にて加熱融着試験及び加熱処理(結晶化及び固相重縮合)を行った。
これらの結果をまとめて表2に示す。
【0123】
(比較例6)
実施例4で得られたプレポリマーペレット(A)を、熱水処理を行わない以外は実施例4と同条件にて、加熱融着試験、及び、加熱処理(結晶化及び固相重縮合)を行った。
これらの結果をまとめて表2に示す。
この比較例6では、熱水処理を行わなかったため、表面結晶層の厚さが6μmと小さく、加熱融着試験で融着が見られた。
【0124】
(比較例7)
実施例7において、熱水処理を行わない以外は実施例7と同条件にて、加熱融着試験、及び、加熱処理(結晶化及び固相重縮合)を行った。
これらの結果をまとめて表2に示す。
この比較例7では、熱水処理を行わなかったため、表面結晶層の厚さが5μmと小さく、加熱融着試験で融着が見られた。
【0125】
【表2】

【0126】
以上より、本発明によれば、固相重縮合速度を低下させることなく、ポリエステルプレポリマーペレットを結晶化や固相重縮合等の加熱処理に供する際の融着を抑制し、また、熱成形により透明性の高い成形品を得ることが可能なポリエステル樹脂を得ることができることが分かる。
【0127】
なお、実施例3で得られた熱水処理プレポリマーペレットを、加熱融着試験用にイナートオーブン中で143℃で3分間加熱結晶化させた後、取り出し空冷したペレットの表面結晶層、及び内部結晶層を前述の方法で光学顕微鏡で観察した際の光学顕微鏡写真を図1に、また比較例6のプレポリマーペレット(A)を、加熱融着試験用にイナートオーブン中で143℃で3分間加熱結晶化させた後、取り出し空冷したペレットのトランスクリスタル層及び内部結晶層を前述の方法で光学顕微鏡で観察した際の光学顕微鏡写真を図2に示す。
図1より、実施例3で得られた結晶化処理プレポリマーペレットは、ペレットの最表面と、直径12μm程度の球晶を有する内部結晶層との間に、結晶核や直径が5μm未満の微細な球晶を含有する表面結晶層を有し、この表面結晶層の厚さは90μm程度であることが分かる。
一方、図2より、比較例6で得られた結晶化ポリエステルプレポリマーペレットは、最表面に厚さ6μm以下のトランスクリスタル層を有し、その下層は直径5〜20μm程度の球晶を有する結晶層であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の結晶化ポリエステルプレポリマーペレットの表面結晶層と内部結晶層を示す光学顕微鏡写真である。
【図2】通常の結晶化ポリエステルプレポリマーペレットのトランスクリスタル層と内部結晶層を示す光学顕微鏡写真である。
【図3】実施例及び比較例で用いた加熱処理装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0129】
1:加熱処理管
2:ガス流量計
3:窒素導入管
4:窒素予熱管
5:オイルバス
6:分散板
7:試料層
8:フィルター
9:ガスパージ口
10:枝管
11:熱電対
12:温度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸成分とジオール成分とを溶融重縮合して得られたポリエステルプレポリマーペレットに熱水処理及び加熱処理をこの順に行うポリエステル樹脂の製造方法において、
該熱水処理を行うに際し、固有粘度が0.10dl/g以上1.0dl/g以下で、密度が1.36g/cm以下のポリエステルプレポリマーペレットを、該ポリエステルプレポリマーペレットのガラス転移温度より高く100℃未満の温度の熱水に、以下の式(1)を満たす条件で接触させることを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
40 ≦ (T−Tg)t ≦ 6000 (1)
(式中、tは熱水処理時間(秒)、Tは熱水温度(℃)、Tgはポリエステルプレポリマーペレットのガラス転移温度(℃)を示す。)
【請求項2】
前記ポリエステルプレポリマーペレットが、チタン化合物及び/又はゲルマニウム化合物を含む重縮合触媒を用いた溶融重縮合により得られたものであることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記ポリエステルプレポリマーペレットの平均粒径が0.5mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記熱水処理時間t(秒)が、1秒以上300秒以下であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記加熱処理を、120℃以上245℃以下の温度で行うことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記加熱処理が結晶化工程を含み、該結晶化工程において、厚さが15μm以上110μm以下の表面結晶層を有し、固有粘度が0.10dl/g以上1.0dl/g以下の結晶化ポリエステルプレポリマーペレットを得ることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記加熱処理が固相重縮合工程を含み、該固相重縮合工程において、厚さが15μm以上110μm以下の表面結晶層を有し、固有粘度が0.60dl/g以上1.5dl/g以下のポリエステル樹脂ペレットを得ることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記加熱処理が、結晶化工程と固相重縮合工程とをこの順に含むことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記結晶化工程において、厚さが15μm以上110μm以下の表面結晶層を有し、固有粘度が0.10dl/g以上0.40dl/g以下の結晶化ポリエステルプレポリマーペレットを得、前記固相重縮合工程において、厚さが15μm以上110μm以下の表面結晶層を有し、固有粘度が0.60dl/g以上1.5dl/g以下のポリエステル樹脂ペレットを得ることを特徴とする請求項8に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記熱水処理に供されるポリエステルプレポリマーペレットの末端カルボキシル基濃度が50当量/トン以下である請求項9に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項11】
厚さが15μm以上110μm以下の表面結晶層を有し、固有粘度が0.10dl/g以上1.0dl/g以下である結晶化ポリエステルプレポリマーペレット。
【請求項12】
厚さが15μm以上110μm以下の表面結晶層を有し、固有粘度が0.60dl/g以上1.5dl/g以下であるポリエステル樹脂ペレット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−56918(P2008−56918A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200993(P2007−200993)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ポラロイド
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】