説明

ポリエステル樹脂組成物

本発明は、2液型樹脂系に有用な硬化剤組成物に関する。上記硬化剤組成物は、反応性キャリア及び過酸化物触媒を含む。上記硬化剤組成物は、6月超の貯蔵寿命を有することができる。2液型ポリエステル樹脂系及びポリエステル樹脂組成物の製造方法がまた、開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂と、プライマー、ボディーフィラー、接着剤、並びに装置及び乗り物、例えば、自動車、船舶用乗物、農業用乗物及び空輸用乗物、及び産業用装置のための金属及びプラスチック基材のための表面補修及び表面仕上げに用いられるパテとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリエステル補修市場は、損傷補修の分野において、明確な方法を利用してきた。不飽和ポリエステル樹脂、プライマー、充填剤、接着剤又はパテは、損傷した範囲に新しい表面をつけ、そして作り直すために用いられている。理解を簡単にするため、用語「樹脂」は、以下の記載において用いられるが、当該用語は、硬化した樹脂及びプレポリマー(未硬化の樹脂)、プライマー、充填剤、接着剤及びパテを含むことが理解される。上記樹脂の触媒化(catalyzation)及び適用のための方法は、それが科学であるのと同様に、当業者によく知られている。これは、大量の不飽和ポリエステル樹脂を適切に硬化させるために用いられている、非常に少量の過酸化物硬化剤(触媒)に部分的に起因する。上記樹脂を硬化させるために必要な、最適な過酸化物濃度は、当該樹脂100重量部当たり、約1〜3重量部であるのが一般的である。上記樹脂及び過酸化物は、別個の容器、典型的には、上記充填剤用の大きな缶(8オンス〜55ガロン)と、上記過酸化物触媒用の小さなチューブ(0.25オンス〜4ガロン)とに包装されている。
【0003】
使用者は、可変量の樹脂を、カップ内または混合ボード上に分注し、そして適切な触媒化のための正確な量であると本質的に推量する過酸化物触媒を添加する。上記樹脂の不適切な触媒化の結果には、上記基材への接着の低下、未硬化の表面(粘着性)、過度の熱の発生による樹脂のクラッキング、上塗りの変色を発生させる未硬化の樹脂有機物の次のコーティングへの移動、ブリスターを発生させる太陽光又は塗料焼付システムに由来する紫外線又は熱エネルギーの存在下での未硬化材料のガス発生、及び上塗りへの他の損傷、並びに上記補修の除去及び置換を要求することがある他の課題が含まれる。
不飽和ポリエステル樹脂に対するさらに妥当な混合比を有する過酸化物触媒を作り出すことは難しい。一般的なベンゾイル及びケトンパーオキサイドは、キャリアとして、可塑剤、例えば、フタレートを用いる。フタレートは非反応性であり、そして市販用途における過酸化物触媒の最大約50%に該当する。上記キャリアの非反応性の性質は、100部の不飽和樹脂あたり、1.5〜3部の濃度で硬化の実施に悪影響を与えないが、100部当たり5部超の濃度は、硬化を妨害する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記樹脂及び触媒成分の間のさらに同等の混合比を提供するポリエステル樹脂組成物の必要性が、当業界にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、2液型樹脂系に有用な硬化剤組成物を提供することにより、この必要性を満足する。上記硬化剤組成物は、反応性キャリアと、過酸化物触媒とを含む。好ましくは、上記硬化剤組成物は、6月超の貯蔵寿命を有する。
【0006】
本発明の別の態様は、2液型ポリエステル樹脂系である。
当該2液型ポリエステル樹脂組成物には、
反応性キャリア及び過酸化物触媒を含む硬化剤組成物;及び
反応性ポリマー、反応性モノマー、又はその組み合わせを含む樹脂組成物:
が含まれる。
さらに、好ましくは,上記硬化剤組成物は、6月超の貯蔵寿命を有する。
【0007】
本発明の別の態様は、ポリエステル樹脂組成物を製造するための方法である。
当該方法には、反応性キャリア及び過酸化物触媒を含む硬化剤組成物を準備する段階;
反応性ポリマー、反応性モノマー、又はその組み合わせを含む樹脂組成物を準備する段階、ここで、上記硬化剤組成物:上記樹脂組成物の体積比は、約1:10〜約1:1である;そして
上記硬化剤組成物及び上記樹脂組成物を、約1:10〜約1:1の体積比で混合して、ポリエステル樹脂組成物を生成させる段階:
が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、金属基材、例えば、冷間圧延鋼、亜鉛メッキ鋼板及びアルミニウム、並びにプラスチック基材、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、シート状形成材料(sheet molding compound,SMC)、及びバルクモールディングコンパウンド(bulk molding compound,BMC)に適用することができる、ポリエステルプライマー、樹脂、充填剤、接着剤又はパテに関わる。
【0009】
目標は、触媒と反応せず、且つ過酸化物の存在下で安定化させることができ、且つ不可欠な硬化を保ちながら、不飽和ポリエステルと効果的に架橋することにより上記系内の反応性成分であることができる、上記触媒用のキャリアを特定することであった。上記キャリアの課題に対する理想の溶液は、不飽和ポリエステル系の既に一部である材料であろう。上記材料は、分注及び混合のために理想的であるように、妥当な粘性を有するべきである。さらに、上記材料は、長期間、例えば、6月超、又は1年超、又はより長期間、過酸化物の存在下で安定であるべきである。
【0010】
本発明は、非反応性キャリア(例えば、フタレート可塑剤)ではなく、反応性キャリアの使用に関わる。反応性キャリアを使用することにより、ブレンドの安定性の課題が顕著に大きくなる。上記反応性キャリアは、上記系内の反応性成分ではあるが、上記触媒単独の存在下で、当該反応性単体が安定化されうる。好ましくは、上記反応性キャリアは、未希釈の低粘度不飽和ポリエステル樹脂である。上記不飽和ポリエステルは、反応性希釈剤の不存在下で、当該粘度が実用的となる十分な低分子量を有するべきである。一般的に、上記粘度は、約10,000cps未満である。大部分の不飽和ポリエステルは、未希釈の状態で、室温で固体である。しかし、顔料分散用に設計された不飽和ポリエステルは、分子量が非常に小さい。例には、未希釈の、低粘度マレエート系又はフマレート系不飽和ポリエステルが含まれる。それらを、所望の貯蔵寿命の間、ケトン及びベンゾイルパーオキサイドの存在下で、有効に安定化させることができる。反応性希釈剤を用いて十分に希釈した樹脂と混合すると、それらは、100重量部の樹脂又は充填剤当たり、最大約100重量部の触媒分散物濃度を用いて、不可欠な硬化を提供する。
【0011】
触媒の樹脂に対する混合比を正確に測定することができると、不飽和ポリエステル補修製品の使用に関連する多くの共通課題が減るか又は排除され、そして上記製品の使用者への価値が高まるであろう。
本発明は、反応性キャリア(例えば、2液型樹脂系における上記硬化剤サイドとして用いるべき未希釈の低分子量不飽和ポリエステル)中に分散された過酸化物触媒の使用に関わる。
【0012】
好適な未希釈の不飽和ポリエステルには、短鎖不飽和脂肪族ジカルボン酸系ポリエステルが含まれるが、これらに限定されるものではない。好適な短鎖不飽和脂肪族ジカルボン酸系ポリエステルには、約100〜約10,000cps、一般的に約100〜約2,000cpsの範囲の粘度を有するマレエート及びフマレートが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
好適な過酸化物触媒には、ケトンパーオキサイド、クミルヒドロパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシケタール、及びパーオキシジカーボネートが含まれるが、これらに限定されるものではない。好適なケトンパーオキサイドには、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,4−ペンタジオンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
上記硬化剤サイドはまた、充填剤、例えば、タルク、カーボネート、顔料、レオロジー調整剤、ミクロスフェア、顔料湿潤及び分散剤、パラフィン及び繊維強化材を含むことができる。
上記系の樹脂サイドは、反応性ポリマー、若しくはモノマー、又はこれら2種の組み合わせを含むことができる。好適な反応性ポリマーには、不飽和ポリエステル、ビニルエステル及びフリーラジカル機構の手段により重合する複合型のエポキシ−ポリエステル及びアクリレート−ポリエステル系が含まれるが、これらに限定されるものではない。好適なモノマーには、スチレン、ビニルトルエン、他のメチルスチレンモノマー、メチルメタクリレート、及び他のアクリレートモノマーが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
上記樹脂サイドはまた、充填剤、例えば、タルク、カーボネート、顔料、レオロジー調整剤、ミクロスフェア、顔料湿潤及び分散剤、パラフィン及び繊維強化材を含むことができる。
【0016】
上記充填剤は、2種の上記組成物の体積が、おおよそ等しくなるように、硬化剤サイド及び樹脂サイドに含ませることができる。上記硬化剤サイド:上記樹脂サイドの体積比は、一般的に約1:10〜約1:1、典型的には約1:10〜約1:2である。この範囲内の体積比を用いると、先行技術系の当て推量を排除し、用いられる樹脂の量に関して、正しい量の硬化剤を供給することがより容易になる。
【0017】
各サイドの体積の制御は、混合管アプリケーター(mixing tube applicator)、例えば、二連式混合管(double barrel mixing tube)を用いて可能となる。上記二連式混合管アプリケーターは、一方の側の硬化剤組成物と、他の側の樹脂組成物とを有する。プランジャーは、上記硬化剤組成物及び樹脂組成物を、それらを混合し且つ適用することができるような適切な量で分注する。
本発明をさらに容易に理解することができるように、本発明を具体的に説明することを目的とするが、それらの範囲を制限するものではない次の例を参照する。
【実施例】
【0018】
例1
上記系の硬化剤サイド(過酸化物分散物)を、種々の反応性キャリア:
モノマーを用いて希釈されていない短鎖ジプロピレングリコール(DPG)マレエート(1);
ジペンタエリトリトールペンタアクリレートモノマー(2);及び
ジグリシジルエーテルビスフェノールA(3)
を用いて調製した。
9%の活性酸素を有する2種のメチルエチルケトンパーオキサイド溶液(1及び2)、並びに50%ベンゾイルパーオキサイドペースト(3)を用いた。
酸化防止剤、2,6−ジ−tertiary−ブチル−n,n−ジメチルアミノ−パラクレゾール(1)をまた試験した。
【0019】
【表1】

【0020】
試料を室温で保持した。
全ての値は、重量%を表している。
【0021】
アクリレートモノマー(配合C及びD)を用いると、ベンゾイルパーオキサイド及びメチルエチルケトンパーオキサイドの両方を用いた混合物の安定性が減った。上記ケトンパーオキサイドは、追加の酸化防止剤又は安定化剤の不存在下で、3年超の貯蔵寿命の間、低粘度で未希釈の不飽和ポリエステル中で安定であった。
【0022】
例2
モノマーを用いて希釈されていない短鎖DPGマレエート(反応性キャリア1)中のベンゾイルパーオキサイドの安定性を決定するための検討を行った。追加の酸化防止剤,2,6−ジ−tertiary−ブチル−パラクレゾール(BHT)(2)をまた試験した。
【0023】
【表2】

【0024】
試料を室温で保持した。
全ての値は、重量%を表している。
【0025】
予想したとおり、対照(配合D)は、最小の安定性を有し、そして酸化防止剤が添加されると、安定性が増した。2種の酸化防止剤の組み合わせ(配合C)は、優れた結果を示した。この試験に基づくと、上記ベンゾイルパーオキサイド系を、1年、そして恐らく1年超に近い期間、うまく安定化させることができるであろう。
【0026】
例3
この試験は、上記硬化剤組成物の充填剤として、ソーダ石灰ボロシリケートミクロスフェアの効果を試験するために設計された。ガラスミクロスフェアを用いると、上記2成分系の樹脂組成物に関連して、上記硬化剤組成物の大きな容量の増加が可能となった。
【0027】
【表3】

【0028】
試料を室温で保持した。
全ての値は、重量%を表している。
【0029】
上記過酸化物は、充填剤、例えば、ミクロスフェアの存在下において、未希釈の低粘度不飽和ポリエステル樹脂中で安定化されうることを、当該結果は示している。
【0030】
例4
種々の混合比における典型的な試料配合を示す。
【0031】
【表4】

【0032】
全ての値は、重量%で表されている。
本発明の特定の実施形態を参照することにより、本発明を詳細に記載してきたが、添付の特許請求の範囲内に規定される本発明の範囲から外れることなく、改良及び変形が可能であることは明らかである。さらに具体的には、本発明のいくつかの態様を、好ましい又は特に有利であるものとして特定してきたが、本発明は、本発明のこれらの好ましい態様に必ずしも制限されるものでないことを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未希釈の不飽和ポリエステルを含む反応性キャリア;
過酸化物触媒;及び
任意選択の、少なくとも1種の充填剤:
から本質的に成る、2液型樹脂系に有用な硬化剤組成物。
【請求項2】
前記硬化剤組成物が6月超の貯蔵寿命を有する、請求項1に記載の硬化剤組成物。
【請求項3】
前記未希釈の不飽和ポリエステルが、短鎖不飽和脂肪族ジカルボン酸系ポリエステルを含む、請求項1に記載の硬化剤組成物。
【請求項4】
前記短鎖不飽和脂肪族ジカルボン酸系ポリエステルが、マレエート系ポリエステル又はフマレート系ポリエステルを含む、請求項3に記載の硬化剤組成物。
【請求項5】
前記マレエート系ポリエステル又はフマレート系ポリエステルが、約100〜約10,000cpsの範囲の粘度を有する、請求項4に記載の硬化剤組成物。
【請求項6】
前記過酸化物触媒が、ケトンパーオキサイド、クミルヒドロパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシケタール及びパーオキシジカーボネートから選択される、請求項1に記載の硬化剤組成物。
【請求項7】
前記過酸化物触媒が、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,4−ペンタジオンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドから選択されるケトンパーオキサイドである、請求項6に記載の硬化剤組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の充填剤が、タルク、カーボネート、顔料、レオロジー調整剤、ミクロスフェア、顔料湿潤及び分散剤、パラフィン、繊維強化材、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の硬化剤組成物。

【公表番号】特表2009−500512(P2009−500512A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521479(P2008−521479)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/026650
【国際公開番号】WO2007/008743
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(591203428)イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド (309)
【Fターム(参考)】