説明

ポリエステル系積層フィルムおよび偏光板

【課題】 透明性、耐久性、耐候性、生産性に優れた低コストな偏光子保護フィルムを提供する。
【解決手段】 ポリエステル系ポリマーからなるポリエステル系フィルムの少なくとも片面にオリゴマー析出防止層が設けられた構成を有し、以下の物性(1)〜(3)を全て満足するポリエステル系積層フィルムとする。
物性(1):波長380nmにおける光線透過率が30%未満である。
物性(2):ヘイズが3%以下である。
物性(3):温度60℃、相対湿度90%の雰囲気下で500時間静置した後のヘイズが3%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明性、耐久性、耐候性、生産性、低コスト性に優れ、偏光子保護フィルム用に好適なポリエステル系積層フィルムおよびそれを用いた偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、液晶ディスプレイや液晶プロジェクターなど様々な画像表示素子に用いられている。例えば、1つのバックライト型液晶ディスプレイには偏光板が前面板(視認側)と背面板(バックライト側)の2枚が使用され、液晶セルを挟む形で設置されている。さらに1枚の偏光板は、偏光子の両面に偏光子保護フィルムを貼合させて使用するため、1つの液晶表示装置に4枚の偏光子保護フィルムが使用される。ここで仮に4枚の偏光子保護フィルムを視認側から順番に1番目(視認側偏光板の外側)、2番目(視認側偏光板のセル側)、3番目(バックライト偏光板のセル側)、4番目(バックライト偏光板のバックライト側)とする。
【0003】
現在画像表示素子に用いられている偏光板は、ヨウ素を含有したポリビニルアルコールの1軸延伸フィルムの両面にトリアセチルセルロースフィルムを積層した構成が一般的である。しかし近年、画像表示素子の低コスト化の要求から、偏光板にも低コストな部材が求められるようなった。また、トリアセチルセルロースフィルムは塩化メチレンを溶媒とした溶液製膜法で製造されており、環境面からも代替品の検討が必要になった。
【0004】
一方、安価な透明フィルムとしてはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代表されるポリエステル系フィルムが知られている。ポリエステル系フィルムは一般に位相差が大きいため、上述した2番目と3番目(セル側)の偏光子保護フィルムには使用が困難である。そこで、偏光板の片面側の偏光子保護フィルムにPETを用いる例として特許文献1〜3に記載がある。しかし、ポリエステル系フィルムを偏光子保護フィルムに用いる場合、オリゴマーや紫外線吸収剤などの添加剤の析出により、ヘイズが向上したり、また長期使用中に白化するなどの問題があった。
【特許文献1】特開平8−271734号公報
【特許文献2】特開2004−205773号公報
【特許文献3】特開2007−279243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。すなわち、本発明の目的は、透明性、耐久性、耐候性、生産性に優れた低コストなポリエステル系積層フィルムおよび偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するための本発明は、ポリエステル系ポリマーからなるポリエステル系フィルムの少なくとも片面にオリゴマー析出防止層が設けられた構成を有し、以下の物性(1)〜(3)を全て満足するポリエステル系積層フィルムを特徴とする。
【0007】
物性(1):波長380nmにおける光線透過率が30%未満である。
【0008】
物性(2):ヘイズが3%以下である。
【0009】
物性(3):温度60℃、相対湿度90%の雰囲気下で500時間静置した後のヘイズが3%以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリエステル系積層フィルムは、透明性、耐久性、耐候性、生産性に優れるため、画像表示素子用の偏光板に使用される偏光子保護フィルム用として好適に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のポリエステル系積層フィルムは、ポリエステル系ポリマーからなるポリエステル系フィルムの少なくとも片面にオリゴマー析出防止層を設けたポリエステル系積層フィルムである。ポリエステル系フィルムを使用することにより、偏光板を安価に製造することが可能である。ここでポリエステル系ポリマーとは、ポリエステル樹脂を50%以上含有してなるポリマーであり、他のポリマーとブレンドしてポリエステル系ポリマーを得る場合は、ポリエステル樹脂が50質量%以上含有していることを意味し、他のモノマーと共重合する場合は、ポリエステル構造単位が50mol%以上含有していることを意味する。ポリエステル樹脂としては、透明性が高く、欠点の少ないポリマーであれば特に限定はなく、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分やジオール成分を構成単位(重合単位)とするポリマーで構成されたものである。
【0012】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0013】
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等を好ましく用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0014】
ポリエステルには、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物が共重合されていてもよいし、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2,4−ジオキシ安息香酸、等の3官能化合物などが、過度に分枝や架橋をせずポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。さらに酸成分、ジオール成分以外に、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の効果が損なわれない程度の少量であればさらに共重合せしめることができる。
【0015】
好ましいポリエステル樹脂としては、低コストの観点からポリエチレンテレフタレート、耐熱性の観点からポリエチレンナフタレートが好ましい。また、これらの共重合体、および変性体でもよく、他の熱可塑性樹脂との混合物でもよい。特に、上記ポリエステル樹脂とポリイミド系樹脂の混合物は混合割合によって耐熱性(ガラス転移温度)を制御できるため、使用条件に合わせたポリマー設計ができるため好ましい。ポリマーの混合割合はNMR法(核磁気共鳴法)や顕微FT−IR法(フーリエ変換顕微赤外分光法)を用いて調べることができる。
【0016】
オリゴマー析出防止層としては、ポリエステルからのオリゴマー析出を防止する機能を有していれば特に限定はなく、また、紫外線吸収性、易接着性、ハードコート性、反射防止性、アンチグレア性、帯電防止性など、他の機能を有していてもよい。ポリエステル系フィルムに保持させる機能は、画像表示素子中で偏光子保護フィルムが使用される部位によって適宜選択されるものである。例えば、画像表示素子の最外面に使用される場合は、ハードコート層、反射防止層、アンチグレア層、帯電防止層、オリゴマー析出防止層などが必要となり、カラーフィルターと偏光子の間に使用される偏光子保護フィルムには、易接着層、帯電防止層、オリゴマー析出防止層などの機能が必要となる。機能層はポリエステル系フィルムの片面に設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。
【0017】
本発明のポリエステル系積層フィルムは、波長380nmにおける光線透過率が30%未満である。波長380nmにおける光線透過率が30%以上であると、紫外線により偏光子や液晶セルが劣化し、画面の色合いが変化する場合がある。紫外線吸収能は、ディスプレイが使用される環境(屋外、屋内など)や、偏光子保護フィルムの使用される部位(視認側、バックライト側など)に要求特性が異なり、適宜選択されるものであるが、より好ましくは10%未満、さらに好ましくは5%未満である。紫外線吸収剤としては、ポリエステル樹脂との相溶性がよく、フィルム化したときヘイズなどの光学特性に影響を及ぼさなければ特に限定されず、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、およびシアノアクリレート系の市販の紫外線吸収剤を用いることができるが、特に耐熱性や相溶性の観点からベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が好ましい。紫外線吸収剤の添加量は、目的に応じ適宜選択されるものであるが、通常0.5〜5質量%程度である。紫外線吸収剤の添加方法は、紫外線吸収剤をポリエステル樹脂に含有させた原料を溶融製膜法により押出機からキャストして、ポリエステル系フィルムに紫外線吸収剤を添加してもよい。また、ポリエステル系フィルムに設けるオリゴマー析出防止層やハードコート層に紫外線吸収剤を添加してもよいが、表面硬度が低下する場合がある。
【0018】
本発明のポリエステル系積層フィルムは、ヘイズが3%以下である。より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。ヘイズが3%を超えると、液晶表示装置の視認性が低下する場合がある。ヘイズは低いほど好ましいが、現実的には0.1%が下限である。
【0019】
本発明のポリエステル系積層フィルムは、温度60℃、相対湿度90%の雰囲気下で500時間静置した後(以下、湿熱条件下と称す)のヘイズが3%以下である。より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。湿熱条件下のヘイズが3%を超えると、後加工工程において高温多湿下でフィルムを扱う場合にヘイズが上昇して品位が損なわれたり、ディスプレイを高温多湿な環境下で長時間使用した際に、色合いが変化する場合がある。
【0020】
また、本発明のポリエステル系積層フィルムは、温度60℃湿度90%RHの条件下で500時間処理したとき、処理前後のヘイズの差が1.0%以下であることが好ましい。より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.2%以下である。湿熱条件下でのヘイズ変化量が1.0%を超えると、ディスプレイを高温多湿下で使用したときに色合いが変化したり、視認性が低下する場合がある。
【0021】
さらに、本発明のポリエステル系積層フィルムは、温度80℃の条件下で500時間処理したとき(以下、耐熱条件下と称す)、処理前後のヘイズの差が1.0%以下であることが好ましい。より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.2%以下である。耐熱条件下でのヘイズ変化量が1.0%を超えると、ディスプレイを高温下で使用したときに色合いが変化したり、視認性が低下する場合がある。
【0022】
上述したヘイズや湿熱条件下のヘイズや耐熱条件下のヘイズを低下させるためには、シリカ粒子などヘイズ上昇の原因になる添加剤の量を低減させること、高精度濾過や製膜環境のクリーン化などによりフィルム中の異物を低減させること、ナール処理などによる搬送ロールとフィルムとの擦り傷を極力減らすこと、また、延伸を行う場合にはテンターやロール間加熱延伸など延伸区間がロールと非接触な延伸方法で延伸することが好ましい。
【0023】
また、紫外線吸収剤をポリエステル樹脂に含有させた原料を溶融製膜法により押出機からキャストして、ポリエステル系フィルムに紫外線吸収剤を添加する場合、紫外線吸収剤がポリエステルと相溶せずヘイズが上昇したり、また、口金吐出直後にフィルム表面の紫外線吸収剤が溶融押出温度により気化してフィルム表面が粗れヘイズが上昇したり、気化した紫外線吸収剤が搬送ロールなどに付着してロールが汚れフィルムに転写してヘイズが上昇する場合がある。これらの紫外線吸収剤に起因するヘイズ上昇を抑えるには、ポリエステル樹脂と相溶性がよく、また耐熱性のよい紫外線吸収剤を使用すること、また、製膜温度を低くすること、口金付近に吸引器を設け気化した紫外線吸収剤を除去することが好ましい。さらに好ましくは、ポリエステル系フィルムを共押出による3層以上の複合フィルムとし、表層には紫外線吸収剤を添加せず、芯層(中間層)のみに紫外線吸収剤を添加する方法がよい。また、フィルム表面に紫外線吸収剤が存在すると、湿熱条件下で表面の紫外線吸収剤が吸湿し、ヘイズが上昇する場合がある。このヘイズ上昇を防止するには、前述したようにポリエステル系フィルムを共押出による3層以上の複合フィルムとし、表層には紫外線吸収剤を添加しないことが好ましい。すなわち、ポリエステル系フィルムが、共押出による3層積層構成を有し、各層をフィルムの片面側から順にA層(表面層)、B層(中間層)、C層(表面層)としたとき、B層がポリエステル系ポリマーと紫外線吸収剤とを含有していることが好ましい。また、このとき、A層およびC層もポリエステル系ポリマーを含有していることが好ましい。また、ポリエステル系フィルムの両表面にオリゴマー析出防止層を設けてもよい。また、ポリエステル系フィルムを湿熱条件下や耐熱条件下で静置するとオリゴマーが発生し、フィルム表面が白化してヘイズが上昇する場合がある。このヘイズ上昇を防止するには、オリゴマー析出防止層が必要である。オリゴマー析出防止層は、ポリエステル系フィルムの少なくとも片面に積層されていればよいが、両面に積層されていることがさらに好ましい。尚、全光線透過率およびヘイズ値は、JIS−K7361−1(1997)およびJIS−K7136(2000)に従い、測定した値である。
【0024】
本発明のポリエステル系積層フィルムは、温度60℃湿度90%RHの条件下で500時間処理したとき、処理前後のフィルムの寸法変化率が1.0%以下であることが好ましい。より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.2%以下である。湿熱条件下での寸法変化率が1.0%を超えると、偏光子と貼り合わせて偏光板としたとき、加工工程における湿度により偏光板がカールして加工性が低下する場合がある。また、ディスプレイを高温多湿下で使用したときに偏光板の寸法が変化し、特にディスプレイの周辺部の色合いが変化する場合がある。
【0025】
本発明のポリエステル系積層フィルムは、温度80℃の条件下で500時間処理したとき、処理前後のフィルムの寸法変化率が1.0%以下であることが好ましい。より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.2%以下である。耐熱条件下での寸法変化率が1.0%を超えると、偏光子と貼り合わせて偏光板としたとき、加工工程における温度により偏光板がカールして加工性が低下する場合がある。また、ディスプレイを高温下で使用したときに偏光板の寸法が変化し、特にディスプレイの周辺部の色合いが変化する場合がある。
【0026】
本発明のポリエステル系積層フィルムは、製膜方向のヤング率をYMD、幅方向のヤング率をYTDとしたとき、YTD、YMDの値が共に2GPa以上8GPa以下であることが好ましい。ヤング率が2GPa未満であると、強度が不足しているため後加工工程でフィルムに張力がかかったとき破断の原因になる場合がある。8GPaを超えると、伸度が低下し加工性が悪化する場合がある。尚、ヤング率は偏光板の構成によって適宜選択されるものであり、偏光子の両面に貼合される2枚の偏光子保護フィルムのヤング率が同等であると偏光板のカールを抑制できるため好ましい。また、YTD−YMDの値が−1.5GPa以上1.5GPa以下であることが好ましい。一方向のヤング率が他方向のヤング率と極端に異なると、偏光板としたときカールの原因となる場合がある。ポリエステル系フィルムのヤング率は、延伸倍率により調整することができる。
【0027】
本発明のポリエステル系積層フィルムは、ガラス転移温度が70℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度が70℃未満であると、バックライトの熱によりフィルムが軟化して偏光板の寸法が変化し、特にディスプレイの周辺部(額縁付近)の色合いが変化する場合がある。ガラス転移温度はディスプレイが使用される環境により要求特性が異なり、より好ましくは100℃以上、さらに車載用に用いられる場合は120℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度は、示差走査熱量計を用い測定し、JIS−K7121(1987)に従い、中間点ガラス転移温度(Tmg)として求めることができる。
【0028】
本発明のポリエステル系積層フィルムは、面内位相差が100nm以下であることが好ましい。視認側の外側用偏光子保護フィルムには通常厳密な位相差制御は必要がないが、面内位相差が100nmより大きいと例えば車載用などで偏光の入ったサングラスをかけながら使用する場合に、色調が変化する場合がある。また、バックライト側の外側用偏光子保護フィルムにも通常厳密な位相差制御は必要がないが、D−BEFフィルムなどの偏光分離機能を持たせた画像表示装置では色調が変化する場合があるため、面内の位相差は、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは10nm以下である。面内位相差は、延伸工程において、製膜方向と幅方向の延伸倍率やリラックス率を調整することにより低減可能である。また、フィルムに可塑剤を添加して延伸工程における位相差発現を低減させることも可能であるが、耐熱性が低下する場合がある。
【0029】

本発明のポリエステル系積層フィルムは、厚みが15μm以上100μm以下であることが好ましい。厚みが15μm未満では、フィルムの機械強度が不足し加工性が低下したり、偏光板として偏光子と貼合わせて使用したときに偏光子の収縮応力を抑えられず寸法が変化する場合がある。厚みが100μmを超えると生産性が低下し、またディスプレイの薄膜軽量化が困難となる。
【0030】
本発明のポリエステル系積層フィルムは、全光線透過率が90%以上であることが好ましい。より好ましくは93%以上である。また、現実的な上限としては、99%程度である。90%未満であると輝度が低下するため画像表示用部材として使用できない場合がある。
【0031】
以下、本発明のポリエステル系積層フィルムの製造方法の例について説明する。ここでは、ポリエステルとしポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた例を中心に示す。もちろん、本願はPETに限定されるものではなく、他のポリマー、例えばガラス転移温度や融点の高いポリマーなどを用いる場合は、以下に示す温度よりも高温で押出や延伸を行うなど、適宜調整を行い製造することが可能である。
【0032】
本発明で使用するポリエチレンテレフタレートは、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低分子量のポリエチレンテレフタレートまたはオリゴマーを得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低分子量体を得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセスである。ここで、エステル化は無触媒でも反応は進行するが、エステル交換反応においては、通常、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム、チタン等の化合物を触媒に用いて進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、該反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加する場合もある。また、フィルムを構成するポリエステルに不活性粒子を含有させる場合には、エチレングリコールに不活性粒子を所定割合にてスラリーの形で分散させ、このエチレングリコールを重合時に添加する方法が好ましい。
【0033】
また、紫外線吸収剤の添加方法は特に限定されないが、紫外線吸収剤を直接PETペレットと混合し、二軸混練押出機を用いて、PETに練り込む方法が有効である。紫外線吸収剤の含有量を調節する方法としては、上記方法で高濃度のマスターペレットを作っておき、それを製膜時に紫外線吸収剤を実質的に含有しないPETで希釈して含有量を調節する方法が有効である。
【0034】
得られたPETのペレットを、180℃で3時間以上減圧乾燥した後、固有粘度が低下しないように窒素気流下あるいは減圧下で、280℃に加熱された押出機に供給し、スリット状のダイから押出し、25℃に制御されたキャスティングロール上で冷却して未延伸フィルムを得る。この際、異物や変質ポリマーを除去するために各種のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンド、金網などの素材からなるフィルターを用いることが好ましい。また、必要に応じて、定量供給性を向上させるためにギアポンプを設けてもよい。
【0035】
本発明のポリエステルフィルムは、共押出による3層以上の複合フィルムとし、表層には紫外線吸収剤を添加せず、芯層(中間層)のみに紫外線吸収剤を添加することがヘイズ低減のため好ましい。3層以上のポリマーを積層する場合には、2台以上の押出機およびマニホールドまたは合流ブロックを用いて、複数の異なるポリマーを溶融積層する。この場合、表層の樹脂には本発明の効果を損なわない範囲で、アクリル系ポリマー、ポリプロピレン系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、スチレン系ポリマーのうち少なくとも1つ以上を含有させ、オリゴマー析出防止層としても構わない。
【0036】
次に、この未延伸フィルムを二軸延伸し、二軸配向させる。ここでは、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法を用いる。
【0037】
長手方向の延伸は、未延伸フィルムをフローティング方式のオーブンに導入し、オーブン入口と出口のライン速度に差を付けて長手方向に延伸を行う。延伸温度は、オーブンの熱風温度を85〜100℃として延伸倍率は2.5〜5.0倍が好ましい。ロール加熱延伸法により延伸を行っても良いが、上述した延伸方式では延伸区間が非接触であるため、傷の発生を低減できる。
【0038】
続いて幅方向の延伸を行う。幅方向の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。幅方向の延伸倍率は2.5〜5.0倍、延伸速度は3,000〜5,000%/分、温度は95〜110℃で行う。
【0039】
次にオリゴマー析出防止層の積層方法について説明する。オリゴマー析出防止層は紫外線硬化性の樹脂や熱硬化性の樹脂をIPAや酢酸エチルなどの溶剤に溶解させ、バーコーター、グラビアコーター、ドクターブレード、ダイコーターなどを用いてポリエステルフィルム表面に塗工後、乾燥工程で溶媒を乾燥させ、続いて紫外線や熱により硬化させて本発明のポリエステル系積層フィルムを得ることができる。積層工程は製膜後のフィルムにオフラインで設けてもよいし、製膜中にインラインで設けてもよい。インラインで積層する場合は、上述した縦延伸や横延伸工程の直前で塗工して、乾燥、硬化と同時に延伸を行ってもよい。紫外線硬化性の樹脂や熱硬化性の樹脂については、オリゴマーの析出を防止する機能を有すれば特に限定されないが、アクリレート基を有する樹脂またはモノマーが好ましく、エポキシアクリレート、多官能アクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、芳香族アクリレートなどを用いることができる。オリゴマー析出防止層の厚みは0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。0.5μm未満ではオリゴマー析出防止の効果が得られない場合があり、10μmを超えると生産性が低下したり、フィルムがカールする場合がある。オリゴマー析出防止層は、ポリエステル系フィルムの少なくとも片面に積層されていればよいが、両面に積層されていることがさらに好ましい。
【0040】
かくして得られるフィルムは、その優れた透明性、品位、靱性を活かして、電気・電子部品、光学フィルター、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、一般雑貨など種々の用途に用いることができる。
【0041】
特に、本発明のポリエステル系積層フィルムは、透明性、耐久性、耐候性に優れるため偏光子保護フィルムとして有用である。特に、偏光子の両面に偏光子保護フィルムを積層してなる偏光板であって、偏光子保護フィルムの少なくとも一方が上記したポリエステル系積層フィルムである偏光板が好ましい。偏光子保護フィルムとして使用する場合は、周知の方法で偏光子と貼り合わせればよく、ポリビニルアルコールの1軸延伸フィルムからなる偏光子の少なくとも片面に易接着層および接着剤層を介して本発明のポリエステル系積層フィルムを貼り合わせればよい。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
なお、物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
【0044】
1.ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用い、窒素雰囲気下、20℃/minの昇温速度で測定した。サンプル量は5mgとした。
【0045】
尚、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS−K7121(1987)に従い、求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)である。
【0046】
2.透明性(全光線透過率、ヘイズ値)
本発明のポリエステル系積層フィルムまたはポリエステル系フィルムを、東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを用いて、23℃での全光線透過率(%)、ヘイズ値(%)を3回測定し、平均値で透明性を評価した。光源にはハロゲンランプ(12V50W)を用い、全光線透過率はJIS−K7361−1(1997)、ヘイズはJIS−K7136(2000)に準じて測定を行った。
【0047】
また、このサンプルを温度60℃湿度90%RHの条件下で500時間処理した後(湿熱条件下)、または、温度80℃の条件下で500時間処理した後(耐熱条件下)に、同様の測定を行い、湿熱条件適用後または耐熱条件適用後のヘイズを測定した。
【0048】
3.破断伸度・引張弾性率
JIS−K7127(1999)に規定された方法によりロボットテンシロンRTA100(オリエンテック社製)を用いて、25℃、65%RH雰囲気で5回測定を行い、平均値を求めた。ただし、試験片は幅10mmで長さ50mmの試料とした。試験を開始してから荷重が1Nを通過した点を伸びの原点とした。
【0049】
4.フィルム厚み
マイクロ厚み計(アンリツ社製)を用いて5点測定し、平均値を求めた。
【0050】
5.面内の位相差Ret、厚み方向の位相差Rth
王子計測(株)製の自動複屈折系(KOBRA−21ADH)を用い、波長590nmの光線に対する樹脂フィルム面内の直交軸方向の屈折率をnx、ny(ただしnx≧ny)、波長590nmの光線に対する樹脂フィルムの厚み方向の屈折率nzを測定し、樹脂フィルムの厚みをd(nm)とした時に下記式から求めた。測定回数は1回である。
【0051】
面内の位相差Ret(nm)=d×(nx−ny)
厚み方向の位相差Rth(nm)=d×{(nx+ny)/2−nz}
6.ポリマー組成
ポリマーを溶解する適切な溶媒に溶解し、H核のNMR(核磁気共鳴)スペクトルを測定する。適切な溶媒は、ポリマーの種類によって異なるが、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)/重クロロホルムが用いられる。得られたスペクトルにおいて、ポリマーに特有の吸収(例えばPETであればテレフタル酸の芳香族プロトンの吸収)のピーク面積強度をもとめ、その比率とプロトン数よりポリマーのモル比を算出する。さらに各々のポリマーの単位ユニットに相当する式量より重量比を算出する。測定条件は、例えば、以下のような条件であるが、ポリマーの種類によって異なるため、この限りではない。
【0052】
装置 :ブルカー社製BRUKER DRX-500
溶媒 :HFIP/重クロロホルム
観測周波数 :499.8MHz
基準 :TMS(テトラメチルシラン)(0ppm)
測定温度 :30℃
観測幅 :10KHz
データ点 :64K
acquisiton time :4.952秒
pulse delay time:3.048秒
積算回数 :256回
7.380nmにおける光線透過率
下記装置を用いて測定し、各波長の光に対応する透過率を求めた。測定は1回行った。
【0053】
透過率(%)=(T1/T0)×100
ただしT1は試料を通過した光の強度、T0は試料を通過しない以外は同一の距離の空気中を通過した光の強度である。
【0054】
装置:UV測定器U−3410(日立計測社製)
波長範囲:300nm〜800nm
測定速度:120nm/分
測定モード:透過
測定結果より波長380nmの光に対する光線透過率を求めた。
【0055】
8.寸法測定および寸法変化率
本発明のポリエステル系積層フィルムまたはポリエステル系フィルムの長手方向および幅方向に約100mmの間隔で油性ペンを用いてマーキングし、その間隔を万能投影機にて測定し平均値を求めた(L1)。このサンプルを温度60℃湿度90%RHの条件下で500時間処理した後(湿熱条件下)、または、温度80℃の条件下で500時間処理した後(耐熱条件下)に、その間隔を万能投影機にて測定し長手方向および幅方向の平均値を求めた(L2)。下式より寸法変化率R(%)を求めた。
【0056】
R(%)=(L2−L1)/L1×100
9.透明性評価
本発明のポリエステル系積層フィルムと偏光子とTACフィルムをこの順に貼り合わせて偏光板を作成した。携帯電話F903i(A)の最表面の偏光板を取り除き、代わりに作成した偏光板を、本発明のポリエステル系積層フィルムが外側となるように偏光軸の方向を合わせて貼り、携帯電話サンプル(B)を得た。F903i(A)と本発明のサンプルを使用した携帯電話サンプル(B)を40cm離れた位置から見比べ以下の基準で評価した。
【0057】
○:(B)の視認性が(A)の視認性と同レベルまたは、それ以上
△:(B)の視認性が(A)の視認性と同レベルであるが、ルーペを使用して観察すると(B)の視認性が悪い
×:(B)の視認性が(A)の視認性より悪い
10.湿熱耐久性評価
本発明のポリエステル系積層フィルムと偏光子とTACフィルムをこの順に貼り合わせて偏光板を作成した。携帯電話F903i(A)の最表面の偏光板を取り除き、代わりに作成した偏光板を、本発明のポリエステル系積層フィルムが外側となるように偏光軸の方向を合わせて貼り、携帯電話サンプル(B)を得た。
【0058】
得られた携帯電話サンプル(A)および(B)を温度60℃湿度90%RHの条件下で100時間湿熱処理を行った。湿熱処理後のF903i(A)と本発明のサンプルを使用した携帯電話サンプル(B)を40cm離れた位置から見比べ以下の基準で評価した。
【0059】
○:(B)の視認性が(A)の視認性と同レベルまたは、それ以上
△:(B)の視認性が(A)の視認性と同レベルであるが、ルーペを使用して観察すると(B)の視認性が悪い
×:(B)の視認性が(A)の視認性より悪い
11.耐熱耐久性評価
本発明のポリエステル系積層フィルムと偏光子とTACフィルムをこの順に貼り合わせて偏光板を作成した。携帯電話F903i(A)の最表面の偏光板を取り除き、代わりに作成した偏光板を、本発明のポリエステル系積層フィルムが外側となるように偏光軸の方向を合わせて貼り、携帯電話サンプル(B)を得た。
【0060】
得られた携帯電話サンプル(A)および(B)を熱風オーブンを用い温度80℃の条件下で100時間耐熱処理を行った。耐熱処理後のF903i(A)と本発明のサンプルを使用した携帯電話サンプル(B)を40cm離れた位置から見比べ以下の基準で評価した。
【0061】
○:(B)の視認性が(A)の視認性と同レベルまたは、それ以上
△:(B)の視認性が(A)の視認性と同レベルであるが、ルーペを使用して観察すると(B)の視認性が悪い
×:(B)の視認性が(A)の視認性より悪い
12.耐候性評価
本発明のポリエステル系積層フィルムと偏光子とTACフィルムをこの順に貼り合わせて偏光板を作成した。携帯電話F903i(A)の最表面の偏光板を取り除き、代わりに作成した偏光板を、本発明のポリエステル系積層フィルムが外側となるように偏光軸の方向を合わせて貼り、携帯電話サンプル(B)を得た。
【0062】
得られた携帯電話サンプル(A)および(B)を紫外線劣化促進試験機アイスーパーUVテスターSUV−W131(岩崎電気(株)製)に設置し、照度100mW/cm、温度60℃、相対湿度50%RH、の条件で16時間強制紫外線照射試験を行った。紫外線照射試験後のF903i(A)と本発明のサンプルを使用した携帯電話サンプル(B)を40cm離れた位置から見比べ以下の基準で評価した。
【0063】
○:(B)の視認性が(A)の視認性と同レベルまたは、それ以上
△:(B)の視認性が(A)の視認性と同レベルであるが、ルーペを使用して観察すると(B)の視認性が悪い
×:(B)の視認性が(A)の視認性より悪い
(実施例1)
テレフタル酸ジメチル194質量部とエチレングリコール124質量部に、酢酸マグネシウム4水塩0.1質量部を加え、140〜230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチル0.05質量部のエチレングリコール溶液、および三酸化アンチモン0.05質量部を加えて5分間撹拌した後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を230℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。3時間重合反応させ所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートのペレット(a)を得た。
【0064】
得られたペレット(a)に株式会社ADEKA社製紫外線吸収剤、アデカスタブLA−31を配合し、2軸押出機(TEX30(日本製鋼社製、L/D=44.5)を用いて、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら、スクリュー回転数150rpm、原料供給量5kg/h、シリンダ温度280℃で混練し、ペレット状のポリエチレンテレフタレート(b)を得た。得られたペレット(b)の熱重量分析を行った結果、ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し紫外線吸収剤は2質量部含有されていた。
【0065】
280℃に加熱された押出機に、得られたペレット(b)を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。原料を1.2μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルターを用いて濾過した後、口金から吐出し、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムをフローティングオーブンに導入し、オーブン入口と出口のライン速度に差を付けることにより、温度95℃で長手方向に3.0倍延伸した。さらに、テンターを用いて、幅方向に速度2,000%/分、温度100℃で3.5倍延伸した。定長下で温度180℃で5秒間熱処理した後、幅方向に5%の弛緩処理を行い厚み約40μmのポリエステルフィルムを作製した。
【0066】
続いてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを47.5質量部、光開始剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製“イルガキュア184”(登録商標)を2.5質量部、溶剤としてイソプロピルアルコールを50質量部の割合で混合し、得られたポリエステルフィルムの表面に、塗工厚み15μmのワイヤーバーを用いて塗工し、80℃の熱風オーブンで1分間乾燥を行い、紫外線照射(積算光量300mW/cm)することにより、オリゴマー析出防止層を得た。さらに裏面にも同様の処理を行い、両面にオリゴマー析出防止層の積層されたポリエステル系積層フィルムを得た。
【0067】
(実施例2)
押出機A、B2台を用い、280℃に加熱された押出機Aには、実施例1で得られた得られたPETのペレット(a)を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給し、同じく280℃に加熱された押出機Bには、実施例1で得られたPETのペレット(b)を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。それぞれの原料を1.2μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルターを用いて濾過した後、3層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比A/B/A=1/5/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。続いて実施例1と同様の方法にて延伸およびオリゴマー析出防止層の積層を行い、ポリエステル系積層フィルムを得た。
【0068】
(比較例1)
実施例1において、オリゴマー析出防止層を積層しない以外は実施例1と同様の方法でポリエステル系フィルムを得た。
【0069】
(比較例2)
実施例2において、オリゴマー析出防止層を積層しない以外は実施例1と同様の方法でポリエステル系フィルムを得た。
【0070】
(比較例3)
実施例1において、製膜原料としてペレット(b)の代わりにペレット(a)を使用する以外は実施例1と同様の方法でポリエステル系フィルムを得た。
【0071】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のポリエステル系積層フィルムは、透明性、耐久性、耐候性、生産性に優れるため、低コストな偏光子保護フィルムとして極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系ポリマーからなるポリエステル系フィルムの少なくとも片面にオリゴマー析出防止層が設けられた構成を有し、以下の物性(1)〜(3)を全て満足するポリエステル系積層フィルム。
物性(1):波長380nmにおける光線透過率が30%未満である。
物性(2):ヘイズが3%以下である。
物性(3):温度60℃、相対湿度90%の雰囲気下で500時間静置した後のヘイズが3%以下である。
【請求項2】
ポリエステル系積層フィルムを温度60℃湿度90%RHの条件下で500時間処理したとき、処理前後のヘイズ値の差が1.0%以下である、請求項1に記載のポリエステル系積層フィルム。
【請求項3】
ポリエステル系積層フィルムを温度80℃の条件下で500時間処理したとき、処理前後のヘイズ値の差が1.0%以下である、請求項1または2に記載のポリエステル系積層フィルム。
【請求項4】
ポリエステル系フィルムが、共押出による3層積層構成を有し、各層をフィルムの片面側から順にA層(表面層)、B層(中間層)、C層(表面層)としたとき、B層がポリエステル系ポリマーと紫外線吸収剤とを含有している、請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル系積層フィルム。
【請求項5】
A層およびC層がポリエステル系ポリマーを含有している、請求項4に記載のポリエステル系積層フィルム。
【請求項6】
偏光子の両面に偏光子保護フィルムを積層してなる偏光板であって、偏光子保護フィルムの少なくとも一方が、請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル系積層フィルムである偏光板。

【公開番号】特開2009−160830(P2009−160830A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−993(P2008−993)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】