説明

ポリエステル顆粒の製造方法

ポリエステル顆粒の製造方法が請求される。本方法は、a)ポリエステル融液をその調製後に粒径d90.3=10〜150μmの粉末に粉砕する工程、およびb)前記粉末を粒径150〜1,600μmの顆粒に加工する工程からなる。本方法により製造されたポリエステル顆粒は、低温時の溶解性が向上することを特色とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温水溶性が改善されたリエステル顆粒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維製品の汚れ落ちを良くし、汚れの再付着を低減して、機械負荷から繊維を保護し、さらに布地に防皺効果を付与するために、洗剤にポリエステルを配合することが知られている。特許文献には、多種多様なポリエステルのタイプ、および洗剤や洗浄剤におけるポリエステルの使用について、記述されている。
【0003】
米国特許第4702857号明細書(特許文献1)には、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコールまたはそれらの混合物(1)、短鎖アルキル基、特にメチル基により末端が封鎖されている、少なくとも10のグリコール単位をもつポリエチレングリコール(2)、ジカルボン酸もしくはそのエステル(3)、および任意にスルホン化芳香族ジカルボン酸のアルカリ塩(4)からなるポリエステルが請求されている。
【0004】
米国特許第4427557号明細書(特許文献2)には、モノマーであるエチレングリコール(1)、分子量200〜1,000g/molのポリエチレングリコール(2)、芳香族ジカルボン酸(3)、およびスルホン化芳香族ジカルボン酸のアルカリ塩(4)から、さらに場合によっては微量の脂肪族ジカルボン酸、例えばグルタル酸、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸から調製された、分子量が2,000〜10,000g/molの範囲内のポリエステルが記載され、これがポリエステル織物またはポリエステルと木綿の交織織物に与える防皺効果および防汚効果が開示されている。
【0005】
米国特許第4721580号明細書(特許文献3)は、テレフタレート単位およびスルホ含有末端基、特にスルホエトキシル化末端基MOS(CHCHO)n−Hをもつポリエステルを開示しており、洗剤および柔軟仕上剤におけるその使用を開示している。
【0006】
米国特許第4968451号明細書(特許文献4)は、(メタ)アリルアルコール、酸化アルキレン、アリールジカルボン酸およびC〜C−グリコールの共重合とそれに続くスルホン化によって得られる、スルホ含有末端基をもつポリエステルについて記載している。
【0007】
米国特許第5691298号明細書(特許文献5)では、ポリエステルが、ジヒドロキシスルホネートまたはポリヒドロキシスルホネート、複数のテレフタレート単位および1,2−オキシアルキレンオキシ単位からなる分枝したバックボーンをもつ、末端基が非イオン性またはアニオン性である、いわゆるソイルリリース・ポリマー(SRP)として請求されている。
【0008】
米国特許第5415807号明細書(特許文献6)には、スルホン化されたポリエトキシ/プロポキシ末端基をもつソイルリリース・ポリマーが結晶化しやすく、その結果、防汚効果が減退するとの説明がなされている。
【0009】
これまでに公知になっているポリエステルは、固体で、温度が40℃を上回らないと水に良く溶けないことが多い。洗濯温度がそれよりも低いと、ポリエステルは全く溶けないか、または不十分にしか溶けず、一部は洗濯物の表面に白い残滓として残ってしまう。加えて、再付着防止作用も十分には発揮されないことになる。他方、ポリマー構造を、例えば可溶化剤の添加により、可溶性の向上に適したものとしても、物性の明白な低下を覚悟しなければならず、それにより造粒を簡単に行うことも、もはや不可能となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4702857号明細書
【特許文献2】米国特許第4427557号明細書
【特許文献3】米国特許第4721580号明細書
【特許文献4】米国特許第4968451号明細書
【特許文献5】米国特許第5691298号明細書
【特許文献6】米国特許第5415807号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって本発明の課題は、容易に製造可能であり、保存安定性を示し、粘着性(べとつき)を示さない、20℃未満の温度でも水に良く溶け、良好な防汚作用を示すポリエステル顆粒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、この課題は、各種ジカルボン酸および/またはそれらの誘導体、ジオールおよび/またはポリオールからの誘導単位を含むポリエステルを、ポリエステル融液の調製後に、凝固したポリエステル融液を定義された粒径をもつ粉末に粉砕し、この粉末を顆粒へと加工することによって造粒することにより、解決されることが分かった。粉砕後の粉末の粒径もしくは磨砕度を明確に記述するために、いわゆるd90.3値を援用することができるが、これは、粒度分布を決定する枠内で求めることができる。ここで、d90.3値とは、測定された粒子の90%の粒径がこの値を下回るという粒径であると理解されるものである。指数3は、典型的には篩分析によって決定されるような、質量または体積の分布特性を示す。本発明では、粉末の磨砕度としてd90.3=10〜150μmを目指している。
【0013】
それに対し、この粉末から製造される顆粒については、微細度の厳密な定義を必ずしも必要としていない。これについては、例えば、篩い分けを利用した分別により生じる、粒度の特性を示す下限値および上限値が表示されるとよい。ポリエステル顆粒を洗浄剤に配合する場合の典型的な適用例においては、粒径が約100〜1,600μmの範囲となる。
【0014】
この方法により製造された顆粒は、従来法により製造された顆粒と比較して、低温時の可溶性が改善されることを特色とする。
【0015】
本発明の対象は、各種ジカルボン酸および/またはそれらの誘導体、ジオールおよび/またはポリオールからの誘導単位を含むポリエステルを含有するポリエステル顆粒の製造方法であって、
a)ポリエステル融液の調製後に、凝固したポリエステル融液を粒径d90.3=10〜150μmの粉末に粉砕する工程、および、
b)前記粉末を粒径150〜1,600μmの顆粒に加工する工程
を含むことを特徴とする、ポリエステル顆粒の製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好ましい実施形態の一例は、前記粉末を粒径200〜1,500μm、好ましくは250〜1,200μmの顆粒に加工する工程を特徴とする、ポリエステル顆粒の製造方法である。
【0017】
別の好ましい実施形態は、ポリエステル顆粒の温度T<10℃時の溶解度が50%〜100%であることを特徴とする、ポリエステル顆粒の製造方法である。
【0018】
さらに別の好ましい実施形態は、このポリエステル顆粒0.7gを750mlの水に溶かした場合に、ポリエステル顆粒のT<10℃時の溶解速度が0.07g/分〜0.14g/分であることを特徴とする、ポリエステル顆粒の製造方法である。
【0019】
さらに別の好ましい実施形態は、
a) −芳香族ジカルボン酸および/またはポリカルボン酸、および/またはそれらの塩、および/またはそれらの無水物、および/またはそれらのエステル、
−脂肪族および環状脂肪族のジカルボン酸、それらの塩、それらの無水物、および/またはそれらのエステル、
−スルホ基含有ジカルボン酸、それらの塩、それらの無水物、および/またはそれらのエステル
の中から選択されるジカルボン酸および/またはポリカルボン酸および/またはそれらの誘導体から誘導された構造要素、
b)ジオールから誘導された構造要素、
c)ポリオールから誘導された構造要素、および
任意に、
d)スルホ基含有酸
から誘導された構造単位から、
任意に、
e)スルホ基含有アルコールから、
任意に、
f)ジオールエーテルまたはポリオールエーテルから、
任意に、
g)C〜C24−アルコールおよびオキシアルキル化されたC〜C24−アルコールから
誘導された構造要素を含むポリエステルが使用されることを特徴とする、ポリエステル顆粒の製造方法である。
【0020】
さらに別の好ましい実施形態は、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テレフタル酸無水物、フタル酸無水物、イソフタル酸無水物、テレフタル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、C〜C−アルコールを含むフタル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、イソフタル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、好ましくはジメチルテレフタレート、ジエチルテレフタレートおよびジ−n−プロピルテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、蓚酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、それらの無水物、ならびに、C〜C−アルコールを含むカルボン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、例えば蓚酸ジエチルエステル、コハク酸ジエチルエステル、グルタル酸ジエチルエステル、アジピン酸メチルエステル、アジピン酸ジエチルエステル、アジピン酸−ジ−n−ブチルエステル、フマル酸エチルエステル、およびマレイン酸ジメチルエステル、5−スルホイソフタル酸またはそのアルカリ塩またはアルカリ土類塩、特にリチウム塩およびナトリウム塩またはC〜C22−アルキル残基を含むモノ−、ジ−、トリ−またはテトラアルキルアンモニウム塩、5−スルホイソフタル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、2−ナフチルジカルボキシベンゾイルスルホネート、2−ナフチルジカルボキシベンゼンスルホネート、フェニルジカルボキシベンゼンスルホネート、2,6−ジメチルフェニル−3,5−ベンゼンスルホネート、フェニル−3,5−ジカルボキシベンゼンスルホネートから誘導された構造要素を含むポリエステルが使用されることを特徴とする、ポリエステル顆粒の製造方法である。
【0021】
さらに別の好ましい実施形態は、テレフタル酸および/またはジアルキルテレフタレート、特にジメチルテレフタレートから誘導された構造要素を含むポリエステルが使用されることを特徴とする、ポリエステル顆粒の製造方法である。
【0022】
さらに別の好ましい実施形態は、スルホ基含有ジカルボン酸、それらの塩、それらの無水物、および/またはそれらのエステル、例えば5−スルホイソフタル酸またはそのアルカリ塩またはアルカリ土類塩、特にリチウム塩およびナトリウム塩またはC〜C22−アルキル残基を含むモノ−、ジ−、トリ−またはテトラアルキルアンモニウム塩、2−ナフチルジカルボキシベンゾイルスルホネート、2−ナフチルジカルボキシベンゼンスルホネート、フェニルジカルボキシベンゼンスルホネート、2,6−ジメチルフェニル−3,5−ベンゼンスルホネート、フェニル−3,5−ジカルボキシベンゼンスルホネートから誘導された構造要素を含むポリエステルが使用されることを特徴とする、ポリエステル顆粒の製造方法である。
【0023】
本発明のさらに別の好ましい実施形態は、スルホ基含有酸、好ましくは2−ヒドロキシエタンスルホン酸およびスルホ安息香酸から誘導された構造要素を含むポリエステルを含有するポリエステル顆粒の製造方法である。
【0024】
さらに別の好ましい実施形態は、式(1)(XOS(CHRCHRO)H)で表される化合物から誘導された末端基により封鎖されたポリエステルが使用されることを特徴とする、ポリエステル顆粒の製造方法であり、式中、RおよびRが、互いに独立して水素または1〜4個の炭素原子をもつアルキル基、好適には水素および/またはメチルを表し、XがLi、Na、K、1/2Caまたは1/2Mgを表し、nが1〜50、好ましくは2〜10の範囲の数である。
【0025】
さらに別の好ましい実施形態は、式(2)(RO(CHRCHRO)H)Rで表される化合物から誘導された末端基により封鎖されたポリエステルが使用されることを特徴とする、ポリエステル顆粒の製造方法であり、式中、RおよびRが、互いに独立して水素または1〜4個の炭素原子をもつアルキル基、好適には水素および/またはメチルを表し、Rが1〜4個の炭素原子をもつアルキル基を表し、nが1〜50、好ましくは2〜10、非常に好ましくは3〜6の範囲の数である。
【0026】
さらに別の好ましい実施形態は、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコールから誘導された構造要素を含むポリエステルが使用されることを特徴とする、ポリエステル顆粒の製造方法である。
【0027】
さらに別の好ましい実施形態は、モル質量200〜7,000、好適には3,000〜6,000g/モルのポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコール、モル質量90〜7,000、好適には200〜5,000の、プロピレングリコール、エチレングリコールおよび/またはブチレングリコールからなる、ブロックコポリマー、グラジエントコポリマー、あるいはほかにもランダムコポリマー状の重合生成物から誘導された構造要素を含むポリエステルが使用されることを特徴とする、ポリエステル顆粒の製造方法である。
【0028】
さらに別の好ましい実施形態は、ポリオール、特にグリセリン、ペンタエリトリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,3−ヘキサントリオール、ソルビットまたはマンニットから誘導された構造要素を含むポリエステルが使用されることを特徴とする、ポリエステル顆粒の製造方法である。
【0029】
さらに別の好ましい実施形態は、C〜C24−アルコールおよびオキシアルキル化されたC〜C24−アルコール、特にオクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、またはステアリルアルコール、およびこれらに対応するオキシアルキル化された、特にエトキシル化および/またはプロポキシル化されたアルコール、アルキルフェノール、特にオクチルフェノール、ノニルフェノール、およびドデシルフェノール、および、オキシアルキル化されたC〜C18−アルキルフェノール、アルキルアミン、特にC〜C24−モノアルキルアミンおよび/またはオキシアルキル化されたC〜C24−アルキルアミンから誘導された構造要素を含むポリエステルが使用されることを特徴とする、ポリエステル顆粒の製造方法である。
【0030】
特に好ましい実施形態は、
a)一つまたは複数の非イオン性芳香族ジカルボン酸またはそれらのC〜C−アルキルエステル、
b)エチレングリコール、
c)1,2−プロピレングリコール、
d)平均モル質量[M]200〜8,000g/モルのポリエチレングリコール、
e)平均モル質量200〜5,000のポリアルキレングリコールエーテルを含む、C〜C−アルキルポリアルキレングリコールエーテル、および、
f)多官能化合物、ただし、成分b)、c)、d)、e)およびf)のモル比は、いずれも成分a)1モルを基準として、成分b)については0.1〜4モル、成分c)については0〜4モル、成分d)については0〜0.5モル、成分e)については0〜0.5モル、および成分f)については0〜0.25モルである、
から誘導された構造要素を含むポリエステルが使用されることを特徴とする、ポリエステル顆粒の製造方法である。
【0031】
さらに別の同様に好ましい実施形態は、
a)一つまたは複数の非イオン性芳香族ジカルボン酸またはそれらのC〜C−アルキルエステル、
b)一つまたは複数のスルホ基含有ジカルボン酸またはそれらのC〜C−アルキルエステル、
c)エチレングリコール、
d)1,2−プロピレングリコール、
e)平均モル質量[M]200〜8,000g/モルのポリエチレングリコール、
f)平均モル質量200〜5,000のポリアルキレングリコールエーテルを含む、C〜C−アルキルポリアルキレングリコールエーテル、
g)式(1)(XOS(CHRCHRO)H)の一つまたは複数の化合物であり、ただしRおよびRが、互いに独立して水素または1〜4個の炭素原子をもつアルキル基、好適には水素および/またはメチルを表し、XがLi、Na、K、1/2Caまたは1/2Mgを表し、nが1〜50、好ましくは2〜10の範囲の数であり、
および、
h)多官能化合物、ただし、成分b)、c)、d)、e)、f)、g)およびh)のモル比は、いずれも成分a)1モルを基準として、成分b)については0.1〜4モル、成分c)については0〜4モル、成分d)については0〜4モル、成分e)については0〜0.5モル、成分f)については0〜0.5、成分g)については0〜0.5モル、および成分h)については0〜0.25であり、
から誘導された構造要素を含むポリエステルが使用されることを特徴とする、ポリエステル顆粒の製造方法である。
【0032】
本発明の方法によれば使用されるポリエステルの製造は、公知の方法によるモノマー縮合によって行われる。モノマー分子の使用量および重合条件は、ポリエステル分子量のメジアンが800〜25,000g/モル、特に1,000〜15,000g/モル、非常に好ましくは1,200〜12,000g/モルの範囲内になるように選択される。本発明に基づき使用されるポリエステルは、その軟化点が40℃超、好ましくは50℃〜200℃、非常に好ましくは80℃〜150℃、およびとりわけ好ましくは100℃〜120℃であることを特色としている。
【0033】
本発明の好ましい実施形態の一例は、モノマー縮合が、C〜C−アルキルカルボン酸の塩、特に、脱水または一部水和された酢酸ナトリウムCHCOONa×(HO)の存在下で行われること、式中、は0〜2.9の範囲の数を表しており、またカルボン酸の塩の重量は、使用されるモノマーとカルボン酸の塩との総量に対して0.5%〜30%、好ましくは1%〜15%、非常に好ましくは3%〜8%であることを特徴とする、ポリエステル顆粒の製造方法である。
【0034】
本発明のさらに別の好ましい実施形態は、モノマー縮合が、C〜C−アルキルカルボン酸の塩、および、トルエンスルホネート、キシレンスルホネート、トルエンスルホネート、リン酸水素カリウムの中から選択される一つまたは複数の塩の存在下で行われること、またその際に炭酸塩のスルホン酸塩またはリン酸塩に対する混合比は、1〜99の範囲内であるとよいことを特徴とする、ポリエステル顆粒の製造方法である。
【0035】
本発明の方法によれば使用されるポリエステルは、合成時には融液として生じるが、低温気流、例えば空気流または窒素流の中で冷却することによって、または、好ましくはフレーク形成ロールまたはトレッドミルに、40〜80℃、好ましくは45〜55℃でかけることによって、鱗状、つまりフレーク状に固化される。この粗粒物は、粒径d90.3=10〜150μmの粉末に粉砕されるが、場合によってはそれに続いて粗粒を分離するための篩い分けが行われるようにするとよい。
【0036】
粉砕に適しているのは、主として衝撃破砕の原理で作動する一連のミルである。そのようなものとしては、例えば、場合によっては粒度の上限を定めるための一体型篩器が具備されたハンマーミル、ピンミル、またはジェットミルが考えられる。そこでは、粉末の磨砕度が、典型的な動作パラメータ(粉砕回転数、処理量)を変更することにより、例えばd90.3=10μm〜d90.3=150μmの間で、容易に変更することができる。粉砕プロセスでは、機械エネルギーの投入量と、それに伴う生成物の加熱を考慮する必要がある。その際には、被粉砕物の温度が、ミルへの付着やミルのブロッキングを回避するために、約60〜65℃の軟化域に達しないようにすべきであろう。ミルの型式によっては、ミルに通して送られる気体の体積流量により、既に十分な冷却効果をもたらすことができる。
【0037】
本発明の方法では、この粉末が、粒径約100〜1,600μmの顆粒に加工される。
【0038】
造粒法については、次に挙げる幾通りかの手法が検討対象となる。
【0039】
本発明の好ましい実施形態の一例では、造粒が、さらに別の添加剤を添加して、または添加しないで、粉砕後の粉末の圧縮によって行われる。粒径d90.3=10〜150μmの粉末材料の圧縮は、いわゆるローラコンパクタ(例えば、Hosokawa−Bepex社製、Alexanderwerk社製、Koeppern社製)で行われることが好ましい。加圧ロールの断面形状の選択を通じて、一方ではペレットまたはブリケットを、他方ではスキャブを作ることができる。これらの圧粉体は、続いてミル内で、約100〜1,600μmの所望の粒径を有する顆粒に破砕される。ミルのタイプとしては、類型的には、例えば篩ミルおよびハンマーミル(例えば、Hosokawa−Alpine社製、Hosokawa−Bepex社製)、またはローラミル(例えば、Bauermeister社製、Buehler社製)などの、穏やかな粉砕を行う粉砕装置が使用されることが好ましい。
【0040】
そのようにして生成された顆粒から、篩い分けにより微粒成分および場合によっては粗粒成分が分離される。粗粒成分は改めてミルに、微粒成分は改めて圧縮工程に送られる。顆粒の分級には、例えばAllgaier、Sweco、Rhewum各社の篩い分け機を使用することができる。
【0041】
本発明のさらに別の好ましい実施形態では、顆粒化が、確定した微粉度をもつ粉砕後の粉末から出発して、ミキサー内で造粒が成長するビルドアップ造粒により行われる。ポリエステルの造粒、特に、添加剤を含むポリエステルの造粒は、通例では回転式撹拌機構が具備された、バッチ式または連続式で稼動する、常用の撹拌装置で行うことができる。ミキサーとしては、例えばプラウブレードミキサー(Loedige KMタイプ、Drais K−Tタイプ)など、穏やかに作動する装置のほか、強力ミキサー(例えばEirich、Schugi、Loedige CBタイプ、Drais K−TTタイプ)も使用することができる。好ましい実施形態の一例においては、ポリエステルおよび添加剤が同時に混合される。しかし、ポリエステルおよび添加剤が、様々な組合せ形態で、それぞれ単独で、または他の添加剤と一緒に、混合物全体の中に装入されるようにした、多段階の混合プロセスも考えられる。低速ミキサーおよび高速ミキサーの順番は、必要に応じて入れ替えることができる。このミキサー造粒工程の滞留時間は、好ましくは0.5秒〜20分、非常に好ましくは2秒〜10分である。
【0042】
この造粒ステップには、顆粒の付着を回避するために、使用される添加剤(溶剤を含有した添加剤、または融液の形態をとる添加剤)によっては、乾燥ステップ(溶剤を含有した添加剤の場合)または冷却ステップ(融液状の添加剤の場合)が続くことになる。この後処理は、流動床式の装置で行われるが好ましい。続いて、粗粒成分および微粒成分が、篩い分けにより、粒径約100〜1,600μmの目標顆粒から分離される。粗粒成分は粉砕により破砕され、微粒成分と同様に、改めて顆粒化プロセスに送られる。
【0043】
本発明のさらに別の実施形態では、造粒が圧縮成形による造粉によって行われる。粉砕後のポリエステル粉末に、添加剤を、混合物が均質な可塑性塊として存在するように、添加する。この撹拌ステップは、上記の撹拌装置内で行われるとよいが、しかし混練機または特殊タイプの押出し機(例えば、Hosokawa−Bepex Corp.のエクストルードオーミックス)も考えられる。造粒塊は、続いて、押出し機を利用して、押出しダイのノズル孔を通して押し出され、その結果円筒形の押出し成形品が生じる。この押出しプロセスに適した装置は、特に、リングエッジプレス(例えばSchlueter社製)またはエッジランナー(例えばAmandus−Kahl社製)であり、場合によってはほかにも単軸機として実施される押出し機(例えばHosokawa−Bepex社製、Fuji−Paudal社製)や、好ましくは二軸スクリュー押出し機として実施される押出し機(例えばHaendle社製)が適している。ノズルの孔径は、時々のケースによりで選択されるが、典型的には0.7〜4mmの範囲にある。
【0044】
添加剤として検討されるのは、好ましくは、脂肪族アルコール、1〜100モルのEOを含むC〜C31−脂肪族アルコールポリアルコキシレート)、C〜C31−脂肪酸(例えばラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸)などの無水生成物、例えばグルタル酸、アジピン酸などのジカルボン酸またはそれらの無水物、アニオン性または非イオン性の界面活性剤、ワックス、シリコーン、不飽和カルボン酸および/またはスルホン酸のアニオン性およびカチオン性のポリマー、ホモ重合体、共重合体またはグラフト共重合体ならびにそれらのアルカリ塩、セルロースエーテル、澱粉、澱粉エーテル、ポリビニルピロリドン);一価または多価のカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸または3〜8個のC原子をもつエーテルカルボン酸およびそれらの塩、およびポリアルキレングリコールである。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、1,2−ポリプロピレングリコール、ならびに改質ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールが検討される。改質ポリアルキレングリコールに数えられるのは特に、相対分子量が600〜12,000の間、特に1,000〜4,000の間であるポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールの硫酸塩および/またはピロ硫酸塩である。もう一つの群は、同様に相対分子量が600〜6,000の間、好ましくは1,000〜4,000の間であるポリアルキレングリコールのモノサクシネートおよび/またはジサクシネートからなる。さらに、5〜30個のEOをもつトリメチロールプロパンなどのエトキシル化誘導体も含まれる。
【0045】
優先的に使用されるポリエチレングリコールは、直鎖構造でも、または分枝構造でも構わないが、特に好ましいのは直鎖状ポリエチレングリコールである。特に好ましいポリエチレングリコールに属するのは、相対分子量が2,000〜12,000の間のもので、なかでも4,000前後のものが有利であるが、相対分子量が3,500未満および5,000超のポリエチレングリコールは、特に、相対分子量が4,000前後であるポリエチレングリコールと組み合わせて使用されるようにするとよく、またそのような組合せには、ポリエチレングリコールの総量に対して50重量%超の、3,500〜5,000の間の相対分子量をもつポリエチレングリコールが含有されると有利である。
【0046】
改質ポリエチレングリコールには、片側または多数の末端基が封鎖されたポリエチレングリコールも属しているが、これらの末端基は、好適にはC〜C12−アルキル鎖であり、好ましくは、直鎖状又は分枝状であってよく、C〜C−アルキル鎖である。片側の末端基が封鎖されたポリエチレングリコール誘導体は、CxがC鎖長1〜20のアルキル鎖、yが50〜500、およびzが0〜20であるとよいとしたとき、式Cx(EO)y(PO)zに対応するものでも構わない。
【0047】
相対分子量が最大30,000までの低分子のポリビニルピロリドンおよびその誘導体も同様に適している。その場合の相対分子量は3,000〜30,000の間であることが好ましい。ポリビニルアルコールは、ポリエチレングリコールと組み合わせて使用されると好適である。
【0048】
添加剤は、その化学的特性に応じて、固形、融液、または水溶液として使用されるとよい。
【0049】
本発明の方法により製造されたポリエステル顆粒は、ポリエステル顆粒に対して0〜30重量%、好ましくは0〜25重量%、非常に好ましくは0〜20重量%の一種または数種の添加剤を含むことができる。
【0050】
本発明の方法により得られるポリエステル顆粒は、洗剤およびクリーニング剤における直接的な使用に適している。しかし、さらにもう一つの使用形態において、それ自体としては公知である方法により、ポリエステル顆粒にコーティング被膜が施されるようにするとよい。そのためにポリエステル顆粒は、追加ステップにおいて、薄膜形成物質により被覆されるようになっており、それにより製品特性にかなりの影響を与えることができる。コーティング剤としては、ワックス、シリコーン、脂肪酸、脂肪族アルコール、石鹸、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性およびカチオン性のポリマー、ポリエチレングリコール、ならびにポリアルキレングリコールなどの薄膜形成物質はすべて適している。
【0051】
検討対象になるのは、C〜C31−脂肪酸(例えばラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸)、例えばグルタル酸、アジピン酸などのジカルボン酸またはそれらの無水物;ホスホン酸、場合によっては他の慣用コーティング剤、特に脂肪酸、例えばステアリン酸と混合したホスホン酸、C〜C31−脂肪族アルコール;ポリアルキレングリコール(例えば、モル質量1,000〜50,000g/モルのポリエチレングリコール)、非イオン性物質(例えば、1〜100モルのEOを含むC〜C31−脂肪族アルコールポリアルコキシレート);アニオン性物質(例えば、アルカンスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、α−オレフィンスルホネート、アルキルサルフェート、C〜C31−炭化水素残基をもつアルキルエーテルサルフェート);ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール);ワックス(例えば、モンタンワックス、パラフィンワックス、エステルワックス、ポリオレフィンワックス);シリコーンである。
【0052】
溶融可能なコーティング物質中には、それ以外にも、この温度域では軟化したり溶融したりしないさらに別の物質、例えば、ポリマー(例えば、不飽和のカルボン酸および/またはスルホン酸のホモ重合体、共重合体、またはグラフト共重合体ならびにそれらのアルカリ塩、セルロースエーテル、澱粉、澱粉エーテル、ポリビニルピロリドン);有機物質(例えば、3〜8個のC原子をもつ一価または多価のカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸またはエーテルカルボン酸ならびにそれらの塩);染料;無機物質(例えば、珪酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩)が、溶解状態または懸濁状態で存在してもよい。
【0053】
被覆物質の含有率は、コーティングされたポリエステル顆粒の所望される特性に応じて、コーティングされたポリエステル顆粒に対して1〜30重量%、好ましくは5〜15重量%であるとよい。
【0054】
被覆物質を塗布するためには、ミキサー(機械的に誘起される流動床)および流動床装置(空気圧式により誘起される流動床)が利用されるとよい。ミキサーとしては、例えばプラウブレードミキサー(連続式およびバッチ式)、環状層流ミキサー、またはほかにもSchugiミキサーが可能である。ミキサーを使用する場合は、顆粒予熱機の内部で、および/またはミキサーの内部で直接、および/またはミキサーに後置される流動床の内部で、調質が行われるようにするとよい。コーティング後の顆粒を冷却するためには、顆粒冷却機または流動床式冷却機が使用されるとよい。流動床装置の場合は、調質が、流動床を形成するために使用される高温ガスを利用して行われるようになっている。流動床法でコーティングした顆粒も、ミキサー法による場合と同様に、顆粒冷却機または流動床式冷却機を使用して冷却することができる。ミキサー法でも流動床法でも、コーティング物質は、シングルノズルタイプまたはダブルノズルタイプのノズル装置を使用してスプレー塗布されるとよい。
【0055】
この調質工程は、実質的に30〜100℃の温度、ただし、それぞれの被覆物質の融点または軟化点以下である温度で行われる熱処理からなっている。その作業は、融点または軟化点をぎりぎりで下回る温度で行われることが好ましい。
【0056】
本発明の方法により製造されたポリエステル顆粒は、普通に保管される場合は、流動性を維持して、決して粘着性(べとつき)を示さない。
【0057】
本発明に従った方法により製造されたポリエステル顆粒は、洗濯温度が低いときの良好な溶解力を特色としている。ポリエステルは、紡織繊維に著しく改良された汚れ落ち特性を付与するとともに、その他の洗剤成分の、油脂性または色素系の汚れに対する汚れ落し能力を根底から支援する。
【0058】
さらに、本発明に従ったポリエステルは、洗濯物の後処理剤、例えば柔軟仕上剤に使用されると、有利であるかもしれない。硬質表面用の洗浄剤に含まれるポリエステルにより、処理される表面に汚れ忌避性を備えることができる。
【0059】
このため、洗剤および洗浄剤における使用という、本発明の方法により製造されたポリエステル顆粒の用途も、本発明のさらにもう一つの対象となっている。
【0060】
ポリエステル顆粒を配合可能な洗剤および洗浄剤の組成物は、粉末状、顆粒状、ペースト状、ゲル状、または液状である。
【0061】
それらの例は、洗濯用洗剤、デリケート衣類の手洗い用洗剤、色物洗剤、ウール用洗剤、カーテン用洗剤、汎用洗剤、タブレット洗剤、固形石鹸、しみ抜き剤、洗濯糊(澱粉糊、化学糊)、アイロン助剤である。
【0062】
本発明のポリエステル顆粒は、家庭用洗浄剤、例えば万能洗浄剤、食器用洗剤、カーペットクリーナー、および含浸剤、床およびその他の、表面がナノ技術によりコーティングされている、例えばプラスチック、セラミックス、ガラス製の硬質表面用の洗浄剤およびケア剤にも仕込むことができる。
【0063】
工業用洗浄剤の例は、例えばケースや自動車の計器を対象としたプラスチック用クリーナーおよびケア剤、ならびに、例えば自動車ボディなど塗装表面のクリーナーおよびケア剤である。
【0064】
本発明の洗剤、ケア剤および洗浄剤の組成物は、本発明のポリエステル顆粒を、完成品を基準として、少なくとも0.1重量%、好ましくは0.1〜10重量%、非常に好ましくは0.2〜3重量%含有する。
【0065】
これらの組成物の組成は、それぞれの組成物に予定されている使途に応じて、処理または洗濯の対象である繊維製品または洗浄対象である表面の種類に対して、適合されることになる。
【0066】
本発明の洗剤および洗浄剤は、界面活性剤、乳化剤、洗浄促進剤、漂白触媒、漂白活性化剤、金属イオン封鎖剤、グレー変色防止剤、移染抑制剤、色素固定剤、酵素、蛍光増白剤、柔軟化成分など慣用の成分を含むことができる。ほかにも、組成物または組成物の一部は、本発明の趣旨に沿って、染料および/または香料によって、所望の着色および/または香り付けすることができる。
【実施例】
【0067】
以下の例は、本発明の対象を詳しく説明するものであるが、本発明の対象はそれらに限定されない。
【0068】
例:
アニオン性ポリエステル1〜9
【0069】
ポリエステル1
KPG撹拌機、内部温度計、ガス導入管および蒸留ブリッジを備えた2lの四口フラスコに、1,2−プロパンジオールを281.5g、エチレングリコールを229.6g、PEG−250−モノメチルエーテルを250g、テレフタル酸ジメチルエステルを970.9g、および5−スルホイソフタル酸ジメチルエステル−Na塩を236.98g投入し、続いてNの導入によりこの反応混合物を不活性化した。それに続き反応混合物に、チタンテトライソプロピラート1gおよび酢酸ナトリウム0.8gを逆流方向に添加した。混合物を油浴でゆっくりと加熱したところ、内部温度約120〜150℃以上で固形成分が溶融し始めた。次に、撹拌下で30分以内に190℃に加熱した。約173℃でエステル置換または蒸留が始まった。化学量論に基づき必要とされる縮合物の量に達するまで、2時間かけて内部温度を210℃に上昇させた。その後、油浴の温度を約240〜250℃に上げ、内圧を30分以内に最良のオイルポンプにより減圧した。3時間の真空期の間にアルコールの過剰量を留別することにより、縮合を完了させた。この時間の間に、ポリエステル融液の内部温度はゆっくりと上昇し、反応終了時には約220℃に達していた。続いて、Nを用いて通気を行い、融液を薄板上に広げた。
【0070】
ポリエステル2
KPG撹拌機、内部温度計、ガス導入管および蒸留ブリッジを備えた3lの四口フラスコに、1,2−プロパンジオールを418.5g、エチレングリコールを279.3g、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルを212.4g、テレフタル酸ジメチルエステルを1359.3g、5−スルホイソフタル酸ジメチルエステル−Na塩を296.22g、およびポリエチレングリコール250を250g投入し、続いてNの導入によりこの反応混合物を不活性化した。それに続き反応混合物に、ナトリウムメチレート1.5gおよび炭酸ナトリウム0.5gを、逆流方向に添加した。混合物を油浴でゆっくりと加熱したところ、内部温度約120〜150℃以上で固形成分が溶融し始めた。次に、撹拌下で30分以内に190℃に加熱加熱した。約173℃でエステル置換または蒸留が始まった。化学量論に基づき必要とされる縮合物の量に達するまで、2時間かけて内部温度を210℃に上昇させた。その後、油浴の温度を約240〜250℃に上げ、内圧を30分以内に最良のオイルポンプにより減圧した。3時間の真空期の間にアルコールの過剰量を留別することにより、縮合を完了させた。この時間の間に、ポリエステル融液の内部温度はゆっくりと上昇し、反応終了時には約220℃に達していた。続いて、Nを用いて通気を行い、融液を薄板上に広げた。
【0071】
ポリエステル3
KPG撹拌機、内部温度計、ガス導入管およびブリッジ蒸留ブリッジ器を備えた3lの4つ首四口フラスコに、1,2−プロパンジオールを330g、エチレングリコールを202g、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルを145.8g、テレフタル酸ジメチルエステルを582.5gおよび5−スルホイソフタル酸ジメチルエステル−Na塩を296.22g投入し、続いてNの導入によりこの反応混合物を不活性化した。それに続き反応混合物に、チタンテトライソプロピラート1.02gおよび酢酸ナトリウム0.8gを逆流方向に添加した。混合物を、油浴でゆっくりと加熱したところ、内部温度約120〜150℃以上で固形成分が溶融し始めた。次に、撹拌下で45分以内に195℃に加熱した。約173℃でエステル置換または蒸留が始まった。化学量論に基づき必要とされる縮合物の量に達するまで、3時間かけて内部温度を210℃に上昇させた。その後、油浴の温度を約240〜255℃に上げ、内圧を60分以内に<20mbarに低下させた。4時間の真空期の間にアルコールの過剰量を留別することにより、縮合を完了させた。この時間の間に、ポリエステル融液の内部温度はゆっくりと上昇し、反応終了時には約225℃に達していた。続いて、Nを用いて通気を行い、融液を薄板上に広げた。
【0072】
ポリエステル4
反応過程は例2に準拠。
成分: 1,2−プロパンジオール 281.5g
エチレングリコール 223.4g
テレフタル酸ジメチルエステル 776.7g
5−スルホイソフタル酸ジメチルエステル
−Na塩 355.5g
8単位の酸化エチレンを含む獣脂アルコール(Genapol T080)
295.5g
チタンテトライソプロピラート 1.00g
酢酸ナトリウム 0.8g
【0073】
ポリエステル5
反応過程は例3に準拠。
成分: エチレングリコール 620.6g
テレフタル酸ジメチルエステル 970.9g
5−スルホイソフタル酸ジメチルエステル−Na塩 444.3g
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 162g
チタンテトライソプロピラート 1.00g
酢酸ナトリウム 0.8g
【0074】
ポリエステル6
反応過程は例1に準拠。
成分: 1,2−プロパンジオール 152.2g
エチレングリコール 124.1g
テレフタル酸ジメチルエステル 388.3g
5−スルホイソフタル酸−Li塩 177.7g
7単位の酸化エチレンを含むラウリルアルコール(Genapol LA 070) 100g
チタンテトライソプロピラート 1.00g
【0075】
ポリエステル7
反応過程は例1に準拠。
成分: 1,2−プロパンジオール 422.3g
エチレングリコール 335.1g
テレフタル酸ジメチルエステル 873.8g
5−スルホイソフタル酸−Na塩 177.7g
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 100g
ポリエチレングリコール 500 50g
ポリエチレングリコール 1500 50g
チタンテトライソプロピラート 1.00g
【0076】
ポリエステル8
反応過程は例1に準拠。
成分: 1,2−プロパンジオール 380.5g
エチレングリコール 186.2g
テレフタル酸ジメチルエステル 873.8g
5−スルホイソフタル酸−Na塩 444.3g
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル 125g
酸化エチレンと酸化プロピレンの共重合体(Genapol PF20)
150g
チタンテトライソプロピラート 1.00g
【0077】
ポリエステル9、スルホン基により末端基が一部封鎖された(キャッピングされた)
反応過程および成分は例3に準拠、ただし、トリエチレングリコールモノメチルエーテルの50モル%に代え、イセチオン酸のナトリウム塩を使用した。
【0078】
非イオン性ポリエステル10〜18
【0079】
【表1】

A 2,2-ビス-(ヒドロキシメチル)-プロピオン酸
B ペンタエリトリトール
DMT ジメチルテレフタレート
EG 1.2-エタンジオール
PG 1,2-プロパンジオール
PEG ポリエチレングリコール(200、1500、3000、4000、6000)
IPT チタンテトライソプロピラート
NaOAc 酢酸ナトリウム
PVF 多官能化合物
MPEG メチルポリグリコール
【0080】
非イオン性ポリエステル10〜18を調製するための一般合成手順
KPG撹拌機、内部温度計、ビグロー・カラム、蒸留ブリッジ、およびAnschuetz/Thiele受接管を備えた2lの四口フラスコに、先ず出発原料のジメチルテレフタレート(DMT)、1,2−エタンジオール(EG)および/または1,2−プロパンジオール(PG)ならびに無水酢酸ナトリウム(NaOAc)を投入した(使用量の詳細は表1参照)。
【0081】
混合物は、約125℃で完全に溶融するまで、油浴で徐々に加熱した。約130℃以上でエステル置換が開始し、その際にメタノールが留別した。蒸留開始から約15分後、温度160℃でチタンテトライソプロピラート(IPT)を添加した。合計で約2時間が経過した後、200℃でエステル置換を中断し、油浴の温度を下げた。
【0082】
次に、相当量のポリエチレングリコール(PEG)、メチルポリグリコール(MPEG)、および場合によっては多官能化合物(PFV)(使用量の詳細は表1参照)を融液に添加し、さらに約215℃まで加熱した。その後、減圧し、30分以内に10mbarにまで圧力を低下させた。続いて、215℃/10mbarでさらに約1時間にわたり再縮合したが、その時には溜出物の生成量が著しく減少した。最後に、油浴の温度を下げ、装置を減圧下から切り離して窒素を用いて通気を行った。なおも高温の融液を、容器に詰め替えた。
【0083】
このポリエステル顆粒を粉砕して造粒し、顆粒の5℃および20℃時の溶解度を調査して、溶解速度を従来法で製造したポリエステル顆粒と比較した。
【0084】
溶解挙動の検討:
そのために、800mlのビーカーに水750mlを入れ、絶えず撹拌しながら所期の試験温度(例えば、T=20℃、またはT=10℃)に調整した。アルカリ性洗濯液のシミュレーションを行うために、水に苛性ソーダを添加して、pH値を約10〜11に設定した。
【0085】
試験対象の顆粒の試料を、予め篩い分けることにより、粒径400〜1,250μmに調整して、そこから0.6〜0.7gの量を量り取った。この分量を撹拌下の洗濯液の中へ移し入れて、5分の溶解時間で停止した。続いてこの液を、グラスファイバ濾紙を備えた吸込みフィルタを使用して濾別した。そのガラス壁に生成物の残滓が付いている場合は、フィルタ全体に脱イオン水をかけた。濾紙をドライボックスに入れて乾かし、続いて濾滓の重量を決定した。試料の正味重量を基準として、溶液中に入った材料の割合を算出した(秤量可能な残滓ゼロ=溶解度100%、試料の全量が濾紙上に残る場合=溶解度0%)。
【0086】
添加剤を含まない顆粒
凝固した例3のポリエステル融液の材料試料を、先ず粉砕により様々な磨砕度をもつ粉末に変えた。その際には磨砕度をそれぞれ、レーザ回折(Malvern Mastersizer)による粒度分布測定で決定されるd90.3値により測定した。それに続き、粉砕後の粉末を、乾式圧縮により、新たに添加剤を加えることなく、粒径400〜1,250μmの顆粒に加工した。比較用製品として、凝固したポリエステル融液から、予備粉砕なしで、粉砕/篩い分けにより、顆粒を直接製造した。
【0087】
続いて、被験顆粒に前記溶解試験を受けさせ、その溶解挙動を測定した。
【0088】
次表に、T=5℃時の溶解実験の結果をまとめて示す。
【0089】
【表2】

【0090】
上の結果から明らかに認められるように、造粒前に磨砕度を、特定の値を設定することにより、ポリエステル顆粒の低温水溶性に有意な影響を及ぼし、それを向上させることができる。
【0091】
例2:添加剤を含む顆粒
凝固した例3のポリエステル融液の材料試料を、先ず粉砕により定義済みの磨砕度をもつ粉末に変えた。その際には磨砕度を、レーザ回折(Malvern Mastersizer)による粒度分布測定で決定されるd90.3値により特性化した。それに続き、粉砕後の粉末を、乾式圧縮により、一方では添加剤を加えることなく、他方ではPEG6000を(総量に対して)20%の量で添加し、粒径400〜1,250μmの顆粒に加工した。比較用製品として、凝固したポリエステル融液から、予備粉砕なしで、粉砕/篩い分けにより、顆粒を直接製造した。
【0092】
次表に、T=5℃時の溶解実験の結果をまとめて示す。
【0093】
【表3】

【0094】
この結果も、ポリエステルを狙い通りに予備粉砕することによって、溶解度の明らかな向上を達成できることを示している。そこには、添加剤の添加による不利な影響は認められない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸および/またはそれらの誘導体、ジオールおよび/またはポリオールからの誘導単位を含むポリエステルを含有するポリエステル顆粒の製造方法であって、
a)前記ポリエステルの凝固した融液を、粒径d90.3=10〜150μmの粉末に粉砕する工程、および
b)前記粉末を粒径150〜1,600μmの顆粒に加工する工程
からなることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記粉末を、粒径200〜1,500μm、好ましくは250〜1,200μmの顆粒に加工する工程を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a) 芳香族ジカルボン酸および/またはポリカルボン酸、および/またはそれらの塩、および/またはそれらの無水物、および/またはそれらのエステル、
脂肪族および環状脂肪族のジカルボン酸、それらの塩、それらの無水物、および/またはそれらのエステル、
スルホ基含有ジカルボン酸、それらの塩、それらの無水物、および/またはそれらのエステル
の中から選択されるジカルボン酸および/またはポリカルボン酸および/またはそれらの誘導体から誘導された構造要素、
b)ジオールから誘導された構造要素、
c)ポリオールから誘導された構造要素、および
任意に、
d)スルホ基含有酸
から誘導された構造単位から、
任意に、
e)スルホ基含有アルコールから、
任意に、
f)ジオールエーテルまたはポリオールエーテルから、
任意に、
g)C〜C24−アルコールおよびオキシアルキル化されたC〜C24−アルコールから
誘導された構造要素を含むポリエステルが使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テレフタル酸無水物、フタル酸無水物、イソフタル酸無水物、テレフタル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フタル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、イソフタル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、蓚酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、5−スルホイソフタル酸、2−ナフチルジカルボキシベンゾイルスルホネート、2−ナフチルジカルボキシベンゼンスルホネート、フェニルジカルボキシベンゼンスルホネート、2,6−ジメチルフェニル−3,5−ベンゼンスルホネート、フェニル−3,5−ジカルボキシベンゼンスルホネートから誘導された構造要素を含むポリエステルが使用されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
テレフタル酸から誘導された構造要素を含むポリエステルが使用されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
スルホ基含有酸、好ましくは、2−ヒドロキシエタンスルホン酸およびスルホ安息香酸から誘導された構造要素を含むポリエステルが使用されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
式(1)(XOS(CHRCHRO)H)で表される化合物から誘導された末端基により封鎖されたポリエステルが使用され、
式中、RおよびRが、互いに独立して水素または1〜4個の炭素原子をもつアルキル基、好ましくは水素および/またはメチルを表し、XがLi、Na、K、1/2Caまたは1/2Mgを表し、nが1〜50、好ましくは2〜10の範囲の数であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
式(2)(RO(CHRCHRO)H)で表される化合物から誘導された末端基により封鎖されたポリエステルが使用され、
式中、RおよびRが、互いに独立して水素または1〜4個の炭素原子をもつアルキル基、好ましくは水素および/またはメチルを表し、Rが1〜4個の炭素原子をもつアルキル基を表し、nが1〜50、好ましくは2〜10、非常に好ましくは3〜6の範囲の数であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール
から誘導された構造要素を含むポリエステルが使用されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
モル質量200〜7,000、好ましくは3,000〜6,000g/モルのポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコール、モル質量90〜7,000、好ましくは200〜5,000g/モルの、プロピレングリコール、エチレングリコールおよび/またはブチレングリコールからなる、ブロックコポリマー、グラジエントコポリマー、あるいはほかにもランダムコポリマー状の重合生成物から誘導された構造要素を含むポリエステルが使用されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
ポリオール、特にグリセリン、ペンタエリトリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,3−ヘキサントリオール、ソルビットまたはマンニットから誘導された構造要素を含むポリエステルが使用されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
〜C24−アルコールおよびオキシアルキル化されたC〜C24−アルコール、特にオクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコールまたはステアリルアルコール、およびこれらに相当するオキシアルキル化された、特にエトキシル化および/またはプロポキシル化されたアルコール、アルキルフェノール、特にオクチルフェノール、ノニルフェノールおよびドデシルフェノールおよびオキシアルキル化されたC〜C18−アルキルフェノール、アルキルアミン、特にC〜C24−モノアルキルアミンおよび/またはオキシアルキル化されたC〜C24−アルキルアミンから誘導された構造要素を含むポリエステルが使用されることを特徴とする、請求項1に記載のポリエステル顆粒の製造方法。
【請求項13】
a)一つまたは複数の非イオン性芳香族ジカルボン酸またはそれらのC〜C−アルキルエステル、
b)エチレングリコール、
c)1,2−プロピレングリコール、
d)平均モル質量[M]200〜8,000g/モルのポリエチレングリコール、
e)平均モル質量200〜5,000のポリアルキレングリコールエーテルを含む、C〜C−アルキルポリアルキレングリコールエーテル、および、
f)多官能化合物、
ただし、成分b)、c)、d)、e)およびf)のモル比は、いずれも成分a)1モルを基準として、成分b)については0.1〜4モル、成分c)については0〜4モル、成分d)については0〜0.5モル、成分e)については0〜0.5モル、および成分f)については0〜0.25モルであり、
から誘導された構造要素を含むポリエステルが使用されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
a)一つまたは複数の非イオン性芳香族ジカルボン酸またはそれらのC〜C−アルキルエステル、
b)一つまたは複数のスルホ基含有ジカルボン酸またはそれらのC〜C−アルキルエステル、
c)エチレングリコール、
d)1,2−プロピレングリコール、
e)平均モル質量[M]200〜8,000g/モルのポリエチレングリコール、
f)平均モル質量200〜5,000のポリアルキレングリコールエーテルを含む、C〜C−アルキルポリアルキレングリコールエーテル、
g)式(1)(XOS(CHRCHRO)H)の一つまたは複数の化合物、ただし、RおよびRが、互いに独立して水素または1〜4個の炭素原子をもつアルキル基、好ましくは水素および/またはメチルを表し、XがLi、Na、K、1/2Caまたは1/2Mgを表し、nが1〜50、好ましくは2〜10の範囲の数である、、
および、
h)多官能化合物、ただし、成分b)、c)、d)、e)、f)、g)およびh)のモル比は、いずれも成分a)1モルを基準として、成分b)については0.1〜4モル、成分c)については0〜4モル、成分d)については0〜4モル、成分e)については0〜0.5モル、成分f)については0〜0.5モル、成分g)については0〜0.5モル、および成分h)については0〜0.25であり、
から誘導された構造要素を含むポリエステルが使用されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
前記ステップa)で得た粉末を添加剤と一緒に造粒する工程を特徴とする、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2011−524450(P2011−524450A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513929(P2011−513929)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004231
【国際公開番号】WO2009/152994
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】