説明

ポリエーテルポリオールおよびポリウレタンフォームの製造方法

【課題】 ポリエーテルの疎水性を損なうことなく、樹脂の製造原料として十分な反応性を持ったポリエーテルポリオール、並びにそのポリエーテルポリオールから得られるポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】 活性水素含有化合物に、炭素数3以上の1,2−アルキレンオキサイドを主体としエチレンオキサイドを含むアルキレンオキサイドがブロック付加、またはランダムおよびブロック付加されてなる末端エチレンオキサイド付加ポリエーテルポリオールであって、末端に三弗化ほう素の存在下、炭素数3以上の1,2−アルキレンオキサイドが付加され、さらにアルカリ触媒の存在下、エチレンオキサイドが付加されてなるポリエーテルポリオール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は末端の水酸基の1級化率が高いポリエーテルポリオール、およびそのポリエーテルポリオールを用いたポリウレタンフォームの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
活性水素含有化合物にアルキレンオキサイド(以下AOと略記する。)等のモノエポキサイドを開環反応させて得られるポリオキシアルキレンポリオール等のポリエーテルポリオールは、ポリウレタン、ポリエステル等の樹脂原料、界面活性剤、潤滑剤、その他の用途に広く用いられている。特に、芳香族ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱硬化ウレタン樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、アクリル系樹脂に可とう性、柔軟性、低温ゴム弾性等の特性を付与する目的で、従来より、各種のポリエーテル化合物の利用が検討されている。また、このポリエーテル化合物としては、側鎖を有するポリエーテル化合物、例えばグリセリンのプロピレンオキサイド(以下POと略記する。)付加物やポリプロピレングリコール等が効果が高いことが知られており、このものは一般にグリセリンやプロピレングリコール等の水酸基含有化合物にアルカリ触媒の存在下にPOを開環付加重合させることで得られる。
【0003】
しかし、このような方法で得られるPOのみの開環重合物を用いた場合、末端水酸基の大部分が2級水酸基であり、1級水酸基は通常5%未満しか存在せず、ポリエーテル化合物の反応性が低すぎるため、本来の物性を発現するまでの反応率を得るためには、膨大な時間を必要とし、実用的でない。このような問題を解消するために、POの開環付加重合に続いてエチレンオキサイド(以下EOと略記する。)の開環付加重合を行い、末端1級水酸基の比率を高めたポリエーテルが用いられることが多い(例えば、非特許文献1参照)。
しかしながら、このように末端に多量のEOを付加重合したポリエーテルは親水性が増大するため、これを用いた硬化後の樹脂は成型品、接着剤、塗料、フィルム等多くの用途において、吸水性の増大や耐水性の悪化等の好ましくない性質を有し、限られた用途でしか用いることができない。例えば、半硬質ポリウレタンフォームに用いた場合、硬化性には優れるものの、脱型時に膨れたり、逆に収縮が大きいという問題があり、軟質ポリウレタンフォームに用いた場合、得られたフォームの耐湿物性が低下するという問題がある。
【非特許文献1】ポリウレタン樹脂ハンドブック(岩田敬治編、日刊工業新聞社刊)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ポリエーテルの疎水性を損なうことなく、樹脂の製造原料として十分な反応性を持ったポリエーテルポリオール、並びにそのポリエーテルポリオールから得られるポリウレタンフォームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これらの問題点を解決するべく鋭意検討した結果、特定の構造を有するポリエーテルポリオールが、EOの付加モル数が少なく疎水性を保ったまま、十分な反応性を有することを見いだし、本発明に到達した。
すなわち本発明は、活性水素含有化合物に、炭素数3以上の1,2−アルキレンオキサイドを主体としエチレンオキサイドを含むアルキレンオキサイドがブロック付加、またはランダムおよびブロック付加されてなる末端エチレンオキサイド付加ポリエーテルポリオールであって、末端に三弗化ほう素の存在下、炭素数3以上の1,2−アルキレンオキサイドが付加され、さらにアルカリ触媒の存在下、エチレンオキサイドが付加されてなるポリエーテルポリオール(a);並びに、ポリオール成分(A)と有機ポリイソシアネート成分(B)とを、水を含有する発泡剤(C)、ウレタン化触媒(D)、および必要により整泡剤(E)の存在下で反応させてポリウレタンフォームを製造する方法において、(A)が、請求項1〜3のいずれか記載のポリエーテルポリオール(a)を含有することを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法;である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、ポリエーテルの疎水性を損なうことなく、樹脂の製造原料として十分な反応性を持ったポリエーテルポリオールが得られる。また、樹脂物性(引張強度、曲げ強度、水膨潤率等)に優れる樹脂を得ることができる。
さらに、このポリエーテルポリオールを用いることにより、硬化性に優れ、且つ、脱型時に膨れや収縮が小さい半硬質ポリウレタンフォームや、耐湿物性の低下がなく、密度の均一な軟質ポリウレタンフォームを製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において、末端水酸基の1級OH化率は、予め試料をエステル化の前処理をした後に1H−NMR法により求める。1H−NMR法の詳細を以下に具体的に説明する。
<試料調製法>
測定試料約30mgを直径5mmの1H−NMR用試料管に秤量し、約0.5mlの重水素化溶媒を加え溶解させる。その後、約0.1mlの無水トリフルオロ酢酸を添加し25℃で約5分間放置して、ポリオールをトリフルオロ酢酸エステルとし、分析用試料とする。
ここで重水素化溶媒とは、重水素化クロロホルム、重水素化トルエン、重水素化ジメチルスルホキシド、重水素化ジメチルホルムアミド等であり、試料を溶解させることのできる溶媒を適宜選択する。
【0008】
<NMR測定>
通常の条件で1H−NMR測定を行う。
<末端水酸基の1級OH化率の計算方法>
1級水酸基の結合したメチレン基由来の信号は4.3ppm付近に観測され、2級水酸基の結合したメチン基由来の信号は5.2ppm付近に観測されるから、末端水酸基の1級OH化率は下式〔1〕により算出する。
1級OH化率(%)=[r/(r+2s)]×100 〔1〕
ただし、
r:4.3ppm付近の1級水酸基の結合したメチレン基由来の信号の積分値
s:5.2ppm付近の2級水酸基の結合したメチン基由来の信号の積分値
である。
【0009】
本発明のポリエーテルポリオール(a)は、活性水素含有化合物に、炭素数3以上の1,2−AOを主体としEOを含むAOを、後述する方法で付加して得ることができる。
【0010】
活性水素含有化合物の具体例としては、多価アルコール、アミン、多価フェノール、ポリカルボン酸が挙げられる。
多価アルコールとしては、炭素数2〜20の2価アルコール(脂肪族ジオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコール;および脂環式ジオール、例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのシクロアルキレングリコール)、炭素数3〜20の3価アルコール(脂肪族トリオール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオールなどのアルカントリオール);炭素数5〜20の4〜8価またはそれ以上の多価アルコール(脂肪族ポリオール、例えば、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトールなどのアルカンポリオールおよびそのもしくは3価アルコールの分子内もしくは分子間脱水物;ならびにショ糖、グルコース、マンノース、フラクトース、メチルグルコシドなどの糖類およびその誘導体)が挙げられる。
【0011】
アミンとしては、アルカノールアミン、ポリアミンおよびモノアミンが挙げられる。
アルカノールアミンとしては、炭素数2〜20のアルカノールアミン(例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびイソプロパノールアミン)などが挙げられる。
ポリアミンとしては、脂肪族アミンとして、炭素数2〜6のアルキレンジアミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミン)、炭素数4〜20のポリアルキレンポリアミン(アルキレン基の炭素数が2〜6のジアルキレントリアミン〜ヘキサアルキレンヘプタミン、例えば、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラミン)などが挙げられる。
また、炭素数6〜20の芳香族ポリアミン(例えば、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、メチレンジアニリンおよびジフェニルエーテルジアミン);炭素数4〜20の脂環式ポリアミン(例えば、イソホロンジアミン、シクロヘキシレンジアミンおよびジシクロヘキシルメタンジアミン);炭素数4〜20の複素環式ポリアミン(例えば、ピペラジンおよびアミノエチルピペラジン)等が挙げられる。
モノアミンとしては、アンモニア;脂肪族アミンとして、炭素数1〜20のアルキルアミン(例えば、n−ブチルアミンおよびオクチルアミン);炭素数6〜20の芳香族モノアミン(例えば、アニリンおよびトルイジン);炭素数4〜20の脂環式モノアミン(例えば、シクロヘキシルアミン);炭素数4〜20の複素環式モノアミン(例えば、ピペリジン)等が挙げられる。
【0012】
多価フェノールとしては、ピロガロール、ハイドロキノンおよびフロログルシン等の単環多価フェノール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、およびビスフェノールスルホン等のビスフェノール;フェノールとホルムアルデヒドの縮合物(ノボラック);たとえば米国特許第3265641号明細書に記載のポリフェノール等が挙げられる。
【0013】
ポリカルボン酸としては、炭素数4〜18の脂肪族ポリカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸など)、炭素数8〜18の芳香族ポリカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸など)、およびこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。
これらのうちで好ましいものは、多価アルコールである。
【0014】
上記活性水素含有化合物(2種以上併用してもよい)に付加させる炭素数3以上の1,2−AOとしては、炭素数が3〜20のものが好ましく、炭素数3〜8のものがさらに好ましい。具体例としては、PO、1,2−ブチレンオキサイド(以下BOと略記)、1,2−ペンテンオキサイド、スチレンオキサイド(以下SOと略記)ならびにこれらの2種以上の併用(ブロックおよび/またはランダム付加)が挙げられる。好ましくは、POである。
AO中の炭素数3以上1,2−のAOの含量は、好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0015】
ポリエーテルポリオール(a)は、上記活性水素含有化合物に、1,2−AOとEO含むAOを、ブロック付加、またはランダムおよびブロック付加したものであり、末端に1,2−AO付加後、さらにEO付加されたものである。具体例としては、上記活性水素含有化合物に炭素数3以上の1,2−AO(下記<1>〜<3>では*AOと略記する。)とEOを下記の様式で付加したものが挙げられる。
<1>*AO−EOの順序でブロック付加したもの(チップド)
<2>*AO−EO−*AO−EOの順序でブロック付加したもの(バランスド)
<3>EO−*AO−EOの順序でブロック付加したもの
<4>特開昭57−209920号公報記載の順序でランダムまたはブロック付加したもののうち末端EO付加物
<5>特開昭53−13700号公報記載の順序でランダムまたはブロック付加したもののうち末端EO付加物
これらの中では、<1>が好ましい。
【0016】
本発明のポリエーテルポリオール(a)は、前記活性水素含有化合物もしくはそのAO付加物に、三弗化ホウ素の存在下で、炭素数3以上の1,2−AOを付加させ、次いでアルカリ触媒の存在下、末端にEOを付加させて得られる。なお、三弗化ホウ素の存在下で、炭素数3以上の1,2−AOを付加させる際の出発物質として、活性水素含有化合物のAO付加物を用いる場合、その出発物質において活性水素含有化合物にAOを付加する際に用いる触媒は特に限定されず、三弗化ホウ素であってもアルカリ触媒であってもよいが、アルカリ触媒が好ましい。
【0017】
1,2−AOの付加条件としては、例えば、生成する開環重合体に対して、好ましくは0.0001〜10質量%、さらに好ましくは0.001〜1質量%の三弗化ホウ素を用い、好ましくは0〜250℃、さらに好ましくは20〜180℃で反応させる。
【0018】
上記の1,2−AO付加物は三弗化ホウ素を含んでいるが、必要により三弗化ホウ素は分解および/または除去してもよい。
分解方法としては、水および/またはアルコール化合物および必要により苛性アルカリやアミン化合物などの塩基性物質を加える方法がある。分解に際して、温度は好ましくは10〜180℃、さらに好ましくは80〜150℃である。分解は密閉状態で行ってもよく、真空源に接続して排気しながら行ってもよく、あるいは水またはアルコール化合物を連続して添加しながら行ってもよい。添加する水またはアルコールは、液体の状態で添加してもよく、蒸気あるいは固体状態で添加してもよい。水および/または、アルコール化合物の使用量は、付加生成物に対して、好ましくは0.1〜100質量%、さらに好ましくは1〜20質量%である。塩基性物質の使用量は、付加生成物に対して好ましくは0〜10質量%、さらに好ましくは0〜2質量%である。
【0019】
除去方法としては、例えば合成珪酸塩(マグネシウムシリケート、アルミニウムシリケートなど)、活性白土、活性炭などの吸着剤もしくはイオン交換樹脂を用いた吸着法や、水、苛性アルカリ水溶液を用いた向流抽出法あるいは静置分液法や、イオン交換膜などを用いた膜分離法や、低温晶析法などがある。
【0020】
ポリエーテルポリオール(a)は、三弗化ホウ素の存在下に得られた1,2−AOが付加されたポリオールに、さらにEOを付加させることで得られるが、付加させる前のポリオールの末端水酸基の1級OH化率が30〜50%と、アルカリ触媒を用いた場合と比較して極めて大きいため、少ないEO使用量で末端水酸基の1級OH化率を大きくできる。 上記EO付加に用いる触媒としては、アルカリ触媒を用いる。アルカリ触媒を用いないとEO付加反応が困難である。
【0021】
アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、炭酸カリウム、トリエチレンジアミンなどが挙げられる。なお、塩化スズ、トリエチルアルミニウム、ヘテロポリ酸などの酸触媒;亜鉛ヘキサシアノコバルテート;ホスファゼン化合物などの触媒を併用してもよい。触媒の使用量は特に限定されないが、生成する重合体に対して、好ましくは0.0001〜10質量%、さらに好ましく0.001〜1質量%である。
【0022】
なお、従来のポリエーテルポリオールの製造方法として、アルカリ触媒存在下に炭素数3以上の1,2−AOを反応させる方法で得られるポリオールの末端水酸基の1級OH化率は極めて低く(例えば、水酸化カリウムを用いた場合は通常2%以下)、ほとんどの末端水酸基が2級または3級水酸基である。このため、このポリオールはイソシアネート基などの反応性基との反応性が不十分であり、十分な反応性を確保するためさらにEOを付加させる方法が知られている。
ところが、EOを大量に付加させないと末端水酸基の1級OH化率は高くならない。したがって、同じ組成の、活性水素含有化合物の1,2−AO/EO付加物の場合、本願発明のポリエーテルポリオール(a)の方が、アルカリ触媒のみを用いて得られたものよりも、末端水酸基の1級OH化率が高くなる。
【0023】
ポリエーテルポリオール(a)の水酸基価(mgKOH/g、以下の水酸基価も同様)は、10以上が好ましく、さらに好ましくは13〜1300、とくに好ましくは16〜1000である。本発明における水酸基価は、JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定される。
水酸基価が上記範囲内であると、ポリウレタンフォームなどの用途に好適である。
また、ポリエーテルポリオール(a)は、反応性と粘度の点から、好ましくは平均2〜8個、さらに好ましくは平均2.5〜8個の水酸基を有する。
【0024】
また、(a)の活性水素1個あたりのEO付加モル数は20以下が好ましく、末端水酸基の1級OH化率は40%以上が好ましい。
EO付加モル数は、さらに好ましくは19以下、とくに好ましくは0.1〜18である。1級OH化率は、さらに好ましくは60%以上、とくに好ましくは70%以上である。
付加モル数と1級OH化率が上記の範囲内であると、疎水性と反応性が共に良好である。
なお、後述する軟質ポリウレタンフォームの製造に用いる場合の(a)中のEOの含有量は、使用するAOの全質量に基づいて、30質量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.1〜20質量%、とくに好ましくは1〜15質量%である。
EOの含有量が30質量%以下であると、ポリウレタンフォーム発泡時にセルが独立気泡となりにくく、さらに良好なフォームが得られる傾向にある。
【0025】
本発明のポリエーテルポリオール(a)を、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などのポリオール成分として使用することにより、このポリオール成分は疎水性であり、かつイソシアネート、カルボン酸、エポキシと高反応性であるという特徴がある。すなわち、本発明のポリエーテルポリオール(a)から誘導される樹脂は、製造時の反応性が高く、樹脂物性(引張強度、破断伸び、曲げ強度など)の湿度依存性が低いという特徴を有する。
【0026】
本発明のポリウレタンフォームの製造方法においては、ポリオール成分(A)と有機ポリイソシアネート成分(B)とを、水を含有する発泡剤(C)、ウレタン化触媒(D)、および必要により整泡剤(E)の存在下で反応させてポリウレタンフォームを製造する方法において、(A)の少なくとも一部として、本発明のポリエーテルポリオール(a)を含有する。
(a)を用いることで、半硬質ポリウレタンフォームを製造した場合は、硬化性に優れ、且つ、脱型時に膨れや収縮が小さいフォームが得られ、軟質ポリウレタンフォームを製造した場合は、耐湿物性の低下がなく密度の均一なフォームが得られる。
【0027】
ポリウレタンフォームの製造に用いるポリエーテルポリオール(a)は、2種以上を併用してもよく、その水酸基価(平均)は10〜200が好ましい。水酸基価は、さらに好ましくは13〜180、とくに好ましくは16〜150であり、軟質ポリウレタンフォームに用いる場合は、最も好ましくは20〜38である。
(a)の水酸基価が10以上では硬化性が良好であり、粘度が高くならず取り扱い作業性が良好であり、水酸基価が200以下であるとポリウレタンフォームとしての風合いが良好であり、反発弾性率が向上する。
【0028】
また、ポリウレタンフォームの製造に用いる(a)の1分子当たりの平均水酸基数は、2〜8が好ましく、さらに好ましくは2〜4、とくに好ましくは2.5〜4である。水酸基数が2以上では、圧縮残留歪率および湿熱圧縮残留歪率が減少し、反発弾性率が増加する傾向にあり、8以下であると、伸びが増加する傾向にある。
【0029】
また、高温での劣化が特に少ないポリウレタンフォームを得たい場合には、総不飽和度が0.05meq/g以下(とくに0.04meq/g以下)のポリエーテルポリオール(a)を用いるのが好ましい。
総不飽和度が0.05meq/g以下の(a)は、例えば、前記活性水素含有化合物に水酸化セシウム等(例えば米国特許第3,393,243号明細書)の触媒の存在下で炭素数3以上の1,2−AO(とくにPO)を付加させ、触媒を除去した後、三弗化ほう素の存在下で炭素数3以上の1,2−AOを付加させ、さらにアルカリ触媒の存在下EOを付加させることにより得られる。ここで、総不飽和度は、JISK−1557記載の方法で測定された値である。
なお、この総不飽和度が0.05meq/g以下のポリエーテルポリオール(a)は、ポリウレタンフォーム以外の樹脂の原料としても有用である。
【0030】
ポリオール成分(A)中に用いるポリエーテルポリオール(a)は、その少なくとも一部を(a)中でビニルモノマーを重合させて得られる重合体ポリオール(a1)として用いてもよい。
重合体ポリオール(a1)は、本発明のポリエーテルポリオール(a)中でビニルモノマーを重合させて得られたものである。
(a1)は、(a)中で、ラジカル開始剤存在下、アクリロニトリル、スチレン、アルキル(炭素数1〜24)(メタ)アクリレートおよび塩化ビニリデン等のビニルモノマー(好ましくはアクリロニトリルおよび/またはスチレン)を重合し安定分散させたものである。重合体ポリオールは、公知の方法で容易の製造することができ、例えば、米国特許第3383351号明細書などに記載の方法が挙げられる。
重合体ポリオール(a1)中のビニルポリマーの含量は、15〜60質量%が好ましく、さらに好ましくは20〜50質量%である。
【0031】
製造するポリウレタンフォームが半硬質ポリウレタンフォームである場合、ポリオール成分(A)中に(a)と共に、活性水素価が250以上の活性水素化合物(d)を含有するのが好ましい。
(d)の活性水素価は、好ましくは300〜1870、さらに好ましくは350〜1830である。(d)の活性水素価が300〜1870のとき、特に硬化性に優れ、且つ、脱型時に膨れや収縮が小さい。
上記活性水素価は、56100/活性水素含有基1個あたりの分子量、を意味し、活性水素含有基が水酸基の場合、水酸基価に相当する。
【0032】
(d)の具体例としては、多価アルコール、アミン(アルカノールアミンおよびポリアミン)、および活性水素含有化合物にAOを付加した構造のポリオール並びにこれらの混合物が挙げられる。多価アルコールおよびアミンとしては、ポリエーテルポリオール(a)の原料として前述したものが挙げられる。
【0033】
AOを付加する活性水素含有化合物としては、前記の多価アルコール、アミン(アルカノールアミンおよびポリアミン)以外に、モノアミン、多価フェノール、ポリカルボン酸等が挙げられる。これらの化合物についても前述のものが挙げられる。
上記活性水素含有化合物(2種以上併用してもよい)に付加させるAOとしては、前記のものが挙げられる。
これら(d)のうちで好ましいものは、多価アルコールおよびアルカノールアミンである。
【0034】
また、半硬質ポリウレタンフォームを製造する場合、ポリオール成分(A)中には、(a)、または(a)と(d)以外に、必要により他のポリオール(e)を併用することもできる。
(e)としては、ポリエーテルポリオール、重合体ポリオール、ポリエステルポリオール、変性ポリオールもしくはモノオール、多価アルコール、アミン並びにこれらの混合物であって、(a)以外のもの(例えばアルカリ触媒のみを用いて得られたポリエーテルポリオール、およびそのポリエーテルポリオール中でビニルモノマーを上記の方法で重合させて得られる重合体ポリオール)等が挙げられる。(e)の好ましい水酸基数、水酸基価は(a)と同様である。
【0035】
(A)中の(a)と(d)の合計に基づく(d)の含有量は、好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは0.1〜20質量%、とくに好ましくは0.2〜15質量%である。
また、(A)中の(e)の割合は、好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、とくに好ましくは1〜50質量%である。また、(a)と(d)の合計は、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、とくに好ましくは50〜99質量%である。
【0036】
軟質ポリウレタンフォームを製造する場合、ポリオール成分(A)中には、(a)〔(a1)を含む〕以外に、必要により前記の他のポリオール(e)を併用することができる。
また、(e)の中でも、鎖延長剤および/または架橋剤(e1)、あるいは重合体ポリオール(e2)を使用することが好ましい場合がある。
(e1)としては、ポリウレタンに通常使用できるものが使用でき、例えば、(e)のうち、エチレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、グリセリン、トリメチロールプロパンおよびD−ソルビトール等の、炭素数2〜6の多価アルコールおよびアルカノールアミンが挙げられる。
ポリオール成分(A)中の(e)の割合は、好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、とくに好ましくは1〜50質量%である。また、(a)の割合は、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、とくに好ましくは50〜99質量%である。また(e1)の量は、(A)中、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは0.01〜5質量%である。
【0037】
ポリオール成分(A)中の重合体ポリオールの含量〔(a1)と(e2)の合計〕はとくに限定されないが、ポリオール成分(A)の質量に対して、50質量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.1〜40質量%、特に好ましくは1〜30質量%である。
また、(A)中のビニルポリマーの含量は、好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは0.1〜30質量%である。
【0038】
本発明のポリウレタンフォームの製造方法に用いる有機ポリイソシアネート成分(B)は、通常ポリウレタンフォームに使用される2〜8価またはそれ以上の有機ポリイソシアネートはすべて使用でき、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらの変性物(例えば、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基、またはオキサゾリドン基含有変性物)、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く;以下のポリイソシアネートも同様)6〜16の芳香族ジイソシアネート、炭素数6〜20の芳香族トリイソシアネートおよびこれらのイソシアネートの粗製物などが挙げられる。具体例としては、2,4−および2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、1,3−および1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4’−および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(粗製MDI)、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネートなどが挙げられる。
【0039】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数6〜10の脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
脂環式ポリイソシアネートとしては、炭素数6〜16の脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数8〜12の芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
変性ポリイソシアネートの具体例としては、カルボジイミド変性MDIなどが挙げられる。
これらの他のイソシアネートの中で好ましくは、芳香族ポリイソシアネートであり、さらに好ましくは、TDI、粗製TDI、MDI、粗製MDI、およびこれらのイソシアネートの変性物から選ばれる1種以上である。
【0040】
本発明の製造方法において、ポリウレタンフォームの製造に際してのイソシアネート指数[(NCO基/活性水素原子含有基)の当量比×100]は、好ましくは60〜200、さらに好ましくは80〜120、とくに好ましくは90〜115である。
【0041】
本発明のポリウレタンフォームの製造方法に用いる発泡剤(C)としては、水を用いる。(C)に水のみを単独で用いる場合、水の使用量は(A)100部当たり、好ましくは0.1〜30部、さらに好ましくは0.2〜20部である。他の発泡剤と併用する場合の水の使用量は、好ましくは0.1〜10部である。
上記および以下において、部は質量部を意味する。
発泡剤(C)としては水のみを用いるのが好ましいが、必要により水素原子含有ハロゲン化炭化水素、低沸点炭化水素、液化炭酸ガス等を用いてもよい。
【0042】
水素原子含有ハロゲン化炭化水素系発泡剤の具体例としてHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)タイプのもの(例えばHCFC−123、HCFC−141b、HCFC−22およびHCFC−142b);HFC(ハイドロフルオロカーボン)タイプのもの(例えばHFC−134a、HFC−152a、HFC−356mff、HFC−236ea、HFC−245ca、HFC−245fa、およびHFC−365mfc)等が挙げられる。
これらのうち好ましいものは、HCFC−141b、HFC−134a、HFC−356mff、HFC−236ea、HFC−245ca、HFC−245fa、およびHFC−365mfcおよびこれらの2種以上の混合物である。
水素原子含有ハロゲン化炭化水素を用いる場合の使用量は、(A)100部当たり、好ましくは50部以下、さらに好ましくは5〜45部である。
【0043】
低沸点炭化水素は、通常沸点が−5〜70℃の炭化水素であり、その具体例としては、ブタン、ペンタン、シクロペンタンおよびこれらの混合物が挙げられる。低沸点炭化水素を用いる場合の使用量は、(A)100部当たり、好ましくは30部以下、さらに好ましくは25部以下である。
また、液化炭酸ガスを用いる場合の使用量は、(A)100部あたり、好ましくは30部以下、さらに好ましくは25部以下である。
【0044】
本発明に用いるウレタン化触媒(D)としては、ウレタン化反応を促進する通常の触媒はすべて使用でき、例として、トリエチレンジアミン、ビス(N,N−ジメチルアミノ−2−エチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミンなどの3級アミンおよびそのカルボン酸塩、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、スタナスオクトエート等のカルボン酸金属塩、ジブチルチンジラウレート等の有機金属化合物が挙げられる。
(D)の使用量(純分)はポリオール成分(A)100部に対して好ましくは0.1〜0.4部、さらに好ましくは0.15〜0.25部である。
【0045】
本発明に必要により用いる整泡剤(E)としては、通常のポリウレタンフォームの製造に用いられるものはすべて使用でき、例として、ポリエーテル変性ジメチルシロキサン系整泡剤[例えば、モメンティブ製の「L−5309」、東レダウコーニング(株)製の「SZ−1346」、「SF−2969」、「SRX−274C」等]、ジメチルシロキサン系整泡剤[例えば、東レダウコーニング(株)製の「SRX−253」等]等のシリコーン整泡剤が挙げられる。
(E)の使用量は、ポリオール成分(A)100部に対して、好ましくは3部以下、さらに好ましくは0.5〜1.5部である。
【0046】
本発明のポリウレタンフォームの製造方法においては、必要により以下に述べるような、他の補助成分を用い、その存在下で反応させてもよい。
例えば、着色剤(染料、顔料)、難燃剤(リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステルなど)、老化防止剤(トリアゾール系、ベンゾフェノン系など)、抗酸化剤(ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系など)などの公知の補助成分の存在下で反応させることができる。ポリオール成分(A)100部に対するこれらの補助成分の使用量に関しては、着色剤は、好ましくは1部以下である。難燃剤は、好ましくは5部以下、さらに好ましくは2部以下である。老化防止剤は、好ましくは1部以下、さらに好ましくは0.5部以下である。抗酸化剤は、好ましくは1部以下、さらに好ましくは0.01〜0.5部である。
【0047】
本発明のポリウレタンフォームの製造方法の具体的な一例を示せば、下記の通りである。 まず、ポリエーテルポリオール(a)を含有するポリオール成分(A)、発泡剤(C)、ウレタン化触媒(D)、必要により整泡剤(E)および/または他の補助成分を所定量混合する。次いでポリウレタン発泡機または攪拌機を使用して、この混合物と有機ポリイソシアネート成分(B)とを急速混合する。得られた混合液(発泡原液)を密閉型もしくは開放型のモールド(金属製または樹脂製)に注入し、ウレタン化反応を行わせ(スラブ方式、ホットキュアー方式、コールドキュアー方式等のいずれの方式でもよい)、所定時間硬化後、脱型してポリウレタンフォームを得ることができる。また、連続発泡してもポリウレタンフォームを得ることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0049】
実施例1
200mlの撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、「サンニックスGP−1000」(三洋化成工業社製;OH換算数平均分子量(以下Mnと記載):1000のグリセリンPO付加物)57.1gと三弗化ホウ素0.28gとを仕込み、PO86.3gを、反応温度が65〜75℃を保つように制御しながら、10時間かけて滴下した後、70℃で5時間熟成した。水を加えて105〜110℃で4時間常圧留去した後、温度を90〜100℃、圧力を30〜50torrに保って、連続的に水蒸気を通入しながら5時間減圧留去した。水蒸気の通入を停止した後、水酸化カリウム0.1gを加えて、さらに3時間、温度を130℃まで上げ、圧力を50torr以下に保って脱水した。このものの末端水酸基の1級化率は49%であった。引き続き、EO29.6gを、反応温度が125〜135℃を保つように制御しながら、3時間かけて滴下した後、130℃で2時間熟成した。4.1gのキョーワード600(協和化学社製;合成珪酸塩)と2.0gの水を加えて90℃で1時間処理した。オートクレーブより取り出した後、ろ紙を用いてろ過した後、減圧脱水し、液状のグリセリンPO・EO付加物(Mn:3000)150.2gを得た。収率は87質量%、水酸基価は56.3、EO含有量は16.7質量%、末端水酸基の1級化率は78%であった。
【0050】
比較例1
三弗化ホウ素の代わりに0.63gの水酸化カリウムを使用し、実施例1と同様の反応装置で、PO86.1gを、反応温度90〜110℃で12時間かけて滴下した後、6時間熟成した。このものの末端水酸基の1級化率は2%であった。引き続き、EO29.5gを、反応温度が120〜140℃を保つように制御しながら、3時間かけて滴下した後、2時間熟成した。次に、3.0gの合成珪酸塩(キョーワード600、協和化学製)と水2gを加えて60℃で3時間処理した。オートクレーブより取り出した後、1ミクロンのフィルターで濾過した後脱水し、液状のグリセリンPO・EO付加物(Mn:3000)161.3gを得た。収率は97質量%、水酸基価は56.7、EO含有量は16.5質量%、末端水酸基の1級化率は70%であった。
【0051】
実施例2
200mlの撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、「サンニックスPP−1000」87.8gと三弗化ホウ素0.20gを仕込み、PO65.9gを、反応温度が65〜75℃を保つように制御しながら、10時間かけて滴下した後、70℃で5時間熟成した。水を加えて105〜110℃で4時間常圧留去した後、温度を90〜100℃、圧力を30〜50torrに保って、連続的に水蒸気を通入しながら5時間減圧留去した。水蒸気の通入を停止した後、水酸化カリウム0.09gを加えて、さらに3時間、温度を130℃まで上げ、圧力を50torr以下に保って脱水した。このものの末端水酸基の1級化率は46%であった。ついで、EO22.0gを、反応温度を125〜135℃に保つように制御しながら、4時間かけて滴下した後、130℃で4時間熟成した。3.0gのキョーワード600(協和化学社製;合成珪酸塩)と1.0gの水を加えて70℃で1時間処理した。オートクレーブより取り出した後、1ミクロンのフィルターでろ過した後脱水し、液状のポリプロピレングリコールEO付加物(Mn:2000)156.8gを得た。収率は90質量%、水酸基価は55.9、EO含有量は12.5質量%、末端水酸基の1級化率は70%であった。
【0052】
比較例2
0.25gの三弗化ホウ素を使用し、実施例1と同様の反応装置で、「サンニックスPP−1000」中にPO65.0gを、反応温度50〜60℃で30時間かけて滴下した後、20時間熟成した。このものの末端水酸基の1級化率は47%であった。引き続き、EO22.0gを、反応温度を50〜60℃を保つように制御しながら、15時間かけて滴下した後、10時間熟成した。次に、3.0gの合成珪酸塩(キョーワード600、協和化学製)と水2gを加えて60℃で3時間処理した。しかし、ポリプロピレングリコールEO付加物を得ることが出来なかった。
【0053】
実施例3〜6および比較例3〜5(ハンドルの製造と評価)
表1および表2に示した発泡処方に従って、有機ポリイソシアネート成分(B)以外を所定量配合した原料を高圧発泡機のポリオール成分用タンクに、(B)をイソシアネートタンクに仕込み、それぞれ40℃に温度調節し、15MPaで衝突混合して、あらかじめ鉄芯をセットし、60℃に温度調節したアルミ製モールドに注入し、ウレタンフォームの密度が0.5g/cm3のハンドルを得た。
【0054】
図1はハンドルの全体図である。図2は図1の破線部での断面図を示す。図1および図2において、1はハンドル、2はウレタンフォーム、3は鉄芯を示す。
性能試験の結果を表1および表2に示す。
【0055】
実施例7〜11および比較例6〜8(インスツルメントパネルの製造と評価)。
表3〜表4に示した発泡処方に従って、有機ポリイソシアネート成分(B)以外を所定量配合した原料を高圧発泡機のポリオール成分用タンクに、(B)をイソシアネートタンクに仕込み、それぞれ40℃に温度調節し、15MPaで衝突混合して、あらかじめ表皮材と芯材をセットし、45℃に温度調節したアルミ製モールドに注入し、ポリウレタンフォームの密度が0.16g/cm3のインスツルメントパネルを得た。
【0056】
図3はインスツルメントパネルの全体図である。図4は図3の破線部での断面図を示す。図3および図4において、4はインスツルメントパネル、5は表皮材(スラッシュ成形したポリウレタン製)、6はウレタンフォーム、7は芯材(ABS製)を示す。
性能試験の結果を表3〜表4に示す。
【0057】
<使用原料の記号の説明>
(a−1):実施例1記載の方法と同様にして、グリセリン1モルに三弗化ホウ素を触媒としてPO76.7モルを付加し、ついで水酸化カリウムの存在下、EO10.5モルを付加し、その後触媒成分を除去したポリエーテルポリオールである。
Mn=5000、水酸基価=33.7、活性水素1個あたりのEO付加モル数3.5、1級OH化率76%、総不飽和度0.07meq/g
(a−2):実施例1記載の方法と同様にして、グリセリン1モルに三弗化ホウ素を触媒としてPO73.2モルを付加し、ついで水酸化カリウムの存在下、EO15モルを付加し、その後触媒成分を除去したポリエーテルポリオールである。
Mn=5000、水酸基価=33.7、活性水素1個あたりのEO付加モル数5、1級OH化率83%、総不飽和度0.07meq/g
(a−3):実施例1記載の方法と同様にして、グリセリン1モルに三弗化ホウ素を触媒としてPO57.3モルを付加し、ついで水酸化カリウムの存在下、EO36モルを付加し、その後触媒成分を除去したポリエーテルポリオールである。
Mn=5000、水酸基価=33.7、活性水素1個あたりのEO付加モル数12、1級OH化率92%、総不飽和度0.06meq/g
(a−4):グリセリン1モルに水酸化セシウムを触媒として、Mnが3000になるまでPO50.1モルを段階的に付加し〔反応温度95〜105℃〕、常法により水酸化セシウムを除去した後、実施例1記載の方法と同様にして三弗化ホウ素を触媒としてPO23.1モルを付加し、ついで水酸化カリウムの存在下、EO15モルを付加し〔反応温度75℃〕、その後触媒成分を除去したポリエーテルポリオールである。
Mn=5000、水酸基価=33.7、活性水素1個あたりのEO付加モル数5、1級OH化率81%、総不飽和度0.04meq/g
【0058】
(d−1):トリエタノールアミン(活性水素価1130)
(d−2):エチレングリコール(活性水素価1810)
【0059】
(r−1):グリセリン1モルに水酸化カリウムを触媒としてPO73.2モルを付加し、ついでEO15モルを付加し、その後触媒成分を常法により除去したポリエーテルポリオールである。
Mn=5000、水酸基価=33.7、活性水素1個あたりのEO付加モル数5、1級OH化率75%、総不飽和度0.07meq/g
(r−2):グリセリン1モルに水酸化カリウムを触媒としてPO68.7モルを付加し、ついでEO21モルを付加し、その後触媒成分を常法により除去したポリエーテルポリオールである。
Mn=5000、水酸基価=33.7、活性水素1個あたりのEO付加モル数7、1級OH化率82%、総不飽和度0.06meq/g
(r−3):グリセリン1モルに水酸化カリウムを触媒としてPO57.3モルを付加し、ついでEO36モルを付加し、その後触媒成分を常法により除去したポリエーテルポリオールである。
Mn=5000、水酸基価=33.7、活性水素1個あたりのEO付加モル数12、1級OH化率90%、総不飽和度0.06meq/g
【0060】
(e−1):ポリエーテルポリオール(r−1)中で、アクリロニトリルを、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルをアクリルニトリルに対して2質量%使用し、120〜130℃で6時間重合することにより得た、重合体含量20質量%、水酸基価24の重合体ポリオールである。
【0061】
(B−1):ポリプロピレングリコール(Mn=2000)でウレタン変性したMDI、NCO%=26.5の有機ポリイソシアネートである。
(B−2):粗製MDI、NCO%=31の有機ポリイソシアネートである。
【0062】
(C−1):水
(D−1):東ソー(株)製「TEDA−L33」トリエチレンジアミンの33質量%エチレングリコール溶液。
(D−2):東ソー(株)製「TOYOCAT−ET」〔ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、ジプロピレングリコールの混合物〕
(D−3):東ソー(株)製「TOYOCAT−ETF」〔ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルのカルボン酸塩、ジプロピレングリコールの混合物〕
(D−4):サンアプロ(株)製「Ucat−1000」(N、N、N’、N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン)
【0063】
[試験例]
〔ハンドルの試験〕
<1>:注入150秒後に脱型したときのフォームのC硬度
<2>:注入210秒後に脱型したときのフォームのC硬度
<3>:成形1日後のフォームのC硬度
<4>:注入150秒後に脱型したときのハンドルの太さ(mm)
<5>:注入210秒後に脱型したときのハンドルの太さ(mm)
なお<1>〜<5>を測定した部分の鉄芯の太さは13mm、型の内寸は28mmである。
硬化性の判定:注入150秒後に脱型したときに成形したフォームが、
ハンドルの形状を維持できる場合;○
ハンドルの形状を維持できない場合;×
脱型時膨れ判定:注入150秒後に脱型したときに成形したときのハンドルの太さが、
29mm未満;○
29mm以上;×
【0064】
〔インスツルメントパネルの試験〕
<6>:注入120秒後に脱型したときの表皮上C硬度
<7>:成形1日後のフォームの表皮上C硬度
<8>:注入120秒後に脱型したときの成形品厚み(mm)
<9>:成形1日後のフォームの引張強さ(kgf/cm2
<10>:耐熱試験(110℃、2000時間)後のフォームの引張強さ(kgf/cm2
なお<6>〜<8>を測定した部分の表皮の厚みは1mm、芯材の厚みは5mm、型の内寸は15mmである。
硬化性の判定:注入120秒後に脱型したときに成形したフォームが、
インスツルメントパネルの形状を維持できる場合;○
インスツルメントパネルの形状を維持できない場合;×
脱型時収縮判定:注入120秒後に脱型したときに成形したときのインスツルメントパネルの厚みが、
14mm以上;○
14mm未満;×
<9>、<10>は、JISK−6301に準じて測定した。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
実施例12〜14および比較例9〜10
表5に示した発泡処方に従って、金型内でポリウレタンフォームを発泡し、金型から取り出して、一昼夜放置後ポリウレタンモールドフォームを見かけ密度の測定の場合は得られたフォームすべてを、中央部密度の測定の場合には5cm×5cm×3cm、圧縮残留歪率の測定の場合は5cm×5cm×3cm、その他の測定には22cm×22cm×5cmに切断して、その物性を測定した。その結果を表5に示す。
【0070】
<使用原料の記号の説明>
(a−5):末端オキシエチレン基含有量13質量%、水酸基価=28、Mn=6000、1級OH化率=81%、総不飽和度=0.06meq/gのポリエーテルポリオールである。
実施例1記載の方法と同様にして、グリセリンに三弗化ホウ素を触媒としてPOを付加し、ついで水酸化カリウムの存在下でEOを付加し、その後触媒成分を除去したものである。
(a−6):末端オキシエチレン基含有量10質量%、水酸基価=25、Mn=6500、1級OH化率=82%、総不飽和度=0.03meq/gのポリエーテルポリオールである。
グリセリンに水酸化セシウムを触媒として、Mnが5000になるまでPOを付加し水酸化セシウムを除去した後、実施例1記載の方法と同様にして、三弗化ホウ素を触媒としてPOを付加し、ついで水酸化カリウムの存在下でEOを付加し、その後触媒成分を除去したものである。
【0071】
(e−2):グリセリンに水酸化カリウムを触媒として用いてPOを付加し、次いでEOを付加させて得られた、水酸基価34、末端オキシエチレン単位の含有量14.0%、末端水酸基の1級OH化率75%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールとペンタエリスリトールに水酸化カリウムを触媒として用いてPOを付加し、次いでEOを付加させて得られた、水酸基価32、末端オキシエチレン単位の含有量12.0質量%、末端水酸基の1級OH化率75%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールの混合物(質量比:8/2)中でアクリロニトリルを重合させた重合体ポリオール(重合体含有量33.5質量%)。
【0072】
(r−4):末端オキシエチレン基含有量22質量%、水酸基価=28、Mn=6000、1級OH化率=90%、総不飽和度0.06meq/gのポリエーテルポリオールである。
グリセリンに水酸化カリウムを触媒としてPOを付加し、ついでEOを付加し、その後触媒成分を常法により除去したものである。
【0073】
(B−3):日本ポリウレタン工業(株)製「CE−729」(TDI/粗製MDI=80/20、NCO%=44.7)の有機ポリイソシアネートである。
(C−1):水
(D−1):東ソー(株)製「TEDA−L33」トリエチレンジアミンの33質量%エチレングリコール溶液。
(D−2):東ソー(株)製「TOYOCAT−ET」〔ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、ジプロピレングリコールの混合物〕
(E−1):東レダウコーニング(株)製「SZ−1346」。
(e−3):ジエタノールアミン(鎖延長剤、架橋剤)
(e−4):トリエタノールアミン(鎖延長剤、架橋剤)
【0074】
<発泡条件>
金型内寸:50cm×50cm×10cm
材質:アルミニウム製
金型温度:60±2℃
発泡方法:有機ポリイソシアネート成分(B)以外の各成分をプレミックスした後、(B)を加えて8秒間撹拌し金型に注入した。
ミキシング方法:ハンドミキシング
撹拌羽回転数:5000回転/分
原料温度:25±1℃
【0075】
<表5における物性等欄の記号の説明>
<1>:ポリウレタンフォームの外観を目視にて判定。
<2>:ポリウレタンフォームの見かけ密度(kg/m3)を示す。
<2’>:ポリウレタンフォームの中央部の密度(kg/m3)を示す。中央部は、図5および図6に示す。図中、8が金型、9が密度測定用サンプル切り出し部分である。
<3>:ポリウレタンフォームのフォーム硬さ(kgf/314cm2)を示す。
<4>:ポリウレタンフォームの反発弾性率(%)を示す。
<5>:ポリウレタンフォームの圧縮残留歪(%)を示す。
<6>:ポリウレタンフォームの湿熱圧縮残留歪(%)を示す。
(上記<2>〜<6>の物性の測定は、JISK6400(1997)に準拠。
【0076】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のポリエーテルポリオール(a)を用いて得られた樹脂は、製造時の反応性が高く、樹脂物性(引張強度、破断伸び、曲げ強度など)の湿度依存性が低いという特徴を有するため、フォーム、エラストマー、コーティング材等様々な応用が可能である。フォームとしては自動車用クッション材・遮吸音材・ハンドルなど、エラストマーとしては注型ポッティング材等、コーティング材としては接着材・塗料等が挙げられる。また、繊維処理用の油剤や洗浄剤、消泡剤などの界面活性剤組成物の原料としても有用である。
【0078】
本発明の製造方法で製造されるポリウレタンフォームは、半硬質ポリウレタンフォームの場合、硬化性に優れ、且つ、脱型時に膨れや収縮が小さいため、自動車内装材(ハンドル、インスツルメントパネル、サンバイザー、ドアトリム、シート、ピラーなど)内部に装着される衝撃吸収材、緩衝材用として広く利用できる。軟質ポリウレタンフォームの場合、耐湿物性の低下がなく、密度が均一であるので、家具用クッション、寝具用クッション、自動車用クッション、緩衝材、梱包材および断熱材等に好適に用いられる。これらのうち家具用クッション、寝具用クッションおよび自動車用クッションにさらに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施例3〜6、比較例3〜5におけるハンドルの正面図である。
【図2】図1のハンドルの、破線部における断面図である。
【図3】実施例7〜11、比較例6〜8におけるインスツルメントパネルの斜視図である。
【図4】図3のインスツルメントパネルの、破線部における断面図である。
【図5】中央部の密度測定用サンプルの切り出し位置を表す断面図である。
【図6】中央部の密度測定用サンプルの切り出し位置を表す平面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 ハンドル
2 ウレタンフォーム
3 鉄芯
4 インスツルメントパネル
5 表皮材
6 ウレタンフォーム
7 芯材
8 金型
9 密度測定用サンプル切り出し部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素含有化合物に、炭素数3以上の1,2−アルキレンオキサイドを主体としエチレンオキサイドを含むアルキレンオキサイドがブロック付加、またはランダムおよびブロック付加されてなる末端エチレンオキサイド付加ポリエーテルポリオールであって、末端に三弗化ほう素の存在下、炭素数3以上の1,2−アルキレンオキサイドが付加され、さらにアルカリ触媒の存在下、エチレンオキサイドが付加されてなるポリエーテルポリオール(a)。
【請求項2】
末端エチレンオキサイド付加前の末端水酸基の1級OH化率が30〜50%である請求項1記載のポリエーテルポリオール(a)。
【請求項3】
総不飽和度が0.05meq/g以下である請求項1または2記載のポリエーテルポリオール(a)。
【請求項4】
ポリオール成分(A)と有機ポリイソシアネート成分(B)とを、水を含有する発泡剤(C)、ウレタン化触媒(D)、および必要により整泡剤(E)の存在下で反応させてポリウレタンフォームを製造する方法において、(A)が、請求項1〜3のいずれか記載のポリエーテルポリオール(a)を含有することを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項5】
ポリエーテルポリオール(a)の1分子当たりの平均水酸基数が2〜8であり、かつ水酸基価が10〜200mgKOH/gである請求項4記載のポリウレタンフォームの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−263475(P2009−263475A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113632(P2008−113632)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】