説明

ポリオレフィン、両親媒性ブロック共重合体及び必要に応じて他のポリマー及び/又は充填剤を含む高分子組成物、及びそのような組成物の染色又は印刷

ポリオレフィン、ポリイソブテンブロック及びポリオキシアルキレンブロックからなる両親媒性ブロック共重合体、及び必要に応じて他のポリマー及び/又は充填剤を含む高分子組成物。そのような組成物を染色又は印刷する方法、及び両親媒性ブロック共重合体のポリオレフィンの染色及び印刷用助剤としての利用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィンと、ポリイソブテンブロックとポリオキシアルキレンブロックとからなる両親媒性ブロック共重合体、及び必要に応じて他のポリマー及び/又は充填剤を含む高分子組成物に関する。本発明はまた、このような組成物の染色又は印刷方法、及び両親媒性ブロック共重合体のポリオレフィンの染色及び印刷用助剤としての利用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンは一般に、特にポリプロピレンは、低比重、高破断強度、高化学安定性、極性媒体に対する低湿潤性、耐水性、高リサイクル性や低コストなど数々の優れた特性を有している。これらは容易に成形可能で、いろいろな形状、例えば繊維やフィルム、成形物に加工可能である。
【0003】
しかし、極性物質の低湿潤性及び/又は極性物質の低吸収性のため、ポリオレフィンや、それから製造された繊維やフィルム、成形物などのは、水性染料では染色が不可能であるか、ほぼ不可能である。
【0004】
ポリオレフィン繊維に深いシェードをつけるのに、原料着色と呼ばれる方法が従来より用いられてきた。この方法では、押出機中の溶融ポリプロピレンに着色性顔料又は着色性染料を直接添加して繊維を形成する。この方法では、色の濃度も濃く、実際の厳しい使用条件でも堅牢な色を与えることができるが、色の変更を行うと大量の廃棄物を発生させ、及び/又は長期間のリードタイムを必要とすることとなる。このため、経済的には、大きなバッチでの生産でのみに実施可能である。比較的小バッチでの色の変更、例えば流行に応じた色の変更は、経済的には不可能であり、短周期で実施できない。また、明るい色相を得ることは難しい。
【0005】
押出成形後の染色が難しいため、ポリオレフィンの織物分野での利用が損なわれてきた。ポリプロピレン繊維は、衣料用繊維として好ましい特性を持つにもかかわらずほとんど使用されておらず、特にスポーツ衣料やレジャー衣料の分野では使用されていない。
【0006】
このため、ポリオレフィンの押出成形後の染色性の改善策が、いろいろと検討されてきた。
【0007】
WO93/06177では、繊維を分散染料と膨潤剤とを含む組成物で処理し、繊維の融点の直下温度まで加熱して、少なくとも分散染料の一部を繊維内に移動させることを特徴とする繊維の染色方法、特にポリオレフィン繊維の染色方法が開示されている。なお、残留する染料組成物は、その後、繊維表面から除去される。
【0008】
Melliand Textilberichte 77 (1996), 588-592及び78(1997), 604-605では、ポリプロピレン繊維の、C8〜C18アルキル基を有する特定の分散染料での染色において、高品位の染色を得るとともに定着率を高めるのに、界面活性剤を染色液に加えることが好ましいことが開示されている。この方法の難点は、染色業者や加工業者が、ポリオレフィン染色専用の染料の在庫をさらに持つ必要があることであり、コスト増につながる。
US6,679,754では、ポリオレフィン中にポリエーテルエステルアミドを使用すると染色性が向上することが開示されている。
【0009】
WO04/35635では、ポリオレフィンの染色性の向上のための末端極性基修飾ポリイソブテンの利用が開示されている。使用する染料としては、例えば、アニオン染料、カチオン染料、媒染剤、直接染料、分散染料やバット染料があげられる。ある例では、カチオン染料でポリプロピレンを染色する際に、ポリグリコールエーテル(Mn:300g/mol)末端基を有するポリイソブテン無水コハク酸(Mn:550g/mol)を染色助剤として用いている。しかし、染色は常に十分というわけでなく、特に分散染料や金属錯体染料を用いる場合、染色が不十分となることが多い。微粒子バット染料を用いて染色する場合、表面染色ではなく十分に染色された繊維を得ることは難しい。
【0010】
WO04/72024には、ポリプロピレンの染色性の改良に、ポリイソブテンホスホン酸を用いることが開示されている。
【0011】
しかし、上記いずれの文献も、ポリイソブテンブロックとポリオキシアルキレンブロックとからなる両親媒性ブロック共重合体を、ポリオレフィンの染色助剤として使用することについては言及していない。
【0012】
WO95/10648、EP−A1138810及びWO02/92891には、ポリプロピレンの親水化に、ポリアルキレングリコールの、炭素原子数が最大21個である脂肪酸とのジエステルを使用することが開示されている。分子量が300〜600g/molの範囲にあるポリエチレングリコールの使用が好ましい。修飾ポリプロピレンの染色については言及されていない。
【0013】
本発明者らの過去の出願であるDE−A102004007501には、ポリイソブテン単位とポリオキシアルキレン単位とからなるジ−、トリ−又はマルチブロック共重合体で安定化された水性高分子分散物が開示されている。これらのポリマーをポリオレフィン染色性の改良に用いることについては言及されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、染色性又は印刷適性が改良されたポリオレフィン、及び押出成形後のポリオレフィン、特にポリプロピレンの水性染浴での改良された染色方法を提供することである。得られる染色物は、特に均質であることが必要で、縞があってはならない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、本目的が、それぞれ少なくとも一種のポリオレフィンと、
・実質的にイソブテン単位からなる少なくとも一種の疎水性ブロック(A)と、
・実質的にオキシアルキレン単位からなる少なくとも一種の親水性ブロック(B)とからなり、平均モル質量Mnが1000g/mol以上である少なくとも一つのブロック共重合体とからなる高分子組成物により達成されることを見出した。
【0016】
この高分子組成物は、未染色物であってもよく、少なくとも一種の染料を含む染色組成物であってもよい。この高分子組成物は、さらに必要に応じてポリマー及び/又は充填剤を含有してもよい。
【0017】
本発明の第二の側面は、特定の未染色の高分子組成物を少なくとも水と染料とを含む配合物で処理してポリマーを染色する方法であって、前記高分子組成物が、処理中及び/又は処理後にガラス転移温度Tgより高く溶融温度より低い温度に加熱されることを特徴とする染色方法である。
【0018】
本発明の第三の側面は、高分子組成物からなる未印刷の基材を少なくとも流動助剤と溶媒と染料とを含む適当な印刷ペーストで印刷する基材の印刷方法であって、
前記高分子組成物が、印刷中及び/又印刷後に、そのガラス転移温度Tgより高く溶融温度より低い温度に加熱されることを特徴とする印刷方法である。
【0019】
本発明の第四の側面は、この特定のブロック共重合体の、ポリオレフィン又はポリオレフィン含有のポリマーブレンドの染色又は印刷用の助剤としての利用である。
【0020】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の高分子組成物が数々の長所を持つことを見出した。
【0021】
本発明の方法は、摩擦堅牢度が高く洗浄堅牢度にも優れた、均一に染色された組成物を与える。このようにして、明るい色相が容易に得られる。
【0022】
また、本発明のブロック共重合体の添加により、ポリオレフィンの機械的特性が改善される。これら組成物は、無機充填剤又は有機充填剤で充填するのに有用である。従来の助剤に代えて本発明のブロック共重合体を使用することで、充填ポリオレフィンの衝撃靭性や破断伸度を著しく向上させることができる。
【0023】
また、加工特性も改善できる。ブロック共重合体を含まないポリオレフィンの場合と比べると、本発明の高分子組成物からなる繊維では、溶液染色の繊維であっても着色顔料無添加の繊維であっても、かなり高い仮撚加工速度を実現可能である。
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0025】
本発明の高分子組成物は、少なくとも一種のポリオレフィンと、少なくとも一種の疎水性ブロック(A)と少なくとも一種の親水性ブロック(B)とからなる少なくとも一つのブロック共重合体とを含んでいる。
【0026】
このブロック共重合体は、ポリオレフィンの特性、例えば染色性を向上させるための助剤となる。各種ポリオレフィンの混合物を用いる場合、これは優れた相溶剤として作用する。(A)と(B)のブロックは、適当な結合基で連結されていてもよい。これらは直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0027】
この種のブロック共重合体は公知であり、当業界の熟練者は、原則として公知の方法や出発化合物を用いて製造可能である。
【0028】
疎水性ブロック(A)は、実質的にイソブテン単位からなる。これらのブロックはイソブテンを重合して得られる。しかし、これらのブロックは、他のコモノマーを構成単位として少量含んでいてもよい。このような構成単位を、ブロックの特性の微調整に用いてもよい。コモノマーの例としては、1−ブテンやcis−又はtrans−2−ブテンの他に、特に、2−メチル−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン、2−エチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2−プロピル−1−ヘプテンなどの炭素原子数が5〜10個のイソオレフィン類、スチレンやα−メチルスチレンなどのビニル芳香族化合物、2−、3−及び4−メチルスチレン及び4−tert−ブチルスチレンなどのC1〜C4−アルキルスチレン類があげられる。しかし、これらのコモノマーの比率は、あまり大きくてはならない。一般にこれらの量は、ブロックの全構成単位量当たり20質量%以下である。これらのイソブテン単位及び/又はコモノマー以外に、このブロックは、重合の開始時に用いられる重合開始剤分子や出発分子、又はその一部を含んでいてもよい。このようにして得られるポリイソブテンは、直鎖状であっても、分岐状や星型であってもよい。これらは、分子末端の一方に官能基を有していてもよく、二つ以上の末端に官能基を有していてもよい。
【0029】
疎水性ブロックAの出発材料は、官能化ポリイソブテン類である。このような官能化ポリイソブテンは、反応性ポリイソブテンを出発材料とし、熟練者には原則として公知の一段反応または多段反応により官能基を付与して製造される。熟練者には周知のように、反応性ポリイソブテンとは、末端α−オレフィン基を非常に高い比率で有するポリイソブテンをいう。反応性ポリイソブテンの合成法も公知であり、例えば上記のWO04/9654、p.4〜8、及びWO04/35635、p.6〜10に詳細に述べられている。
【0030】
反応性ポリイソブテンの官能化の好ましい実施様態としては、
i)アルキル化触媒の存在下で、芳香族ヒドロキシ化合物からポリイソブテンでアルキル化された芳香族ヒドロキシ化合物を得る反応、
ii)ポリイソブテンブロックとペルオキシ化合物とからエポキシ化ポリイソブテンを得る方法、
iii)ポリイソブテンブロックと電子求引性基(エノファイル)で置換された二重結合を有するアルケンとのエン反応、
iv)ヒドロホルミル化触媒の存在下で、ポリイソブテンブロックと一酸化炭素及び水素とからヒドロホルミル化ポリイソブテンを得る反応、
v)ポリイソブテンブロックとリンハロゲン化物又はリン酸塩化物とから、ホスホノ基で官能化されたポリイソブテンを得る反応、、
vi)ポリイソブテンブロックとボランとの反応後、酸化分解を行ってヒドロキシル化ポリイソブテンを得る反応、
vii)ポリイソブテンブロックと、SO3源、好ましくはアセチル硫酸又はオレウムとから、末端にスルホ基を有するポリイソブテンを得る反応、
viii)ポリイソブテンブロックと窒素酸化物との反応後、水素化して末端にアミノ基を有するポリイソブテンを得る反応。
【0031】
特定の反応の実施にかかわる詳細については、WO04/35635、p.11〜27をご参照いただきたい。
【0032】
特に実施様態iii)が好ましい。この反応において、無水マレイン酸をエノファイルとして使用することが、特に好ましい。この場合、生成するポリイソブテンは、無水コハク酸基(ポリイソブテニル無水コハク酸、PIBSA)を用いて官能化する。
【0033】
疎水性ブロックAのモル質量は、所望用途に応じて熟練者により決定される。一般に、各疎水性ブロック(A)の平均モル質量Mnは200〜10000g/molである。Mnは、300〜8000g/mol、さらに好ましくは400〜6000g/mol、さらに好ましくは500〜5000g/molである。
【0034】
親水性ブロック(B)は、実質的にオキシアルキレン単位からなる。周知のように、オキシアルキレン単位は、原則的に一般式−R1−O−で表される単位である。ここで、R1は、2価の脂肪族炭化水素基であり、さらに置換基を有していてもよい。R1基上の置換基としては、特に、O含有基、例えば>C=O基又はOH基があげられる。もちろん、一つの親水性ブロックが二種以上の異なるオキシアルキレン単位を有していてもよい。
【0035】
特に、オキシアルキレン単位は、−(CH22−、−(CH23−O−、−(CH24−O−、−CH2−CH(R2)−O−、−CH2−CHOR3−CH2−O−であり、式中、R2は、アルキル基、特にC1〜C24アルキル基、又はアリール基、特にフェニル基であり、R3は、水素、C1〜C24−アルキル、R1−C(=O)−、及びR1−NH−C(=O)−からなる群から選択される基である。
【0036】
この親水性ブロックは、さらに他の構造単位を、例えばエステル基、炭酸基又はアミノ基を有していてもよい。このブロックは、重合の開始時に用いられる重合開始剤分子や出発分子、又はその一部を含んでいてもよい。その例としては、末端基R2−O−があげられる。なお、式中、R2は上記の定義と同じである。
【0037】
一般に親水性ブロックは、主成分としてエチレンオキシド単位−(CH22−O−及び/又はプロピレンオキシド単位−CH2−CH(CH3)−O−を含んでおり、より高級なアルキレンオキシド単位、即ち炭素原子数が3を超えるものは、特性の微調整のために、ほんの少しだけ含まれている。このブロックは、エチレンオキシド単位とプロピレンオキシド単位のランダム共重合体、グラジエント共重合体、交互共重合体又はブロック共重合体を含んでいる。より高級なアルキレンオキシド単位の量は、10%以下であり、好ましくは5質量%以下である。好ましいブロックは、少なくとも50質量%のエチレンオキシド単位、好ましくは75%、さらに好ましくは少なくとも90質量%のエチレンオキシド単位を含むものである。特に好ましくは、純粋なポリオキシエチレンブロックである。
【0038】
親水性ブロックBは、原則として公知の方法で製造可能で、例えばアルキレンオキシド及び/又は炭素原子数が少なくとも3個である環状エーテルの重合、必要に応じて他の成分との重合により製造できる。また、ジアルコール類及び/又はポリアルコール類、適当な開始剤、また必要に応じて他のモノマー成分の重縮合によっても製造できる。
【0039】
親水性ブロックB用のモノマーとして好適なアルキレンオキシドの例としては、エチレンオキシドやプロピレンオキシドはもちろん、1−ブテンオキシド、2,3−ブテンオキシド、2−メチル−1,2−プロペンオキシド(イソブテンオキシド)、1−ペンテンオキシド、2,3−ペンテンオキシド、2−メチル−1,2−ブテンオキシド、3−メチル−1,2−ブテンオキシド、2,3−ヘキセンオキシド、3,4−ヘキセンオキシド、2−メチル−1,2−ペンテンオキシド、2−エチル−1,2−ブテンオキシド、3−メチル−1,2−ペンテンオキシド、デセンオキシド、4−メチル−1,2−ペンテンオキシド、スチレンオキシドがあげられ、あるいは、工業的に得られるラフィネート流中のオキシド混合物より製造される。環状エーテルの例としては、テトラヒドロフランがあげられる。また異なるアルキレンオキシドの混合物を用いることも可能である。熟練者は、ブロックの望ましい特性に応じて、これらのモノマー及び/又は他の成分を適当に選択する。
【0040】
親水性ブロックBは分岐状であっても星型であってもよい。この種のブロックは、少なくとも三価の開始剤分子を用いて得られる。好ましい開始剤の例としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール又はエチレンジアミンがあげられる。
【0041】
アルキレンオキシド単位の合成は熟練者には公知である。詳細は、例えば、「ポリオキシアルキレン」、ウルマンの工業化学百科事典、第6版、電子版に記載されている。
【0042】
親水性ブロックBのモル質量は、少なくとも1000g/molであり、所望用途に応じて熟練者により決定される。1000g/mol未満では染色結果が不満足な場合が多い。
【0043】
一般に、各親水性ブロック(B)の平均モル質量Mnは1000〜20000g/molである。Mnは、好ましくは1250〜18000g/mol、さらに好ましくは1500〜15000g/mol、及び特に好ましくは2500〜8000g/molである。
【0044】
本発明において用いられるブロック共重合体の合成においては、好ましくは、まず親水性ブロックBを合成し、次いでポリマー類似反応で上記官能化ポリイソブテンと反応させてブロック共重合体を作る。
【0045】
この場合、親水性ブロックと疎水性ブロックの構成単位は相補的な官能基を有し、即ち相互に反応して結合を形成する基を有している。
【0046】
親水性ブロックの官能基は、本来好ましくはOH基であるが、例えば一級あるいは二級アミノ基であってもよい。PIBSAとの反応に相補的な基としては、OH基が特に好ましい。
【0047】
本発明のさらに他の実施様態においては、極性官能基を持つポリイソブテン(即ち、ブロックA)を、直接アルキレンオキシドと反応させて、ブロックBを形成する。
【0048】
本発明において用いられるブロック共重合体の構造は、ブロックAとブロックBの出発材料の種類と量、及び反応条件、特に添加順序のよって影響を受ける。
【0049】
ブロックA及び/又はブロックBは、ともに末端に配置しても、つまり他のブロック一つと結合してもよいし、二つ以上の他のブロックと結合してもよい。ブロックA及びブロックBは交互に結合してもよく、例えば交互に線状に結合してもよい。原則として、ブロックの数は、いくらでもよい。しかし、一般にAとBはいずれも、8ブロック以下である。もっとも単純なのは二元ブロック共重合体であり、一般式ABで表される。この共重合体は、一般式ABA又はBABで表される三元ブロック共重合体であってもよい。もちろん二個以上のブロックが、交互につながる配置、例えば、ABAB、BABA、ABABA、BABAB、又はABABABでもよい。
【0050】
この共重合体は、さらに星型及び/又は分岐ブロック共重合体であってもよく、櫛型ブロック共重合体、即ち二つ以上のブロックAが一つのブロックBに結合しているか、二つ以上のブロックBが一つのブロックAに結合している共重合体であってもよい。これらは、例えば、一般式ABm又はBAmで表されるブロック共重合体であってもよい。ただし、mは≧3の自然数、好ましくは3〜6で、さらに好ましくは3または4である。上のような価数又は分枝では、二つ以上ブロックAとBが交互に結合して、例えばA(BA)m又はB(AB)mとなることも可能である。
【0051】
以下に、OH基及び無水コハク酸基(Sと表示)とを例に、合成可能性を記載するが、本発明がこれらの種類の官能基の使用に限定されるわけではない。
【0052】
HO−[B]−OH 2個のOH基を有する親水性ブロック
[B]−OH 1個のOH基のみを有する親水性ブロック
[B]−(OH)x x個のOH基を有する親水性ブロック(x≧3)
[A]−S 1個の末端基Sを有するポリイソブテン
S−[A]−S 2個の末端基Sを有するポリイソブテン
[A]−Sy y個のSを有するポリイソブテン(y≧3)
【0053】
OH基は、無水コハク酸基Sと公知の方法で、エステル基を形成しながら相互に結合する。この反応を、例えば加熱下で無溶媒で行ってもよい。好ましい反応温度は、例えば80〜150℃である。
【0054】
三元ブロック共重合体A−B−Aは、例えば、単純に1当量のHO−[B]−OHと2当量の[A]−Sとを反応させて合成する。以下に、その例と反応式を示す。取り上げた例は、PIBSAとポリエチレングリコールとの反応である。
【0055】
【化1】

【0056】
ただし、nとmは、互いに独立した自然数である。これらは、最初に設定した親水性ブロックと疎水性ブロックのモル質量となるように、熟練者により選択される。
【0057】
星型又は分岐状ブロック共重合体BAXは、[B]−(OH)xとx当量の[A]−Sとの反応により得られる。
【0058】
ポリイソブテン分野の熟練者にとっては、製造条件によっては、得られるブロック共重合体が出発材料の残渣を含む可能性があることは自明のことである。また、これらは異なる製品の混合物であるかもしれない。式ABAの三元ブロック共重合体は、例えば二元ブロック共重合体ABと官能化及び非官能化ポリイソブテンを含んでいる可能性がある。有利なことには、これらの製品はさらに精製することなく使用可能である。しかしもちろん製品を精製してもよい。精製法は熟練者には公知である。
【0059】
本発明の実施様態の好ましいブロック共重合体は、一般式ABAの三元ブロック共重合体と、その二元ブロック共重合体AB及び適当なら副生物との混合物である。
【0060】
上記の両親媒性ブロック共重合体は、助剤として本発明のポリオレフィンの特性の改善、例えばポリオレフィンの染色性の改良や流動特性の改良に使用される。
【0061】
有用なポリオレフィンには、理論的にすべての既知のポリオレフィンが含まれる。例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、スチレン又はα−メチルスチレンをモノマーとして含む単独重合体又は共重合体である。好ましくは、C2〜C4オレフィンを主成分とするポリオレフィン、さらに好ましくはポリプロピレン又はポリエチレンの単独重合体又は共重合体である。共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。ポリオレフィンの土台となる種によるが、共重合体中の好ましいコモノマーとしては、エチレン又は他のα−オレフィン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチルペンタ−1,4−ジエン、1,7−オクタジエン、6−メチルヘプタ−1,5−ジエンなどのジエン類、又はオクタトリエン及びジシクロペンタジエンなどのポリエン類があげられる。コモノマーに帰すべき共重合体中の比率は、モノマー全成分の総量当たり、一般に40質量%以下、好ましくは30質量%以下であり、用途により例えば20%〜30質量%、又は2%〜10質量%である。
【0062】
本発明のある好ましい実施様態においては、このポリオレフィンは、ポリエチレン、例えばLDPE、HDPE、又はLLDPEである。
【0063】
ある特に好ましい実施様態においては、このポリオレフィンがポリプロピレンである。このポリプロピレンは、単独重合体であっても共重合体であってもよい。有用なコモノマーとしては、特にエチレン及び上記のα−オレフィン類、ジエン類及び/又はポリエン類があげられる。ポリプロピレンの選択も可能である。メルトフローインデックスの高い粘着性ポリプロピレンは、加工に特に有利である。例えば、ポリプロピレンのメルトフローインデックスMRF(230℃、2.16kg)は、40g/10min未満であってもよい。
【0064】
このポリオレフィンは、各種のポリオレフィンのブレンドであってもよく、例えばポリプロピレンとポリエチレンのブレンドであってもよい。
【0065】
ポリオレフィンとブロック共重合体とともに、本発明の組成物は、ポリオレフィン以外の化学的に異なるポリマーを含んでいてもよい。例えば、この追加のポリマーは、ポリアミド又はポリエステルであってもよく、特にPETであってもよい。このようなポリマーの添加で、高分子組成物の特性の微調整が可能となる。
【0066】
必要に応じて添加するこの追加ポリマーの量は、高分子組成物の所望特性に応じて熟練者により決められる。しかし、必要に応じて添加するこの追加ポリマーの量は、ポリオレフィンと追加ポリマーの総量あたり、つまり両親媒性ブロック共重合体以外のポリマーの総量あたり、一般に20質量%以下である。添加する場合、その量は0.1%〜20質量%が有利なようで、好ましくは1%〜15質量%、さらに好ましくは2%〜10質量%、最も好ましくは3%〜7質量%である。
【0067】
使用するポリエステルは、融点が255〜265℃の範囲にある通常のPETであってもよい。軟質セグメントを含みこのため低級結晶性又は低融点である変性PETは、特に有利に使用できるであろう。本発明の実施様態において、融点が50〜250℃の範囲にある、好ましくは60〜200℃の範囲にあるポリエステルが、特に使用に有利であろう。このようなポリエステル添加剤を使用で、特に優れた耐光性と耐液性をもつ、特に易染色性の優れた繊維をつくることができるようになる。また、このようなポリエステルを混合することで、繊維が100℃で染色可能となる。
【0068】
この種のポリエステルは、ポリエステル中のテレフタル酸単位のいくらかを脂肪族ジカルボン酸単位、特にアジピン酸単位で置換することにより合成し、得ることができる。例えば、テレフタル酸とアジピン酸の4:1〜1:20のモル比の混合物を用いることができる。この置換とともにあるいはこの置換に代えて、エチレングリコール単位を、長分子鎖ジオール、特にC3〜C6アルカンジオール、例えば1,4−ブタンジオール又は1,6−ヘキサンジオールで置き換えることも可能である。
【0069】
本発明に記載の両親媒性ブロック共重合体は、染色性の改善に有効であるが、また各種ポリマーの混合の際の相溶剤としても有効である。例えば、各種のポリオレフィンのブレンド、例えばポリプロピレンとポリエチレン、又はポリプロピレンとポリエステル又はポリアミドとのブレンドである。
【0070】
本発明の高分子組成物は、さらに他の通常の添加剤や助剤を含むことができる。その例としては、帯電防止剤や安定化剤、充填剤があげられる。このような添加剤は、当業界の熟練者には公知である。詳細は、例えば「ポリオレフィン」、ウルマン工業化学辞典、第6版、2000、電子版に記載されている。
【0071】
ポリオレフィンに充填する充填剤は、基本的には熟練者にとって公知である。ポリオレフィン充填用の充填剤は、微細な無機及び/又は有機固体であり、これを使用することで、ポリオレフィンの特性、例えば硬度、伸度、比重、衝撃靭性、ガス透過性又は電気導電率が影響を受けうる。また、充填剤を難燃剤として使用してもよい。ポリオレフィン充填用の充填剤は、ある程度球形の充填剤であってもよく、また板状及び/又は針状の充填剤、又は繊維状の充填剤であってもよい。好ましい充填剤の例としては、炭酸塩類や水酸化物類、酸化物類、混合酸化物類、ケイ酸塩類、硫酸類があげられる。
【0072】
使用可能な充填剤の一つがCaCO3である。CaCO3は、粉砕石灰石、粉砕大理石又は粉砕チョークのような天然物であってもよい。あるいは工業的に製造された沈降CaCO3であってもよい。他の例としては、ドロマイトCaMg(CO32や、石英、熱分解法SiO2又は沈降シリカなどの天然又は工業用SiO2、BaSO4、CaSO4、ZnO、TiO2、MgO、Al23、グラファイト、カーボンブラック、及びカオリン、モンモリロナイト、マイカ又はタルクなどの層状状ケイ酸塩があげられる。ガラス繊維、炭素繊維又はアラミド繊維などの繊維を用いてもよい。難燃剤として有用な充填剤の例としては、Al(OH)3又はMg(OH)2があげられる。充填剤は、原則的に既知の方法で変性されていてもよく、例えば適当な分散剤及び/又は疎水化剤で表面処理されていてもよい。
【0073】
好ましい充填剤の典型的な大きさは、一般に0.5〜5μmの範囲、好ましくは1〜3μmの範囲である。球形又は実質的に球形の粒子である場合、上記の範囲は直径に関するが、これ以外の場合は、粒子の長さに関する。
【0074】
しかし、1〜500nmの範囲の大きさのナノ粒子を使用することもできる。好ましいナノ粒子は、例えばナノ粒子状のSiO2又はZnOを含んでいる。また、ナノ粒子状シート状ケイ酸塩、特に有機変性シート状ケイ酸塩が使用可能であり、その例としては、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、ベイデライト又はベントナイトがあげられる。このようなナノ粒子の生産は、WO2004/111122に記載されており、相当する製品が市販されている。このようなナノ粒子の層の厚みは約1nmであるが、長さ及び幅は、100nm〜500nmの範囲にまで及ぶ。
【0075】
本発明は、好ましくはCaCO3、タルク、ガラス繊維及びシート状ケイ酸塩を、特にナノ粒子状シート状ケイ酸塩を用いて実施される。したがって、難燃剤、さらに好ましくはAl(OH)3及び/又はMg(OH)2を使用することが好ましいであろう。
【0076】
充填剤の使用量は、使用する充填剤やポリマーに所望の特性に応じて熟練者により決定される。充填剤の使用量は、組成物全成分の総量当たり、一般に1%〜100質量%の範囲である。
【0077】
機械的特性を改善するための充填剤を、5%〜50質量%の量、好ましくは10%〜40質量%の量、さらに好ましくは15%〜35質量%の量で添加することも好ましい。
【0078】
難燃剤として有用な充填剤、例えばAl(OH)3又はMg(OH)2を、例えば25%〜100質量%の量で、さらに好ましくは35%〜80質量%の量、さらに好ましくは40%〜60質量%の量で添加することも好ましい。
【0079】
比表面積が高いため、ナノ粒子は、10質量%以下の量で、例えば0.1%〜10質量%の範囲、好ましくは0.2%〜5質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0080】
本発明の両親媒性ブロックポリマーを使用する利点は、充填ポリオレフィンの場合に特に顕著に現れる。ポリオレフィンを充填すると、しばしば破断伸度が減少することとなる。両親媒性ブロック共重合体を使用すると、充填による破断伸度の低下を顕著に抑えることができる。いいかえれば、高分子組成物は、同じ充填量でも優れた機械的工学的特性を持つこととなり、そのポリマーがより多量の安価な充填剤で充填可能となる。
【0081】
本発明の高分子組成物は、いかなる形状をとってもよく、例えばいかなる種類の成形物やフィルムであってもよい。しかし、本高分子組成物は、繊維、糸、織布、不織布、形成ループニット、延伸ループニット及び/又は他の織物材料の形状であること好ましい。ポリマー又は高分子組成物から繊維及びその糸、織布、不織布及び/又は他の織物材料を製造する方法は、当業界の熟練者には公知である。これらの材料は、スポーツウエア、機能性下着などの下着、上着、ジャケットなどの衣料用織物であってもよく、カーテン、テーブルクロス、寝具、椅子張り生地、カーペットなどの家庭用織物であってもよい。あるいは、工業用織物でもよく、その例としてはカーペットや自動車用不織布があげられる。
【0082】
本発明の高分子組成物は、いろいろな方法で製造可能である。例えば、本発明で使用されるブロック共重合体の存在下に、このポリオレフィンを製造してもよい。また、まずポリオレフィン成形物、特に繊維、糸、織布及び/又は不織布を製造し、これらの表面を本発明で使用されるブロック共重合体で処理し、必要ならさらにアニーリング工程で処理してもよい。
【0083】
本発明の好ましい実施様態においては、このブロック共重合体を、適当な装置内で溶融するまで加熱して、ポリオレフィンや必要に応じて他の成分と、特に他のポリマー及び/又は充填剤とともに激しく混合する。例えば、混練機、単軸押出機、二軸押出機、あるいは他の分散装置を用いることができる。混合装置からの溶融高分子組成物の吐出は、ダイを用いて通常既知の方法により実施できる。例えば、ストランド状に吐出しチップ化してペレットとすることができる。しかし、溶融物を直接所望の形状の成形物に、例えば射出成形又はブロー成形で加工することもでき、又は適当なダイを通して吐出して繊維とすることもできる。
【0084】
ブロック共重合体、又は各種のブロック共重合体の混合物を、他の成分とともに、好ましくは無溶媒であるいは溶液状で、ポリオレフィンに添加することがでる。
【0085】
混合/ブレンドの温度は、当業界の熟練者により決められるが、使用するポリオレフィンの種類や、場合によっては他のポリマーの種類に依存する。このポリオレフィンは、一面では、混合が可能となるまで十分軟化する必要がある。しかしあまり柔らかすぎでもいけない。というのも、十分なせん断エネルギーをかけることができなくなるためである。また熱劣化の危険が出てくる。一般に120〜300℃の温度が使用可能だが、本発明はこれに限定されるわけではない。この意味で、本発明により使用されるブロック共重合体が熱安定性優れることが特に有利であることがわかる。
【0086】
本発明に記載の高分子組成物中のポリオレフィン含量は、組成物の全成分の総量当たり、一般に35%〜99.95質量%の範囲であり、好ましくは50%〜99.9質量%の範囲であり、さらに好ましくは60%〜99.85質量%の範囲であり、最も好ましくは70%〜99.8質量%の範囲である。
【0087】
充填剤が含まれない場合、ポリオレフィン量は高くなることがある。この場合、この組成物は、組成物全成分の総量当たり一般に、75%〜99.5質量%のポリオレフィン、好ましくは85%〜99.9質量%の、さらに好ましくは90%〜99.85質量%の、最も好ましくは95%〜99.8質量%のポリオレフィンを含む。
【0088】
ブロック共重合体の量は、組成物に期待される特性に応じて、当業界の熟練者により決定される。ブロック共重合体の量は、一般に、組成物全成分の総量当たり、0.05%〜10質量%の範囲、好ましくは0.1%〜6質量%の範囲、さらに好ましくは0.3%〜5質量%の範囲、最も好ましくは0.5%〜3.0質量%の範囲である。
【0089】
本方法のある好ましい実施様態においては、このブロック共重合体を二段プロセスで導入してもよい。このため、少なくとも一つのブロック共重合体と、ポリオレフィン及び他のポリマーのごく一部とを、必要なら加熱下で混合する。混合には、前述の方法を用いることができる。このような濃厚物は、5%〜50質量%、好ましくは20%〜40質量%のブロック共重合体を含む。この濃厚物は、次工程で他のポリオレフィンと加熱、混合されて、使用目的にあわせて成形される。例えば、繊維を製造してから、さらに織布や不織布、他の織物材料に加工してもよい。
【0090】
このように製造された未染色の高分子組成物、特に繊維、糸、織布、不織布及び/又は他の織物材料の形状の高分子組成物は、本発明の方法で容易に染色できる。本発明のブロック共重合体の使用により、ポリオレフィンの染料、特に分散染料に対する親和性が上昇する。このようにして、染色された織物や材料等が得られることとなる。特に染色された衣料用織物や家庭用織物が、このようにして得られる。織物全体を染色してもよい。しかし、はじめに繊維のみを染色し、染色した繊維を加工して織物材料としてもよい。
【0091】
本発明の方法は、未染色の高分子組成物を、少なくとも水と染料を含む配合物で処理することを含む。織物材料用の水系染色配合物は、当業界の熟練者には「リカー」という名前でも知られている。
【0092】
この配合物は、好ましくは水のみを含有する。しかし、少量の水混和性有機溶剤を添加してもよい。このような有機溶剤の例としては、一水素性又は多水素性アルコール類、例えばメタノールやエタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール又はグリセロールがあげられる。エーテルアルコール類も使用可能である。その例としては、(ポリ)エチレン又は(ポリ)プロピレングリコールのモノアルキルエーテル、例えばエチレングリコールモノブチルエーテルがあげられる。しかし、水以外のこのような溶媒の量は、配合物又はリカーの全溶媒の総量当たり一般に、20質量%、好ましくは10質量%、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0093】
この配合物には原則としてあらゆる種類の染料が使用可能で、その例としては、カチオン染料やアニオン染料、媒染染料、直接染料、分散染料、イングレイン染料、バット染料、含金属染料、反応染料、硫化染料、酸性染料、直接染料があげられる。
【0094】
本発明では、好ましくは分散染料、各種分散染料の混合物、酸性染料、又は各種酸性染料の混合物が使用される。
【0095】
「分散染料」がいかなるものであるかは、当業界の熟練者には公知である。分散染料は、分散コロイド状の水溶解度の低い染色用染料であり、特に繊維や織物材料の染色に用いられる。
【0096】
本発明では、原則としていかなる分散染料も使用可能である。使用する分散染料は、いろいろな発色団を一つあるいは複数個保持している。この分散染料は、具体的には、アゾ染料又はアントラキノン染料であってもよい。あるいは、キノフタロン染料、ナフタルイミド染料、ナフトキノン染料又はニトロ染料であってもよい。分散染料の例としては、C.I.ディスパーズ・イエロー3、C.I.ディスパーズ・イエロー5、C.I.ディスパーズ・イエロー64、C.I.ディスパーズ・イエロー160、C.I.ディスパーズ・イエロー211、C.I.ディスパーズ・イエロー241、C.I.ディスパーズ・オレンジ29、C.I.ディスパーズ・オレンジ44、C.I.ディスパーズ・オレンジ56、C.I.ディスパーズ・レッド60、C.I.ディスパーズ・レッド72、C.I.ディスパーズ・レッド82、C.I.ディスパーズ・レッド388、C.I.ディスパーズ・ブルー79、C.I.ディスパーズ・ブルー165、C.I.ディスパーズ・ブルー366、C.I.ディスパーズ・ブルー148、C.I.ディスパーズ・バイオレット28、C.I.ディスパーズ・グリーン9があげられる。当業界の熟練者は、染料の命名法についてはすべて理解している。完全な化学式は、適当な教科書及び/又はデータベース(例えば「カラーインデックス」)で見つけることができる。分散染料の詳細や他の例は、「工業用染料」、クラウス・フンゲル編、Wiley−VCH、Weinheim、2003、pages134〜158に、詳細の述べられている。
【0097】
各種分散染料の混合物を使用してもよいであろう。このようにして中間色が得られる。この分散染料は、堅牢性が高く三原色染色可能であることが好ましい。
「酸性染料」がいかなるものであるかは、当業界の熟練者は熟知している。酸性染料は、一つ以上の酸基、例えばスルホン酸基又はその塩を有している。これらの染料は、発色団を一個以上保有していてもよい。特に、アゾ染料が好ましい。酸性染料の例としては、C.I.アシッド・イエロー17やC.I.アシッド・ブルー92、C.I.アシッド・レッド88、C.I.アシッド・レッド14、C.I.アシッド・オレンジ67などのモノアゾ染料;C.I.アシッド・イエロー42やC.I.アシッド・ブルー113、C.I.アシッド・ブラック1などのジアゾ染料;C.I.アシッド・ブラック210やC.I.アシッド・ブラック234などのトリスアゾ染料;C.I.アシッド・イエロー99やC.I.アシッド・イエロー151、C.I.アシッド・ブルー193などの含金属染料;C.I.モーダント・ブルー13やC.I.モーダント・レッド19などの媒染染料;C.I.アシッド・オレンジ3やC.I.アシッド・ブルー25、C.I.アシッド・ブラウン349などの他の構造の各種酸性染料があげられる。酸性染料の詳細や他の例は、例えば「工業用染料」、クラウス・フンゲル編、Wiley−VCH、Weinheim、2003、p.276〜295に、詳細に記載されている。各種酸性染料の混合物を使用してもよいであろう。
【0098】
配合物中の染料の量は、使用目的にあわせて、当業界の熟練者により決定される。
【0099】
この配合物は、溶媒と染料以外に他の予備成分(助剤)を含んでいてもよい。織物用の助剤の典型例としては、分散剤やレベリング剤、酸、塩基、緩衝剤系、界面活性剤、錯化剤、消泡剤、UV劣化に対する安定化剤があげられる。UV吸収剤を助剤として用いることが好ましい。
【0100】
染色は、好ましくは中性又は酸性の、例えばpHが3〜7、好ましくは4〜6の配合物を用いて行われる。
【0101】
この高分子組成物での処理、特に上記の繊維、糸、織布、不織布及び/又は他の織物材料の水系染料配合物での処理は、従来の染色工程で、例えば配合物中への浸漬や、配合物の吹き付け、配合物の塗布により行われる。加工は連続的であってもバッチ操作であってもよい。染色装置は当業界の熟練者には公知である。染色は、例えばリールベック、糸染色装置、ビーム染色装置、あるいは噴射を用いて回分式に行ってもよいし、適当な乾燥装置及び/又は固定装置を用いて、スロップパジング、面パジング、吹き付け、又は泡沫塗布工程などにより連続的に行ってもよい。
【0102】
高分子組成物の比率、特に繊維、糸、織布、不織布及び/又は他の織物材料と染料配合物との比率(「リカー比率」ともいう)、特に染料そのものの比率は、当業界の熟練者により使用用途に応じて決められる。一般に、高分子組成物/染料配合物の比は、1:5〜1:50の範囲、好ましくは1:10〜1:50の範囲であり、また配合物中の染料の量は、高分子組成物当たり約0.5%〜5質量%、好ましくは1%〜4質量%であるが、本発明はこれらの範囲に限定されるわけではない。
【0103】
本発明によれば、本高分子組成物は、処理中及び/又は処理後に、そのガラス転移温度Tgより高く溶融温度より低い温度に加熱される。これは、好ましくは配合物全体をその温度にまで加熱し、高分子組成物をその配合物中に浸漬することで行われる。
【0104】
しかし、高分子組成物を配合物とともにTg未満の温度まで加熱し、必要なら乾燥し、次いで処理後の高分子組成物をTgを超える温度まで加熱してもよい。両者の方法を組み合わせてもよいであろう。
【0105】
処理温度は、もちろん使用する特定ポリオレフィンと染料の種類に依存する。ポリオレフィンや他のポリマーのガラス転移温度や溶融温度は、当業界の熟練者には周知であり、既知の方法により容易に決定できるであろう。この処理温度は、一般に60℃以上であり、特に60〜140℃の範囲、好ましくは80〜140℃の範囲である。特に、95〜140℃の温度が、ポリプロピレン単独重合体や共重合体に有用であった。
【0106】
熱処理中に染料が高分子組成物中に浸透して、染色された高分子組成物を与える。この染色後の高分子組成物中の染料の分布は、ある程度均一であることが好ましいが、この組成物が濃度勾配をもっていてもかまわない。この染料は、好ましくは分散染料又は酸性染料であり、より好ましくは分散染料である。
【0107】
処理時間は、高分子組成物や配合物の種類や染色条件に応じて当業界の熟練者によって決められる。処理時間とともに温度を変えることもできる。例えば、比較的低い70〜100℃の範囲の初期温度を、徐々にあげて120〜140℃の範囲に持っていってもよい。効果的であったのは、10〜90分、好ましくは20〜60分の昇温段階と、続く10〜90分、好ましくは20〜60分の高温段階である。あるいは、約0.5〜5分の短時間、スチームあるいは過熱スチームで処理してもよい。
【0108】
染色の後、従来の後処理、例えば洗濯洗浄剤や後処理用酸化剤または還元剤、堅牢度改良剤で処理してもよい。このような後処理は、原則として当業界の熟練者には公知である。
【0109】
顕著な効果として、染色後のあるいは未染色の本発明の高分子組成物は、印刷可能である。本発明の高分子組成物からなる基材は、印刷に使用可能である。この基材はどのような基材であってもよく、例えば本発明の高分子組成物からなる自立性フィルムであってよい。織物基材が好ましい。織物基材の例としては、本発明の高分子組成物からなる織布、形成ループニット又は不織布があげられる。
【0110】
織物基材の印刷方法は、当業界の熟練者には公知であろう。スクリーン印刷法が好ましいであろう。一般に少なくとも一種のバインダー、少なくとも一種の染料、及び少なくとも一種の増粘剤、及び必要に応じて界面活性剤、流動助剤又はUV安定化剤などの他の添加剤を含む織物印刷用のペーストは、基本的には既知の方法で使用される。上述の染料を着色材として使用してもよい。分散染料や酸性染料が好ましく、分散染料が特に好ましい。織物印刷用のペースト及びその通常の組成は、当業界の熟練者には公知であろう。
【0111】
本発明の印刷方法を、直接印刷法で用いてもよい。即ち、この印刷ペーストを直接基材に転写してもよい。当業界の熟練者なら、他の方法、例えばインクジェット法を用いる直接印刷で印刷するかもしれない。
【0112】
本発明によれば、印刷の際にも後熱処理が施される。このため、本発明の高分子組成物からなる基材は、印刷中及び/又は好ましくは印刷後に、そのガラス転移温度Tgより高く溶融温度より低い温度にまで加熱される。印刷後の基材は、好ましくはいったん、例えば50〜90℃で30秒〜3分の範囲の時間、乾燥される。次いで、好ましくは上述の温度で、熱処理が施される。既存装置、例えば大気圧乾燥機やテンターや真空乾燥機で適当と認められた熱処理時間は30秒〜5分である。
【0113】
上述のように、染色後あるいは印刷後に通常の後処理を行ってもよい。
【0114】
本発明の染色方法及び/又は印刷方法は、上述の成分とともに、染料、特に分散染料又は酸性染料、さらに好ましくは分散染料を含む着色高分子組成物を提供する。染料の量は、好ましくは組成物の全成分の総量当たり0.5%〜4質量%の範囲である。染色後の高分子組成物は、例えば衣料用又は家庭用の織物となる。
【0115】
本発明の染色後及び/又は印刷後の高分子組成物は、従来の材料に増して、強度の強いばらつきの少ない色相を呈する。また、摩擦堅牢度が高く洗浄堅牢性に特に優れる。
【0116】
以下の実施例により、本発明を説明する。
【0117】
A)染色助剤用のブロック共重合体の調整
ブロック共重合体1:
【0118】
PIBSA550とポリエチレングリコール1500からのABA構造のブロック共重合体の調製
【0119】
PIBSA550(モル質量Mn:550、加水分解数HN:162mg/gKOH)とプルリオール(登録商標)E1500(ポリエチレンオキシド、Mn≒1500)の反応
内部温度計、還流冷却機及び窒素導入孔を備えた4lの三口フラスコに、693gのPIBSA(Mn=684;分散指数DP=1.7)と750gのプルリオール(登録商標)E1500(Mn≒1500、DP=1.1)を投入した。フラスコを80℃に加熱しながら、三回真空吸引、窒素置換を繰り返した。反応混合物を次いで130℃に加熱し、この温度で3時間維持した。その後、生成物を室温にまで冷却した。次のスペクトルが得られた。
【0120】
IRスペクトル(KBr)、cm-1
OH伸縮振動、3308;C−H伸縮振動、2953、2893、2746;C=O伸縮振動、1735;C=C伸縮振動、1639;PIB骨格の他の振動:1471、1390、1366、1233;プルリオールのエーテル振動、1111.
【0121】
1−H−NMRスペクトル(CDCl3、500MHz、TMS、室温)、ppm:4.9−4.7(PIBSAのC=C);4.3−4.1(C(O)−O−CH2 −CH2−);3.8−3.5(O−CH2 −CH2−O、PEO分子鎖);3.4(O−CH3);3.1−2.9;2.8−2.4;2.3−2.1;2.1−0.8(PIB分子鎖のメチレン及びメチン)。
【0122】
ブロック共重合体2:
PIBSA1000とポリエチレングリコール6000からのABA構造のブロック共重合体の調製
【0123】
PIBSA1000(加水分解数HN:86mg/gKOH)とプルリオール(登録商標)E6000(ポリエチレンオキシド、Mn≒6000)の反応
【0124】
内部温度計、還流冷却機及び窒素導入孔を備えた4lの三口フラスコに、783gのPIBSA(Mn=1305;DP=1.5)と1800gのプルリオール(登録商標)E6000(Mn≒6000、DP=1.1)を投入した。フラスコを80℃に加熱しながら、三回真空吸引、窒素置換を繰り返した。反応混合物を次いで130℃に加熱し、この温度で3時間維持した。その後、生成物を室温まで冷却してスペクトルを調べた。
【0125】
IRスペクトル(KBr)、cm-1
OH伸縮振動、3310;C−H伸縮振動、2956、2890、2745;C=O伸縮振動、1732;C=C伸縮振動、1640;PIB骨格の他の振動:1471、1388、1365、1232;プルリオールのエーテル振動、1109
【0126】
1−H−NMRスペクトル(CDCl3、500MHz、TMS、室温)、ppm:強度は異なるが実施例1に同じ:4.9−4.7(PIBSAのC=C);4.3−4.1(C(O)−O−CH2−CHr);3.8−3.5(O−CH2 −CH2−O、PEO分子鎖);3.4(O−CH3);3.1−2.9;2.8−2.4;2.3−2.1;2.1−0.8(PIB分子鎖のメチレン及びメチン)
【0127】
比較用ポリマー
末端極性基を有するポリイソブテン(WO04/35635)
【0128】
PIBSA1000(加水分解数HN=86mg/gKOH)とテトラエチレンペンタミンとの反応
【0129】
不活性ガス雰囲気下で(N2保護)、2lの四つ口フラスコに、582gのPIBSA(α−オレフィン含量=85%;Mn=1000;DP=1.70;ポリイソブテン系)と63.8gのエチルヘキサノールを投入した。140℃に加熱後、99.4gのテトラエチルペンタミンを滴下した。添加終了後、混合物を160℃にまで加熱し、160℃で3時間保持した。反応の間、揮発物質がいくらか発生した。反応を終了するため、反応終期には圧力を500mbarとして30分間維持した。次いで室温まで冷却した。
【0130】
IRスペクトル:NH振動、3295、1652cm-1;サクシイミド骨格のC=O伸縮振動、1769、1698cm-1、PIB骨格の他の振動:2953、1465、1396、1365、1238cm-1
【0131】
B)染色試験
本発明の未染色高分子組成物の調整:
【0132】
試験には次のポリマーを用いた。
ポリプロピレン:モプレンHP561S(バセル)。モプレンHP561Sは、分子量分布が非常に狭いホモポリプロピレン(メタロセン触媒)である。この樹脂は、具体的には連続フィラメントや不織布の紡糸に適している。
【0133】
HP561Sホモポリプロピレン(他成分無添加)の製品データ
【0134】
【表1】

【0135】
異なる二回の試験を行い、上記ブロック共重合体1及び2をそれぞれ5質量%で、ポリプロピレンチップに添加した。比較のために、比較用ポリマーを用いた試料も調整した。
【0136】
試験は二軸押出機を用い、ハウジング温度が180℃で、200rpmで実施した。ダイ出力は1×4mmである。
【0137】
押出量は5kg/hであり、ブロック共重合体と比較用ポリマーはそれぞれ、80℃で溶融し、250g/hの押し出し量で添加する。定量ポンプは100−200g/hで運転する。
【0138】
紡糸:
延伸倍率は3:1で、線密度は17dtexである。紡糸は、200℃と230℃の間の温度で実施する。
【0139】
織物シート材料の生産:
紡出した繊維や添加した高分子繊維のすべてを加工して織布あるいは延伸ループニット織物とし、下に記載の特定の方法により染色した。織物シート材料を用いることで、織物仕上げ加工のレベル、例えば手ざわりの評価が可能となる。得られた織物シート材料を染色試験に用いた。
【0140】
分散染料による染色:
染色には、AHIBA染色機を用い、上述のようにして得たニットを、上記の量の上記染料の存在下、pH4.5で純水中で、初期90℃から130℃に40分かけて1℃/minの加熱速度で加熱し、130℃でさらに60分間保持して染色を実施した。リカー比、即ち処理浴の容積(リットル)と乾燥ポリプロピレンニット(kg)との比は、50:1であった。染色後、染色物を約90℃まで冷却し、浴から取り出し、冷間洗浄し、100℃で乾燥した。
【0141】
リカー比=50:1(注。このリカー比は大きいが、これは基材量が小さいためであり、本発明で使用される物質の量を反映するものではない。工業スケール、即ち生産スケールでは、従来から使用されている非常に小さなリカー比を用いることが可能である。)
【0142】
使用する分散染料:
ディスパーズ・イエロー114、ディスパーズ・レッド60、ディスパーズ・レッド82、及びディスパーズ・ブルー56を、剥離試験に用いた。染色する織物の質量当たり2質量%の量の染料を使用する。
【0143】
酸性染料での染色:
酸性染色は、分散染色と同様に行ったが、染浴の最高温度は105℃とした。
【0144】
使用する酸性染料:
市販の黄色、赤色及び青色酸性染料を、染色する織物の質量当たり2質量%の量で用いた。
【0145】
得られた織物の評価:
以下のパラメータを参考に評価をおこなった。
・シェードの深さ
・均一性;特に筋があるかどうかを注目した。筋がある場合、個々の繊維又は織物の繊維束が異なる強度で染色され、筋状の模様を形成する現象が起こっているとみなされる。
・洗濯堅牢度;洗濯堅牢度の評価のために、得られた染色物を、2g/lの柔軟衣料用洗濯洗剤を用い、リカー比が200:1で60℃で5分間、高速洗浄した.判定基準は、PP染色が洗濯に伴い薄くなるか、つまり染料が溶出するかどうかであり、また近くの未染色の織物が着色するかどうかであった。
・摩擦堅牢度;
繊維表面上に単に堆積している染料は簡単にこすり落とすことができるが、繊維中に入り込んだ染料はこすりおとすことができない。
本発明で使用されるブロック共重合体1及び2を助剤として染色した織物は、分散染色、酸染色ともに、深いシェードを示した。染色後のニットは、手触りもごわごわしてはいなかった。
【0146】
これらの織物には筋がなかった(図1参照)。
【0147】
本発明の物質はすべて、非常に高い洗浄堅牢性を示した。
【0148】
これらの織物の摩擦堅牢度は良好であった。顕微鏡写真を見ると、染料が繊維内に均一に分布していることがわかる(図(3)参照)。
【0149】
無添加のポリプロピレンからなるニットを、比較のために同条件で染色した。しかし、染料で微量着色又は変色したのみであった。
【0150】
さらに比較のために、ポリプロピレンに上述の比較用ポリマー(テトラエチレンペンタミンからなる高極性末端基を有するPIB)を同様に添加した。市販の青色及び赤色バット染料を用いて、染色試験を行った。本発明で使用されるブロック共重合体を使用したときと比べて、この織物のシェードは浅く、特に筋が多かった(図2)。摩擦堅牢度はかなり低かった。電子顕微鏡写真では、繊維の表面のみが染色されていることがわかる(図4参照)。
【0151】
図面の簡単な説明
図1は、青色分散染料を用いて本発明により染色された織物を示す。
図2は、比較用ポリマーを添加してバット染料で染色された織物を示す。
図3は、赤色分散染料を用いて本発明により染色されたポリプロピレン繊維の断面を示す。
図4は、比較用ポリマーを添加し赤色バット染料で染色されたポリプロピレン繊維の断面を示す。
【0152】
C)印刷試験
本発明において使用する印刷ペーストは、次の方法で調整した。
【0153】
増粘剤原液の調整;
激しく攪拌しながら、72gのガラクトマンナン増粘剤(ダイアガムA12、ダイアモルト)を800mlの水に溶解した。12gのp−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウムと12gの25molのEOエトキシ化オレイン酸とを均一となるまで攪拌してペーストを得た。次いで、4gのオキソ油13と1.2gのクエン酸水溶液を攪拌下に混合した。次いで、このペーストを1000mlとし、得られたペースト原液を激しく攪拌して均一化させた。
【0154】
印刷ペーストの製造方法:
Xgの染料分散液と(100−x)gの増粘剤原液とを、激しく攪拌しながら均一化した。使用する染料の名前や種類は、下に記載する。
【0155】
印刷操作の説明
ループ形成のニット織物を、市販の印刷台接着剤を用いて印刷台上に固定する。次いで、4cm幅の帯状模様を有するE55ゲージのスクリーン印刷用スクリーンをその織物の上に載せる。先の印刷ペーストを、スクリーンの縁に塗布する。直径が15mmのスキージーをスクリーンのふちに載せて、設定強度6で磁気的に印刷領域上を引っ張る。
【0156】
次いで、乾燥機内で80℃で乾燥し、さらに10分間、130℃又は140℃の過熱スチームで固定する。
【0157】
印刷物はすべて、次の後処理を施した。
●オーバーフロー冷間洗浄
●オーバーフロー熱間洗浄
●還元クリア(余剰染料除去)
○2g/lのハイドロサルファイト
○3ml/lの50%苛性アルカリ
○1g/lのニトロトリ酢酸ナトリウム
○2g/lの5molのEOエトキシ化C13アルコール
○処理時間10min、80℃、リカー比15:1
●オーバーフロー熱間洗浄
●オーバーフロー冷間洗浄
●乾燥機で80℃で30分間乾燥
【0158】
使用した織物基材:
印刷試験には、添加ポリプロピレン繊維でできたループ形成ニットポリプロピレン織物を用いた。製造方法を、以下に記す。
【0159】
各ケースに、次の添加物を用いた:
織物1:添加物なし(比較用)
織物2:3.5質量%のブロック共重合体2(1000−6000−1000)
織物3:5質量%のブロック共重合体1(550−1500−550)
織物4:1質量%のブロック共重合体2(1000−6000−1000)と3%のPETとの混合物
【0160】
次の染料を用いた:
C.I.ディスパーズ・イエロー54(ダイアニックス・黄bS−3G、ダイスター)
C.I.ディスパーズ・レッド91(ダイアニックス・赤S−BEL、ダイスター)
C.I.ディスパーズ・ブルー60(ダイアニックス・青S−3G、ダイスター)
市販の黒色染料(ダイアニックス・黒S−2B、ダイスター)
【0161】
印刷物の品質は、摩擦堅牢度と60℃での洗濯堅牢度より試験した。
【0162】
洗濯堅牢度は、DINISOen105C03に準じて試験した。織物を染色又は印刷後、標準条件下で洗浄した。ニット織物と一緒に、他の材料からなる紐を洗浄した。これらの紐は、白いままで残るべきである。つまり洗濯中に他の織物からこれらに染料が移ってはならない。1〜5のスコアを採用し、5を純白、1をひどい色移りとする。
【0163】
摩擦堅牢度は、DINISOen105X12に準じて試験を行った。結果を1〜5のスコアで採点した。5が最高で、1が最悪である。
【0164】
試験条件及び得られた試験結果を表1〜3に示す。表4は、ポリエステルニット上での比較印刷の結果を示す。
【0165】
比較用の添加剤を含まないニット1は、少し着色するが、染色はされなかった。
【0166】
【表2】

【0167】
【表3】

【0168】
【表4】

【0169】
【表5】

【0170】
【表6】

【0171】
印刷試験の結果、本発明の高分子組成物からなる形成ループニット上では、洗濯堅牢度及び摩擦堅牢度に優れる印刷物が得られることが明らかとなった。また、得られた色相は非常に明るく、シェードの程度もかなり深かった。
【0172】
D)充填ポリプロピレンの生産
各ポリプロピレン試料を、上述のように、粒度が2μmの市販のCaCO3充填剤とともに溶融押出機で処理して、充填ポリプロピレンを得た。各試料は、組成物の全成分当たり20質量%のCaCO3を含有している。
【0173】
本発明の例は、さらにCaCO3の量に対して0.8質量%又は3質量%のブロック共重合体2を含有している。
【0174】
比較のために、純粋な非被覆CaCO3を、一度PIBSA1000で被覆し、また、さらなる試験では、CaCO3充填剤を使用の際に従来より助剤として使用されているステアリン酸で被覆した。このように被覆した充填剤を、20質量%の量で、ポリプロピレンに添加した。各試料のメルトフローインデックス(ISO1133に準じて)、衝撃靭性(ISO180/1Aに準じて)、及び破断伸度(ISO527−2に準じて)を測定した。結果を表5に示す。
【0175】
【表7】

【0176】
注:
従来から使用されている助剤であるステアリン酸を使用してCaCO3をポリプロピレンに充填する場合、得られる充填ポリプロピレンの破断伸度が大幅に減少して、39%にまで低下する。本発明のように両親媒性ブロック共重合体を使用すると、得られる破断伸度は、使用するブロック共重合体の量により64%〜203%の範囲となり、したがって、ステアリン酸を使用した場合より約2〜5倍大きくなる。しかるに、生成物の衝撃靭性は低下しない。PIBSAだけではこの効果をもたない。
【0177】
E)溶液染色されたポリプロピレン繊維の仮撚加工
はじめに:
仮撚加工では、製造直後の連続フィラメント繊維を熱処理して、嵩高いある程度柔軟な糸とするが、理想的には、糸の伸度は、この仮撚加工操作で減少しない。
【0178】
試験手順:
仮撚加工試験は、AFK−2仮撚加工機(バルマグ、レムシャイト)を用いて行った。試験は、400m/s〜1000m/sのいろいろな加工速度で行った。ヒーター温度を直線的にあげて、200−220℃で400m/sから、250−270℃で1000m/sに変更した。
【0179】
添加剤を含まないポリプロピレンと、5質量%のブロック共重合体2を含むポリプロピレンを用いた。組成物は、上述のように2500m/minでの溶融押し出しで製造し、紡糸してPOY繊維とし、仮撚加工試験をおこなった。目標としたDTYの繊維線密度は、34フィラメントで82.7dtexであった。
【0180】
伸度試験は、得られたヤーンで行った。結果を表6に示す。添加物を含むヤーンは、高い仮撚加工速度でも伸びを示し、特に添加剤を含まないポリプロピレンの伸度より大きな伸度を示し、加工安定性が優れる。
【0181】
【表8】

表6:5%のブロック共重合体2の存否と、仮撚加工糸の伸度と仮撚加工速度の関係
【0182】
一般に、400m/minを超える仮撚加工速度が達成できるのは驚くべきことである。溶液染色のポリプロピレンと比較して、顔料レベルが約3%となると糸の引張強度が急激に低下し、高速で糸切れが起こる。このため、仮撚加工速度を二倍とすると、これらの加工コストが大幅に増加することとなる。
【0183】
F)他のポリマーを含む組成物
融点が94℃のポリエステルの生産
14kgのアジピン酸と9.344kgの1,4−ブタンジオールと0.1gのジオクタン酸スズとを反応させる第一反応を、窒素雰囲気下で230〜240℃で行った。生成する大半の水は、蒸留で除き、次いで0.02gのオルトチタン酸テトラブチルを添加した。酸価が1未満となるまで反応を継続した。その後、過剰のブタンジオールは減圧下で蒸留で除き、OH価を56とした。
【0184】
第二反応段では、720.8gのアジピン酸とブタンジオールから得られた上記ポリエステルと、454.4gのジメチルテレフタレート、680gの1,4−ブタンジオール、及び2gのオルソチタン酸テトラブチルとを、180℃で窒素下でゆっくりと攪拌した。生成するメタノールは、蒸留で除いた。その後、温度を、2時間かけて230℃にあげ、13.08gのピロメリット酸無水物を添加し、さらに1時間後0.8gの燐酸水溶液(50質量%)を添加した。過剰のブタンジオールは減圧下で蒸留で除いた。
【0185】
得られたポリエステルの融点は94℃で、OH価が16mg−KOH/gで、酸価が
1mg−KOH/g未満であった。
【0186】
95質量%のポリプロピレン、3.75質量%の上記ポリエステル、及び1.25質量%のブロック共重合体2からなる組成物を、上記のように溶融押し出しで製造し、230℃で紡糸して繊維とし、この繊維から織物を上述のように製造した。その際、DTY線密度が35dtex/32フィラメント〜260dtex/12フィラメントで紡糸を行った。添加物は、濃厚物に対して10%の比率で添加した。
【0187】
この織物で、染色試験を行った。染色試験は、上述のように行った。
【0188】
低融点のポリエステルを少量添加すると、添加しない本発明の組成物と比べて、多くの利点が得られる。
・染色温度は100℃で十分である。これは、カーペットの染色に重要である。
・染色液が徹底的に使用できる。つまり繊維がより多くの染料を取り込む。このため、染色加工のコストが減少し、排水中に残る染料の量が減少する。
・より小さな線密度で紡糸可能である。例えば、1dtex/filamentのマイクロファイバーが紡糸可能である。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】図1は、青色分散染料を用いて本発明により染色された織物を示す。
【図2】図2は、比較用ポリマーを添加してバット染料で染色された織物を示す。
【図3】図3は、赤色分散染料を用いて本発明により染色されたポリプロピレン繊維の断面を示す。
【図4】図4は、比較用ポリマーを添加し赤色バット染料で染色されたポリプロピレン繊維の断面を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種のポリオレフィン、及び
・主にイソブテン単位からなる少なくとも一種の疎水性ブロック(A)と、
・主にオキシアルキレン単位からなる平均モル質量Mnが1000g/mol以上
である少なくとも一種の親水性ブロック(B)と、を含む少なくとも一種のブロック共重合体、
を含む高分子組成物。
【請求項2】
前記ポリオレフィンが、ポリプロピレン又はポリエチレンの単独重合体または共重合体である請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項3】
さらにポリオレフィン及びブロック共重合体以外の他のポリマーを含む請求項1または2に記載の高分子組成物。
【請求項4】
前記他のポリマーがポリエステル及び/又はポリアミドを含む請求項3に記載の高分子組成物。
【請求項5】
前記他のポリマーの使用量がポリオレフィン及び他のポリマーの総量に対して0.1質量%〜20質量%の範囲である請求項3又は4に記載の高分子組成物。
【請求項6】
・前記ブロック共重合体の疎水性ブロック(A)の平均モル質量Mnが200〜10000g/molの範囲にあり、
・前記ブロック共重合体の親水性ブロック(B)の平均モル質量Mnが1000〜20000g/molの範囲にある、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の高分子組成物。
【請求項7】
前記親水性ブロック(A)が、50質量%以上のエチレンオキシド単位を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の高分子組成物。
【請求項8】
前記ブロック共重合体が、一般式A−B−Aで表される少なくとも一種の三元ブロック共重合体である請求項1〜6のいずれか1項に記載の高分子組成物。
【請求項9】
前記ブロック共重合体が、少なくとも一般式A−B−Aと一般式A−Bでそれぞれ表される三元ブロック共重合体と二元ブロック共重合体の混合物である請求項1〜6のいずれか1項に記載の高分子組成物。
【請求項10】
ブロック共重合体の使用量が、組成物全成分の総量に対して0.05質量%〜10質量%の範囲にある請求項1〜9のいずれか1項に記載の高分子組成物。
【請求項11】
ブロック共重合体の量が0.1質量%〜6質量%の範囲にある請求項10に記載の高分子組成物。
【請求項12】
さらに少なくとも一種の染料を含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の高分子組成物。
【請求項13】
前記染料が分散染料である請求項12に記載の高分子組成物。
【請求項14】
衣料用又は家庭用織物を含む請求項1〜13のいずれか1項に記載の高分子組成物。
【請求項15】
さらに少なくとも一種の充填剤を含む請求項1〜14のいずれか1項に記載の高分子組成物。
【請求項16】
前記充填剤が、CaCO3、Al(OH)3、Mg(OH)2、タルク、ガラス繊維又はシート状ケイ酸塩からからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含む請求項15に記載の高分子組成物。
【請求項17】
前記充填剤がナノ粒子状シート状ケイ酸塩を含む請求項15に記載の高分子組成物。
【請求項18】
前記充填剤が難燃剤を含む請求項15に記載の高分子組成物。
【請求項19】
未染色の高分子組成物を少なくとも水と染料とを含む配合物で処理する高分子組成物の染色方法であって、使用する未染色の高分子組成物が、請求項1〜11のいずれか1項に記載の未染色の高分子組成物であり、及び前記高分子組成物が、処理中及び/又は前記処理後にガラス転移温度Tgより高く溶融温度より低い温度に加熱される染色方法。
【請求項20】
前記高分子組成物が、繊維、糸、織布、不織布、延伸ループ、形成ループニット及び/又は他の織物材料の形状で使用される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
高分子組成物からなる未印刷の基材を少なくとも染料及び慣用成分を含む適当な印刷ペーストで印刷する方法であって、高分子組成物からなる前記未印刷基材が、請求項1〜13のいずれか1項に記載の高分子組成物を染色した材料又はその未染色の材料であり、前記高分子組成物が、印刷中及び/又は印刷後にそのガラス転移温度Tgよりも高く溶融温度より低い温度に加熱される印刷方法。
【請求項22】
前記基材が織物基材である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記染料が分散染料である請求項19〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記高分子組成物中のポリオレフィンがポリプロピレン又はポリエチレンの単独重合体または共重合体である請求項19〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
・主にイソブテン単位からなる少なくとも一種の疎水性ブロック(A)と、
・主にオキシアルキレン単位からなる平均モル質量Mnが1000g/mol以上である少なくとも一種の親水性ブロック(B)と、を含むブロック共重合体を、
ポリオレフィン、又はポリオレフィンと他のポリマーとの混合物を染色又は印刷するための助剤として使用する方法。
【請求項26】
前記染色又は印刷が分散染料を用いて行われる請求項25に記載の使用法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−542486(P2008−542486A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514058(P2008−514058)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062469
【国際公開番号】WO2006/128796
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】