説明

ポリオレフィンにおける使用のために要求される極性添加物の削減方法

ポリオレフィンにおいて使用される極性添加物の効力を改善するための方法が開示される。本発明の方法は、式R(OCHCHOH(式中、Rは、炭素原子が20個〜100個の直鎖アルキル又は分岐鎖アルキルであり、かつ、xは2〜100である)の共添加物化合物の効果的な量を、フィルム形成前のポリオレフィンに添加することに関する。ポリオレフィン樹脂におけるこれらの物質の存在は、より少ない極性添加物が、それらの効力を失うことなく使用されることを可能にし、また、そのような樹脂から作製されるフィルムについての改善された光学的特性もまたもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、国際特許出願番号PCT/ES2007/070165(2007年10月2日出願、発明の名称「ポリオレフィンにおける使用のために要求される極性添加物の削減方法」、その教示は、全体が本明細書中下記に再現されるかのように、参照により本明細書に組み込まれる)の優先権を主張する本出願である。
【0002】
本発明は、ポリオレフィン樹脂材料における使用のために必要とされる極性添加物の量を削減する方法に関する。本発明の方法は、式R(OCHCHOH(式中、Rは、炭素原子が20個〜60個の直鎖アルキル又は分岐鎖アルキルであり、かつ、xは2〜100である)を有する物質を樹脂に配合することを含む。本発明において使用される共添加物物質は、ポリオレフィン樹脂(例えば、超低密度線状低分子ポリエチレン、実質的線状エチレンポリマー、ポリプロピレン及びオレフィンブロックコポリマーなど)のためのスリップ剤として使用される、脂肪酸アミド添加物との使用のために特に良く適する。
【背景技術】
【0003】
添加物は、様々な性質を樹脂に与えて、樹脂をその意図された使用のためにより好適にするために、ポリオレフィン材料と共に一般に使用される。そのような添加物には、可塑剤、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系化合物(例えば、Ciba Specialty Ch.によって作製されるIrganox(商標)1010))、密着(cling)添加物(例えば、ポリイソブチレン(PIB))、熱安定剤(例えば、ホスフィト系化合物(例えば、Irgafos(商標)168))、顔料、光安定剤(例えば、Cytec Industriesによって作製されるCyasorb(商標)UV531ベンゾフェノン、及び、Ciba Specialty Ch.によって作製されるTinuvin(商標)622ヒンダードアミン系光安定剤)、加工助剤(例えば、ポリエチレングリコール、フルオロポリマー、フルオロエラストマー、ワックス)、難燃剤(例えば、Albright and Wilson Americasによって作製されるAmgard(商標)CPC102リン系難燃剤)、潤滑剤(例えば、ワックス、各種ステアラート、鉱油)、スリップ剤(例えば、エルクアミド、オレアミド)、架橋剤(例えば、過酸化物(例えば、DuPontによって作製されるBooster(商標))、防曇剤(例えば、Uniqemaによって作製されるAtmer(商標)100ソルビタンエステル)、衝撃改質剤(例えば、Allied Corp.によって作製されるPaxon(商標)Pax Plusゴム改質フィルム樹脂)、及び、帯電防止剤(例えば、Akzo Chemicals,Inc.によって作製されるArmostat410エトキシル化第三級アミン)などが含まれる。
【0004】
これらの物質は有益な属性を樹脂に与えることができる一方で、費用を増大させる。従って、使用される添加物の量を、添加物の効力を一般には維持しながら削減することが有益である。
【0005】
さらに、添加物が加工時に樹脂から容易に分離し得るならば、そのような添加物は設備における望ましくない堆積を潜在的には生じさせることがあり、これにより、清浄化のための運転停止が余儀なくされ、また、最終的なフィルムにおけるそのような添加物の所望される効果が弱められる。従って、樹脂材料に対する添加物の1つ又はそれ以上の堅牢度を改善することもまた望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際特許出願番号PCT/ES2007/070165
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの目標の1つ又はそれ以上が、式R(OCHCHOH(式中、Rは、炭素原子が20個〜60個の直鎖アルキル又は分岐鎖アルキルであり、かつ、xは2〜100である)の少なくとも1つの化合物をポリオレフィン樹脂に添加することによって促進され得ることが発見されている。従って、本発明の1つの態様が、式R(OCHCHOH(式中、Rは、炭素原子が20個〜60個の直鎖アルキル又は分岐鎖アルキルであり、かつ、xは2〜100である)の化合物の、ポリオレフィン樹脂における極性添加物のための共添加物としての使用である。
【0008】
本発明の共添加物は、ポリオレフィン樹脂に付着したまま留まる、より大きい能力を有することが認められている。この現象は、部分的には、これらの物質の比較的大きい分子量を考えると、運動に対する抵抗性から生じ、また、部分的には、比較的長い非極性テールから生じるファンデルワールス力における増大から生じることが考えられる。さらには、これらのテールの末端に存在するOH基が、その後、極性添加物(例えば、脂肪酸アミド(例えば、ポリオレフィンにおけるスリップ剤として一般に使用されるエルクアミドなど)など)を固定するための水素結合による結合として使用され得ることが考えられる。従って、極性添加物の効果、特に、表面改質剤(例えば、スリップ剤など)として機能する極性添加物の効果が、より少ない物質により達成される。これは、添加物が、表面に、すなわち、効力のための理想的な位置に置かれるからである。さらに、添加物が、他の一般に使用されている添加物よりも大きな程度に樹脂に固定されるので、効果がより長期間にわたって維持される。
【0009】
共添加物が、共添加物を含む樹脂から作製される物品の性能に悪影響を及ぼさないこともまた重要である。例えば、共添加物を配合する樹脂から作製されるフィルムの密封性が実質的に悪化しないことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様において、本発明は、共添加物が式R(OCHCHOH(式中、Rは、20個〜100個の炭素原子(好ましくは、20個〜60個の炭素原子)を有する直鎖アルキル又は分岐鎖アルキルであり、かつ、xは2〜100である)の化合物である、任意の極性添加物と共に使用される共添加物としての使用に関する。多くの適用において、Rが、平均値で30個の炭素原子を有する直鎖アルキルであり、xが約5の平均値を有することが好ましい。他の適用において、xが2〜25であるか、又は、2〜10でさえあるような、より短いエチレンオキシド鎖を有することが有益である場合がある。加えて、他の適用については、Rが分岐鎖であるか、又は、Rが20個〜60個の炭素原子を有することが好ましい場合がある。共添加物についての総平均分子量が少なくとも400g/モル(より好ましくは、少なくとも約450g/モル)であり、かつ、約2000g/モル未満(より好ましくは、約1500g/モル未満)であることが好ましい。エチレンオキシド含有量が共添加物の20重量パーセント〜80重量パーセント(より好ましくは、約50重量パーセント以下)を構成することもまた好ましい。そのような化合物が、国際公開第02/42530号(これはその全体において参照により本明細書に組み込まれる)において、湿潤性を改善するための親水性剤としてのそれらの使用についてより詳しく記載される。そのような化合物の1つの例が、ポリプロピレンキャリアにおけるマスターバッチとして、Ciba Specialty Chemicals,Inc.からIrgasurf(商標)HL560の商品名で市販されている。他の例が、Baker PetroliteからUNITHOXエトキシラートの商品名で市販されている。
【0011】
理論によってとらわれることは意図されないが、式R(OCHCHOHを有する化合物の添加は、従来のスリップ添加物と比較して、比較的大きい分子量及び相容性のために、テールのOH基がポリマー表面に固定されることを可能にすることが考えられる。これらの極性OH基は、その後、様々な種類の化学的固定を極性添加物(例えば、脂肪酸アミド(例えば、ポリオレフィンにおけるスリップ剤として一般に使用されるエルクアミドなど)など)に提供するための水素結合による結合の供給源として使用され得る。従って、極性添加物の効果、特に、表面改質剤(例えば、スリップ剤など)として機能する極性添加物の効果が、より少ない物質により達成される。これは、添加物が効力のための理想的な位置に保たれるからである。さらに、添加物が、加工工程の期間中に失われないように表面に保持されるので、効果がより長期間にわたって維持される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の共添加物は、好ましくは、樹脂全体又は樹脂ブレンド配合物全体に基づいて約200ppmから、代替では500ppmから、又は、1000ppmから、約3000ppmまで、代替では2500ppmまで、又は、2000ppmまでの量で樹脂に添加される。繊維については、当分野では公知であるように、典型的には、この範囲内のより少ない量の添加物(例えば、約200ppm〜約1000ppm)を、繊維紡糸における問題を避けるために使用することが好ましい。
【0013】
これらの物質は、任意のポリオレフィン樹脂、又は、ポリオレフィン樹脂を含有する任意のブレンド配合物と共に使用することができる。好ましいポリオレフィン物質はプラストマー及び/又はエラストマーである。好ましいポリオレフィン系プラストマー及び/又はポリオレフィン系エラストマーには、ポリエチレンプラストマー及びポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンプラストマー及びポリプロピレンエラストマー、オレフィンブロックコポリマー(これはまた、統計学的マルチブロックオレフィンコポリマーとしても公知である)、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高圧低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが含まれる。ポリエチレン系エラストマー及びポリエチレン系プラストマーには、均一分岐線状エチレンポリマー(例えば、米国特許第3,645,992号における均一分岐線状エチレンポリマーなど)、及び、実質的線状エチレンポリマー(例えば、米国特許第5,272,236号、米国特許第5,278,272号、米国特許第5,582,923号及び米国特許第5,733,155号に記載される実質的線状エチレンポリマーなど)、及び/又は、それらのブレンド配合物(例えば、米国特許第3,914,342号又は米国特許第5,854,045号に開示されるブレンド配合物など)が含まれる。これらの参考文献のそれぞれが全体において参照により本明細書に組み込まれる。ポリエチレン系ポリマーにはまた、エチレンの高圧コポリマーが含まれ、例えば、エチレンビニルアセタートインターポリマー、エチレンアクリル酸インターポリマー、エチレンエチルアセタートインターポリマー、エチレンメタクリル酸インターポリマー及びエチレンメタクリル酸イオノマーなどが含まれる。実質的線状エチレンポリマーが好ましい。実質的線状エチレンポリマーは、The Dow Chemical CompanyからAFFINITY(商標)の商品名で市販されている。
【0014】
プロピレン系エラストマー及びプロピレン系プラストマーには、国際公開第03/040442号及び米国特許出願第60/709688号(2005年8月19日出願)(これらのそれぞれが全体において参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるプロピレン系プラストマー及びプロピレン系エラストマー(これらの物質のいくつかが、The Dow Chemical CompanyからVERSIFY(商標)の商品名で市販されている)、並びに、ExxonMobil Chemical companyからVISTAMAXX(商標)の商品名で販売されるプロピレン系プラストマー及びプロピレン系エラストマーが含まれる。
【0015】
セグメント化エチレン−α−オレフィンブロックコポリマーには、例えば、国際公開第2005/090427号、同第2005/090425号及び同第2005/090426号において議論されるセグメント化エチレン−α−オレフィンブロックコポリマーが含まれる(これらのそれぞれが全体において参照により本明細書に組み込まれる)。これらの樹脂のいくつかが、The Dow Chemical CompanyからINFUSE(商標)の商品名で市販されている。
【0016】
本発明における使用のための好ましいポリマーが、少なくとも50%の炭素原子を含有するポリマー骨格を含有するポリマーであり、より好ましくは、少なくとも65%の炭素原子を含有するポリマー骨格を含有するポリマーであり、最も好ましくは、少なくとも75%の炭素原子を含有するポリマー骨格を含有するポリマーである。本発明を使用することから最大の利益を受けるポリマーが、比較的低い表面エネルギーを有するポリマーである。表面エネルギーは、多くの従来技術を使用して測定することができ、水の接触角(ASTM D2578)を測定することによって、又は、Dyneペンを使用する直接的測定(ASTM D2578)、例えば、Diversified Enterprises(Claremont、NH)によって販売されるACCU DYNE TEST(商標)マーカーペンなどを使用する直接的測定によって、当業者には公知である。
【0017】
いくつかの実施形態では、0.87g/cm、0.90g/cm、0.91g/cm又は0.92g/cmから、約0.96g/cm、0.95g/cm又は0.94g/cmまでの(ASTM D−792に従って求められるような)密度を有するベース樹脂を選択することが有益である場合がある。特定の適用については、0.5g/10分(好ましくは1.0g/10分、より好ましくは2g/10分)から約20g/10分(好ましくは18g/10分、より好ましくは15g/10分)までの(ASTM D−1238の190C/2.16キログラム(kg)の条件によって求められるような)メルトインデックスを有するベース樹脂を選択することもまた有益である場合がある。
【0018】
本発明の極性添加物は、ポリオレフィン樹脂と共に一般に使用される添加物のどれもが可能である。機能的添加物には、可塑剤、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系化合物(例えば、Ciba Specialty Ch.によって作製されるIrganox(商標)1010))、熱安定剤(例えば、ホスフィト系化合物(例えば、Irgafos(商標)168))、密着添加物(例えば、ポリイソブチレン(PIB))、顔料、光安定剤(例えば、Cytec Industriesによって作製されるCyasorb(商標)UV531ベンゾフェノン、及び、Ciba Specialty Ch.によって作製されるTinuvin(商標)622ヒンダードアミン系光安定剤)、加工助剤(例えば、ポリエチレングリコール、フルオロポリマー、フルオロエラストマー、ワックス)、難燃剤(例えば、Albright and Wilson Americasによって作製されるAmgard(商標)CPC102リン系難燃剤)、潤滑剤(例えば、ワックス、各種ステアラート、鉱油)、スリップ剤(例えば、エルクアミド、オレアミド)、架橋剤(例えば、過酸化物(例えば、DuPontによって作製されるBooster(商標))、防曇剤(例えば、Uniqemaによって作製されるAtmer(商標)100ソルビタンエステル)、衝撃改質剤(例えば、Allied Corp.によって作製されるPaxon(商標)Pax Plusゴム改質フィルム樹脂)、及び、帯電防止剤(例えば、Akzo Chemicals,Inc.によって作製されるArmostat410エトキシル化第三級アミン)などが含まれる。
【0019】
フィルムにおける使用のためにポリオレフィンに一般に添加される添加物の1つのタイプがスリップ剤である。スリップ剤は極性であることが多く、従って、本発明のために十分に適する。好ましくは、スリップ剤は、ワックス状成分又は鎖状炭化水素成分を有する有機化合物(その金属塩を含む)であり、ポリオレフィンと半相溶性である。スリップ剤は、飽和又はエチレン性不飽和であり得る8個〜30個の炭素原子を有する(特に、12個〜24個の炭素原子を有する)脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸と、アンモニア、或いは、2個〜10個の炭素原子を有するモノアミン又はジアミン(例えば、第一級アルキルアミン又はアルキレンジアミンなど)とのアミドであり得る。そのようなスリップ剤の例が、オレアミド、ベヘンアミド、ステアルアミド、エルクアミド、並びに、N,N’アルキレンジアミンのビスステアルアミド、ビスオレアミド又はビスエルクアミド、オレイルパルミトアミド、ステアリルエルクアミド、エチレン−ビス−ステアルアミド、及び、エチレン−ビス−オレアミドである。スリップ剤はまた、炭化水素ワックスである場合がある。
【0020】
本発明の共添加物は、より少ない極性添加物が、効力の相応する喪失を伴うことなく使用されることを可能にするので、本発明の添加物は、典型的に認められるよりも少ない量で加えることができる。フィルム、繊維又は製造品におけるエルクアミドについては、エルクアミドを重量比で250ppmから2パーセントまでの範囲で効果的に加えることができる。多くの適用については、共添加物が1500ppm以下の量で加えられることが好ましい(例えば、1000ppm以下の量、750ppm以下の量、500ppm以下の量、又は、一層より少なくは200ppm未満の量)。
【0021】
添加物(1つ又はそれ以上)及び本発明の共添加物は、マスターバッチ混合及びブレンド混合を含めて、当分野では公知である任意の様式で添加することができる。ポリプロピレンを、共添加物のためのマスターバッチを形成するためのポリマーキャリアとして有利に使用することができる。
【0022】
さらなる非極性添加物もまた、意図される使用に依存して、ポリオレフィン材料に添加することができる。本発明の共添加物はそれ自体が、何らかの粘着防止活性を有することが見出されているが、さらなる粘着防止剤(例えば、シリカ系粘着防止剤、例えば、二酸化ケイ素など)を加えることが望ましい場合がある。これらは、フィルムにおける使用のために特に望ましい場合がある。例えば、ポリオレフィンフィルムを作製する際に使用される好適な添加物パッケージは、二酸ケイ素、エルクアミド及びIrgasurf(商標)HL560を含むことができる。
【0023】
本発明の、添加物及び共添加物を含有する樹脂は、ポリオレフィンが現在使用される適用のいずれにおいても使用することができる。本発明は繊維及びフィルムにおいて独特の有用性を有し得る。
【0024】
共添加物の使用によって可能となる添加物のより少ない量によって、以前に得ることができたよりも良好な光学特性を有するフィルムを製造することができるようになる。従って、少なくとも約300ppmの粘着防止剤を含有し、それにもかかわらず、約50よりも大きい(ASTM D2457−90を使用して45°で求められるような)光沢、並びに、約14パーセント未満の(ISO14782、50ミクロンのフィルム厚を使用して求められるような)全体的ヘイズによって特徴づけられるフィルムを得ることができる。
【0025】
本発明を使用して作製されるフィルムは、当分野で公知である標準的プロセスに従って作製することができる。従って、例えば、本発明を使用して作製されるフィルムは、場合によってはコロナ処理に供され得るモノフィルム又は共押出しフィルムと共に使用することができる。
【0026】
共添加物だけの使用は、(すなわち、極性添加物さえもない場合)、特定の適用において望ましい可能性がある性質を与えることもまた発見されている。約1.5%のIrgasruf(商標)HL560を、さらなる粘着防止剤を伴うことなく含む低密度フィルムは、冷ロール又は製造直後のフィルムリールのどちらに対しても妨害しないことが認められている。同様に、弾性繊維、例えば、1.5重量%〜約6重量%の本発明の共添加物を配合するラストール(lastol)などは、添加物が全く使用されないときよりも低い巻き戻し力を有し、実際に、他の粘着防止性添加物が使用されるときよりも低い巻き戻し力を有する。観測されている別の態様は、本発明において記載される共添加物がラップ用フィルムに添加されるとき、これらのフィルムの巻き取り及び巻き戻しの際に生じる雑音が、密着レベルを低下させることなく、大きく低下することであり、又は、代替では、密着レベルが、同じレベルを保ちながら増大し得ることである。
【0027】
下記の実施例が、本発明をさらに例示するために提供されるが、示される具体的な実施形態に本発明を限定することは意図していない。
【実施例】
【0028】
下記の実施例のために、0.904g/cmの密度及び1.0g/10分のメルトインデックスを有するエチレン/1−オクテンコポリマープラストマーをベース樹脂として使用した。その後、それぞれのサンプルは、表1に示されるような添加物の特有の組合せを含有した。例えば、比較用実施例1は、750ppmのエルクアミド、0ppmのIrgasurf(商標)及び2500ppmのシリカを含有した。これらの実施例において使用されるシリカは、90%が20.2μm未満であり、10%未満が2.3μm未満である粒子サイズ分布を有する珪藻土フラックスか焼タイプであった。
【0029】
その後、これらの材料を、直径が30mmの一軸スクリュー押出し機による従来の実験室インフレート・フィルム・ラインを使用してフィルムに形成した。ポリマー及び添加物をオフラインでペレット配合し、自動化された供給装置を介して押出し機の供給部に加えた。単層バブルを2.5:1のブローアップ比により調製し、バブルを周囲空気により冷却した。バブルを潰し、ロールからの試験サンプルの取り外しを助けるための最小限の張力とともに巻いた。ロールを、室温で、かつ、主に暗所の環境において貯蔵した。
【0030】
試験フィルムサンプルを、表に示されるように、時間の関数としてロールから取り除いた。試験サンプルの無傷性が、注意深い実験室技術によって、例えば、フィルムをロールから切断するときには手袋を着用し、試験表面にできる限り触れないことなどによって、最善の状態にされた。試料のすべてが、打抜き装置を使用して、より大きなサンプルから所定のサイズに縮小されたので、試験片の正確な幾何形状が一様に保たれた。
【0031】
摩擦係数(COF)を、万能装置(Instron5564)をASTM1894−06試験法のもとで使用して静的モード及び動的モードで測定した。実験を、アルミニウム表面の上を移動するフィルムに対して行い、同様にまた、フィルム対フィルムの試験で行った。一般には、約0.3以下のフィルム対フィルムの動的COFが望ましく、好ましくは、0.2以下のフィルム対フィルムの動的COFが望ましい。本発明の方法は、より高い温度(例えば、40℃又は50℃を超える温度など)でのCOFの減少における、特に改善された成績をもたらす。
【0032】
表2は、フィルムが移動しているとき、フィルムが自身と接触している(すなわち、フィルムバブルの内側がバブルの外側と接触している)間に得られたCOFデータを示す。表3は、フィルムバブルの外側が金属表面の上を移動する間に得られたCOFデータを示す。
【表1】


【表2】


【表3】

【0033】
Irgasurfを2500ppmで有するフィルム(実施例2)が、フィルム対フィルム及びフィルム対金属の両方について最も低い動的COFを有した。
【0034】
第2の組の実験を、Covex Extruder 45mm−28Dが使用されたことを除いて、上記のように調製された単層フィルムに対して行った。表4は、フィルムが移動しているとき、フィルムが自身と接触している(すなわち、フィルムバブルの内側がバブルの外側と接触している)間に得られた、これらのフィルムからのCOFデータを示す。表5は、フィルムバブルの外側が金属表面の上を移動する間に得られたCOFデータを示す。
【表4】


【表5】

【0035】
この第2の組のフィルムもまた、Testing Machines,Inc.(TMI)から購入された滑り/摩擦係数モニターを使用して、同じASTM1894−06試験法に従って試験された。表6は、フィルムが移動しているとき、フィルムが自身と接触している(すなわち、フィルムバブルの内側がバブルの外側と接触している)間に得られたCOFデータを示す。表7は、フィルムバブルの外側が金属表面の上を移動する間に得られたCOFデータを示す。
【表6】


【表7】

【0036】
再び、1000ppmのIrgasurf及び500ppmのエルクアミドを有するサンプル(実施例7)が、50パーセントを超えるエルクアミドを有し、しかし、Irgafurfを含まないサンプル(実施例8)と同等の成績をもたらした。
【0037】
さらなる試験を、チーグラー・ナッタ触媒を使用して作製されたより高密度のLLDPE樹脂を用いて作製される一連の材料に対して行った。実施例11及び実施例13のためのベース樹脂が、0.919の密度及び1.05g/10分のメルトインデックス(2.16Kg、190℃)を有するエチレン/1−オクテンコポリマーであった。実施例12及び実施例14のためのベース樹脂が、0.921の密度を有し、同じメルトインデックス(1.05g/10分)を有するエチレン/1−オクテンコポリマーであった。試験された組成物が表8に示される。フィルムを単層Covexライン(45mm、25D)で作製した。COFを再度、ISO8295:1995に従ってInstron装置で測定した。表9は、フィルムが移動しているとき、フィルムが自身と接触している(すなわち、フィルムバブルの内側がバブルの外側と接触している)間に得られたCOFデータを示す。表10は、フィルムバブルの外側が金属表面の上を移動する間に得られたCOFデータを示す。
【表8】


【表9】


【表10】

【0038】
このシリーズに関して、Irgasurfを1000ppmで含み、ほんの350ppmのエルクアミドを含むサンプル(すなわち、実施例13)が、比較用実施例12よりも大きいCOFを有した。このことは、ベース樹脂の密度がCOFに対して有する影響を明らかにする。実施例13及び実施例14を比較することにより、Irgasurfに関して、エルクアミドレベルが半分であるフィルムでさえ依然として、フィルム対フィルムのCOFについて0.2未満のCOF値を与えたことに留意されたい。
【0039】
比較用実施例12及び実施例14の光学の研究もまた行った。この研究が表11に示された。光沢を、ASTM D2457−90を使用することに従って45°で測定し、全体的ヘイズをISO14782に従って測定した。サンプルは50ミクロンの厚さであった。実施例14は、類似するレベルのエルクアミド及びわずかにより多いCaCOにもかかわらず、実施例12よりも大きい光沢及び低い全体的ヘイズを有した。
【表11】

【0040】
別の一組の実験を、好ましい共添加物を分子量及びエトキシラート割合に関して決定しようとするために行うことができる。最初に、簡便な試験を、共添加物が洗浄後の表面に認められ得るかどうかを単に定性的に評価するために準備することができる。一連のフィルムが、表12に示される市販の材料を用いて上記のように作製される。X線光電子分光法(XPS)が、酸素を含有する共添加物がフィルムの表面に認められ得るかを判定するために使用される。XPS手法は、最初に試料をおよそ1cm四方に切断することを伴う。その後、サンプルは、洗浄瓶からの試薬用メタノールの約1秒間の溶媒洗浄に供される。その後、洗浄瓶からの試薬用ヘキサンのおよそ1秒間の洗浄が行われる。このプロセスが、溶媒がしたたることを可能にするための洗浄間の中断とともに、合計で3回のすすぎ洗浄がそれぞれの溶媒について行われるように繰り返される。すすぎ洗浄後直ちに、試料表面が、ろ過された自家製窒素による吹き付けによって乾燥される。XPS分析そのものが、Kratos HSi装置を使用して行われる。単色AlKα線源が使用され、この線源は210ワット(14kV、15mA)で作動させられる。サーベイスペクトルが80eVのエネルギー分解能及び0.2eV/ステップで集められる。残留するO1sピーク面積が、共添加物が溶媒すすぎ洗浄の後も残っていることの証拠として使用される。この分析の結果が表12に示される。
【表12】

【0041】
表12において示されるように、共添加物が分子量を400g/モル〜2000g/モルの範囲に有し、かつ、エチレンオキシド含有量が共添加物の20重量パーセント〜80重量パーセントを構成するとき、最適な成績が認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式R(OCHCHOH(式中、Rは、炭素原子が20個〜100個の直鎖アルキル又は分岐鎖アルキルであり、かつ、xは2〜100である)の少なくとも1つの共添加物化合物の効果的な量をフィルム形成前のポリオレフィンに添加することを含む、ポリオレフィンとともに使用される極性添加物の効力を改善するための方法。
【請求項2】
前記極性添加物がスリップ剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2つ以上のスリップ剤が添加される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記スリップ剤が脂肪酸アミドである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記脂肪酸アミドが、エルクアミド、エチレン−ビス−オレアミド、エチレン−ビス−ステアルアミドからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記スリップ剤が1000ppm以下の量で添加される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記共添加物が400g/モル〜2000g/モルの範囲での分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記共添加物化合物が200ppm〜1500ppmの量で添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記共添加物が、Irgasurf(商標)HL560、Unithox(商標)480及びUnithox(商標)550からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
粘着防止剤を添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記粘着防止剤がシリカである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記シリカが約3000ppm未満の量で添加される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
エチレンオキシド含有量が前記共添加物の20重量パーセント〜80重量パーセントを構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
極性スリップ剤と、フィルム形成前のポリオレフィンに対する式R(OCHCHOH(式中、Rは、炭素原子が20個〜60個の直鎖アルキル又は分岐鎖アルキルであり、かつ、xは2〜100である)の化合物とを含む、添加物組成物。
【請求項15】
約50よりも大きい光沢、並びに、約14パーセント未満のヘイズ及び0.3未満のフィルム対フィルムの動摩擦係数の組合せによって特徴づけられる、フィルム層。
【請求項16】
前記フィルム対フィルムの動摩擦係数が0.2未満である、請求項15に記載のフィルム層。
【請求項17】
フィルム形成前のポリオレフィンに対する式R(OCHCHOH(式中、Rは、炭素原子が20個〜60個の直鎖アルキル又は分岐鎖アルキルであり、かつ、xは2〜100である)の少なくとも1つの化合物が、3000ppm未満のシリカ系粘着防止剤が使用されることを可能にするために効果的な量で存在することによってさらに特徴づけられる、請求項15に記載のフィルム層。

【公表番号】特表2010−540743(P2010−540743A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527476(P2010−527476)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【国際出願番号】PCT/ES2008/070179
【国際公開番号】WO2009/043957
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】