説明

ポリオレフィンの改質

本発明は、溶融混合装置を使用してポリオレフィンを酸素及び0〜2ボルトの範囲の酸化還元電位を有する遷移金属触媒と接触させて溶融混合することを含む、ポリオレフィンのメルト・フロー・インデックスを増加させる方法であって、酸素を該溶融混合装置に導入し、該ポリオレフィンと接触している該遷移金属触媒が該溶融混合装置の一構成部品の少なくとも一部を形成している、前記の方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ポリオレフィンを改質する方法に関する。特に、本発明は、ポリオレフィンのメルト・フロー・インデックス(MFI)を増加させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンは、農業、建設、繊維技術、健康衛生、及び包装のような様々な用途において、世界中で広く使用されている。普通のポリオレフィンにはポリエチレン及びポリプロピレンが含まれる。
【0003】
ポリエチレン及びポリプロピレンのようなポリオレフィンは、一般に大規模な反応器中で製造されている。それらの対象とする用途によって、或るポリオレフィンは、色々な加工性を示すように異なる等級で製造することが出来る。例えば、ポリエチレンは、吹込み成形用途に使用するためには、比較的低いMFI(典型的には高い平均分子量及び広い分子量分布を特徴とする)を有するように、或いは、射出成形用途に使用するためには、比較的高いMFI(典型的には比較的低い平均分子量及び比較的狭い分子量分布を特徴とする)を有するように、製造することが出来る。
【0004】
しかしながら一般に、下流の転化器が必要とする多数の等級のポリオレフィンを製造するには、大規模な製造操作の自由度が不十分である。従って、いくつかの等級のポリオレフィンは、大量に製造されるベース樹脂を用いて、調整された反応器後の改質処理(post-reactor modification)により製造される。例えば、ポリプロピレンのようなポリオレフィンは、反応器後の改質溶融混合処理において有機過酸化物と反応させて、該ベース樹脂よりも高いMFIと低い多分散性を有する等級のポリプロピレンを製造することが出来る。かかる改質技術は、典型的に該ポリマーの化学的改質及び(又は)該ポリマー鎖の構造的改質をもたらす。
【0005】
反応器後改質されたポリオレフィンを製造する他の方法が開発されているけれども、既存の方法に関連する一つ以上の不利点又は短所に対処するか又はそれらを改良するか、或いは少なくとも有用な代りの方法を提供する機会が残っている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、溶融混合装置を使用してポリオレフィンを酸素及び0〜2ボルトの範囲の酸化還元電位を有する遷移金属触媒と接触させて溶融混合することを含む、ポリオレフィンのメルト・フロー・インデックスを増加させる方法であって、酸素を該溶融混合装置に導入し、該ポリオレフィンと接触している該遷移金属触媒が該溶融混合装置の一構成部品の少なくとも一部を形成している、前記の方法を提供する。
【0007】
或るクラスのポリオレフィンのMFIの増加を促進するために、遷移金属触媒を使用することは知られている。しかしながら、有機過酸化物の使用と同様に、該触媒は、押出機のような溶融混合装置中でポリオレフィンに導入されそれと溶融混合される添加剤の形で典型的に使用される。かかる手順は、ポリオレフィンのMFIを増加させるには有用であるけれども、得られる改質ポリオレフィン中に、本来的に触媒残渣(又は有機過酸化物残渣)を生成し、MFIを増加することができる程度によって制限されることも又あり得る。
【0008】
今や、溶融混合装置の一構成部品の少なくとも一部を形成する遷移金属触媒は、酸素との組合せで、ポリオレフィンのMFIにおける効果的で効率的な増加を促進する働きをすることが出来ることが発見された。特に、ポリオレフィンのMFIは、ポリオレフィンを、遷移金属触媒を含む該構成部品及び酸素と接触させて溶融混合することにより、増加させることが出来ることが発見された。遷移金属触媒は、該装置の一構成部品の少なくとも一部を形成しているにも拘らず、驚いたことに、酸素との組合せでポリオレフィンの鎖切断を促進し、それによりそのMFIを増加させる活性を充分に有しているのである。
【0009】
溶融混合装置がスクリュー押出機である場合、遷移金属触媒を含む構成部品は、例えば、該スクリューの一部又はすべてを形成することが出来る。
【発明の効果】
【0010】
溶融混合装置の一構成部品の少なくとも一部を形成している遷移金属触媒のおかげで、得られる改質ポリオレフィン中に触媒残渣が殆ど又は全く移動しないことが理解されるであろう。
【0011】
本発明の更なる局面は、以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】HD5148及びH1の分子量分布に及ぼす銅及び圧入空気(6.2L/分)の効果を図解する。
【図2】HD5148のMFIに及ぼす(圧入空気を伴う)黄銅部材の効果を図解する。
【図3】銅含有部材を用いて押し出される材料に対する増加空気流速の効果を図解する。
【図4】あらゆる鋼部材を用いた場合の増加空気流速の影響を図解する。
【図5】HD5148のMFIに及ぼすせん断速度の影響を図解する。
【図6】銅及び鋼を用いた場合HD5148/H1のMFIに及ぼす温度の影響を図解する。
【図7】HD5148及びH1のMFIに及ぼす供給量の影響を図解する。
【図8】空気注入速度の関数として反応性押出HD5148の衝撃強度の比較を図解する(24黄銅部材/400rpm/20kg/時間/220℃)。射出成形等級HDPE(ET6099)が比較用に含まれている。
【図9】空気注入速度の関数として反応性押出H1の衝撃強度の比較を図解する(24黄銅部材/400rpm/20kg/時間/220℃)。射出成形等級HDPE(ET6099)が比較用に含まれている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、対象とする用途に対して適切な加工性や他の性質を示す改質等級のポリオレフィンを生成するように、ポリオレフィンのMFIを増加させるのに使用することが出来、又ポリオレフィンの多分散性(polydispersity)を狭くするのに使用することが出来る。
【0014】
ここで使用する場合、用語「ポリオレフィン」は、エチレン、プロピレン、ブテン、及び他の不飽和脂肪族炭化水素、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル)、又は(メタ)アクリル系誘導体(例えば、アクリル酸ブチル、アクリル酸)のポリマー又はコポリマーを意味することを意図している。一般に、ポリオレフィンは、エチレン、プロピレンのポリマ−又はそれらのコポリマー、又はエチレン又はプロピレンと1種以上のC4-C12α-オレフィン脂肪族コモノマーとのコポリマーである。使用されるポリオレフィンは鎖切断性である。「鎖切断性」(“chain scissionable”)であるということは、ポリオレフィンがポリオレフィンのMFIにおける増加を生ずる切断反応を受けることが出来るということを意味する。
【0015】
ポリオレフィンは、未使用ポリマー(即ち、反応器の後)であっても良いし、或いは廃ポリマー(即ち、使用済み)であっても良い。
【0016】
一態様において、ポリオレフィンは、ポリエチレンのホモポリマー、コポリマー、又は1種以上のポリエチレン・ホモポリマー及び(又は)コポリマーを含有する混合物である。
【0017】
ポリエチレンは、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、又は高密度ポリエチレン(HDPE)であっても良い。
【0018】
吹込み成形及び押出成形のような高溶融強度変換技術に使用するのに適した等級のポリエチレンは、一般に比較的広い多分散性(例えば、6以上)を有する。これらのポリマーは、一般に比較的劣った耐衝撃性を有する。対照的に、射出成形のような高溶融流れ変換技術(高メルトフロー変換技術)に使用される等級のポリエチレンは、典型的に比較的狭い多分散性(例えば、2以上4以下)を有する。これらのポリマーは、一般に良好な耐衝撃性を示す。
【0019】
HDPEは一般に、約0.941g/cm3以上の密度を有する。HDPEは、ホモポリマーであっても良いが、より普通にはエチレンと少量のブテン、ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン及びオクテンのような1種以上のα-オレフィン・コモノマーとのコポリマーとして製造される。かかるα-オレフィン・コモノマーは、一般に、ポリエチレン・ポリマーの結晶化度を減少させ、代りに、その衝撃強度を増加させそしてその剛性を減少させるように、ポリエチレン・ポリマー鎖構造中に短鎖分枝を導入するのに使用される。
【0020】
HDPEの比較的低い融点及び化学的不活性は、押出成形、射出成形、及び吹込み成形のような従来のポリマー変換技術に適している。包装用途における吹込み成形及び射出成形は、HDPEポリマーの断然最大の用途である。HDPEは、その不活性及び無毒性の故に、食品容器、ミルクボトル、家庭用品、及び玩具の製造に使用されている。それは又枠組箱、円筒型容器、パイプ、及びフィルムを製造するのに使用されている。
【0021】
主として比較的低いMFIの故に、一般に、吹込み成形ボトルを製造するのに使用されたHDPEの約3分の1未満が再生利用されている。特に、使用済みの、吹込み成形等級のHDPEは、一般に、それを未使用の射出成形等級HDPEと混合することにより再生利用されている。しかしながら、かかる再生利用は一般に、比較的高い処理温度及び圧力の必要性を招くポリマーの低いMFI特性の故に、最大約30重量%の、吹込み成形等級の、使用済みHDPEを使用することに限られているが、その影響はかかる処理を非実用的及び(又は)非経済的にする可能性がある。使用済みの吹込み成形等級HDPEを未使用の射出成形等級HDPEと混合すると、衝撃及び応力亀裂抵抗の減少を示す材料をもしかすると生ずる可能性もある。
【0022】
本発明に従う方法は、吹込み成形等級のHDPE、例えば、使用済みの、吹込み成形等級HDPEのMFIを増加させて、それを射出成形等級のHDPEとより効果的に且つ効率的に混合できるようにするために、有利に使用することが出来る。特に、使用済みの、吹込み成形等級HDPEのMFIを増加させると、圧力、温度及び成形時間を減少させた射出成形のような技術を用いて、該ポリマーをより容易に処理することが出来る。費用のかかるプロセス・パラメータにおけるかかる減少は、特に、射出成形された可動式ごみ入れ及び縁石側のリサイクル用収集枠組箱の製造におけるような大量のポリマーを使用するこれらの加工用途において、改質HDPEの使用を経済的に魅力的にする。かくして、本発明に従う方法は、現在再生利用されている、使用済みの、吹込み成形等級HDPEの量を増加させる手段として使用することが出来る。
【0023】
本発明に従ってポリエチレンを使用する場合、それは約0.918〜約0.970g/cm3の範囲の密度を有していても良い。ポリエチレンがコポリマーである場合、それはエチレンと一般に約10%w/w以下の、又は約5%w/w以下のコモノマーとのランダムコポリマーであっても良い。
【0024】
本発明に従って使用されるポリオレフィンは又、ポリプロピレンのホモポリマー、コポリマー、及び1種以上のポリプロピレン・ホモポリマー及び(又は)コポリマーを含有する混合物を含む。
【0025】
適切なポリプロピレン・ホモポリマーには、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、及びシンジオタクチックポリプロピレンが含まれる。
【0026】
ポリプロピレン・コポリマーには、プロピレンと、改質ポリマーの対象とする用途によって一般に決定される量の他のモノマーとのコポリマーが含まれる。一態様において、ポリプロピレン・コポリマーには、プロピレンと、約0.1%wt/wt〜約10%wt/wtまでの量の他のモノマーとのコポリマーが含まれる。一態様において、ポリプロピレン・コポリマーは、プロピレンとエチレンとのコポリマーである。
【0027】
適切なポリプロピレン・コポリマーには又、プロピレンと1種以上のC4-C12α-オレフィン脂肪族コモノマーとのコポリマーが含まれる。該コポリマーのα-オレフィン含量は、約0.1%wt/wt〜約10%wt/wtの範囲であってよい。具体的なα-オレフィン脂肪族コモノマーには、1-ブテン、1-ペンテン、及び1-ヘキセンが含まれる。
【0028】
ポリプロピレンのホモポリマー又はコポリマーのMFIを増加させると、ポリエチレンに関して上述したものと同様な処理加工上の利点をもたらすことが出来る。
【0029】
一態様において、ポリオレフィンは、比較的高い分子量及び広い分子量分布(即ち、低いMFI)を有し、高い割合の、エチレン又はプロピレンのホモポリマーを含む。
【0030】
エチレン誘導ポリマーの場合、製造の際使用された触媒系から生ずる少なくともいくらかの内部不飽和が存在すると、該ポリマーのMFIを増加させる効率の増加を与えることが出来る。
【0031】
本発明は、ポリオレフィンのMFIを増加させる方法を提供する。ここで言及されるMFI値は、2.16kgのラム重量を用いて190℃の温度でASTM D1238により測定されるものである。ここで報告されるMFI測定は、押出式可塑度計(メルトインデックス測定装置)を用いて行われた。
【0032】
当業者は、せん断力と温度の単純な効果により、ポリオレフィンの溶融混合中に、そのMFIの増加を制限しうる鎖切断の程度の抑制が、促進され得ることを理解するであろう。ポリオレフィンのMFIは、溶融ポリオレフィンを、溶融混合中に酸素又は遷移金属触媒と接触させることにより、更に増加させることが出来る。
【0033】
ポリオレフィンを酸素及び遷移金属触媒と接触させて溶融混合することによって、ポリオレフィンのMFIを、酸素及び遷移金属触媒が無い場合の同じ条件下、又は酸素又は遷移金属触媒が無い場合の同じ条件下よりも、効果的に且つ効率的に増加させることが出来ることが、今や発見されたのである。換言すれば、酸素及び遷移金属触媒の組合せは、ポリオレフィンのMFIにおける増加を可能にすると信じられている。場合によっては、MFIの増加を、従来の方法よりも急速に達成することが出来る。更に、該方法中に過酸化物又は遷移金属触媒のような添加剤を導入する必要なしに、MFIの増加を有利に達成することが出来る。
【0034】
ポリオレフィンのMFIを増加させることが出来る量に関しては、特別な制限はない。達成すべきMFIの増加量は、一般に、得られる改質ポリオレフィンの対象とする用途により決定されるであろう。
【0035】
本発明に従う方法は、ポリオレフィンのMFIにおける増加を効果的に且つ効率的に制御することを有利に可能にする。特に、滞留時間、せん断力、温度及び酸素含量(例えば、ガス流速による)のようなプロセス・パラメータを制御することにより、ポリオレフィンをそのMFIにおける所望の増加が達成されるように溶融混合することが出来る。
【0036】
一般に、ポリオレフィンのMFIは、少なくとも約5%、例えば、少なくとも約25%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約100%、又は少なくとも約500%増加されるであろう。
【0037】
本発明に従って使用されるポリオレフィンが、一般に(190℃/2.16kgにおいて)約0.6g/10分のMFIを有する使用済みの、吹込み成形等級HDPEである場合、該ポリマーのMFIを(190℃/2.16kgにおいて)少なくとも約3.5g/10分まで増加させるのに、本発明に従う方法を使用することが出来る。該HDPEのMFIを約0.6g/10分から少なくとも3.5g/10分まで増加させると、一般に射出成形用途におけるポリマー加工性が増加する。
【0038】
本発明に従う方法は、溶融混合装置を用いて、ポリオレフィンを酸素及び遷移金属触媒と接触させて溶融混合することを含む。「酸素及び遷移金属触媒と接触させて」溶融混合されるということは、溶融状態のポリオレフィンが酸素及び遷移金属触媒の両方と物理的に接触することを意味する。
【0039】
酸素及び遷移金属触媒と接触させてポリオレフィンを溶融混合することが出来るならば、本発明に従って使用することが出来る溶融混合装置のタイプについて特別な制限は無い。適切な溶融混合装置には、連続型及び回分型混合装置が含まれる。例えば、溶融混合装置は、一軸スクリュー又は二軸スクリュー押出機のような押出機、静的混合装置、空洞移動式混合装置(cavity transfer mixer)、又は2種以上のかかる装置の組合せであっても良い。溶融混合は、単一の又は複数の工程で行っても良い。
【0040】
溶融混合装置が二軸スクリュー押出機である場合、溶融混合は共回転方式又は逆回転方式のいずれかで行うことが出来る。態様によっては、溶融混合をかみ合い共回転方式(intermeshing co-rotating mode)で行うことが望ましいかも知れない。
【0041】
該溶融混合方法は、ポリオレフィンを溶融状態で留まらせるのに少なくとも充分な温度で行われる。かかる温度が溶融混合されるポリオレフィンのタイプによって変動することは、当業者に分るであろう。一般に、溶融混合は約170℃〜約320℃の範囲の温度で、例えば、約200℃〜約260℃で行われる。
【0042】
主としてエチレンから誘導されたポリオレフィンに対しては、一般に処理温度は250〜280℃の範囲である。ポリプロピレン又はα-オレフィンから誘導されたポリマーに対しては、一般に処理温度は170〜200℃の範囲である。より高い処理温度は更なる切断を促進するかも知れないが、これは一般に生成物をいくらか変色させるという犠牲を伴うであろう。かくして、望ましい程度の切断をもたらすのに充分な最低温度が、一般に好ましいであろう。
【0043】
本発明に従って使用される遷移金属触媒は、0〜2ボルト(V)、例えば、約0.2〜約1Vの範囲の酸化還元電位を有する。ここで使用される場合、「酸化還元電位」(又普通に「還元電位」とも呼ばれる)は、当業界で0ボルトの電位を任意に与えられている標準水素電極(SHE)に関連して定義される電位である。遷移金属触媒は、遷移金属自体(即ち、その金属状態(metallic state)で)又はその塩の形状であっても良い。その金属状態である場合、遷移金属は1種以上の他の金属との合金として使用しても良い。
【0044】
理論により拘束されることは望まないが、0〜2Vの範囲内の酸化還元電位を有する遷移金属触媒は、本発明の方法中β-切断反応を促進する還元剤として効果的に機能することが出来ると信じられている。ポリオレフィンのMFIにおける増加を究極的にもたらすのは、β-切断反応である。
【0045】
ポリオレフィンのMFIにおける増加を促進することに加えて、本発明に従う方法は、ポリオレフィンの多分散性における減少を促進することも出来る。特に、該方法により促進される鎖切断は、ポリマー鎖の分子量分布を、重量平均分子量の数平均分子量に対する比が約2である最も有望な分布に接近させると信じられている。
【0046】
本発明に従うと、酸素は溶融混合装置に導入される必要がある。「導入される」ということは、酸素が溶融混合装置中に物理的に押し進められることを意味する。これは、周囲の酸素が標準的な処理条件下で、例えば、供給原料と一緒に溶融混合装置に入ることが出来るという状況とは対照的であることを意図する。
【0047】
溶融混合中ポリオレフィンと接触するようにどのようにして酸素を溶融混合装置に導入すべきかについて、特別な制限はない。例えば、酸素源は酸素ガス、又は空気或いは酸素と窒素の混合物のような酸素含有ガス混合物であっても良く、該ガスは、高圧ガス容器又はシリンジ・ポンプのようなポンプを用いて、溶融混合装置の適切な注入口を経由して加圧下で導入することが出来る。その場合、該ガスは、処理されるポリオレフィンのkg当り2〜70L、例えば、処理されるポリオレフィンのkg当り10〜60Lの流速で導入しても良い。特定の押出機を使用した、後に続く本発明の実施例において、2.1L/分〜6.2L/分の流速範囲は、処理されるポリオレフィンのkg当り6.2〜18.7Lの流速範囲に等しい。
【0048】
溶融混合装置が、遷移金属触媒がポリオレフィン溶融物と接触する所から離れた場所で酸素をポリオレフィン溶融物に導入することが出来るタイプである場合(例えば、押出機におけるように)、一般に、遷移金属触媒がポリオレフィン溶融物と接触する前に(即ち、そこよりも上流で)、酸素が溶融ポリオレフィンと接触するように導入される。その代りに、遷移金属触媒がポリオレフィン溶融物と接触するのと同じ場所で、且つ同じ時に、酸素を溶融ポリオレフィンと接触するように導入しても良い。換言すれば、本発明の方法は一般にポリオレフィンを酸素及び遷移金属触媒と接触させて溶融混合することを含み、それにより、遷移金属触媒と接触するポリオレフィンは、既に酸素と接触しているか、又は同時に酸素と接触するのである。
【0049】
酸素の導入から生ずる溶融物内のいかなる加圧ガスも、溶融物が該装置を出る前に該装置の適切な開口を通して溶融物からガス抜きをすることにより、除去することが望ましいかも知れない。当業者は、この成果を達成するように溶融混合装置を容易に構成することが出来る。
【0050】
本発明に従って使用される遷移金属触媒は、溶融混合装置の「一構成部品の少なくとも一部を形成する」。「一構成部品の少なくとも一部を形成する」とは、遷移金属触媒が該構成部品構造体の少なくとも一部を構成することを意味する(即ち、該構成部品は遷移金属触媒を含む)。例えば、該構成部品は部分的に又は全部が適切な遷移金属又はその合金製であっても良く、或いは遷移金属又はその合金を該構成部品の少なくとも一部に何らかの方法で、例えば、遷移金属又はその合金を被覆又はメッキすることにより、結合させても良い。その代りに、溶融混合装置の一構成部品を部分的に又は全体的に製造するか又はその少なくとも一部を被覆するのに使用されるセラミック組成物の一部を、適切な遷移金属塩が形成しても良い。
【0051】
適切な遷移金属を1種以上の他の金属との合金の形で用意することは、該合金が遷移金属単独と比較して改良された性質、例えば、酸化に対する減少した感受性及び(又は)改良された硬度を有しうるという点で、望ましいかも知れない。
【0052】
遷移金属触媒は溶融混合中に溶融ポリオレフィンと接触する必要があるので、遷移金属触媒を含む構成部品の少なくとも一部又はその被覆もしくはメッキ表面も、溶融混合中に溶融ポリオレフィンと接触していることが理解されるであろう。
【0053】
遷移金属触媒を含む構成部品は、該装置の固定部品又は移動部品であっても良い。該構成部品は該装置のオリジナルデザインの部品であっても良いし、或いは該構成部品はかかる部品の修正形であっても良い。該構成部品はまた、該装置の非オリジナルの部分であっても良い(即ち、それが該装置のオリジナルデザインに加えられている)。
【0054】
態様によっては、遷移金属触媒は遷移金属の形状で(即ち、その金属状態で)ある。本発明に従って使用することが出来る適切な遷移金属は、銅及び銀を含むが、それらに限定されない。遷移金属を含む適切な合金は、黄銅(即ち、銅と亜鉛)及び青銅(即ち、銅と錫)を含むが、それらに限定されない。
【0055】
該構成部品が遷移金属触媒を溶融ポリオレフィンと接触させることが出来、そして該溶融処理環境に耐えることが出来るならば、(a)該構成部品がどんなタイプの材料から作られるか、及び(b)該構成部品がどんな形状を取り得るかについて特別な制限は無い。
【0056】
一態様において、該構成部品は溶融混合装置の金属構成部品である。
【0057】
該構成部品が取る形状は、使用される溶融混合装置のタイプにより或る程度影響される。例えば、遷移金属触媒を含む構成部品は、溶融混合装置の混合部材、ダイ部材、又は円筒状シリンダー部の一つ以上の部分又はすべてを形成することが出来る。
【0058】
溶融混合装置が押出機である場合、遷移金属触媒を含む構成部品は押出機のスクリューの一部又はすべての形状で好都合に提供することが出来、例えば、該スクリューのスクリュー部材の一つ以上は、適切な遷移金属又はその合金を含む金属構成部品であっても良い。該スクリューが別個のスクリュー部材を有していない場合、スクリュー全体又はその一部は、遷移金属又はその合金から作っても良いし、それで被覆又はメッキしても良い。
【0059】
本発明のいくつかの態様において、遷移金属触媒を含む構成部品は黄銅又は青銅から作られるか、それで被覆又はメッキされる。例えば、押出機には、黄銅又は青銅から作られたか、それで被覆又はメッキされたスクリュー(又はその一部)を設けることができ、或いは、黄銅もしくは青銅の又は黄銅もしくは青銅で被覆又はメッキされた一つ以上のスクリュー部材を有するスクリューを設けることができる。
【0060】
酸素と組み合わせて遷移金属触媒を使用することにより可能となった効果が達成されるならば、溶融ポリオレフィンと接触する必要がある構成部品の表面積について特別な制限はない。構成部品が押出機のスクリューの一部を形成する場合、構成部品は、例えば、溶融ポリオレフィンと接触する全スクリュー表面積の約0.1%〜25%、又は2%〜10%であっても良い。
【0061】
酸素と組み合わせて遷移金属又はその塩を使用することにより可能となった効果が達成されるならば、構成部品中に存在し得る遷移金属触媒の量について、やはり特別な制限はない。一般に、構成部品は適切な遷移金属又はその合金から作られるか、それで被覆又はメッキされる。遷移金属を含む合金が使用される場合、遷移金属は一般に少なくとも約10重量%、又は少なくとも約30重量%、又は少なくとも約50重量%、又は少なくとも約70重量%、又は少なくとも約90重量%の量で存在する。
【0062】
溶融混合されるポリオレフィンの滞留時間、溶融混合装置により該ポリオレフィンに適用されるせん断力、溶融混合が行われる温度、及び溶融混合装置に適用される酸素圧(又は溶融物中の酸素の濃度)のような一つ以上のプロセス・パラメータを制御することによって、ポリオレフィンのMFIにおける増加それ自体を制御することが出来る。
【0063】
ポリオレフィンのMFIにおける所望の増加を達成する、これらプロセス・パラメータの一つ以上の制御におけるいかなる変化も、主として、使用されるポリオレフィンのタイプ、及びMFIにおける所望の増加の程度により決定されることは、理解されるであろう。当業者は、特定の溶融混合装置を用いて選択されたポリオレフィンのMFIにおける所望の増加を達成する様に、かかるプロセス・パラメータを制御することが出来るであろう。
【0064】
一般に、本発明の方法を行う時、溶融混合装置におけるポリオレフィンの滞留時間は、約20秒と200秒との間、例えば50と200秒との間である。
【0065】
本発明に従って使用される酸素源が空気の形で用意される場合、溶融ポリオレフィン中への空気の流速は、一般に、処理されるポリオレフィンのkg当り約2〜約70L、例えば、処理されるポリオレフィンのkg当り約10〜約60Lの範囲である。
【0066】
一般に、本発明に従う方法は、
(a) ポリオレフィンを溶融させるのに充分な温度でポリオレフィンを溶融混合装置中に導入し、
(b) 酸素を溶融混合装置に導入し、
(c) 0〜2の範囲の酸化還元電位を有する遷移金属触媒及び酸素と接触させてポリオレフィンを溶融混合し、その際、ポリオレフィンと接触している遷移金属触媒は溶融混合装置の構成部品の少なくとも一部を形成しているものとし、
(d) 望ましいメルト・フロー・インデックスを達成するように、滞留時間、せん断力、温度、及び溶融物中の酸素の濃度又は酸素流の割合による酸素圧のようなプロセス・パラメータを制御し、そして
(e) 得られる溶融混合生成物を収集し冷却する、
諸工程を含む。
【0067】
本発明を、以下の限定されない実施例に関連して、以後に更に説明する。
【実施例】
【0068】
A.HDPEの鎖切断
実験装置
二軸スクリュー押出機: 実験は、共回転かみ合い方式で操作するL/D比42で直径30mmの二軸スクリュー押出機を用いて行った。HDPE樹脂は、重力式供給装置を経由して該押出機の供給口に5と20kg/hの間に制御された速度で添加した。使用された条件下で、20kg/hの供給速度は50秒の滞留時間と同じである。5kg/hの供給速度は3.3分の滞留時間と同じである。
【0069】
二軸スクリュー押出機のバレルは、およそ200℃〜320℃の範囲で、種々の温度分布に維持された。該スクリューの回転速度は、12〜34アンペア(最大の29〜81%)の範囲のモーター電流を用いて、100〜400rpm(最大の25〜100%)で変動させた。該バレルの端にある吸引孔は、一般的に揮発性成分を放出するように操作した。
【0070】
あらゆる実験条件下で、ホッパー及び供給口は窒素の正圧下に保った。
【0071】
遷移金属触媒を含むスクリュー部材は、各々がL/D0.5の8個の歯形混合用部材の形状を取り、それらは全体的に黄銅から構成されているか、又は、工具鋼インサート上に装着された黄銅、銅もしくは青銅のギヤリングであった。該スクリュー部材は、酸素注入点よりも後に設置した。
【0072】
メルト・フロー・インデックス(MFI): MFI測定は、ASTM D1238標準方法により押出式可塑度計(メルトインデックス測定装置)を用いて行った。2.160kgのラム重量を用い、温度は190℃に固定した。
【0073】
MFIの計算は、標準直径(2.095mm)及び長さ(8.00mm)の細管ダイを用いた細管粘度計実験の変型である。特定の時間で平衡に到達してから、該ダイを通して圧入されるポリマーを切断する。MFIは、或る時間帯に亘って該ダイから外に押し進められる長さの押出物を切断し、冷却後秤量することにより得られる。
【0074】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC): 0.01%w/wの2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(DBPC)で安定化された1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)の移動相系を用いて140℃で操作されるゲル浸透クロマトグラフィーを使用して、実験データを収集した。検出は、屈折率(RI)測定及び粘度測定法により行われた。トルエンからTCBへと徐々に調節された3個一組のStyragel(登録商標)カラム(HT3 500-3x104103 Å, 2xHT6E 5x103-1x107104, 105及び106 Å混合物)を使用した。すべてのHDPE試料に対する分子量データは、TCB(0.1%w/w DBPC)において3.1x103〜2.46x106の範囲の分子量を有する八つの単分散ポリスチレン標準物質に基づく普遍的校正プロットから誘導した。校正試料溶液は、10mlの注入用GPC管瓶に入れる前に、0.2μmのテフロン(登録商標)フィルター膜を通して濾過した。
【0075】
HDPE試料は、TCB(0.1%w/w DBPC)中2ml及び7mlの0.5μmフィルター管瓶の中で、約3mg/mlの濃度に維持しながら調製した。(多分散性指数の計算を含む)データを測定し分析するのに使用されたソフトウェアはMillenium33(登録商標)であった。
【0076】
ノッチ付衝撃試験: ノッチ付試料に関する標準アイゾット衝撃試験は、ASTM D256規格により、振子型衝撃試験機を使用することにより、20℃で行った。
【0077】
実験材料
・ HDPE HD5148 - HD5148は、特に牛乳瓶及び同様の容器用に製造された未使用の吹込み成形等級HDPEである。それは、クロムに基づいた触媒を使用して、気相反応器上で製造される。名目上のMFIは、(190°/2.16kgにおいて)0.8g/10minであり、該材料の密度は0.960g/cm3である。それは、射出成形等級と比べて比較的広い分子量分布を有し、吹込み成形用途において改善された溶融強度および加工性を提供する。
【0078】
・ HDPE H1 - H1は、使用済みの縁石側収集物から誘導されたHDPEから製造される。該プラスチック類は、主として該廃棄物の自動的IR「特性評価」(“finger printing”)により分離され、細断され、洗浄され、そして更なる分離を受けて比較的純粋なフレークを生成する。次に該フレークを溶融体濾過付の押出ラインに通して、ペレットに転換する。それは主としてHD5148製牛乳瓶からのものであるが、約12〜15%は、主にスラリー法チーグラー・ナッタ(TiCl2)触媒HDPE等級から作られた他の家庭用及び工業用化学容器からのものである。汚染物には、瓶の蓋からのポリプロピレン、様々なラベル状ポリマー、顔料及び他の物質が含まれる。それは、約0.6g/10min(190°/2.16kg)のMFI及び0.960g/cm3の密度を有する。
【0079】
・ HDPE ET6099 - 約4.6g/10min(190℃/2.16kgにおいて)のMFI及び0.955g/cm3の密度を有する、未使用の射出成形等級HDPE
【0080】
酸素及び遷移金属触媒の効果
(銅の形態である)遷移金属触媒と組み合わせて(空気の形態である)酸素を使用する効果は、(i)空気のみ(6.2L/分の空気流速で)、(ii)銅のみ(該スクリューの一部を形成する24個の黄銅部材)、及び(iii)空気及び銅(6.2L/分の空気流速及び24個の黄銅部材)を用いた一連の実験を行うことにより、詳細に調べた。これらの実験は、20kg/hの供給量(50秒の滞留時間)、220℃の押出機温度、及び400rpmのスクリュー速度という、その他の点では同じ条件で行った。多分散性を重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)と定義して、夫々の材料のMFI及び多分散性指数を測定した。
【0081】
表1 HD5148及びH1の鎖切断
【表1】

【0082】
表2 選択された材料の多分散性
【表2】

【0083】
表1は、空気及び銅を用いて、HD5148及びH1のMFIが夫々0.8及び0.6g/10minから夫々16及び3.7g/10minまで増加したことを説明している。これらのMFI値は、空気のみ又は銅のみに曝すことにより得られるものよりも顕著に大きく、銅と空気との間の相乗効果を示している。H1に対して得られた3.7g/10minのMFIは、ET6099(即ち、未使用の射出成形等級HDPE)に対する4.6の値に匹敵する。
【0084】
表2は、空気及び銅を用いた反応性押出に続いて、HD5148及びH1の多分散性指数が夫々6.7及び6.8から夫々4.2及び4.9まで減少したことを説明している。このデータは、分子量分布が狭くなったことを示し、ET6099に対する3.8の多分散性指数と充分に肩を並べている。このように分子量分布が狭くなったことは、図1にも図解されている。
【0085】
黄銅部材の効果
HD5148のMFIに及ぼす黄銅部材の数の効果は図2に図解されている。最大の鎖切断を促進するために、ポリエチレンが黄銅部材と接触する前に、空気を押出機に圧入した。黄銅部材数の増加は、MFIを増加させるのに役立った。4個の部材を加えても著しい効果はなかったが、それは、分子量におけるかなりの減少が起こる前に超えなければならない限界黄銅部材数が存在することを示している。24個の黄銅部材の表面積は、全スクリュー部材表面積の13.7%に相当する。
【0086】
圧入空気の効果
空気流を2.1から6.2L/分まで変化させることによって、空気流の増加による効果を詳細に調べたので、これら実験の結果を図3に示す。押出機温度は220℃で、24個の黄銅部材を使用し、回転速度は400rpmで、供給量は20kg/hであった。図4は、すべてが鋼のスクリューを使用した時の効果を示す。押出機パラメータは、図3におけるものと同じであった。
【0087】
黄銅部材及び鋼部材を用いた場合のHD5148及びH1の両方に及ぼす空気の効果に関する研究は、得られる材料のMFIが、空気流を増大させることによって著しく増加することを示した。HD5148に関して観察された効果は、H1に関して観察されたものよりも著しかった。観察された効果は、又、黄銅部材を使用した時の方が著しく大きかった。
【0088】
せん断力の影響
図5は、250及び400rpmの回転速度(24個の黄銅部材、4L/分、220℃、及び20kg/h)でHD5148について行われた押出機実験の結果を示す。せん断速度の増加は220℃の適度な押出機温度で該ポリエチレンのMFIを著しく増加させることが理解できる。
【0089】
温度の影響
図6は、24個の黄銅部材をスクリュー中に使用した場合、又はすべてが鋼のスクリューを使用した場合に、HD5148及びH1の両方に対するMFIに及ぼす温度の影響を示す。圧入空気速度は4L/分で、供給量は20kg/hで、そして回転速度は400rpmであった。黄銅部材を用いた結果は、MFIが260℃より上で顕著に減少することを示している。すべてが鋼のスクリューを使用した場合、HD5148を使用する時だけ、いくらかの鎖切断が見られる。
【0090】
滞留時間の影響
図7は、HD5148及びH1のメルト・フロー・インデックスに及ぼす滞留時間の影響を示す(24個の黄銅部材、400rpm、220℃、及び4L/分)。該結果は、50秒から3.3分への滞留(反応)時間の増加に対応する、20kg/hrから5kg/hrへの供給量の減少が存在すると、HD5148及びH1の両方のMFIが増加することを明白に示している。
【0091】
衝撃試験
本発明に従って押出されたHD5148及びH1の衝撃強度を、一定の回転速度、供給量、及び温度(400rpm、20kg/hr、及び220℃)、及び可変空気流速(2.1L/分〜6.2L/分)における実験で測定した。図8及び図9は、適切な流量及び他のプロセス条件を選択することにより、射出成形等級HDPEの衝撃強度(即ち、43J/m)に似ている衝撃強度及び適切なレオロジーを有する物質を得ることが出来ることを図解している。
【0092】
HD5148に関しては、約2L/分の流速で反応的に押出すことにより、使用条件下で適切な衝撃強度が得られた。H1に関しては、6.2L/分のようなもっと高い流速で操作することにより、射出成形等級の衝撃強度に近い衝撃強度及び適切なレオロジー(即ち、約3.5g/10分のMFI)が得られる。
【0093】
B.ポリプロピレンの鎖切断
HDPEに関して上述したのと同様な実験押出機構成を使用して、ポリプロピレンを用いた実験を行った。遷移金属触媒源を提供するために、5組の黄銅リングギヤ混合部材(全L/D 2.5)を使用した。これらの実験では、ポリプロピレン・ホモポリマー KY6100(カナダ、Shell、3.0のMFI、密度0.904)を使用した。安定化された等級(市販のペレット)及び安定化されてない等級(反応器渡し粉末)を使用し、異なる温度で処理することによる影響を詳細に調べた。すべての実験に対して、押出機のrpmは100で、処理能力は5kg/hrであった。該結果を下の表3に提示する。
【0094】
表3: PP KY6100の鎖切断
【表3】

【0095】
ポリプロピレン・ホモポリマーを用いて記載したのと同様な実験押出機構成を使用して、ポリプロピレンを用いた実験を行った。これらの実験では、Moplen HP400N(Lyondell/Basell、11.0のMFI、密度0.900)を使用した。遷移金属触媒源を提供するために、5組の黄銅リングギヤ混合部材(全L/D 2.5)を使用した。触媒組成物、ポリマー処理能力速度、及びガス圧入速度(酸素フロー)の影響を評価した。あらゆる実験に対して、押出機のrpmは100で、使用した気体は酸素及び窒素の50%混合物であった。該結果を下の表4に提示する。
【0096】
表4: PP HP400Nの鎖切断
【表4】


a: 4回の測定を行った
【0097】
C.LLDPEの鎖切断
次に、上述の実施例と同じ実験装置(押出機セットアップ及びMFI測定装置、等)を使用して、LLDPEを用いた実験を行った。遷移金属触媒源を提供するために、5組の黄銅リングギヤ混合部材(全L/D 2.5)を使用した。使用した実験材料、Equistar GA501は、Unipol法を用いて製造されるエチレン-ブチレン・コポリマーである。安定化された等級及び安定化されてない等級を使用したことによる影響を詳しく調べたが同じような結果が得られた。Equistar GA501は、1.0のMFIを有する。該結果を下の表5に提示する。
【0098】
表5 LLDPE Equistar GA501の鎖切断
【表5】

【0099】
本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、語句「含む」及び「含んでいる」のような変形は、他の添加剤、成分、整数、又は工程を排除することを意図したものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融混合装置を使用し、ポリオレフィンを酸素及び0〜2ボルトの範囲の酸化還元電位を有する遷移金属触媒と接触させて溶融混合することを含む、ポリオレフィンのメルト・フロー・インデックスを増加させる方法であって、酸素を該溶融混合装置に導入し、該ポリオレフィンと接触している該遷移金属触媒が該溶融混合装置の一構成部品の少なくとも一部を形成している、上記方法。
【請求項2】
該遷移金属触媒が約0.2〜約1の範囲の酸化還元電位を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該遷移金属触媒が銅を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
該銅がその金属状態である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該銅が合金の一部を形成する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該合金が黄銅又は青銅である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該ポリオレフィンがポリエチレン又はポリプロピレンのホモポリマー又はコポリマーである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記構成部品が該溶融混合装置の混合用部材である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該溶融混合装置がスクリュー押出機であり、該混合用部材が該スクリューの一部を形成している、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該混合用部材が銅又は銅を含有する合金から形成されているか、又は銅又は銅を含有する合金で被覆されている、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
該混合用部材が黄銅又は青銅から形成されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ポンプ又は高圧ガス容器を使用して酸素を該溶融混合装置に導入する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
酸素源が、空気、又は酸素及び窒素ガスの混合物である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
該ポリオレフィンの該溶融混合装置における滞留時間、該溶融混合装置により該ポリオレフィンに適用されるせん断力、該ポリオレフィンが溶融混合される温度、及び該溶融混合装置に導入される酸素の圧力及び(又は)濃度から選択される一つ以上のプロセス要素を制御することにより、該ポリオレフィンのメルト・フロー・インデックスにおける増加が制御される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法により製造されるポリオレフィンを射出成形することにより得られる成形物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−534255(P2010−534255A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517235(P2010−517235)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001060
【国際公開番号】WO2009/012523
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(510019130)アドバンスド ポリメリク プロプライエタリー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】