説明

ポリオレフィンの湿分架橋のための金属塩水和物の脱水による水のイン・サイチュ生成方法

加水分解性の基をもつ少なくとも1種のコポリマーを含むポリマー樹脂と、水生成金属塩水和物と、所定のアルキルオキシおよびカルボキシレートから選択される、金属原子および少なくとも2つの配位子を含む触媒とを含む組成物を、金属水和物の脱水により水をイン・サイチュで生成することにより湿分硬化する物品を形成するために用いる。この組成物を溶融混合して、脱水を促進し、混合ステップ中に硬化工程を開始する。この硬化組成物を形成し固める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2007年9月28日出願の米国仮特許出願第60/975880号の利益を主張し、この出願全体は、本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、樹脂の架橋に関する。ある態様において、本発明はシラン官能化樹脂の架橋に関するが、別の態様において、本発明は一般に湿分硬化樹脂に関する。さらに別の態様において、本発明は、より詳細には湿分硬化をもたらすための水をイン・サイチュ(in situ)生成する組成物および方法に関する。なお別の態様において、本発明は、このような架橋樹脂から作製される、ケーブルの絶縁物および被覆物、ならびに他の製品の製造に関する。
【背景技術】
【0003】
ケーブル、パイプ、履物および発泡体等の物品の製作において、これらの物品が作製されるポリマー組成物を、しばしば溶融混合しなければならない。この組成物は、シラン官能化樹脂および触媒をしばしば含み、これらの樹脂は、周囲温度または高温のいずれかで水分に曝すと、それらのシラン官能性により架橋を受ける。今日、湿分硬化樹脂は、ケーブルの絶縁物中の架橋ポリオレフィンについての市場のかなりの部分を占める。架橋の化学反応には、環境から水分を吸収するポリマーが必要であるが、融点未満において、半結晶質の疎水性ポリマーへの水の拡散は非常に緩慢であるので、湿分硬化樹脂は、一般に、薄い構造の物品に限定される。
【0004】
(a)水はポリエチレンの押出成形に適切な温度において沸騰し、(b)ポリオレフィン中での水の溶解度は極めて低く、(c)飽和点を超えてポリマー中に捕捉された水は相分離すると思われ、空隙と非常に不均一な架橋密度とにより欠陥を生じるので、製作前の水の直接添加は非実用的である。また、大量の自由水は、早期架橋を引き起こすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
湿分硬化工程における、一つの重要な要求は、保管中、または溶融加工、例えば押出成形、成形等の間における、樹脂の早期架橋を最少化することである。
【0006】
これらの物品の製作における別の重要な考慮点は、溶融加工完了後に、短い時間間隔、例えば時間、日のうちに架橋を達成することである。短い硬化時間を、高温例えば70℃超で、かつ/またはスルホン酸等の強力な触媒の使用により、硬化することにより達成することができる。製作品の厚さが増大するにつれて、高温においてでさえ、水分がポリマー組成物を通って中に拡散するのに時間がかかる。このことにより、製作工程のコストは増大する。したがって、ポリマー製作工業では、シラン官能化樹脂の湿分硬化を促進することが継続的な関心を集めている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある実施形態において、本発明は、(A)加水分解性の基をもつ少なくとも1種のコポリマーを含むポリマー樹脂と、(B)一般式M(HO)(式中、Mが周期表の1から13族までから選択される金属のカチオンであり、Qが有機アニオンであり、xおよびyが塩全体の電荷の釣り合いをとるために選択される整数であり、zが25℃におけるモル基準での塩の水和数である)の金属水和物の水生成有機化合物と、(C)金属イオンおよび所定のアルコキシドおよびカルボキシレートから選択される少なくとも2つのアニオン配位子を含む触媒とを含む組成物である。
【0008】
別の実施形態において、本発明は、加水分解性の基をもつ少なくとも1種のコポリマーを含むポリマー樹脂と、一般式M(HO)(式中、Mが周期表の1から13族までから選択される金属のカチオンであり、Qが有機アニオンであり、xおよびyが塩全体の電荷の釣り合いをとるために選択される整数であり、zが25℃におけるモル基準での塩の水和数である)の水和塩と、金属イオンおよび所定のアルコキシドおよびカルボキシレートから選択される少なくとも2つの配位子を含む触媒とを配合して組成物を形成し、この配合が、樹脂の融点を上回る温度で行われることと、配合ステップ中において組成物中にイン・サイチュ(in situ)で水を生成して溶融硬化組成物を形成することと、溶融硬化組成物を物品に形成することと、溶融硬化組成物を固めることとを含む、湿分硬化品の形成方法である。
【0009】
本発明は、上記方法により製造される物品をさらに含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
元素の周期表への言及は、すべて、CRC Press,Inc.により2003年に出版され著作権で保護された元素の周期表を指す。また、1つまたは複数の族への任意の言及は、族の番号を付けるためのIUPAC体系を用いたこの元素周期表を反映した1つまたは複数の族である。逆に言及がない、文脈から暗示されていない、または当技術分野において通例でなければ、すべての部およびパーセントは重量に基づき、すべての試験方法は本開示の出願日時点で最新である。米国の特許実務の目的で、任意の参照した特許、特許出願または公報の内容は、特に、合成技術の開示、定義(この開示において具体的に与えられる任意の定義と矛盾しない程度で)、および当技術分野における一般的な知識については、その全体が参照により組み込まれる(またはその同等な米国版が参照により組み込まれる)。
【0011】
「ケーブル」、「電源ケーブル」、「送電線」等の用語は、保護的な絶縁物、外被または被覆の内部の少なくとも1種のワイヤーまたは光ファイバーを意味する。一般に、ケーブルは、一般的には普通の保護的な絶縁物、外被または被覆の中の、一緒に束ねた2種以上のワイヤーまたは光ファイバーである。外被内部の個々の電線またはファイバーは、剥き出しである、被覆されている、または絶縁されていてよい。コンビネーションケーブルは、電線および光ファイバーの両方を含有することができる。ケーブル等を、低電圧、中電圧および高電圧の用途のために設計することができる。一般的なケーブル設計は、米国特許第5246783号、第6496629号および第6714707号に例示されている。
【0012】
「ポリマー」は、同じまたは異なる種類のモノマーを重合することにより調製されるポリマー化合物を意味する。したがって、ポリマーの一般的な用語には、1種類のみのモノマーから調製されるポリマーを指すために通常用いられる「ホモポリマー」の用語、および以下に定義されるような「共重合体」の用語が含まれる。
【0013】
「配合物」および「ポリマー配合物」等の用語は、2種以上のポリマーの組成物を意味する。このような配合物は、混和性であってもなくてもよい。このような配合物は、相分離していてもいなくてもよい。このような配合物は、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、および当技術分野において既知の任意の他の方法から測定されるような1種または複数種の領域構造を含有してもしなくてもよい。
【0014】
「組成物」等の用語は、2種以上の成分の混合物または配合物を意味する。ケーブル被覆、または他の製造品が製作される材料の混合物または配合物の文脈において、この組成物には、すべての混合成分、例えば、シラングラフト化ポリオレフィン、潤滑剤、増量剤、および硬化触媒、抗酸化剤、難燃剤等の任意の他の添加剤が含まれる。
【0015】
本発明者らは、金属イオンを含有する塩の特定の水和物の添加が、高温で都合のよいイン・サイチュでの水の供給源として作用し得ることを見出した。架橋の程度を、樹脂のシラン含有率と水生成化合物量とにより調節することができる。水分源は、湿分架橋反応の触媒作用を妨げない。塩を適切に選択することにより、任意の特定の温度における水の減量速度を加減することができる。ポリマー中における抽出可能な有機分子の存在が問題となるそれらの用途について、この技術は、有機化合物からの水の減量に依拠する化学反応より優れている。
【0016】
水を、以下の一般式、M(HO)(式中、Mが周期表の1から13族までから選択される金属のカチオンであり、Qが有機アニオンであり、xおよびyが塩全体の電荷の釣り合いをとるために選択される整数であり、zが25℃におけるモル基準での塩の水和数である)の、任意の水生成化合物により、湿分硬化性樹脂中にイン・サイチュで生成することができる。いくつかの実施形態において、有機化合物の水生成塩は、酒石酸塩、クエン酸塩または酢酸塩である。いくつかのより具体的な実施形態において、水生成化合物は、L−酒石酸ナトリウム二水和物、三塩基クエン酸ナトリウム二水和物または酢酸ナトリウム三水和物の少なくとも1種である。好ましくは、水生成化合物の脱水開始温度は、100℃超であり、約200℃未満である。金属水和物は、シラン置換基1モルあたり、水を約0.1から約4モルの間で生成するのに十分な量で存在すべきである。
【0017】
水分源として有機分子を使用することと比べて、想定される金属塩は、安価で、より低毒性で、より取扱い容易であり、ポリマーの外部に移行できる、水以外の小さな分子を生成しない。イソシアネートの技術と比べて、トリアルコキシシリル基をもつポリマーの、水に誘導される架橋は、健康上の問題がほとんどない。それは、高温押出および最終使用用途にもより適切である。
【0018】
溶融状態または固体状態で硬化されるべきであり約2mmより厚い、加水分解性の基をもつ任意のコポリマーは、このような硬化技術の恩恵を被る。ポリマーの大部分は、エチレン、または任意の他のオレフィンに由来する必要はないが、例えば環状のエステルまたはエーテルに由来することができる。この技術は、ポリマーの発泡体、フィルム、繊維、履物、パイプ等の製作においても有用であることができる。
【0019】
加水分解性の基をもつコポリマーは、最も一般的にはシラン官能性コポリマーである。シラン官能性の基をもつポリマーは、当技術分野において周知である。このようなポリマーは、適切な主剤モノマーの反応性シラン化合物との共重合により、またはポリマー鎖の主鎖にシラン含有分子をグラフトする多くの方法の1つにより作製することができる。一般的な適切な主剤モノマー(またはポリマー鎖主鎖を生成するためのモノマー)には、例えばスチレン、エチレン、プロピレン、メタクリル酸メチルまたは酢酸ビニルの1種または複数種、より一般的にはエチレンが挙げられる。反応性シラン化合物は、1個または複数の加水分解性の基を有する不飽和シラン化合物であることができる。一般的な反応性シラン化合物には、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、シクロヘキセニルまたはγ−(メタ)アクリロキシアリル等のアルケニル基と、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルボニルオキシ基またはヒドロカルビルアミノ基等の加水分解性の基とが挙げられる。加水分解性の基の具体的な例には、メトキシ基、エトキシ基、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基と、アルキルアミノ基またはアクリルアミノ基とが挙げられる。より一般的には、反応性シラン化合物は、ビニルトリアルコキシシランである。適切な反応性シランは、ビニルトリメトキシシランである。シラン官能性の基をもつポリマーの製造方法の例は、米国特許第3646155号、第6420485号、第6331597号、第3225018号および第4574133号に開示されており、それらすべては本明細書に参照により組み込まれる。シラン官能性の基をもつポリマーは市販もされており、例えば、Si−Link(商標)エチレン−ビニルトリメトキシシランコポリマーがDow Chemical Co.から入手可能である。
【0020】
ある実施形態において、加水分解性の基をもつコポリマーは、エチレンとビニルトリアルコキシシラン(ここで、アルコキシ基はROであり、式中、Rは1〜8個の炭素原子のアルキル基である。)とのコポリマーであり、共重合により、またはラジカルグラフト化により製造される。適切なこのようなポリマーの例は、エチレン−ビニルトリメトキシシランコポリマーである。ビニルアルコキシシラン含有率は、すべてのモノマーに対して約0.1から約5モル%の間であるべきである。
【0021】
湿分硬化触媒は、シラン縮合架橋反応を促進する任意の化合物であることができる。一般に、このような触媒は、金属イオンおよび所定のアルコキシドおよびカルボキシレートから選択される少なくとも2つの配位子を含む。グリコール酸塩におけるように、単一の配位子について2つ以上の官能基を見出すことができる。
【0022】
最も一般的には、湿分硬化触媒は、鉛、コバルト、鉄、ニッケル、亜鉛、チタン、アルミニウムまたは錫、好ましくはジラウリン酸ジブチル錫またはジスタノキサン等の錫の、1種または複数種の有機金属化合物または有機金属錯体である。具体的な触媒には、例えば、ジラウリン酸ジブチル錫、マレイン酸ジオクチル錫、アセト酢酸ジブチル錫、ジオクタン酸ジブチル錫、ジドデカン酸ジブチル錫、酢酸第一錫、オクタン酸第一錫、ナフテン酸鉛、カプリル酸亜鉛、チタンアルコキシド、アルミニウムアルコキシドおよびナフテン酸コバルトが挙げられる。このような触媒は市販されている。触媒は、シラン置換基に対して約0.1から約20モル%の間の濃度で存在すべきである。
【0023】
いくつかの実施形態において、この組成物は、非湿分硬化性ポリマー樹脂をさらに含有することができる。このような樹脂を、触媒および/または水分形成化合物のための担体として(例えばマスターバッチ法)、希釈剤として、他の架橋反応における反応物質として(例えばラジカル架橋)、または組成物に特定の物理的特性を付与する(例えば弾性または耐衝撃性を付与するエラストマー樹脂を添加する)ために組み込むことができる。これらの非湿分硬化性樹脂は、硬化組成物の強度を望ましくない程度に低減しない量で添加されるべきである。上限は用途特有であるが、当業者は、このような限界点を決定する経験を有している。一般に、これらの樹脂の量は、約40%未満である。
【0024】
この組成物は、タルク、炭酸カルシウム、有機粘土、ガラス繊維、大理石粉、セメント粉、長石、シリカまたはガラス、ヒュームドシリカ、ケイ酸塩、アルミナ、様々なリン化合物、臭化アンモニウム、三酸化アンチモン、三酸化アンチモン、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、硫化バリウム、シリコーン、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、ガラスマイクロスフェア、白亜、雲母、粘土、ウォラストナイト、八モリブデン酸アンモニウム、膨張化合物、膨張性グラファイト、およびそれらの混合物を含む、他の難燃剤および増量剤を含有することができる。増量剤は、シランおよび脂肪酸等の様々な表面コーティング剤または表面処理剤を含有することができる。ハロゲン化有機化合物には、塩素化パラフィン等のハロゲン化炭化水素、ペンタブロモトルエン、デカブロモジフェニルオキシド、デカブロモジフェニルエタン、エチレン−ビス(テトラブロモフタルイミド)、デクロランプラス等のハロゲン化芳香族化合物、および他のハロゲン含有難燃剤が挙げられる。当業者は、組成物の所望の性能に応じて、適切なハロゲン剤を認識および選択する。組成物は、様々な他の添加剤をさらに含むことができる。過酸化物およびラジカル開始剤を、樹脂を架橋するために添加することができる。
【0025】
増量剤を含有するそれらの配合物中において、存在する増量剤の量は、一般に、ポリマーの重量を基準として、2から80の間、好ましくは5から70の間の重量パーセント(重量%)である。増量剤が存在する、本発明の好ましい実施形態において、増量剤は、増量剤が別に有することがある、シラン硬化反応を妨げる任意の傾向を、防止または遅延させる材料でコーティングされる。ステアリン酸は、このような増量剤コーティングの例となる。増量剤および触媒の選択は、任意の望まれない相互作用および反応を回避するために行われなければならない。
【0026】
この組成物は、本発明の組成物の所望の物理的または機械的な特性を妨げない程度の、例えば、抗酸化剤(例えば、例えばCibaSpecialty Chemicalsの登録商標IRGANOX(商標)1010等のヒンダードフェノール)、亜リン酸塩(例えば、CibaSpecialty Chemicalsの登録商標IRGAFOS(商標)168)、UV安定剤、粘着添加剤、光安定剤(ヒンダードアミン等)、可塑剤(フタル酸ジオクチルまたはエポキシ化大豆油等)、熱安定剤、離型剤、粘着付与剤(炭化水素粘着付与剤等)、ワックス(ポリエチレンワックス等)、加工助剤(油、ステアリン酸等の有機酸、有機酸の金属塩等)、架橋剤(過酸化物またはシラン等)、着色剤または顔料等の他の添加剤と、他の難燃添加剤とを含有することができる。
【0027】
組成物の配合は、当業者に既知の標準的な手段により行われ得る。配合設備の例は、Banbury(商標)またはBolling(商標)の密閉式ミキサー等の密閉式バッチミキサーである。あるいは、Farrel(商標)の連続式ミキサー、Werner and Pfleiderer(商標)の二軸スクリューミキサー、またはBuss(商標)の連続式混練押出機等の、連続式の一軸または二軸のスクリューミキサーを用いることができる。利用するミキサーの種類、およびミキサーの運転条件は、粘度、体積抵抗、および押出後の表面平滑性等の、組成物の特性に影響を及ぼす。
【0028】
成分を、混合物を完全に均一化するのに十分であるが、材料のゲル化を引き起こすには不十分な温度、および時間の長さで混合することができる。触媒は、水生成化合物の前または後に添加され得る。一般に、成分は、溶融混合装置中で一緒に混合される。次いで、この混合物は、最終的な物品に形作られる。配合および物品製作の温度は、ポリマーの融点を上回るが、約250℃未満であるべきである。
【0029】
いくつかの実施形態において、触媒または水形成化合物のいずれかまたは両方は、予備混合されたマスターバッチとして添加される。このようなマスターバッチは、低密度ポリエチレン等の不活性なプラスチック樹脂中に化合物を分散させることにより一般に形成される。マスターバッチは、溶融配合法により都合よく形成される。
【0030】
高温混合により、金属水和物の脱水が促進され、それによって組成物中における水がin situで放出される。脱水により生成した水は、シラン基と反応を開始して、組成物に、別に「硬化」として知られる架橋をする。高温混合に次いで、硬化する組成物を物品に形成し固める。この物品を、当技術分野において知られているように、任意の適切な形成方法により形成することができる。このような形成方法には、押出成形、成形、圧延(rolling)およびロータリー成形等が挙げられる。この方法は、標準的な硬化方法に対して硬化時間が短縮されているために、約2mmより厚い物品に特に有利である。
【0031】
ある実施形態において、本発明のポリマー組成物を、既知の量で、既知の方法により(例えば、特許第5246783号および4144202号に記載の設備および方法で)、被覆または絶縁物としてケーブルに塗布することができる。一般に、ポリマー組成物は、ケーブルコーティング用ダイを備えた反応押出機中で調製され、組成物の成分を配合した後において、ケーブルがダイを通って引き出される際に、この組成物がケーブル上に押出される。
【0032】
次いで、形成された物品に、物品が所望の架橋の程度に達するまで、周囲温度を上回るがポリマーの融点未満の温度で行われるさらなる硬化時間を与えることができる。ある好ましい実施形態において、雰囲気から、または水槽もしくは「サウナ」から、塊状ポリマー中に浸透する水を外部より供給することにより、さらなる硬化が増補される。一般に、さらなる硬化を、周囲温度または高温で行うことができるが、硬化温度は0℃超であるべきである。
【0033】
本発明のポリマー組成物から、特に高圧および/または高水分条件下で調製することができる、他の製造品には、繊維、リボン、シート、テープ、チューブ、パイプ、目張り材、密封材、ガスケット、発泡体、履物およびベローズが挙げられる。これらの物品を、既知の設備および技術を用い製造することができる。
【0034】
以下の実施例により、本発明をさらに例証する。別に言及しなければ、すべての部およびパーセンテージは重量による。
【実施例1】
【0035】
ビニルトリメトキシシラン(VTMS)1.5重量%を含有する、エチレンおよびVTMSのコポリマーのペレット化試料(41.2g)を、128℃および25RPMの設定値の二軸スクリューミキサーに加え、次いで1分後にL−酒石酸ナトリウム二水和物0.533g、その4分後にジラウリン酸ジブチル錫(DBTDL)0.091gを加えた。混合工程中の温度は、121〜123℃の範囲であった。6分後に、ミキサーを停止し、配合された材料をミキサーから取り出し凝固させた。試料(4〜6g)を、相互に作用しないフィルムのシート2枚の間で圧縮してディスクにし、140℃において、100RPMで0.5°の偏位で振動レオメトリーにより分析した。この試料が示したトルクは、5分後において0.74ポンド−インチで、62分後において0.85ポンド−インチであった。
【実施例2】
【0036】
実施例1からの同じコポリマーの試料(41.3g)を、実施例1におけるように設定した二軸スクリューミキサーに加え、次いで3分後に三塩基クエン酸ナトリウム二水和物0.655g、その2分後にDBTDL0.086gを加えた。混合工程中の温度は、121〜123℃の範囲であった。5分後に、材料をミキサーから取り出し凝固させた。試料(4〜6g)を、相互に作用しないフィルムのシート2枚の間で圧縮してディスクにし、140℃において、100RPMで0.5°の偏位で振動レオメトリーにより分析した。この試料が示したトルクは、5分後において0.44ポンド−インチで、60分後において0.57ポンド−インチであった。
【実施例3】
【0037】
実施例1からの同じコポリマーの試料(41.0g)を、実施例1におけるように設定した二軸スクリューミキサーに加え、次いで2分後に酢酸ナトリウム三水和物0.228g、その3分後にDBTDL0.071gを加えた。混合工程中の温度は、122〜124℃の範囲であった。7分後に、材料をミキサーから取り出し凝固させた。試料(4〜6g)を、相互に作用しないフィルムのシート2枚の間で圧縮してディスクにし、140℃において、100RPMで0.5°の偏位で振動レオメトリーにより分析した。この試料が示したトルクは、5分後において0.56ポンド−インチで、60分後において0.65ポンド−インチであった。
【0038】
比較例1(塩水和物の除去):実施例1からの同じコポリマーの試料(41.5g)を、実施例1におけるように設定した二軸スクリューミキサーに加え、次いで3分後にDBTDL0.233gを加えた。混合工程中の温度は、116〜123℃の範囲であった。6分後に、材料をミキサーから取り出し凝固させた。試料(4〜6g)を、相互に作用しないフィルムのシート2枚の間で圧縮してディスクにし、140℃において、100RPMで0.5°の偏位で振動レオメトリーにより分析した。この試料が示したトルクは、5分後において0.40ポンド−インチで、62分後において0.45ポンド−インチであった。
【0039】
これらの実施例は、ビニルトリメトキシシランコポリマーと金属塩水和物と有機金属触媒との組合せが、140℃における架橋を誘発することを示している。
【0040】
法令に従って、本発明を、構造および方法の特徴について、多少具体的な言い回しで記載した。しかし、本明細書において開示された手段は、本発明を実施する好ましい形を含むので、本発明は、示され記載された特定の特徴に限定されないことを理解されたい。したがって、本発明は、均等論に従って適切に解釈される、添付の特許請求の範囲の正しい範囲内における、任意のその形または変更において特許請求される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)加水分解性の基をもつ少なくとも1種のコポリマーを含むポリマー樹脂と、
(B)一般式M(HO)(式中、Mが過酸化物表の1から13族までから選択される金属のカチオンであり、Qが有機アニオンであり、xおよびyが塩全体の電荷の釣り合いをとるために選択される整数であり、zが25℃におけるモル基準での塩の水和数である)の水和塩と、
(C)金属イオンおよび所定のアルコキシドおよびカルボキシレートから選択される少なくとも2つの配位子を含む触媒と
を含む組成物。
【請求項2】
前記の加水分解性の基が、アルコキシシリル官能性の基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記コポリマーが、ビニルトリアルコキシシランと少なくとも1種の他のモノマーとの重合生成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記の他のモノマーが、スチレン、エチレン、プロピレン、メタクリル酸メチルまたは酢酸ビニルの1種または複数種から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記コポリマーが、エチレンとビニルトリメトキシシランとのコポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ビニルトリアルコキシシランが、すべてのモノマーに対して、約0.1から約5モル%の間の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記水和塩が、酒石酸塩、クエン酸塩または酢酸塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記水和塩が、L−酒石酸ナトリウム二水和物、三塩基クエン酸ナトリウム二水和物または酢酸ナトリウム三水和物の少なくとも1種である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記水和塩が、加水分解性の基1モルあたり、水を約0.1から約4モルの間で生成するのに十分な量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記触媒が、加水分解性の基のモルを基準にして、約0.1から約20モル%の間の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1の組成物と、少なくとも1種の非湿分硬化性ポリマー樹脂とを含む組成物。
【請求項12】
請求項1の組成物と、難燃剤、増量剤、抗酸化剤、亜リン酸塩、UV安定剤、粘着添加剤、光安定剤、熱安定剤、離型剤、粘着付与剤、ワックス、加工助剤、架橋剤、着色剤または顔料の少なくとも1種を含む組成物。
【請求項13】
加水分解性の基をもつ少なくとも1種のコポリマーを含むポリマー樹脂と、一般式M(HO)(式中、Mが過酸化物表の1から13族までから選択される金属のカチオンであり、Qが有機アニオンであり、xおよびyが塩全体の電荷の釣り合いをとるために選択される整数であり、zが25℃におけるモル基準での塩の水和数である)の水和塩と、金属イオンおよび所定のアルコキシドおよびカルボキシレートから選択される少なくとも2つの配位子を含む触媒とを配合して組成物を形成し、前記配合が、前記樹脂の融点を上回る温度で行われることと、
前記配合ステップ中において前記組成物中にイン・サイチュで水を生成して溶融硬化組成物を形成することと、
前記溶融硬化組成物を物品に形成することと、
前記溶融硬化組成物を固めることと
を含む、湿分硬化品の形成方法。
【請求項14】
前記硬化が約250℃未満の温度で行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記溶融硬化組成物を固めた後に外部の水分に曝すことにより、前記物品を硬化することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記物品が、成形、押出成形、圧延またはロータリー成形により形成される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記水和塩が、L−酒石酸ナトリウム二水和物、三塩基クエン酸ナトリウム二水和物または酢酸ナトリウム三水和物の少なくとも1種である、請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
請求項13に記載の方法により製造される物品。
【請求項19】
前記物品が、発泡体、フィルム、繊維、履物、パイプ、ケーブルまたはワイヤーである、請求項17に記載の物品。
【請求項20】
前記物品が、少なくとも約2mmの厚さを有する、請求項14に記載の物品。

【公表番号】特表2011−501765(P2011−501765A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527039(P2010−527039)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/076861
【国際公開番号】WO2009/045744
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】