説明

ポリオレフィンの製造方法

本発明は、2つの連続する反応容器内で、気相中、オレフィン重合触媒の存在下に少なくとも1つのオレフィンの重合体を製造する方法であって、オレフィン重合体および第1反応ガス混合物を含む流動床を形成するために、第1重合反応器内で、オレフィン重合触媒および第1反応ガス混合物の存在下オレフィンを重合する方法に関する。オレフィン重合体とともにこの第1反応ガス混合物を第1重合反応器から連続的または断続的に抜き出し、分離容器に導入することにより、前記分離容器内でポリマー床を形成させる。前記第1反応ガス混合物の一部を前記分離容器から抜き出し、これを圧力が分離容器における圧力よりも低くなる地点で第1重合反応器へ戻す。オレフィン重合体を、第2生成物流を形成するために前記分離容器から抜き出し、第2生成物流を第2重合反応器へ導入する。第1重合段階から第2重合段階への反応物質の持ち越しを防止するため、第2ガスは分離容器の底部へ導入することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合触媒の存在下でオレフィン重合体を製造する方法に関する。より具体的には、本発明は、少なくとも2つの重合段階において気相中で少なくとも1つのオレフィンを重合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際特許出願第2004/039847号は、ループ反応器内でエチレンを重合し、続いて気相反応器内で重合する方法を開示している。ガス反応器内へループ反応器から持ち越される反応ガスを除去するために、ポリマースラリーは、ループ反応器から高圧フラッシュに導入され、フラッシュからガス交換帯に導入される。
【0003】
国際特許出願第00/42077号は、ループ反応器内でエチレンを重合し、続いて気相反応器内で重合する方法を開示している。気体反応器内へループ反応器から持ち越される反応ガスを除去するために、ポリマースラリーは、液体カラムに導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際特許出願第2004/039847号パンフレット
【特許文献2】国際特許出願第00/42077号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、多様なオレフィン重合体を製造することのできる方法を提供することである。それ故に、本発明の方法は、種々の分子量および/または種々のコモノマーを有する少なくとも2つの成分を含むポリマー組成物を製造することができる。さらに、本発明は、一方の重合反応器からもう一方の反応器へポリマーを移送させるための簡単でかつ経済的な方法を提供する。特に、本発明は、先行技術の方法と比較してかなり低い投資費用および操業費用の方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2つの連続する反応容器内で、気相中、オレフィン重合触媒の存在下に少なくとも1つのオレフィンの重合体を製造する方法であって、
−オレフィン重合体および第1反応ガス混合物を含む流動床を形成するために、第1重合反応器内で、オレフィン重合触媒および第1反応ガス混合物の存在下オレフィンを重合すること;
−第1生成物流を形成するために、ポリマー中に分散した前記オレフィン重合触媒を含む前記オレフィン重合体とともに前記第1反応ガス混合物を第1重合反応器から連続的または断続的に抜き出すこと;
−分離容器内にポリマー床を形成するために、前記第1生成物流を分離容器内に導入すること;
−前記第1反応ガス混合物の一部を前記分離容器から抜出し、抜き出した第1反応ガス混合物を前記第1重合反応器へ戻すこと;
−第2生成物流を形成するために、前記分離容器から前記オレフィン重合体を連続的または断続的に抜き出すこと;および
−第2重合反応器に第2生成物流を導入すること
を含み、前記分離容器が前記第1反応段階において第1生成物流を抜き出す地点での圧力と本質的に同じ圧力で稼働し、前記第1反応ガス混合物の一部を、第1重合段階において圧力が前記分離容器よりも低くなる地点に戻すことを特徴とする方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明に従う方法の典型的な例を示す。
【図2】図2は、第1反応混合物が第2混合物に置き換えられる分離容器の詳細を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、直列的に連結した少なくとも2つの反応器におけるオレフィンの重合に有用である。特に、本発明は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン若しくは1−オクテンまたはそれらの混合物を重合する場合に使用することができる。特に、本発明は、エチレン若しくはプロピレンのホモポリマー、またはエチレン若しくはプロピレン、場合により高級オレフィン若しくは他のコモノマーとのコポリマーの製造に有用である。
【0009】
特に好ましい実施態様において、本発明は、オレフィン重合触媒の存在下少なくとも2つの直列的な流動床気相反応器を含む方法において、エチレン若しくはプロピレンを重合する、場合によりエチレン若しくはプロピレンとコモノマーを重合するのに使用される。
【0010】
〈重合工程〉
本発明の典型的な方法を図1に示す。オレフィンは2つの流動床気相反応器10および30で重合される。触媒(先の重合段階からポリマー粒子内に分散していてよい)は、流動床の高さより下であるが、流動床の底面よりは上の第1気相反応器内に導管11を介して導入される。未反応のガスを、導管12を介して反応器の頂部から回収し、コンプレッサー15において圧縮し、熱交換器16で冷却する。冷却された圧縮ガスは、流動床の底部の下から導管13を介して反応器内へ再導入される。ポリマーは、いくらかの付随ガスとともに導管14を介して反応器から抜き出され、分離容器20へ導入される。
【0011】
ガスを、分離容器20内へ導管21を介して供給する。このガスは分離容器20内を上に向かって流れ、導管14を介して反応器10からポリマーとともに分離容器20内に入り込んだガスの排出を促進する。ガスを分離容器20から導管22を介して抜き出して反応器10またはコンプレッサー15より前の循環ガス管12に戻してもよい。ポリマー(この段階では、導管21から入ったガスと混合状態にある)は、導管31を介して分離容器20を出る。分離容器20から反応器30へのポリマーの圧気輸送を促進するために、導管23を介してさらなるガスを導入してもよい。
【0012】
その後、反応器10に対して上述したのと同様の方法で反応器30内で重合を続ける。
【0013】
製造工程が2段階より多い重合段階を含む場合、ポリマーが一方の気相重合段階からもう一方の段階に移送される全ての段階で本発明を使用することができる。
【0014】
〈触媒〉
任意の粒子状重合触媒を本発明の方法に使用することができる。したがって、触媒はチーグラー・ナッタ型触媒であってよく、またはメタロセン触媒であってよく、または後期遷移金属触媒であってよく、またはクロム含有触媒であってもよい。好ましくは、触媒は粒子状であり、それにより各重合段階で製造されるポリマーは同じ粒子に形成される。
【0015】
チーグラー・ナッタ触媒は、好ましくは固体遷移金属成分と共活性化因子を含む。遷移金属成分は、元素周期律表(IUPAC)第4〜7属元素の化合物、好ましくは前記元素のハロゲン化物を含む。そのような触媒の好適な例は、例えば、国際特許出願第95/35323号、国際特許出願第01/55230号、欧州特許出願第810235号、国際特許出願第99/51646号、欧州特許出願第491566号、欧州特許出願第591224号、欧州特許出願第586390号、欧州特許出願第926165号、欧州特許出願第1114072号、国際特許出願第03/000757号、国際特許出願第2004/029112号および国際特許出願第03/106510号などの特許文献に挙げられている。
【0016】
さらに、チーグラー・ナッタ触媒は活性因子を含む。この活性化因子は遷移金属成分を活性化することのできる化合物である。中でも有用な活性化因子は、アルキルアルミニウムおよびアルコキシアルミニウム化合物である。特に好ましい活性化因子はアルキルアルミニウムであり、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムおよびトリ−イソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムである。一般的に、活性化因子は遷移金属成分を越える量で使用される。例えば、アルキルアルミニウムを活性化因子として使用する場合、活性化因子中のアルミニウムと遷移金属成分中の遷移金属のモル比は、1〜1000モル/モルであり、好ましくは2〜500モル/モルであり、特に5〜200モル/モルである。
【0017】
上述した2つの成分を種々の共活性化因子、修飾因子などと組み合わせて使用することもできる。したがって、2つ以上のアルキルアルミニウム化合物を使用してもよく、または、先行技術で知られているように、触媒の活性および/または選択性を変更するために、触媒成分が種々のエーテル、エステル、シリコンエーテルなどと組み合わされていてもよい。
【0018】
好適なメタロセン触媒は、シクロペンタジエニル、インデニルおよび/またはフルオレニル型のリガンドを含む元素周期律表第4〜7属元素の化合物である。そのような化合物の例は、欧州特許出願第880534号、欧州特許出願第956307号、国際特許出願第03/000744号、国際特許出願第03/010208号および国際特許出願第2004/085499号に挙げられている。
【0019】
2種以上の異なる触媒を含む結合触媒を使用することもできる。したがって、触媒は2つのメタロセンを含んでいてもよく、あるいはチーグラー・ナッタ成分とメタロセン成分などを含んでいてもよい。
【0020】
メタロセン触媒に適当な活性化因子は、メチルアルミニウムオキサン(MAO)、テトラ−イソブチルアルミニウムオキサン(TIBAO)およびヘキサ−イソブチルアルミニウムオキサンなどのアルミニウムオキサンである。また、例えばトリスペルフルオロフェニルホウ素、トリス(3,5−ジ(フルオロメチル)フェニル)ホウ素およびトリス(ジ−t−ブチルメチルシリル)ペルフルオロフェニルホウ素などのホウ素化合物を活性化因子として使用してもよい。
【0021】
〈前重合〉
いくつかの場合においては、前重合が重合段階に先行することが好ましい。前重合において、少量のオレフィン(好ましくは1gの触媒に対して0.1〜500gのオレフィン)を重合させる。通常、前重合は実際の重合より低い温度および/または低いモノマー濃度で行われる。一般的に前重合は−10〜90℃、好ましくは0〜80℃で行われる。例えば、プロピレンを重合する場合、前重合を低い方の温度範囲、例えば−10〜40℃、好ましくは0〜30℃の範囲で行うことが好ましい。一方、エチレン重合においては、通常、高い方の温度範囲、例えば30〜90℃、好ましくは40〜80℃で行うことが好ましい。必然ではないが、通常、前重合で使用するモノマーはその後の重合段階において用いられるものと同じである。1種より多いモノマーを前重合段階に供給することもできる。前重合についての記載は、例えば、国際特許出願第96/18662号、国際特許出願第03/037941号、独国特許出願第1532332号、欧州特許出願第517183号、欧州特許出願第560312号および欧州特許出願第99774号で見つけることができる。
【0022】
〈第1重合段階〉
第1重合段階において、第1反応混合物中、オレフィン重合触媒の存在下でオレフィンモノマーを重合する。第1重合段階において製造されるポリマーはオレフィンホモポリマーであっても、オレフィンコポリマーであってもよい。この重合は気相中で行われ、好ましくは流動床気相反応器中で行われる。
【0023】
重合反応器内の温度は、触媒が望ましい活性に到達するために十分に高い温度である必要がある。一方、反応器内の温度はポリマーの軟化点を超えるべきではない。この温度は、50〜110℃の範囲、好ましくは75〜105℃の範囲、より好ましくは75〜100℃の範囲から選択することができる。
【0024】
反応器内の圧力は、所望する目的:反応媒体の所望する密度を達成すること、または適当なモノマー濃度を達成すること、を果たすよう選択することができる。気相重合における適当な圧力範囲は、5〜50barであり、好ましくは10〜30barである。
【0025】
第1重合段階は気相重合で行われる。第1重合段階は、先行技術で既知の任意の反応器、例えば流動床反応器、攪拌床反応器または固定床反応器などで行うことができる。
【0026】
特に好ましい実施態様において、第1重合段階は流動床気相重合として行われる。この場合、モノマー、必要により不活性ガス、水素およびα−オレフィンコモノマーを含むガス混合物を反応器の下部、好ましくは反応器の底に導入する。触媒は、多くの場合、重合が行われるポリマー床へ導入される。また、ポリマーのMFRおよび密度、結晶化度若しくはコモノマー含量を調節するために、必要により水素および1つ以上のコモノマーが反応器へ導入される。一般的に、水素と気相中のモノマーの比率は0〜15000モル/キロモルであり、コモノマーとモノマーの比率は0〜1000モル/キロモルであり、好ましくは0〜500モル/キロモルである。ガスは、成長しているポリマー粒子の床を通って上に向かって流れる。未反応のガスは反応器の頂部から抜き出され、圧縮され、冷却され反応器の下部に再導入される。
【0027】
当業者に既知であるように、流動床内の特定地点での圧力は、一方で床より上のガスの圧力に依存し、他方で前記地点より上の床の高さに依存する。したがって、床の底面近くに位置する地点での圧力は、床の表面近くに位置する地点での圧力より高い。一般的に、床中の任意の地点における圧力は、下記式から算出することができる。

式中、pは流動床における高さxでの圧力であり、pは床より上のガスの圧力であり、ρは流動床の密度であり、gは重力定数であり、hは高さxより上の床の高さ(すなわち、高さxから床の上端までの距離)である。
【0028】
ポリマーは、連続的にまたは断続的に第1重合段階から抜き出される。連続的な抜出しとは、反応器からのポリマー流出が連続的であることを意味する。すなわち、反応器から接続装置までの開口接続が常に存在し、ポリマーがそこを通り反応器外へ流れ出ることができることを意味する。弁は少なくとも部分的に開かれ、弁の位置は所望する調整方法に基づいて調節される。これにより、反応器から分離容器への粒子状ポリマーの連続した流れが生じる。この他、ポリマーの連続的な抜出しは欧州特許出願第1159305号に記載されている。
【0029】
一方、間欠的なまたは断続的な抜出しとは、少量バッチのポリマーが反応器から別々の時間に抜き出されることを意味する。したがって、ポリマー抜出しラインの弁は、反応器からバッチを抜き出す際に完全に開けられる以外は完全に閉じられている。このような流出については、この他、米国特許出願第4621952号、欧州特許出願第188125号、米国特許出願第4543399および欧州特許出願第830892号に開示されている。
【0030】
さらなる上流の重合段階が前記第1重合段階に先行する場合も本発明の範囲である。これらの先行段階は、先行技術において既知の任意の方法により行うことができる。例えば、流動床気相反応器内で行われる第1重合段階に先行して、ループ反応器内でスラリー重合段階として先行重合段階を行うことができる。
【0031】
〈第2重合段階〉
第2重合段階において、好ましくは少なくとも1つの特徴に関して第1重合段階において製造されたポリマーと異なるポリマーが製造される。第2重合段階の重合は、第2反応混合物中、オレフィン重合触媒の存在下で行われる。したがって、第2反応混合物の組成は、好ましくは、少なくとも1つの成分に関して第1反応混合物の組成と異なる。
【0032】
第2重合段階は、第1重合段階に対して開示した条件と同様の条件で行うことができる。しかしながら、上述したように、第2反応混合物は、好ましくは、少なくとも1つの成分に関して第1反応混合物と異なる。したがって、例えば、第1反応混合物は水素を豊富に含んでいてもよいが、第2反応混合物は少量の水素しか含まない。あるいは、第1反応混合物は多量のコモノマーを含んでいてもよいが、第2反応混合物はコモノマーを全く含まないか、極少量のコモノマーしか含まない。
【0033】
先行技術において、少なくとも2段階の重合段階において重合して、国際特許出願第92/12182号、欧州特許出願第22376号および国際特許出願第2004/039847号に記載されるような二峰性ポリオレフィン(例えば、二峰性ポリエチレンなど)、または欧州特許出願第887381号に記載されるような二峰性PPを製造することが知られている。
【0034】
本発明の方法は、特に、一方の気相反応器からもう一方の反応器へのポリマーの移送におけるプロピレンの重合に有用である。
【0035】
さらなる顆粒の重合段階が前記第2重合段階に続く場合も本発明の範囲である。これらの後続段階は、先行技術において既知の任意の方法により行うことができる。
【0036】
〈分離容器〉
第1反応器から抜き出されたポリマーは、従来は減圧段階に導入され、そこでポリマーから第1反応混合物の一部または全てが除去された。第1反応混合物の成分の第2重合段階への持ち越しを防止するために実質的に全ての第1反応混合物を除去することが有益であるが、これは経済的な観点からは望ましくない。このような場合、気圧近くに減圧し、その後第1重合段階以上の圧力でポリマーから除去された第1反応混合物を圧縮することが必要となるだろう。これにより、第1反応混合物を、可能であれば精製した後、第1重合段階へ再利用することができるかもしれない。
【0037】
したがって、経済的な観点からは、第1重合段階の圧力より低いが、第2重合段階の圧力よりも高くなるよう減圧することが有益である。しかしながら、減圧した場合でも、再循環ガスを直接的に重合工程へ再循環させることはできない。
【0038】
本発明によれば、第1重合段階から回収された混合物の圧力が、第1重合段階のポリマー抜出し口と本質的に同じ圧力で稼働する分離段階に採用される。したがって、分離容器内の圧力は、第1反応混合物が抜き出されたレベルでの第1重合段階における圧力から10%以内であり、好ましくは5%以内である。ポリマーとともに第1ガス混合物を含む第1反応混合物は、ポリマー床が形成される分離容器に導入される。このポリマーおよび第1ガス混合物は上部から分離容器内へ入り、ポリマーは容器の底部から抜き出され第2重合段階へ導入される。過剰なガスは容器の上部から、好ましくはポリマー床の高さより上から抜き出される。このようにして抜き出されたガスは、第1重合段階において圧力が分離容器より低いところへ再循環される。例えば、ガスは、反応器からポリマーが抜き出される地点より高い位置のポリマー床に戻されてもよい。好ましくは、ガスは、前記第1重合段階内のポリマー床の高さより上に戻される。しかしながら、コンプレッサーの吸引側の循環ガス管にガスを再循環させることもできる。
【0039】
分離段階における圧力は、第2重合段階の圧力より高い。したがって、その圧力は、第2重合段階の圧力よりも約0.1〜10bar高くてよく、好ましくは0.2〜5bar高くてよい。さらに好ましい圧力は、前記第1ガス混合物が実質的に気相中または蒸気相中にとどまる圧力である。
【0040】
ポリマーは分離容器の底部から連続的または断続的に抜き出される。連続的な抜出しとは、分離容器からのポリマー流出が連続的であることを意味する。すなわち、分離容器から接続装置までの開口接続が常に存在し、ポリマーがそこを通って反応器外へ流れ出ることができることを意味する。弁は少なくとも部分的に開かれ、弁の位置は所望する調整方法に基づいて調節される。これにより、分離容器からその後の重合反応器への粒子状ポリマーの連続した流れが生じる。
【0041】
本発明の好ましい実施態様によれば、第2ガスは分離容器の底部へ導入される。ここで、底部は分離容器の半分より下を意味する。したがって、分離容器の全高をlで表した場合、第2ガスは、分離容器の底面からの高さyに導入される。ここで、y≦l/2であり、好ましくはy≦l/3である。
【0042】
本発明の特に好ましい実施態様において、分離容器の底部に導入される第2ガスの量は、固定ポリマー床において上に向かって流れる見かけ上のガス速度が、前記床を形成しているポリマー粒子の最小流動化速度よりも遅くなるようにすべきである。そうでない場合には、床は固定されてとどまらないであろう。一方、固定床の底面における圧力は、第2重合段階内の圧力より高くするべきである。さもなければ、第2重合段階にポリマーを供給することができないであろう。第2ガスはポリマーと逆流的に流れ、ポリマー床の第1反応混合物を置換する。
【0043】
第2ガスは、重合触媒に対して有害な成分を含むべきでない。先行技術おいて知られているそのような成分は、酸素含有化合物、例えば水、酸素、二酸化炭素および一酸化炭素、ならびにイオウ含有化合物、例えばメルカプタンおよび硫化カルボニルである。
【0044】
理想的には、第2ガスは、第2重合段階に存在する第2反応混合物と同じ割合の同じ成分で構成される。しかしながら、第2ガスは、第2反応混合物の化合物のただ1つの成分から、あるいはそれらのいくつかから構成されていてもよい。また、第2ガスは不活性の成分から、あるいは第2重合段階の重合反応に効果がない成分から構成されていてもよい。
【0045】
したがって、本発明の好ましい実施態様によれば、第2ガスは、工程中に供給された新しいモノマーから取り込まれたモノマーまたはモノマー回収流から取り込まれたモノマーのいずれかである。特に好ましい実施態様は、モノマーがプロピレンである場合である。モノマーがエチレンの場合、固定床での激しい重合を避けるため、モノマーを不活性成分で希釈することが有利である。
【0046】
分離容器の上部から抜き出されたガスは、重合工程に、好ましくは連続的に戻される。第1重合段階が流動床気相反応器で行われる特に好ましい実施態様において、抜き出されたガスは、フラッシュ容器内の圧力より低い圧力の場所で第1気相反応器中に戻される。例えば、ガスを、流動床の高さよりも上の第1気相反応器の上部に戻すことができる。あるいは、ガスを、循環ガスコンプレッサーの吸引側の循環ガス間内へ戻してもよい。
【0047】
第2ガスは、好ましくは、ポリマーを伴う第1反応ガス混合物流とほぼ同じ量またはそれより多くの量で導入される。したがって、第2ガスの流量と第1ガス混合物の流量の比は、体積基準で、好ましくは0.5〜2であり、より好ましくは0.95〜1.8であり、さらに好ましくは1.0〜1.5であり、特に1.0〜1.3である。例えば、約1.1の比率が良好な結果を導くことがわかった。
【0048】
分離容器内でのポリマーの好適な滞留時間は、約30秒〜5分である。一般的により長い滞留時間はより良好なガスの置換を生じるが、大きくより高価な装置が必要となるという欠点も有する。しかしながら、ガスの十分な置換を達成することができなくなるため、滞留時間は短すぎるべきではない。5分を越える滞留時間に意味のある利点はなく、良好な結果は滞留時間が45秒〜3分である場合に得られた。
【0049】
分離容器内の温度は、一方でポリマーの軟化点より低くなるよう、他方で、実質的に気相中にガス混合物を維持するために十分に高くなるよう選択すべきである。その後ポリマーの加熱または冷却が不要であるため、分離容器内の温度が第1反応器内の温度と同じまたはそれに近いことが特に有利である。プロピレンの重合に本発明を使用する場合、分離容器内の温度が70〜120℃、好ましくは80〜100℃、特に好ましくは第1反応器内の温度と同じ温度である場合に良好な結果が得られた。
【0050】
必要な場合、例えば、分離容器の温度を調節するために、完全にまたは部分的に液状で第2ガスを供給することもできる。第2ガスの液状部分は、その後前記分離容器内で蒸発し、ポリマー床の冷却に役立つ。
【0051】
例えば、第1混合物の除去を、図2に示す装置において行うことができる。容器120は3つの領域を有する。分離領域121からポリマーを導入し、またガスを抜き出す。その下に、ポリマーの固定床を含むホールドアップ領域122が存在する。容器120の下部に、ポリマーが抜き出され、第2ガスが導入され得る置換領域123がある。
【0052】
先の反応領域からの残留ガスを未だ含んでいるポリマーは、導管131を介して容器120に入る。好ましくは、導管131は、ポリマー床の高さより上に位置する。ガスは、導管132を介して抜き出される。例えば、容器120内の所定の圧力を維持するために、導管132は調整弁を備えていてもよい。また、導管131は、反応器からのポリマーの抜出し速度を調節するための調整弁を備えていてもよい。
【0053】
ポリマーは、容器120の下に向かって、好ましくは実質的に栓流式で流れる。ポリマーは、置換領域123から導管134を介して抜き出される。ガスは、導管133を介して置換領域に導入される。ガスの流れを所望する方向に誘導し、バイパスを回避するために、多くの場合、ガス流入口で分流器140を使用することが有利である。この分流器は、例えば、容器120の壁に固定された金属板であってよい。図2に示される実施態様において、ガスの流れを下向きに誘導するために、分流器は壁と5〜50°の角度であってよい。これにより、ガスと固体ポリマー粒子間における良好な分散が得られる。さらに、その後の工程段階へ粉末を空気圧で移送するために、キャリアガスを導管134中に導入してもよい。容器120からのポリマーの流量を調節するために、導管134は調整弁を備えていてもよい。
【0054】
ホールドアップ領域122は分離領域121を置換領域123につないでいる。分離領域121は一般的に置換領域より大きな直径を有するため、例えば、分離領域121の直径は、置換領域123の直径の約1.2〜5倍であり、好ましくは1.5〜4倍であり、ホールドアップ領域122は、典型的には円錐台の形状を有している。その角度αは、ポリマーが容器内を自由に流れ得るよう選択すればよい。したがって、角度αは、90°未満〜約50°の範囲、例えば、85〜55°または80〜60°であってよい。
【0055】
さらに、容器120および接続された導管は、所望する特性(例えば、容器120内の床の高さ、容器120内へのガス流量および容器120外へのガス流量など)を測定するための若しくは調節するための先行技術において既知の任意の器具類を備えていてよい。このような器具類ならびに適当な調整方法の様式は、先行技術においてよく知られている。
【0056】
〈押出し〉
反応器からポリマーを回収した後、そこから炭化水素残留物を取り除き、ポリマーを作り上げ、ペレット状に押出す。この工程段階において、先行技術で既知の任意の押出機を使用することができる。しかしながら、2軸スクリュー押出機を使用することが好ましい。共回転型の押出機であってもよく、例えば、Werner & Pfleiderer製の名称ZSK(例えば、90ミリのスクリュー径を有するZSK90など)を有する共回転型の押出機であってよい。あるいは、二重反転型の押出機であってもよく、例えば、日本製鋼所製の名称JSW CIM−P(例えば、90ミリのスクリュー径を有するCIM90Pなど)、または神戸製鋼製のLCM連続ミキサー(例えばLCM500Hなど)、またはFarrel製のFarrel連続ミキサー(FCM)などの二重反転型押出機であってよい。
【0057】
押出機は1つ以上のギアポンプ若しくはスロットルバルブまたはその両方を備えていてよい。この器具は、ポリマー組成物の均質性を改善し、または押出機の能力を高めるために使用することができる。このような解決策は、例えば、T. FukuiおよびR. Minato:「LCM Continuous Mixer/Gear Pump System for Polyolefin Resins」、Society of Plastics Engineers Polyolefins VII International Conference、2月24−27、1991、Wyndham Greenspoint Hotel、ヒューストン、テキサスにより開示されている。
【0058】
押出前に、ポリマーの計画用途により、所望する添加剤とポリマーを混合してもよい。
【実施例】
【0059】
実施例1
以下のようにして、プロピレンを重合した。
20℃、約56barで稼働する前重合反応器に、欧州特許出願第591224号の試験3に従って調製されたチタン含有重合触媒固体成分、トリエチルアルミニウム共触媒、およびシクロヘキシルメチルジメトキシシランを、TEAとチタンの比率が約100モル/モルとなり、CHMDMSとTEAの比率が約10モル/モルとなるように供給した。さらに、ポリマー生成速度が約300kg/hとなるようにプロピレンを供給した。
【0060】
その後、前重合反応器からのスラリーを連続的にループ反応器へ導入し、さらなるプロピレンおよび水素を添加した。温度は70℃であり、圧力は55barであり、滞留時間は約40分であった。反応器からポリマーを25t/hの速度で抜き出した。
【0061】
スラリーをループ反応器から連続的に抜出し、欧州特許出願第887381号に開示された方法で、床の上の圧力約22barおよび温度85℃で稼働する気相流動床反応器に導入した。さらなるプロピレンおよび水素を、反応器中のポリマー生成速度が21.2t/hとなるように第1気相反応器に供給し、これにより全部で46.2t/hのポリプロピレンが気相反応器から抜き出された。反応器内の水素とプロピレンの比率は600モル/キロモルであった。流動床の高さは約20mであった。
【0062】
ポリマー(46.2t/h)を、流動化グリッドより上の約4mのレベルで気相反応器から連続的に抜き出し、22bar、80℃で稼働する分離容器へ導入した。ポリマーとともに、6.2t/hの反応ガスを除去した。
【0063】
容器の構造は、図2の構造と本質的に同様であった。置換領域の高さは1mであり、円錐部分は1.3mの高さを有し、円筒の上部は1.5mの高さを有していた。円筒部の下部と上部の直径は、それぞれ500mmおよび1300mmであった。ポリマーは、ポリマーの滞留時間が90秒である固定床を形成した。置換領域に新しいプロピレンを6.8t/hの速度で導入し、容器の上部から収集したガスを第1気相反応器の上部へ、流動床より上の高さから戻した。
【0064】
ポリマーを、容器の底部から75mmの導管を介して連続的に取り出し、空気圧による移送により取り除いたポリマーを第2気相反応器へ導入した。移送ガスは、第2気相反応器で使用した流動化ガスと同じ組成であった。第2気相反応器は、70℃、20barで稼働させた。この反応器へ、さらなるプロピレン、水素およびエチレンを導入した。エチレンとプロピレンの比率は、約400モル/キロモルであり、水素とプロピレンの比率は約10モル/キロモルであった。プロピレンの生成速度は13.8t/hであり、これにより全部で60t/hのプロピレンコポリマーが第2気相反応器から抜き出された。
【0065】
上記実施例が示すように、反応器を種々の条件で稼働させることができ、第1反応器内で高い割合存在している場合でも第2反応器内の水素とエチレンの比率を非常に低いレベルで維持することが可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの連続する反応容器内で、気相中、オレフィン重合触媒の存在下に少なくとも1つのオレフィンの重合体を製造する方法であって、
−オレフィン重合体および第1反応ガス混合物を含む流動床を形成するために、第1重合反応器内で、オレフィン重合触媒および第1反応ガス混合物の存在下オレフィンを重合すること;
−第1生成物流を形成するために、前記オレフィン重合触媒が中に分散している前記オレフィン重合体とともに前記第1反応ガス混合物を第1重合反応器から連続的または断続的に抜き出すこと;
−分離容器内にポリマー床を形成するために、前記第1生成物流を分離容器内に移動させること;
−前記第1反応ガス混合物流を前記分離容器から抜出し、抜き出した第1反応ガス混合物流を前記第1重合反応器へ戻すこと;
−第2生成物流を形成するために、前記分離容器から前記オレフィン重合体を連続的または断続的に抜き出すこと;および
−第2重合反応器に第2生成物流を移動させること
を含み、前記分離容器が前記第1反応段階において第1生成物流を抜き出す地点の圧力と本質的に同じ圧力で稼働し、前記第1反応ガス混合物流を、前記第1重合段階において圧力が前記分離容器よりも低くなる地点に戻すことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記分離容器の圧力が、第1重合段階において第1生成物流を抜き出す地点の圧力から10%以内、好ましくは5%以内であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分離容器の前記ポリマー床の高さより上から前記第1反応ガス混合物流を抜き出す請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1生成物流を前記第1重合反応器から連続的に抜き出す請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ポリマーが、前記分離容器中でポリマーの下降固定床を形成する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第2生成物流を前記分離容器から連続的に抜き出す請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第2重合反応器が、少なくとも1つの成分が前記第1反応ガス混合物の構成と異なる第2反応ガス混合物を含有し、前記第1反応ガス混合物とは異なる第2ガスを前記分離容器に導入することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第2ガスを、好ましくはy≦l/2、より好ましくはy≦l/3〔式中、lは前記分離容器の高さであり、yは分離容器の底から第2ガスが分離容器に導入される地点までの距離である〕となるように前記分離容器の下部に導入する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2ガスの体積流量と前記第1反応ガス混合物の体積流量の比が、0.5〜2である、好ましくは0.95〜1.8である、より好ましくは1.0〜1.5である、特に1.0〜1.3であることを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
分離容器内でのポリマーの平均滞留時間が30秒〜5分であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記第2ガスの少なくとも一部を液体の形態で導入する請求項7〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第2ガスが、前記第2ガス混合物と同じ成分を有する請求項7〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記第2ガスがプロピレンである請求項7〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記オレフィンモノマーの少なくとも1つが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンまたは1−オクテン、1−デセンおよびそれらの混合物からなる群から選択される請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記オレフィンモノマーの少なくとも1つが、エチレン、プロピレンおよびそれらの混合物からなる群から選択される請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−508484(P2013−508484A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534587(P2012−534587)
【出願日】平成22年11月3日(2010.11.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006703
【国際公開番号】WO2011/066892
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(510312628)ボレアリス アクチエンゲゼルシャフト (4)
【Fターム(参考)】