説明

ポリオレフィン微粒子ならびに変性ポリオレフィン微粒子、これらを含む樹脂組成物、およびその用途

【課題】粒径が小さく、粒度分布が狭いポリオレフィン微粒子ならびに変性ポリオレフィン微粒子、これらを含む樹脂組成物、および該微粒子の各種用途を提供する。
【解決手段】下記(a)〜(c)を満たすポリオレフィン微粒子、下記(d)〜(e)をさらに満たす、前記ポリオレフィン微粒子に、エチレン性不飽和結合含有化合物をグラフト重合した変性ポリオレフィン微粒子。(a)135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が1〜50dl/g(b)平均粒径が3〜25μm(c)目開き37μmメッシュ篩を少なくとも95重量%以上が通過(d)メタノール処理後の赤外線吸収スペクトルが、メタノール処理前の赤外線吸収スペクトルと実質的に同一(e)エチレン性不飽和結合含有化合物由来の単位が、ポリオレフィン微粒子全体の0.05〜75wt%を占める

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン微粒子ならびに変性ポリオレフィン微粒子、これらを含む樹脂組成物、およびその用途に関する。さらに詳しくは、従来のポリオレフィン微粒子よりも粒径が小さく、また微粒子間の凝集がなく、粒度分布が極めて狭いポリオレフィン微粒子ならびに変性ポリオレフィン微粒子、これらを含む樹脂組成物、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリマー微粒子の開発が活発化しており、産業上さまざまな用途で幅広く使用されている。なかでも、粒子形状が球形で粒度分布の狭いポリマー微粒子は、その加工性、流動性、表面物性のよさからフィルター、分離膜、分散剤、粉体塗装、樹脂改質剤、コーティング剤などの用途に用いられている。
【0003】
これらポリマー粒子の材質は、アクリル樹脂系、スチレン樹脂系、メラミン樹脂系、ポリオレフィン系など多岐にわたるが、結晶性や融点が高く、高い化学的安定性といった特長から、ポリオレフィン樹脂の微粒子が注目されている。ポリオレフィン微粒子は、他の材料に見られない耐水・耐油性、耐薬品性や生体安全性といった特長を活かし、さまざまな新材料、新用途が考案・実用化されている。
【0004】
一方、現在まで用途開発がなされているポリオレフィン微粒子は、その粒径が比較的大きなもの(25μm〜)であり、さらなる機能発現や性能・品質向上のために、より小さい粒径、より狭い粒度分布、粒子間の凝集のないものが望まれてきている。また、ポリオレフィン微粒子と他の樹脂との相溶性を向上させるために、微粒子の表面処理を施したものが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開09/11231号パンフレット
【特許文献2】特公開昭46−144351号公報
【特許文献3】特公開昭60−240734号公報
【特許文献4】特公開平1−104622号公報
【特許文献5】特公開2009−36302号公報
【特許文献6】特公開2008−175850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、粒径が小さく、粒度分布が狭いポリオレフィン微粒子ならびに変性ポリオレフィン微粒子、これらを含む樹脂組成物、および該微粒子の各種用途を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ポリオレフィン微粒子に関する上記の事実に鑑み、さらに鋭意検討した結果、粒度分布が狭く、平均粒子径の小さいポリオレフィン微粒子ならびに変性ポリオレフィン微粒子を用いた各種の優れた用途を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明には以下の事項が含まれる。
〔1〕下記(a)〜(c)を満たすポリオレフィン微粒子。
(a)135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が1〜50dl/g
(b)平均粒径が3〜25μm
(c)目開き37μmメッシュ篩を少なくとも95重量%以上が通過
〔2〕前記ポリオレフィン微粒子に、エチレン性不飽和結合含有化合物を反応させ、下記(d),(e)をさらに満たす〔1〕に記載のポリオレフィン微粒子。
(d)メタノール処理後の赤外線吸収スペクトルが、メタノール処理前の赤外線吸収スペクトルと実質的に同一
(e)エチレン性不飽和結合含有化合物由来の単位が、ポリオレフィン微粒子全体の0.05〜75wt%を占める。
〔3〕前記エチレン性不飽和結合含有化合物が、エチレン性不飽和基を含有するカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩またはカルボン酸エステル、からなるカルボン酸誘導体であることを特徴とする〔2〕に記載のポリオレフィン微粒子。
〔4〕前記(b)平均粒径が3〜10μmの範囲内であることを特徴とする〔1〕から〔3〕に記載のポリオレフィン微粒子。
〔5〕〔1〕から〔4〕に記載のポリオレフィン微粒子からなる摺動特性改良剤。
〔6〕〔1〕から〔4〕に記載のポリオレフィン微粒子を合成樹脂に配合してなる樹脂組成物。
〔7〕前記合成樹脂がポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネートから選ばれる1以上の合成樹脂である〔6〕に記載の樹脂組成物。
〔8〕〔6〕または〔7〕に記載の樹脂組成物を成形してなる摺動部材。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリオレフィン微粒子は、高分子量で、粒度分布が狭く、平均粒子径が狭いため、既存のポリオレフィン微粒子に比べて各種用途に用いた場合に優れた効果を有する。例えば、他の樹脂とブレンドまたは樹脂成形体表面を被覆することで該樹脂組成物または成形体の摺動特性や耐摩耗性を改善することができる。また、焼結フィルターなどの用途において、加工性に優れ、成形ムラがなく均質な濾過性能の優れた成形品を提供することができる。
【0010】
さらに、該ポリオレフィン微粒子をエチレン性不飽和結合含有化合物と反応させて得られる変性ポリオレフィン微粒子は、該ポリオレフィン微粒子と組み合わせて用いる各種樹脂との相溶性に優れ、該樹脂中に均一に分布するため、該樹脂成形体の摺動特性や耐摩耗性をさらに改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は耐摺動摩耗性試験に用いる摺動摩耗試験機を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るポリオレフィン微粒子、変性ポリオレフィン微粒子、これらを含む樹脂組成物、および各種用途について具体的に説明する。
【0013】
[ポリオレフィン微粒子]
本発明のポリオレフィン微粒子は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどのホモポリマー以外に、エチレンと少量の他のα−オレフィン、たとえば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンおよび4−メチル−1−ペンテンなどとの共重合体であってもよいが、好ましくはエチレン系重合体であり、特に好ましくはポリエチレンである。
【0014】
本発明の超高分子量ポリオレフィン微粒子の135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は、1〜50dl/g、好ましくは5〜40dl/g、より好ましくは5〜30dl/gの範囲である。極限粘度が上記範囲内にあると、耐摩耗性、耐衝撃性、耐薬品性および自己潤滑性などに優れるので好ましい。
【0015】
本発明のポリオレフィン微粒子の平均粒径は3〜25μm、好ましくは3〜20μm、より好ましくは3〜15μm、さらに好ましくは3〜10μmの範囲である。平均粒子径が25μm以下であると、フィルター孔径の縮小化が可能であるので好ましい。一方、平均粒子径が3μm以上であると、成形時に粒子を取り扱い易くなるので好ましい。
【0016】
また、本発明のポリオレフィン微粒子は、振動篩または超音波式振動篩を用い、目開き37μmのメッシュ篩(Tyler #400)を95重量%以上通過するものであり、より好ましくは98重量%以上、さらに好ましくは99.7%以上、最も好ましくは100%通過するものである。すなわち、通過量が95重量%より多いポリオレフィン微粒子とは、粗大粒子の存在量が少ないことを意味する。このようなポリマー粒子では、粗大粒子の存在によって、流動性や分散性が低下し、パウダーとしてのパッキングの理想である最密充填が阻害されることがない。したがって、機能性新材料用途としては十分満足できるものである。
【0017】
[ポリオレフィン微粒子の製造方法]
本発明のポリオレフィン微粒子は、例えば次の方法によって製造することができる。
本発明のポリオレフィン微粒子は、
(A)マグネシウム含有微粒子に、
(B)遷移金属化合物または(C)液状チタン化合物が、
担持された固体触媒成分と、
(D)有機金属化合物、さらに所望により
(E)非イオン性界面活性剤から構成される重合触媒成分の存在下に、エチレン単独またはエチレンと他のα−オレフィンを共重合させることで得ることができる。
【0018】
以下に、先ず本発明で使用する固体触媒成分を構成する、(A)マグネシウム含有微粒子、(B)遷移金属化合物および(C)液状チタン化合物について説明する。
[(A)マグネシウム含有微粒子]
本発明の(A)マグネシウム含有微粒子、すなわち、マグネシウム含有担体成分は、具体的には、WO2006/054696号パンフレットに開示されたものを使用することができる。
【0019】
本発明のマグネシウム含有微粒子は、マグネシウム原子、アルミニウム原子および炭素原子数1〜20のアルコキシ基を共に含有し、炭化水素溶媒に不溶であり、レーザー回折散乱法で測定したメジアン径(d50)が、0.1μm≦d50≦5μmであり、好ましくは0.1〜4.5μm、より好ましくは0.1〜4.0μm、さらに好ましくは0.1〜3.5μmの範囲にある。
【0020】
炭素原子数1〜20のアルコールとしては、たとえば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−アミルアルコール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、2−エチルヘキサノール、n−オクタノール、ドデカノール、オクタデシルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、クミルアルコール、i−プロピルベンジルアルコールなど、トリクロロメタノール、トリクロロエタノール、トリクロロヘキサノールなどのハロゲン含有アルコール、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ノニルフェノール、クミルフェノール、ナフトールなどの低級アルキル基含有フェノールなどを例示するこができるが、これらの中ではメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、i−アミルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、ドデカノールが好ましい。
【0021】
本発明のマグネシウム含有微粒子は、ハロゲン化マグネシウムと炭素原子数1〜20のアルコール、またはフェノール化合物を接触(以下、この接触を「第1接触」と呼ぶ場合がある。)させ、次いで、特定の条件下にて、有機アルミニウム化合物と接触(以下、この接触を「第2接触」と呼ぶ場合がある。)させることにより得られる。
【0022】
ハロゲン化マグネシウムとしては、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムが好ましく用いられる。このようなハロゲン化マグネシウムは市販品をそのまま使用してもよいし、別途アルキルマグネシウムから調製してもよい。後者の場合はハロゲン化マグネシウムを単離することなく用いることもできる。
【0023】
ハロゲン化マグネシウムと炭素原子数1〜20のアルコール、またはフェノール化合物とを接触させる場合は、溶媒存在下にて行ってもよい。溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンジクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを例示することができる。
【0024】
接触は通常、加熱下にて行われる。加熱する場合は、その温度は使用する溶媒の沸点までの温度を任意に選択することができる。接触時間は接触温度にもよるが、たとえば溶媒としてn−デカンを使用し加熱温度130℃の条件下においては、約4時間の接触により、内容物が均一化現象を呈しこれが接触完了の目安となる。接触する際には、通常撹拌などにより接触を促す装置を利用して実施される。接触の開始時は通常不均一な系であるが、接触が進行するとともに内容物は徐々に均一化し、最終的には液状化する。
【0025】
本発明のマグネシウム含有微粒子は、エチレン系重合体微粒子の製造に際して固体触媒成分の担体として使用する場合、重合して得られるエチレン系重合体微粒子の粉体性状の観点から完全液状化を経由する調製法が好ましい。
【0026】
このようにして調製されたハロゲン化マグネシウムと炭素原子数1〜20のアルコール、またはフェノール化合物との接触化物(以下、「第1接触化物」と呼ぶ場合がある。)は、接触時に使用した溶媒類を除去して用いてもよいし、溶媒を留去することなく使用してもよい。通常は溶媒を留去することなく次段の工程に供される。
【0027】
上記の方法で得られた第1接触化物は、次いで特定の条件下にて、下記一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物との接触、すなわち第2接触をさせる。
【0028】
【化1】

【0029】
一般式(1)において、Rは炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基を挙げることができる。Xは塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子または水素原子を示す。nは1〜3の実数を示し、好ましくは2または3である。Rが複数である場合、各Rは同じでも異なっていてもよく、Xが複数である場合、各Xは同じでも異なっていてもよい。有機アルミニウム化合物としては、具体的には以下のような化合物が用いられる。すなわち、上記要件を満たす有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ2−エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;イソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド;メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどを例示できるが、これらの中では、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドが好ましい。
【0030】
第2接触時、第1接触化物は溶剤に希釈された状態が好ましく、このような溶剤としては活性水素を保有しない炭化水素類であれば特に制限なく使用できるが、通常は第1接触時に使用した溶媒を留去することなく第2接触時の溶媒としてそのまま使用するのが効率的である。第1接触化物に添加する有機アルミニウム化合物は、溶媒に希釈して使用してもよいし、溶媒に希釈せず添加してもよいが、通常はn−デカン、n−ヘキサンなどの脂肪族飽和炭化水素や、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒に希釈された形態で用いられる。有機アルミニウム化合物を添加する際には、通常5分〜5時間かけて第1接触化物に添加する。接触系内の徐熱能力が十分であれば短時間の添加で済ませることができ、一方、能力が不十分な場合は長時間かけて添加するのがよい。有機アルミニウム化合物の添加は一括して添加してもよいし、何回かに分けて分割添加をしてもよい。分割添加を行う場合は、各々の添加における有機アルミニウム化合物は同一でも異なっていてもよく、また各々の添加における第1接触化物の温度は同一でも異なっていてもよい。
【0031】
第2接触時における、前記一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物の使用量は、通常は、第1接触化物中のマグネシウム原子の量に対して0.1〜50倍モル、好ましくは0.5〜30倍モル、より好ましくは1.0〜20倍モル、さらに好ましくは1.5〜15倍モル、特に好ましくは2.0〜10倍モルのアルミニウム原子となるような有機アルミニウム化合物量である。
第2接触により担体を調製する方法のうち、特に好ましい第2接触の形態を以下に述べる。
【0032】
第1接触化物と前記一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物の接触に際しては、たとえばマグネシウム化合物の炭化水素希釈溶液と、炭化水素溶媒に希釈した有機アルミニウム化合物とを接触させるなどの両液状物の反応による手段が好ましい。その際の有機アルミニウム化合物の使用量は、その種類、接触条件によって異なるが、マグネシウム化合物1モルに対し、通常2〜10モルとするのが好ましい。固体生成物は、その形成条件によって形状や大きさなどが異なってくる。形状、粒径が揃った固体生成物を得るためには、高剪断・高速混合を維持しつつ、急速な粒子形成反応を避けるのが好ましく、たとえばマグネシウム化合物と有機アルミニウム化合物とを互いに液状状態で接触混合して相互反応によって固体生成物を形成させる場合には、それらの接触によって急速に固体が生じないような低い温度で両者を混合した後、昇温して徐々に固体生成物を形成させるのがよい。この方法によれば、固体生成物の超微粒領域での粒径制御が容易で、粒度分布の極めて狭い超微粒で球状の固体生成物を得やすい。
【0033】
[(B)遷移金属化合物]
遷移金属化合物(B)については、特に限定はないが、たとえば、以下の文献に開示されたものを使用することができる。
1)特開平11−315109号
2)特開2000−239312号
3)EP−1008595号
4)WO01/55213号
5)特開2001−2731号
6)EP−1043341号
7)WO−98/27124号
8)Chemical Review 103, 283 (2003)
9)Bulletin of the Chemical Society of Japan 76, 1493 (2003)
10)Angewandte Chemie, Internatinal Edition.English 34 (1995)
11)Chemical Review 8, 2587 (1998) 2587
これらの文献に記載の遷移金属化合物の中で、特に使用するのが好ましいものとして、下記一般式(2)または(3)で表される特定の遷移金属化合物が挙げられる。
【0034】
【化2】

【0035】
〔式中、MはZrまたはHfを示し、mは1または2の整数を示し、Aは2位に一つ以上のアルキル置換基を有する6員環炭化水素基を示し、飽和でも不飽和でもよく、R〜Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、
また、mが2の場合にはR〜Rで示される基のうち2個の基が連結されていてもよく(但し、R同士が結合されることはない)、(4−m)はMの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。〕
【0036】
以下に、上記一般式(2)で表される遷移金属化合物の具体的な例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0037】
【化3】

【0038】
【化4】

【0039】
【化5】

【0040】
式中、MはZr,またはHfを示し、Adはアダマンチル基を示す。
【0041】
【化6】

【0042】
〔式中、RQ(Pz(Pz3−iは3座のアニオン配位子、または中性配位子であり、ここでRは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基よりなる群から選ばれる基を示し、Qはホウ素、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズおよび鉛よりなる群から選ばれる基を示し、Pzは少なくとも3位が無置換アリ−ル(Aryl)基、置換アリ−ル(Aryl)基、炭素原子数3以上のアルキル基、シクロアルキル基、アミノ基またはオキシ炭化水素基などで置換されたピラゾリル基であり、Pzは無置換ピラゾリル基あるいは置換ピラゾリル基を示し、iは1〜3の整数を示し、Mは周期律表第3〜11族から選ばれる遷移金属原子を示し、Yは水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基を示し、Zは電子供与性基を有する中性配位子を示し、mはMの価数を満たす数であり、また、mが2以上の場合は、Yで示される複数の原子または基は互いに同一でも異なっていてもよく、またYで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよく、nは、0〜3の整数を示す。〕
【0043】
本発明のマグネシウム含有微粒子(A)に遷移金属化合物(B)を担持させるには、不活性溶媒中、マグネシウム含有微粒子(A)と遷移金属化合物(B)とを所定時間撹拌混合後、濾取すればよいが、この際に加熱操作を行ってもよい。不活性溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素や、ヘキサン、ヘプタン、デカンなどの脂肪族飽和炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環式炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物を例示できる。加熱する場合の温度は、用いる溶媒にもよるが通常、その溶媒の凝固点以上の温度〜200℃まで、好ましくは150℃までである。撹拌混合時間は、温度にもよるが通常、30秒〜24時間、好ましくは10分〜10時間である。濾取は通常の有機製造化学で用いられている濾過方法を採用することができる。濾取後のケーキ成分は、必要に応じて前記で例示した芳香族炭化水素や脂肪族炭化水素で洗浄してもよい。
【0044】
[(C)液状チタン化合物]
液状チタン化合物(C)として具体的には、以下の一般式(4)で示される4価のチタン化合物を挙げることができる。
【0045】
Ti(OR)4−n ・・・(4)
(式中、Rは炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、nは0≦n≦4である)
このようなチタン化合物として、具体的には、TiCl、TiBr、TiIなどのテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH)Cl、Ti(OC)Cl、Ti(O−n−C)Cl、Ti(OC)Br、Ti(O−iso−C)Brなどのトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCHCl、Ti(OCCl、Ti(O−n−CCl、Ti(OCBrなどのジハロゲン化ジアルコキシチタン;Ti(OCHCl、Ti(OCCl、Ti(O−n−CCl、Ti(OCBrなどのモノハロゲン化トリアルコキシチタン;Ti(OCH、Ti(OC、Ti(O−n−C、Ti(O−iso−C、Ti(O−2−エチルヘキシル)などのテトラアルコキシチタンなどを例示することができる。
【0046】
これらの中ではハロゲン含有チタン化合物が好ましく、さらにテトラハロゲン化チタンが好ましく、特に四塩化チタンが好ましい。これらチタン化合物は1種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、これらのチタン化合物は、炭化水素化合物またはハロゲン化炭化水素化合物などに希釈されていてもよい。
【0047】
本発明のマグネシウム含有微粒子(A)に液状チタン化合物(C)を担持させる際には、マグネシウム含有微粒子(A)と液状チタン化合物(C)とを、i)不活性溶媒共存下、懸濁状態で接触させる方法、ii)複数回に分けて接触させる方法から選ばれる少なくとも一つの方法で所定時間撹拌混合後、濾取する。この際に加熱操作を行ってもよい。不活性溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素や、ヘキサン、ヘプタン、デカンなどの脂肪族飽和炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環式炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物を例示できる。加熱する場合の温度は、用いる溶媒にもよるが通常、その溶媒の凝固点以上の温度〜200℃まで、好ましくは150℃までである。撹拌混合時間は、温度にもよるが通常、30秒〜24時間、好ましくは10分〜10時間である。濾取は、通常の有機製造化学で用いられている濾過方法を採用することができる。濾取後のケーキ成分は、必要に応じて前記で例示した芳香族炭化水素や脂肪族炭化水素で洗浄してもよい。
【0048】
[(D)有機金属化合物]
本発明において用いられる(D)有機金属化合物として、具体的には下記の一般式(5−1)〜(5−3)に例示される周期律表第1、2族および第12、13族の有機金属化合物を任意に用いることができる。
【0049】
Al(OR ・・・(5−1)
(式中、RおよびRは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜20、好ましくは1〜10の炭化水素基、より好ましくは1〜8の炭化水素基を示す。Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。このような化合物の具体例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムエトキシドを例示することができる。
【0050】
AlR ・・・(5−2)
(式中、MはLi、NaまたはKを示し、Rは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。)で表される周期律表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。このような化合物としては、LiAl(C、LiAl(C15などを例示することができる。
【0051】
・・・(5−3)
(式中、RおよびRは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、MはMg、ZnまたはCdである。)で表される周期律表第2族または第12族金属のジアルキル化合物。
【0052】
上記した有機金属化合物(D)のなかでは、有機アルミニウム化合物が好ましく、とりわけ前記一般式(5−1)の有機アルミニウム化合物が好ましい。また、このような有機金属化合物は、1種単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0053】
[(E)非イオン性界面活性剤]
非イオン性界面活性剤(E)は、下記の(E−1)ポリアルキレンオキサイドブロック、(E−2)高級脂肪族アミド、(E−3)ポリアルキレンオキサイド、(E−4)ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル、(E−5)アルキルジエタノールアミン、(E−6)ポリオキシアルキレンアルキルアミンから選ばれる1種以上の化合物が好んで使用される。
【0054】
(E−1)ポリアルキレンオキサイドブロック
本発明で用いられる(E−1)ポリアルキレンオキサイドブロックは、一般的に非イオン性界面活性剤として用いられるものであり、従来公知のポリアルキレンオキサイドブロックであれば何ら制限なく使用できる。
【0055】
(E−2)高級脂肪族アミド
本発明で用いられる(E−2)高級脂肪族アミドは、一般的に非イオン性界面活性剤として用いられるものであり、従来公知の高級脂肪族アミドであれば何ら制限なく使用できる。
【0056】
(E−3)ポリアルキレンオキサイド
本発明で用いられる(E−3)ポリアルキレンオキサイドは、従来公知のポリアルキレンオキサイドであれば何ら制限なく使用できる。
【0057】
(E−4)ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル
本発明で用いられる(E−4)ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテルは、一般的に非イオン性界面活性剤として用いられるものであり、従来公知のポリアルキレンオキサイドアルキルエーテルであれば何ら制限なく使用できる。
【0058】
(E−5)アルキルジエタノールアミン
本発明で用いられる(E−5)アルキルジエタノールアミンは、一般的に非イオン性界面活性剤として用いられるものであり、従来公知のアルキルジエタノールアミンであれば何ら制限なく使用できる。
【0059】
(E−6)ポリオキシアルキレンアルキルアミン
本発明で用いられる(E−6)ポリオキシアルキレンアルキルアミンは、一般的に非イオン性界面活性剤として用いられるものであり、従来公知のポリオキシアルキレンアルキルアミンであれば何ら制限なく使用できる。
【0060】
このような非イオン系界面活性剤は、室温で液体であるものが取り扱い性の点で好ましい。また、このような非イオン系界面活性剤は、原液または溶媒で希釈後、溶液で使用することができる。なお、本発明でいう「希釈」とは、非イオン系界面活性剤と非イオン系界面活性剤に対して不活性な液体とが混合された状態のもの、または分散された状態のものも全て含む。すなわち、溶液または分散体であり、より具体的には、溶液、サスペンジョン(懸濁液)またはエマルジョン(乳濁液)である。その中でも、非イオン系界面活性剤と溶媒が混合し、溶液状態となるものが好ましい。
【0061】
不活性な液体として、たとえば脂肪族炭化水素や脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、不飽和脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素などが挙げられる。この中でも脂肪族炭化水素や脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素の場合は、非イオン系界面活性剤と混合することにより溶液状態となるものが好ましい。さらに好ましくは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油、鉱物油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環式炭化水素と非イオン(E)イオン性界面活性剤を用いることによって、懸濁重合時の重合器壁、攪拌羽根へのポリマー付着を防止し、生産性を向上させることができる。
【0062】
以下に、本発明の重合触媒成分によるエチレン系重合体微粒子の製造方法についてさらに説明する。
本発明で用いられる固体触媒成分は、エチレンが予備重合されていてもよい。
【0063】
また本発明では、重合は懸濁重合法または気相重合法において実施できる。懸濁重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができ、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0064】
上記のような本発明の重合触媒成分を用いて、エチレン系重合体微粒子の製造を行うに際して、遷移金属化合物(B)は、反応容積、すなわち、懸濁重合の場合は重合反応器中の反応系の液相部の容積、気相重合の場合は重合反応器中の反応に関与する部分の容積1リットル当り、(B)成分中の遷移金属原子として、通常10−11〜10ミリモル、好ましくは10−9〜1ミリモルとなるような量で用いられる。
【0065】
有機金属化合物(D)は、本発明のマグネシウム含有微粒子(A)に対し、0.1〜500重量%、望ましくは0.2〜400重量%で用いられる。
【0066】
また、重合温度は、通常−50〜+200℃、好ましくは0〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常常圧〜100kg/cm、好ましくは常圧〜50kg/cmの条件であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0067】
得られるエチレン系重合体微粒子の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、使用する(C)成分の違いにより調節することもできる。
【0068】
また、本発明のエチレン系重合体微粒子の製造に際して、得られた該微粒子中の無機物除去を行うことが好ましい。
【0069】
オレフィン系重合体微粒子中の無機物の除去は、炭素原子数2〜10のアルコールとキレート性化合物(F)の混合溶液とを混合し、75℃以上の温度で攪拌することによって、実施することができる。
【0070】
炭素原子数2〜10のアルコールとしては、エタノール、n―プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t―ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、n−ノニルアルコール、n−デシルアルコールなどが挙げられるが、これに限らない。この中で、好ましくはイソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t―ブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコールが用いられる。
【0071】
キレート性化合物(F)とは、ポリマー中の無機金属であるマグネシウムやアルミニウムとキレート錯体を形成しうる化合物であれば何でもよいが、好ましくはジケトン化合物であり、中でもより好ましくはアセチルアセトンが用いられる。
【0072】
無機物除去反応は、窒素などの不活性ガス雰囲気下、i)微粒子と、アルコール、キレート性化合物(F)とを室温で混合する工程、攪拌しながら昇温し、ii)所定の反応温度で所定の時間反応させる工程、iii)スラリーを濾過、洗浄、乾燥する工程からなる。最初の混合工程では、ポリマー1重量部に対し、アルコール3〜100重量部、キレート性化合物(F)2〜100重量部が混合される。この時、アルコールとキレート性化合物(F)の量比は、98/2〜50/50の間にあることが好ましい。反応温度は75℃〜130℃、好ましくは80℃〜120℃であり、反応時間は10分〜10時間、好ましくは0.5時間〜5時間で行われ、反応後、濾過、洗浄、乾燥することで微粒子を得る。
【0073】
本発明に係る、エチレン系重合体微粒子中の無機物除去に際して、キレート性化合物(F)と触媒成分との反応によって生成する塩酸を捕集する目的で、必要に応じてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどの酸吸収剤(G)を加えることもできる。
【0074】
酸吸収剤(G)は、溶媒であるアルコール100重量部に対し、3〜10重量部添加することができる。酸吸収剤の添加時期は、反応の始めからでもよいし、反応の途中に加えてもよい。
【0075】
[変性ポリオレフィン微粒子]
本発明の変性ポリオレフィン微粒子は、前記したポリオレフィン微粒子にエチレン性不飽和結合含有化合物を、通常知られている反応、好ましい具体例として、種々のグラフト重合反応によりグラフト変性することで製造することができる。
【0076】
本発明の変性ポリオレフィン微粒子は、前記した(a)〜(c)の要件に加えて、さらに(d)メタノール処理後の赤外線吸収スペクトルが、メタノール処理前の赤外線吸収スペクトルと実質的に同一、(e)エチレン性不飽和結合含有化合物由来の単位が、ポリオレフィン微粒子全体の0.05〜75wt%を占める、の条件を満たすものである。
【0077】
本発明の変性ポリオレフィン微粒子のメタノール処理とは、具体的には、その1重量部とメタノール100重量部との混合懸濁液を室温で30分間攪拌後、濾過、洗浄、80℃にて10時間減圧乾燥することであり、赤外線吸収スペクトルが実質的に同一であるとは、赤外線吸収スペクトルの吸収強度Iが下式(6)を満たすことをいう。
【0078】
[Iλ(f)−Iλ(i)]/Iλ(i) ≦ 0.1 (6)
なお、上記式(6)において、Iλ(i)はメタノール処理前の波長λにおける吸収強度を示し、Iλ(f)はメタノール処理後の波長λにおける吸収強度を示し、λは300〜4000cm−1である。
【0079】
また、グラフト重合反応によりポリオレフィン微粒子に結合するエチレン性不飽和結合含有化合物は、IR(赤外線吸収スペクトル法)またはNMR(核磁気共鳴スペクトル法)で測定した数が、該変性超高分子量ポリオレフィンの基材100重量部に対して通常0.01〜300重量部、好ましくは0.1〜100重量部の範囲である。
【0080】
本発明に用いられるエチレン性不飽和結合含有化合物として、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチルおよびメタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどのアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル系誘導体類;N−ビニルジエチルアミンおよびN−アセチルビニルアミンなどのビニルアミン系誘導体類;アリルアミン、メタクリルアミン、N−メチルアクリルアミン、N,N−ジメチルアクリルアミン、およびN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミンなどのアリルアミン系誘導体;アクリルアミドおよびN−メチルアクリルアミドなどのアクリルアミド系誘導体;p−アミノスチレンなどのアミノスチレン類;6−アミノヘキシルコハク酸イミド、2−アミノエチルコハク酸イミド等のアミノ基含有エチレン性不飽和化合物、あるいはグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなど、マレイン酸のモノおよびジグリシジルエステル、フマル酸のモノおよびジグリシジルエステル、クロトン酸のモノおよびジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸のモノおよびジグリシジルエステル、イタコン酸のモノおよびグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸のモノおよびジグリシジルエステル、シトラコン酸のモノおよびジグリシジルエステル、エンド−シス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸(ナジック酸TM)のモノおよびジグリシジルエステル、エンド−シス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−メチル−2,3−ジカルボン酸(メチルナジック酸TM)のモノおよびジグリシジルエステル、アリルコハク酸のモノおよびジグリシジルエステルなどのジカルボン酸モノおよびジアルキルグリシジルエステル(モノグリシジルエステルの場合のアルキル基の炭素数1〜12)、p−スチレンカルボン酸のアルキルグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ペンテン、5,6−エポキシ−1−ヘキセン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド等のエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、あるいはビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、等のビニルシラン類、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン等のシリル基含有エチレン性不飽和化合物、あるいはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウム、マレイン酸ジナトリウム、マレイン酸ジカリウム、マレイン酸モノナトリウム、フマール酸ジナトリウム、イタコン酸ジリチウム、シトラコン酸ジアンモニウム、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸ナトリウム、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸グリシジルエステル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、フマール酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、シトラコン酸ジメチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸ジメチル等のカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩またはカルボン酸エステル、からなるカルボン酸誘導体が挙げられる。中でもカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩またはカルボン酸エステル、からなるカルボン酸誘導体が好ましい。
【0081】
[変性ポリオレフィン微粒子の製造方法]
本発明の変性ポリオレフィン微粒子は、前記したポリオレフィン微粒子とエチレン性不飽和結合含有化合物とを、(i)懸濁液の状態でラジカル開始剤の存在下に反応させる懸濁グラフト法、(ii)電子線等を利用する放射線グラフト法、等が利用できる。さらに未反応のエチレン性不飽和結合含有化合物を除去する意味で、グラフト変性後に、溶剤洗浄等により、未反応物、反応副生物を除去する工程を経ることが好ましい。
【0082】
上記(i)懸濁グラフト法により変性ポリオレフィン微粒子を製造するにあたっては、懸濁液を形成する反応溶媒はベンゼン、ビフェニル、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレンのような脂環族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロロエチレンのような塩素化炭化水素溶媒などを例示することができ、ベンゼン、ビフェニル、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンが好ましく使用される。また、これらの溶媒は単独あるいは混合して使用することができる。上記エチレン性不飽和結合含有化合物成分の使用割合は上記ポリオレフィン微粒子100重量部に対して通常0.1〜300重量部、好ましくは1〜100重量部の範囲である。
【0083】
上記ラジカル開始剤としては、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)−3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バラレート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール類;ジ−t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3などのジアルキルパーオキサイド類;アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m-トリオイルパーオキサオドなどのジアシルパーオキサイド類;t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウリレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t-ブチルパーオキシイソフタレート、2,5-ジメチル-2,5- ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシマレイックアシッド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクテートなどのパーオキシエステル類;t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5- ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類などの有機化過酸化物が通常使用され、その使用割合は上記ポリオレフィン微粒子100重量部に対して通常0.1〜100重量部の範囲である。
【0084】
懸濁グラフト法によるグラフト共重合は加熱下に実施され、その反応温度は通常50〜130℃、好ましくは80〜120℃の範囲である。反応終了後の混合物を、濾別、洗浄、乾燥することにより変性ポリオレフィン微粒子が得られる。
【0085】
上記(ii)放射線グラフト法には、予め前記ポリオレフィン微粒子に放射線を照射した後に、生成したラジカルを起点としてエチレン性不飽和結合含有化合物をグラフト重合させる、いわゆる前照射法と、エチレン性不飽和結合含有化合物溶液中で放射線を照射する、いわゆる同時照射法があるが、エチレン性不飽和結合含有化合物の単独重合を抑制する点で、前照射法が好ましい。また、前照射法であれば条件を調整することで、ポリオレフィン微粒子の最表面に選択的にエチレン性不飽和結合含有化合物を反応させることができる点でも好ましい。
【0086】
本発明で用いられる放射線はα、β、γ線、電子線などがあり、いずれも使用可能であるが、電子線あるいはγ線が適している。
【0087】
放射線の照射線量は、前記ポリオレフィン微粒子がポリエチレン微粒子の場合、通常は10kGy以上800kGy以下、好ましくは10kGy以上300kGy以下であり、これ以上の放射線量だとポリエチレン微粒子の劣化が激しくなり、これ未満であるとグラフト重合の起点となるラジカルの発生量が不充分となる点で好ましくない。
【0088】
ラジカルを発生させたポリオレフィン微粒子へのエチレン性不飽和結合含有化合物のグラフト重合における反応溶媒は、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類が好ましく使用される。
【0089】
上記エチレン性不飽和結合含有化合物成分の使用割合は上記ポリオレフィン微粒子100重量部に対して、通常0.1〜300重量部、好ましくは1〜100重量部である。
【0090】
放射線グラフト法によるグラフト共重合の反応温度は通常20〜80℃、好ましくは20〜50℃の範囲である。反応終了後の混合物を、濾別、洗浄、乾燥することにより変性ポリオレフィン微粒子が得られる。
【0091】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、前記ポリオレフィン微粒子および/または変性ポリオレフィン微粒子を各種樹脂に配合することにより得られる。
【0092】
本発明の樹脂組成物を構成する樹脂としては、特に限定されるものではなく、各種の樹脂を用いることができる。これらの中では合成樹脂として、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、およびポリカーボネート等が例として挙げられる。
【0093】
ポリアミドとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3−または1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)、m−またはp−キシリレンジアミン等の脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンまたは芳香族ジアミンなどのジアミン類と、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸類との重縮合によって得られるポリアミド、ε−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸の縮合によって得られるポリアミド、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタムから得られるポリアミド、あるいはこれらの成分からなる共重合ポリアミド、さらにはこれらのポリアミドの混合物などが挙げられる。このポリアミドの具体例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6110、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/66、ナイロン66/610、ナイロン6/11、芳香族ナイロン等が挙げられる。
【0094】
また、ポリエステルとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコール、ビスフェノール等の芳香族ジヒドロキシ化合物と、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸等の脂環式ジカルボン酸、あるいはこれらから選ばれる2種以上のジカルボン酸とから形成される結晶性の熱可塑性樹脂である。このポリエステルは、熱可塑性を示す限り、少量のトリオールやトリカルボン酸等の3価以上のポリヒドロキシ化合物やポリカルボン酸などで変性されていてもよい。このポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート・テレフタレート共重合体等が挙げられる。
【0095】
また、ポリアセタールとしては、例えば、ホルムアルデヒドの単独重合体、あるいはホルムアルデヒドの3量体であるトリオキサンと少量のエチレンオキシドもしくは1,3−ジオキサン等の環状エーテルとの共重合体等が挙げられ、これらは通常、ポリオキシメチレンとも呼ばれる結晶性の熱可塑性樹脂である。
【0096】
さらにポリカーボネートとしては、例えば、炭酸エステル結合を分子鎖中に有する高分子量重合体の中でも、芳香族ジオキシ化合物(ビスフェノール)、特にビスフェノールAを原料として合成される高分子量重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0097】
本発明の樹脂組成物は、例えば、以下のようにして調製することができる。すなわち、前記した合成樹脂と前記ポリオレフィン微粒子および/または変性ポリオレフィン微粒子をブレンダーなどを用いて混合物とした後、合成樹脂が溶融する温度で混練し、目的樹脂組成物を得ることができる。混練は、一軸押出機、二軸押出機、バンバリミキサー等を使用して行なうことができる。
【0098】
本発明の樹脂組成物の配合割合は、通常、合成樹脂99〜10重量%、好ましくは97〜30重量%に対して、本発明のポリオレフィン微粒子および/または変性ポリオレフィン微粒子1〜90重量%、好ましくは3〜70重量%の範囲である。このような数値範囲で配合することにより、得られる樹脂組成物は各種の用途に好ましく用いることができる。
【0099】
[各種用途]
本発明のポリオレフィン微粒子および変性ポリオレフィン微粒子は、摺動改良剤成分として、樹脂にコートする、あるいは樹脂に添加することにより、表面の摩擦特性を改善したゴム組成物を提供することができる。本発明のポリオレフィン微粒子および変性ポリオレフィン微粒子は従来のポリオレフィン微粒子と比較して、粒径が小さく、狭粒度分布であるため、上記ゴム組成物からなる成形体の表面の凹凸が微細かつ均一となり、相手材との緊密接触性の改善、および摺動操作に対する柔軟な作動を改善することができる。上記ゴム組成物は、自動車内装材、ガラスランチャンネル、ウェザーストリップ、摩擦伝導ベルト、および防舷材の各種用途に用いることができる。
【0100】
あるいは本発明のポリオレフィン微粒子および変性ポリオレフィン微粒子は、樹脂にコートする、あるいは樹脂に添加することにより、アンチブロッキング性を改善した樹脂組成物を提供することができる。本発明のポリオレフィン微粒子および変性ポリオレフィン微粒子は従来のポリオレフィン微粒子と比較して、粒径が小さく、狭粒度分布であるため、上記樹脂組成物からなるフィルムの表面の凹凸が微細かつ均一となり、アンチブロッキング性とフィルムの耐傷付き性を改善することができる。
【0101】
あるいは本発明のポリオレフィン微粒子および変性ポリオレフィン微粒子を焼結し、微多孔膜を提供することができる。本発明のポリオレフィン微粒子および変性ポリオレフィン微粒子は従来のポリオレフィン微粒子と比較して、粒径が小さいため、高空孔率、高通気性かつ強硬度の微多孔膜を得ることができる。上記微多孔膜は、電池用セパレータ、電解コンデンサー用隔膜、各種フィルター、プロトン伝導性膜、非プロトン性電解質膜、限外濾過膜、透湿防水衣料、逆浸透濾過膜、精密濾過膜、油吸収シート、マウスパッド、光拡散板、高周波用基板、ディスク支持部材、および研磨パッドの各種用途に用いることができる。
【0102】
また本発明のポリオレフィン微粒子および変性ポリオレフィン微粒子は、従来のポリオレフィン微粒子と比較して、粒径が小さく、高比表面積である特徴を有し、吸着剤、触媒担体、薬物などの送達と除放を担わせた担体、分散性の悪い微粒子物質を均一に分散させるための散布剤、人肌への良好な感触効果をもたらす化粧品添加剤の各種用途に用いることができる。
【0103】
本発明の樹脂組成物には必要に応じて、耐熱安定剤、耐候安定剤などの安定剤、架橋剤、架橋助剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、フィラー、鉱物油系軟化剤、石油樹脂、ワックスなどの添加物を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0104】
本発明の摺動部材は、前記本発明の樹脂組成物から形成されていることを特徴としている。すなわち、前記樹脂組成物を射出成形法、インジェクションブロー成形法、ダイレクトブロー成形法、Tダイ押出法、インフレーション法、プレス法などの成形法により、容器状、トレー状、シート状またはフィルム状などに成形することにより得ることができる。
【実施例】
【0105】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これら実施例に何ら限定されるものではない。
【0106】
[ポリオレフィン微粒子の製造]
(A)マグネシウム含有担体成分の調製
無水塩化マグネシウム95.2g(1.0mol)、2−エチルヘキシルアルコール390.6g(3.0mol)にデカンを加え全体を1000mLとし、130℃で2時間反応を行い均一溶液(成分(A2))を得た。次に、充分に窒素置換した内容積1000mlのフラスコに、成分(A2)100ml(マグネシウム原子換算で100mmol)、精製デカン 50mlおよびクロロベンゼン560mlを装入し、オルガノ社製クレアミックスCLM−0.8Sを用い、回転数15000rpmの攪拌下、液温を0℃に保持しながら、精製デカンで希釈したトリエチルアルミニウム110mmolを、30分間にわたって滴下装入した。その後、液温を4時間かけて80℃に昇温し、1時間反応させた。次いで、80℃を保持しながら、再び、精製デカン希釈のトリエチルアルミニウム202mmolを、30分間にわたって滴下装入し、その後さらに1時間加熱反応した。反応終了後、濾過にて固体部を採取し、トルエンにて充分洗浄し、100mlのトルエンを加えてマグネシウム含有担体成分のトルエンスラリーとした。
【0107】
(B)固体触媒成分の調製
充分に窒素置換した内容積1000mlのフラスコに、(A)マグネシウム含有担体成分をマグネシウム原子換算で20mmol、および精製トルエン600mlを装入し、攪拌下、室温に保持しながら、下記遷移金属化合物(A2−172)のトルエン溶液(0.0001mmol/ml)38.9mlを20分にわたって滴下装入した。1時間攪拌した後、濾過にて固体部を採取し、トルエンにて充分洗浄し、精製デカンを加えて固体触媒成分(B)の200mlデカンスラリーとした。
(超高分子量ポリエチレン微粒子の調製;平均粒径9.0μm)
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン500mlを装入し、室温でエチレン100リットル/hrを15分間流通させ、液相及び気相を飽和させた。続いて65℃に昇温した後、エチレンを12リットル/hrで流通させたまま、トリエチルアルミニウムのデカン溶液(Al原子で1.0mmol/ml)1.25ml、(B)固体触媒成分をZr原子換算で0.00008mmolを加え、温度を維持したまま3分間攪拌し、エマルゲンE−108(花王(株)製)40mgを加えてすぐ、エチレン圧の昇圧を開始した。10分かけてエチレン圧を0.8MPa・Gに昇圧し、圧を維持するようエチレンを供給しながら70℃で2時間重合を行なった。その後、オートクレーブを冷却し、エチレンを脱圧した。得られたポリマースラリーを濾過後、ヘキサンで洗浄し、80℃で10時間減圧乾燥することにより、ポリマー粒子40.9gを得た。生成したポリマー粒子を光学顕微鏡により観測したところ、平均粒径は9.0μmであった。また、得られたポリエチレン粒子を目開き37μmのメッシュ篩にかけたところ、100%が通過した。
【0108】
【化7】

【0109】
[無水マレイン酸変性ポリエチレン微粒子の製造]
内容積1Lの重合器に前記製造方法により得られたポリエチレン微粒子(以下UHMWPEと呼ぶ)50gとビフェニル1000gを投入し、80℃に昇温した。しかるのち無水マレイン酸(ポリエチレン微粒子:100重量部に対して30重量部)およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(ポリエチレン微粒子:100重量部に対して10重量部)を1時間かけて重合器に導入後、引き続き7時間攪拌し、合計8時間反応させた。
【0110】
反応終了後、反応物をアセトンで洗浄し未反応の無水マレイン酸、過酸化物の分解物等を除去し乾燥した。得られた無水マレイン酸変性ポリエチレン微粒子(MAH−UHMWPEと呼ぶ)の無水マレイン酸グラフト率は0.8重量%で、生成したポリマー粒子を光学顕微鏡により観測したところ、平均粒径は9.0μmであった。
【0111】
また、得られた無水マレイン酸変性ポリエチレン微粒子を目開き37μmのメッシュ篩にかけたところ、100%が通過した。さらに、得られた無水マレイン酸変性ポリエチレン微粒子をメタノール処理した後の赤外線吸収スペクトルは、メタノール処理前の赤外線吸収スペクトルと実質的に同一であった。
【0112】
[メタクリル酸グリシジル変性ポリエチレン微粒子の製造]
前記製造方法により得られたポリエチレン微粒子50gに200kGyの電子線を照射し、ラジカルを発生させた。この微粒子をメタクリル酸グリシジル6.2mlを含むメタノール150ml中に装入し、室温にて4時間攪拌することによりグラフト反応させた。
【0113】
反応終了後、反応物をメタノールで洗浄し未反応のメタクリル酸グリシジルを除去し乾燥した。得られたメタクリル酸グリシジル変性超高分子量ポリエチレン(GMA−UHMWPEと呼ぶ)のメタクリル酸グリシジルグラフト率は10重量%で、生成したポリマー粒子を光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は9.0μmであった。
【0114】
また、得られたメタクリル酸グリシジル変性ポリエチレン微粒子を目開き37μmのメッシュ篩にかけたところ、100%が通過した。さらに、得られたメタクリル酸グリシジル変性ポリエチレン微粒子をメタノール処理した後の赤外線吸収スペクトルは、メタノール処理前の赤外線吸収スペクトルと実質的に同一であった。
【0115】
[実施例1〜3および比較例1]
合成樹脂として、ナイロン6(以下「Ny6」と略す)(東レ(株)製、アミランCM−1017、商品名)を用いた。また添加剤として、本発明の添加剤UHMWPE、MAH−UHMWPE、GMA−UHMWPEおよび市販の超高分子量PE微粒子(粒径30μm;市販PEと省略)を用いた。これらを溶融混練した組成物を射出成形して試験片を作成し、以下の方法により物性値を測定した。
・MFR
ASTM D1238に準拠して、温度260℃、荷重2.16kgで測定した。
・IZOD衝撃強度
ASTM D256に準拠して、ノッチ付、厚さ:3.2mmの試験片を作製して測定した。
・破断強度
ASTM D638に準拠して、引張速度を10mm/minとして、破断抗張力(TS:kg/cm2)および破断点伸び(EL:%)を測定して破断強度の指標とした。
・摩擦係数、摩耗量
JIS K7218のA法に準拠して、鈴木式摩擦摩耗試験機を用いて、摩擦の相手材料として、SUS304製回転中空円筒を使用し、周速(V):10m/min、荷重1.0MPa、滑り距離3kmとして試験し、摩擦係数を測定した。試験後の比摩耗量を以下の式を用いて測定した。
(比摩耗量)=(樹脂摩耗体積(mm3))/{(周速(km/min))×(荷重(kg))×(試験時間(min))}
実施例1〜3および比較例1の上記物性値の測定結果を表1に示す。
比較例1は、添加する超高分子量ポリオレフィン微粒子の平均粒径を本発明の上限よりも大きくしたため、機械的強度に劣るものであった。
【0116】
【表1】

【0117】
(実施例4および比較例2)
オレフィン系エラストマー(商品名 C700B 三井化学(株)製)100重量部に対して、前記実施例で得た本発明の添加剤UHMWPE(実施例4)および、市販の超高分子量PE微粒子(市販PE)(比較例2)を40重量部添加し、これらを2軸押出機で溶融混練し、樹脂組成物のペレットを得た。
【0118】
上記のようにして得られた樹脂組成物のペレットを用いて、スクリュー径30mm、L/Dが28、圧縮比4.0のフルフライト型スクリューを有する1軸押出機と、上記樹脂組成物の調製に用いたオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)をスクリュー径50mm、L/Dが28、圧縮比4.0のフルフライト型スクリューを有する1軸押出機で共押出し、2層積層体を得た。このフィルムについて以下の試験方法で摩擦係数測定、摩擦性評価試験および押出シート加工性評価をした。
(1)摩擦係数
押し出された2層積層体のうち、上記樹脂組成物で形成される面について、ASTM D1894−75に準じ、200gの荷重をかけてガラスに対する静摩擦係数および動摩擦係数を測定した。
(2)耐摺動摩耗性
図1に示す摺動摩耗試験機において、前記積層体1に対し、ガラス摩耗子2を用いて、3kgの荷重をかけて100mmのストロークで10000回の往復摺動試験を行ない、試験片1の摩耗痕の深さを測定した。
(3)シート押出加工性
シート押出加工性の評価は上記の2層積層体の形状および表面状態を評価した。
【0119】
(実施例5および比較例3)
シングルサイト触媒存在下で得られたエチレン−α−オレフィン共重合体(商品名 エボリュー SP2040 (株)プライムポリマー製)100重量部に対して、前記実施例で得た本発明の添加剤UHMWPE(実施例5)および、市販の超高分子量PE微粒子(市販PE)(比較例3)を1.5重量部添加し、これらを2軸押出機で溶融混練し、樹脂組成物のペレットを得た。
【0120】
上記のようにして得られた樹脂組成物のペレットを用いて、ダイリップが装着されたTダイ付き押出機に供給し、ブレーカープレート手前で樹脂温度を200℃とし、その後、ブレーカープレートを通過した溶融樹脂組成物をTダイのダイリップからフィルム状に押し出し、押し出されたフィルムを、マット状の表面を有する表面温度が50℃のチルロールに当接させて、20m/分の速度で引き取り、厚さ50μmのフィルムを得た。このフィルムについて以下の試験方法で静摩擦係数測定、耐ブロッキング性試験および曇り度試験を実施した。
(1)静摩擦係数
JIS P8147に準拠して、フィルム表面同士の静摩擦係数を測定した。
(2)耐ブロッキング性
ASTM D−1893−67に準拠して、2枚の前記フィルムを重ね合わせ、0.3MPaの荷重をかけ70℃の環境で1分間放置した後、室温まで放冷し、剪断剥離強度を測定した。
(3)曇り度(ヘイズ)
JIS K7105に準拠して、フィルム試験片1枚を室温にて測定した。
【0121】
(実施例6)
前記実施例で得た本発明の添加剤UHMWPEおよび、市販の超高分子量PE微粒子(市販PE)を密閉できる容器に充填し、温度140℃で1時間加熱することで、成形ムラがなく、均一なシート状焼結体が得られた。
【0122】
上記のようにして得られたシート状焼結体を液体窒素中で割断して断面を形成し、その断面を電子顕微鏡を用いて観察し、焼結体の空孔径を求めた。また空孔率は得られたシート状焼結体の片面の面積(S)、厚み(D)、重量(M)、および焼結体の材料の比重(R)より、以下の(式2)で求められる。
【0123】
【数1】

【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明によれば、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂の機械的強度、熱的特性に悪影響を与えることなく、摺動特性を向上させることができる。上記熱可塑性樹脂より、摺動特性が必要とされる用途、例えば自動車部品、家電部品、精密機械部品などに使用することができる。
【符号の説明】
【0125】
1 積層体
2 ガラス摩耗子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(c)を満たすポリオレフィン微粒子。
(a)135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が1〜50dl/g
(b)平均粒径が3〜25μm
(c)目開き37μmメッシュ篩を少なくとも95重量%以上が通過
【請求項2】
前記ポリオレフィン微粒子に、エチレン性不飽和結合含有化合物を反応させ、下記(d),(e)をさらに満たす請求項1に記載のポリオレフィン微粒子。
(d)メタノール処理後の赤外線吸収スペクトルが、メタノール処理前の赤外線吸収スペクトルと実質的に同一
(e)エチレン性不飽和結合含有化合物由来の単位が、ポリオレフィン微粒子全体の0.05〜50wt%を占める
【請求項3】
前記エチレン性不飽和結合含有化合物が、エチレン性不飽和基を含有するカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩またはカルボン酸エステル、からなるカルボン酸誘導体であることを特徴とする請求項2に記載のポリオレフィン微粒子。
【請求項4】
前記(b)平均粒径が3〜10μmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン微粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン微粒子からなる摺動特性改良剤。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン微粒子を合成樹脂に配合してなる樹脂組成物。
【請求項7】
前記合成樹脂がポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネートから選ばれる1以上の合成樹脂である請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項6または7に記載の樹脂組成物を成形してなる摺動部材。

【図1】
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【公開番号】特開2011−80013(P2011−80013A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235434(P2009−235434)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】