説明

ポリオレフィン樹脂管

【課題】 屋外露出配管として使用しても酸化劣化が生じる懸念がないポリオレフィン樹脂管を提供する。
【解決手段】 ポリオレフィン樹脂本管1の外面に、耐候性を有する保護層2が設けられ、保護層2は、多孔質基材に、ペトロラタムを主成分としたコンパウンドを含浸させた材料、または、多孔質基材に、酸化重合型乾性油を主成分としたコンパウンドを含浸させた材料、または、多孔質基材に、ポリマー水分散液を含浸させた材料からなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポリオレフィン樹脂管、特に、ポリエチレン製埋設水道配管に、地中の有機溶剤や油類等の有害物質が浸透することを確実に防止できるポリオレフィン樹脂管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂管は、耐食性に優れていること、屈曲性に優れていること、地震時の地盤変位に対して追従できる伸びを有していること等の種々の優れた特徴を有し、ガス配管、給排水配管等の埋設配管に広く使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ポリオレフィン樹脂管を屋外露出配管として使用する場合、ポリオレフィン樹脂は、太陽光中の紫外線を触媒として、酸化劣化が生じる懸念がある。
【0004】
従って、この発明の目的は、屋外露出配管として使用しても酸化劣化が生じる懸念がないポリオレフィン樹脂管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0006】
請求項1に記載の発明は、ポリオレフィン樹脂本管の外面に、耐候性を有する保護層が設けられていることに特徴を有するものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、保護層は、多孔質基材に、ペトロラタムを主成分としたコンパウンドを含浸させた材料、または、多孔質基材に、酸化重合型乾性油を主成分としたコンパウンドを含浸させた材料、または、多孔質基材に、ポリマー水分散液を含浸させた材料であることに特徴を有するものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、保護層の外面に光遮断のための光遮断層が設けられていることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、屋外露出配管として使用しても酸化劣化が生じる懸念がないポリオレフィン樹脂管を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明のポリオレフィン樹脂管の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、この発明のポリオレフィン樹脂管を示す断面図、図2は、直管部にテープ状保護層を巻き付ける方法を示す図であり、(a)は、施工前を示す図、(b)は、施工後を示す図、図3は、電気融着継手部にテープ状保護層を巻き付ける方法を示す図であり、(a)は、施工前、(b)は、施工準備を示す図、(c)は、施工後を示す図、図4は、この発明の他のポリオレフィン樹脂管を示す断面図である。
【0012】
図1に示すように、この発明のポリオレフィン樹脂管は、耐候性を有する保護層2をポリオレフィン樹脂本管1の外面に巻き付けたものからなっている。保護層2を樹脂本管1に巻き付けることによって、紫外線の透過を防止でき且つ酸素の供給を無くすことができるので、屋外露出配管として使用しても酸化劣化が生じる懸念がない。
【0013】
保護層2は、多孔質基材に、ペトロラタムを主成分としたコンパウンドを含浸させた材料、または、多孔質基材に、酸化重合型乾性油を主成分としたコンパウンドを含浸させた材料、または、多孔質基材に、無機充填材を配合したポリマー水分散液からなるコンパウンドを含浸させた材料からなっている。
【0014】
また、ガス配管、給排水配管等は、長期にわたり使用するため、保護層自体が太陽光の紫外線を触媒として、酸化劣化しない耐候性を有する材料である必要がある。これは、ペトロラタムを主成分としたコンパウンド、酸化重合型乾物油を主成分としたコンパウンド、無機充填材を配合したポリマー水分散液からなるコンパウンドを用いることにより達成できる。
【0015】
ペトロラタムは、石油から作られ、乾性油は、酸化重合反応することにより、強靭な皮膜を形成する。
【0016】
ポリマー水分散液のポリマーとしては、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ゴム、塩素化ポリオレフィンやポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体やエチレン・プロピレン共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体やポリビニルブチラール、ポリブタジエンやエポキシ樹脂、アミノ系樹脂やウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂やアルキド系樹脂等が用いられる。
【0017】
また、保護層2をポリオレフィン樹脂配管に施工する場合、継手部の凹凸に対応するために、柔軟性のある施工性の良い材料が必要となる。これには、コンパウンドを含浸させる多孔質基材をテープ状のものとすると好適である。
【0018】
多孔質基材は、コンパウンドを保持する機能を有する。その材料は、特に限定されないが、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維の繊維からなる不織布、織布、フェルト等を用いることができる。
【0019】
テープ状保護層2の厚さは、0.1〜10mmが好適であり、0.5〜3mmが最適であり、巻き付けることにより施工される。このとき、テープ幅の1/10〜3/4重なり合わすと好適であり、1/3〜1/3が最適である。
【0020】
図2(b)に、図2(a)に示すポリオレフィン樹脂本管1の直管部に保護層2を螺旋上に巻き付けた状態を示す。
【0021】
図3(a)に示す電気融着継手3に保護層2を巻き付けるには、継手部の段差をマスチック4の充填により埋め、突出しているターミナル5を電気融着終了後に切断することにより容易に巻きつけることができる。
【0022】
図4に示すように、保護層2の耐久性を向上させるため、保護層2の上に光遮断層6を塗装等の手段により形成すると良い。
【0023】
光遮断層6の材料としては、特に限定されないが、ウレタン樹脂系塗料、シリコーン樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料、アミノ樹脂系塗料、アルキド樹脂系塗料、フェノール樹脂系塗料、ビニル樹脂系塗料、ラテックス系塗料、ゴム系塗料などが用いられる。
【0024】
光遮断層6の厚さは、10μm〜1mmが好適であり、15〜100μmが最適である。光遮断層6は、保護層2の施工後、塗装等により形成することができる。
【実施例】
【0025】
この発明を実施例によりさらに説明する。
【0026】
呼び径100のポリエチレン樹脂本管に、保護層を施工した場合の耐久性の結果を表1に示す。促進耐候性試験は、JISK7350−4に従って実施し、1000時間経過後の状況を調べることにより行った。
【0027】
【表1】

【0028】
表1から明らかなように、この発明の実施例1、2、3は、何れも、内部のポリエチレン樹脂本管に異常は見られず、ポリエチレン樹脂本管に保護層を施工することにより、屋外露出環境でも耐久性を有していることが分かった。これに対して、保護層および光遮断層がない比較例は、表面変色が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明のポリオレフィン樹脂管を示す断面図である。
【図2】直管部にテープ状保護層を巻き付ける方法を示す図であり、(a)は、施工前を示す図、(b)は、施工後を示す図である。
【図3】電気融着継手部にテープ状保護層を巻き付ける方法を示す図であり、(a)は、施工前、(b)は、施工準備を示す図、(c)は、施工後を示す図である。
【図4】この発明の他のポリオレフィン樹脂管を示す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1:ポリオレフィン樹脂本管
2:保護層
3:電気融着継手
4:マスチック
5:ターミナル
6:光遮断層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂本管の外面に、耐候性を有する保護層が設けられていることを特徴とするポリオレフィン樹脂管。
【請求項2】
前記保護層は、多孔質基材に、ペトロラタムを主成分としたコンパウンドを含浸させた材料、または、多孔質基材に、酸化重合型乾性油を主成分としたコンパウンドを含浸させた材料、または、多孔質基材に、ポリマー水分散液を含浸させた材料であることを特徴とする、請求項1記載のポリオレフィン樹脂管。
【請求項3】
前記保護層の外面に光遮断のための光遮断層が設けられていることを特徴とする、請求項1または2記載のポリオレフィン樹脂管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−327154(P2006−327154A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157579(P2005−157579)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000231877)日本鋳鉄管株式会社 (48)
【Fターム(参考)】