説明

ポリオレフィン系人工皮革

トップコート層と中間フォーム層と底布層とを含む多層構造を含む人工皮革。トップコート層は、1つ又はそれ以上の弾性化合物との組み合わせでプロピレン−アルファ−オレフィンを含み、フォーム層も、発泡剤に加えて、1つ又はそれ以上の弾性化合物との組み合わせでプロピレン−アルファ−オレフィンを含み、及び布層は、不織スパンボンド材料を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年7月16日出願の米国特許仮出願第61/226,082号の利益を主張するものである。
本発明は、人工皮革に関する。1つの態様において、本発明は、多層構造を含む人工皮革に関するが、もう1つの態様では、本発明は、最上表皮層と中間フォーム層と底布層とを含む前述の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン(PO)系樹脂、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など、から製造される人工皮革は、天然皮革及びポリビニルクロライド(PVC)又はキャストポリウレタン(PU)系皮革と比較して安価であり、PVC系又はPU系樹脂から製造される人工皮革の短所の大部分を回避するが、固有の一連の問題を有する。PO系樹脂は、可撓性PVC樹脂を用いて製造された人工皮革の柔らかさに匹敵するために、弾性樹脂をブレンドしてその人工皮革の柔らかさを増す又は硬さを減らす必要が概してある。しかし、すべての弾性材料がすべてのポリオレフィンと相溶性であるとは限らず、相溶性が問題にならない状況であっても最終製品における望ましい可撓性を達成するためにパラフィン油の使用を必要とすることが多い。さらに、弾性材料及びパラフィン油を含むPO系樹脂を用いて製造された人工皮革が、可撓性PVCを用いて製造された人工皮革のものと同様の硬さ及び可撓性を示すことができたとしても、PO系樹脂系の固有の特徴が、PVC系樹脂の代替品としてのそれらの使用の障害となる。これらの固有の特徴としては、高い融点、ロール加工時の急速な冷却(結晶化に起因)、粘着性(低分子量成分の存在の結果)、及び極性材料への非常に不良な接着が挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
1つの実施形態において、本発明は、底布層と最上表皮層及びフォーム層の少なくとも一方とを含む多層構造を含む人工皮革である。1つの実施形態において、本発明は、底布層と最上表皮層とを含む人工皮革である。1つの実施形態において、本発明は、底布層と被覆フォーム層とを含む人工皮革である。最上表皮層は、発泡されず、及び1つ又はそれ以上の弾性化合物との組み合わせでプロピレン−アルファ−オレフィンコポリマーを含み、フォーム層も1つ又はそれ以上の弾性化合物との組み合わせでプロピレン−アルファ−オレフィンを含み、並びに布層は、可撓性高分子材料を含む。
【0004】
1つの実施形態において、本発明は、最上表皮層と中間フォーム層と底布層とを含む多層構造を含む人工皮革である。最上表皮層は、発泡されず、及び1つ又はそれ以上の弾性化合物との組み合わせでプロピレン−アルファ−オレフィンコポリマーを含み、フォーム層も1つ又はそれ以上の弾性化合物との組み合わせでプロピレン−アルファ−オレフィンを含み、並びに布層は、可撓性高分子材料を含む。
【0005】
1つの実施形態において、本発明は、
A.プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーと(i)スチレン系ブロックコポリマー、(ii)均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、(iii)オレフィンブロックコポリマー及び(iv)ランダムポリプロピレンコポリマーの少なくとも1つとを含む最上表皮層と、
B.プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーと(i)スチレン系ブロックコポリマー、(ii)均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、(iii)オレフィンブロックコポリマー及び(iv)ランダムポリプロピレンコポリマーの少なくとも1つとを含む中間フォーム層と、
C.可撓性高分子材料を含む底布層と
を含む、多層構造である。
【0006】
1つの実施形態において、多層構造は、最上表皮層と接触しているプライマー層、例えば塩素化ポリプロピレン(CPP)、及びプライマー層と接触しているトップコート層、例えばポリウレタン(PU)をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1A】本発明の2層構造の第一の略図である。
【図1B】本発明の2層構造の第二の略図である。
【図1C】本発明の3層構造の略図である。
【図1D】本発明の5層構造の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(定義)
米国特許実務のため、いずれの参照する特許、特許出願又は出版物の内容も、それら全体が、とりわけ合成技術、定義(本開示に具体的に提供するいずれの定義とも矛盾のない程度に)及び当分野における一般的知識の開示に関して、参照により組み込まれる(又はその等価の米国バージョンが参照により同じように組み込まれる)。
【0009】
本開示における数値範囲は近似的であり、従って、別の指示がない限り、その範囲外の値を含むことがある。数値範囲は、最低値からの及び最低値を含めて最高値までのすべての値を1単位刻みで含むが、但し、任意の低い方の値と任意の高い方の値の間に少なくとも2単位の離隔があることを条件とする。
【0010】
「ポリマー」は、モノマーを、同じタイプのものであろうと異なるタイプのものであろうと、重合することにより調製された高分子化合物を意味する。従って、一般用語ポリマーは、1つのタイプのモノマーのみから調製されたポリマーを指すために通常用いられる用語ホモポリマー、及び下で定義する用語共重合体を包含する。
【0011】
「共重合体」、「コポリマー」及びこれらに類する用語は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製されたポリマーを意味する。これらの一般用語は、2つの異なるタイプのモノマーから調製されたポリマーと、2つより多くの異なるタイプのモノマーから調製されたポリマー、例えばターポリマー、テトラポリマーなどの両方を指す。
【0012】
「層」及びこれに類する用語は、表面に塗り広げられた又は表面を被覆する化合物、ポリマー又は組成物の単一の厚み又はコーティングを意味する。
【0013】
「多層構造」及び類似の用語は、2つ又はそれ以上の層を含む構造を意味する。本発明の多層構造は、最上表皮層、中間フォーム層、底布層、並びに場合により、プライマー層及びトップコート層を含む。各層は、上部外表面と下部外表面を含み、典型的には及び好ましくは、トップコート層の下部外表面は、中間フォーム層の上部外表面と接触しており、並びに中間フォーム層の下部外表面は、底布層の上部外表面と接触している。自由選択のプライマー及びトップコート層が存在する場合には、プライマー層の下部外表面は、最上表皮層の上部外表面と接触しており、及びプライマー層の上部外表面は、トップコート層の下部外表面と接触している。「接触している」は、介在層、例えば接着剤層が2つの外表面間に存在しないことを意味する。
【0014】
「平面表面」、「外表面」、「上部表面」、「下部表面」及びこれらに類する用語を「端表面」と区別して用いる。形状又は外形が長方形である場合、層は、4つの端表面(各対が他方の対を直角に交差する、対向する2対の端表面)によってつながれた2つの対向する平面表面を含むであろう。外形が円形である場合には、層は、1つの連続した端表面によってつながれた2つの対向する平面表面を含むであろう。多層構造は、任意のサイズ及び形状のものであり得、従って、平面表面及び端表面もそうであり得、例えば薄い又は厚い、多角形又は円形、平坦又は波状などのものであり得る。
【0015】
「カレンダー加工」及びこれに類する用語は、本発明の文脈では、溶融ポリマーを一連のローラーに通して該ポリマーを合着させ、扁平及び平坦にしてシート又はフィルムすることによる、溶融ポリマーをシートに変換する機械的プロセスを意味する。
【0016】
「ラミネート加工」及びこれに類する用語は、フィルム、典型的にはプラスチック又はこれに類する材料のフィルムを、別のフィルムであり得る基材につけるプロセスを意味する。接着剤を用いて又は接着剤なしでフィルムを基材につけることができる。接着剤なしでの場合、フィルム及び/又は基材を加熱して、熱又は溶融ラミネーションを果たすことができる。ラミネーションは、ラミネート加工プロセスの生産品であり、これらの生産品は、多層である。すなわち、それらは少なくとも2つの層、基層又は基材層と接触しているフィルム層を含む。
【0017】
「不織布」及びこれに類する用語は、化学的、機械的、熱又は溶媒処理によって互いに結合された長繊維から作られる布又はこれに類する材料を意味する。この用語は、織られても編まれてもいない、フェルトのような、布を示すために用いる。
【0018】
「スパンボンド布」及びこれに類する用語は、押出紡糸フィラメントを捕集収ベルト上に均一、ランダムに堆積させ、その後それらの繊維を接着することにより製造される布又はこれに類する材料を意味する。
【0019】
「フォーム」及びこれに類する用語は、液体又は固体中に多数の気泡を捕捉することによって形成される物質を意味する。
【0020】
(多層構造)
図1Aは、最上表皮層11が底布層13の上にあり、該底布層13と接触している、2層構造10Aの略図である。各層は、2つの対向する外表面、最上表皮層11の上部外表面11a及び下部外表面11b並びに底布層13の上部外表面13a及び下部外表面13bを含む。下部外表面11bは、上部外表面13aと接触している。上部外表面11a及び下部外表面13bは、環境に解放されている(すなわち、露出している)か、場合により、別の表面と接触している。各層の厚みは、都合に合わせて様々であり得、その構造の総厚も様々であり得る。典型的には、最上表皮層の厚みは、0.05から3、さらに典型的には0.08から2及びさらにいっそう典型的には0.1から1、ミリメートル(mm)であり、並びに底布層の厚みは、0.05から3、さらに典型的には0.08から2.5及びさらにいっそう典型的には0.1から2、mmである。全構造の厚みは、典型的には0.1から6、さらに典型的には0.15から5及びさらにいっそう典型的には0.2から3、mmの厚みである。
【0021】
図1Bは、フォーム層12が底布層13の上にあり、該底布層13と接触している、2層構造10Bの略図である。各層は、2つの対向する外表面、フォーム層11の上部外表面12a及び下部外表面12b並びに底布層13の上部外表面13a及び下部外表面13bを含む。下部外表面12bは、上部外表面13aと接触している。上部外表面12a及び下部外表面13bは、環境に解放されている(すなわち、露出している)か、場合により、別の表面と接触している。各層の厚みは、都合に合わせて様々であり得、その構造の総厚も様々であり得る。典型的には、フォーム層の厚みは、0.05から3、さらに典型的には0.08から2.5及びさらにいっそう典型的には0.1から2、ミリメートル(mm)であり、並びに底布層の厚みは、0.05から3、さらに典型的には0.08から2.5及びさらにいっそう典型的には0.1から2、mmである。全構造の厚みは、典型的には0.1から6、さらに典型的には0.15から5及びさらにいっそう典型的には0.2から4、mmの厚みである。
【0022】
図1Cは、最上表皮層11が中間フォーム層12の上にあり、該中間フォーム層12と接触しており、該中間フォーム層12が、底布層13の上にあり、該底布層13と接触している、3層構造10Cの略図である。各層は、2つの対向する外表面、最上表皮層11の上部外表面11a及び下部外表面11b、中間フォーム層12の上部外表面12a及び下部外表面12b、並びに底布層13の上部外表面13a及び下部外表面13bを含む。下部外表面11bは、上部外表面12aと接触しており、及び下部外表面12bは、上部外表面13aと接触している。上部外表面11a及び下部外表面13bは、環境に解放されている(すなわち、露出している)か、場合により、別の表面と接触している。各層の厚みは、都合に合わせて様々であり得、その構造の総厚も様々であり得る。典型的には、最上表皮層の厚みは、0.05から3、さらに典型的には0.08から2及びさらにいっそう典型的には0.1から1、ミリメートル(mm)であり、中間フォーム層の厚みは、0.05から3、さらに典型的には0.08から2.5及びさらにいっそう典型的には0.1から2、mmであり、並びに底布層の厚みは、0.5から3、さらに典型的には0.08から2.5及びさらにいっそう典型的には0.1から2、mmである。全構造の厚みは、典型的には0.15から9、さらに典型的には0.24から7及びさらにいっそう典型的には0.3から5、mmの厚みである。
【0023】
図1Dは、自由選択のプライマー層14が、3層構造10Cの最上表皮層11の上にあり、該最上表皮層11と接触しており、並びに自由選択のトップコート層15が、プライマー層14の上にあり、該プライマー層14と接触している、5層構造10Dの略図である。自由選択の各層は、2つの対向する外表面、自由選択のトップコート層15の上部外表面15a及び下部外表面15b、並びに自由選択のプライマー層14の上部外表面14a及び下部外表面14bを含む。下部外表面15bは、上部外表面14aと接触しており、及び下部外表面14bは、上部外表面11aと接触している。この実施形態において、上部外表面15a及び下部外表面13bは、環境に露出しているか、場合により、別の構造の外表面と接触している。自由選択の各層の厚みは、都合に合わせて様々であり得、自由選択のトップコート層の厚みは、典型的には0.1から100、さらに典型的には1から50及びさらにいっそう典型的には3から10、マクロメートル(μm)であり、自由選択のプライマー層の厚みは、典型的には0.1から100、さらに典型的には1から50及びさらにいっそう典型的には3から10、μmである。ここでも典型的な3層構造の厚みは多種多様であり得るが、典型的には0.15から9、さらに典型的には0.24から7及びさらにいっそう典型的には0.3から5、mmの厚みである(自由選択のトップコート層及びプライマー層は、全(5層)構造の厚みを殆ど増さない)。トップコート層の厚みは、典型的には最上表皮層の厚みより少ない。
【0024】
本発明の2又は3層構造は、ある層を別の層に任意の順序でラミネートする、すなわち、底布層に最上表皮層をラミネートする、又は底布層にフォーム層をラミネートし、場合によりその後、そのフォーム層に最上表皮層をラミネートする、又は中間フォーム層に最上表皮層をラミネートし、その後、その中間フォーム層に底布層をラミネートする、又は中間フォーム層に最上表皮層と底布層を同時にラミネートする、ことによって製造される。多層構造が、自由選択のプライマー及びトップコート層も含む場合、必然的にではないが通常は最上皮、中間フォーム及び底布層を互いにラミネートした後にこれらをつける。典型的には、プライマー層を最上表皮層の上部外表面にロール塗工し、その後、そのプライマー層にトップコート材を塗工する。2及び3層構造、すなわち図1A、1B及び1Cのそれぞれ構造10A、10B及び10Cは、非接着性構造である。すなわち、それらはいずれの層間にも接着剤層を含有しない、すなわち、フォーム層と最上表皮層の間に並びにフォーム層及び最上表皮層と接触している、又はフォーム層と底布層の間に並びにフォーム層及び底布層と接触している、又は最上表皮層と底布層の間に並びに最上表皮層及び底布層と接触している接着層を含有しない。
【0025】
本発明の多層構造は、最低限2層、すなわち、布層と、プロピレン/アルファ−オレフィン系フォーム層及びプロピレン/アルファ−オレフィン系最上表皮層の少なくとも一方とを含む。場合により、多層構造は、最上表皮及び/又は布層の露出した外表面につけられた追加の層を含む場合がある。1つの実施形態において、プライマー、例えば、ハロゲン化ポリオレフィン、例えば塩素化ポリプロピレン(CPP)を最上表皮層の露出している外表面につけ、及びそのプライマー層の露出した外表面にトップコート材、例えばポリウレタンをつける。裏又は布層の目的は、構造、すなわち皮革の成形に耐えること、及び高温、例えば220℃又はそれ以上での中間フォーム層の発泡に対する安定性を持たせることである。存在する場合、発泡層は、多層構造に可撓性をもたらし、クッション性、柔軟性、断熱性、軽量及び手触りももたらす。存在する場合、最上表皮層は、UV線、熱及び他の屋外暴露要因に対する保護をもたらし、並びにそれは、可視機能性、例えば印刷、浮出し、色及び/又は光沢を有することがある。トップコート層の目的は、最上表皮層及び構造全体を掻き傷、擦り傷及び摩耗から保護すること、文字及び図案を表面に施すこと、及び美的に快い仕上げをもたらすことである。プライマー層の目的は、トップコート層の最上表皮層への取り付けを助長することである。
【0026】
1つの実施形態において、本発明の多層構造は、以下の特徴の少なくとも1つを特徴とする。
1.ポリオレフィン系配合物を使用して物理的特性、天然皮革の手触り及び浮出し保持特性を模倣する、非ハロゲン化配合物(本発明の人工皮革がプライマー層にハロゲン化炭化水素を含む実施形態の場合、該人工皮革中のハロゲンの量は、PVC系人工皮革中のハロゲンの量と比較して、該皮革の再循環性に負の影響を、あったとしても、少ししか及ぼさないようなわずかなものである);
2.移行性可塑剤の排除;
3.PU系及びPVC系配合物に比べて低減された密度及び重量、並びに配合物からのPU及びPVC化合物の排除;
4.UV安定性及び非黄変性;
5.既存のスクラップの回収及び再加工技術を用いて完全に再循環可能;
6.現行の人工皮革配合剤に比べて匹敵する物理的及び機械的特性
7.良好な手触り、例えば柔らかさ、滑らかさなど、及び可撓性のための、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマー系フォーム層;
8.プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマー系トップコート層;及び
9.PU又はTPU系皮革と比較して野外暴露に起因する加水分解排除又は低減。
一定の実施形態において、多層構造は、これらの特徴の2、3、4、5、6、7、8又は9つすべてを特徴とする。
【0027】
(最上表皮層)
最上表皮層(図1A、1C及び1D中の層11)は、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマー、好ましくはプロピレン/エチレンコポリマーと、(i)スチレン系ブロックコポリマー、(ii)均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、(iii)オレフィンブロックコポリマー及び(iv)ランダムポリプロピレンコポリマーの少なくとも1つとを含む。1つの実施形態において、最上表皮層は、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーと、(i)スチレン系ブロックコポリマー、(ii)均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、(iii)オレフィンブロックコポリマー及び(iv)ランダムポリプロピレンコポリマーの少なくとも2つ又は少なくとも3つ又は4つすべてとを含む。最上表皮層は、単一のプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーを含むことがあり、又は2つ若しくはそれ以上のプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーのブレンドを含むことがある。同様に、(i)スチレン系ブロックコポリマー、(ii)均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、(iii)オレフィンブロックコポリマー及び(iv)ランダムポリプロピレンコポリマーのそれぞれは、ニートで存在することがあり、又は2つ若しくはそれ以上のコポリマーのブレンドとして存在することがある。最上表皮層は、自由選択の1つ又はそれ以上の添加剤、例えば、加工助剤、エキステンダー、ブロッキング剤、顔料及び/又は染料、酸化防止剤、UV安定剤又は吸収剤、難燃剤、フィラー(例えば、タルク、炭酸カルシウム)、並びにこれらに類するものも含むことがある。
【0028】
最上表皮層は、典型的に、少なくとも10、さらに典型的には少なくとも20及びさらにいっそう典型的には少なくとも30、重量パーセント(重量%)プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーを含む。トップコート層中のプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーの最大量は、典型的には90重量%を超えず、さらに典型的には80重量%を超えず、及びさらにいっそう典型的には70重量%を超えない。
【0029】
最上表皮層中の(i)スチレン系ブロックコポリマー、(ii)均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、(iii)オレフィンブロックコポリマー及び(iv)ランダムポリプロピレンコポリマーの総量は、典型的には少なくとも10、さらに典型的には少なくとも20及びさらにいっそう典型的には少なくとも30、重量%である。最上表皮層中の(i)スチレン系ブロックコポリマー、(ii)均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、(iii)オレフィンブロックコポリマー及び(iv)ランダムポリプロピレンコポリマーの最大総量は、典型的には90重量%を超えず、さらに典型的には80重量%を超えず、及びさらにいっそう典型的には70重量%を超えない。
【0030】
仮に存在する場合、最上表皮層中に存在する自由選択の接着剤の総量は、典型的には、ゼロphrより多く、さらに典型的には少なくとも1phr、及びさらにいっそう典型的には少なくとも2phrである(phr=樹脂100部に対する部数(parts per hundred resin))。仮に存在する場合、最上表皮層中の自由選択の接着剤の総量は、典型的には10phrを超えず、さらに典型的には7phrを超えず、及びさらにいっそう典型的には5phrを超えない。
【0031】
仮に存在する場合、最上表皮層中の自由選択のフィラーの総量は、典型的にはゼロ重量パーセント(重量%)より多く、さらに典型的には少なくとも5重量%、及びさらにいっそう典型的には少なくとも10重量%である。仮に存在する場合、最上表皮層中の自由選択の接着剤の総量は、典型的には60重量%を超えず、さらに典型的には40重量%を超えず、及びさらにいっそう典型的には20重量%を超えない。
【0032】
最上表皮層は、任意の従来の混合装置、例えばバンバリーニーダー又は任意の適する押出機において、少なくとも実質的に均質な混合物を製造する条件下及び時間、個々の成分を互いにブレンド又は配合すること、及びその後、シートを形成するための従来の機器及び条件を用いてその混合物をカレンダー加工することによって、概して調製する。その後、従来のラミネート加工用機器及び条件を用いて、そのシートを中間フォーム層にラミネートする。
【0033】
(フォーム層)
フォーム又は中間フォーム層(図1B〜1D中の層12)も、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマー、好ましくはプロピレン/エチレンコポリマーと、(i)スチレン系ブロックコポリマー、(ii)均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、(iii)オレフィンブロックコポリマー及び(iv)ランダムポリプロピレンコポリマーの少なくとも1つとを含む。一定の実施形態において、中間フォーム層は、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーと、成分(i)〜(iv)の少なくとも2、3又は4つすべてとを含む。中間フォーム層は、単一のプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーを含むことがあり、又は2つ若しくはそれ以上のプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーのブレンドを含むことがある。同様に、(i)スチレン系ブロックコポリマー、(ii)均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、(iii)オレフィンブロックコポリマー及び(iv)ランダムポリプロピレンコポリマーのそれぞれは、ニートで存在することがあり、又は2つ若しくはそれ以上のコポリマーのブレンドとして存在することがある。中間フォーム層は、分解した発泡剤からのガス及び任意の未反応残留発泡剤も含むであろう。中間フォーム層は、自由選択の1つ又はそれ以上の添加剤、例えば、加工助剤、エキステンダー、ブロッキング剤、顔料及び/又は染料、酸化防止剤、UV安定剤及び/又は吸収剤、難燃剤、フィラー(例えば、タルク、炭酸カルシウム)、並びにこれらに類するものも含むことがある。
【0034】
中間フォーム層は、典型的に、少なくとも30、さらに典型的には少なくとも40及びさらにいっそう典型的には少なくとも50、重量パーセント(重量%)プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーを含む。中間フォーム層中のプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーの最大量は、典型的には90重量%を超えず、さらに典型的には80重量%を超えず、及びさらにいっそう典型的には70重量%を超えない。中間フォーム層は、発泡プロセスに起因し得るガス及び副産物を除けば、最上表皮層と組成的に同じであり得る。
【0035】
中間フォーム層中の(i)スチレン系ブロックコポリマー、(ii)均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、(iii)オレフィンブロックコポリマー及び(iv)ランダムポリプロピレンコポリマーの総量は、典型的には少なくとも10、さらに典型的には少なくとも20及びさらにいっそう典型的には少なくとも30、重量%である。中間フォーム層中の(i)スチレン系ブロックコポリマー、(ii)均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、(iii)オレフィンブロックコポリマー及び(iv)ランダムポリプロピレンコポリマーの最大総量は、典型的には70重量%を超えず、さらに典型的には60重量%を超えず、及びさらにいっそう典型的には50重量%を超えない。
【0036】
一般に、発泡剤は、発泡させるべき樹脂組成物に、0.1から30、好ましくは1から20及びさらに好ましくは2から10、phrにわたる量で導入する。典型的には、発泡剤を溶融流に、その活性化を抑制するために十分な、すなわち、発泡剤の導入中及びその組成物の後続の加工中の溶融流の発泡を、その溶融流を発泡する準備が整うまで抑制するために十分な、圧力下で導入する。
【0037】
仮に存在する場合、フォーム層中に存在する自由選択の接着剤の総量は、典型的には、ゼロphrより多く、さらに典型的には少なくとも1phr、及びさらにいっそう典型的には少なくとも2phrである。仮に存在する場合、フォーム層中の自由選択の接着剤の総量は、典型的には10phrを超えず、さらに典型的には7phrを超えず、及びさらにいっそう典型的には5phrを超えない。
【0038】
仮に存在する場合、フォーム層中の自由選択のフィラーの総量は、典型的にはゼロ重量パーセント(重量%)より多く、さらに典型的には少なくとも5重量%、及びさらにいっそう典型的には少なくとも10重量%である。仮に存在する場合、フォーム層中の自由選択のフィラーの総量は、典型的には60重量%を超えず、さらに典型的には40重量%を超えず、及びさらにいっそう典型的には20重量%を超えない。
【0039】
フォーム層は、個々の成分を任意の従来の混合装置、例えばバンバリーニーダー又は任意の適する押出機において、少なくとも実質的に均質な混合物を製造する条件下及び時間、互いにブレンド又は配合すること、シートを形成するための従来の機器及び条件を用いてその混合物をカレンダー加工すること、そしてその後、従来のラミネーション機器及び条件を用いてそのシートをトップコート層及び/又は底布層に熱ラミネートすることによって、概して調製する。フォーム層は、典型的には、それをトップコート層及び底布層の少なくとも一方にラミネートした後まで、好ましくは両方の層にラミネートするまで(3層又はそれ以上の層構造の場合)、発泡条件に付さない。発泡条件は、非常に微細で規則正しいセルが層全体にわたって形成されるような条件である。典型的な発泡条件としては、220℃又はそれ以上のオーブン温度及び100〜120秒のオーブン滞在時間が挙げられる。発泡効率(foam efficiency)[すなわち、発泡体積の原(非発泡)体積に対する比率]は、厚み比に基づくものであり、典型的には50から350、さらに典型的には150から250である。シートは、典型的に、5〜90キログラム重毎平方センチメートル(kgf/cm2)の引張強度、100〜1000%の伸び及び5〜50kgf/cmの引裂強度を示す。
【0040】
(底布層)
底布層は、織られている、不織である、編まれている、平編みされている、スパンボンドされていることなどがある可撓性高分子材料を含み、それは、天然及び/又は合成繊維を含むことがある。1つの実施形態において、布層は、100〜500、さらに典型的には150〜400及びさらにいっそう典型的には200〜350、グラム毎平方メートル(g/m)の不織高分子スパンボンド材料である。本発明の実施の際に使用することができる布としては、綿、絹、並びにポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン(例えば、スパンデックス材料)及びこれらに類するものに基づく様々な合成繊維が挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、好ましい布は、ポリエステル、ポリエチレン又はポリプロピレンから調製される。その布を予備ラミネーション処理、例えばコロナ表目処理、含浸などに付すことがあり、又は付さないことがあり、そして最後にフォーム層又は最上表皮層をそれに熱ラミネートする。
【0041】
(プロピレン−アルファ−オレフィンコポリマー)
最上表皮及び中間フォーム層のベースポリマーは、実質的にアイソタクチックなプロピレン配列を有することを特徴とするプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーである。「実質的にアイソタクチックなプロピレン配列」は、配列が、13C NMRにより測定される、0.85より大きい、代替実施形態では0.90より大きい、もう1つの代替実施形態では0.92より大きい、及びもう1つの代替実施形態では0.93より大きい、アイソタクチックトライアッド(mm)を有することを意味する。アイソタクチックトライアッドは、当分野において周知であり、例えば、米国特許第5,504,172号及び国際公開第00/01745号に記載されており、これらは、13C NMRスペクトルにより決定されるコポリマー分子鎖中のトライアッド単位の点からアイソタクチック配列に言及している。
【0042】
プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、ASTM D−1238(230℃/2.16kgで)に従って測定して、0.1から25g/10分の範囲のメルト・フロー・レート(MFR)を有し得る。0.1g/10分から25g/10分までのすべての個々の値及び部分範囲がこの範囲に含まれ、この範囲によって開示される;例えば、MFRは、0.1g/10分、0.2g/10分又は0.5g/10分の下限から、25g/10分、15g/10分、10g/10分、8g/10分又は5g/10分の上限までであり得る。例えば、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、0.1から10g/10分の範囲のMFRを有することがあり;又はプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、0.2から10g/10分の範囲のMFRを有することがある。
【0043】
プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、プロピレン及び1つ又はそれ以上のアルファ−オレフィンコモノマーから誘導された単位を含む。プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーを製造するために利用される例示的コモノマーは、C及びCからC10アルファ−オレフィン;例えば、C、C、C及びCアルファ−オレフィンである。プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、1又はそれ以上のアルファ−オレフィンコモノマーから誘導された、1から30重量%の1つ又はそれ以上の単位を含む。
【0044】
プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、3.5若しくはそれ以下又は3.0若しくはそれ以下又は1.8から3.0の、数平均分子量で割った重量平均分子量(M/M)として定義される、分子量分布(MWD)を有する。
【0045】
そのようなプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、米国特許第6,960,635号及び同第6,525,157号にさらに記載されている。そのようなプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、The Dow Chemical Companyから商品名VERSIFYで、又はExxonMobil Chemical Companyから商品名VISTAMAXXで市販されている。
【0046】
(スチレン系ブロックコポリマー)
本発明に適するスチレン系ブロックコポリマーは、欧州特許第0 712 892号B1、国際公開第2004/041538号A1、米国特許第6,582,829号B1、米国特許出願公開第2004/0087235号A1、米国特許出願公開第2004/0122408号A1、米国特許出願公開第2004/0122409号A1、並びに米国特許第4,789,699号、同第5,093,422号及び同第5,332,613号に記載されている。
【0047】
一般に、本発明に適する水素添加スチレン系ブロックコポリマーは、20%未満の残留エチレン不飽和を含む飽和共役ジエンのブロック、好ましくは飽和ポリブタジエンブロック、によって隔てられた少なくとも2つのモノ−アルケニルアレーンブロック、好ましくは2つのポリスチレンブロックを有する。好ましいスチレン系ブロックコポリマーは線状構造を有するが、幾つかの実施形態では、分岐若しくは放射状ポリマー又は多官能化ブロックコポリマーが有用な化合物になる(アミン官能化スチレン系ブロックコポリマーは、一般に、本発明の人工皮革の製造に好ましくない)。
【0048】
典型的に、ポリスチレン−飽和ポリブタジエン−ポリスチレン及びポリスチレン−飽和ポリイソプレン−ポリスチレンブロックコポリマーは、5,000から35,000の数平均分子量を有するポリスチレン末端ブロックと、20,000から170,000の数平均分子量を有する飽和ポリブタジエン又は飽和ポリイソプレンとを含む。飽和ポリブタジエンブロックは、好ましくは35〜55% 1,2−配置を有し、及び飽和ポリイソプレンブロックは、好ましくは85%より多く1,4配置を含む。
【0049】
スチレン系ブロックコポリマーの全数平均分子量は、該コポリマーが線状構造を有する場合、好ましくは30,000から250,000である。そのようなブロックコポリマーは、典型的には10重量%から65重量%、さらに典型的には10重量%から40重量%の平均ポリスチレン含量を有する。
【0050】
本発明の一定の実施形態において有用なSEBS(Sはスチレンであり、Eはエチレンであり、及びBはブチレンである)及びSEPS(Pはプロピレンである)ブロックコポリマーは、Kraton Polymers、Asahi Kasei及びKuraray Americaから入手できる。
【0051】
(均一に分岐されたエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー)
本発明の実施の際に有用な均一に分岐されたエチレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、シングルサイト触媒、例えばメタロセン触媒又は幾何拘束型触媒を用いて製造され、並びに典型的には105C未満、好ましくは90C未満、さらに好ましくは85C未満、さらにいっそう好ましくは80C未満及びなおいっそう好ましくは75C未満の融点を有する。この融点は、例えば米国特許第5,783,638号に記載されているように、示差走査熱分析(DSC)によって測定される。低い融点を有するそのようなエチレン/α−オレフィンコポリマーは、本発明の人工皮革の作製に有用な、望ましい可撓性及び熱可塑性を多くの場合を示す。
【0052】
α−オレフィンは、好ましくは、C3〜20線状、分岐又は環状α−オレフィンである。C3〜20α−オレフィンの例としては、プロペン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン及び1−オクタデセンが挙げられる。α−オレフィンは、環状構造、例えばシクロヘキサン又はシクロペンタンも含有することがあり、その結果、3−シクロヘキシル−1−プロペン(アリルシクロヘキサン)及びビニルシクロヘキサンなどのα−オレフィンとなることがある。この用語の古典的な意味ではα−オレフィンではないが、本発明のために、一定の環状オレフィン、例えばノルボルネン及び関連オレフィンはα−オレフィンであり、上で説明したα−オレフィンの幾つか又はすべての代わりにそれらを用いることができる。類似して、スチレン及びその関連オレフィン(例えば、α−メチルスチレンなど)は、本発明のためにはα−オレフィンである。実例となる均一に分岐されたエチレン/アルファ−オレフィンコポリマーとしては、エチレン/プロピレン、エチレン/ブテン、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/1−オクテン、エチレン/スチレン、及びこれらに類するものが挙げられる。実例となるターポリマーとしては、エチレン/プロピレン/1−オクテン、エチレン/プロピレン/ブテン、エチレン/ブテン/1−オクテン、及びエチレン/ブテン/スチレンが挙げられる。コポリマーは、ランダムであることもあり、又はブロッキーであることもある。
【0053】
本発明において有用な均一に分岐されたエチレン/アルファ−オレフィン共重合体のさらに具体的な例としては、均一に分岐された線状エチレン/α−オレフィンコポリマー(例えば、Mitsui Petrochemicals Company LimitedによるTAFMER(登録商標)及びExxon Chemical CompanyによるEXACT(登録商標))、及び均一に分岐された、実質的に線状のエチレン/α−オレフィンポリマー(例えば、The Dow Chemical Companyから入手できるAFFINITY(登録商標)及びENGAGE(登録商標))が挙げられる。実質的に線状のエチレンコポリマーが特に好ましく、これらは、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号及び同第5,986,028号に、より詳細に記載されている。任意のこれらの共重合体のブレンドも本発明の実施の際に使用することができる。
【0054】
(オレフィンブロックコポリマー)
本発明の実施の際に使用することができるオレフィンブロックコポリマーは、マルチブロック又はセグメント化コポリマーである。これらは、線状に連結された2つ又はそれ以上の化学的に異なる領域又はセグメント(「ブロック」と呼ぶ)を含むポリマー、すなわち、ペンダント又はグラフトされた様式ではなく、重合エチレン性官能基に対して末端対末端で連結されている化学的に異なる単位を含むポリマーである。一定の実施形態において、ブロックは、それらに組み込まれているコモノマーの量若しくはタイプ、密度、結晶化量、そのような組成のポリマーに起因し得る結晶サイズ、立体規則性のタイプ若しくは程度(アイソタクチック若しくはシンジオタクチック)、位置規則性若しくは位置不規則性、分岐(長鎖分岐若しくは超分岐を含む)の量、均一性、又は任意の他の化学的若しくは物理的特性の点で異なる。マルチブロックコポリマーは、これらのコポリマーのユニークな製造プロセスに起因する、多分散度指数(PDI又はM/M)のユニークな分布、ブロック長分布、及び/又はブロック数分布を特徴とする。さらに具体的には、連続プロセスで製造したとき、ポリマーの実施形態は、約1.7から約8、他の実施形態では約1.7から約3.5、他の実施形態では約1.7から約2.5、及びさらに他の実施形態では約1.8から約2.5又は約1.8から約2.1にわたるPDIを有し得る。回分又は半回分プロセスで製造したとき、ポリマーの実施形態は、約1.0から約2.9、他の実施形態では約1.3から約2.5、他の実施形態では約1.4から約2.0、及びさらに他の実施形態では約1.4から約1.8にわたるPDIを有し得る。
【0055】
エチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体は、化学的又は物理的特性が異なる1つ又はそれ以上の重合モノマー単位の多数の(すなわち、2つ又はそれ以上の)ブロック又はセグメントを特徴とする重合された形態(ブロック共重合体)で、好ましくはマルチブロック共重合体の状態で、エチレンと1つ又はそれ以上の共重合性α−オレフィンコモノマーとを含む。幾つかの実施形態において、マルチブロック共重合体は、次の式:
(AB)
【0056】
によって表すことができ、この式中、nは、少なくとも1、好ましくは1より大きい整数、例えば2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100又はそれ以上であり;「A」は、ハードブロック又はセグメントを表し;及び「B」は、ソフトブロック又はセグメントを表す。好ましくは、A及びBは、分岐又は星状ではなく、直線状に連結されている。「ハード」セグメントは、エチレンが、幾つかの実施形態では95重量パーセントより多い及び他の実施形態では98重量パーセントより多い量で存在する、重合単位のブロックを指す。言い換えると、ハードセグメント中のモノマー含量は、該ハードセグメントの総重量の、幾つかの実施形態では5重量パーセント未満、及び他の実施形態では2重量パーセントである。幾つかの実施形態において、ハードセグメントは、すべて又は実質的にすべてエチレンを含む。一方、「ソフト」セグメントは、コモノマー含量が、該ソフトセグメントの総重量の、幾つかの実施形態では5重量パーセントより多い、又は様々な他の実施形態では8重量パーセントより多い、10重量パーセントより多い、若しくは15重量パーセントより多い、重合単位のブロックを指す。幾つかの実施形態において、ソフトセグメント中のコモノマー含量は、20重量パーセントより多いことがあり、25重量パーセントより多いことがあり、30重量パーセントより多いことがあり、40重量パーセントより多いことがあり、45重量パーセントより多いことがあり、50重量パーセントより多いことがあり、又は様々な他の実施形態では60重量パーセントより多いことがある。
【0057】
(ランダムポリプロピレンコポリマー)
ランダムプロピレンポリマーは、プロピレンから誘導された、90モルパーセント又はそれ以上の単位を概して含む。このプロピレンコポリマー中の単位の残部は、少なくとも1つのα−オレフィンの単位から誘導されたものである。
【0058】
プロピレンコポリマーのα−オレフィン成分は、好ましくは、エチレン(本発明のためにα−オレフィンと考えられる)又はC4〜20線状、分岐又は環状α−オレフィンである。C4〜20α−オレフィンの例としては、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン及び1−オクタデセンが挙げられる。α−オレフィンは、環状構造、例えばシクロヘキサン又はシクロペンタンも含有することがあり、その結果、3−シクロヘキシル−1−プロペン(アリルシクロヘキサン)及びビニルシクロヘキサンなどのα−オレフィンとなることがある。この用語の古典的な意味ではα−オレフィンではないが、本発明のために、一定の環状オレフィン、例えばノルボルネン及び関連オレフィン、特に5−エチリデン−2−ノルボルネンはα−オレフィンであり、上で説明したα−オレフィンの幾つか又はすべての代わりにそれらを用いることができる。類似して、スチレン及びその関連オレフィン(例えば、α−メチルスチレンなど)は、本発明のためにはα−オレフィンである。実例となるランダムプロピレンコポリマーとしては、プロピレン/エチレン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/1−ヘキセン、プロピレン/1−オクテン、及びこれらに類するものが挙げられるが、これらに限定されない。実例となるターポリマーとしては、エチレン/プロピレン/1−オクテン、エチレン/プロピレン/1−ブテン、及びエチレン/プロピレン/ジエンモノ間^(EPDM)が挙げられる。
【0059】
1つの実施形態において、ランダムポリプロピレンコポリマーは、チーグラー・ナッタ触媒の使用により製造されたエチレングラフトコポリマーであり、それは、2.16kg/230℃で1g/10分から50g/10分のMFRを有する。1つの実施形態において、ランダムポリプロピレンは、2.16kg/230℃で12g/10分のMFRを有する。1つの実施形態において、ランダムポリプロピレンは、2.16kg/230℃で18g/10分のMFRを有する。
【0060】
1つの実施形態において、ランダムポリプロピレンコポリマーは、示差走査熱分析(DSC)によって判定して、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーのTmより高い融解温度(Tm)を有する。ランダムポリプロピレンコポリマー及びプロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーの融解温度を決定するための1つの利用可能なDSC手順は、米国特許第7,199,203号に記載されているものである。
【0061】
(発泡剤)
ガス及び他の副産物へと分解する気体材料、揮発液及び化学薬剤を含む、任意の公知の発泡剤(起泡又は膨張剤としても公知)の大部分を利用することができる。代表的な発泡剤としては、限定ではないが、窒素、二酸化炭素、空気、メチルクロライド、エチルクロライド、ペンタン、イソペンタン、ペルフルオロメタン、クロロトリフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ペルフルオロエタン、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン、クロロペンタフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、ペルフルオロプロパン、クロロヘプタフルオロプロパン、ジクロロヘキサフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、クロロノナフルオロブタン、ペルフルオロシクロシクロブタン、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾジイソブチロニトリル、ベンゼンスルホンヒドラジン、4,4−オキシベンゼンスルホニル−セミカルバジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、アゾジカルボン酸バリウム、N,N’ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、及びトリヒドラジノトリアジンが挙げられる。目下、ADCAが好ましい発泡剤である。
【0062】
(添加剤)
最上表皮及び中間フォーム層は、酸化防止剤、硬化剤、架橋助剤、起泡増進剤及び遅延剤、加工助剤、紫外性吸収剤又は安定剤、静電防止剤、成核剤、スリップ剤、可塑剤、潤滑剤、粘度調節剤、粘着性付与剤、粘着防止剤、界面活性剤、エキステンダー油、酸スカベンジャー、及び金属不活性化剤をはじめとする(しかしこれらに限定されない)、添加剤を含有することがある。添加剤は、組成物の重量に基づき、0.01重量%又はそれ以下から10重量%又はそれ以上にわたる量で使用することができる。
【0063】
(フィラー)
フィラーの例としては、10ナノメートル超の算術平均粒径を有する、クレー、沈降シリカ及びシリケート、ヒュームドシリカ、炭酸カルシウム、粉砕鉱物、カーボンブラック、並びに様々な公知の難燃剤、特にハロゲン不含難燃剤が挙げられるが、これらに限定されない。フィラーは、層又は全組成物の重量に基づきゼロを超えて50重量%又はそれ以上にわたる量で使用することができる。
【0064】
(カレンダー加工プロセス)
本発明は、PVC系皮革のために用いられるのと同じ従来のカレンダー加工プロセス及びラミネーションプロセスを用いて製造することができ、これは、設備投資の点からみて利点である。プロピレン−エチレン系樹脂は、ロール表面に対するそれらの粘着性が他のエチレン/プロピレン系コポリマーと比較して殆どないため、このプロセスに容易に使用することができる。本質的に、プロピレン−エチレンコポリマーのガラス転移温度は、高い弾性率及び粘着性を有するエチレンアルファ−オレフィンコポリマーのものより相対的に高い。さらに、その溶融張力は、ラミネーション、エンボス加工及び巻取りに十分向いている。
【0065】
カレンダー加工における重要な因子の1つは、ロールバンク形成条件、当業者に周知の条件を最適にすることである。これは、樹脂の良好な溶融混合を示す。通常、高い溶融張力は、高分子量樹脂を必要するが、高分子量樹脂は、ロール混合では容易に溶融しない。良好なバンク形成条件には、溶融張力と融着のバランスが必要とされる。
【0066】
三層製品は、裏布、ポリオレフィン系発泡層、及びポリオレフィン系最上層を含み、後者(ポリオレフィン最上層)は、場合によりプライマーでコーティングされており、及び該プライマーは、トップコート材でコーティングされている。最上表皮層及び中間フォーム層をカレンダー加工プロセスによって製造し、その後、互いに及び底布層に任意の適便な順序でラミネートする。典型的に、発泡は、ラミネーション後に、典型的には220℃又はそれ以上で100〜140秒間維持されたオーブンで行う。その後、自由選択のプライマー及びPUトップコート層を、そのラミネート三層構造の最上表皮層につける。
【0067】
[具体的な実施形態]
(最上表皮及び中間フォーム層の配合物及び特性)
これらの実施例において使用するポリマーとしては、VERSIFY(商標)、プロピレン−エチレンコポリマー;ENGAGE(商標)、エチレン/アルファ−オレフィンコポリマー;及びINFUSE(商標)、オレフィンブロックコポリマー(すべて、The Dow Chemical Companyから入手できる);並びにYUPLENE(登録商標)R370Y、SK Corporationから入手できるランダムプロピレンコポリマーが挙げられる。ゴムとしては、KRATON(商標)MD6945、Kraton Polymerから入手できるスチレン及びエチレン/ブチレンに基づく水素添加線状トリブロック(SEBS);TUFTEC H1051ゴム及びS.O.E.(商標)SS9000ゴム(両方ともSEBSゴムであり、Asahi Kaseiから入手できる);並びにSEPTON(商標)8004(SEBSゴム)、SEPTON(商標)2005(水素添加スチレン/エチレン/プロピレン/スチレンブロックコポリマー)及びHYBAR(商標)5127(スチレンブロックコポリマー)(すべて、Kuraray Americaから入手できる)が挙げられる。VERSIFY(商標)プロピレン−エチレンコポリマー(PER)は、カレンダー加工操作及び押出操作で容易に加工することができ、並びに可塑剤なしでの良好な触感、柔軟性及び可撓性と、配合、カレンダー加工及びシート押出し用のブレンドにおける相溶性とを兼備するヒートシール性フィルム及びシートを生じさせる。表1は、本実施例において使用したポリマー及びゴムをさらに説明するものである。
【0068】
スチレン系ブロックコポリマーは、ポリオレフィン系エラストマーとの相溶性を有し、改善された発泡力、並びに溶剤型(solvent−borne)CPPプライマー及びPUトップコート材に対する改善された湿潤性をもたらす。発泡剤は、アゾジカルボンアミド(ADCA)であり、これは、PVC、EVA、PP、PE、PSなどのような発泡プラスチック、高い需要及び高密度の均一な開孔を有する擬革及びプラスチック製品を製造するための起泡剤として使用される。この製品は、熱分解型の強い有機起泡剤であり、例えば、120℃より高い温度で分解する。発泡促進剤は、3つの異なるタイプの金属系脂肪酸、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム及びステアリン酸カルシウムを含む。
【0069】
ポリマーブレンド比は、バンク形成条件及び粘着性、並びに最終シート製品の機械的特性に基づく。スチレン系ブロックコポリマー(SBC)を利用して所望の発泡セル規則性及び密度を得、そしてまたこれらがフォーム層の可撓性及び特性を決める。プロピレン−エチレンコポリマーの発泡効率は、商業ライン条件ではSBCを用いないほうがそれを用いるより良好である。しかし、SBCは、最上表皮層とプライマー及びPUトップコート材との接着強度に重要である。ランダムポリプロピレンは、耐熱性、靱性及び光安定性を最上層にもたらす。
【0070】
表2は、発泡層及び最上層を製造するために使用した第一の系列の配合物を報告するものである。単位は、百分率(parts per hundred:pph)である。表3は、表1の配合物についての加工条件及び観察結果を報告するものである。表4及び5は、第二の系列の配合物及びこの第二の系列の配合物に関する監察結果を報告するものであり、並びに表6及び7は、第三の系列の配合物及びこの第三の系列の配合物に関する監察結果を報告するものである。
【0071】
表2及び3は、現行品、すなわち可撓性PVC最上層を有する従来の人工皮革、及び本発明の範囲内の人工皮革に関するデータを報告するものである。PVC(合成及び人工皮革市場に最も普及している従来の材料)は、分子鎖の移動度を改善する可塑剤の使用を必要とする。しかし、本発明の製品は、可塑剤の使用を必要とせず、PVCと競争できる可撓性を示すばかりでなく、より良好な機械的特性、加工時のより良好な熱安定性、及びより良好な経済的利点(そのより低い密度に起因する)ももたらす。
【0072】
4つのタイプの発泡層実施例の中で、FOAM−1及びFOAM−2は、発泡効率の点からみてより良好な柔軟性及び手触りをもたらし、一方、FOAM−3及びFOAM−4実施例は、ビカー軟化温度の点からみてより良好な耐熱性及び十分な可撓性をもたらす。最上層を比較すると、TOP−2を含む実施例は、現行(PVC)最上層より良好な機械的特性及び良好な熱安定性をもたらす。FOAM−1及びFOAM−2の実施例は、発泡効率(foaming efficience)の点からVERSIFY(商標)プロピレン−エチレンコポリマーに対してSEBSの効果を示し(殆ど差がない)、一方、VERSIFY(商標)プロピレン−エチレンコポリマーを使用するFOAM−2は、より良好な機械的特性(引張強度及び延び)を示す。FOAM−3及びFOAM−4の実施例により、熱安定性及び他の機械的特性に対するRCPの効果が説明される。FOAM−1及びFOAM−2の実施例は、SEBS又はVERSIFY(商標)プロピレン−エチレンコポリマーの使用に関係なく、柔軟用途、例えばファッションバッグ、靴又は衣服に、より適しており、一方、FOAM−3及びFOAM−4の実施例は、工業用途、例えば高い耐熱性を必要とするルーフィング膜、防水布又は室内装備品に、より適している。
【0073】
Nike #11のベリー可撓性試験(ASTM D6182)は、試験片を繰り返し曲げることにより合成皮革、皮革及び布に塗布したコーティング(PU被覆材料)の耐久性を判定する。コーティングの亀裂は、使用現場での接着の喪失、不良な化粧又は性能不良につながることがある。表3に報告するすべてのサンプルは、25℃で100,000サイクルを超えるベリー可撓性を明示した。
【0074】
表6は、一連の人工皮革サンプルについての光退色、亀裂及び接着比較データを報告するものである。光退色は、材料の白色又は有色サンプルが該サンプルを紫外線に暴露した後に黄変又は色褪せするかどうかを、QUV促進耐候試験機を使用して判定する試験法である、Nike #G37(AATCC 16、ASTM G23/G153)規格を用いて測定する。この試験は、すべての織物、合成皮革、皮革、糸、レース、ウェビング/ゴアテープ、彩色コンポーネント(装飾用インク印刷又は昇華印刷)、透明、クリア及び半透明ゴム、並びにフォーム(EVA、Phylon、ゴムを除く)、並びにプラスチック(カウンターを除く)を扱うものである。亀裂は、皮革の亀裂の色彩堅牢度についての標準試験法である、AATCC 8(ASTM D5053)に基づいて測定する。この試験法は、湿潤(湿気のある)条件若しくは乾燥条件又は両方のもとで摩擦により皮革から他の表面に移り得る色の程度の判定を扱うものである。接着強度(結合又はプライ強度)は、ラミネートされている(湿潤及び乾燥両方のPUフィルム塗工プロセス)すべてのタイプの材料についての塗工表面と裏層との結合強度を判定する、NIKE #G44規格を用いて測定した。これは、すべての合成皮革、及び裂かれた皮革上のサンダー仕上げした又はバフ仕上げしたPUコーティングを含む。
【0075】
前記人工皮革は、最上表皮層と中間フォーム層と底裏布層とを含む三層から成る。裏布は、人工皮革の形状及び機械的特性を維持するためのベース基材であり、皮革の触感(手触り)に容易に影響を与える。従って、機械的特性及び触感の点から、裏地の選択も、適する皮革特性を得るために重要である。これらの実施例において、裏地は、高重量スパンボンド(310g/m、厚み1.2mm、幅58インチ)布である。
【0076】
接着強度及びベリー可撓性は、主として靴製造に用いられ、他の皮革用途、例えば衣類、バッグ、屋内装飾、防水布などについては除外される。最上層又はフォーム層に使用される材料に基づき、5つの異なるタイプの皮革系がある。SEBSを含む系は、接着強度及びベリー可撓性の点からみて、靴製造に許容され得る十分な特性を示す。接着強度及びベリー屈曲を除いて、大部分の特性は、現行の仕様と比較して満足のいくものであり、すべての系が他の皮革用途(靴を除く)に適用できる。プライミング及びPUトップコートコーティングのような仕上げプロセスを伴うカレンダー加工及びラミネーションは、商業用途に適する。
【0077】
Nike #44標準測定法に基づき、塗工表面(最上層上のPUトップコート)と裏層(靴の下方ゴム底)との接着強度は、24時間後に最低2.5kgf/cmは必要である。表7は、様々な最上層配合物の性能を接着強度について記載するものである。最上層を溶剤型塩素化ポリプロピレン(CPP)プライマー及びPUトップコート材で処理した後、接着強度試験を行う。Songstab SZ−210は、Songwon Chemicalから入手できるステアリン酸亜鉛活性化剤である。AC1000は、Kumyang Chemicalから入手できるアゾジカルボンアミド発泡剤である。
【0078】
最上表皮層とPUトップコート層との接着強度は、プライマーの使用で向上する。ポリプロピレンとの良好な相溶性を有するスチレン系トリブロック又はジブロックコポリマーは、プロピレン−エチレンコポリマーとPUコーティングの間の有効な架け橋として作用する。CPPであるプライマーの極性を考えると、スチレン系トリブロック又はジブロックコポリマーは、プロピレン−エチレンコポリマーのような非極性ポリオレフィン材料に極性を付与し、プライマー層と最上層との接着強度を増加させる。それ故、PPとの良好な相溶性及び極性を有するSEBS−1の添加は、最上層と、プライマーとの組み合わせでのPUトップコート材との、許容され得る接着強度を示した。
【0079】
発泡率(foam ratio)は、発泡層の可撓性及び柔軟性に基づき、並びに15kgf/cmの引裂強度及び130℃以下の耐熱性を目標にする機械特性にも基づく。実験的に、50〜350%、好ましくは200〜250%の発泡率が、人工皮革に最も適することがわかる。発泡効率が250%より高い場合、発泡セルの大部分が合体し、フォームがへこむ可能性が高い。発泡剤がカレンダー加工中に他の樹脂と既に混合されているので、カレンダー加工中の予備発泡は回避される。発泡工程まで待つことにより、良好なセル規則性及びセル構造を有するフォーム層が作られ、これらが人工皮革の可撓性及び触感に最終的に影響を及ぼす。ロールバンク形成条件は、同じカレンダー加工温度条件下での最上層の製造と同じである。フォーム層は、可撓性をもたらすことに加えて皮革を軽量にするため、PVC又はPU又はSBCのものより低い密度を有するプロピレン−エチレンコポリマーが、より良い選択である。
【0080】
VERSIFY(商標)2000シリーズは、合成皮革製造のための現行の材料であるPVC及びTPUに匹敵する、カレンダー加工での巻取り性能を実証した。
【0081】
OBC又はPOEとPER−4のブレンドを使用する配合物の中で、D3及びD6は、発泡効率を除き、他のものより良好なカレンダー加工性能を有し、D6は、発泡効率と機械的特性の最良バランスを示す。カレンダー加工性能は、バンク形成条件及び巻取り効率に基づくものであり、230℃で2から4g/10分のMFR及び0.86から0.88g/cmの密度によって判定される。
【0082】
シート層の発泡をカレンダー加工後にオーブン内で100〜120秒間、220℃で行う。早期発泡の防止は、微細で規則的なセル密度を達成するために重要である。皮革シート発泡に使用する、ADCAである、AC100を制御して、発泡効率を改善する。カレンダー加工の実行温度が150から160℃の範囲であるとき、発泡剤の最適濃度は、約4pphである。PER−4の場合、6pphより高い発泡剤濃度は、カレンダー加工における巻取りなどの他の性能因子が十分に達成されるにもかかわらず、早期発泡を生じさせることがある。
【0083】
発泡用シート配合へのフィラーの添加が分子鎖内の発泡の伝播を妨げることは公知であり、そのためフィラーは、発泡の際の使用には通常推奨されない。しかし、フィラーは、発泡シートの機械的特性を改善するために使用することができる。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【0087】
【表4】

【0088】
【表5】

【0089】
【表6】

【0090】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーと、(i)スチレン系ブロックコポリマー、(ii)均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、(iii)オレフィンブロックコポリマー、及び(iv)ランダムポリプロピレンコポリマーの少なくとも1つと、を含む最上表皮層と、
B.プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーと、(i)スチレン系ブロックコポリマー、(ii)均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、(iii)オレフィンブロックコポリマー及び(iv)ランダムポリプロピレンコポリマーの少なくとも1つと、を含む中間フォーム層と、
C.不織で高分子性のスパンボンド材料を含む底布層と、
を含む、多層構造。
【請求項2】
前記最上表皮層と接触しているプライマー層と、該プライマー層と接触しているトップコート層とをさらに含む、請求項1に記載の多層構造。
【請求項3】
前記プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマーが、実質的にアイソタクチックなプロピレン配列を有するプロピレン−エチレンコポリマーである、請求項1又は2に記載の多層構造。
【請求項4】
スチレン系ブロックコポリマーが、20%未満残留エチレン性不飽和を含む飽和共役ジエンのブロックにより隔てられた少なくとも2つのモノ−アルケニルアレーンを含む、請求項1から3のいずれかに記載の多層構造。
【請求項5】
前記均一に分岐したエチレン/アルファ−オレフィンコポリマーが、シングルサイト触媒を使用して製造され、95C未満の融点を有し、また該コポリマーの総重量に基づき少なくとも15重量パーセントのα−オレフィン含量を有する、請求項1から4のいずれかに記載の多層構造。
【請求項6】
前記オレフィンブロックコポリマーが、式:
(AB)
(式中、nは、少なくとも1であり、Aは、ハードブロックであり、及びBはソフトブロックであり、並びにA及びBは、直線状に連結されている)
によって表される、請求項1から5のいずれかに記載の多層構造。
【請求項7】
前記ランダムポリプロピレンコポリマーが、プロピレンから誘導された、90モルパーセント又はそれ以上の単位含み、残部が少なくとも1つのα−オレフィンの単位から誘導された単位である、請求項1から6のいずれかに記載の多層構造。
【請求項8】
前記底層の布が、ポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも1つから調製される、請求項1から7のいずれかに記載の多層構造。
【請求項9】
前記最上表皮及び中間フォーム層の少なくとも一方が、酸化防止剤、硬化剤、架橋助剤、起泡増進剤及び遅延剤、加工助剤、フィラー、紫外線吸収剤又は安定剤、静電防止剤、成核剤、スリップ剤、可塑剤、潤滑剤、粘度調節剤、粘着性付与剤、粘着防止剤、界面活性剤、エキステンダー油、酸スカベンジャー、並びに金属不活性化剤の少なくとも1つをさらに含む、請求項1から8のいずれかに記載の多層構造。
【請求項10】
前記最上表皮、中間フォーム及び底布層が、熱ラミネーションにより互いに接合される、請求項1から9のいずれかに記載の多層構造。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【公表番号】特表2012−533450(P2012−533450A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520636(P2012−520636)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/035256
【国際公開番号】WO2011/008336
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】