説明

ポリオレフィン系樹脂組成物

【課題】比重が低く、剛性と耐熱性とのバランスに優れたポリオレフィン系樹脂組成物、及びその成形体を提供すること。
【解決手段】2種以上のオレフィン系重合体を含むポリオレフィン系樹脂組成物であって;オレフィン系重合体のうちの一部は、金属原子含有オレフィン系重合体(A−1)である。重合体(A−1)の分子構造における0.01重量%以上10重量%未満は、一般式(1):RCOOX(式(1)におけるRは、炭素数1〜20の炭化水素残基であり;XはLi、Na、K、Mg、Zn、Ca、Ba又はAlの金属成分である)で表される部分構造であり;かつ前記重合体(A−1)の、230℃かつ2.16kg荷重で測定されたメルトフローレートは、10〜1000g/10分である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィン系樹脂組成物に関し、より具体的には、比重が低く、かつ剛性および耐熱性に優れたポリオレフィン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィン樹脂は、近年の触媒・重合技術や複合化技術の進歩に伴い、主に射出成形分野で、その使用量が着実に増加してきている。特に自動車バンパーに代表される工業部品分野でのポリオレフィン樹脂の使用量の成長が著しく、世界的規模で着実に需要が増加している。ポリオレフィン樹脂の使用量の増大に伴い、その再利用や再使用等のリサイクルが重要な課題となってきている。
【0003】
製品剛性や耐熱性が要求される製品(自動車バンパーなど)のためのポリプロピレン樹脂では、タルクに代表される無機フィラーをポリプロピレンと複合化して目標とする剛性等を実現している(例えば、特許文献1〜4参照)。このような無機フィラー複合ポリプロピレンは、必然的に比重の増加を引き起こすため軽量化には逆行するとともに、焼却処理した際に焼却灰が発生してしまうため、熱源リサイクルの妨げとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3031986号公報
【特許文献2】特開平6−50754号公報
【特許文献3】特開2002−20560号公報
【特許文献4】特開2002−3691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、比重が低く、かつ剛性と耐熱性とのバランスに優れたポリオレフィン系樹脂組成物、及びその成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の金属原子含有オレフィン系重合体を含むポリオレフィン系樹脂組成物が、優れた機械物性と成形性を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明の第一は、以下に示すポリオレフィン系樹脂組成物に関する。
<1>:2種以上の重合体からなるオレフィン系重合体(A)を含む、ポリオレフィン系樹脂組成物であって、前記2種以上の重合体はいずれも、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とし、
前記ポリオレフィン系重合体(A)の1〜50重量%は、金属原子含有オレフィン系重合体(A−1)であり、
前記重合体(A−1)の分子構造における0.01重量%以上10重量%未満は、一般式(1):RCOOX(式(1)におけるRは、炭素数1〜20の炭化水素残基であり;XはLi、Na、K、Mg、Zn、Ca、Ba又はAlの金属成分である)で表される部分構造であり、
前記重合体(A−1)の、230℃かつ2.16kg荷重で測定されたメルトフローレートは、10〜1000g/10分である、
ポリオレフィン系樹脂組成物。
【0008】
<2>:前記オレフィン系重合体(A)の50〜99重量%は、プロピレン系重合体(A−2)である、<1>に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
<3>:前記プロピレン系重合体(A−2)が、プロピレン単独重合体である、<2>に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
<4>:前記プロピレン系重合体(A−2)におけるプロピレン単独重合体部分のアイソタクチックペンタッド分率が、95.0%以上である、<2>または<3>に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
<5>:MFRが1〜300g/10分であり、曲げ弾性率が1700〜10000MPaであり、0.45MPaの条件下で測定された荷重たわみ温度が120℃以上であり、かつ密度が1.00g/cm未満である、<1>〜<4>のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【0009】
本発明の第2は、以下に示す樹脂成形品に関する。
<6>:<1>〜<5>のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物からなる成形品。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、軽量かつ優れた物性バランスを有する。さらに、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物から得られた成形品は、優れたリサイクル性を有しうる。これにより、石油資源、エネルギー資源を大幅に削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、2種以上の重合体からなるオレフィン系重合体(A)を含む。ここで2種以上の重合体は、いずれも炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とする。
【0012】
炭素原子数2〜20のオレフィンの例には、直鎖状または分岐状のα-オレフィン;環状オレフィン;芳香族ビニル化合物;共役ジエン;非共役ポリエン;官能化ビニル化合物などが含まれる。
【0013】
直鎖状のα-オレフィンの具体例には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどの、炭素原子数2〜20(好ましくは2〜10)の直鎖状のα-オレフィンなどが含まれる。
【0014】
分岐状のα-オレフィンの具体例には、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンなどの炭素原子数5〜20(好ましくは5〜10)の分岐状のα-オレフィンなどが含まれる。
【0015】
環状オレフィンの具体例には、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサンなどの、炭素原子数3〜20(好ましくは5〜15)の環状オレフィンなどが含まれる。
【0016】
芳香族ビニル化合物の具体例には、スチレン、およびα-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレンなどのモノまたはポリアルキルスチレンなどが含まれる。
【0017】
共役ジエンの具体例には、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエンなどの炭素原子数4〜20(好ましくは4〜10)の共役ジエンなどが含まれる。
【0018】
非共役ポリエンの具体例には、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペンル-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエンなどの、炭素原子数5〜20(好ましくは5〜10)の非共役ポリエンが含まれる。
【0019】
官能化ビニル化合物の例には、水酸基含有オレフィン;ハロゲン化オレフィン;アクリル酸、プロピオン酸、3-ブテン酸、4-ペンテン酸、5-ヘキセン酸、6-ヘプテン酸、7-オクテン酸、8-ノネン酸、9-デセン酸などの不飽和カルボン酸;アリルアミン、5-ヘキセンアミン、6-ヘプテンアミンなどの不飽和アミン;(2,7-オクタジエニル)コハク酸無水物、ペンタプロペニルコハク酸無水物、マレイン酸無水物、および上記不飽和カルボン酸類のカルボン酸基をカルボン酸無水物基とした酸無水物などの不飽和酸無水物;上記不飽和カルボン酸類のカルボン酸基をカルボン酸ハライド基とした不飽和カルボン酸ハライド;4-エポキシ-1-ブテン、5-エポキシ-1-ペンテン、6-エポキシ-1-ヘキセン、7-エポキシ-1-ヘプテン、8-エポキシ-1-オクテン、9-エポキシ-1-ノネン、10-エポキシ-1-デセン、11-エポキシ-1-ウンデセンなどの不飽和エポキシ化合物などが含まれる。
【0020】
官能化ビニル化合物の一つである水酸基含有オレフィンとしては、特に制限はないが、例えば末端水酸化オレフィン化合物が挙げられる。末端水酸化オレフィン化合物の具体例には、ビニルアルコール、アリルアルコール、水酸化-1-ブテン、水酸化-1-ペンテン、水酸化-1-ヘキセン、水酸化-1-オクテン、水酸化-1-デセン、水酸化-1-ドデセン、水酸化-1-テトラデセン、水酸化-1-ヘキサデセン、水酸化-1-オクタデセン、水酸化-1-エイコセンなどの炭素原子数2〜20(好ましくは2〜10)の直鎖状の水酸化α-オレフィン;水酸化-3-メチル-1-ブテン、水酸化-4-メチル-1-ペンテン、水酸化-3-メチル-1-ペンテン、水酸化-3-エチル-1-ペンテン、水酸化-4,4-ジメチル-1-ペンテン、水酸化-4-メチル-1-ヘキセン、水酸化-4,4-ジメチル-1-ヘキセン、水酸化-4-エチル-1-ヘキセン、水酸化-3-エチル-1-ヘキセンなどの、炭素原子数5〜20(好ましくは5〜10)の分岐状の水酸化α-オレフィンなどが含まれる。
【0021】
官能化ビニル化合物の一つであるハロゲン化オレフィンは、例えば塩素、臭素、よう素などの周期律表第17族原子を有するオレフィンである。ハロゲン化オレフィンの例には、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化-1-ブテン、ハロゲン化-1-ペンテン、ハロゲン化-1-ヘキセン、ハロゲン化-1-オクテン、ハロゲン化-1-デセン、ハロゲン化-1-ドデセン、ハロゲン化-1-テトラデセン、ハロゲン化-1-ヘキサデセン、ハロゲン化-1-オクタデセン、ハロゲン化-1-エイコセンなどの炭素原子数2〜20(好ましくは2〜10)の直鎖状のハロゲン化α-オレフィン;例えばハロゲン化-3-メチル-1-ブテン、ハロゲン化-4-メチル-1-ペンテン、ハロゲン化-3-メチル-1-ペンテン、ハロゲン化-3-エチル-1-ペンテン、ハロゲン化-4,4-ジメチル-1-ペンテン、ハロゲン化-4-メチル-1-ヘキセン、ハロゲン化-4,4-ジメチル-1-ヘキセン、ハロゲン化-4-エチル-1-ヘキセン、ハロゲン化-3-エチル-1-ヘキセンなどの好ましくは5〜20(より好ましくは5〜10)の分岐状のハロゲン化α-オレフィンなどが含まれる。
【0022】
オレフィン系重合体(A)を構成する重合体は、前記炭素原子数2〜20のオレフィンの1種以上に由来する繰り返し単位を、主たる構成単位とする。「主たる構成単位である」とは、重合体の構成単位(モノマー単位)のうちの50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上の構成単位であることをいう。中でも、「主たる構成単位である」とは、重合体の構成単位(モノマー単位)のうちの95%以上の構成単位であることがさらに好ましく、99%の構成単位であることが最も好ましい。
【0023】
オレフィン系重合体(A)を構成する重合体は、好ましくは、エチレンまたはプロピレンの単独重合体に由来するセグメントを主たる構成単位とするか;エチレンと、炭素原子数3〜20のオレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンとの共重合体に由来するセグメントを主たる構成単位とするか;プロピレンと炭素原子数4〜20のオレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンから得られる共重合体に由来するセグメントを主たる構成単位とするか;ブテンと炭素原子数5〜20のオレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンから得られる共重合体に由来するセグメントを主たる構成単位とするか;ヘキセンと炭素原子数7〜20のオレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンから得られる共重合体に由来するセグメントを主たる構成単位とするか;4-メチル-1-ペンテンと炭素原子数7〜20のオレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンから得られる共重合体に由来するセグメントを主たる構成単位とする。
【0024】
本発明におけるオレフィン系重合体(A)は、2種以上の重合体からなるが、いずれも前記炭素原子数2〜20のオレフィンの1種以上に由来する繰り返し単位を主たる構成単位とする。
【0025】
オレフィン系重合体(A)に含まれる重合体の一種は、金属原子含有オレフィン系重合体(A−1)である。オレフィン系重合体(A)における金属原子含有オレフィン系重合体(A−1)の含有量は、1〜50重量%であり;好ましくは2〜40重量%であり;より好ましくは3〜30重量%である。
【0026】
オレフィン系重合体(A)における金属原子含有オレフィン系重合体(A−1)の含有量が1重量%未満では、本発明の樹脂組成物に十分な機械物性を発現させることができないことがあり;50重量%を超えると、樹脂組成物の剛性などの物性低下をもたらすことがある。金属原子含有オレフィン系重合体(A−1)の詳細は後述する。
【0027】
オレフィン系重合体(A)には、金属原子含有オレフィン系重合体(A−1)とともに、プロピレン系重合体(A−2)が含まれることが好ましい。オレフィン系重合体(A)におけるプロピレン系重合体(A−2)の含有量は、50〜99重量%であり;好ましくは60〜98重量%であり;より好ましくは70〜96重量%である。
【0028】
オレフィン系重合体(A)におけるプロピレン系重合体(A−2)の含有量が50重量%未満では、本発明の樹脂組成物の剛性等の機械物性が低下することがあり;99重量%を超えると、樹脂組成物に所望の機械物性を発現させることができないことがある。プロピレン系重合体(A−2)の詳細は後述する。
【0029】
オレフィン系重合体(A)を構成する重合体は、オレフィン重合用触媒を用いてオレフィンを重合させて製造されうる。オレフィン系重合体の製造に用いられるオレフィン重合用触媒は、マグネシウム担持型チタン触媒;メタロセン触媒;その他従来公知の触媒でありうる。例えば、国際公開第01/53369号パンフレット、あるいは国際公開第01/27124号パンフレットに記載された触媒を好適に用いることができる。
【0030】
マグネシウム担持型チタン触媒系は、例えば、固体状チタン触媒成分(a)またはその予備重合触媒と、有機金属化合物触媒成分(b)と、電子供与体(ED)を構成成分として含む。固体状チタン触媒成分(a)またはその予備重合触媒の濃度を、重合容積1リットル当り、チタン原子に換算して、通常は約0.0001〜50ミリモル(好ましくは約0.001〜10ミリモル)とする。有機金属化合物触媒成分(b)の量は、該触媒成分(b)中の金属原子が、重合系中の固体状チタン触媒成分(a)中のチタン原子1モルに対し、通常1〜2000モル(好ましくは2〜1000モル)とする。電子供与体(ED)は、有機金属化合物触媒成分(b)の金属原子1モルに対し、通常0.001モル〜10モル(好ましくは0.01モル〜5モル)用いられる。
【0031】
上記マグネシウム担持型チタン触媒系を用いて、オレフィン重合を行う場合、水素濃度は、モノマー1モルに対して通常は0〜0.01モル、好ましくは0〜0.005モル、より好ましくは0〜0.001モルに設定される。また上記マグネシウム担持型チタン触媒系を用いてオレフィン重合を行う場合には、重合温度は、通常は70℃以上、好ましくは80〜150℃、より好ましくは85〜140℃、特に好ましくは90〜130℃の範囲内に設定され;重合圧力は、通常、常圧〜10MPa、好ましくは常圧〜5MPaに設定される。
【0032】
メタロセン系触媒は、例えば、メタロセン化合物(c)と、有機アルミニウムオキシ化合物(d)とを構成成分として含み、さらに有機アルミニウム化合物(e)を構成成分として含んでいてもよい。メタロセン化合物(c)の濃度を、重合容積1リットル当り、通常は0.00005〜0.1ミリモル、好ましくは0.0001〜0.05ミリモルとし;有機アルミニウムオキシ化合物(d)の量を、メタロセン化合物(c)中の遷移金属原子(M)に対するアルミニウム原子(Al)のモル比(Al/M)で、通常は5〜1000、好ましくは10〜400とする。さらに有機アルミニウム化合物(e)の量を、メタロセン化合物(c)中の遷移金属原子1モルに対して、通常約1〜300モル、好ましくは約2〜200モルとする。
【0033】
メタロセン系触媒は、溶媒に溶解して用いてもよく、無機化合物や樹脂組成物などに担持して担持触媒として用いてもよい。メタロセン系触媒を用いた場合には、重合温度は、通常は−20〜150℃、好ましくは0〜120℃、さらに好ましくは0〜100℃の範囲に設定され;重合圧力は0を超えて8MPa、好ましくは0を超えて5MPaの範囲に設定される。
【0034】
オレフィン系重合体(A)を構成する重合体は、溶液重合、懸濁重合などの液相重合、または気相重合のいずれによっても製造でき;バッチ式、半連続式、連続式のいずれの方式によっても製造できる。例えば、1つの反応器でバッチ式に重合してもよく、あるいは複数の反応器を組み合わせて連続式に重合してもよい。
【0035】
金属原子含有オレフィン系重合体(A−1)
前記の通り、2種以上の重合体から構成されるオレフィン系重合体(A)の1〜50重量%は、金属原子含有オレフィン系重合体(A−1)である。金属原子含有オレフィン系重合体(A−1)は、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン重合体であって、さらに以下の2要件を満たす。
【0036】
要件1:重合体(A−1)の分子構造における0.01重量%以上10重量%未満は、下記一般式(1)で表される部分構造である。一般式(1)におけるRは、炭素数1〜20の炭化水素残基である。一般式(1)におけるXは、Li、Na、K、Mg、Zn、Ca、BaまたはAlの金属成分である。
一般式(1):RCOOX
【0037】
要件2:重合体(A−1)の、230℃かつ2.16kg荷重で測定されたメルトフローレートが、10〜1000g/10分である。
【0038】
金属原子含有オレフィン系重合体(A−1)の主たる構成単位は、炭素原子数2〜20のオレフィン由来の繰り返し単位であり;炭素原子数2〜20のオレフィンとしては、前述の直鎖状または分岐状のα-オレフィン、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能化ビニル化合物などが挙げられる。
【0039】
金属原子含有オレフィン系重合体(A−1)は、一般式(1):RCOOXで示される部分構造を含む。この部分構造は、炭素数1〜20の炭化水素残基Rを有するカルボン酸の金属塩である。
【0040】
一般式(1)で表される部分構造は、重合体(A−1)の分子構造のうちの0.01重量%以上10重量%未満含まれることが好ましく;0.05重量%以上8重量%未満含まれることがより好ましく、0.1重量%以上5重量%未満含まれることがさらに好ましい。ここで、「重合体(A−1)の分子構造のうちのX重量%」とは、「重合体(A−1)の分子量のX%」を意味する。
【0041】
重合体(A−1)における一般式(1)で表される部分構造の含有量が少ないと、樹脂組成物に所望の機械物性を発現させるにくいことがあり;一方、多すぎると樹脂の靭性を低下させる原因となる。
【0042】
一般式(1)で示される部分構造(RCOOX)は、炭素数1〜20の炭化水素残基を有するカルボン酸および/またはカルボン酸無水物に由来する構造である。カルボン酸無水物は、無水物構造を開環させて一般式(1)で示される部分構造となる。
【0043】
炭素数1〜20の炭化水素基を有するカルボン酸の例には、アセチル酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸などのカルボン酸類;およびベンゼン酸、トルイル酸等の芳香族環含有カルボン酸;コハク酸、マレイン酸などのジカルボン酸などが含まれる。炭素数1〜20の炭化水素基を有するカルボン酸無水物の例には、コハク酸、マレイン酸などのジカルボン酸の無水物などが含まれる。
【0044】
炭素数1〜20の炭化水素基を有するカルボン酸および/またはカルボン酸無水物の好ましい例には、コハク酸、マレイン酸などのジカルボン酸およびその酸無水物が含まれ;より好ましい例には、コハク酸、マレイン酸などのジカルボン酸無水物が含まれ;特に好ましい例は、マレイン酸無水物である。
【0045】
一般式(1)におけるXは金属原子を示す。Xで示される金属原子の例には、Li、Na、K、Mg、Zn、Ca、Ba、Alが含まれ;好ましい例には、Li、Na、K、Mg、Znが含まれ;より好ましくは、Li、Na、Kである。
【0046】
金属原子含有オレフィン系重合体(A−1)の製造方法の第1の例は、前述のオレフィン重合用触媒を用いてオレフィン系重合体を製造した後;得られたオレフィン系重合体と、炭素数1〜20の炭化水素基を有するカルボン酸および/またはカルボン酸無水物とを反応させて、炭素数1〜20の炭化水素残基を有するカルボン酸基および/または酸無水物基を導入する処理を行い;次に、金属塩化合物で中和処理を行う。中和処理を行うときに、酸無水物残基は開環して、カルボン酸金属塩となる。
【0047】
オレフィン系重合体に、炭素数1〜20の炭化水素残基を有するカルボン酸残基および/または酸無水物残基を導入するには、熱反応や、有機過酸化物存在下での反応を行えばよい。この反応は、無溶媒または適当な溶剤中で行えばよく、溶融状態、懸濁状態、溶液状態の何れで実施してもよい。
【0048】
オレフィン系重合体(A−1)の製造方法の第2の例は、炭素原子数2〜20のオレフィンと、炭素数1〜20の炭化水素基を有するカルボン酸基および/または酸無水物基を含むオレフィン(好ましくは、エチレン、プロピレン、ブテンなど)とを重合させて、オレフィン系重合体を製造した後;金属塩化合物で中和処理を行う。カルボン酸基を含むオレフィンの例には、α,β-不飽和カルボン酸が含まれ、酸無水物基を含むオレフィンにはマレイン酸などが含まれる。
【0049】
金属塩化合物による中和処理は、固相反応で実施してもよく、適当な媒体に金属塩化合物を溶解させた後、無溶媒または適当な溶剤中で、溶融状態、懸濁状態、溶液状態の何れで実施してもよい。金属塩化合物とは、金属の水酸化物や炭酸塩などの塩基であり;金属とは、一般式(1)におけるXと同様の金属である。
【0050】
重合体(A−1)は、230℃、2.16kg荷重で測定されたMFRが10〜1000g/10分であることを特徴としており;好ましくは40〜950g/10分であり;より好ましくは80〜900g/10分であり;さらに好ましくは100〜850g/10分である。このMFRが低すぎると、他の樹脂と混錬するときに分散性が悪くなり;このMFRが高すぎると、他の樹脂との混合組成物の機械物性を損なう原因となる。
【0051】
前記重合体(A−1)のMFRは、当業者にとって自明な手段で制御されることができる。例えば、金属原子含有オレフィン系重合体(A−1)を第1の例の製法で製造する場合には、重合体(A−1)のMFRは、例えば反応温度(反応温度が高いと、重合体のMFRも高く、反応温度が低いと重合体のMFRも低くなる傾向を示す)や、有機過酸化物の使用量などを制御することにより調整される。
【0052】
一方、金属原子含有オレフィン系重合体(A−1)を、第2の例の製法で製造する場合には、重合体(A−1)のMFRは、例えば重合温度等の重合条件や、水素に代表される連鎖移動剤の使用量(連鎖移動剤を大量に使用すると、重合体のMFRが高くなる傾向を示す)などを制御することにより調整される。
【0053】
プロピレン系重合体(A−2)
前記の通り、2種以上の重合体から構成されるオレフィン系重合体(A)の一部は、プロピレン系重合体(A−2)であってもよく;オレフィン系重合体(A)の50〜99重量%が、プロピレン系重合体(A−2)でありうる。
【0054】
プロピレン系重合体(A−2)は、より具体的にはプロピレン単独重合体であってもよく;プロピレンと他のα-オレフィン(エチレンを含む)とを共重合した共重合体であってもよく;プロピレン単独重合体部分およびプロピレンと他のα-オレフィン(エチレンを含む)との共重合体部分とを含むポリプロピレンブロック共重合体であってもよく;またはこれらの2種以上の混合物であってもよい。なかでもプロピレン系重合体(A−2)は、剛性と実用耐熱性の観点からプロピレン単独重合体であることが好ましい。
【0055】
プロピレン系重合体(A−2)のMFRは、230℃かつ2.16kg荷重で測定されたときに1g/10分以上であることが好ましく、4〜500g/10分であることがより好ましく、10〜300g/10分であることがさらに好ましく、15〜150g/10分であることがさらに好ましい。
【0056】
プロピレン系重合体(A−2)におけるプロピレン単独重合体部分のアイソタクチックペンタッド分率は、95.0%以上であることが好ましく、96%以上であることがより好ましく、96.5%以上であることがさらに好ましい。また、プロピレン系重合体(A−2)がプロピレン単独重合体であり、かつアイソタクチックペンタッド分率が95.0%以上であることがより好ましい。プロピレン系重合体(A−2)のアイソタクチックペンタッド分率が低いと、成形体の剛性が劣り、実用耐熱性も低いため好ましくない。
【0057】
プロピレン系重合体(A−2)のアイソタクチックペンタッド分率は、重合触媒の電子供与体(外部及び/又は内部ドナー)の添加量を制御し、さらにこれらの重合過程での欠落を防止することで側鎖の立体配置を制御して、調整することができる。
【0058】
ここで、アイソタクチックペンタッド分率とは、Macromolecules,6,925(1973年)記載の方法、すなわち13C−NMRを使用する方法で測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック分率である。換言すれば、アイソタクチックペンタッド分率は、プロピレンモノマー単位が5個接続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。ただし、ピークの帰属に関しては、Macromolecules,8,687(1975年)に記載の方法に基づいて行うことができる。具体的には、13C−NMRスペクトルの、メチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピーク強度分率としてアイソタクチックペンタッド単位を測定する。
【0059】
プロピレン系重合体(A−2)は、プロピレン単独重合体部分、およびプロピレンと他のα-オレフィン(エチレンを含む)との共重合体部分を含むポリプロピレンブロック共重合体であってもよい。この「共重合体部分」におけるプロピレンの含有量は、30〜75重量%であることが好ましい。共重合体部分におけるプロピレン含量が30重量%未満であると、共重合体成分の、プロピレン単独重合体部分への分散性が悪くなり、プロピレン系重合体(A−2)の均一性が損なわれて、所望の機械物性が得られなくなることがあり;75重量%を超えると共重合体成分のゴムとしての性質が損なわれ、プロピレン系重合体(A−2)の耐衝撃性が劣ることがある。
【0060】
ポリプロピレンブロック共重合体における共重合体部分の重量平均分子量は30万以上であることが好ましい。重量平均分子量は、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定すればよい。共重合体部分の重量平均分子量が30万未満であると、本発明の樹脂組成物の耐衝撃性が劣ることがある。共重合体部分の分子量は、オレフィンを重合させて共重合体を製造するときの水素濃度を制御することにより調整することができる。
【0061】
プロピレン系重合体(A−2)は、前述の従来公知の方法により重合することができるが、例えば気相重合法、塊状重合法、溶液重合法、スラリー重合法などを挙げることができ、1つの反応器でバッチ式に重合してもよく、あるいは複数の反応器を組み合わせて連続式に重合してもよい。
【0062】
ポリオレフィン系樹脂組成物
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、オレフィン系重合体(A)を含むことを特徴とする。ここでオレフィン系重合体(A)の1〜50重量%は、金属原子含有オレフィン系重合体(A−1)であり、さらにプロピレン系重合体(A−2)を含むことが好ましい。
【0063】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、オレフィン系重合体(A)以外に任意の成分を含有することができる。任意の成分については、後述する。
【0064】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、230℃、2.16kg荷重で測定されたメルトフローレート(MFR)が1〜300g/10分であることが好ましく;4〜500g/10分であることがより好ましく;10〜300g/10分であることがさらに好ましく;15〜150g/10分であることが特に好ましい。MFRが1g/10分より小さいと、混練時に多大なエネルギーを必要とするため好ましくない。MFRが800g/10分を超えると、樹脂の延性が低下し、ポリオレフィン系樹脂組成物の衝撃性が劣るため好ましくない。
【0065】
また、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、曲げ弾性率が1700〜10000MPaであり、0.45MPaの条件下で測定された荷重たわみ温度が120℃以上であり、密度が1.00g/cm未満であることが好ましい。
【0066】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で任意の成分を含むことができる。任意の成分の例には、充填剤、可塑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤等)、滑剤、離形剤、難燃剤、染料および顔料を含む着色剤、結晶核剤、帯電防止剤、その他の熱可塑性樹脂などが含まれる。一方で、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、無機フィラーを添加されてもよいが、軽量化やリサイクル性の観点からすれば、無機フィラーの添加量は少ない方が好ましく、実質的に含まない方がより好ましい。
【0067】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、機械特性、成形性、耐熱性などに優れた樹脂組成物を得るという点から、充填剤を配合されることが好ましい。
【0068】
充填剤としては、通常、熱可塑性樹脂の充填剤として用いられる繊維状、板状、粒状、粉末状のものを用いることができる。充填剤の例には、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ウォラストナイト、セピオライト、アスベスト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維および硼素繊維などの繊維状無機充填剤;ガラスフレーク、非膨潤性雲母、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、タルク、クレイ、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土などの板状や粒状の無機充填剤;ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナッツ繊維、絹、羊毛、アンゴラ、カシミヤもしくはラクダなどの動物繊維、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質、澱粉、籾殻、木材チップ、おから、古紙粉砕材、衣料粉砕材などの、繊維状、粉末状もしくはチップ状の有機充填剤が含まれる。
【0069】
これらの充填剤の中では、繊維状無機充填剤、板状無機充填剤、有機充填剤が好ましく;特に、ガラス繊維、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウイスカー、チタン酸カリウムウイスカー、タルク、マイカ、カオリン、麻繊維、竹繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維、紙粉、木粉が好ましい。充填剤は、一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
繊維状充填剤のアスペクト比は5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以上であることがさらに好ましい。
【0071】
また充填剤は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆または集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシランなどのカップリング剤などで処理されていてもよい。
【0072】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物における充填剤の配合量は、オレフィン系重合体(A)の合計量100重量部に対して、1〜300重量部が好ましく、5〜150重量部がより好ましく、10〜50重量部がさらに好ましい。充填剤の配合比率が1重量%未満であると、物性の観点から配合する意義が実用上なく;300重量%を超えると、比重の増加が激しく、軽量性の観点で好ましくない。
【0073】
また本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、機械特性、成形性、耐熱性などに優れた樹脂組成物を得るという観点から、可塑剤を配合されることが好ましい。一般に知られている可塑剤を配合することができ、例えば、ポリアルキレングリコール系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ペンタエリスリトール、各種ソルビトール、ポリアクリル酸エステル、シリコーンオイルおよびパラフィン類などを挙げることができる。
【0074】
耐ブリードアウト性の観点から好ましい可塑剤は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロックおよび/またはランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体などのポリアルキレングリコールあるいはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物、および末端エーテル変性化合物などの末端封鎖化合物などのポリアルキレングリコール系可塑剤;ビス(ブチルジグリコール)アジペート、メチルジグリコールブチルジグリコールアジペート、ベンジルメチルジグリコールアジペート、アセチルトリブチルサイトレート、メトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート、エトキシカルボニルメチルジブチルサイトレートなどの多価カルボン酸エステル系可塑剤;グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレートおよびグリセリンモノアセトモノモンタネートなどのグリセリン系可塑剤などである。これらの可塑剤は一種または二種以上で用いることができる。
【0075】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物における可塑剤の配合量は、オレフィン系重合体の合計量100重量部に対して、0.01〜50重量部の範囲が好ましく、0.05〜20重量部の範囲がより好ましい。
【0076】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、機械特性、成形性、耐熱性などに優れた樹脂組成物を得るという観点から、その他の熱可塑性樹脂を配合されることが好ましい。中でも、透明性の点で、メタクリル系樹脂を配合することが好ましい。
【0077】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、耐衝撃性、耐熱性および耐表面剥離性の観点から、耐衝撃性改良剤を配合されることが好ましい。耐衝撃性改良剤とは、オレフィン系重合体(A−1)およびプロピレン系重合体(A−2)に含まれないものであって、エラストマーとしての効果を有するものである。
【0078】
耐衝撃性改良剤であるエラストマーは、オレフィン系重合体(A−1)成分およびプロピレン系重合体(A−2)成分のいずれか1種以上と反応性を有する官能基を含有する反応性エラストマーであっても、反応性を有していない未反応性エラストマーでもよいが;耐衝撃性、耐熱性、耐表面剥離性および機械物性の点から、オレフィン系重合体(A−1)成分およびプロピレン系重合体(A−2)成分のいずれとも反応性を有しない、未反応性エラストマーであることが好ましい。
【0079】
耐衝撃性改良剤であるエラストマーの例には、アクリルゴム、ジエンゴム(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン)、ジエン系単位とビニル系単位との共重合体またはこれらの水素添加共重合体(例えば、スチレン/ブタジエンランダム共重合体、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン/イソプレンランダム共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体(SIS)、ポリブタジエンにスチレンをグラフト共重合せしめたもの、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン/ブチレン/スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン/エチレン/プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン/エチレン/エチレン/プロピレン/スチレンブロック共重合体(SEEPS))、ポリイソブチレン、イソブチレンとブタジエンまたはイソプレンとの共重合体、天然ゴム、チオコールゴム、多硫化ゴム、ポリウレタンゴム、ポリエーテルゴム、エピクロロヒドリンゴムなどが含まれる。
【0080】
また、一定の架橋度を有するエラストマーや;ミクロ構造(例えば、シス構造、トランス構造など)を有するエラストマー;ビニル基などを有するエラストマー;コア層とそれを覆う1以上のシェル層から構成され、また隣接し合った層が異種の重合体から構成される多層構造重合体(いわゆるコアシェルエラストマー)なども使用することができる。
【0081】
耐衝撃性改良剤は、ジエン系単位とビニル系単位との共重合体またはこれらの水素添加共重合体でありうる。このビニル系単位は、耐衝撃性、耐熱性、靭性および耐表面剥離性を高めるため観点から、芳香族ビニル系単位であることが好ましく、スチレンであることがより好ましい。また、このビニル系単位の含有率は、耐衝撃性、耐熱性、靭性および耐表面剥離性のバランスが特に優れるという点で、1〜30重量%であることが好ましく、5〜15重量%であることがより好ましい。
【0082】
エラストマー成分の例には、三井化学社製「タフマー」、デュポンダウエラストマー社製「エンゲージ」「アフィニティ」、JSR社製「ダイナロン」、住友化学「エスプレン」、日本ポリエチレン社製「カーネル」、エクソンモービルケミカル社製「ビスタロン」「イグザクト」、クレイトンポリマー社製「クレイトン」、旭化成社製「タフテック」、クラレ社製「セプトン」「ハイブラー」、JSR社製「ダイナロン」などが含まれる。
【0083】
耐衝撃性改良剤としては、SBS、SIS、SBBS、SEBS、SEP、SEPS、SEEPS、コアシェルエラストマーから選択される1種以上であることが好ましく、SBBS、SEBS、SEPS、SEEPS、コアシェルエラストマーから選択される1種以上であることがより好ましく、SEBSまたはSEPSのいずれか1種であることがさらに好ましく、SEBSであることが最も好ましい。
【0084】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、さらなる任意成分が配合されていてもかまわない。任意成分とは、着色するための顔料:フェノール系、イオウ系、リン系などの酸化防止剤;帯電防止剤;ヒンダードアミン等の光安定剤;紫外線吸収剤:有機アルミ、燐酸エステル等の各種造核剤;機過酸化物;分散剤;中和剤;発泡剤;銅害防止剤;滑剤;難燃剤;ウイスカー、炭酸カルシウム、モンモリロナイト、合成マイカ、天然マイカ、水酸化マグネシウム、ガラス繊維、金属繊維、カーボンブラック、ビニルエステル、カーボンナノチューブ、フラーレン、塗装改質剤、各種カップリング剤などを挙げることができる。
【0085】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。例えば、オレフィン系重合体(A−1)と、プロピレン系重合体(A−2)と、必要に応じてその他の任意成分(添加剤)とを、予めブレンドした後、単軸または二軸押出機などを用いて、融点以上において均一に溶融混練する方法;または、各成分を溶液中で混合した後に、溶媒を除去する方法などが好ましく用いられる。
【0086】
単軸または二軸押出機などを用いて溶融混練する場合は、樹脂組成物の相構造を好適にするために、例えば、<a>オレフィン系重合体(A−1)、プロピレン系重合体(A−2)およびその他添加剤を一括して溶融混練する方法、<b>オレフィン系重合体(A−1)、プロピレン系重合体(A−2)を事前に溶融混練して樹脂組成物を得た後、必要に応じてその他の添加剤と溶融混練する方法、<c>メインフィーダーからオレフィン系重合体(A−1)、およびプロピレン系重合体(A−2)を供給し、必要に応じてその他の添加剤を押出機の先端部分のサイドフィーダーから供給する方法などが挙げられる。充填剤を配合する場合には、<c>メインフィーダーからオレフィン系重合体(A−1)、プロピレン系重合体(A−2)および充填剤以外のその他添加剤を一括供給し、充填剤をサイドフィーダーから供給することが好ましい。
【0087】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を製造する際の溶融混練温度は、170〜280℃が好ましく、175℃〜250℃がさらに好ましく、180〜230℃が特に好ましい。
【0088】
本発明の樹脂組成物は、公知の各種成形法により、成形品とすることができる。成形法としては、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形などが好ましい。本発明の樹脂組成物は、射出成形品、押出成形品、プレス成形品およびブロー成形品など各種成形品に加工されることにより、特に有用となる。また本発明の樹脂組成物は、シート、フィルム、繊維などとして利用することができる。
【0089】
本発明の樹脂組成物を射出成形する場合は、金型温度を、耐熱性、成形性および外観性の点から好ましくは30℃以上、より好ましくは70℃以上に設定し;試験片の変形を抑制するという点から好ましくは120℃以下、より好ましくは99℃以下、さらに好ましくは90℃以下に設定する。
【0090】
本発明の樹脂組成物からなる成形品は、自動車部品(内装・外装部品など)、電気・電子部品(各種ハウジング、歯車、ギアなど)、建築部材、土木部材、農業資材、および日用品など各種用途に利用することができる。得られた組成物は軽量性に優れ、かつ、高度な機械物性を有している。したがって、とりわけ、車両用部品、家電用部品、等の工業部品材料として特に好適である。
【0091】
本発明の樹脂組成物からなる成形品は、具体的には、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジング、スペアタイヤカバー、ドアトリムなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクターなど各種自動車用コネクターなどに代表される自動車部品として用いられうる。
【0092】
また、本発明の樹脂組成物からなる成形品は、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジングおよび内部部品、コピー機のハウジングおよび内部部品、ファクシミリのハウジングおよび内部部品、パラボラアンテナなどに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、などに代表される家庭・事務電気製品部品;電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジングや内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、モーターケース、スイッチ、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子部品などに用いられうる。
【0093】
また、本発明の樹脂組成物からなる成形品は、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床などの建築部材;釣り糸、漁網、海藻養殖網、釣り餌袋などの水産関連部材;植生ネット、植生マット、防草袋、防草ネット、養生シート、法面保護シート、飛灰押さえシート、ドレーンシート、保水シート、汚泥・ヘドロ脱水袋、コンクリート型枠などの土木関連部材;歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、ファン、テグス、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品;マルチフィルム、トンネル用フィルム、防鳥シート、植生保護用不織布、育苗用ポット、植生杭、種紐テープ、発芽シート、ハウス内張シート、農業用塩ビフィルムの止め具、緩効性肥料、防根シート、園芸ネット、防虫ネット、幼齢木ネット、プリントラミネート、肥料袋、試料袋、土嚢、獣害防止ネット、誘因紐、防風網などの農業部材などに用いられうる。
【0094】
また、本発明の樹脂組成物からなる成形品は、紙おむつ、生理用品包材、綿棒、おしぼり、便座ふきなどの衛生用品、医療用不織布(縫合部補強材、癒着防止膜、人工器官補修材)、創傷被覆材、キズテープ包帯、貼符材基布、手術用縫合糸、骨折補強材、医療用フィルムなどの医療用品;カレンダー、文具、衣料、食品等の包装用フィルム、トレイ、ブリスター、ナイフ、フォーク、スプーン、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴなどの容器・食器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類化粧品容器、ラップ、発泡緩衝剤、紙ラミ、シャンプーボトル、飲料用ボトル、カップ、キャンディ包装、シュリンクラベル、蓋材料、窓付き封筒、果物かご、手切れテープ、イージーピール包装、卵パック、HDD用包装、コンポスト袋、記録メディア包装、ショッピングバック、電気・電子部品等のラッピングフィルムなどの容器・包装、天然繊維複合、ポロシャツ、Tシャツ、インナー、ユニホーム、セーター、靴下、ネクタイなどの各種衣料、カーテン、イス貼り地、カーペット、テーブルクロス、布団地、壁紙、ふろしきなどのインテリア用品などに用いられうる。
【0095】
さらに本発明の樹脂組成物からなる成形品は、キャリアーテープ、プリントラミ、感熱孔版印刷用フィルム、離型フィルム、多孔性フィルム、コンテナバッグ、クレジットカード、キャッシュカード、IDカード、ICカード、紙、皮革、不織布等のホットメルトバインダー、磁性体、硫化亜鉛、電極材料等粉体のバインダー、光学素子、導電性エンボステープ、ICトレイ、ゴルフティー、ゴミ袋、レジ袋、各種ネット、歯ブラシ、文房具、水切りネット、ボディタオル、ハンドタオル、お茶パック、排水溝フィルター、クリアファイル、コート剤、接着剤、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、食卓、机の表面、家具パネル、台所キャビネット、ペンキャップ、ガスライターなどとして用いられうる。
【実施例】
【0096】
以下に実施例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその趣旨を逸脱しない限り、これによって限定されるものではない。なお、実施例における各種物性値の測定方法、用いた材料は以下の通りである。
【0097】
測定方法
(1)極限粘度[η]
約20mgのサンプルを、デカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈した後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作を、さらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた。
[η]= lim(ηsp/C) (C→0)
【0098】
(2)IR(赤外分光分析)測定
測定装置としてJEOL(FT−IR410)スペクトロメーターを用いて、200℃の熱プレス措置により該試料のプレスシートを作成して、FTモードによりIR測定を実施した。
【0099】
(3)MFR(単位:g/10min):JIS K7210 条件14に準拠し、230℃、2.16kg荷重(21.18N荷重)で測定した。
【0100】
(4)曲げ弾性率(単位:MPa):JIS−K7171に準拠して23℃下で測定した。
【0101】
(5)荷重たわみ温度(単位:℃):JIS−K7191−2に準拠して、0.45MPaの条件で測定した。
【0102】
(6)密度(単位:g/cm):JIS−K7112に準拠して、水中置換法にて測定した。
【0103】
〔製造例1〕
極限粘度([η])が7.2dl/gのプロピレン重合体100重量部と、無水マレイン酸3.5重量部と、有機過酸化物(2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert- ブチルパーオキシ)ヘキシン-3)0.1重量部とを、一軸押出機(サーモ20mmφ)に投入した。樹脂温度250℃で溶融混練し、無水マレイン酸グラフト変性プロピレン重合体(D−1)を得た。
【0104】
得られた変性プロピレン重合体(D−1)の極限粘度([η])は、0.45dl/gであった。変性プロピレン重合体中(D−1)の無水マレイン酸基含量は、IR測定から3.0重量%であることを確認した。
【0105】
〔製造例2〕
製造例1と同様にして、極限粘度([η])が7.2dl/gのプロピレン重合体100重量部と、無水マレイン酸1.5重量部とから、無水マレイン酸グラフト変性プロピレン重合体(D−2)を得た。変性プロピレン重合体(D−2)の極限粘度([η])は0.89dl/gであり、無水マレイン酸基含量は0.5重量%であった。
【0106】
〔製造例3:金属原子含有オレフィン系重合体〕
製造例1で得られた無水マレイン酸グラフト変性プロピレン重合体(D−1)50gをアセトン100mL中に懸濁させ、1規定の水酸化ナトリウム水溶液150mLを加えて室温で4時間攪拌処理した。濾過して得られた反応生成物を回収した。回収物を水500gで3回洗浄後、メタノール500gで1回洗浄し、80℃で減圧乾燥して、50gのPO−M(A−1−1)を得た。
【0107】
PO−M(A−1−1)のMFRは、850g/10分であった。ナトリウム金属分析から、該重合体中に5000ppmのナトリウム金属原子が存在することが確認された。
【0108】
〔製造例4:金属原子含有オレフィン系重合体〕
製造例1で得られた無水マレイン酸グラフト変性プロピレン重合体(D−1)50gをアセトン100mL中に懸濁させ、1規定の水酸化カリウム水溶液150mLを加えて室温で4時間攪拌処理した。濾過して得られた反応生成物を回収した。回収物を水500gで3回洗浄後、メタノール500gで1回洗浄し、80℃で減圧乾燥して、50gのPO−M(A−1−2)を得た。
【0109】
PO−M(A−1−2)のMFRは800g/10分であった。カリウム金属分析から、該重合体中に8100ppmのカリウム金属原子が存在することが確認された。
【0110】
〔製造例5:金属原子含有オレフィン系重合体〕
製造例2で得られた無水マレイン酸グラフト変性プロピレン重合体(D−2)50gをアセトン100mL中に懸濁させ、1規定の水酸化ナトリウム水溶液150mLを加えて室温で4時間攪拌処理した。濾過して得られた反応生成物を回収した。回収物を水500gで3回洗浄後、メタノール500gで1回洗浄し、80℃で減圧乾燥して、50gのPO−M(A−1−3)を得た。
【0111】
PO−M(A−1−3)のMFRは300g/10分であった。ナトリウム金属分析から該重合体中には300ppmのナトリウム金属原子が存在することが観察された。
【0112】
〔製造例6:金属原子含有オレフィン系重合体〕
製造例2で得られた無水マレイン酸グラフト変性プロピレン重合体(D−2)50gをアセトン100mL中に懸濁させ、1規定の水酸化カリウム水溶液150mLを加えて室温で4時間攪拌処理した。濾過して得られた反応生成物を回収した。回収物を水500gで3回洗浄後、メタノール500gで1回洗浄し、80℃で減圧乾燥して50gのPO−M(A−1−4)を得た。
【0113】
PO−M(A−1−4)のMFRは340g/10分であった。カリウム金属分析から該重合体中には490ppmのカリウム金属原子が存在することが観察された。
【0114】
〔実施例1〜8、比較例1〜2〕
製造例で得られたオレフィン系重合体(成分A−1−1〜A−1−4)と、ポリプロピレン(プライムポリマー社製;J106G、ペンタット分率;96.5%)(成分A−2)と、イルガノックス1010(チバガイギー社製)(成分C)とを、ラボプラストミル(東洋精機製作所製)を用いて、200℃で5分間溶融混錬し、ポリオレフィン系樹脂組成物を得た(表1)。
【0115】
得られた樹脂組成物の物性測定用試験片をプレス成型にて作成した。機械物性を表2に纏めた。
【0116】
〔比較例3〕
製造例3で得られた金属原子含有オレフィン系重合体(成分A−1−1)と、ポリプロピレン(プライムポリマー社製;J106G)(成分A−2)と、イルガノックス1010(チバガイギー社製)(成分C)とを、ラボプラストミル(東洋精機製作所製)を用いて、200℃で5分間溶融混錬し、ポリオレフィン系樹脂組成物を得た(表1)。
【0117】
得られた樹脂組成物の物性測定用試験片をプレス成型にて作製しようと試みたが、樹脂組成物が脆くて試験片を得られなかった。
【0118】
【表1】

【0119】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、軽量かつ物性バランスに優れたポリオレフィン系樹脂組成物及びその成形体を提供する事ができ、これに伴い、石油資源、エネルギー資源を大幅に削減することが可能な材料である。また、高度な機械物性バランスと共に優れた軽量性も有していることから、自動車等の車両部品として使用された場合には、車両の燃費効率を向上させることにも繋がるため、有限なエネルギー資源の節約、及び地球環境の保護に多大なる貢献をすることとなり、その工業的価値は極めて大きい。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の重合体からなるオレフィン系重合体(A)を含む、ポリオレフィン系樹脂組成物であって、
前記2種以上の重合体はいずれも、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とし、
前記ポリオレフィン系重合体(A)の1〜50重量%は、金属原子含有オレフィン系重合体(A−1)であり、
前記重合体(A−1)の分子構造における0.01重量%以上10重量%未満は、一般式(1):RCOOX(式(1)におけるRは、炭素数1〜20の炭化水素残基であり;XはLi、Na、K、Mg、Zn、Ca、Ba又はAlの金属成分である)で表される部分構造であり、
前記重合体(A−1)の、230℃かつ2.16kg荷重で測定されたメルトフローレートは、10〜1000g/10分である、
ポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記オレフィン系重合体(A)の50〜99重量%は、プロピレン系重合体(A−2)である、請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記プロピレン系重合体(A−2)が、プロピレン単独重合体である、請求項2に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記プロピレン系重合体(A−2)におけるプロピレン単独重合体部分のアイソタクチックペンタッド分率が、95.0%以上である、請求項2または3に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項5】
MFRが1〜300g/10分であり、曲げ弾性率が1700〜10000MPaであり、0.45MPaの条件下で測定された荷重たわみ温度が120℃以上であり、かつ密度が1.00g/cm未満である、
請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリオレフィン系樹脂組成物からなる成形品。


【公開番号】特開2010−222455(P2010−222455A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70402(P2009−70402)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】