説明

ポリオレフィン系農業用フィルム

【課題】 本発明は、保温性に優れている上に、耐農薬性、耐候性、機械的強度及び防曇流滴性に優れたポリオレフィン系農業用フィルムを提供する。
【解決手段】 本発明のポリオレフィン系農業用フィルムは、ポリエチレン系樹脂を主成分とする樹脂からなる層(A)、エチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とし、式(1)で表される複合水酸化物縮合ケイ酸塩を有効成分とする保温剤を所定量含有してなる層(B)、エチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とする樹脂からなる層(C)がこの順に積層されてなり、上記ポリオレフィン系農業用フィルムの層(A)、層(B)又は層(C)の少なくとも一層に特定構造のヒンダードアミン系光安定剤及び/又はトリアジン系紫外線吸収剤が所定量含有されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用ハウスや農業用トンネルに用いられるポリオレフィン系農業用フィルムに関するものである。詳しくは、特に保温性に優れていると共に、耐農薬性、耐候性、機械強度及び防曇流滴性にも優れ、更に、農業用ハウスにおいて長期間に亘り硫黄燻蒸を行う栽培方法に使用される被覆フィルムとして好適に用いられるポリオレフィン系農業用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、農業用ハウスに被覆フィルムを展張し、この農業用ハウス内において農作物を栽培することが行われており、この農業用ハウス内の温度管理が農作物の栽培上、重要な要素となっている。
【0003】
特に、昼間に太陽熱を吸収して温度上昇した地面が夜間に外部に放出する輻射熱を農業用ハウス外に散逸するのを防止して、農業用ハウス内の地温及び気温が夜間にできるだけ下がらないようにする必要がある。
【0004】
上記被覆フィルムとしては、農業用ポリ塩化ビニル系フィルム(以下「農業用PVC系フィルム」と略す)、農業用ポリオレフィン系フィルム(以下「農業用PO系フィルム」と略す)などが用いられている。
【0005】
従来、広く使用されてきた農業用PVC系フィルムは、保温性、耐候性、透明性及び作業性に優れている反面、使用後の焼却廃棄時に有毒ガスが発生することから、近年はその使用が減少している。
【0006】
そこで、近年、農業用PVC系フィルムに代わるフィルムとして、農業用PO系フィルムの使用が急激に増加している。農業用PO系フィルムは、価格、加工性、機械強度及び廃棄処理の容易さなどの面で農業用PVC系フィルムよりも優れている。
【0007】
しかしながら、農業用PO系フィルムは、農業用PVC系フィルムと比較して、紫外線や熱などの劣化因子に対して脆弱な側面を有していた。そこで、長期間に亘る屋外使用や使用条件の厳しい地域での屋外使用を可能にするために種々の検討がなされてきた。
【0008】
農業用PO系フィルムの上記劣化因子に対する耐性を改善する方法として、例えば、安定剤としてヒンダードアミン系光安定剤を含有する農業用フィルムが開示されている(特許文献1,2参照)。上記方法では、紫外線や熱などの劣化因子に対する耐性は改善できたが、肥料や農薬などの薬剤に対する耐性は改善できず、栽培施設内で肥料や農薬などの薬剤を使用する環境では、長期間に亘って農業用PO系フィルムを使用することができなかった。
【0009】
又、ヒンダードアミン系化合物、ハイドロタルサイト類化合物及び紫外線吸収剤を含有し、無機硫黄剤で土壌又は植物を処理する施設園芸ハウス・トンネル栽培に用いられることを特徴とするポリオレフィン系樹脂被覆フィルム(特許文献3参照)が提案されているが、これら添加剤の組合せを使用しても、実際には農業用フィルムとして要求される耐農薬性を付与することは難しく更なる改良が求められていた。
【0010】
そして、上述の農業用PO系フィルムは何れも保温性が不十分であり、更なる改良が求められていた。
【0011】
【特許文献1】特開昭59−86645号公報
【特許文献2】特開平2−167350号公報
【特許文献3】特開平8−224049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、特に保温性に優れている上に、耐侯性、機械的強度及び防曇流滴性にも優れており、肥料や農薬などの薬剤に対しても良好な耐性を持ち、長期間に亘って好適に使用することができるポリオレフィン系農業用フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のポリオレフィン系農業用フィルムは、密度が0.90〜0.93g/cm3で且つメルトマスフローレイトが0.5〜7.0g/10分であるポリエチレン系樹脂を50重量%以上含有する熱可塑性樹脂からなる層(A)、酢酸ビニル含有量が5〜20重量%で且つメルトマスフローレイトが0.5〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を50重量%以上含有する熱可塑性樹脂からなる層(B)、及び、酢酸ビニル含有量が3〜15重量%で且つメルトマスフローレイトが0.5〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を50重量%以上含有する熱可塑性樹脂からなる層(C)が、層(A)、層(B)、層(C)の順に積層一体化されてなるポリオレフィン系農業用フィルムであって、層(B)に、下記式(1)で表される複合水酸化物縮合ケイ酸塩を有効成分としてなる保温剤が上記ポリオレフィン系農業用フィルム全体を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜20重量部含有されており、上記複合水酸化物縮合ケイ酸塩は、その屈折率が1.48〜1.52で且つX線解析の(002)面の面間隔が10〜13Åであると共に850〜1150cm-1の範囲に亘って赤外線吸収能を有し、更に、一個以上のトリアジン骨格及び二個以上の下記式(2)で表されるピペリジン環構造を有し且つ数平均分子量が2000以上であるヒンダードアミン系光安定剤が層(A)、層(B)又は層(C)の少なくとも一層に含まれ、上記ヒンダードアミン系光安定剤が、その総量として上記ポリオレフィン系農業用フィルム全体を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対して0.02〜5重量部含有されていることを特徴とする。
【0014】
【化1】


(式(1)中、mは0≦m<5の範囲にある数、xは0≦x<1の範囲にある数、yは2≦y≦4の範囲にある数を示す)
【0015】
【化2】

【0016】
(但し、R1は、炭素数が1〜20のアルキル基又はシクロヘキシル基を表す。)
【0017】
本発明のポリオレフィン系農業用フィルムの層(A)を構成する熱可塑性樹脂としては、密度が0.90〜0.93g/cm3で且つメルトマスフローレイトが0.5〜7.0g/10分であるポリエチレン系樹脂を50重量%以上含有する熱可塑性樹脂に限定される。
【0018】
このようなポリエチレン系樹脂としては、その密度が0.90〜0.93g/cm3で且つメルトマスフローレイトが0.5〜7.0g/10分であれば、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのエチレンを50重量%以上含有するエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられ、エチレン−α−オレフィン共重合体が好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。なお、ポリエチレン系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0019】
なお、エチレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、特に限定されず、例えば、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0020】
そして、上記ポリエチレン系樹脂の密度は、低いと、ポリオレフィン系農業用フィルムの機械的強度が不十分となるほか、ポリオレフィン系農業用フィルム同士がブロッキングを起こしてフィルムの原反ロールからの繰り出しが困難となる一方、高いと、ポリオレフィン系農業用フィルムの透明性が低下するので、0.90〜0.93g/cm3に限定され、0.905〜0.925g/cm3が好ましい。なお、ポリエチレン系樹脂の密度は、JIS K7112に準拠して測定されたものをいう。
【0021】
更に、上記ポリエチレン系樹脂のメルトマスフローレイトは、小さいと、ポリオレフィン系農業用フィルムの製膜安定性が低下する一方、大きいと、ポリオレフィン系農業用フィルムの機械的強度が不十分となるので、0.5〜7.0g/10分に限定され、1.0〜4.0g/10分が好ましい。なお、ポリエチレン系樹脂のメルトマスフローレイトは、190℃の条件下にてJIS K7210に準拠して測定されたものをいう。
【0022】
そして、層(A)を構成する熱可塑性樹脂中における密度が0.90〜0.93g/cm3で且つメルトマスフローレイトが0.5〜7.0g/10分であるポリエチレン系樹脂の含有量は、少ないと、ポリオレフィン系農業用フィルムの機械的強度が不十分となるので、50重量%以上に限定される。
【0023】
又、層(A)には、密度が0.90〜0.93g/cm3で且つメルトマスフローレイトが0.5〜7.0g/10分であるポリエチレン系樹脂が50重量%以上含有されていれば、その他の熱可塑性樹脂が含有されていてもよく、このような熱可塑性樹脂としては、例えば、密度が0.90〜0.93g/cm3で且つメルトマスフローレイトが0.5〜7.0g/10分であるポリエチレン系樹脂以外のポリエチレン系樹脂や、ホモポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体などのポリプロピレン系樹脂が挙げられ、これらは単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、プロピレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0024】
ポリオレフィン系農業用フィルムの層(B)を構成する熱可塑性樹脂としては、酢酸ビニル含有量が5〜20重量%で且つメルトマスフローレイトが0.5〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を50重量%以上含有するものに限定される。
【0025】
層(B)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体中における酢酸ビニルの含有量は、少ないと、ポリオレフィン系農業用フィルムの柔軟性が不十分となる一方、多いと、ポリオレフィン系農業用フィルムの機械的強度が低下するので、5〜20重量%に限定され、10〜15重量%が好ましい。
【0026】
更に、層(B)を構成する上記エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトマスフローレイトは、小さいと、ポリオレフィン系農業用フィルムの製膜安定性が低下する一方、大きいと、ポリオレフィン系農業用フィルムの機械的強度が不十分となるので、0.5〜4.0g/10分に限定され、1.0〜3.0g/10分が好ましい。
【0027】
そして、層(B)を構成する熱可塑性樹脂中におけるエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量は、少ないと、ポリオレフィン系農業用フィルムの柔軟性が低下することがあるので、50重量%以上に限定される。
【0028】
又、層(B)には、酢酸ビニル含有量が5〜20重量%で且つメルトマスフローレイトが0.5〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体が50重量%以上含有されていれば、その他の熱可塑性樹脂が含有されていてもよく、このような熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのエチレンを50重量%以上含有するエチレン−α−オレフィン共重合体、酢酸ビニル含有量が5〜20重量%で且つメルトマスフローレイトが0.5〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体以外のエチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体などのポリプロピレン系樹脂が挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0029】
そして、層(B)には、下記式(1)で表される複合水酸化物縮合ケイ酸塩を有効成分としてなる保温剤が含有されており、層(B)にのみ下記式(1)で表される複合水酸化物縮合ケイ酸塩を有効成分としてなる保温剤が含有されていることが好ましい。上記複合水酸化物縮合ケイ酸塩は、キブサイト構造の水酸化アルミニウム八面体層の空位(ベーカント)にリチウムイオン及びマグネシウムイオンを入れて基本骨格とし、その中間層に縮合ケイ酸イオンが導入されたものである。
【0030】
【化3】



(式(1)中、mは0≦m<5の範囲にある数、xは0≦x<1の範囲にある数、yは2≦y≦4の範囲にある数を示す)
【0031】
上記複合水酸化物縮合ケイ酸塩のX線解析の(002)面の面間隔は、10〜13Åに限定される。なお、複合水酸化縮合ケイ酸塩のX線解析の(002)面の面間隔は、X線回折装置により測定し、回折角からブラッグの条件式を用いて求められたものをいう。
【0032】
又、上記複合水酸化物縮合ケイ酸塩の屈折率は、上記ポリオレフィン系農業用フィルムに用いられる熱可塑性樹脂の屈折率1.5と近い値でないと、ポリオレフィン系農業用フィルムの透光性が低下するので、1.48〜1.52に限定される。
【0033】
そして、上記複合水酸化物縮合ケイ酸塩は、850〜1150cm-1の範囲に亘って赤外線吸収ピークを有するものに限定される。なお、上記複合水酸化物縮合ケイ酸塩の赤外線吸収は、赤外線分光光度計を用いて測定することができる。
【0034】
又、層(B)中に含まれる保温剤は、少ないと、ポリオレフィン系農業用フィルムの保温性が不十分となる一方、多いと、ポリオレフィン系農業用フィルムの透明性が損なわれるほか、ポリオレフィン系農業用フィルムの機械的強度及び製膜安定性が低下するので、ポリオレフィン系農業用フィルム全体を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜20重量部に限定され、3〜18重量部が好ましく、5〜15重量部がより好ましい。
【0035】
ポリオレフィン系農業用フィルムの層(C)を構成する熱可塑性樹脂としては、酢酸ビニル含有量が3〜15重量%で且つメルトマスフローレイトが0.5〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を50重量%以上含有するものに限定される。
【0036】
又、層(C)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体中における酢酸ビニルの含有量は、少ないと、ポリオレフィン系農業用フィルムの柔軟性が不十分となるほか、必要に応じて設けられる防曇性被膜の密着性が低下する一方、多いと、ポリオレフィン系農業用フィルムの機械的強度が低下するほか、フィルム同士がブロッキングを起こし、フィルムの原反ロールからの繰り出しが困難となるので、3〜15重量%に限定され、5〜10重量%が好ましい。
【0037】
そして、層(C)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトマスフローレイトは、小さいと、ポリオレフィン系農業用フィルムの製膜安定性が低下する一方、大きいと、ポリオレフィン系農業用フィルムの機械的強度が不十分となるので、0.5〜4.0g/10分に限定され、1.0〜3.0g/10分が好ましい。
【0038】
又、層(C)を構成する熱可塑性樹脂中におけるエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量は、少ないと、ポリオレフィン系農業用フィルムの柔軟性が不十分となることがあるので、50重量%以上に限定される。
【0039】
なお、層(C)には、酢酸ビニル含有量が3〜15重量%で且つメルトマスフローレイトが0.5〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体が50重量%以上含有されていれば、その他の熱可塑性樹脂が含有されていてもよく、このような熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのエチレンを50重量%以上含有するエチレン−α−オレフィン共重合体、酢酸ビニル含有量が3〜15重量%で且つメルトマスフローレイトが0.5〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体以外のエチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体などのポリプロピレン系樹脂が挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0040】
更に、上記ポリオレフィン系農業用フィルムの層(A)、層(B)及び層(C)うち少なくとも一層にヒンダードアミン系光安定剤が含有される。このヒンダードアミン系光安定剤としては、分子中に、一個以上のトリアジン骨格及び二個以上の下記式(2)で表されるピペリジン環構造を有するヒンダードアミン化合物が用いられ、例えば、下記式(3)で表されるヒンダードアミン化合物が挙げられる。
【0041】
【化4】

【0042】
(但し、R1は、炭素数が1〜20のアルキル基又はシクロヘキシル基を表す。)
【0043】
【化5】

【0044】
但し、式(3)中、nは1〜20の整数を表し、R2は少なくとも2個以上が−OR4基であれば、必ずしも互いに同一でなくてもよく、−OR4基以外には、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、−OH基、−CH2CN基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数5〜12のシクロアルコキシ基、炭素数3〜6のアルケニル基、フェニル基若しくはフェニル基に炭素原子数1〜4のアルキル基1〜3個が置換した炭素数7〜18のフェニルアルキル基、又は、炭素数1〜8のアシル基を表し、R3は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、−OH基、−CH2CN基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数5〜12のシクロアルコキシ基、炭素数3〜6のアルケニル基、フェニル基若しくはフェニル基に炭素原子数1〜4のアルキル基1〜3個が置換した炭素数7〜18のフェニルアルキル基、又は、炭素数1〜8のアシル基を表し、R4は、炭素数が1〜20のアルキル基又はシクロヘキシル基を表し、Xは炭素数2〜10のアルキレン基を表し、Yは−O−基、又は、−NH−基を表す。
【0045】
上記ヒンダードアミン系光安定剤の数平均分子量は、小さいと、光安定化効果とその持続性が低下してしまうので、2000以上に限定される。上記数平均分子量はGPC法により求められる分子量である。このようなヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から商品名「TINUVIN(チヌビン) NOR371」として市販されている。なお、上記式(3)の光安定剤は、特開平11−315067号公報又は特開平10−36369号公報に記載の方法により製造することができる。
【0046】
上記ヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、少ないと、ポリオレフィン系農業用フィルムの紫外線や熱などの劣化因子に対する耐性が低下する一方、多いと、ポリオレフィン系農業用フィルムに着色が生じる他、量の割に添加の効果が認められず経済的に不利であるので、ポリオレフィン系農業用フィルム全体を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.02〜5重量部に限定され、0.05〜3重量部が好ましい。
【0047】
上記ポリオレフィン系農業用フィルムには、その物性を損なわない範囲内において、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防霧剤、滑剤、顔料などが添加されてもよい。
【0048】
上記紫外線吸収剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、及び、後述するようなトリアジン系紫外線吸収剤などが挙げられ、これらの紫外線吸収剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0049】
ここで、後述するトリアジン系紫外線吸収剤をポリオレフィン系農業用フィルムに含有させる場合には、ポリオレフィン系農業用フィルムにおける層(A)、層(B)又は層(C)のうちの何れか一層或いは複数層に後述するトリアジン系紫外線吸収剤を含有させることができる。このような場合、ポリオレフィン系農業用フィルム中におけるトリアジン系紫外線吸収剤の含有量は、少ないと、ポリオレフィン系農業用フィルムの耐候性が不十分になってしまう一方、多いと、紫外線を遮断し過ぎて、蜜蜂を作物の受粉に使用した場合、紫外線を見て飛行する蜜蜂は、飛行するのが困難になって作物を受粉させることができなくなり、作物栽培性が低下してしまうので、ポリオレフィン系農業用フィルム全体を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.01〜0.1重量部が好ましく、0.02〜0.08重量部がより好ましく、0.05〜0.08重量部が特に好ましい。
【0050】
又、上記酸化防止剤としては、従来公知のものが使用でき、特に、熱安定剤としての効果を兼ね備えるものが好ましい。このような酸化防止剤としては、カルボン酸の金属塩、フェノール系抗酸化剤、有機亜燐酸エステルなどのキレーターが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0051】
なお、上記防霧剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、シリコーン系、フッ素系などの界面活性剤が挙げられる。上記滑剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、ステアリン酸アマイドなどの飽和脂肪酸アマイド、エルカ酸アマイド、オレイン酸アマイドなどの不飽和脂肪酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイドなどのビスアマイドなどが挙げられる。
【0052】
本発明のポリオレフィン系農業用フィルムには、その表面に生じた結露水を水膜状にして円滑に下方に向かって流下させるために、本発明の効果を阻害しない範囲内で、防曇剤を練りこんでもよい。このような防曇剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、グリセリンステアリン酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル、ソルビトールグリセリンステアリン酸エステルなどの多価アルコール飽和脂肪酸エステル;グリセリンオレイン酸エステル、ジグリセリンオレイン酸エステルなどの多価アルコール不飽和脂肪酸エステルなどが挙げられ、単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。
【0053】
又、上述のようにポリオレフィン系農業用フィルムに防曇剤を練りこむ代わりに、ポリオレフィン系農業用フィルムの表面に防曇性被膜を形成してもよい。このような防曇性被膜としては、例えば、コロイダルシリカやコロイダルアルミナに代表される無機酸化物ゾルのコーティング膜、界面活性剤を主成分とする液のコーティング膜、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、多糖類、ポリアクリル酸などの親水性樹脂を主成分とする膜などが挙げられる。なお、コロイダルシリカやコロイダルアルミナを主成分とする無機酸化ゾルのコーティング膜には、必要に応じて、界面活性剤、合成樹脂を添加してもよい。そして、上記防曇性被膜をポリオレフィン系農業用フィルムの表面に形成させる方法としては、例えば、グラビアコーターなどのロールコート法、バーコード法、ディップコート法、スプレー法、はけ塗り法などが挙げられる。
【0054】
本発明のポリオレフィン系農業用フィルムの厚さは、薄いと、ポリオレフィン系農業用フィルムの機械的強度や遮熱効果が低下することがある一方、厚いと、ポリオレフィン系農業用フィルムの裁断、接合、展張作業などが困難になり、取扱い性が低下することがあるので、20〜300μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。
【0055】
上記したポリオレフィン系農業用フィルムでは、層(A)、層(B)又は層(C)の少なくとも一層に、一個以上のトリアジン骨格及び二個以上の上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有し且つ数平均分子量が2000以上であるヒンダードアミン系光安定剤含有させてなるポリオレフィン系農業用フィルムを説明したが、層(A)、層(B)又は層(C)の少なくとも一層にトリアジン系紫外線吸収剤を含有させる一方、層(A)、層(B)又は層(C)の少なくとも一層に任意に上記したヒンダードアミン系光安定剤や、これ以外のヒンダードアミン系光安定剤を含有させたポリオレフィン系農業用フィルムであってもよい。なお、上記したポリオレフィン系農業用フィルムと同様の構成についてはその説明を省略する。
【0056】
ここで、上記トリアジン系紫外線吸収剤は、下記式(4)で表されるトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤である。
【0057】
【化6】

【0058】
但し、上記式(4)中のR5〜R9は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0059】
なお、上記式(4)中のR5は炭素数6〜10のアルキル基であることが好ましく、オクチル基又はヘキシル基であることがより好ましい。これは、R5が水素原子又は炭素数が6未満のアルキル基であると、トリアジン系紫外線吸収剤がブリードアウトしやすくなって、ポリオレフィン系農業用フィルムの透明性が低下してしまうことがある一方、炭素数が10よりも多いアルキル基であると、ポリオレフィン系農業用フィルムの耐候性が不十分になることがあるからである。
【0060】
又、上記式(4)中のR6〜R9はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。これは、R6〜R9が、炭素数が2よりも多いアルキル基であると、ポリオレフィン系農業用フィルムの耐候性が不十分になることがあるからである。
【0061】
上記トリアジン系紫外線吸収剤としては、具体的には、上記式(4)におけるR5がオクチル基で且つR6〜R9がメチル基である2−〔4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル〕−5−(オクチルオキシ)フェノール;R5がヘキシル基で且つR6〜R9が水素原子である2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−〔(ヘキシル)オキシ〕−フェノールなどが挙げられる。このようなトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤は、例えば、サイテック社から商品名「CYASORB UV−1164」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から商品名「TINUVIN1577FF」で市販されている。
【0062】
そして、上記ポリオレフィン系農業用フィルムにおけるトリアジン系紫外線吸収剤の含有量は、少ないと、ポリオレフィン系農業用フィルムの耐候性が不十分になってしまう一方、多いと、紫外線を遮断し過ぎて、蜜蜂を作物の受粉に使用した場合、紫外線を見て飛行する蜜蜂は、飛行するのが困難になって作物を受粉させることができなくなり、作物栽培性が低下してしまうので、ポリオレフィン系農業用フィルム全体を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.01〜0.1重量部に限定され、0.02〜0.08重量部が好ましく、0.05〜0.08重量部がより好ましい。
【0063】
なお、本発明のポリオレフィン系農業用フィルムにおける層(A)、層(B)又は層(C)の少なくとも一層には、上記トリアリールトリアジン型紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤が含有されていてもよい。
【0064】
上記トリアジン系紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0065】
又、本発明のポリオレフィン系農業用フィルムには、その物性を損なわない範囲内で、ヒンダードアミン系光安定剤、酸化防止剤、防霧剤、防曇剤、滑剤、顔料などが添加されてもよい。なお、酸化防止剤、防霧剤及び防曇剤は上述したものと同様であるのでその説明を省略する。
【0066】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、テトラ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、テトラ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、1,5,8,12−テトラキス〔4,6−ビス{N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミノ}−1,3,5−トリアジン−2−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジメチル縮合物、2−第三オクチルアミノ−4,6−ジクロロ−s−トリアジン/N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン縮合物、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン/ジブロモエタン縮合物の他に、上述した一個以上のトリアジン骨格及び二個以上の上記式(2)で表されるピペリジン環構造を有し且つ数平均分子量が2000以上であるヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられる。
【0067】
そして、上記のようなヒンダードアミン系光安定剤は、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から、商品名「TINUVIN770」、「TINUVIN780」、「TINUVIN144」、「TINUVIN622LD」、「TINUVIN NOR371」、「CHIMASSORB119FL」、「CHIMASSORB944」;三共社から、商品名「サノール LS−765」;旭電化社から、商品名「アデカスタブ LA−63」、「アデカスタブ LA−68」、「アデカスタブ LA−62」、「アデカスタブ LA−67」、「アデカスタブ LA−57」;サイテック社から、商品名「CYASORB UV−3346」、「CYASORB UV−3529」、「CYASORB UV−3581」、「CYASORB UV−3853」として市販されている。
【発明の効果】
【0068】
本発明のポリオレフィン系農業用フィルムは、上述のような構成を有するので、特に保温性に優れている上に、耐侯性、機械的強度及び防曇流滴性にも優れ、更に、肥料や農薬などの薬剤に対しても良好な耐性を有することから、長期間に亘って好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.92g/cm3、メルトマスフローレイト:1.2g/10分)100重量部及びヒンダードアミン系光安定剤A(チバ・スペシャルティ・ケミカル社製 商品名「TINUVIN NOR371」、数平均分子量:約3600)0.5重量部を第一押出機に、エチレン−酢酸ビニル共重合体A(密度:0.92g/cm3、メルトマスフローレイト:1.4g/10分、酢酸ビニル含有量:15%)100重量部、ヒンダードアミン系光安定剤A0.5重量部及び複合水酸化物縮合ケイ酸塩A([Al2(Li0.90・Mg0.10)・(OH)62(Si371.10・3H2O)(戸田工業社製 商品名「OPTIMA−LSA」)10重量部を第二押出機に、エチレン−酢酸ビニル共重合体B(密度:0.915g/cm3、メルトマスフローレイト:1.3g/10分、酢酸ビニル含有量:5%)100重量部及びヒンダードアミン系光安定剤A0.5重量部を第三押出機に供給し、それぞれの押出機中で溶融混練させた後、第一〜三押出機から、層(A)、層(B)、層(C)の厚さ比が15:70:15になるようにインフレーション法で押出成形し、層(A)、層(B)、層(C)がこの順で三層に積層一体化されてなる総厚さが150μmのポリオレフィン系農業用フィルムを得た。
【0071】
なお、複合水酸化物縮合ケイ酸塩A([Al2(Li0.90・Mg0.10)・(OH)62(Si371.10・3H2O)は、その屈折率が1.498で、X線解析の(002)面の面間隔は11.71Åで、850〜1150cm-1の範囲に亘って赤外線吸収能を有していた。
【0072】
(実施例2)
層(B)の複合水酸化物縮合ケイ酸塩Aを10重量部の代わりに15重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてポリオレフィン系農業用フィルムを得た。
【0073】
(実施例3)
層(A)、層(B)及び層(C)のヒンダードアミン系光安定剤Aをそれぞれ0.5重量部の代わりに0.05重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてポリオレフィン系農業用フィルムを得た。
【0074】
(実施例4)
層(A)、層(B)及び層(C)において、ヒンダードアミン系光安定剤A0.5重量部の代わりに、下記式(5)で表される2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−〔(ヘキシル)オキシ〕−フェノールからなるトリアジン系紫外線吸収剤A(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 商品名「TINUVIN1577FF」)0.08重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリオレフィン系農業用フィルムを得た。
【0075】
【化7】

【0076】
(実施例5)
層(A)、層(B)及び層(C)において、トリアジン系紫外線吸収剤Aの代わりに、下記式(6)で表される2−〔4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル〕−5−(オクチルオキシ)フェノールからなるトリアジン系紫外線吸収剤B(サイテック社製 商品名「CYASORB UV−1164」)を用いたこと以外は実施例4と同様にして、ポリオレフィン系農業用フィルムを得た。
【0077】
【化8】

【0078】
(実施例6)
層(B)の複合水酸化物縮合ケイ酸塩Aを10重量部の代わりに15重量部としたこと以外は実施例4と同様にしてポリオレフィン系農業用フィルムを得た。
【0079】
(実施例7)
層(A)、層(B)及び層(C)の上記式(5)で表される2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−〔(ヘキシル)オキシ〕−フェノールからなるトリアジン系紫外線吸収剤Aをそれぞれ0.08重量部の代わりに0.04重量部としたこと以外は実施例4と同様にしてポリオレフィン系農業用フィルムを得た。
【0080】
(実施例8)
第一〜三押出機に上記式(5)で表される2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−〔(ヘキシル)オキシ〕−フェノールからなるトリアジン系紫外線吸収剤Aをそれぞれ0.08重量部ずつ更に供給したこと以外は実施例1と同様にしてポリオレフィン系農業用フィルムを得た。
【0081】
(比較例1)
層(A)、層(B)及び層(C)において、ヒンダードアミン系光安定剤Aの代わりにヒンダードアミン系光安定剤B(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 商品名「CHIMASSORB944」)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリオレフィン系農業用フィルムを得た。
【0082】
(比較例2)
層(B)において、複合水酸化物縮合ケイ酸塩Aの代わりに複合水酸化物縮合ケイ酸塩B (Li2Mg0.10Al4・(OH)12.20(CO30.04(SO40.90・4H2O)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン系農業用フィルムを得た。
【0083】
(比較例3)
層(B)において、複合水酸化物縮合ケイ酸塩Aの代わりに合成ハイドロタルサイト(Mg4.5Al3・(OH)13CO3・3.5H2O)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン系農業用フィルムを得た。
【0084】
(比較例4)
層(A)、層(B)及び層(C)において、ヒンダードアミン系光安定剤Aの代わりにヒンダードアミン系光安定剤B(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 商品名「CHIMASSORB944」)を用いたこと、及び、層(B)において、複合水酸化物縮合ケイ酸塩Aの代わりに複合水酸化物縮合ケイ酸塩B (Li2Mg0.10Al4・(OH)12.20(CO30.04(SO40.90・4H2O)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリオレフィン系農業用フィルムを得た。
【0085】
(比較例5)
層(A)、層(B)及び層(C)において、ヒンダードアミン系光安定剤Aの代わりにヒンダードアミン系光安定剤B(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 商品名「CHIMASSORB944」)を用いたこと、層(B)において、複合水酸化物縮合ケイ酸塩Aの代わりに合成ハイドロタルサイト(Mg4.5Al3・(OH)13CO3・3.5H2O)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン系農業用フィルムを得た。
【0086】
(比較例6)
層(A)、層(B)及び層(C)において、トリアジン系紫外線吸収剤Aの代わりにベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 商品名「TINUVIN326」)を用いたこと以外は実施例4と同様にして、ポリオレフィン系農業用フィルムを得た。
【0087】
(比較例7)
層(A)、層(B)及び層(C)において、トリアジン系紫外線吸収剤Aの代わりにベンゾフェノン系紫外線吸収剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 商品名「CHIMASSORB81」)を用いたこと以外は実施例4と同様にして、ポリオレフィン系農業用フィルムを得た。
【0088】
(比較例8)
層(B)において、複合水酸化物縮合ケイ酸塩Aの代わりに複合水酸化物縮合ケイ酸塩B (Li2Mg0.10Al4・(OH)12.20(CO30.04(SO40.90・4H2O)を用いたこと以外は、実施例4と同様にしてポリオレフィン系農業用フィルムを得た。
【0089】
(比較例9)
層(B)において、複合水酸化物縮合ケイ酸塩Aの代わりに合成ハイドロタルサイト(Mg4.5Al3・(OH)13CO3・3.5H2O)を用いたこと以外は、実施例4と同様にしてポリオレフィン系農業用フィルムを得た。
【0090】
(比較例10)
層(A)、層(B)及び層(C)において、トリアジン系紫外線吸収剤Aの代わりにベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 商品名「TINUVIN326」)を用いたこと、及び、層(B)において、複合水酸化物縮合ケイ酸塩Aの代わりに複合水酸化物縮合ケイ酸塩B (Li2Mg0.10Al4・(OH)12.20(CO30.04(SO40.90・4H2O)を用いたこと以外は実施例4と同様にして、ポリオレフィン系農業用フィルムを得た。
【0091】
(比較例11)
層(A)、層(B)及び層(C)において、トリアジン系紫外線吸収剤Aの代わりにベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 商品名「TINUVIN326」)を用いたこと、及び、層(B)において、複合水酸化物縮合ケイ酸塩Aの代わりに合成ハイドロタルサイト(Mg4.5Al3・(OH)13CO3・3.5H2O)を用いたこと以外は、実施例4と同様にしてポリオレフィン系農業用フィルムを得た。
【0092】
上記のようにして得られたポリオレフィン系農業用フィルムについて、破断点強度、引裂強度、促進耐候性、耐農薬性、保温性及び透明性を下記の方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0093】
なお、表1及び表2において、「光安定剤総量」とは、ポリオレフィン系農業用フィルム全体を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対する光安定剤の総量をいい、「紫外線吸収剤総量」とは、ポリオレフィン系農業用フィルム全体を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対する紫外線吸収剤の総量をいい、「保温剤総量」とは、ポリオレフィン系農業用フィルム全体を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対して層(B)中に含有される複合水酸化物縮合ケイ酸塩の量をいう。
【0094】
(破断点強度)
ストログラフ(東洋精機製作所社製)を用い、JIS K6781に準拠して、ポリオレフィン系農業用フィルムの破断点強度を測定し、下記判断基準により破断点強度を評価した。
○・・・破断点強度が20.0N以上であった。
△・・・破断点強度が15.0N以上且つ20.0N未満であった。
×・・・破断点強度が15.0N未満であった。
【0095】
(引裂強度)
エルメンドルフ引裂強度測定機(東洋精機製作所社製)を用いてJIS K7128に準拠して、ポリオレフィン系農業用フィルムの引裂強度を測定し、下記判断基準により引裂強度を評価した。
○・・・引裂強度が15.0N以上であった。
△・・・引裂強度が10.0N以上且つ15.0N未満であった。
×・・・引裂強度が10.0N未満であった。
【0096】
(促進耐候性)
サンシャインスーパーロングライフウェザーメーター(スガ試験株式会社製)を用い、ブラックパネル温度63℃、水噴霧時間12分/1時間の条件下にて、ポリオレフィン系農業用フィルムに紫外線を800時間に亘って照射した後、JIS K6781に準拠して、ポリオレフィン系農業用フィルムの破断点伸度を測定し、下記判断基準により促進耐候性を評価した。
◎・・・破断点伸度が800%以上であった。
○・・・破断点伸度が600%以上且つ800%未満であった。
△・・・破断点伸度が300%以上且つ600%未満であった。
×・・・破断点伸度が300%未満であった。
【0097】
(耐農薬性)
縦15cm×横15cmに裁断したポリオレフィン系農業用フィルムを1N亜硫酸水溶液に1日間浸漬した後、取り出して、サンシャインスーパーロングライフウェザーメーター(スガ試験株式会社製)を用い、ブラックパネル温度63℃、水噴霧時間12分/1時間の条件下にて、ポリオレフィン系農業用フィルムに紫外線を1000時間に亘って照射した後に、JIS K6781に準拠して、ポリオレフィン系農業用フィルムの破断点伸度を測定し、下記の基準で耐農薬性を評価した。
○・・・残存破断点伸度が500%以上であった。
△・・・残存破断点伸度が200%以上且つ500%未満であった。
×・・・残存破断点伸度が200%未満であった。
【0098】
(保温性)
赤外線分光光度計(日本分光社製 商品名「FT/IR−410」)を用いてポリオレフィン系農業用フィルムの吸収スペクトルを測定し、各波数の赤外線吸収率に15℃の黒体輻射エネルギー吸収率を乗じて規格化し、400〜2000cm-1の波数範囲に亘って積算する。得られたエネルギー吸収率を総黒体輻射エネルギーで除して百分率とし保温指数とする。下記の基準で保温性の評価を行った。
○・・・保温指数が80%以上であった。
△・・・保温指数が50%以上且つ80%未満であった。
×・・・保温指数が50%未満であった。
【0099】
(透明性)
作製直後のポリオレフィン系農業用フィルムのヘーズ値を、ヘーズ測定器(日本電色工業社製 商品名「NDH2000」)により測定し、下記基準により透明性を評価した。
○・・・ヘーズ値が15%未満であった。
△・・・ヘーズ値が15%以上且つ20%未満であった。
×・・・ヘーズ値が20%以上であった。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が0.90〜0.93g/cm3で且つメルトマスフローレイトが0.5〜7.0g/10分であるポリエチレン系樹脂を50重量%以上含有する熱可塑性樹脂からなる層(A)、酢酸ビニル含有量が5〜20重量%で且つメルトマスフローレイトが0.5〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を50重量%以上含有する熱可塑性樹脂からなる層(B)、及び、酢酸ビニル含有量が3〜15重量%で且つメルトマスフローレイトが0.5〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を50重量%以上含有する熱可塑性樹脂からなる層(C)が、層(A)、層(B)、層(C)の順に積層一体化されてなるポリオレフィン系農業用フィルムであって、層(B)に、下記式(1)で表される複合水酸化物縮合ケイ酸塩を有効成分としてなる保温剤が上記ポリオレフィン系農業用フィルム全体を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜20重量部含有されており、上記複合水酸化物縮合ケイ酸塩は、その屈折率が1.48〜1.52で且つX線解析の(002)面の面間隔が10〜13Åであると共に850〜1150cm-1の範囲に亘って赤外線吸収能を有し、更に、一個以上のトリアジン骨格及び二個以上の下記式(2)で表されるピペリジン環構造を有し且つ数平均分子量が2000以上であるヒンダードアミン系光安定剤が層(A)、層(B)又は層(C)の少なくとも一層に含まれ、上記ヒンダードアミン系光安定剤が、その総量として上記ポリオレフィン系農業用フィルム全体を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対して0.02〜5重量部含有されていることを特徴とするポリオレフィン系農業用フィルム。
【化1】



(式(1)中、mは0≦m<5の範囲にある数、xは0≦x<1の範囲にある数、yは2≦y≦4の範囲にある数を示す)
【化2】


(但し、R1は、炭素数が1〜20のアルキル基又はシクロヘキシル基を表す。)
【請求項2】
密度が0.90〜0.93g/cm3で且つメルトマスフローレイトが0.5〜7.0g/10分であるポリエチレン系樹脂を50重量%以上含有する熱可塑性樹脂からなる層(A)、酢酸ビニル含有量が5〜20重量%で且つメルトマスフローレイトが0.5〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を50重量%以上含有する熱可塑性樹脂からなる層(B)、及び、酢酸ビニル含有量が3〜15重量%で且つメルトマスフローレイトが0.5〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を50重量%以上含有する熱可塑性樹脂からなる層(C)が、層(A)、層(B)、層(C)の順に積層一体化されてなるポリオレフィン系農業用フィルムであって、層(B)に、上記式(1)で表される複合水酸化物縮合ケイ酸塩を有効成分としてなる保温剤が上記ポリオレフィン系農業用フィルム全体を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜20重量部含有されており、上記複合水酸化物縮合ケイ酸塩は、その屈折率が1.48〜1.52で且つX線解析の(002)面の面間隔が10〜13Åであると共に850〜1150cm-1の範囲に亘って赤外線吸収能を有し、更に、上記ポリオレフィン系農業用フィルムの層(A)、層(B)又は層(C)の少なくとも一層にトリアジン系紫外線吸収剤が含まれ、上記トリアジン系紫外線吸収剤が、その総量として上記ポリオレフィン系農業用フィルム全体を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対して0.01〜0.1重量部含有されていることを特徴とするポリオレフィン系農業用フィルム。
【請求項3】
ポリオレフィン系農業用フィルムの層(A)、層(B)又は層(C)の少なくとも一層にトリアジン系紫外線吸収剤が含まれ、上記トリアジン系紫外線吸収剤が、その総量として上記ポリオレフィン系農業用フィルム全体を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対して0.01〜0.1重量部含有されていることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系農業用フィルム。

【公開番号】特開2007−125001(P2007−125001A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103687(P2006−103687)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(596111276)積水フイルム株式会社 (133)
【Fターム(参考)】