説明

ポリオレフィン製微多孔膜

【課題】安全性特性及び膜強度に優れたポリオレフィン製微多孔膜を提供する。
【解決手段】ポリエチレンとポリプロピレンを必須成分とする微多孔膜と、ポリエチレン微多孔膜を積層一体化する。
【効果】セパレーターを使用すれば、高い安全性及び強度が得られるため、特に、近年の小型高容量型の非水電解液系電池用セパレーターとして有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度且つ安全性特性に優れたポリオレフィン製微多孔膜であり、非水電解液系電池用セパレーターとして有用であり、特に小型高容量のリチウムイオン2次電池用セパレーターとして有用である。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン2次電池のような、非水溶媒系の電解液を使用した電池のセパレーターには従来よりポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィン製の微多孔膜が使用されてきた。ポリオレフィン製のセパレーターは耐薬品性が高いことに加えて、130〜160℃の温度では溶融して孔を閉塞するシャットダウン機能を有するため、電池中で異常反応が生じて電池が高温になった場合にシャットダウンにより電池反応を停止させ、電池温度が異常に上昇するのを防ぐ安全性素子の役割も兼ね備えている。
【0003】
このシャットダウン機能の観点では、融点の低いポリエチレン製のセパレーターが有利であるが、高温での形状維持性を考慮した場合には、ポリプロピレン製のセパレーターが有利である。従って、シャットダウン特性と高温での形状維持特性を両立させる目的で、従来よりポリエチレンとポリプロピレンをブレンドしたり、ポリエチレン製の微多孔膜とポリプロピレン製の微多孔膜を積層するような技術が開示されてきた。
【0004】
一方で、近年電子機器の小型軽量化及び多機能化に伴い、電池の小型軽量化及び高容量化が加速し、セパレーターには安全性機能及び強度を維持しながらの薄膜化が求められるようになってきたが、従来の技術では薄膜化した場合にでも十分な安全性機能と強度を保つことが困難である。例えば、ポリエチレンとポリプロピレンのブレンドでは、非相溶性のポリマー同士のブレンドのため、機械強度や伸度の低下といった問題が生じ易く、薄膜化を考慮した場合不利である。加えて、特にポリプロピレンの割合が多いとシャットダウンが不完全になる危険性があり、薄膜化してポリマー量が減った場合や大孔径化した場合は、さらにその危険性が高くなることが考えられる。ポリエチレン製微多孔膜とポリプロピレン製微多孔膜を積層する技術においては、シャットダウン温度を低くするためには低融点のポリエチレンを使用する必要があり、強度的に不利である。
【0005】
即ち、低温シャットダウンと高強度化の両立が困難であり、薄膜化にとっては不利である。特開平9−241411号及び特開平10−316781号には、ポリエチレンとポリプロピレンをブレンドして作製したフィルムとポリプロピレンで作製したフィルムの積層物を延伸して微多孔膜を作製する技術が開示されているが、やはり低温シャットダウンと高強度化の両立が困難であり、薄膜化にとっては不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
安全性機能及び膜強度に優れ、特に非水電解系電池用セパレーターに適した積層微多孔膜の提供。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題に鑑みて鋭意検討した結果、本発明者らはポリエチレンとポリプロピレンを必須成分とする微多孔膜と、ポリエチレン微多孔膜を積層することで、薄膜化しても十分な安全性機能と強度が得られることを知見した。即ち本発明は、下記の通り。
(1)ポリエチレンとポリプロピレンを必須成分とする微多孔膜A、ポリエチレン微多孔膜Bを積層一体化させたポリオレフィン製微多孔膜。
(2)微多孔膜Aを構成するポリエチレンが超高分子量ポリエチレンであることを特徴とする(1)記載のポリオレフィン製微多孔膜。
(3)(1)又は(2)記載のポリオレフィン製微多孔膜からなる非水電解液系電池用セパレーター。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層微多孔膜は、安全性機能及び膜強度に優れ、とりわけ非水電解液系電池用セパレーターとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】孔閉塞温度を測定する装置の構成を示す全体概略図であり、(A)は孔閉塞温度を測定する装置の全体概略図、(B)は(A)のニッケル(Ni)箔(2A)面での断面図、(C)は(A)のNi箔(2B)面での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
積層膜の少なくとも1枚をポリエチレン単体膜とし、シャットダウン機能を負わせることで、良好なシャットダウン特性が得られ、加えてポリエチレンとポリプロピレンのブレンド膜で高温での耐破膜特性が得られる。さらに、ポリエチレンとポリプロピレンのブレンド膜において、超高分子量ポリエチレンを使用すれば高い膜強度が得られるため、薄膜化した際の強度維持に有利である。且つ、ポリプロピレンがブレンドされていることで、溶融体の粘度が下がり、成形加工し易くなるとの利点もある。
【0011】
微多孔膜Aに関しては、ポリプロピレン含量は、破膜温度及び膜強度の観点から、3〜50wt%が好ましく、より好ましくは5〜20wt%である。本発明の微多孔膜の安全性機能において、シャットダウン温度は、電池安全性の観点から140℃以下が好ましく、より好ましくは135℃以下である。破膜温度は、電池安全性の観点から150℃以上が好ましく、より好ましくは160℃以上である。
【0012】
本発明の微多孔膜の強度に関して、突刺強度は、電極活物質による破膜防止の観点から2.5N/25μm以上であることが好ましく、より好ましくは2.9N/25μm以上、さらに好ましくは3.9N/25μm以上である。本発明の微多孔膜の他の物性に関しては、膜厚は5〜50μmが好ましく、さらに好ましくは5〜20μmである。機械強度及び電極間の絶縁の完全性の点から5μm以上、小型電池のセパレーターとしての適性から50μm以下が好ましい。気孔率は20〜70%が好ましく、さらに好ましくは30〜50%である。電池セパレーターとして使用した場合に電池内部の抵抗が高くなることを防止する点から20%以上、機械強度の点から70%以下が好ましい。透気度は50〜1000sec/100cc/25μmが好ましく、より好ましくは50〜500sec/100cc/25μm、さらに好ましくは50〜300sec/100cc/25μmである。機械強度の点で50sec/100cc/25μm以上、透過性能の点から1000sec/100cc/25μm以下が好ましい。
【0013】
さらに、より安全性特性に優れた微多孔膜であるためには、シャットダウン時に収縮して内部短絡を起こさないように横方向の収縮率や収縮応力が小さいことが好ましい。具体的には、シャットダウン温度以下での横方向の最大収縮率は50%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下である。シャットダウン時の収縮で電極が露出し、短絡することを防止する観点から最大収縮率は50%以下が好ましい。さらに、収縮率が低いことに加えて収縮力が低ければ安全性機能にとってより好ましい。収縮力が低ければ、正極と負極からの圧着力で、収縮を防ぐことができる可能性がある。具体的には、シャットダウン温度以下での横方向の最大収縮応力は590kPa以下であることが好ましく、より好ましくは490kPa以下、さらに好ましくは390kPa以下である。
【0014】
本発明の微多孔膜の製造方法としては、例えば微多孔膜A及びBを別々に作製した後、カレンダーロール等を通して熱延伸しながら貼り合わせる方法や、多層ダイを使用して、共押出法によりダイスから出た時点で貼り合わせる方法等がある。積層形態は、積層後のカール防止を考慮すると、A/Bの二枚積層よりもA/B/A型或いはB/A/B型の3枚積層型が好ましい。微多孔膜A及びBの作製法としては、湿式法又は乾式法があるが、超高分子量ポリエチレンの使用を考慮すると湿式法が好ましい。湿式法には、ポリオレフィン樹脂と有機液状物を先端にT−ダイを装着した2軸押出機にて溶押出機中で溶融混練し、T−ダイからシート状に押出し成形した後で有機液状物を抽出除去し多孔化する方法、及びポリオレフィン樹脂、有機液状物、無機フィラーを先端にT−ダイを装着した2軸押出機にて溶押出機中で溶融混練し、T−ダイからシート状に押出し成形した後で有機液状物及び無機フィラーを抽出除去し多孔化する方法がある。いずれの方法においても、多孔化する前か後又は多孔化の前後において縦方向又は横方向のどちらか一方或いは縦横両方向に延伸処理をしても良い。
【0015】
本発明にて使用されるポリエチレンの種類としては、密度が0.94g/ccを越えるような高密度ポリエチレン、密度が0.93〜0.94g/ccの範囲の中密度ポリエチレン、密度が0.93g/ccより低い低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられ、それらを単独で使用しても、或いは混合物として使用してもよい。本発明にて使用されるポリプロピレンの種類としては、ホモポリマー及びエチレン成分と共重合させたコポリマーが挙げられ、それらを単独で使用しても、或いは混合物として使用してもよいが、ポリエチレンとの混合性を考慮すると、ホモポリマーよりもコポリマーの方が好ましい。コポリマーとしては、エチレンプロピレンランダムコポリマーやブロックコポリマーが挙げられる。さらに、膜強度や高温時の耐熱性を考慮するとメルトインデックスは1g/10min以下のものが好ましい。
【実施例】
【0016】
以下、以上の発明内容を実施例にて更に詳細に具体的に説明するが、本発明の実施態様は、下記の実施例に限定されるものではない。本発明のポリオレフィン製微多孔膜の諸特性は次の試験方法にて評価した。
1.膜厚(μm)
ダイヤルゲージ(尾崎製作所:PEAKOCK No.25)にて評価した。
2.透気度 (sec/100cc)
JIS P8117に準拠し、東洋精機製B型ガーレー式デンソメーターを用い、表線目盛り0〜100まで要する時間をストップウオッチで測定した。
3.最大収縮応力(Pa)
熱機械的分析装置(セイコー電子工業製TMA120)にて、サンプル長(TD)×サンプル幅=10mm×3mm初期荷重1.2g昇温速度10℃/minの条件にて測定。収縮応力曲線において最大収縮荷重(g)を求め、下記の(1)式より、最大収縮応力を算出した。
最大収縮応力={最大収縮荷重/(3×T)}×100×9.8×10000 (1)
T:サンプル厚み(μm)
【0017】
4.最大収縮率ステンレスのフレーム(外形=60mm×60mm、内形=40mm×40mm)に縦方向の両端のみをクリップにてサンプルを固定。固定後のサンプルの大きさは縦方向×横方向=50mm×40mm。固定した状態で、所定温度のオーブン中に30分間放置後、横方向の最短部の長さを測定し、以下の(2)式にて収縮率を算出。
収縮率(%)={(加熱前の横方向の長さ(40mm)−加熱後の横方向の最短部の長さ)/加熱前の横方向の長さ}×100
5.気孔率(%)
Xcm×Ycmのサンプルを切り出し、下記(1)式により算出した。
気孔率={1−(10000×M/ρ)/(X×Y×T)}× 100 (1)
(1)式中、T:サンプル厚み(μm)、M:サンプル質量(g)
ρ:樹脂の密度(0.95g/cc)
6.突刺強度(N)
(株)カトーテック社製のハンディー圧縮試験器KES−G5型に、直径1mm、先端の極率半径0.5mmの針を装着し、温度23±2℃、針の移動速度0.2cm/secで突刺試験を行った。
【0018】
7.孔閉塞温度(℃)、破膜温度(℃)
孔閉塞温度:図1(A)〜(C)に孔閉塞温度の測定装置の概略図を示す。図1(A)は測定装置の構成図である。1は微多孔膜であり、2A及び2Bは厚さ10μmのNi箔、3A及び3Bはガラス板である。4は電気抵抗測定装置(安藤電気LCRメーター AG4311)であり、Ni箔(2A、2B)と接続されている。5は熱電対であり温度計6と接続されている。7はデーターコレクターであり、電気抵抗測定装置4及び温度計6と接続されている。8はオーブンであり、微多孔膜を加熱する。
【0019】
さらに詳細に説明すると、微多孔膜1には規定の電解液が含浸されており、図1(B)に示すようにNi箔2A上にMDのみテフロン(登録商標)テープで止められた形で固定されている。Ni箔2Bは図1(C)に示すように15mm×10mmの部分を残してテフロンテープでマスキングされている。Ni箔2AとNi箔2Bを微多孔膜1を挟むような形で重ね合わせ、さらにその両側からガラス板3A、3Bによって2枚のNi箔を挟み込む。2枚のガラス板は市販のクリップではさむことにより固定する。
【0020】
図1(A)に示した装置を用い、連続的に温度と電気抵抗を測定する。なお、温度は2℃/minの速度にて昇温させ、電気抵抗値は1kHzの交流にて測定する。孔閉塞温度とは微多孔膜1の電気抵抗値が1000Ωに達する時の温度と定義する。さらに温度が上昇し、孔閉塞した膜が破膜し、再度電気抵抗値が1000Ωに達する時の温度を破膜温度と定義する。
【0021】
なお、規定の電解液とは下記の通りである。
電解液:1 mol/リットルのLiBF4及び0.5wt%のリン酸トリオクチルを含む炭酸プロピレン/炭酸エチレン/γ−ブチルラクトン=25/25/50体積%の混合有機溶媒。
8.粘度平均分子量(Mv)
溶剤(デカリン)を用い、測定温度135℃にて極限粘度[η]を測定し、(1)式によりMvを算出した。
[η]=6.8×10−4Mv0.67 (1)
9.重量平均分子量
GPC測定(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)により求めた。
機器:WATERS 150−GPCカラム:Shodex GPC AT−807/S 1本Tosoh TSK−GEL GMH6−HT 2本溶媒:1、2、4−トリクロロベンゼン温度:140℃流量:1ml/minインジェクション量:500μリットル溶解条件:160℃ 2.5時間 濃度0.05%キャリブレーションカーブ:ポリスチレンの標準資料を測定し、ポリエチレン換算定数(0.48)を使用し、3次で計算。
10.メルトインデックス(MI)
ASTM D1238に準拠して測定した。
【0022】
[実施例1]
・微多孔膜Aの作製
重量平均分子量30万の高密度ポリエチレン(HDPE)38.8wt%、メルトインデックス(MI)1.0g/10minのポリプロピレン(PP)1.2wt%、流動パラフィン60wt%を先端にT−ダイを装着した押出機で溶融混練した後押し出して、厚さ1300μmのシートを作成した。このシートを縦横同時に延伸し、厚さ20μmのシートを作製した。このシートをメチルエチルケトン(MEK)中に浸漬し流動パラフィンを抽出除去した後で乾燥させて、厚さ18μmの微多孔膜Aを作製した。
・微多孔膜Bの作製
HDPE45wt%、流動パラフィン55wt%を先端にT−ダイを装着した押出機で溶融混練した後押出して、厚さ1300μmのシートを作成した。このシートを縦横同時に延伸し、厚さ20μmのシートを作製した。このシートをメチルエチルケトン(MEK)中に浸漬し流動パラフィンを抽出除去した後で乾燥させて、厚さ18μmの微多孔膜Bを作製した。
【0023】
・積層微多孔膜の作製
A/B/Aの形態に3枚積層し、110℃に加熱された数本のロールを通しながら縦方向に3倍延伸し、その後122℃に加熱された数本のロールを通して熱処理を行い3枚積層した縦延伸膜を作製した。続いて、縦延伸膜を118℃に加熱されたテンターにて横方向に2倍延伸し、続いて同テンター内の128℃に加熱された領域にて熱処理しながら1.8倍まで強制的に緩和させて厚さ15μmのA/B/A型の3枚積層微多孔膜を作製した。得られた微多孔膜の物性を表2及び表3に示すが、シャットダウン温度が低く、破膜温度が高く、かつ突刺強度が高い微多孔膜となっている。
【0024】
[実施例2]
・微多孔膜Aの作製
粘度平均分子量200万の超高分子量ポリエチレン(UHPE)24wt%、PP16wt%、流動パラフィン60wt%を先端にT−ダイを装着した押出機で溶融混練した後押し出して、厚さ1300μmのシートを作成した。このシートを縦横同時に延伸し、厚さ20μmのシートを作製した。このシートをメチルエチルケトン(MEK)中に浸漬し流動パラフィンを抽出除去した後で乾燥させて、厚さ18μmの微多孔膜Aを作製した。
・微多孔膜Bの作製
HDPE31.5wt%、MI0.8g/10minの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)13.5wt%、流動パラフィン55wt%を先端にT−ダイを装着した押出機で溶融混練した後押出して、厚さ1300μmのシートを作成した。このシートを縦横同時に延伸し、厚さ20μmのシートを作製した。このシートをメチルエチルケトン(MEK)中に浸漬し流動パラフィンを抽出除去した後で乾燥させて、厚さ16μmの微多孔膜Bを作製した。
【0025】
・積層微多孔膜の作製
A/B/Aの形態に3枚積層し、105℃に加熱された数本のロールを通しながら縦方向に2.5倍延伸し、その後120℃に加熱された数本のロールを通して熱処理を行い3枚積層した縦延伸膜を作製した。続いて、縦延伸膜を115℃に加熱されたテンターにて横方向に2倍延伸し、続いて同テンター内の125℃に加熱された領域にて熱処理しながら1.8倍まで強制的に緩和させて厚さ17μmのA/B/A型の3枚積層微多孔膜を作製した。得られた微多孔膜の物性を表2及び表3に示すが、シャットダウン温度が低く、破膜温度が高く、かつ突刺強度が高い微多孔膜となっている。
【0026】
[実施例3]
・微多孔膜Aの作製
実施例2記載の微多孔膜Aに同じ。
・微多孔膜Bの作製
HDPE22.5wt%、LLDPE22.5wt%、流動パラフィン55wt%を先端にT−ダイを装着した押出機で溶融混練した後押出して、厚さ1300μmのシートを作成した。このシートを縦横同時に延伸し、厚さ20μmのシートを作製した。このシートをメチルエチルケトン(MEK)中に浸漬し流動パラフィンを抽出除去した後で乾燥させて、厚さ16μmの微多孔膜Bを作製した。
・積層微多孔膜の作製
A/B/Aの形態に3枚積層し、102℃に加熱された数本のロールを通しながら縦方向に2.5倍延伸し、その後118℃に加熱された数本のロールを通して熱処理を行い3枚積層した縦延伸膜を作製した。続いて、縦延伸膜を115℃に加熱されたテンターにて横方向に2倍延伸し、続いて同テンター内の123℃に加熱された領域にて熱処理しながら1.8倍まで強制的に緩和させて厚さ17mのA/B/A型の3枚積層微多孔膜を作製した。得られた微多孔膜の物性を表2及び表3に示すが、シャットダウン温度が低く、破膜温度が高く、かつ突刺強度が高い微多孔膜となっている。
【0027】
[実施例4]
・微多孔膜Aの作製
UHPE24wt%、HDPE8wt%、PP8wt%、流動パラフィン60wt%を先端にT−ダイを装着した押出機で溶融混練した後押し出して、厚さ1300μmのシートを作成した。このシートを縦横同時に延伸し、厚さ20μmのシートを作製した。このシートをメチルエチルケトン(MEK)中に浸漬し流動パラフィンを抽出除去した後で乾燥させて、厚さ18μmの微多孔膜Aを作製した。
・微多孔膜Bの作製
実施例2記載の微多孔膜Bに同じ。
・積層微多孔膜の作製
A/B/Aの形態に3枚積層し、105℃に加熱された数本のロールを通しながら縦方向に2.5倍延伸し、その後120℃に加熱された数本のロールを通して熱処理を行い3枚積層した縦延伸膜を作製した。続いて、縦延伸膜を115℃に加熱されたテンターにて横方向に2倍延伸し、続いて同テンター内の125℃に加熱された領域にて熱処理しながら1.8倍まで強制的に緩和させて厚さ17μmのA/B/A型の3枚積層微多孔膜を作製した。得られた微多孔膜の物性を表2及び表3に示すが、シャットダウン温度が低く、破膜温度が高く、かつ突刺強度が高い微多孔膜となっている。
【0028】
[実施例5]
・微多孔膜Aを作製する原料組成
UHPE24wt%、HDPE8wt%、PP8wt%、流動パラフィン60wt%。
・微多孔膜Bを作製する原料組成
HDPE31.5wt%、LLDPE13.5wt%、流動パラフィン55wt%。
・積層微多孔膜の作製
先端に3層共押出用T−ダイを装着した2台の押出機で各々A、B組成の原料を溶融混練した後押出して、厚さ1300μmのA/B/A型のシートを作製した。このシートを縦横同時に延伸し、厚さ20μmのシートを作製した。このシートをメチルエチルケトン(MEK)中に浸漬し流動パラフィンを抽出除去した後で乾燥させて、厚さ16μmの微多孔膜を得た。得られた微多孔膜の物性を表2及び表3に示すが、シャットダウン温度が低く、破膜温度が高く、かつ突刺強度が高い微多孔膜となっている。
【0029】
[比較例1]
実施例1記載の微多孔膜Aの物性を表2及び表3に示す。シャットダウン温度が低く、破膜温度は高いが、突刺強度が低い微多孔膜となっている。
【0030】
[比較例2]
実施例2記載の微多孔膜Aの物性を表2及び表3に示す。破膜温度、突刺強度は高いが、シャットダウン温度も高く、安全性機能上好ましくない微多孔膜となっている。
【0031】
[比較例3]
UHPE20wt%、HDPE10.8wt%、LLDPE8wt%、PP1.2wt%、流動パラフィン60wt%を先端にT−ダイを装着した押出機で溶融混練した後押し出して、厚さ1300μmのシートを作成した。このシートを縦横同時に延伸し、厚さ20μmのシートを作製した。このシートをメチルエチルケトン(MEK)中に浸漬し流動パラフィンを抽出除去した後で乾燥させて、厚さ17μmの微多孔膜Aを作製した。
【0032】
得られた微多孔膜の物性を表1及び表2に示すが、シャットダウン温度が高く、突刺強度の低い微多孔膜となっている。
【0033】
[比較例4]
・ポリエチレン微多孔膜の作製
UHPE20wt%、HDPE10wt%、LLDPE10wt%、流動パラフィン60wt%を先端にT−ダイを装着した押出機で溶融混練した後押し出して、厚さ1300μmのシートを作成した。このシートを縦横同時に延伸し、厚さ20μmのシートを作製した。このシートをメチルエチルケトン(MEK)中に浸漬し流動パラフィンを抽出除去した後で乾燥させて、厚さ17μmの微多孔膜を作製した。
・ポリプロピレン微多孔膜の作製
PP40wt%、流動パラフィン60wt%を先端にT−ダイを装着した押出機で溶融混練した後押し出して、厚さ1300μmのシートを作成した。このシートを縦横同時に延伸し、厚さ20μmのシートを作製した。このシートをメチルエチルケトン(MEK)中に浸漬し流動パラフィンを抽出除去した後で乾燥させて、厚さ17μmの微多孔膜を作製した。
【0034】
・ポリエチレン微多孔膜とポリプロピレン微多孔膜の積層
PP/PE/PPの形態に3枚積層し、108℃に加熱された数本のロールを通しながら縦方向に2.5倍延伸し、その後120℃に加熱された数本のロールを通して熱処理を行い3枚積層した縦延伸膜を作製した。続いて、縦延伸膜を115℃に加熱されたテンターにて横方向に2倍延伸し、続いて同テンター内の125℃に加熱された領域にて熱処理しながら1.8倍まで強制的に緩和させて厚さ18μmのPP/PE/PP型の3枚積層微多孔膜を作製した。得られた微多孔膜の物性を表2及び表3に示すが、シャットダウン温度が高く、突刺強度も低い微多孔膜となっている。実施例および比較例の微多孔膜の積層形態、ポリマー組成等を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【符号の説明】
【0038】
1 :微多孔膜
2A、2B:Ni箔
3A、3B:ガラス板
4 :電気抵抗測定装置
5 :熱電対
6 :温度計
7 :データーコレクター
8 :オーブン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンとポリプロピレンを必須成分とする微多孔膜A、ポリエチレン微多孔膜Bを積層一体化させたポリオレフィン製微多孔膜であって、
前記ポリプロピレンの前記微多孔膜A中に占める割合が3〜50wt%であり、
膜厚が5〜20μmであることを特徴とするポリオレフィン製微多孔膜。
【請求項2】
微多孔膜Aを構成するポリエチレンが超高分子量ポリエチレンを含むことを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン製微多孔膜。
【請求項3】
微多孔膜Bを構成するポリエチレンが直線状低密度ポリエチレンを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリオレフィン製微多孔膜。
【請求項4】
シャットダウン温度と破膜温度との温度差が33℃以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン製微多孔膜。
【請求項5】
シャットダウン温度以下における横方向の最大収縮応力が590kPa以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン製微多孔膜。
【請求項6】
シャットダウン温度が140℃以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリオレフィン製微多孔膜。
【請求項7】
破膜温度が150℃以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリオレフィン製微多孔膜。
【請求項8】
突刺強度が2.5N/25μm以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリオレフィン製微多孔膜。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリオレフィン製微多孔膜からなることを特徴とする非水電解液系電池用セパレーター。

【図1】
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【公開番号】特開2011−63025(P2011−63025A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225160(P2010−225160)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【分割の表示】特願2001−126337(P2001−126337)の分割
【原出願日】平成13年4月24日(2001.4.24)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】