説明

ポリオール組成物

【課題】水を発泡剤とし、寸法安定性と断熱性に優れた硬質ポリウレタンフォーム用のポリオール組成物を提供する。
【解決手段】ポリオール化合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、触媒、難燃剤、発泡剤として水を含有し、ポリイソシアネート成分と混合し、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成する組成物であり、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの添加量がポリオール組成物全量中0.01〜10重量%である硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を発泡剤とする硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物、さらに該ポリオール組成物を使用した硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、戸建住宅を中心とする建築用断熱材としては、グラスウールが最も多く使用されていたが、壁体内に施工したグラスウールは年数経過により徐々に下方に沈み込んで壁の断熱性が低下するという問題を有するものであり、また近年要求される高い断熱性の要請を満たすためには施工厚さが厚くなるという問題も有する。
【0003】
グラスウール断熱材と比較して高い断熱性を有し、しかも年数経過による沈み込みを起こさない建築物用の断熱材として、外壁面又は内壁面の壁体内面にスプレーにより吹き付けるスプレー発泡法の硬質ポリウレタンフォームや、外壁面と内壁面にて形成された壁体内に発泡原液を注入する注入法の硬質ポリウレタンフォームが公知である。硬質ポリウレタンフォームの発泡剤としては、古くはフロン化合物が使用されていたが、オゾン層の破壊という環境問題を起こす物質であることから製造が禁止され、現在使用可能な発泡剤は、HFC化合物、ペンタン、炭酸ガス及び水である。これらの発泡剤の中でHFC化合物は高価であり、ペンタンは引火性の強い化合物であるためにスプレー発泡の硬質ポリウレタンフォームに使用することはできない。また炭酸ガスを発泡剤として使用する場合には、炭酸ガスをポリオール組成物に加圧混合する装置が必要であり、硬質ポリウレタンフォームを製造するための装置が高価なものとなる。これに対して水は低コストで取り扱いが容易であり、例えばスプレー発泡法用としても使用できる水発泡硬質ポリウレタンフォームは公知である(例えば特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特許第3272971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術は、スプレー発泡によっても製造可能な、寸法安定性に優れた水発泡硬質ポリウレタンフォームであり、エステルポリオールとフォームの気泡(セル)を連通化させる連通剤を原料成分として使用することを特徴とするものである。
【0006】
しかし、特許文献1開示の硬質ポリウレタンフォームは、寸法安定性は改善されてはいるものの、難燃性が不十分であり、連通剤を使用しているために熱伝導率が高く、断熱性にも問題を有するものである。
【0007】
本発明は、上記公知技術の問題に鑑み、水を発泡剤とし、寸法安定性、難燃性及び断熱性に優れた硬質ポリウレタンフォーム用のポリオール組成物、さらに該ポリオール組成物を使用した硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は以下の通りである。
1.ポリオール化合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、触媒、難燃剤、発泡剤として水を含有し、ポリイソシアネート成分と混合し、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリオール組成物であり、
前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの添加量がポリオール組成物全量中0.01〜10重量%であることを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
2.前記ポリオール化合物が、ポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする1.に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
3.前記ポリエーテルポリオールが、芳香族ポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする2.に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
4.前記芳香族ポリエーテルポリオールが、マンニッヒ変性ポリエーテルポリオールであることを特徴とする3.に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
5.前記芳香族ポリエーテルポリオールが、マンニッヒ変性ポリエーテルポリオールであり、水酸基価が200〜400mgKOH/gであることを特徴とする4.に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
6.前記ポリオール化合物全量中に、ポリエーテルポリオールを10重量%以上含むことを特徴とする1.から5.のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
7.前記ポリオール化合物が、芳香族エステルポリオールを含むことを特徴とする1.から6.のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
8.前記ポリオール化合物全量中に、芳香族エステルポリオールを10〜90重量%、ポリエーテルポリオールを10〜90重量%含むことを特徴とする7.に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
9.前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ポリオキシエチレン基を構成するエチレンオキサイド単位の繰り返し単位数の合計量が15以上であり、HLBが10以上であることを特徴とする1.から8.のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
10.前記ポリオール組成物全量中に、3次元架橋構造を有するアルコキシシラン縮合物を0.01〜10重量%含むことを特徴とする1.から9.のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
11.ポリオール化合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、触媒、難燃剤、発泡剤として水を含むポリオール組成物と、ポリイソシアネート成分とを混合し、反応させて硬質ポリウレタンフォームとする硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの添加量がポリオール組成物全量中0.01〜10重量%であることを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
12.前記ポリオール化合物が、ポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする11.に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
13.前記ポリエーテルポリオールが、芳香族ポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする12.に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
14.前記芳香族ポリエーテルポリオールが、マンニッヒ変性ポリエーテルポリオールであることを特徴とする13.のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
15.前記芳香族ポリエーテルポリオールが、マンニッヒ変性ポリエーテルポリオールであり、水酸基価が200〜400mgKOH/gであることを特徴とする14.に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
16.前記ポリオール化合物全量中に、ポリエーテルポリオールを10重量%以上含むことを特徴とする11.から15.のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
17.前記ポリオール化合物が、芳香族エステルポリオールを含むことを特徴とする11.から16.のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
18.前記ポリオール化合物全量中に、芳香族エステルポリオールを10〜90重量%、ポリエーテルポリオールを10〜90重量%%含むことを特徴とする17.に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
19.前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ポリオキシエチレン基を構成するエチレンオキサイド単位の繰り返し単位数の合計量が15以上であり、HLBが10以上であることを特徴とする11.から18.のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
20.前記ポリオール組成物全量中に、3次元架橋構造を有するアルコキシシラン縮合物を0.01〜10重量%含むことを特徴とする11.から19.のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリオール組成物を使用して製造した硬質ポリウレタンフォームは、水のみを発泡剤として使用し、スプレー発泡法又は注入法により形成され、寸法安定性、難燃性及び断熱性に優れた硬質ポリウレタンフォームである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のポリオール組成物は、ポリオール化合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、触媒、難燃剤、発泡剤として水を含む。本発明のポリオール組成物の粘度は、スプレー法による硬質ポリウレタンフォームの製造が容易に行える観点より1000mPa・s(20℃)以下であることが好ましく、500mPa・s(20℃)以下であることがより好ましい。
【0011】
本発明のポリオール組成物を構成するポリオール化合物としては、特に限定されないが、ポリエーテルポリオール及び/または芳香族エステルポリオールを含むものが好ましい。
【0012】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、芳香族ポリエーテルポリオール、グリセリン系ポリエーテルポリオール、第3級アミノ基含有ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0013】
芳香族ポリエーテルポリオールとしては、ビスフェノールAを開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加することで得られるビスフェノールA型ポリエーテルポリオールや、芳香族アミン、すなわち、トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン、トリエタノールアミン、マンニッヒ縮合物等を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加することで得られる芳香族アミン系ポリエーテルポリオールが挙げられる。
本発明では、特に、芳香族アミン系ポリエーテルポリオール、とりわけ、フェノール類とアミン化合物とのホルマリン縮合物にアルキレンオキサイドを付加することで得られるマンニッヒ変性ポリエーテルポリオールが好ましい。
このような芳香族ポリエーテルポリオールとしては、水酸基価が200〜400mgKOH/gであることが、フォームの難燃性、寸法安定性等の面で好適である。この範囲を逸脱する場合には得られるフォームの難燃性、寸法安定性が低下する恐れがある。
【0014】
グリセリン系ポリエーテルポリオールは、グリセリンを開始剤としエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加させることで得られるポリエーテルポリオールであることが好ましい。さらにグリセリン系ポリエーテルポリオールの水酸基価は、350〜600mgKOH/gであることが、ポリオール組成物の貯蔵安定性、躯体面との密着性等の面で好適である。この範囲を逸脱する場合には、ポリオール組成物の貯蔵安定性の低下、密着性の低下の恐れがある。
【0015】
第3級アミノ基含有ポリエーテルポリオールとしては、例えば、アルキレンジアミン、アルカノールアミン等の低分子量アミン、すなわち、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンチルジアミン等の炭素数が2〜8のアルキレンジアミンを開始剤とし、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加させたもの等が挙げられる。
【0016】
また、ポリエーテルポリオールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等のグリコール類や、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等を開始剤とし、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加させたポリエーテルポリオール等を使用してもよい。
【0017】
本発明で用いるポリエーテルポリオールとしては、特に、芳香族ポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。芳香族ポリエーテルポリオールを使用することにより、特に、ポリオール組成物の貯蔵安定性や、発泡性、硬化性、フォームの難燃性や、寸法安定性、断熱性に優れた硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【0018】
芳香族ポリエーテルポリオールは、ポリエーテルポリオール中に50〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%用いることが、ポリオール組成物の貯蔵安定性、発泡性、フォームの難燃性、寸法安定性等の面で好適である。50重量%より少ない場合は、発泡性、得られたフォームの難燃性等が低下する恐れがある。
【0019】
このようなポリエーテルポリオールはポリオール化合物全量中に10〜100重量%、さらには15〜100重量%、さらには20〜100重量%用いることが、難燃性、寸法安定性等の面で好適である。10重量%より少なければ難燃性、フォームの発泡性が低下する恐れがある。
【0020】
芳香族エステルポリオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等から選択される少なくとも1種のグリコールとフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等から選択される少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸とのエステルポリオールである。
【0021】
このような芳香族エステルポリオールはポリオール化合物全量中に10〜90重量%、さらには15〜85重量%用いることが、難燃性、寸法安定性等の面で好適である。10重量%より少なければ難燃性が低下する恐れがある。90重量%より多ければ、フォームの発泡性が低下する恐れがある。このような芳香族エステルポリオールの水酸基価は100〜400mgKOH/gであることが好ましい。
【0022】
芳香族エステルポリオールは、フタル酸骨格を有するジカルボン酸とグリコール化合物が脱水縮合して得られたエステル骨格を主成分とするもの等が挙げられる。
【0023】
本発明では、特に、ポリオール化合物全量中に、芳香族エステルポリオールを10〜90重量%(さらには、15〜85重量%)、ポリエーテルポリオールを90〜10重量%(さらには、85〜15重量%)含むことが好ましい。ポリエーテルポリオールが、少なすぎる場合は、難燃性、フォームの発泡性が低下する恐れがある。芳香族エステルポリオールが少なすぎる場合は、難燃性が低下する恐れがある。
【0024】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、化学式1(化1)にて表される化学構造を有する化合物である。
【0025】
(化1)
O(CHCHO)mH

CH
/ \
H(CHCHO)pO─CH CHO(CHCHO)nH
│ │
CH CHCHOCOR
\ /

【0026】
Rは炭素数8〜18のアルキル基、アルケニル基又はアルカジエニル基であり、Rとしては、具体的にはオクチル基、ステアリル基、ラウリル基、オレイル基、パルミチル基などの炭素数が8以上のアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基が例示される。m+n+pは15以上、さらには20以上(但し、m+nは1以上)であり、HLBは10以上、さらには13以上、さらには15以上であることが好ましい。
なおHLBとは、親水親油バランスのことであり、本発明ではグリフィン法によって算出された値である。
【0027】
このようなポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのうち、本発明では特に、ポリオキシエチレンソルビタンモノアルキレートが好適に使用できる。
ポリオキシエチレンソルビタンモノアルキレートは所定の水酸基価を有しているため、ポリオール及び水との相溶性に優れ、かつ発泡時にポリオール骨格中に取り込まれることでフォームの寸法安定性向上に寄与する効果がある。ポリオキシエチレンソルビタンモノアルキレートの中でも、エチレンオキサイド単位の繰り返し単位数の合計量(m+n+p)が15以上、さらには20以上であり、HLBが10以上、さらには13以上、さらには15以上のもの、とりわけポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートが好ましい。
【0028】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの添加量は、ポリオール組成物全量中0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。このような範囲である場合、十分な貯蔵安定性が確保でき、発泡安定性、フォームの寸法安定性、断熱性に優れている。この範囲を逸脱する場合には貯蔵時の十分な安定性が得られず、フォームの寸法安定性、断熱性が低下する。
【0029】
触媒としては、第3級アミン触媒、イミダゾール系触媒、脂肪酸アルカリ金属塩触媒等の公知の触媒を限定なく使用することができる。
【0030】
第3級アミン触媒としては、具体的にはN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンやN,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン等のN−アルキルポリアルキレンポリアミン類、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ビス(β−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N−ジメチルアミノプロピルヘキサヒドロトリアジン等の第3級アミン触媒を例示できる。
【0031】
イミダゾール系触媒としては、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール等を例示でき、脂肪酸アルカリ金属塩触媒としてはオクチル酸カリウム、酢酸カリウム等を例示することができる。
また、これらの触媒の他に、アミン触媒や有機金属触媒等を併用してもよい。
【0032】
触媒の添加量はポリオール化合物100重量部に対して0.1〜20重量部であることが好ましく、さらには0.5〜10重量部であることが好ましい。
【0033】
難燃剤としては、例えば、有機リン酸エステル類等が挙げられ、有機リン酸エステル類としては、リン酸のハロゲン化アルキルエステル、アルキルリン酸エステルやアリールリン酸エステル、ホスホン酸エステル等が使用可能であり、具体的にはトリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート等が例示でき、これらの1種以上が使用可能である。本発明では難燃性及び減粘剤としての効果も発揮することから、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェートを用いることが好ましいが、これに限定されるものではない。
難燃剤の添加量はポリオール化合物100重量部に対して5〜300重量部、好ましくは10〜200重量部である。この範囲を逸脱する場合には難燃効果、減粘効果が十分に得られなかったり、フォームの機械的特性が低下するなどの問題が生じる場合ある。
【0034】
発泡剤である水は、ポリオール化合物100重量部に対して3〜20重量部、さらに好ましくは4〜15重量部とする。3重量部より少ない場合、得られるフォームが高密度化する恐れがあり、20重量部より多い場合、フォームの脆性が見られ躯体面との密着性が低下する恐れがある。
【0035】
さらに本発明のポリオール組成物には、3次元架橋構造を有するアルコキシシラン縮合物を含むことが好ましい。
このようなアルコキシシラン縮合物としては、例えば、下記式で示されるアルコキシシラン化合物1〜4を公知の手法で混合・縮合させて得ることができる。
【0036】
(アルコキシシラン化合物1)
OR

O−(Si−O)n−R

OR
〜Rは、炭素数1〜18の直鎖状、分岐状、環状等のアルキル基、水素を示し、R〜Rは同じでも異なっていてもよい。nは1以上(好ましくは、nが1)の整数。
また炭素原子、水素原子の一部は、窒素原子、ハロゲン原子等に置き換わったものでもよい。
【0037】
アルコキシシラン化合物1としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、ジヒドロキシジメトキシシラン、ジヒドロキシジエトキシシラン、ジヒドロキシジ−n−プロピルオキシシラン、トリヒドロキシメトキシシラン、トリヒドロキシエトキシシラン、トリヒドロキシ−n−プロピルオキシシラン、ジフェノキシジエトキシシラン等、または、これらの縮合物等が挙げられる。
【0038】
(アルコキシシラン化合物2)


O−(Si−O)n−R

OR
は、炭素数1〜18の直鎖状、分岐状、環状等のアルキル基、アミノ基、エポキシ基、ハロゲンを示す。
〜Rは、炭素数1〜18の直鎖状、分岐状、環状等のアルキル基、水素を示し、R〜Rは同じでも異なっていてもよい。nは1以上(好ましくは、nが1)の整数。
また炭素原子、水素原子の一部は、窒素原子、ハロゲン原子等に置き換わったものでもよい。
【0039】
アルコキシシラン化合物2としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、4−クロロフェニルトリエトキシシラン、4−シアノフェニルトリエトキシシラン、4−アミノフェニルトリエトキシシラン、4−ニトロフェニルトリエトキシシラン、4−メチルフェニルトリエトキシシラン、4−ヒドロキシフェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロピルオキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシエポキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシエポキシプロピルトリエトキシシラン、ヒドロキシトリメトキシシラン、ヒドロキシトリエトキシシラン、ヒドロキシトリ−n−プロピルオキシシラン、メチルヒドロキシジメトキシシラン、フェニルヒドロキシジメトキシシラン、メチル(フェノキシ)ジエトキシシラン、フェニル(フェノキシ)ジエトキシシラン、トリフェノキシエトキシシラン、メチル(ジフェノキシ)エトキシシラン、フェニル(ジフェノキシ)エトキシシラン等、または、これらの縮合物等が挙げられる。
【0040】
(アルコキシシラン化合物3)


10−(Si−O)n−R12

OR11
〜R10としては、炭素数1〜18の直鎖状、分岐状、環状等のアルキル基、アミノ基、エポキシ基、ハロゲンを示し、R〜R10は同じでも異なっていてもよい。
11〜R12は、炭素数1〜18の直鎖状、分岐状、環状等のアルキル基、水素を示し、R11〜R12は同じでも異なっていてもよい。nは1以上(好ましくは、nが1)の整数。
また炭素原子、水素原子の一部は、窒素原子、ハロゲン原子等に置き換わったものでもよい。
【0041】
アルコキシシラン化合物3、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシエポキシプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチル(フェノキシ)エトキシシラン、ジフェニル(フェノキシ)エトキシシラン、メチル(フェニル)(フェノキシ)エトキシシラン等、または、これらの縮合物等が挙げられる。
【0042】
(アルコキシシラン化合物4)
13

14−(Si−O)n−X

15
Xは、炭素数1〜18の直鎖状、分岐状、環状等のアルキル基、水素、−Si(R16を示す。nは1以上(好ましくは、nが1)の整数。
13〜R16は、炭素数1〜18の直鎖状、分岐状、環状等のアルキル基、アミノ基、エポキシ基、ハロゲンを示し、R13〜R16は同じでも異なっていてもよい。nは1以上(好ましくは、nが1)の整数。
また炭素原子、水素原子の一部は、窒素原子、ハロゲン原子等に置き換わったものでもよい。
【0043】
アルコキシシラン化合物4、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチル−n−プロピルオキシシラン、ジメチル(エチル)エトキシシラン、ジメチル(シクロヘキシル)エトキシシラン、ジメチル(フェニル)エトキシシラン、メチル(ジフェニル)エトキシシラン等、または、これらの縮合物(例えば、ヘキサメチルジシロキサン等のジシロキサン)等が挙げられる。本発明では、nが1である化合物を好適に使用できる。
【0044】
本発明で用いるアルコキシシラン縮合物は、少なくとも、アルコキシシラン化合物1、アルコキシシラン化合物2から選ばれる1種以上を混合し反応させて得ることができ、このようなアルコキシシラン縮合物は、3次元架橋構造を有するものである。
このようなアルコキシシラン縮合物は、詳細は不明であるが、ポリオール化合物に非相溶でありながら、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの作用により、ポリオール組成物中に効率よく分散されるため、発泡安定性の向上に優れているものと思われる。さらにアルコキシシラン縮合物はポリウレタン骨格中に効率よく取り込まれ、該取り込まれたアルコキシシラン縮合物の作用により、長期的な寸法安定性に優れた硬質ポリウレタンフォームを得ることができるものと思われる。
さらに、本発明では、アルコキシシラン化合物1、アルコキシシラン化合物2から選ばれる1種以上、及び、アルコキシシラン化合物4を混合し反応させて得られるアルコキシシラン縮合物が好適に使用できる。
【0045】
また、アルコキシシラン縮合物を得る際には、公知の触媒を用いることができる。例えば、具体例として、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジマレート、オクチル酸スズなどの有機スズ化合物、リン酸、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノオクチルホスフェート、モノデシルホスフェート、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジデシルホスフェートなどのリン酸エステル、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、グリシジルメタクリレート、グリシドール、アクリルグリシジルエーテル、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、エポキシ化合物とリン酸および/またはモノ酸性リン酸エステルとの付加反応物、マレイン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イタコン酸、クエン酸、コハク酸、フタル酸、トリメット酸、ピロメット酸、これらの酸無水物、p−トルエンスルホン酸、などの酸性化合物が挙げられる。また、これらの酸性触媒とアミンとの混合物または反応物も含まれる。
【0046】
アルコキシシラン縮合物の添加量は、ポリオール組成物全量中0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.3〜3重量%が好適である。0.01重量%より少ない場合、長期的なフォームの寸法安定性が得られない場合があり、10重量%より多い場合、発泡安定性に劣る場合がある。
【0047】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造に際しては、上記成分の他に、当業者に周知の整泡剤、相溶化剤、界面活性剤、着色剤、酸化防止剤等が使用可能である。
【0048】
整泡剤としては、公知の硬質ポリウレタンフォーム用シリコーン整泡剤、即ちポリジメチルシロキサンとポリオキシエチレングリコール又はポリオキシエチレン−プロピレングリコールのグラフト共重合体(ポリエーテル変性シリコーン化合物)を限定なく使用することができる。係る整泡剤としては、SH−193、L−5420、L−5340、SZ−1698、SZ−1704、SZ−1923、SZ−1932(東レダウコーニング)、F−502、F−506(信越化学工業)等を例示することができる。
本発明では、上記アルコキシシラン縮合物及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルと、シリコーン整泡剤を併用することによって、特に、ポリオール組成物の貯蔵安定性に優れた硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【0049】
ポリオール組成物と混合、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリイソシアネート成分としては、取扱の容易性、反応の速さ、得られる硬質ポリウレタンフォームの物理特性が優れていること、低コストであることなどから、通常、液状MDIを使用する。液状MDIとしては、クルードMDI(c−MDI)等が使用される。液状MDIに加えて、他のポリイソシアネート成分を併用してもよい。併用するポリイソシアネート成分としては、ポリウレタンの技術分野において公知のポリイソシアネート成分は限定なく使用可能である。
【0050】
本発明の硬質ポリウレタンフォームは、前記ポリオール組成物と前記ポリイソシアネート成分を、NCO/OH比率(当量比)が1.0〜3.0、好ましくは1.0〜2.0程度に調整し、反応させることによって得ることができる。
また、硬質ポリウレタンフォームの製造時の温度は、前記ポリオール組成物と前記ポリイソシアネート成分の温度がそれぞれ30〜80℃程度となるように調整しておくことが好ましい。
このような硬質ポリウレタンフォームの製造においては、前記ポリオール組成物と前記ポリイソシアート成分を均一に混合することができれば、特に限定されず、公知の装置が使用可能である。例えば、小型ミキサーや、通常のウレタンフォームを製造する際に使用する、注入発泡用の低圧、高圧発泡機、スラブ発泡用の低圧、高圧発泡機、連続ライン用の低圧、高圧発泡機、吹き付け工事用のスプレー発泡機等を使用することができる。
【実施例】
【0051】
(試験例1〜25)
(ポリオール組成物)
表1に示す原料を用いて、表2、表3に示す配合にてポリオール組成物を調製した。
得られたポリオール組成物について、次の試験を行った。
【0052】
1)貯蔵安定性
得られたポリオール組成物を、50℃の恒温槽に7日間貯蔵後、ポリオール組成物の状態を目視にて評価した。結果は表2、表3に示す。評価は次の通りである。
◎:異常なし
○:ほとんど異常なし
△:一部相分離がみられた
×:相分離がみられた
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
市販の二液混合型のスプレー発泡機を使用し、ポリオール組成物とイソシアネート成分を液温40℃にて、同容積比で混合したウレタン組成物を試験面材(スレート板)上に平均厚さ30mmで硬質ポリウレタンフォームを形成させた。
得られる硬質ポリウレタンフォームについて以下に記載の試験を行った。
【0057】
2)寸法安定性
硬質ポリウレタンフォームから180mm×255mmに裁断して作製した評価サンプルについて、50℃にて3日間放置した後の収縮の有無を目視にて評価を行った。結果は表2、表3に示す。評価は、以下の基準により行った。
◎:外観上の収縮なし。
○:外観上の収縮ほとんどなし。
△:外観上の収縮が一部発生。
×:外観上の収縮発生。
【0058】
3)密着性
硬質ポリウレタンフォームから50mm×50mmに裁断した評価サンプルを作製し、該評価サンプルについて、JIS A 9526:2006「建築物断熱用吹き付け硬質ウレタンフォーム」、接着強さ試験に準じ、接着強さを評価した。結果は表2、表3に示す。評価は次の通りである。
○:フォーム凝集破壊がみられた
×:スレート板と硬質ポリウレタンフォームとの界面における界面剥離がみられた
【0059】
4)フォーム密度
硬質ポリウレタンフォームから100mm×100mm×30mmに裁断して作製した評価サンプルについて、25℃にて3日間放置した後、重量測定を行って密度(kg/m)を算出した。結果は表2、表3に示す。
【0060】
5)熱伝導率
硬質ポリウレタンフォームから180mm×255mm×30mmに裁断して作製した評価サンプルについて、迅速熱伝導率計QTM−D3(京都電子工業製)を使用して熱伝導率を測定した。結果は表2、表3に示す。
【0061】
6)難燃性
硬質ポリウレタンフォームから180mm×255mmに裁断して作製した評価サンプルについて、サンプルのスキン表面をプロパンガスバーナーの炎で約5分間加熱し、加熱による炭化層形成能及びフォームの燃焼による収縮を目視にて確認した。結果は表2、表3に示す。評価は、フォームの燃焼による収縮が見られなかったものを10、フォームの燃焼による収縮が見られたものを1として、10段階評価で行った。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、触媒、難燃剤、発泡剤として水を含有し、ポリイソシアネート成分と混合し、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリオール組成物であり、
前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの添加量がポリオール組成物全量中0.01〜10重量%であることを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項2】
前記ポリオール化合物が、ポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項3】
前記ポリエーテルポリオールが、芳香族ポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする請求項2に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項4】
前記芳香族ポリエーテルポリオールが、マンニッヒ変性ポリエーテルポリオールであることを特徴とする請求項3に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項5】
前記芳香族ポリエーテルポリオールが、マンニッヒ変性ポリエーテルポリオールであり、水酸基価が200〜400mgKOH/gであることを特徴とする請求項4に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項6】
前記ポリオール化合物全量中に、ポリエーテルポリオールを10重量%以上含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項7】
前記ポリオール化合物が、芳香族エステルポリオールを含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項8】
前記ポリオール化合物全量中に、芳香族エステルポリオールを10〜90重量%、ポリエーテルポリオールを10〜90重量%含むことを特徴とする請求項7に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項9】
前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ポリオキシエチレン基を構成するエチレンオキサイド単位の繰り返し単位数の合計量が15以上であり、HLBが10以上であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項10】
前記ポリオール組成物全量中に、3次元架橋構造を有するアルコキシシラン縮合物を0.01〜10重量%含むことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。


【公開番号】特開2009−46652(P2009−46652A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311840(P2007−311840)
【出願日】平成19年12月1日(2007.12.1)
【出願人】(599071496)ベック株式会社 (98)
【Fターム(参考)】