説明

ポリオール組成物

【課題】水を発泡剤とし、寸法安定性と断熱性に優れた硬質ポリウレタンフォーム用のポリオール組成物を提供する。
【解決手段】ポリオール化合物、発泡剤として水、整泡剤、寸法安定化剤、触媒、難燃剤を含有し、ポリオール化合物が、グリセリンを開始剤とする水酸基価が40mgKOH/g以下であるポリエーテルポリオールを0.1重量%以上35重量%以下含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を発泡剤とする硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬質ウレタンフォームで使用される発泡剤としては、古くはフロン化合物が使用されていたが、オゾン層の破壊という環境問題を起こす物質であることから製造が禁止され、現在、HFC化合物、ペンタン、炭酸ガス及び水等の発泡剤が使用されている。
【0003】
これらの発泡剤の中でHFC化合物は高価であり、ペンタンは引火性の強い化合物であるためにスプレー発泡の硬質ポリウレタンフォームに使用することはできない。また炭酸ガスを発泡剤として使用する場合には、炭酸ガスをポリオール組成物に加圧混合する装置が必要であり、硬質ポリウレタンフォームを製造するための装置が高価なものとなる。
これに対して水は低コストで取り扱いが容易であり、例えばスプレー発泡法用としても使用できることから、種々検討が進んでいる(例えば、特許文献1〜5等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−218963号公報
【特許文献2】特開2005−206691号公報
【特許文献3】特開2006−225945号公報
【特許文献4】特開2006−193623号公報
【特許文献5】特開2009−138134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、発泡剤として水を使用したウレタンフォームは体積収縮しやすく寸法安定性に劣り、施工性の低下などを招く場合があった。
【0006】
このような問題に対し、例えば特許文献5では、ポリオール成分として、ポリエステルポリオールと特定の末端EOポリエーテルポリオールを用いることによって、寸法安定性などを向上させる技術が記載されている。
しかし、水を多く含む場合など、条件によっては寸法安定性に不十分な場合があり、まだまだ改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記公知技術の問題に鑑み、検討した結果、ポリオール成分として、グリセリンを開始剤とする水酸基価が40mgKOH/g以下であるポリエーテルポリオールを用いることによって、発泡剤として水を使用した場合にも、優れた寸法安定性、密着性を示す硬質ポリウレタンフォームが得られることを見出し、本発明の完成に至った
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.ポリオール化合物、発泡剤として水、整泡剤、寸法安定化剤、触媒、難燃剤を含有し、ポリイソシアネート成分と混合し、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリオール組成物であり、
前記ポリオール化合物が、グリセリンを開始剤とする水酸基価が40mgKOH/g以下であるポリエーテルポリオールを0.1重量%以上35重量%以下含むことを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
2.水の混合量が、ポリオール化合物100重量部に対し、4重量部以上8重量部以下であることを特徴とする1.に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
3.寸法安定化剤が、3次元架橋構造を有するアルコキシシラン縮合物であることを特徴とする1.または2.に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
4.さらに、界面活性剤を含み、界面活性剤がポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであることを特徴とする1.から3.のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリオール組成物を使用して製造した硬質ポリウレタンフォームは、水を発泡剤として使用し、スプレー発泡法又は注入法により形成され、寸法安定性、密着性に優れた硬質ポリウレタンフォームである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリオール組成物は、ポリオール化合物(以下、「(A)成分」ともいう。)、発泡剤として水、整泡剤、寸法安定化剤、触媒、難燃剤を含有するものである。
【0011】
本発明で用いるポリオール化合物は、グリセリンを開始剤とする水酸基価が40mgKOH/g以下(好ましくは20mgKOH/g以上40mgKOH/g未満)であるポリエーテルポリオール(以下、「(a−1)成分」ともいう。)をポリオール化合物全量中に0.1重量%以上35重量%以下(好ましくは0.5重量%以上25重量%以下、さらに好ましくは1重量%以上15重量%以下)含むことを特徴とするものであり、その他、通常使用されるポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールを併用することができる。
通常硬質ポリウレタンフォームの製造において、グリセリンを開始剤とするポリエーテルポリオールなどのポリエーテルポリオールとしては、水酸基価が50mgKOH/g以上(特許文献5)のものを使用することが一般的である。本発明では、水酸基価が40mgKOH/g以下である特定のグリセリンを開始剤とするポリエーテルポリオールを使用することによって、発泡倍率を上げることができ、発泡倍率を上げたとしても、寸法安定性に優れる硬質ポリウレタンフォームが製造できることを見出した。また、躯体面との密着性等にも優れるものである。
【0012】
(a−1)成分としては、グリセリンを開始剤としエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加させることで得られるポリエーテルポリオールであることが好ましい。
また、(a−1)成分としては、ポリエーテルポリオール全量中に1重量%以上50重量%以下(好ましくは、3重量%以上40重量%以下)含むことが好ましい。
【0013】
その他ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン、トリエタノールアミン、マンニッヒ縮合物等の芳香族類、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンチルジアミン等の3級アミン類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等のグリコール類、また、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等を開始剤とし、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加させたポリエーテルポリオール等を使用することができる。
このようなポリエーテルポリオールとしては、通常、100mgKOH/g以上600mgKOH/g以下程度のものを使用すればよい。また、水酸基価が40mgKOH/gより大きいグリセリンを開始剤とするポリエーテルポリオールを使用することもできる。
【0014】
本発明ではポリエーテルポリオールとして特に、芳香族類を開始剤とする芳香族ポリエーテルポリオールを含むことが好ましく、とりわけ、芳香族アミン系ポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。芳香族アミン系ポリエーテルポリオールとしては、例えば、フェノール類とアミン化合物とのホルマリン縮合物にアルキレンオキサイドを付加することで得られるマンニッヒ変性ポリエーテルポリオールが好ましい。
このような芳香族ポリエーテルポリオールとしては、水酸基価が200〜400mgKOH/gであることが、寸法安定性、フォームの難燃性等の面で好適である。この範囲を逸脱する場合には得られる、寸法安定性、フォームの難燃性が低下する恐れがある。
【0015】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等から選択される少なくとも1種のグリコールとフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等から選択される少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸とから得られるポリエステルポリオール等を使用することができる。
このようなポリエステルポリオールとしては、通常、100mgKOH/g以上400mgKOH/g以下程度のものを使用すればよい。
【0016】
本発明ではポリエステルポリオールとして特に、芳香族類を開始剤とする芳香族ポリエステルポリオールを含むことが好ましい。芳香族ポリエステルポリオールは、ポリエステルポリオール中に10重量%以上100重量%(好ましくは20重量%以上90重量%以下)含むことが好ましく、寸法安定性、フォームの難燃性等の面で好適である。10重量%より少ない場合は、得られたフォームの難燃性等が低下する恐れがある。
【0017】
本発明のポリオール化合物としては、特に、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールを併用することが好ましく、ポリエステルポリオール20重量%以上90重量%以下(好ましくは30重量%以上80重量%以下)、ポリエーテルポリオール10重量%以上80重量%以下(好ましくは20重量%以上70重量%以下)、で併用することが好ましい。
ポリエステルポリオールが多すぎる場合は、フォームの発泡性が低下する恐れがある。ポリエステルポリオールが少なすぎる場合は、難燃性が低下する恐れがある。
また、ポリエーテルポリオール中の(a−1)成分が少なすぎる場合は、セルの均一性、貯蔵安定性が低下する恐れがあり、(a−1)成分が多すぎる場合は、密着性が低下する恐れがある。
【0018】
発泡剤である水は、ポリオール化合物100重量部に対して好ましくは4〜8重量部、さらに好ましくは4〜7重量部とする。4重量部より少ない場合、得られるフォームが高密度化する恐れがあり、8重量部より多い場合、フォームの寸法安定性の低下が見られ、躯体面との密着性が低下する恐れがある。
【0019】
整泡剤としては、公知の硬質ポリウレタンフォーム用シリコーン整泡剤、即ちポリジメチルシロキサンとポリオキシエチレングリコール又はポリオキシエチレン−プロピレングリコールのグラフト共重合体(ポリエーテル変性シリコーン化合物)を限定なく使用することができる。係る整泡剤としては、SH−193、L−5420、L−5340、SZ−1698、SZ−1704、SZ−1923、SZ−1932(東レダウコーニング)、F−501、F−502、F−506(信越化学工業)等を例示することができる。
本発明では、上記アルコキシシラン縮合物及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルと、シリコーン整泡剤を併用することによって、特に、ポリオール組成物の貯蔵安定性に優れた硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【0020】
寸法安定化剤としては、公知の硬質ポリウレタンフォーム用寸法安定化剤を用いることができるが、本発明では特に、3次元架橋構造を有するアルコキシシラン縮合物を用いることが好ましい。
アルコキシシラン縮合物としては、例えば、下記式で示されるアルコキシシラン化合物を公知の手法で混合・縮合させて得ることができる。
(アルコキシシラン化合物)
(OR3−m(R−(Si−O)n−X
Xは、炭素数1〜18の直鎖状、分岐状、環状等のアルキル基、水素、−Si(Rを示す。
〜Rは、炭素数1〜18の直鎖状、分岐状、環状等のアルキル基、水素を示し、R〜Rは同じでも異なっていてもよい。nは1以上(好ましくは、nが1)の整数、mは0〜3の整数を示す。また炭素原子、水素原子の一部は、窒素原子、ハロゲン原子等に置き換わったものでもよい。
【0021】
具体的に、アルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、ジヒドロキシジメトキシシラン、ジヒドロキシジエトキシシラン、ジヒドロキシジ−n−プロピルオキシシラン、トリヒドロキシメトキシシラン、トリヒドロキシエトキシシラン、トリヒドロキシ−n−プロピルオキシシラン、ジフェノキシジエトキシシラン等、または、これらの縮合物、
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、4−クロロフェニルトリエトキシシラン、4−シアノフェニルトリエトキシシラン、4−アミノフェニルトリエトキシシラン、4−ニトロフェニルトリエトキシシラン、4−メチルフェニルトリエトキシシラン、4−ヒドロキシフェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロピルオキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシエポキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシエポキシプロピルトリエトキシシラン、ヒドロキシトリメトキシシラン、ヒドロキシトリエトキシシラン、ヒドロキシトリ−n−プロピルオキシシラン、メチルヒドロキシジメトキシシラン、フェニルヒドロキシジメトキシシラン、メチル(フェノキシ)ジエトキシシラン、フェニル(フェノキシ)ジエトキシシラン、トリフェノキシエトキシシラン、メチル(ジフェノキシ)エトキシシラン、フェニル(ジフェノキシ)エトキシシラン等、または、これらの縮合物、
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシエポキシプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチル(フェノキシ)エトキシシラン、ジフェニル(フェノキシ)エトキシシラン、メチル(フェニル)(フェノキシ)エトキシシラン等、または、これらの縮合物、
トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチル−n−プロピルオキシシラン、ジメチル(エチル)エトキシシラン、ジメチル(シクロヘキシル)エトキシシラン、ジメチル(フェニル)エトキシシラン、メチル(ジフェニル)エトキシシラン等、または、これらの縮合物(例えば、ヘキサメチルジシロキサン等のジシロキサン)等が挙げられる。
【0022】
本発明で用いるアルコキシシラン化合物は、少なくとも、mが0または1である化合物1種以上を混合・縮合させて得られるものが好ましく、このようなアルコキシシラン化合物は3次元架橋構造を有するアルコキシシラン縮合物を形成することができ、詳細は不明であるが、発泡安定性の向上に寄与し、長期的な寸法安定性に優れた硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。係る寸法安定化剤としては、F−701(信越化学工業)等を例示することができる。
【0023】
また、アルコキシシラン縮合物を得る際には、公知の触媒を用いることができる。例えば、具体例として、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジマレート、オクチル酸スズなどの有機スズ化合物、リン酸、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノオクチルホスフェート、モノデシルホスフェート、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジデシルホスフェートなどのリン酸エステル、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、グリシジルメタクリレート、グリシドール、アクリルグリシジルエーテル、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、エポキシ化合物とリン酸および/またはモノ酸性リン酸エステルとの付加反応物、マレイン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イタコン酸、クエン酸、コハク酸、フタル酸、トリメット酸、ピロメット酸、これらの酸無水物、p−トルエンスルホン酸、などの酸性化合物が挙げられる。また、これらの酸性触媒とアミンとの混合物または反応物も含まれる。
【0024】
このような寸法安定化剤の混合量は、ポリオール組成物全量に対し、0.01重量%以上3重量%以下、好ましくは0.1重量%以上1重量%以下が好適である。0.01重量%より少ない場合は、長期的なフォームの寸法安定性が得られない場合があり、3重量%より多い場合は、セルの均一性に劣る場合がある。
【0025】
触媒としては、第3級アミン触媒、イミダゾール系触媒、脂肪酸アルカリ金属塩触媒等の公知の触媒を限定なく使用することができる。
【0026】
第3級アミン触媒としては、具体的にはN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンやN,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン等のN−アルキルポリアルキレンポリアミン類、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ビス(β−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N−ジメチルアミノプロピルヘキサヒドロトリアジン等の第3級アミン触媒を例示できる。
【0027】
イミダゾール系触媒としては、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール等を例示でき、脂肪酸アルカリ金属塩触媒としてはオクチル酸カリウム、酢酸カリウム等を例示することができる。
また、これらの触媒の他に、アミン触媒や有機金属触媒等を併用してもよい。
【0028】
触媒の添加量はポリオール化合物100重量部に対して1重量部以上20重量部以下であることが好ましく、さらには3重量部以上15重量部以下であることが好ましい。
【0029】
難燃剤としては、例えば、有機リン酸エステル類等が挙げられ、有機リン酸エステル類としては、リン酸のハロゲン化アルキルエステル、アルキルリン酸エステルやアリールリン酸エステル、ホスホン酸エステル等が使用可能であり、具体的にはトリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート等が例示でき、これらの1種以上が使用可能である。本発明では難燃性及び減粘剤としての効果も発揮することから、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェートを用いることが好ましいが、これに限定されるものではない。
難燃剤の添加量はポリオール化合物100重量部に対して5重量部以上100重量部以下、好ましくは10重量部以上60重量部以下である。この範囲を逸脱する場合には難燃効果、減粘効果が十分に得られなかったり、フォームの機械的特性が低下するなどの問題が生じる場合ある。
【0030】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール化合物には、上記成分の他に、当業者に周知の界面活性剤、相溶化剤、着色剤、酸化防止剤等が使用可能である。
【0031】
界面活性剤としては、公知の硬質ポリウレタンフォーム用界面活性剤を用いることができるが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリビニルアルコール等の高分子量タイプ、あるいはソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル等の低分子量タイプ、その他、メチルセルロース、ヒドロオキシセルロース、水溶性ビニルポリマー等が挙げられる。
本発明では特に、ソルビタン脂肪酸エステルを用いることが好ましく、中でも特に化学式1(化1)にて表される化学構造を有するポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを用いることが好ましい。
【0032】
(化1)
O(CHCHO)mH

CH
/ \
H(CHCHO)pO─CH CHO(CHCHO)nH
│ │
CH CHCHOCOR
\ /

【0033】
Rは炭素数8〜18のアルキル基、アルケニル基又はアルカジエニル基であり、Rとしては、具体的にはオクチル基、ステアリル基、ラウリル基、オレイル基、パルミチル基などの炭素数が8以上のアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基が例示される。m+n+pは15以上、さらには20以上(但し、m+nは1以上)であり、HLBは10以上、さらには13以上、さらには15以上であることが好ましい。
なおHLBとは、親水親油バランスのことであり、本発明ではグリフィン法によって算出された値である。
【0034】
このようなポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのうち、本発明では特に、ポリオキシエチレンソルビタンモノアルキレートが好適に使用できる。
ポリオキシエチレンソルビタンモノアルキレートは所定の水酸基価を有しているため、ポリオール及び水との相溶性に優れ、かつ発泡時にポリオール骨格中に取り込まれることでフォームの寸法安定性向上に寄与する効果がある。ポリオキシエチレンソルビタンモノアルキレートの中でも、エチレンオキサイド単位の繰り返し単位数の合計量(m+n+p)が15以上、さらには20以上であり、HLBが10以上、さらには13以上、さらには15以上のもの、とりわけポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートが好ましい。
【0035】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの添加量は、ポリオール組成物全量中0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。このような範囲である場合、十分な貯蔵安定性が確保でき、セルの均一性に優れている。この範囲を逸脱する場合には貯蔵時の十分な安定性が得られず、セルの均一性が低下する。
【0036】
このようなポリオール組成物と混合、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリイソシアネート成分としては、取扱の容易性、反応の速さ、得られる硬質ポリウレタンフォームの物理特性が優れていること、低コストであることなどから、通常、液状MDIを使用する。液状MDIとしては、クルードMDI(c−MDI)等が使用される。液状MDIに加えて、他のポリイソシアネート成分を併用してもよい。併用するポリイソシアネート成分としては、ポリウレタンの技術分野において公知のポリイソシアネート成分は限定なく使用可能である。
【0037】
本発明の硬質ポリウレタンフォームは、前記ポリオール組成物と前記ポリイソシアネート成分を、NCO/OH比率(当量比)が1.0〜3.0、好ましくは1.0〜2.0程度に調整し、反応させることによって得ることができる。
また、硬質ポリウレタンフォームの製造時の温度は、前記ポリオール組成物と前記ポリイソシアネート成分の温度がそれぞれ30〜60℃程度となるように調整しておくことが好ましい。
このような硬質ポリウレタンフォームの製造においては、前記ポリオール組成物と前記ポリイソシアート成分を均一に混合することができれば、特に限定されず、公知の装置が使用可能である。例えば、小型ミキサーや、通常のウレタンフォームを製造する際に使用する、注入発泡用の低圧、高圧発泡機、スラブ発泡用の低圧、高圧発泡機、連続ライン用の低圧、高圧発泡機、吹き付け工事用のスプレー発泡機等を使用することができる。
【実施例】
【0038】
(ポリオール組成物)
表1に示す原料を用いて、表2に示す配合にてポリオール組成物を調製した。
得られたポリオール組成物について、次の試験を行った。
【0039】
1)貯蔵安定性
得られたポリオール組成物を、50℃の恒温槽に10日間貯蔵後、ポリオール組成物の状態を目視にて評価した。結果は表2に示す。評価は次の通りである。
○:異常なし
△:ほとんど異常なし
×:相分離がみられた
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
市販の二液混合型のスプレー発泡機を使用し、ポリオール組成物とイソシアネート成分を液温40℃にて、同容積比で混合したウレタン組成物を試験面材(スレート板)上に平均厚さ30mmで硬質ポリウレタンフォームを形成させた。
得られる硬質ポリウレタンフォームについて以下に記載の試験を行った。
【0043】
2)セルの均一性
硬質ポリウレタンフォームから100mm×100mm×20mmに裁断して作製した評価サンプルについて、裁断表面を電子顕微鏡にて観察し、セルの均一性を評価した。結果は表2に示す。評価は、以下の基準により行った。
○:セルサイズが均一である。
×:セルサイズが不均一である。
【0044】
3)寸法安定性
硬質ポリウレタンフォームから100mm×100mm×20mmに裁断して作製した評価サンプルについて、50℃にて3日間放置した後の収縮の有無を目視にて評価を行った。結果は表2に示す。評価は、以下の基準により行った。
○:外観上の収縮なし。
△:外観上の収縮ほとんどなし。
×:外観上の収縮発生。
【0045】
4)密着強さ
硬質ポリウレタンフォームから100mm×100mm×20mmに裁断した評価サンプルを作製し、該評価サンプルについて、JIS A 9526:2006「建築物断熱用吹き付け硬質ウレタンフォーム」、密着強さ試験に準じ、密着強さを評価した。結果は表2に示す。評価は次の通りである。
○:密着強さが80kPa以上
×:密着強さが80kPa未満
【0046】
5)密度
硬質ポリウレタンフォームから100mm×100mm×20mmに裁断して作製した評価サンプルについて、25℃にて3日間放置した後、重量測定を行って密度(kg/m)を算出した。結果は表2に示す。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物、発泡剤として水、整泡剤、寸法安定化剤、触媒、難燃剤を含有し、ポリイソシアネート成分と混合し、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリオール組成物であり、
前記ポリオール化合物が、グリセリンを開始剤とする水酸基価が40mgKOH/g以下であるポリエーテルポリオールを0.1重量%以上35重量%以下含むことを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項2】
水の混合量が、ポリオール化合物100重量部に対し、4重量部以上8重量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項3】
寸法安定化剤が、3次元架橋構造を有するアルコキシシラン縮合物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項4】
さらに、界面活性剤を含み、界面活性剤がポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。



【公開番号】特開2012−1574(P2012−1574A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135466(P2010−135466)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(599071496)ベック株式会社 (98)
【Fターム(参考)】