説明

ポリカーボネートの製造に関する相界面法

【課題】相界面法を用いる効率的なポリカーボネートの連続製造方法に関し、ホスゲン過剰分をできるだけ削減し、かつ先行技術の欠点が起こらない方法を提供する。
【解決手段】ホスゲンおよびポリカーボネートに好適な溶媒を含有する有機相と、ジヒドロキシジアリールアルカン、水およびジヒドロキシジアリールアルカン1モルあたり1.5〜2.5モルの量で存在するアルカリ溶液を含有する水相と、をディスパーサー1中で連続的に分散させる工程;この混合物を第一リアクター中で滞留時間0.5秒以下で反応させる工程;この混合物を更に第二リアクター中で追加のアルカリ溶液を添加して反応させる工程;並びに更に第三リアクター中で追加のアルカリ溶液および、要すれば連鎖停止剤、を添加して触媒の存在下において縮合を行う工程を包含する、相界面法においてジヒドロキシジアリールアルカンとホスゲンとを触媒の存在下において反応させる製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相界面法(phase boundary process)によるポリカーボネートの製造は、Schnell,“Chemistry and Physics of Polycarbonates”,Polymer Reviews,第9巻,Interscience Publishers,ニューヨーク,ロンドン,シドニー1964年,33〜77頁;D.C.Prevorsek,B.T.Debona and Y.Kesten,Corporate Research Center,Allied Chemical Corporation,モリスタウン,ニュージャージー07960:“Synthesis of Poly(ester Carbonate)Copolymers”in Journal of Polymer Science,Polymer Chemistry Edition,第18巻,(1980年)”;75〜90頁,D.Freitag,U.Grigo,P.R.Mueller,N.Nouvertne’,BAYER AG,“Polycarbonates”in Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,第11巻,第2版,1988年,651〜692頁,および最後にDres.U.Grigo,K.Kircher and P.R−Mueller,“Polycarbonate[Polycarbonates]”in Becker/Braun,Kunststoff−Handbuch[Plastics Handbook],第3/1巻,Polycarbonate,Polyacetale,Polyester,Celluloseester[Polycarbonates,Polyacetals,Polyesters,Cellulose Esters],Carl Hanser Verlag Munich,ウィーン1992年,118〜145頁に記述されている。ポリカーボネートの製造に関する相界面法は更に欧州特許公開公報第EP0517044A号および欧州特許公開公報第EP0520272A号に記述されており、これらのそれぞれを参照することによって全体を本明細書中に組み込む。
【背景技術】
【0002】
相界面法によるポリカーボネートの製造に関して、最初にアルカリ水溶液または懸濁液に導入されるビスフェノールまたは異種ビスフェノール混合物の二ナトリウム塩のホスゲン化を、水相に加えて第二有機相を形成する不活性有機溶媒または溶媒混合物の存在下において行う。主に有機相中に存在する生じるオリゴカーボネートを、好適な触媒を用いて縮合して有機相に溶解された高分子量ポリカーボネートを生じ、好適な連鎖停止剤(単官能性フェノール)によって分子量を制御することが可能である。有機相を最後に分離し、ポリカーボネートを種々のワークアップ工程(working−up steps)によってそこから単離する。
【0003】
二相界面法によるホスゲンを用いる縮合物の製造−例えば芳香族ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートまたはそれらのオリゴマーの製造−に関する連続法は、通常、反応の促進および/または相分離の改良のためにプロダクトバランス(product balance)に必要とされるよりも多くのホスゲンを使用しなければならないという欠点を有する。次に過剰のホスゲンは、合成において副生物−例えば更なる塩化ナトリウムまたはアルカリカーボネート化合物−の形態に分解される。典型的には、先行技術によると、添加ジフェノールに対してホスゲン過剰分約20mol%が芳香族ポリカーボネートの製造に関する連続二相界面法に使用される(D.Freitag,U.Grigo,P.R.Mueller,N.Nouvertne,BAYER AG,“Polycarbonates”in Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,第1巻,1,第2版,1998年,651〜692頁参照。)。
【0004】
過剰のホスゲンの削減において、望ましくない二次的影響、例えば最終反応工程後の分散体の乏しい分離、および従って、有機溶液中の水含量の増加または排水中の残留モノマーもしくは連鎖停止剤含量の増加、が起こる。過剰ホスゲンの削減に関する種々の方法が文献で議論されている。
【0005】
DE−A 2 725 967は、最初に水相とホスゲンを含む有機相とをチューブの中で組み合わせ、次に前記相をタンク型のリアクターに導入するプロセスがホスゲンの収量に有利であることを開示している。このチューブにおける滞留時間は0.5〜15秒でなければならない。この反応のホスゲン過剰分は10mol%以上である。このホスゲン過剰分の削減は、反応の終了後の有機相(すなわち油)と水との効果的な分離を達成するために二相の不利な相比を必要とする。別の欠点は、ホスゲン化に関する比較的長い滞留時間である。
【0006】
EP−A−304 691は、ポリカーボネートの製造に関する連続相界面法を記述している。ここで、ジフェノールおよび正に必要とされる量のアルカリ水酸化物を含有する水相を、チューブ中でスタティックミキサーを使用してホスゲン含有有機相と混合する。ホスゲン過剰分20〜100mol%は非常に高く、第一反応工程に関する反応チューブにおける滞留時間は10〜75秒である。このプロセスでは、分子量4000〜12000g/molのプレポリマーのみが製造されうる。
【0007】
EP 0 517 044 A2は、環状ホールノズル(annular hole nozzle)およびフローチューブ(flow tube)を用い、BPAが溶解され続けるようにちょうど十分な水酸化ナトリウム溶液を使用するホスゲン過剰分の削減を記述している。この手順は、ATRクリスタルを用いるクロロ炭酸エステル基の測定に関する複雑な調節および反応溶液の過剰な酸性化を防ぐための次の調節された水酸化ナトリウム溶液の計量添加を必要とする。更に、この反応は、油中水分散体を形成する油対水の相比(1より大きな油/水相比)を必要とする。フローチューブにおける滞留時間は、少なくとも数秒である。
【0008】
EP 0 520 272 B1は、BPA溶液のストリームを分裂させることによってホスゲン小過剰を達成しうることを開示している。ここで、この工程においてホスゲン過剰分少なくとも20mol%が使用されるように、BPA溶液の部分をノズルを介してホスゲン溶液と混合する。次に、この混合物は更にフローチューブ中で最小滞留時間3秒で反応する。ここでも、分散体が油中水分散体であることが必要とされる。この方法の欠点は、特に、更に、第二のBPAストリームの計量添加のための大きな労力にある。
【0009】
従って、相界面法を用いるポリカーボネートの製造におけるホスゲン過剰分の削減は、−これが可能である場合−今まで、次の二相の分離に不利な相比、複雑な計量添加もしくは調節技術または反応装置における反応物の長い滞留時間ではじめて達成可能であった。
【0010】
相界面法によるポリカーボネートの製造におけるホスゲン過剰分の削減は、しかしながら、そのような方法が次の過剰分の分解によるホスゲン損失が実質的に小さいことを保証し、かつ、更にこの分解によって生じる副生物の量が小さいので重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、概して、相界面法を用いる効率的なポリカーボネートの連続製造方法、およびそのような方法において有機相と水相とを混合する特別のディスパーサー(disperser)の使用に関する。
【0012】
本発明の種々の態様は、ホスゲン過剰分をできるだけ削減し、かつ先行技術の欠点が起こらない方法を提供する。特に、本発明の種々の態様は、次の二相の効率的な分離を可能にする方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
意外なことに、反応の前にディスパーサーを用いて水相と有機相とを混合し、かつ、ホスゲン化工程を滞留時間0.5秒以下で行う相界面法によるポリカーボネートの製造方法が、使用されるジヒドロキシジアリールアルカンの合計に対して15mol%以下、好ましくは13mol%以下、特に好ましくは10mol%以下へのホスゲン過剰分の削減を可能にすることがわかった。
【0014】
本発明の種々の態様によるような方法において、二つのジフェノールストリームを用いる複雑な計量添加も複雑な調節技術も必要ない。反応装置におけるホスゲンの極めて短い滞留時間のために、この方法は、更に、ホスゲンが短時間で転化され、かつ、残る削減された過剰分を実質的により迅速に分解に送れるという利点も有する。このことは、安全の観点と経済性の観点の両方に有利である。なぜなら、有毒なホスゲンの取り扱いが時間に関して大幅に限られ、かつ、非転化ホスゲン(すなわち過剰添加されたホスゲン)の損失および後者の分解の結果として生じる副生物が削減されるからである。
【0015】
従って、本発明は、少なくとも一種類のジヒドロキシジアリールアルカン、ホスゲンおよび少なくとも一種類の触媒からの、要すれば少なくとも一種類の連鎖停止剤および/または分枝剤の存在下における、相界面法による平均分子量がM15000〜200000g/molのポリカーボネートの連続製造方法であって、
(a)ポリカーボネートに好適な少なくとも一種類の溶媒およびホスゲン全量または一部を含む有機相と
ジヒドロキシジアリールアルカン、水およびジヒドロキシアリールアルカン1モルあたり1.5mol〜2.5mol加えられるアルカリ溶液を含む水相と
をディスパーサー中で有機相を水相中にまたは水相を有機相中に連続的に分散することによって有機相と水相との混合物を製造し、
(b)次に、この混合物をリアクター中で0.5秒以下の滞留時間で反応させ、
(c)次に、この反応混合物を別のリアクター中で、更に、追加のアルカリ溶液および要すれば連鎖停止剤を添加して反応させ、かつ
(d)次に、少なくとも一つの別のリアクター中で、追加のアルカリ溶液および要すれば連鎖停止剤および少なくとも一種類の触媒を追加することによって更なる縮合を行う
ことを特徴とするポリカーボネートの連続製造方法に関する。
【0016】
本発明の一態様としては、重量平均分子量Mが15,000〜200,000g/molであるポリカーボネートの連続製造方法であって、
ディスパーサー中で、ホスゲンの少なくとも一部およびポリカーボネートに好適な溶媒を含有する有機相と、ジヒドロキシジアリールアルカン、水およびジヒドロキシジアリールアルカン1モルあたり1.5〜2.5モルの量で存在するアルカリ溶液を含有する水相と、を連続的に分散させて混合物を形成する工程;
この混合物を第一のリアクター中で滞留時間0.5秒以下で反応させる工程;
追加量のアルカリ溶液および、要すれば連鎖停止剤を添加してこの混合物を第二のリアクター中で更に反応させる工程;並びに
第二の追加量のアルカリ溶液および、要すれば連鎖停止剤を添加して、触媒の存在下において第三のリアクター中で更なる縮合を行う工程
を包含する、ジヒドロキシジアリールアルカンとホスゲンとを触媒の存在下において相界面法において反応させる工程を包含する、ポリカーボネートの連続製造方法が挙げられる。
【0017】
ディスパーサーを用いる有機相の水相中への分散または水相の有機相中への分散中、水中油または油中水分散体が製造される(油は有機相として理解される。)。好ましくは、水中油分散体が分散中に製造される。好ましくは、有機相はディスパーサーを用いて水相中に連続的に分散される。
【0018】
当然のことながら、水中油分散体は、水が外部の(連続的な)相を形成し、油が内部の(分散された)相を形成する分散体である。すなわち、油滴が水中に分散されている。従って、油中水分散体は、油が外部の相を形成し、水が内部の相を形成する分散体である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以上の要旨、並びに以下の発明の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、よりよく理解できる。本発明の説明の補助目的で、図面に具体例と理解される典型的な態様を示す。しかしながら、本発明は、いかなる方法によっても、示される正確な配置や手段に限定されないと理解されるべきである。
【図1】図1は、本発明の一態様による使用に好適なディスパーサーの概略図である。
【図2】図2は、図1に示されるディスパーサーの図表示である。
【図3】図3は、本発明の一態様による使用に好適なプレディスパーサーの図表示である。
【図4】図4は、本発明の一態様による使用に好適なホモジナイジングノズル(homogenizing nozzle)の図表示である。
【図5】図5は、本発明の別の態様による使用に好適なディスパーサーの図表示である。
【図6】図6は、実施例4〜8においてディスパーサーとして使用されるシングルホールノズル(single−hole nozzle)の概略図である。
【0020】
発明の詳細な説明
本明細書中で使用される単数詞「a」および「the」は、同義であり、ほかに明白に示す言い回しおよび/または文脈がない限り「一以上の」および「少なくとも一つの」と互換性である。従って、例えば、本明細書中または添付の特許請求の範囲において、「ポリカーボネート(a polycarbonate)」への言及は、単一のポリカーボネートまたは一よりも多いポリカーボネートに言及しうる。加えて、全ての数値は、特に記述のない限り、用語「約」によって修飾されていると理解される。
【0021】
有機相は、水相との分散前に、必要とされるホスゲンの一部または全てを既に含んでいてもよい。好ましくは、有機相は、分散前に、必要とされるホスゲンの総量(使用されるホスゲン過剰分を含む。)を既に含んでいる。
【0022】
ホスゲンの有機相への導入は、気体または液体の形態で行われうる。使用されるホスゲンの過剰分は、使用されるジヒドロキシジアリールアルカンの合計に対して、好ましくはわずか15mol%以下、特に好ましくは13mol%以下、より特に好ましくは10mol%以下である。使用されるホスゲンの過剰分は、使用されるジヒドロキシジアリールアルカンの合計に対して、好ましくは3〜15mol%、より好ましくは3〜13mol%、より特に好ましくは5〜10mol%である。
【0023】
水相のpHは、ホスゲンの計量添加中および計量添加後に要すれば追加のアルカリ溶液を一回または数回計量添加して、アルカリの範囲内、好ましくは8.5〜12に保持されるべきであり、触媒の添加後は10〜14にするべきである。アルカリ溶液の追加の計量添加は、要すれば、更に、対応するアルカリ溶液中のジヒドロキシジアリールアルカン溶液の追加の計量添加の形態で行われてもよい。
【0024】
ホスゲンの計量添加は、水相との混合の前に、完全にまたは部分的に直接有機相に行われる。更に任意の割合(portion)のホスゲンを分散前に水相に計量しても分散後に分散体に計量添加してもよい。更に、ホスゲンは、完全にまたは部分的に両方の相の合成混合物のリサイクル部分ストリームに計量添加されてもよく、この部分ストリームは、好ましくは、触媒の添加前にリサイクルされている。別の態様において、記述される水相は、ホスゲン含有有機相と混合され、次に5秒以下の滞留時間後に上記リサイクル部分ストリームに添加されるか、または、二相(記述される水相とホスゲン含有有機相)は、上記リサイクル部分ストリームに直接混合される。特に好ましくは、全ホスゲン計量添加が、水相との混合前に有機相に直接行われる。これらの全ての態様において、上記pH範囲は、適切であれば追加の水酸化ナトリウム溶液の計量添加一回もしくは数回によって、または相応じて追加のビスフェノレート溶液の計量添加によって、維持されるべきである。同様に、温度範囲を、適切であれば、冷却または希釈によって、維持しなければならない。
【0025】
有機相は、一種類の溶媒または複数種の溶媒の混合物からなりうる。好適な溶媒は、芳香族および/または脂肪族塩素化炭化水素、好ましくはジクロロメタン、トリクロロメチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタンおよびクロロベンゼンおよびそれらの混合物である。しかしながら、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、m−/p−/o−キシレン、または芳香族エーテル、例えばアニソール、を単独で、混合物としてまたは塩素化炭化水素(ジクロロメタンおよびクロロベンゼンおよびこれらの混合物が好ましい。)に加えてまたは混合物として使用することもまた可能である。合成の別の態様は、ポリカーボネートを溶解しないが部分的に膨潤させる溶媒を使用する。従って、ポリカーボネートに対する非溶媒を溶媒と組み合わせて使用することも更に可能である。この場合、溶媒パートナー(solvent partner)が第二の有機相を形成する場合、溶媒として水相に可溶な溶媒、例えばテトラヒドロフラン、1,3−もしくは1,4−ジオキサンまたは1,3−ジオキソラン、を使用することも更に可能である。
【0026】
好適なジヒドロキシジアリールアルカン−以上および以下で更に特にジフェノールともいう−は、一般式
HO−Z−OH
(式中、Zは、炭素原子を6〜30個有し、かつ一個以上の芳香族基を含む二価の有機基である。)のジヒドロキシジアリールアルカンである。本発明による方法において使用されるそのような化合物の例は、ジヒドロキシジアリールアルカン、例えばヒドロキノン、レソルシノール、ジヒドロキシビフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α,α’−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、およびそれらのアルキル化、核アルキル化および核ハロゲン化化合物である。
【0027】
好ましいジヒドロキシジアリールアルカンは、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA(BPA))、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−スルホン、2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス[2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0028】
特に好ましいジヒドロキシジアリールアルカンは、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA(BPA))、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0029】
これらおよび更なる好適なジヒドロキシジアリールアルカンは、例えばUS−A 2 999 835、US−A 3,148,172、US−A 2,991,273、US−A 3 271 367、US−A 4,982,014およびUS−A 2,999,846、ドイツ国公開特許出願DE−A 1 570 703、DE−A 2 063 050、DE−A 2 036 052、DE−A 2 211 956およびDE−A 3 832 396、フランス国特許FR−A 1 561 518、モノグラフH.Schnell,Chemistry and Physics of Polycarbonates,Interscience Publishers,ニューヨーク 1964年,28頁以降;102頁以降、およびD.G.Legrand,J.T.Bendler,Handbook of Polycarbonate Science and Technology,Marcel Dekker New York 2000年,72頁以降に記述されている。
【0030】
本発明によるホモポリカーボネートの製造の場合、一種類のジヒドロキシジアリールアルカンのみが使用される。本発明によるコポリカーボネートの製造の場合、複数種のジヒドロキシジアリールアルカンが使用される。もちろん、使用されるジヒドロキシジアリールアルカン、並びに合成に添加される別のあらゆる化学種および助剤は、それ自体の合成、取り扱いおよび貯蔵に由来する不純物で汚染されていてもよいが、できるだけ純粋な原料を用いて加工することが望ましい。
【0031】
本発明との関連で、アルカリ溶液は、好ましくは水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液またはこれらの混合物、特に好ましくは水酸化ナトリウム溶液を意味すると理解されるべきである。
【0032】
ポリカーボネートの製造に関する相界面法における水相は、アルカリ溶液、一種類以上のジヒドロキシジアリールアルカンおよび水を含み、この水溶液の濃度は、水相の総重量に対してジヒドロキシジアリールアルカンの合計(アルカリ金属塩としてではなくフリーのジヒドロキシジアリールアルカンとして計算される。)に基づいて、好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは3〜25重量%、より特に好ましくは8〜17重量%で変化することが可能である。ポリカーボネートの製造に関する相界面法における有機相は、好ましくはM45000超のポリカーボネートを有機相の総重量に対して12〜22重量%、かつ、好ましくはM45000以下ポリカーボネートを有機相の総重量に対して12〜40重量%、特に好ましくは15〜30重量%含む。高濃度の場合、溶液を恒温にする必要がある。ジヒドロキシジアリールアルカンの溶解に使用されるアルカリ水酸化物、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、は、固体の形態で使用されても対応するアルカリ水溶液として使用されてもよい。アルカリ溶液の濃度は、求められるジヒドロキシジアリールアルカン溶液の目標濃度に依存するが、一般的には、100%強度アルカリ溶液に対して5〜25重量%、好ましくは5〜10重量%であるか、または、より濃縮され、次に水で希釈されるように選択される。次の希釈を伴う方法において、濃度が15〜75重量%、好ましくは25〜55重量%であり、要すれば恒温にされるアルカリ溶液が使用される。ジヒドロキシジアリールアルカン1モルあたりのアルカリ金属含量は、ジヒドロキシジアリールアルカンの構造に依存するが、一般的にはアルカリ1.5mol/ジヒドロキシジアリールアルカン1モル〜アルカリ2.5mol/ジヒドロキシジアリールアルカン1モル、好ましくはアルカリ1.8〜2.2mol/ジヒドロキシジアリールアルカン1モルであり、単独のジヒドロキシジアリールアルカンとしてビスフェノールAを使用する特に好ましいケースでは、アルカリ1.85〜2.15molである。一種類超のジヒドロキシジアリールアルカンを使用する場合、これらを共に溶解してもよい。しかしながら、ジヒドロキシジアリールアルカンの溶解性が使用されるアルカリの量に非常に大きく依存するので、二種類のジヒドロキシジアリールアルカンを含有する一つの溶液ではなく、好ましくはそれぞれ好適なアルカリ溶液に溶解された一種類のジヒドロキシジアリールアルカンを有する二つの溶液を有し、これを次に正確な混合比が生ずるように別々に計量添加することが有利である。更に、ジヒドロキシジアリールアルカンをアルカリ溶液中にではなく追加のアルカリが提供される希ジヒドロキシジアリールアルカン溶液中に溶解することが有利である。溶解プロセスは、固体ジヒドロキシジアリールアルカンまたは通常、鱗状もしくは顆粒状のジヒドロキシジアリールアルカンから、または溶融ジフェノールから出発する。水酸化ナトリウムまたは水酸化ナトリウム溶液の場合、使用されるアルカリ金属水酸化物またはアルカリ溶液は、それぞれ、例えばアマルガム法またはいわゆるイオン交換膜法(membrane process)によって製造されていてもよい。いずれの方法も長く使用されてきており、当業者によく知られている。水酸化ナトリウム溶液の場合、イオン交換膜法によって製造される水酸化ナトリウム溶液が好ましく使用される。
【0033】
そのような水溶液および/または水相において、ジヒドロキシジアリールアルカンは、完全にまたは部分的に対応するアルカリ金属塩またはジアルカリ金属塩の形態で存在する。
【0034】
ホスゲンの導入後または導入中に要すれば行われるジヒドロキシジアリールアルカンの計量添加は、ホスゲンまたはその直接誘導体、クロロカルボン酸エステルが反応中に存在する限り行われうる。
【0035】
本発明による方法に好適な触媒は、好ましくは第三級アミン、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、N−エチルピペリジン、N−メチルピペリジンまたはN−iso−/n−プロピルピペリジン、第四級アンモニウム塩、例えば、テトラブチルアンモニウム、トリブチルベンジルアンモニウム、またはテトラエチルアンモニウム水酸化物、塩化物、臭化物、硫酸水素塩またはテトラフルオロボレート、および上記アンモニウム化合物に対応するホスホニウム化合物である。これらの化合物は典型的な相界面触媒として文献に記述されており、市販されており、かつ当業者によく知られている。触媒は合成に単独で添加されても、混合物として添加されても、同時に連続して、要すれば更にホスゲン化の前に添加されてもよいが、オニウム化合物−すなわちアンモニウム化合物またはホスホニウム化合物−やオニウム化合物の混合物が触媒として使用されない限り、ホスゲン導入後の計量添加が好ましい。そのようなオニウム塩触媒の場合、ホスゲンの計量添加前の添加が好ましい。触媒の計量添加は、それ自体、不活性溶媒、好ましくはポリカーボネート合成における有機相の溶媒もしくは複数種の溶媒のうちの一種において、または水溶液として行われうる。第三級アミンの触媒としての使用の場合、例えばそれらの計量添加は、それらの酸、好ましくは鉱酸、特に塩酸、とのアンモニウム塩として水溶液において行われる。複数種の触媒の使用、または触媒の総量の部分の計量添加では、異なる計量添加手順を異なる箇所および異なる時において行うことももちろん可能である。使用される触媒の総量は、使用されるジヒドロキシジアリールアルカンのモルに対して、0.001〜10mol%、好ましくは0.01〜8mol%、特に好ましくは0.05〜5mol%である。
【0036】
分子量の調節に関して、一種類以上の単官能性連鎖停止剤、例えばフェノールまたはアルキルフェノール、特にフェノール、p−tert−ブチルフェノール、イソオクチルフェノール、クミルフェノール、それらのクロロ炭酸エステルまたはモノカルボン酸の酸塩化物またはこれらの連鎖停止剤の混合物の添加が任意に必要とされうる。そのような連鎖停止剤を、要すれば、ジヒドロキシジアリールアルカンと共に反応に供給するか、またはホスゲンもしくはクロロ炭酸末端基が反応混合物中に存在する間、連鎖停止剤として酸塩化物およびクロロ炭酸エステルの場合、生じるポリマーの十分なフェノール性末端基が利用可能である間、の合成中の任意の所望の時点で合成に添加する。しかしながら、好ましくは、連鎖停止剤はホスゲン化後に、ホスゲンがもはや存在しないが、触媒がまだ計量添加されていない箇所または時に、添加される。すなわち、触媒の前に、触媒と共にまたはそれらと平行して計量添加されうる。
【0037】
同様に、一種類以上の分枝剤または分枝剤の混合物は、任意に合成に添加されてもよい。しかしながら、通常、そのような分枝剤は連鎖停止剤の前に添加される。例えば、トリスフェノール、クオーターフェノール(quarterphenols)、トリカルボン酸もしくはテトラカルボン酸の酸塩化物またはこれらのポリフェノールもしくは酸塩化物の混合物が分枝剤として使用される。
【0038】
分枝剤として好適であり三以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の例は、フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプト−2−エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタンである。
【0039】
分枝剤として好適な別の三官能性化合物の例は、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌルおよび3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールである。
【0040】
特に好ましい分枝剤は、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールおよび1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンである。
【0041】
本願との関連で述べられる平均分子量平均は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された重量平均(M)である(ポリカーボネート標準を使用する。)。
【0042】
アルカリ媒体におけるジヒドロキシジアリールアルカンとホスゲンとからのポリカーボネートの合成は、発熱反応であり、好ましくは本発明によって、溶媒または溶媒混合物に依存して、−5℃〜100℃、特に好ましくは15℃〜80℃、より特に好ましくは25℃〜65℃の温度範囲において行われ、大気圧よりも高い圧力が使用されなければならない。
【0043】
ポリカーボネート合成は、連続的に行われる。従って、全反応、すなわち転化および更なる縮合は、 撹拌タンク、チューブ状リアクター、ポンプ循環リアクターまたは撹拌タンクカスケード(stirred tank cascades)またはそれらの組み合わせの影響を受け、上記混合メンバーの使用は、合成混合物が完全に反応して、すなわちホスゲンまたはクロロ炭酸エステルの加水分解性塩素が存在しない場合に、初めて、水相と有機相ができるだけ分離するようにする。本発明による方法の好ましい態様において、工程(b)は、フローチューブにおいて行われる。そのような配置において、行われる混合の極めて短い滞留時間0.5秒以下が特に有利に実現されうる。本発明による方法の更なる好ましい態様において、工程(c)は、ポンプ循環リアクターにおいて行われる。本発明による方法の更なる好ましい態様において、工程(b)は、次に更なるドゥエルリアクター(dwell reactor)が続くポンプ循環リアクターにおいて行われる。
【0044】
反応混合物を形成する二つの相、すなわち有機相と水相、を、ディスパーサーを用いて本発明によって混合する。好適なディスパーサーは、好ましくはノズルまたはジェットディスパーサー、特に、好ましい計量添加方向を可能にするもの、である。本発明の種々の態様による方法における使用に好適なディスパーサーは当業者に既知であり、それらとしては、例えば欧州特許公開公報第EP1368407A号および欧州特許公開公報第EP1599520号に記述されているものが挙げられ、これらはいずれも全内容を参照することによって本明細書中に組み込まれる。
【0045】
好適なノズルは、例えばファンスプレーノズル(fan spray nozzles)、環状スロットノズル(annular slot nozzles)、オリフィスノズル、レフォスノズル(Lefos nozzles)またはスムースジェットノズル(smooth−jet nozzles)である。
【0046】
本発明による好適なノズルは、好ましくは0.02・e〜5.0・eW/L(ワット/リットル)、特に好ましくは0.5・e〜1・eW/lの比供給エネルギー(specific energy input)を有するノズルである。このタイプの装置は、ジェットディスパーサー、開口プレートディスパーサー(aperture plate dispersers)または高圧ホモジナイザーとして知られている。
【0047】
かけられる圧力は、好ましくは0.001〜1MPa、特に好ましくは0.001〜0.5MPaである。
【0048】
図1は、本発明による好ましい連続操作用のディスパーサーを記述している。供給路20を介して、水相または有機相−好ましくは水相−をポンプ21を用いてライン22を介してジェットディスパーサー1に供給する。更に、供給路10を介して、それぞれの他方の相−有機相または水相、好ましくは有機相−をポンプ11を用いてライン12を介して供給する。ジェットディスパーサー1に分散した後、分散体は、対応するリアクター、好ましくはフローチューブ、(図1に示さない。)に入る。
【0049】
図2は、図1のジェットディスパーサーの拡大図である。水相または有機相を矢印22に沿ってプレエマルジョンスペース15に導入する。それぞれの他方の相を、プレディスパーシングノズル(predispersing nozzle)13を通じて矢印12の方向にプレエマルジョンスペース15に導入する。14はこの他方の相に分散される相の大きな液滴を示す。ジェットディスパーサーを通過した後、分散体は矢印5の方向にジェットディスパーサーを離れる。
【0050】
しかしながら、実質的に低い圧力をかけてディスパーサーを操作することも更に可能である。このことは、全ボアの総面積が増加するように複数のボア(bores)および/または直径が大きなボアを使用することによって達成される。必要とされるボアの数および直径は圧低下(pressure drop)によって計算されうる。そのような計算方法は、文献に記述されており、当業者に既知である。
【0051】
本発明による方法の好ましい態様において、使用されるディスパーサーは、有機相および水相をプレディスパーサーに、好ましくはそれぞれ一つずつのポンプによって別々にプレディスパーサーに、供給するディスパーサーである。これらのポンプの圧力は、いずれの場合も、好ましくは2.5MPa以下、好ましくは0.001〜0.5MPaである。
【0052】
次に、プレ分散体(predispersion)の均質化を、好ましくはホモジナイジングノズルにおいて、同様に2.5MPa以下、好ましくは0.001〜0.5MPaの圧力において行う。本発明による方法の好ましい態様において、ディスパーサーは、従って、プレディスパーサーおよびホモジナイジングノズルを含む。
【0053】
あらゆる望ましいノズル、例えばファンスプレーノズル、環状スロットノズル、開口ノズル(aperture nozzles)、レフォスノズルまたはスムースジェットノズル、およびジェットディスパーサーがプレディスパーサーとして好適である。あらゆる望ましいノズル、例えばファンスプレーノズル、環状スロットノズル、開口ノズル、レフォスノズルまたはスムースジェットノズル、およびジェットディスパーサーが、同様にホモジナイジングノズルとして好適である。
【0054】
図3は、水相と有機相とからのプレ分散体9の製造に使用されるプレディスパーサー5の好ましい態様を示す。ミキサー5において、ノズルボア11を介して有機相2をプレミキシングチャンバー(premixing chamber)12の中の水相1に送り込む。有機相2および水相1を共にノズルボア13を通し、その結果としてプレディスパーション9を形成する。逆に、ミキサー5において水相1を有機相2に送り込むこともまた可能である。
【0055】
図4は、ホモジナイジングノズルの好ましい態様を示す。図4によると、プレ分散体9は、ジェットディスパーサーの形態であり、かつチューブと側面ノズルボアを有する挿入物16とからなるホモジナイザー(ホモジナイジングノズル)7に入る。プレ分散体9をノズルボアに通す。反対側において、分散体10が、ジェットディスパーサー7を出る。そのようなジェットディスパーサーは、DE−A 195 10 651に開示されている。好ましくは図2によるものである。原則として、類似したジェットディスパーサーもまた使用されうる。
【0056】
図5は、水相2が矢印11の方向に導入され、かつ有機相1が矢印10の方向に開口プレート3を通ってプレディスパーシングスペース5に導入されるディスパーサーの好ましい態様を示す。次に、プレディスパースされた二相混合物−更にプレ分散体とも云う−を開口プレート4を通し、そのようにして更に分散させる(均質化)。次に、分散体6はフローチューブ7を通って矢印12の方向にディスパーサーを離れる。
【0057】
本発明は、更に、本発明による方法によるポリカーボネートの製造における有機相と水相との混合物の製造用の上記ディスパーサーの一つの使用にも関する。
【0058】
有機相と水相とから製造される混合物が水中油分散体になるディスパーサーがこの目的に関して特に好適である。
【0059】
そのようなディスパーサーを用いる有機相と水相との本発明によるそのような混合は、特に、処理工程(b)のリアクターにおいて反応の高い転化率を維持しながら0.5秒以下、好ましくは更に250ミリ秒以下の実質的に短い混合物の滞留時間を可能にする。二つのストリーム(有機相と水相)の分散中の高いエネルギー供給は、非常に小さい液滴、好ましくは5μm以下、を形成し、ホスゲンが0.5秒以下、好ましくは250ミリ秒以下の時間で反応するのに有利である。このことは、ホスゲンの完全転化に小さな装置(リアクター)を使用することを可能にし、かつ、この有毒な反応物の取り扱い時間を短くする。
【0060】
反応の終端におけるホスゲン過剰が少ないにもかかわらず、この反応による方法は、良好な相分離並びに有機相における低い水含量と更に水相における低い残留モノマー含量との両方を可能にする。
【0061】
反応した、未だに微量、好ましくは2ppm以下、のクロロ炭酸エステルを含む少なくとも二つの相の反応混合物のワークアップに関して、沈降が相分離に可能である。水性アルカリ相を、要すれば完全にもしくは部分的に水相としてポリカーボネート合成にリサイクルするかまたは溶媒および触媒部分を分離する廃水ワークアップに供給し、要すればポリカーボネート合成にリサイクルする。ワークアップの別の変形において、有機不純物を分離した後、特に溶媒およびポリマー残留物から分離した後、かつ要すれば、例えば水酸化ナトリウム溶液の添加によって、所定のpHを達成した後、塩を分離し、例えば、クロロアルカリ電気分解に供給し、水相を要すればポリカーボネート合成に戻す。
【0062】
次に、ポリカーボネート含有有機相を、アルカリ、イオンまたは触媒汚染物の除去に関する当業者に既知の種々の方法で精製する。
【0063】
要すれば、沈降タンク、撹拌タンク、コアレッサーまたはセパレータを通すことおよびこれらの手段の組み合わせ−要すれば、特定の状況のもとで能動または受動混合メンバーを使用して、それぞれの分離工程またはいくつかの分離工程において水を計量添加することも可能である−によってサポートされる、一以上の沈降処理の後であっても、有機相は未だに細かい液滴の形態の水性アルカリ相および触媒の部分を含む。このアルカリ性水相の粗分離後、有機相を一回または数回、希酸、鉱酸、カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸および/またはスルホン酸で洗浄しうる。鉱酸水溶液、特に塩酸、亜リン酸、リン酸またはこれらの酸の混合物が好ましい。これらの酸の濃度は、好ましくは0.001〜50重量%、好ましくは0.01〜5重量%である。更に、有機相は、繰り返し脱塩水または蒸留水で洗浄されうる。個々の洗浄工程後の有機相の分離、任意に有機相の部分と分散していてもよい、は、沈降タンク、撹拌タンク、コアレッサーまたはセパレータまたはこれらの手段の組み合わせを用いて行われ、洗浄工程同士の間に、要すれば能動または受動混合メンバーを使用して、洗浄水を計量添加してもよい。これらの洗浄工程同士の間、または洗浄後、要すれば、酸、好ましくはポリマー溶液がベースとする溶媒に溶解された酸、を添加してもよい。ここでは、塩化水素ガス、リン酸または亜リン酸(これらは要すれば更に混合物として使用されてもよい。)が好ましくは使用される。このように得られる精製ポリカーボネート溶液は、最終分離プロセス後、水を好ましくは5重量%以下、好ましくは1重量%以下、より特に好ましくは0.5重量%以下含む。
【0064】
この溶液からのポリカーボネートの単離は、温度、真空または加熱共留ガスを用いる溶媒の蒸発によって行われうる。別の単離方法は、例えば結晶化および沈殿である。
【0065】
ポリカーボネート溶液の濃縮および可能であれば更にポリカーボネートの単離を溶媒の留去によって、要すれば過熱および膨張によって、行う場合、用語「フラッシュ法」が使用される。そのような方法は、当業者に既知であり、例えば“Thermische Trennverfahren[Thermal separation processes]”,VCH Verlagsanstalt 1988年,114頁に記述されている。代わりに蒸発される溶液と共に加熱キャリアガスを噴霧する場合、用語「噴霧蒸発/噴霧乾燥」が使用され、これは一例として、Vauck,“Grundoperationen chemischer Verfahrenstechnik[Basic operations of chemical process engineering]”,Deutscher Verlag fuer Grundstoffindustrie 2000年,第11版,690頁に記述されている。これらの方法は全て特許文献およびテキストに記述されており、当業者によく知られている。
【0066】
温度(留去)または技術的により効果的なフラッシュ法による溶媒の除去において、高濃縮ポリカーボネート溶融物が得られる。フラッシュ法において、ポリマー溶液はわずかに大気圧を超える圧力のもとで、大気圧のもとでの沸点よりも高い温度に繰り返し加熱され、これらの溶液は大気圧に対して過熱され、次に低圧(例えば大気圧)容器に降下させられる。濃縮段階、すなわち過熱の温度段階、を大きくしすぎるように選択せず、好ましくは二〜四段階プロセスを選択することが有利である。
【0067】
溶媒の残留物を高濃縮ポリカーボネート溶融物から除去し、従ってベント押出機(例えばBE−A 866 991、EP−A 0 411 510、US−A 4 980 105、DE−A 33 32 065参照。)、薄膜式蒸発器(例えばEP−A 0 267 025参照。)、流下膜式蒸発器、ストランド蒸発器(strand evaporators)または摩擦圧縮(friction compacting)(例えばEP−A 0 460 450参照。)を用いて、要すれば更に共留剤、例えば窒素もしくは二酸化炭素、を添加するかまたは真空を使用(例えば、EP−A 0 039 96、EP−A 0 256 003、US−A 4 423 207参照。)して溶融物から直接得るか、または代わりに更に次の結晶化(例えばDE−A 34 29 960参照。)および/もしくは固相における加熱による溶媒の残留物の追出(例えばUS−A 3 986 269、DE−A 20 53 876参照。)によって得られる。これらの方法もまた、かつ、この目的に必要とされる装置は、文献に記述されており、当業者によく知られている。
【0068】
ポリカーボネートグラニュールは、−可能であれば−溶融物の直接紡糸および次のグラニュール化によってまたは紡糸が空気中でまたは液体、通常水、の下で行われる排出押出機(discharge extruder)の使用によって得られる。押出機を使用する場合、押出機の前に、要すればスタティックミキサーを使用して、またはこの押出機におけるサイド押出機(side extruders)によって、添加剤をポリカーボネート溶融物に添加してもよい。
【0069】
代わりに、ポリカーボネート溶液を噴霧蒸発してもよい。噴霧中、ポリカーボネート溶液を、要すれば加熱後、容器に低圧において噴霧するかまたは加熱キャリアガス、例えば窒素、アルゴンもしくは水蒸気、と共にノズルを用いて大気圧の容器に噴霧する。どちらの場合も、ポリマー溶液の濃度に依存して、ポリマーのパウダー(希)またはフレーク(濃)が得られ、これらから溶媒の最終残留物もまた要すれば上記の様に除去されるべきである。その後、グラニュールが、配合押出機および次の紡糸を用いて得られる。ここでもまた、上記の様な添加剤が周囲に添加されるかまたは押出機それ自体に添加されうる。しばしば、ポリマーパウダーは、パウダーおよびフレークの低いバルク密度のために、押出前に圧縮工程を通すことが必要である。
【0070】
ポリマーは、洗浄し、かつ、要すれば更に濃縮したポリカーボネート溶液から、ポリカーボネートの非溶媒の添加によって実質的に沈殿されうる。非溶媒は沈殿剤の役割を果たす。ここで、最初に少量の非溶媒を添加し、かつ要すれば更に非溶媒のバッチの添加の間の待ち時間を与えることが有利である。異種非溶媒を使用することも更に有利である。例えば脂肪族または脂環式炭化水素、特にヘプタン、イソオクタンもしくはシクロヘキサン、アルコール、例えばメタノール、エタノールもしくはイソプロパノール、ケトン、例えばアセトン、またはこれらの混合物がここで沈殿剤として使用される。沈殿中、一般的に、ポリマー溶液をゆっくりと沈殿剤に添加する。そのようにして得られるポリカーボネートを、噴霧蒸発の場合に記述されるようにグラニュールに加工し、要すれば添加剤を導入する。
【0071】
別の方法によると、沈殿および結晶化生成物または無定形に凝固させられた生成物を、同時のガラス転移温度以下加熱と共にポリカーボネートの非溶媒一種類以上の蒸気を通すことによって微粒子の形態に結晶化し、更に縮合して高分子量を生じる。オリゴマーが要すれば異種末端基(フェノール末端および連鎖停止剤末端)を有する場合、用語「固相縮合」が使用される。
【0072】
添加剤の添加は、使用期間の増加もしくは色安定性の改良(安定剤)、加工の簡素化(例えば離型剤、流動改良剤、帯電防止剤)またはポリマー特性の所定の負荷への適合(耐衝撃性改良剤、例えばゴム;防炎加工剤、着色剤、ガラス繊維)に役立つ。
【0073】
これらの添加剤は、ポリマー溶融物に単独で添加されるかまたは任意の所望の混合物においてもしくは複数の異種混合物において共に添加されうる。これは、ポリマーの単離中またはグラニュールの溶融後に、いわゆる配合工程において、直接行われる。添加剤またはそれらの混合物は、固体として、好ましくはパウダーとして、または溶融物として、ポリマー溶融物に添加されうる。計量添加の別の方法は、添加剤または添加剤混合物のマスターバッチまたはマスターバッチ混合物の使用である。
【0074】
好適な添加剤は、例えば“Additives for Plastics Handbook,John Murphy,Elsevier,オックスフォード1999年”,および“Plastics Additives Handbook,Hans Zweifel,Hanser,ミュンヘン2001年”に記述されている。
【0075】
好適な酸化防止剤および熱安定剤の例は、アルキル化モノフェノール、アルキルチオメチルフェノール、ヒドロキノンおよびアルキル化ヒドロキノン、トコフェロール、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、アルキリデンビスフェノール、O−、N−およびS−ベンジル化合物、ヒドロキシベンジル化マロネート、芳香族ヒドロキシベンジル化合物、トリアジン化合物、アシルアミノフェノール、β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステル、β−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸のエステル、β−(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル酢酸のエステル、β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド、好適なチオ相乗剤、二次酸化防止剤、ホスファイト、ホスホナイト、ホスホネートおよびホスファン、ベンゾフラノンおよびインドリノンである。
【0076】
好ましい酸化防止剤または熱安定剤は、有機ホスファイト、ホスホネートおよびホスファン、通常有機基が全てまたは部分的に任意に置換されていてもよい芳香族基を含有するもの、である。
【0077】
重金属および痕跡量のアルカリの中和に好適な錯生成剤は、例えばo−もしくはm−リン酸、完全にもしくは部分的にエステル化されたホスフェートまたはホスファイトである。
【0078】
好適な光安定剤(UV吸収剤)は、例えば2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノン、置換および非置換安息香酸のエステル、アクリレート、立体的に込み合ったアミン、オキサミド、2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジンまたは置換ベンゾトリアゾールであり、置換ベンゾトリアゾールが特に好ましい。
【0079】
安定剤としてポリプロピレングリコール単独または、例えばスルホンもしくはスルホンアミドとの組み合わせがγ線によるダメージを防ぐために使用されうる。
【0080】
これらおよび別の安定剤は、個々にまたは組み合わせて使用され、前記形態でポリマーに添加される。
【0081】
加えて、加工助剤、例えば離型剤、例えば長鎖脂肪酸の誘導体、を添加してもよい。例えば、ペンタエリトリトールテトラステアレートおよびグリセリルモノステアレートが好ましい。それらは単独でまたは混合物として、好ましくは組成物の重量に対して0.02〜1重量%の量で使用される。好適な難燃添加剤は、リン酸エステル、すなわちトリフェニルホスフェート、レソルシノール二リン酸エステル、臭素含有化合物、例えば臭化リン酸エステル、臭化オリゴカーボネートおよびポリカーボネートであり、好ましくはフッ化有機スルホン酸の塩である。好適な耐衝撃性改良剤は、グラフトスチレン−アクリロニトリルまたはメチルメタクリレートを有するブタジエンゴム、グラフト無水マレイン酸を有するエチレン−プロピレンゴム、グラフトメチルメタクリレートまたはスチレン−アクリロニトリルを有するエチルアクリレートおよびブチルアクリレートゴム、グラフトメチルメタクリレートまたはスチレン−アクリロニトリルを有する相互浸透シロキサンおよびアクリレートネットワークである。
【0082】
更に、着色剤、例えば有機染料または顔料および無機顔料、IR吸収剤を、個々に、混合物としてまたは安定剤、ガラス繊維、(中空)ガラス球もしくは無機充填剤と組み合わせて、添加してもよい。
【0083】
ポリカーボネートの単離によってまたは配合によって製造されたポリカーボネート溶融物を、ダイヘッドを通してストランドの形態に紡糸し、ガス、例えば空気もしくは窒素、または冷却液、通常水、で冷却し、凝固ストランドを、例えば回転ロール上、大気中、不活性ガス、例えば窒素もしくはアルゴン、のもと、または水中に存在するカッターを有する市販のグラニュレーターにおいてグラニュール化する。装置のデザインに依存して、円形または楕円形の断面および粗いかまたは滑らかな表面形態を有する柱状グラニュールが形成される。切り口は滑らかであるかまたは砕かれた切り口を有するかもしくは切り口に残留物を残すガラス様の破面を有する。できるだけ均一に形成され、切り口に残る突起ができるだけ少ないグラニュールが望ましい。更に、グラニュールにおけるダストの割合はできるだけ低く、好ましくはグラニュール1kgあたり100mg以下に、保持されるべきである。グラニュール粒子の直径は、0.5mm〜10mm、好ましくは1〜8mm、特に好ましくは3〜6mmであるべきである。グラニュール粒子の長さは1〜10mm、好ましくは2〜8mmであり、重量は10〜50mg、好ましくは15〜30mgであるべきである。直径(楕円形断面の場合平均径)対長さの比が0.8〜1.2であるグラニュールが好ましく、比約1のグラニュールが特に好ましい。これらのパラメータは、サイズ分布に支配され、できるだけ狭い分布、すなわち寸法ができるだけ均一であるグラニュール、が好ましい。
【0084】
冷却、紡糸、グラニュール化および次のガスまたは液体を用いるグラニュールの輸送または運搬、および次の(要すれば混合または均質化プロセス後の)貯蔵は、静電荷の帯電が存在するが、不純物(例えばダスト、機械からの磨耗材、エアロゾル様滑剤並びにウォーターバスもしくは使用される冷却システムからの別の液体および塩)がポリマー表面、ストランド表面またはグラニュール表面にできるだけ適用されないようにデザインされるべきである。
【0085】
本発明によって製造されるポリカーボネートは、例えば押出品および成形品、特に透明なエリア、より特に光学用途の分野、における使用に関するもの、例えばシート、マルチウォールシート、グレージング、ディフューザースクリーン、ランプカバーまたは光学データ記憶装置(例えばオーディオCD、CD−R(W)、DVD、DVD−R(W)、種々の読み取り専用または書き込み可能および要すれば更に書換可能な態様のミニディスク)、の製造に好適である。
【0086】
更なる用途の例は、本発明の対象を限定するわけではないが、以下のものである。
1.建築、乗物および航空機の多くの部分に、並びにヘルメットのバイザーとして必要とされることが知られている、セイフティスクリーン
2.シート
3.吹込成形体(更にUS−A 2 964 794参照。)例えば1〜5ガロンの採水器
4.透明シート、例えばソリッドシート(solid sheet)、特に中空チャンバーシート(hollow−chamber sheet)、例えば建物(例えば鉄道の駅)、温室および照明装置の覆い
5.光学データ記憶装置、例えばオーディオCD、CD−R(W)、DCD、DVD−R(W)、ミニディスクおよび次世代開発装置(subsequent developments)
6.交通信号のハウジングまたは交通標識
7.任意に印刷可能であってもよい開放表面または閉曲面を有するフォーム
8.フィラメントおよびワイヤー(更にDE−A 11 37 167参照。)
9.照明用途、要すれば半透明部分における用途に関するガラス繊維の使用を伴う
10.透明光散乱成形物品の製造に関する硫酸バリウムおよび/または二酸化チタンおよび/または酸化ジルコニウムまたは有機ポリマーアクリレートゴムを含む半透明配合物(EP−A 0 634 445、EP−A 0 269 324)
11.精密射出成形品、例えばホルダー、例えばレンズホルダー;ガラス繊維および要すれば追加の含量の1〜10重量%二硫化モリブデン(全成形部分に対する。)を含有するポリカーボネートを要すれば使用する
12.光学機器部品、特に写真カメラおよびシネカメラ(cine cameras)用のレンズ(DE−A 27 01 173)
13.光透過媒体、特に光学繊維(EP−A 0 089 801)および照明ストリップ(lighting strips)
14.導電体およびプラグハウジングおよびコネクタおよびコンデンサー用電気絶縁材料
15.携帯電話のハウジング
16.ネットワークインターフェースデバイス
17.有機光伝導体用キャリア材料
18.ライト、へドライトランプ、光拡散スクリーンまたは内部レンズ
19.医療用途、例えば酸素供給器または透析装置
20.食品用途、例えばボトル、食事用食器およびチョコレート型
21.自動車分野における用途、例えばグレージングまたはバンパーとしてのABSとのブレンドの形態
22.スポーツ用品、例えばスラロームポールまたはスキーブーツファスナー(ski boot fasteners)
23.家庭用品、例えばキッチンシンク、洗面器、レターボックス
24.ハウジング、例えば配電盤
25.電気デバイス、例えば歯ブラシ、ヘアドライヤー、コーヒーマシーン、工作機械、例えばドリル、カッター、平削り盤およびソー用のハウジング
26.洗濯機のぞき窓
27.安全めがね、サングラス、矯正めがねまたはそれらのレンズ
28.ランプカバー
29.包装フィルム
30.チップボックス(chip boxes)、チップ支持体、Siウエハー用ボックス
31.別の用途、例えば家畜小屋のドアまたは動物の檻
【0087】
以下の非限定的な例を参照して本発明をさらに詳細に記述する。
【実施例】
【0088】
使用されるジヒドロキシジアリールアルカンは、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA、BPA)であり、有機相の溶媒は塩化メチレン50重量%とモノクロロベンゼン50重量%との混合物である。
【0089】
実施例1(本発明による):
以下のものを個々の処理工程に関する装置として使用した。
処理工程(a):一方の液体を他方の中に分散するための、滞留時間26ミリ秒のプレディスパーシングスペース(穿孔プレート厚2.35であり、流速5.2m/秒で圧力低下0.2barである、それぞれ直径2.5mmのボアを5つ有する開口プレートを有する。)および次のディスパーシングスペース(穿孔プレート厚2.35mmであり、流速8.9m/秒で圧力低下0.8barである、それぞれ直径1.5mmのボアを18個有する別の開口プレートを有する。)、並びに滞留時間0.2秒の下流のフローチューブを有する、開口プレートノズルの形態のディスパーサー
処理工程(b):NaOH溶液用の計量添加ポイント、ポンプ、熱交換器、オーバーフローコンテナおよびT字型試料採取ポイントを備え、容積が140Lであり、pHプローブおよび導電率プローブを備えるポンプ循環リアクターであって、このポンプ循環リアクターの入口において再分散を行うポンプ循環リアクター
処理工程(c):排出ポンプ(discharge pump)並びに混合ゾーンおよびドゥエルゾーンを有する総容積60Lのコイル状チューブリアクター
処理工程(d):入口部に触媒用の計量添加ポイントを有し、総容積が80Lである、処理工程3におけるリアクターと同じ能力を有する追加のコイル−チューブリアクター
次の相分離:分離容器(サイズ415m、レベル50%)
【0090】
以下のストリームを処理工程(a)において使用した:
BPA溶液750kg/時間(溶液の総重量に対してBPA15.22重量%、水酸化ナトリウム溶液2.08mol/BPA1mol)
ホスゲン53.9kg/時間
塩化メチレン50重量%とクロロベンゼン50重量%とを含有する溶媒混合物615.6kg/時間
【0091】
以下のストリームを更に処理工程(b)において使用した:
NaOH15重量%のNaOH溶液9.3kg/時間
【0092】
以下のストリームを更に処理工程(c)において使用した:
NaOH15重量%のNaOH溶液53.0kg/時間
tert−ブチルフェノール溶液35.1kg/時間(塩化メチレン50重量%とクロロベンゼン50重量%とを含有する溶媒混合物中、11.4重量%)
【0093】
以下のストリームを更に処理工程(d)において使用した:
触媒29.5kg/時間(塩化メチレン50重量%とクロロベンゼン50重量%とを含有する溶媒混合物中のエチルピペリジン3重量%強度溶液)
【0094】
ポンプ循環リアクター中の温度は42℃(熱交換器後)〜45℃(熱交換器前)であった。処理工程(c)においてコイル状チューブリアクター中の温度は46℃であり、処理工程(d)においてコイル状チューブリアクター中の温度は45℃であり、分離容器中の温度は40℃であった。
【0095】
有機相が水相中に分散するように分散方向をセットした。
【0096】
ホスゲン過剰分9.7重量%を用いた。相分離後、以下の値を測定した。
水中のBPA 1ppm
沈降後の有機相中の水含量 1.07重量%
有機相中の低い水含量および排水中の低い残留モノマーBPA含量は相分離の優れた品質を示す。加えて、分散体は良好かつ安定な分離挙動を示した。
【0097】
実施例2(本発明による):
用いられた装置は、分散方向が逆であった、すなわち、水相が有機相中に分散した、こと以外、例1と同様であった。
【0098】
以下のストリームを処理工程(a)において使用した:
BPA溶液754.9kg/時間(BPA、溶液の総重量に対して14.76重量%、水酸化ナトリウム溶液2.11mol/BPA1mol)
ホスゲン54.3kg/時間
塩化メチレン50重量%とクロロベンゼン50重量%とを含有する溶媒混合物612.2kg/時間
【0099】
以下のストリームを更に処理工程(b)において使用した:
NaOH25重量%を有するNaOH溶液9.9kg/時間
【0100】
以下のストリームを更に処理工程(c)において使用した:
NaOH25重量%を有するNaOH溶液25.2kg/時間
tert−ブチルフェノール溶液35.3kg/時間(塩化メチレン50重量%とクロロベンゼン50重量%とを含有する溶媒混合物中、11.4重量%)
【0101】
以下のストリームを更に処理工程(d)において使用した:
触媒28.02kg/時間(塩化メチレン50重量%とクロロベンゼン50重量%とを含有する溶媒混合物中エチルピペリジン3重量%強度溶液)
【0102】
ポンプ循環リアクター中の温度は42℃(熱交換器後)〜45℃(熱交換器前)であった。処理工程(c)中のコイル状チューブリアクター中の温度は46℃であり、処理工程(d)中のコイル状チューブリアクターの温度は45℃であり、分離容器中の温度は40℃であった。
【0103】
ホスゲン過剰分13.0重量%を使用した。相分離後、以下の値が測定された。
廃水中のBPA 13ppm
沈降後の有機相中の水含量 2.5重量%
【0104】
廃水中の残留モノマーBPA含量が高いにもかかわらず、依然有機相中の水含量が非常に低い、高品質相分離が観測された。加えて、分散体は、良好かつ安定な分離挙動を示した。
【0105】
比較例3:
ディスパーサーの代わりに、対向するポイントにおいてポンプ循環リアクターに二つのストリーム(水相と有機相)を導入するバッフルを、有機相と水相との混合に関する処理工程(a)において使用した。
【0106】
以下のストリームを処理工程(a)において使用した:
BPA溶液744.2kg/時間(BPA、溶液の総重量に対して14.88重量%、水酸化ナトリウム溶液2.13mol/BPA1mol)
ホスゲン53.7kg/時間
塩化メチレン50重量%とクロロベンゼン50重量%とを含有する溶媒混合物641.1kg/時間
【0107】
以下のストリームを更に処理工程(b)において使用した:
NaOH25重量%を有するNaOH溶液9.8kg/時間
【0108】
以下のストリームを更に処理工程(c)において使用した:
NaOH25重量%を有するNaOH溶液25.27kg/時間
tert−ブチルフェノール溶液33.7kg/時間(塩化メチレン50重量%とクロロベンゼン50重量%とを含有する溶媒混合物中、11.4重量%)
【0109】
以下のストリームを更に処理工程(d)において使用した:
触媒30.4kg/時間(塩化メチレン50重量%とクロロベンゼン50重量%とを含有する溶媒混合物中エチルピペリジン3重量%強度溶液)
【0110】
ポンプ循環リアクター中の温度は42℃(熱交換器後)〜45℃(熱交換器前)であった。処理工程(c)におけるコイル状チューブリアクター中の温度は46℃であり、処理工程(d)におけるコイル状チューブリアクターの温度は45℃であり、かつ、分離容器中の温度は40℃であった。
【0111】
ホスゲン過剰分13.3重量%を用いた。相分離後、以下の値が測定された。
廃水中のBPA 18ppm
沈降後の有機相中の水含量 3.65重量%
廃水中の残留モノマーBPA含量と有機相中の水含量との両方が本発明によるディスパーサーを使用する場合よりも高かった。相分離において、分離挙動の大きな変化および分離における不安定性が更に観測された。
【0112】
実施例4〜8:
分散効果および処理工程(a)によるホスゲン化の経過のモニタリングのために、シングルホールノズルを有する実験装置(図6による。)において更なる実験を行い、ホスゲン濃度と分散体中の分散相の液滴サイズの両方を測定した。
【0113】
図6は、実施例4〜8のディスパーサーとして使用されるシングルホールノズルの概略図を示す。上部Aの小さいボア1の直径は0.75mmであり、下部Bにおける小さいボア2の直径は1.05mmである。ノズルの上部Aのチューブセクションの直径3は2mmであり、ノズルの下部Bのチューブセクションの直径4は3mmである。
【0114】
NaOH/BPAモル比2.1のBPA15重量%溶液(溶液の総重量に対する。)を実施例4〜8の水相として使用した。塩化メチレン50重量%とクロロベンゼン50重量%とを含有する混合物を有機相の溶媒として使用し、実施例7および8においてこの混合物に種々の量のホスゲンを添加した。これらの反応物を上記ノズルにおいて分散させた。分散の方向および従って分散体(水中油または油中水)の予備調節は流入によって決定される(垂直の上部ストリーム5の相を水平の側面ストリーム6の相に分散する。)。実験中のノズルを通じる圧力低下は約1.5barであった。次にこの反応混合物をキャピラリーを介して測定チャンバーに導入した。この測定チャンバー中の総滞留時間は200ミリ秒であった。このチャンバーは、濃度(ホスゲン、クロロ炭酸エステルおよびカーボネート基)測定用ATRクリスタルかまたは粒度分布(すなわち液滴サイズ分布)の光学的測定法用ウィンドウの一方を備えていた。測定を、貫流と共に連続的に、また、チャンバーの終端におけるバルブを閉めた後(ストップトフローテクニック)の両方で行った。
【0115】
実施例4〜6は、ディスパーサーによってもたらされる液滴のサイズ分布のモニタリングに役立つだけである。実施例7および8は、非常に短い滞留時間200ミリ秒中の反応における転化率の定量化に役立つ。
【0116】
実施例4:
油中水分散体が形成されるように分散方向を設定して、ホスゲンを有さない溶媒ストリーム(155g/分)とBPAの水相のストリーム(200g/分)とを組み合わせた。分散液滴のサイズは貫流において46μm(Sauter diameter(ザウター径)、d32)であった。ザウター径は当業者に既知であり、例えばZlokarnik:“Ruehrtechnik,Theorie und Praxis[Stirring technology,Theory and Practice]”Springer Verlag 1999年,232頁に記述されている。ザウター径は、顕微鏡写真を用いる既知の画像処理法並びに粒子の計数および測定に基づいて決定され得る。安定相分離が4秒後に起こった。
【0117】
実施例5:
水中油分散体が形成されるように分散方向を設定して、ホスゲンを有さない溶媒ストリーム(155g/分)とBPAの水相のストリーム(200g/分)とを組み合わせた。分散液滴のサイズは貫流において53μm(ザウター径、d32)であった。安定相分離が2秒後に起こった。
【0118】
実施例6(本発明による):
水中油分散体が形成されるように分散方向を設定して、ホスゲン含有溶媒ストリーム(190g/分)とBPAの水相のストリーム(220g/分)とをホスゲン対BPAのモル比1.09:1で組み合わせた。非常に細かい液滴均一分散体が観測された。貫流において、分散液滴のサイズは顕微鏡の分解能の限界5μmを下回った。すなわち5μm以下であった(ザウター径、d32)。流れが止められたわずか250ミリ秒後の液滴の直径は50μmであった。流れの停止1秒後、迅速な凝集が行われた。数分後、安定相分離が起こった。
【0119】
実施例4〜6は、水相および有機相を含有する分散体において実質的に小さいサイズの分散粒子が単にディスパーサーの使用によって引き起こされるわけではなく、液滴サイズの実質的な減少の意外な効果がホスゲンの存在下のみで観測されることを示す。従って、先のディスパーサーの使用の有利な効果は、意外なことに、本発明によるホスゲンとジヒドロキシジアリールアルカンとの反応の場合に大きい。
【0120】
実施例7(本発明による):
ホスゲンを、20mol%(使用されるBPAの量に対する。)過剰で有機ストリーム(有機ストリームの流量365g/分)に添加した。有機相対水相の相比は1:1(体積比)であった。測定チャンバーへの供給ライン中、滞留時間200ミリ秒後に、ホスゲンはもはや検出可能でなかった。
【0121】
実施例8(本発明による):
ホスゲンを過剰分なし(使用されるBPAの量に対する。)に有機ストリームに添加した(有機ストリームの流量360g/分)。有機相対水相の相比は0.84:1(体積比)であった。測定チャンバーへの供給ライン中、滞留時間200ミリ秒後に、ホスゲンはもはや検出可能でなかった。
【0122】
比較例9:
実施例4〜8におけるような配置を使用したが、図6中に示されるノズルは使用しなかった。ストリームをT字型部品を介して組み合わせた。ホスゲンを20mol%過剰(使用されるBPAの量に対する。)で有機ストリーム(有機ストリームの流量365g/分)に添加した。有機相対水相の相比は1:1(体積比)であった。測定チャンバーへの供給ライン中、滞留時間200ミリ秒後、ホスゲン10%が検出された。
【0123】
実施例7〜9は、ディスパーサーの使用が非転化ホスゲンの含量の潜在性の減少をもたらすことを示す。
【0124】
広い本発明の概念から逸脱せずに上記態様への変形がつくられることが当業者によって理解される。従って、本発明は、開示される特定の態様に限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲内の変更にわたることが意図されることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量Mが15,000〜200,000g/molのポリカーボネートの連続製造方法であって、
ホスゲンの少なくとも一部およびポリカーボネートに好適な溶媒を含有する有機相と、ジヒドロキシジアリールアルカン、水および該ジヒドロキシジアリールアルカン1モルあたり1.5〜2.5モルの量で存在するアルカリ溶液を含有する水相と、をディスパーサー中で連続的に分散させて混合物を形成する工程;
該混合物を第一リアクター中で滞留時間0.5秒以下で反応させる工程;
該混合物を更に第二リアクター中で追加量のアルカリ溶液および、要すれば連鎖停止剤、を添加して反応させる工程;並びに
更に第三リアクター中で第二の追加量のアルカリ溶液および、要すれば連鎖停止剤、を添加して、触媒の存在下において縮合を行う工程
を包含する相界面法においてジヒドロキシジアリールアルカンとホスゲンとを触媒の存在下において反応させる工程を包含する、ポリカーボネートの連続製造方法。
【請求項2】
該混合物が水中油分散体を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該混合物を反応させる工程が、温度−5℃〜100℃において行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該混合物を反応させる工程が、温度15℃〜80℃において行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該混合物を反応させる工程が、温度−5℃〜100℃において行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
該混合物を反応させる工程が、温度15℃〜80℃において行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
該ホスゲンが該ジヒドロキシジアリールアルカンに対して15mol%過剰以下の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
該ホスゲンが該ジヒドロキシジアリールアルカンに対して15mol%過剰以下の量で存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
該ホスゲンが該ジヒドロキシジアリールアルカンに対して15mol%過剰以下の量で存在する、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
該ホスゲンが該ジヒドロキシジアリールアルカンに対して13mol%過剰以下の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
該ジヒドロキシジアリールアルカンが、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−フェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、およびそれらの混合物からなる群から選択される一種類以上を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
該ジヒドロキシジアリールアルカンが、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−フェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、およびそれらの混合物からなる群から選択される一種類以上を含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
該ジヒドロキシジアリールアルカンが、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−フェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、およびそれらの混合物からなる群から選択される一種類以上を含有する、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
該ディスパーサーが、ノズルおよびジェットディスパーサーからなる群から選択される一種類以上を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
該ディスパーサーが、ノズルおよびジェットディスパーサーからなる群から選択される一種類以上を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
該触媒が、第三級アミン、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される一種類以上の成分を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
該触媒が、第三級アミン、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される一種類以上の成分を含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
該ディスパーサーが、プレディスパーサー、ホモジナイジングノズルおよび少なくとも三つのポンプを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
該ディスパーサーが、プレディスパーサー、ホモジナイジングノズルおよび少なくとも三つのポンプを備える、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
該ディスパーサーが、プレディスパーサー、ホモジナイジングノズルおよび少なくとも三つのポンプを備える、請求項5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−209372(P2009−209372A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−51589(P2009−51589)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】