説明

ポリカーボネートジオール含有組成物およびその製造方法、並びにポリカーボネートジオール含有組成物を用いたポリウレタン

【課題】ポリカーボネートジオール由来のポリウレタンが持つ耐熱性、耐候性および耐水性といった特性や品質を安定化するため、ポリウレタンを製造する際の反応性を安定化したポリカーボネートジオール含有組成物などを提供する。
【解決手段】下記式(A)[−O−R−O−CO−]で表される構造を繰り返し単位とし、かつ下記式(B)HO−R−O−CO−で表される構造を末端に有するポリカーボネートジオールを含有するポリカーボネートジオール含有組成物であって、該ポリカーボネートジオールの水酸基価が10以上400以下であり、且つ下式(C)0.2<=(P)/(Q)<=0.8を満たすポリカーボネートジオール含有組成物。(P)={式(B)中のRが(CHlであるRのモル数}/{式(B)中のRの全モル数}、(Q)={式(A)中のRが(CH)lであるRのモル数}/{式(A)中のRの全モル数}

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なポリカーボネートジオール含有組成物及びその製造方法に関する。また本発明のポリカーボネートジオール含有組成物を原料として製造される物性バランスに優れた弾性繊維、合成または人工皮革、高機能エラストマー、塗料、コーティング剤用途等に有用であるポリカーボネート系ポリウレタンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工業規模で生産されているポリウレタン樹脂の主たるソフトセグメント部の原料は、ポリテトラメチレングリコールに代表されるエーテルタイプ、アジペート系エステルに代表されるポリエステルポリオールタイプ、ポリカプロラクトンに代表されるポリラクトンタイプおよびポリカーボネートジオールに代表されるポリカーボネートタイプに分けられる(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
このうちエーテルタイプは、耐加水分解性、柔軟性および伸縮性には優れるものの、耐熱性および耐光性が劣るとされている。一方、ポリエステルポリオールタイプは、耐熱性および耐候性は改善されるものの、エステル部の耐加水分解性が低く、用途によっては使用することができない。一方、ポリラクトンタイプは、ポリエステルポリオールタイプと比較すると耐加水分解性に優れるグレードとされているが、同様にエステル基があるために加水分解を完全に抑制することはできない。また、これらポリエステルポリオールタイプ、エーテルタイプおよびポリラクトンタイプを混合して使用することも提案されているが、それぞれの欠点を完全に補うことは出来ていない。
【0004】
これらに対して、ポリカーボネートジオールを用いるポリカーボネートタイプは、耐熱性および耐加水分解性において最良な耐久グレードとされており、耐久性フィルムや自動車用人工皮革、(水系)塗料、接着剤として広く利用されている。
しかしながら、現在広く市販されているポリカーボネートジオールは、ジヒドロキシ化合物として、1,6−ヘキサンジオールを用いるポリカーボネートジオールが中心であり、このものを用いて製造したポリウレタンは人工皮革などに使用する場合、ソフトセグメントの凝集性が高く、特に低温における柔軟性、伸びおよび曲げ並びに弾性回復性が悪いという問題があり用途が制限されていた。また、このポリウレタンを原料として製造した人工皮革は、硬い質感があり、天然皮革に比べて“風合い”が悪いということも指摘されている。一方、このポリウレタンを塗料やコーティング剤などに用いる場合、物理的な要因により表面が簡単に傷ついてしまい外観が悪化するという問題も生じていた。
【0005】
そこでこれらの問題を解決するためにいろいろな構造のポリカーボネートジオールが提案されている。
例えば、ジヒドロキシ化合物として、1,6−ヘキサンジオールと別のジオールを混合して共重合ポリカーボネートとする方法があり、具体的には1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールとを共重合する方法(例えば、特許文献1参照)、1,6−ヘキサンジオールと1,5−ペンタンジオールとを共重合する方法(例えば、特許文献2参照)、1,6−ヘキサンジオールと1,4−シクロヘキサンジメタノールとを共重合する方法(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
【0006】
また、ジヒドロキシ化合物として、1,6−ヘキサンジオール以外の他のジオールを組み合わせる方法も提案されており、例えば、1,3−プロパンジオールと1,4−ブタンジオールまたは1、5−ペンタンジオールを組み合わせる方法(例えば、特許文献4参照
)、平均炭素数が6以上となる2種以上の直鎖ジオールの組み合わせる方法(例えば、特許文献5参照)などがある。
【0007】
さらには、ジヒドロキシ化合物由来部位の結晶性を阻害する有力な方法として主鎖に置換基を有するジヒドロキシ化合物を用いる方法が提案されており、例えば、2−メチル−1,3−プロパンジオールと他のアルキレングリコールの組み合わせ(例えば、特許文献6参照)、3−メチル−1,5−ペンタンジオールと他のアルキレンジオールの組み合わせ(例えば、特許文献7参照)などがある。
【0008】
また、イソシアネート基など水酸基と反応する末端構造を持つ分子とポリカーボネートジオールの反応性の安定化もポリウレタンの物性に重要である。
ウレタン製造時の反応性の安定化に関する問題を解決するために提案されているポリカーボネートジオールとしては、1,4−ブタンジオールよりなるユニットと炭素数5〜20の脂肪族ジヒドロキシ化合物よりなるユニットを含有した脂肪族ポリカーボネートジオール(例えば、特許文献8参照)、原料ジヒドロキシ化合物に含まれる2級水酸基を有するジヒドロキシ化合物などの不純物により末端水酸基に対する1級水酸基末端の割合を制御したポリカーボネートジオール(例えば、特許文献9参照)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−51428号公報
【特許文献2】特開平2−289616号公報
【特許文献3】特開2002−69166号公報
【特許文献4】国際公開第2002−070584号パンフレット
【特許文献5】特開2000−95852号公報
【特許文献6】国際公開第2006−88152号パンフレット
【特許文献7】特開昭60−195117号公報
【特許文献8】特開平5−25264号公報
【特許文献9】国際公開第2009−063768号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】"ポリウレタンの基礎と応用"96頁〜106頁 松永勝治 監修、(株)シーエムシー出版、2006年11月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従前公知のいずれの技術によっても、得られるポリカーボネートジオールは、ポリカーボネートジオールそのものの物性のバランス、取り扱い性の良さ、さらにはポリウレタンとした時の物性のバランスを兼ね備えたものではなかったため、その改良が待ち望まれていた。
本発明は、ポリウレタン化反応での反応性を安定化し、またポリウレタンとした際に求められる様々な物性に対応しうる、ポリカーボネートジオールおよび当該ポリカーボネートジオールを用いてなるポリウレタンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。即ち、特定の組成を有するポリカーボネートジオール含有組成物が、上記物性を満足することを見出した。さらに、該ポリカーボネートジオール含有組成物を用いてポリウレタンを製造すると、上記の問題点を解決できることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下である。[1] 下記式(A)で表される繰り返し構造
のポリカーボネートジオールを含有するポリカーボネートジオール含有組成物であって、該ポリカーボネートジオールの水酸基価が10以上400以下であり、且つ下記式(C)を満たすポリカーボネートジオール含有組成物。
【0013】
【化1】

【0014】
(ただし、上記式(B)の構造は上記式(A)で表されるポリカーボネートジオールの末端構造を示す。また、(P)および(Q)は下記式で定義される。
(P)={式(B)中のRが(CHlであるRのモル数}/{式(B)中のRの全モ
ル数}
(Q)={式(A)中のRが(CH)lであるRのモル数}/{式(A)中のRの全モル
数}
ただし、Rはカーボネート基を含まない任意の2価の基であり、異なる複数の基で構成されていてもかまわない。また、lは2以上20以下の整数、mは1以上100以下の整数を表す。前記式(B)の波線は、この先にポリマー鎖が結合していることを示す。)
[2]ポリカーボネートジオールの数平均分子量が300以上10000以下である、[1]に記載のポリカーボネートジオール含有組成物。
[3]ポリカーボネートジオールの全末端基に対する水酸基の割合が95モル%以上である、[1]または[2]に記載のポリカーボネートジオール含有組成物。
[4]前記式(A)で表されるポリカーボネートジオール中に含まれる、Rで示される構造の中で、Rが(CHである構造の割合が10モル%以上90モル%以下である、[1]から[3]のいずれか1つに記載のポリカーボネートジオール含有組成物。
[5]前記(CHのlが3以上6以下である、[1]から[4]のいずれか1つに記載のポリカーボネートジオール含有組成物。
[6]ポリカーボネートジオールが、分岐構造およびヘテロ原子を有する構造から選ばれる少なくとも1つの構造を有するジヒドロキシ化合物に由来し、かつカーボネート基を含む構造単位を有する、[1]から[5]のいずれか1つに記載のポリカーボネートジオール含有組成物。
[7]ポリカーボネートジオールが下記式(D)で表される構造単位を有する、[1]から[6]のいずれか1つに記載のポリカーボネートジオール含有組成物。
【0015】
【化2】

【0016】
(式(D)において、nは0または1、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜15のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基およびアルコキシ基よりなる群から選ばれる基であり、これらの基はヘテロ原子を含有していてもよい。Xは、それぞれ独立にヘテロ原子を含有してもよい炭素数1〜15の2価の基を表す。)
[8]ポリカーボネートジオールが、下記式(E)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来し、かつカーボネート基を含む構造単位を有する、[1]から[6]のいずれか1つに記載のポリカーボネートジオール含有組成物。
【0017】
【化3】

【0018】
(式(E)において、上記式(E)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
[9]式(E)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物が、イソソルビド、イソマンニド、およびイソイディッドから選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物である、[8]に記載のポリカーボネートジオール含有組成物。
[10]炭酸ジエステルが、ジアリールカーボネートである、[1]から[9]のいずれか1つに記載のポリカーボネートジオール含有組成物。
[11]前記触媒が、長周期型周期表における第2族の金属より選ばれた少なくとも1種の金属を含む化合物であり、[1]から[10]のいずれか1つに記載のポリカーボネートジオール含有組成物と、当該金属とを、当該金属がポリカーボネートジオール含有組成物に対し重量比として2ppm以上100ppm以下であるように含有する、ポリカーボネートジオール含有組成物。
[12]ポリカーボネートジオール含有組成物と、当該ポリカーボネートジオール含有組成物の製造に用いた原料ジヒドロキシ化合物とを、当該原料ジヒドロキシ化合物がポリカーボネートジオール含有組成物に対し5重量%以下であるように含有する、[1]から[11]のいずれか1つに記載のポリカーボネートジオール含有組成物。
[13] 下記式(A)で表される繰り返し構造のポリカーボネートジオールを含有するポリカーボネートジオール含有組成物であって、該ポリカーボネートジオールの水酸基価が10以上400以下であり、且つ下記式(C)を満たすポリカーボネートジオール含有組成物を、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを触媒存在下で、反応最高温度が180℃未満の条件下で重縮合反応することにより得る、ポリカーボネートジオール含有組成物の製造方法。
【0019】
【化4】

【0020】
(ただし、上記式(B)の構造は上記式(A)で表されるポリカーボネートジオールの末端構造を示す。また、(P)および(Q)は下記式で定義される。
(P)={式(B)中のRが(CHlであるRのモル数}/{式(B)中のRの全モ
ル数}
(Q)={式(A)中のRが(CH)lであるRのモル数}/{式(A)中のRの全モル
数}
ただし、Rはカーボネート基を含まない任意の2価の基であり、異なる複数の基で構成されていてもかまわない。また、lは2以上20以下の整数、mは1以上100以下の整数を表す。前記式(B)の波線は、この先にポリマー鎖が結合していることを示す。)
[14][1]から[12]のいずれか1つに記載のポリカーボネートジオール含有組成物を用いてなるポリウレタン。
[15][13]に記載のポリカーボネートジオール製造方法により得られるポリカーボネートジオール含有組成物を用いてなるポリウレタン。
【発明の効果】
【0021】
本発明のポリカーボネートジオール含有組成物はポリカーボネートジオール末端を構成するポリオール由来の構造において、特定の構造の比率を制御する事でウレタン化反応での反応性を安定化し、ポリウレタンの製造原料として使用した時の取り扱い性に優れるという特長を有する。
また、本発明のポリカーボネートジオール含有組成物を用いたポリウレタンは、耐熱性、耐候性及び耐水性などの特性を維持したまま、ポリカーボネートジオールの構成成分である、ジヒドロキシ化合物の種類によって、各種要求物性に対応できるという特長を有する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
なお、本明細書において(メタ)アクリレートとはアクリレートとメタクリレートとの総称であり、アクリレート及びメタクリレートの一方又は両方を意味する。(メタ)アクリロイル基についても同様である。
また本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0023】
[1.ポリカーボネートジオール含有組成物]
<1−1.ポリカーボネートジオール含有組成物>
本発明のポリカーボネートジオール含有組成物は、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステ
ルを重合反応させて得られるポリカーボネートジオールを含有する組成物であって、当該ポリカーボネートジオール含有組成物は、下記式(A)で表される繰り返し構造を有するポリカーボネートジオールを含有しており、水酸基価が10以上400以下であり、且つ下記式(C)を満たす
【0024】
【化5】

【0025】
(ただし、上記式(B)の構造は上記式(A)で表されるポリカーボネートジオールの末端構造を示す。また、(P)および(Q)は下記式で定義される。
(P)={式(B)中のRが(CHlであるRのモル数}/{式(B)中のRの全モ
ル数}
(Q)={式(A)中のRが(CH)lであるRのモル数}/{式(A)中のRの全モル
数}
ただし、Rはカーボネート基を含まない任意の2価の基であり、異なる複数の基で構成されていてもかまわない。また、lは2以上20以下の整数、mは1以上100以下の整数を表す。前記式(B)の波線は、この先にポリマー鎖が結合していることを示す。)
前記式(A)で表されるポリカーボネートジオール中に含まれる、Rで示される構造の中で、Rが(CHである構造(以下、「構造(A)」と称す場合がある)では、lは3〜9が好ましく、4〜6がさらに好ましい。また前記式(A)のmは、1〜50が好ましく、2〜20がさらに好ましく、3〜15が特に好ましい。
【0026】
構造(A)は、前記ポリカーボネートジオールにおいて連続していてもよいし、一定の間隔で存在していてもよいし、偏在していてもよい。前記ポリカーボネートジオールにおける前記構造(A)の含有量は、通常モル比で1%〜99%であり、10%〜90%であることが好ましく、20%〜80%であることがより好ましく、25%〜75%であることが更に好ましく、25%〜50%であることが特に好ましい。
【0027】
本発明の前記式(A)で表されるポリカーボネートジオールは、Rが(CHである構造を分子鎖中の少なくとも一部に有しているが、分子鎖中に前記Rが(CHである構造とは異なる、分岐構造およびヘテロ原子を有している構造(以下、「他の構造」と称す場合がある)から選ばれる少なくとも1つの構造を有していていてもよい。前記他の構造の含有量は、本発明の効果に加えて他の構造による効果が得られる範囲であればよく、他の構造に応じて適宜に決めることができる。
【0028】
前記他の構造として、例えば下記式(D)で表される構造(以下、式(D)で表される構造を「構造(D)」と称す場合がある。)を有していてもよい。
【0029】
【化6】

【0030】
(上記式(D)において、nは0または1、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜15のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基およびアルコキシ基よりなる群から選ばれる基であり、前記炭素数の範囲で、ヘテロ原子を含有していてもよい。Xはヘテロ原子を含有してもよい炭素数1〜15の2価の基を表す。)
およびRはそれぞれ独立に異なる基であっても、同じ基であってもよい。これら置換基の炭素数は、本発明の効果がもたらされるために1以上である必要がある。多すぎると重合反応性が低下するなどの問題が生ずるので、通常15以下であり、10以下であることが好ましい。
【0031】
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル
基、オクチル基およびノニル基等が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基およびペンチル基等が好ましい。
上記アルケニル基としては、例えば、エチレン基、プロペニル基、ブテニル基およびペンテニル基等が挙げられ、特にエチレン基およびプロペニル基等が好ましい。
【0032】
上記アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基およびペンチニル基等が挙げられる。中でも、エチニル基およびプロピニル基等が好ましい。
上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基およびn−ブトキシ基が挙げられる。中でもメトキシ基、エトキシ基およびn−プロポキシ基等が好ましい。
【0033】
前記アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基およびアルコキシ基にさらに置換していてもよい置換基としては、例えば、ニトリル基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、メルカプト基およびハロゲン原子等が挙げられる。中でも、ニトロ基およびハロゲン原子等が好ましい。
【0034】
前記ハロゲン原子の具体例としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素の各原子が挙げられる。
Xは、特に本発明の効果を得る上では制限はなく、鎖状基および環状基いずれの構造であってもよい。これらの基を構成する元素としての炭素数は、通常15以下であり、10以下であることが好ましく、酸素原子、硫黄原子および窒素原子などのヘテロ原子を有していてもよい。
【0035】
Xの基の具体例としては、−CH−、-CHCH−、−CHCHCH−、
−CHCH(CH)CH−、−CHCH(CH)CH−、下記式(Y)で表される基等が挙げられる。中でも、−CH−、−CHCH−および下記式(Y)で表される基等がより好ましい。
【0036】
【化7】

【0037】
上記構造(D)以外に、前記他の構造として、例えば下記式(E)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来し、かつカーボネート基を含む構造(以下、「構造(E)」と称す場合がある。)を有していてもよい。
【0038】
【化8】

【0039】
(式(E)において、上記式(E)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
<1−2.ポリカーボネートジオール末端における前記式(B)で表される構造の比率>
本発明のポリカーボネートジオールは、{前記式(B)中のRが(CHlであるR
のモル数}/{前記式(B)中のRの全モル数}で表される比率(P)の、{前記式(A)中のRが(CH)lであるRのモル数}/{前記式(A)中のRの全モル数}で表され
る比率(Q)に対する比(P/Q)が、0.2以上0.8以下である。
【0040】
本発明において、前記式(B)の構造は前記式(A)で表されるポリカーボネートジオールの末端構造を示す。また、前記式(A)および前記式(B)のRは任意の2価の基であり、異なる複数の基で構成されていてもかまわない。またlは2以上20以下の整数を表す。
上記比率(P)、比率(Q)及び比(P/Q)の値の測定法は特にその存在比を求められれば制限はされないが、例えば生成物のH−NMRのシグナルの積分値から容易に求めることができる。
【0041】
上記比(P/Q)の値の上限は、特に制限はないが、実際上製造可能な範囲としては1.00であることが好ましく、0.90であることがより好ましく、0.80であることが更に好ましく、0.70であることが特に好ましく、0.60であることが最も好ましい。下限は、本発明の物性を得るために、0.10であることが好ましく、0.15であることがより好ましく、0.20であることが更に好ましく、0.25であることが特に好ましく、0.30であることが最も好ましい。
上記下限未満の場合には、ウレタン化反応が進み過ぎ、設計したウレタン物性が得られなくなる傾向があり、上記上限超過の場合には、ポリカーボネートジオール末端に水酸基以外の構造が含まれ、ウレタン化反応が目標分子量まで進行しなくなる傾向がある。
【0042】
<1−3.分子量・分子量分布>
本発明のポリカーボネートジオールの数平均分子量の下限は、300であることが好ましく、500であることがより好ましく、700であることが更に好ましく、1000であることが特に好ましい。一方、上限は、10000であることが好ましく、5000であることがより好ましく、3000であることが更に好ましい。ポリカーボネートジオールの数平均分子量の上限を10000とすることにより、粘度を抑えウレタン化の際にハンドリングし易くなる。
【0043】
本発明のポリカーボネートジオールの分子量分布(Mw/Mn)の下限は1.5であることが好ましく、2.0であることがより好ましい。一方、上限は4.0であることが好ましく、3.5であることがより好ましく、3.0であることが特に好ましい。ここで、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量である。分子量分布は、通常知られる方法により測定すればよいが、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定で求めることができる。
【0044】
Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定が困難な場合には、例えば、ポリオールのOH価による算出も可能である。また、H−NMRにて測定することも可能である。より具体的にはポリカーボネートジオール含有組成物をCDCl(重クロロホルム)に溶解して400MHzにてH−NMRを測定、その積分値より算出することができる。
【0045】
・GPCによる数平均分子量の測定
GPC(東ソー社製「HLC−8120GPC」)を用いて、溶媒としてテトラヒドロフラン、標準サンプルとしてポリスチレン、カラムとしてTSK gel superH1000+H2000+H3000を使用して、送液速度0.5cm/分、カラムオーブン温度40℃にて、数平均分子量を測定する。
【0046】
・OH価によるポリオールの数平均分子量の算出
JIS K1557−1(2007)に記載のアセチル化法により算出する。
分子量分布が上記上限超過の場合には、このポリカーボネートジオールを用いて製造したポリウレタンの物性が、低温で硬くなる、伸びが悪くなる等、悪化する傾向があり、分子量分布が上記下限未満のポリカーボネートジオールを製造しようとすると、オリゴマーを除くなどの高度な精製操作が必要になる場合がある。
【0047】
<1−4.分子鎖の末端がアルキルオキシ基またはアリールオキシ基である数の割合>
本発明のポリカーボネートジオールの末端構造は、通常水酸基である。しかしながら、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの反応で得られるポリカーボネートジオール中には、不純物として一部ポリカーボネートジオール末端が水酸基ではない構造のものが存在する場合がある。その構造の具体例としては、分子鎖末端がアルキルオキシ基またはアリールオキシ基のものであり、多くは炭酸ジエステル由来の構造である。
【0048】
例えば、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを使用した場合はアリールオキシ基としてフェノキシ基(PhO−)、ジメチルカーボネートを使用した場合はアルキルオキシ基としてメトキシ基(MeO−)、ジエチルカーボネートを使用した場合はエトキシ基(EtO−)、エチレンカーボネートを使用した場合はヒドロキシエトキシ基(HOCHCHO−)が末端基として残存する場合がある(ここで、Phはフェニル基を表し、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。)。
【0049】
本発明において、ポリカーボネートジオール中に含まれる分子鎖末端がアルキルオキシ基ないしアリールオキシ基となっている構造の割合は、通常、その末端基の数として全末端数の5モル%以下であり、3モル%以下であることが好ましく、1モル%以下であることがより好ましい。この分子鎖の末端がアルキルオキシ基またはアリールオキシ基である数の割合の下限は特に制限はなく、通常0.01モル%であり、0.001モル%であることが好ましく、0モル%であることが最も好ましい。アルキルオキシないしアリールオキシ末端基の割合が大きいとポリウレタン化反応を行なう際に重合度が上がらない等の問題が生じる場合がある。この割合は、例えばポリカーボネートジオールのH−NMRのシグナルの積分値から容易に求めることができる。
【0050】
<1−5.水酸基価>
本発明のポリカーボネートジオールは、上述のように分子鎖の末端がアルキルオキシ基またはアリールオキシ基である数の割合が通常5モル%以下で、分子鎖の両末端基は基本的には水酸基であり、ポリウレタン化反応の際はこの水酸基がイソシアネートと反応できる構造となっている。
【0051】
本発明のポリカーボネートジオール含有組成物の水酸基価は、特に限定されないが下限は通常10mg−KOH/gであり、20mg−KOH/gであることが好ましく、35mg−KOH/gであることがより好ましい。また、上限は通常380mg−KOH/gであり、230mg−KOH/gであることが好ましく、160mg−KOH/gであることがより好ましく、120mg−KOH/gであることが特に好ましい。水酸基価が上記下限未満では、粘度が高くなりすぎポリウレタン化の際のハンドリングが困難となる場合があり、上記上限超過ではポリウレタンとした時に強度や硬度が不足する場合がある。
【0052】
水酸基価は、通常知られる方法により測定すればよいが、より具体的には例えば JIS K1557−1(2007)に記載のアセチル化法により測定、算出することができる。
【0053】
<1−6.エーテル構造>
本発明のポリカーボネートジオールは、カーボネート基によりジヒドロキシ化合物が重合した構造が基本となっている。しかしながら、製造方法によっては、一部原料として用いたエーテルジオール以外のエーテル構造となったものが混入する場合があり、その存在量が多くなると耐候性や耐熱性が低下することがあるので、原料以外のエーテル構造の割合が過度に多くならないように製造することが望ましい。
【0054】
ポリカーボネートジオール中の原料以外のエーテル構造を低減して、耐候性、耐熱性等の特性を確保する点において、本発明のポリカーボネートジオールの分子鎖中に含まれる原料以外のエーテル結合とカーボネート結合の比は、特に限定されないが、通常モル比で2/98以下であり、1/99以下であることが好ましく、0.5/99.5以下であることがより好ましい。
【0055】
<1−7.不純物含有量>
<1−7−1.フェノール類>
本発明のポリカーボネートジオール含有組成物中に含まれるフェノール類の含有量は、特に限定されないが、少ないほうが好ましく、0.1重量%以下であることが好ましく、0.01重量%以下であることがより好ましく、0.001重量%以下であることが特に好ましい。フェノール類は一官能性化合物なので、ポリウレタン化の際の重合阻害因子となる可能性がある上、刺激性物質であるためである。
【0056】
<1−7−2.炭酸ジエステル>
本発明のポリカーボネートジオール含有組成物中には、製造時の原料として使用した炭酸ジエステルが残存することがある。本発明のポリカーボネートジオール含有組成物中の炭酸ジエステルの残存量は限定されるものではないが、少ないほうが好ましく、通常5重量%以下であり、3重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましい。ポリカーボネートジオールの炭酸ジエステル含有量が多すぎるとポリウレタン化の際の反応を阻害する場合がある。一方、その下限は特に制限はなく通常0.1重量%であり、0.01重量%であることが好ましく、0重量%であることが最も好ましい。
【0057】
<1−7−3.ジヒドロキシ化合物>
本発明のポリカーボネートジオール含有組成物には、製造時に使用した原料のジヒドロキシ化合物が残存する場合がある。本発明のポリカーボネートジオール含有組成物中の原料ジヒドロキシ化合物の残存量は、限定されるものではないが、少ないほうが好ましく、通常10重量%以下であり、5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましく、0.1重量%以下であることが特に好ましく、0.01重量%以下であることが最も好ましい。ポリカーボネートジオール含有組成物中の原料ジヒドロキシ化合物の残存量が多いと、ポリウレタンとした際のソフトセグメント部位の分子長が不足する場合がある。
【0058】
<1−7−4.環状カーボネート>
ポリカーボネートジオール含有組成物中には、製造の際に副生した環状のカーボネートが含まれることがある。例えば原料に1,3−プロパンジオールを用いた場合、1,3−ジオキサン−2−オンもしくはさらにこれらが2分子ないしそれ以上で環状カーボネートとなったもの等が環状化合物として生成してポリカーボネートジオール含有組成物中に含まれる場合がある。これらの化合物は、ポリウレタン化反応においては副反応をもたらす可能性のある不純物であるので製造の段階でなるべく除去しておくのが望ましい。
【0059】
本発明のポリカーボネートジオール含有組成物中に含まれるこれら不純物環状カーボネートの含有量は、限定されるものではないが、通常5重量%以下であり、3重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましく、0.5重量%以下であることが特に好ましく、0.1重量%以下であることが最も好ましい。
【0060】
<1−7−5.エステル交換触媒>
本発明のポリカーボネートジオールを製造する場合には、後述するように、重合を促進するために必要に応じてエステル交換触媒を用いることが可能である。その場合、得られたポリカーボネートジオール含有組成物中にその触媒が残存することがあるが、過度に多くの触媒が残存するとポリウレタン化反応の際に反応の制御が困難となり、ポリウレタン化反応を想定以上に促進してゲル化してしまう場合があり、残存しない方が好ましい。
【0061】
ポリカーボネートジオール含有組成物中に残存する触媒量の上限は、特に限定されないが、このポリカーボネートジオール含有組成物から均質なポリウレタンを得る観点から、触媒金属換算の含有量として通常100重量ppmであり、50重量ppmであることが好ましく、30重量ppmであることがより好ましく、10重量ppmであることが特に好ましい。残存する金属の種類としては、後述のエステル交換能を有する触媒活性成分の金属が挙げられる。
【0062】
また、ポリカーボネートジオール含有組成物中に残存する触媒量の下限は、特に限定されないが、触媒金属換算の含有量として通常0.01重量ppmであり、0.1重量ppmであることが好ましく、1重量ppmであることがより好ましく、5重量ppmであることが特に好ましい。
通常、ポリカーボネートジオールを製造する際に使用した触媒を、製造後に除去することは難しく、残存する触媒量を後述する使用量の下限値未満にすることは困難な場合が多い。
【0063】
ポリカーボネートジオール含有組成物中における前記触媒の量は製造時に用いる触媒の使用量、または生成物の濾過等による触媒単離や水などの溶媒を用いた触媒抽出などによって調整することができる。
【0064】
<1−8.粘度>
本発明のポリカーボネートジオール含有組成物の性状は、例えば粘度で表すことができ
、60℃における粘度の下限は0.1Pa・sであることが好ましく、1Pa・sであることがより好ましく、5Pa・sであることがさらに好ましい。また、上限は500Pa・sであることが好ましく、300Pa・sであることがより好ましく、150Pa・sであることがさらに好ましく、120Pa・sであることが特に好ましく、100Pa・sであることが最も好ましい。ポリカーボネートジオール含有組成物の粘度を当該範囲内とすることにより、ハンドリングがし易くなる。
【0065】
<1−9.APHA値>
本発明のポリカーボネートジオール含有組成物の色は、ハーゼン色数(JIS −K0
071−1:1998に準拠)で表した場合の値(以下「APHA値」と表記する。)で50以下であることが必要で、30以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。APHA値が50を越えると、ポリカーボネートジオール含有組成物を原料として得られるポリウレタンの色調が悪化し、商品価値を低下させる原因となる。
【0066】
[2.反応試剤]
<2−1.ジヒドロキシ化合物>
ポリカーボネートジオールとした時に構造(A)を与える原料となるジヒドロキシ化合物の具体的な例を以下に示す。
構造(A)を与える具体的なジヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールおよび1,20−エイコサンジオール等の直鎖状のジヒドロキシ化合物を挙げることができる。これらのジヒドロキシ化合物は単独で用いても、または複数組み合わせて用いてもよい。
ポリカーボネートジオールとした時に構造(D)を与える原料ジヒドロキシ化合物の具体的な例を以下に示す。
【0067】
構造(D)を与える具体的なジヒドロキシ化合物の例としては、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(以下ネオペンチルグリコール、NPGと略記することがある)、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールおよび2−ペンチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオールなどの2,2−ジアルキル置換−1,3−プロパンジオール類(以下、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール類と記載することがある。ただし、アルキル基は炭素数15以下のアルキル基である)、2,2,4,4−テトラメチル−1,5−ペンタンジオールおよび2,2,9,9−テトラメチル−1,10−デカンジオールなどのテトラアルキル置換アルキレンジオール類、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等の環状基を含む環状ジオール類、2,2−ジフェニル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジビニル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチニル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメトキシ−1,3−プロパンジオール、ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)エーテル、ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)チオエーテル並びに2,2,4,4−テトラメチル−3−シアノ−1,5−ペンタンジオールなどが挙げられる。
【0068】
これらの中でも、上記構造(D)で記載の構造のうち、nが0、RおよびRが炭素数1〜5のアルキル基であるものが好ましい。当該構造を与える具体的なジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールおよび2−ペンチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオールなどの2,2−ジアルキル置換−1,3−プロパンジオール類が挙げられる。
【0069】
上記構造(D)を与える原料となるジヒドロキシ化合物の具体例としては、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオールが好ましく、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールがより好ましい。
ポリカーボネートジオールとした時に構造(E)を与える原料となるジヒドロキシ化合物の具体的な例を以下に示す。
【0070】
構造(E)を与える具体的な原料化合物の例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物、下記式(Z)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコール等の環状エーテル構造を有する化合物が挙げられるが、中でも、下記式(Z)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコールを有する化合物が好ましい。
【0071】
【化9】

【0072】
上記式(Z)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのジヒドロキシ化合物のうち、芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物を用いることがポリウレタンの耐光性の観点から好ましく、中でも植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、耐光性、光学特性、成形性、耐熱性、親水性、カーボンニュートラルの面から最も好ましい。
【0073】
前記構造(E)を与える前述のジヒドロキシ化合物(以下「構造(E)用ジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)は、不安定な場合があり、保存や使用する際には注意を要する。例えば、イソソルビドは酸素が存在すると徐々に酸化されるので、保管や製造時の取り扱いの際には、酸素による分解を防ぐため、脱酸素剤を用いたり、窒素雰囲気下にしたりすることが肝要である。また、水分が混入しないようにすることも必要である。イソソルビドが酸化されると、ギ酸をはじめとする分解物が発生する。例えば、これら分解物を含むイソソルビドを用いてポリカーボネートジオールを製造すると、得られるポリカー
ボネートジオールに着色が発生したり、物性が著しく劣化する場合がある。また重合反応に影響を与え、目的の分子量の重合体が得られない場合がある。
【0074】
これらの対策としては公知の文献に記載の方法を任意に採用することができる。例えば、特開2009−161745号公報には、ポリカーボネートを製造する際に使用するイソソルビド等の原料ジヒドロキシ化合物中に含まれる好ましいギ酸の量が規定されており、規定量以下のジヒドロキシ化合物を用いると物性の良いポリカーボネートが得られるとしている。
【0075】
本発明のポリカーボネートジオールを製造する場合にも同様の事が言え、使用する構造(E)用ジヒドロキシ化合物中に含まれるギ酸の量は、上限は、特に限定はされないが、通常20ppmであり、10ppmであることが好ましく、5ppmであることがさらに好ましい。また、下限は、特に限定はされないが、通常は0.1ppmであり、1ppmであることが好ましい。
【0076】
また、これら構造(E)用ジヒドロキシ化合物は酸化的に劣化するとギ酸等の酸性物質を生成することからpHが下がる傾向がある。従って使用可能な構造(E)用ジヒドロキシ化合物の評価にpHを指標とすることもできる。pHは例えば、国際公開第09/057609号パンフレットに記載の方法、すなわち原料とするジヒドロキシ化合物の40%水溶液としてpHメーターで測定する方法が採用できる。
【0077】
本発明の第1の態様に係るポリカーボネートジオールを製造するために必要な構造(E)用ジオールの40%水溶液のpHの下限は、特に限定はされないが、通常3であり、pH4であることが好ましく、pH5であることがより好ましい。また、上限は、特に限定はされないが、通常pH11であり、pH10であることが好ましい。
構造(E)用ジヒドロキシ化合物が酸化劣化すると、過酸化物を生じる。この過酸化物は、本発明のポリカーボネートジオールを製造する際や、ウレタン化反応の際の着色の原因になることがあるので、より少ない方が好ましい。構造(E)用ジヒドロキシ化合物中の過酸化物の量は、通常は構造(E)用ジヒドロキシ化合物重量に対して10ppm以下であり、5ppm以下であることが好ましく、3ppm以下であることがより好ましく、1ppm以下であることがさらに好ましい。下限は、特に限定されないが、通常0.01ppm以上である。
【0078】
構造(E)用ジヒドロキシ化合物中に長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005)における(以下、これを単に周期表と略する場合がある)1族金属及び/又は周期表2族金属化合物を含有していると、ポリカーボネート化反応の際、さらには得られたポリカーボネートジオールをポリウレタン化する際の反応速度に影響を与えてしまう場合がある。そのため、構造(E)用ジヒドロキシ化合物中に周期表1族金属及び/又は周期表2族金属化合物の含有量は、特に限定はされないが、少ないほうが好ましく、通常、上限は、構造(E)用ジヒドロキシ化合物重量に対しての金属の重量割合として10ppmであり、5ppmであることが好ましく、3ppmであることがより好ましく、1ppmであることがさらに好ましく、周期表1族金属及び/又は周期表2族金属化合物を全く含まないものが最も好ましい。
【0079】
構造(E)用ジヒドロキシ化合物中に塩化物イオンや臭化物イオン等のハロゲン成分が含有されると、ポリカーボネート化反応の際、さらには得られたポリカーボネートジオールをポリウレタン化する際の反応に影響を与えたり、着色の原因となる場合があるため、その含有量は少ないほうが好ましい。通常、構造(E)用ジヒドロキシ化合物中のハロゲン成分の含有量の上限は、構造(E)用ジヒドロキシ化合物の重量に対してハロゲン量と
して10ppmであり、5ppmであることが好ましく、1ppmであることがより好ましい。
【0080】
酸化等により劣化したり、あるいは上記不純物を含む構造(E)用ジヒドロキシ化合物は、例えば、蒸留等により精製することができるため、重合に使用する前に蒸留して上記した範囲となったものを使用することが可能である。蒸留後再び酸化劣化するのを防ぐためには安定剤を添加することも有効である。具体的な安定剤としては通常一般に有機化合物の酸化防止剤として使用されているものであれば制限なく使用することが可能であり、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート(住友化学製、商品名:Smilizer(登録商標)GS)等のフェノール系安定化剤、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(住友化学製、商品名Smilizer(登録商標)GP)、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系安定化剤が例として挙げられる。
【0081】
<2−2.炭酸ジエステル>
使用可能な炭酸ジエステルとしては、本発明の効果を失わない限り限定されないが、アルキルカーボネート、アリールカーボネート、またはアルキレンカーボネートが挙げられる。このうちアリールカーボネートを使用すると速やかに反応が進行するという利点がある。
【0082】
本発明のポリカーボネートジオールの製造に用いることができる炭酸ジエステルのジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、アルキレンカーボネートの具体例は以下の通りである。
ジアルキルカーボネートの例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、エチルイソブチルカーボネート等が挙げられ、好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートである。
【0083】
ジアリールカーボネートの例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジm−クレジルカーボネート等が挙げられ、好ましくはジフェニルカーボネートである。
さらにアルキレンカーボネートの例としては、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、1,3−ペンチレンカーボネート、1,4−ペンチレンカーボネート、1,5−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネート、2,4−ペンチレンカーボネート、ネオペンチルカーボネート等が挙げられ、好ましくはエチレンカーボネートである。
【0084】
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でもジアリールカーボネートが反応性に富み、工業的に製造する上で効率的であることから好ましく、中でも工業原料として容易にかつ安価に入手可能なジフェニルカーボネートがより好ましい。
【0085】
<2−3.エステル交換触媒>
エステル交換触媒として利用できる金属は、一般にエステル交換能があるとされている金属であれば制限なく用いることができる。
触媒金属の例を挙げると、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の周期表1族金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2族金属;チタン、ジルコニウムなどの周期表4族金属;ハフニウムなどの周期表5族金属;コバルトなどの周期表9族金属;亜鉛などの周期表12族金属;アルミニウムなどの周期表13族金属;ゲルマニウム、スズ、鉛などの周期表14族金属;アンチモン、ビスマスなどの周期表15族金属;ランタン、セリウム、ユーロピウム、イッテルビウム等ランタナイド系金属等が挙げられる。これらのうち、エステル交換反応速度を高めるという観点から、周期表1族金属、周期表2族金属、周期表4族金属、周期表5族金属、周期表9族金属、周期表12金属、周期表13族金属、周期表14族金属が好ましく、周期表1族金属、周期表2族金属がより好ましく、周期表2族金属がさらに好ましい。周期表1族金属の中でも、リチウム、カリウム、ナトリウムが好ましく、リチウム、ナトリウムがより好ましく、ナトリウムがさらに好ましい。周期表2族金属の中でも、マグネシウム、カルシウム、バリウムが好ましく、カルシウム、マグネシウムがより好ましく、マグネシウムがさらに好ましい。これらの金属は金属の単体として使用される場合と、水酸化物や塩等の金属化合物として使用される場合がある。塩として使用される場合の塩の例としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物塩;酢酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩等のカルボン酸塩;メタンスルホン酸やトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸塩;燐酸塩や燐酸水素塩、燐酸二水素塩等の燐含有の塩;アセチルアセトナート塩;等が挙げられる。触媒金属は、さらにメトキシドやエトキシドの様なアルコキシドとして用いることもできる。
【0086】
これらのうち、好ましくは、周期表1族金属、周期表2族金属、周期表4族金属、周期表5族金属、周期表9族金属、周期表12金属、周期表13族金属、周期表14族金属の酢酸塩や硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、ハロゲン化物、アルコキシドが用いられ、より好ましくは周期表1族金属又は周期表2族金属の酢酸塩や炭酸塩、水酸化物が用いられ、さらに好ましくは周期表2族金属の酢酸塩が用いられる。
これらの金属、及び金属化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
エステル交換触媒の周期表1族金属を用いた化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二リチウム、フェニルリン酸二ナトリウム;ビスフェノールAの二ナトリウム塩、二カリウム塩、二セシウム塩、二リチウム塩;フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩;等が挙げられる。
【0088】
周期表2族金属を用いた化合物の例としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0089】
周期表4族金属、周期表12族金属、周期表14族金属を用いた化合物の例としては、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート等のチタンアルコキシド;四塩化チタン等のチタンのハロゲン化物;酢酸亜鉛、安息香
酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛の塩;塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド等のスズ化合物;ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド等のジルコニウム化合物;酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)、塩化鉛(IV)等の鉛化合物等が挙げられる。
【0090】
[3.製造方法]
本発明のポリカーボネートジオールは、前述の構造(A)を与える原料であるジヒドロキシ化合物と、必要に応じて用いられる前述の構造(D)および/または構造(E)を与える原料であるジヒドロキシ化合物等のジヒドロキシ化合物と、前述の炭酸ジエステルとを、必要に応じてエステル交換触媒を用いてエステル交換させることにより製造することができる。以下にその製造方法について述べる。
【0091】
<3−1.原料等の使用割合>
本発明のポリカーボネートジオールの製造において、炭酸ジエステルの使用量は、特に限定されないが、通常ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対するモル比で下限は0.50であることが好ましく、0.60であることがより好ましく、0.70であることがさらに好ましく、0.80であることがよりさらに好ましく、0.90であることが特に好ましく、0.95であることが最も好ましい。上限は通常1.20であり、1.15であることが好ましく、1.10であることがより好ましく、1.00であることがさらに好ましく、0.98であることが最も好ましい。炭酸ジエステルの使用量が上記上限超過では得られるポリカーボネートジオールの末端基が水酸基でないものの割合が増加する、または、分子量が所定の範囲とならず本発明のポリカーボネートジオールを製造できない場合があり、前記下限未満では所定の分子量まで重合が進行しない場合がある。
【0092】
本発明のポリカーボネートジオールの製造において、構造(A)を与える原料であるジヒドロキシ化合物の使用量と、構造(D)および/または構造(E)を与える原料であるジヒドロキシ化合物の使用量の割合通常、モル比で99/1〜1/99であり、90/10〜10/90であることが好ましく、80/20〜20/80であることがより好ましく、70/30〜30/70であることがさらに好ましい。
【0093】
本発明のポリカーボネートジオールを製造するにあたって、エステル交換触媒を用いる場合、その使用量は、得られるポリカーボネートジオール含有組成物中に残存しても性能に影響の生じない量であることが好ましく、原料であるジヒドロキシ化合物の重量に対する金属換算の重量比として、上限が、200重量ppmであることが好ましく、100重量ppmであることがより好ましく、50重量ppmであることがさらに好ましい。一方、下限は十分な重合活性が得られる量であって、0.01重量ppmであることが好ましく、0.1重量ppmであることがより好ましく、1重量ppmであることがさらに好ましい。
【0094】
<3−2.反応条件等>
反応原料の仕込み方法は、特に制限はなく、ジヒドロキシ化合物と炭酸エステルと触媒の全量を同時に仕込み反応に供する方法や、炭酸エステルが固体の場合まず炭酸エステルを仕込んで加温、溶融させておき後からジヒドロキシ化合物と触媒を添加する方法、逆にジヒドロキシ化合物を先に仕込んでおいて溶融させ、ここへ炭酸エステルと触媒を投入する方法、ジヒドロキシ化合物の一部と炭酸エステル類又はクロロ炭酸エステル類を反応させてジヒドロキシ化合物のジエステル炭酸塩誘導体を合成した後に残りのジヒドロキシ化合物と反応させる方法、等自由にその方法は選択できる。本発明のポリカーボネートジオールにおいて分子鎖の末端がアルキルオキシ基又はアリールオキシ基である数の割合を5%と以下とするために、使用するジヒドロキシ化合物の一部を反応の最後に添加する方法
を採用することも可能である。その際に最後に添加するジヒドロキシ化合物の量の上限は、仕込むべきジヒドロキシ化合物量の通常は20%であり、15%であることが好ましく、10%であることがより好ましく、下限は通常0.1%であり、0.5%であることが好ましく、1.0%であることがより好ましい。
【0095】
エステル交換反応の際の反応温度は、実用的な反応速度が得られる温度であれば任意に採用することができる。その温度は特に限定されないが、通常70℃以上であり、100℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましい。また、通常は250℃以下であり、230℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、180℃未満であることがよりさらに好ましく、170℃以下であることが特に好ましく、165℃以下であることが最も好ましい。
【0096】
前記上限超過では得られるポリカーボネートジオールが着色したり、エーテル構造が生成したり、前記(P/Q)比が小さくなりすぎたりするため、ポリカーボネートジオールを原料としてポリウレタンを製造する際の反応速度が速くなり、ゲルが発生するなどの品質上の問題が生じる場合がある。
反応は常圧で行なうこともできるが、エステル交換反応は平衡反応であり、生成する軽沸成分を系外に留去することで反応を生成系に偏らせることができる。従って、通常、反応後半には減圧条件を採用して軽沸成分を留去しながら反応することが好ましい。あるいは反応の途中から徐々に圧力を下げて生成する軽沸成分を留去しながら反応させていくことも可能である。
【0097】
特に反応の終期において減圧度を高めて反応を行うと、副生したモノアルコール、フェノール類、さらには環状カーボネート等を留去することができるので好ましい。
この際の反応終了時の反応圧力は、特に限定はされないが、通常上限が10kPaであり、5kPaであることが好ましく、1kPaであることがより好ましい。これら軽沸成分の留出を効果的に行うために、反応系へ窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを少量通じながら該反応を行うこともできる。
【0098】
エステル交換反応の際に低沸の炭酸エステルやジヒドロキシ化合物を使用する場合は、反応初期は炭酸エステルやジヒドロキシ化合物の沸点近辺で反応を行い、反応が進行するにつれて、徐々に温度を上げて、更に反応を進行させる、という方法も採用可能である。この場合、反応初期に未反応の炭酸エステルの留去を防ぐことができるので好ましい。さらにこれら反応初期における原料の留去を防ぐ意味で反応器に還流管をつけて、炭酸エステルとジヒドロキシ化合物を還流させながら反応を行うことも可能である。この場合、仕込んだ原料が失われず試剤の量比を正確に合わせることができるので好ましい。
【0099】
<3−3.反応時間>
重合反応は、生成するポリカーボネートジオールの分子量を測定しながら行い、目的の分子量となったところで終了する。重合に必要な反応時間は、使用するジヒドロキシ化合物、炭酸エステル、触媒の使用の有無、種類により大きく異なるので一概に規定することはできないが、通常所定の分子量に達するのに必要な反応時間は50時間以下であり、20時間以下であることが好ましく、10時間以下であることがより好ましい。
【0100】
<3−4.触媒失活剤など>
前述の如く、重合反応の際に触媒を用いた場合、通常得られたポリカーボネートジオール含有組成物には触媒が残存し、金属触媒の残存で、ポリウレタン化反応を行う際に反応の制御ができなくなる場合がある。この残存触媒の影響を抑制するために、使用されたエステル交換触媒とほぼ等モルの例えばリン系化合物を添加してもよい。さらには添加後、後述のように加熱処理すると、エステル交換触媒を効率的に不活性化することができる。
【0101】
エステル交換触媒の不活性化に使用されるリン系化合物としては、例えば、リン酸、亜リン酸等の無機リン酸や、リン酸ジブチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、亜リン酸トリフェニル等の有機リン酸エステル等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0102】
前記リン系化合物の使用量は、特に限定はされないが、前述したように、使用されたエステル交換触媒とほぼ等モルであればよく、具体的には、使用されたエステル交換触媒1モルに対して上限が好ましくは5モル、より好ましくは2モルであり、下限が好ましくは0.8モル、より好ましくは1.0モルである。これより少ない量のリン系化合物を使用した場合は、前記反応生成物中のエステル交換触媒の失活が十分でなく、得られたポリカーボネートジオール含有組成物を例えばポリウレタン製造用原料として使用する時、該ポリカーボネートジオール含有組成物のイソシアネート基に対する反応性を十分に低下させることができない場合がある。また、この範囲を超えるリン系化合物を使用すると得られたポリカーボネートジオール含有組成物が着色してしまう可能性がある。
【0103】
リン系化合物を添加することによるエステル交換触媒の不活性化は、室温でも行うことができるが、加温処理するとより効率的である。この加熱処理の温度は、特に限定はされないが、上限が好ましくは150℃、より好ましくは120℃、さらに好ましくは100℃であり、下限は、好ましくは50℃、より好ましくは60℃、さらに好ましくは70℃である。これより低い温度の場合は、エステル交換触媒の失活に時間がかかり効率的でなく、また失活の程度も不十分な場合がある。一方、上限を超える温度では、得られたポリカーボネートジオール含有組成物が着色することがある。
リン系化合物と反応させる時間は特に限定するものではないが、通常1〜5時間である。
【0104】
<3−5.重合反応器>
重合反応(重縮合反応)は、バッチ式でも連続式でも行うことができるが、製品の分子量等の品質の安定性からは連続式が優れている。使用する装置は、槽型、管型および塔型のいずれの形式であってもよく、各種の攪拌翼を具備した公知の重合槽等を使用することができる。装置昇温中の雰囲気は特に制限はないが、製品の品質の観点から、窒素ガス等の不活性ガス中、常圧または減圧下で行われるのが好ましい。
【0105】
<3−6.精製>
重合反応後は、前記のポリカーボネートジオール含有組成物中の末端構造がアルキルオキシ基である不純物、アリールオキシ基である不純物、フェノール類、原料であるジヒドロキシ化合物や炭酸ジエステル、副生する軽沸の環状カーボネート、さらには添加した触媒などを除去する目的で精製を行うことができる。その際の精製は軽沸化合物については、蒸留で留去する方法が採用できる。蒸留の具体的な方法としては減圧蒸留、水蒸気蒸留、薄膜蒸留など特にその形態に制限はないが、中でも薄膜蒸留が効果的である。また、水溶性の不純物を除くために水、アルカリ性水、酸性水、キレート剤溶解溶液などで洗浄してもよい。その場合、水に溶解させる化合物は任意に選択できる。
【0106】
薄膜蒸留条件としては特に制限はないが、薄膜蒸留時の温度は、上限が250℃であることが好ましく、200℃であることが好ましい。また、下限が120℃であることが好ましく、150℃であることがより好ましい。
薄膜蒸留時の温度の下限を前記の値とすることにより、軽沸成分の除去効果が十分となる。また、上限を250℃とすることにより、薄膜蒸留後に得られるポリカーボネートジオール含有組成物が着色するのを防ぐことができる。
【0107】
薄膜蒸留時の圧力は、上限が500Paであることが好ましく、150Paであることがより好ましく、50Paであることが更に好ましい。薄膜蒸留時の圧力を前記上限値以下とすることにより、軽沸成分の除去効果が十分に得られる。
また、薄膜蒸留直前のポリカーボネートジオール含有組成物の保温の温度は、上限が250℃であることが好ましく、150℃であることがより好ましい。また、下限が80℃であることが好ましく、120℃であることがより好ましい。
【0108】
薄膜蒸留直前のポリカーボネートジオール含有組成物の保温の温度を前記下限以上とすることにより、薄膜蒸留直前のポリカーボネートジオール含有組成物の流動性が低下するのを防ぐことができる。一方、上限以下とすることにより、薄膜蒸留後に得られるポリカーボネートジオール含有組成物が着色するのを防ぐことができる。
【0109】
<4.ウレタン化反応速度>
本発明のポリカーボネートジオール含有組成物のウレタン化反応における反応速度は、前記ポリカーボネートジオール含有組成物をN,N−ジメチルホルムアミドの溶液とし、ポリカーボネートジオールのモル等量に対して0.98倍のジフェニルメタンジイソシアネートを添加して、動力源としてモーターを用いて所定時間100rpmで攪拌した後の前記モーターの負荷値[V]として評価することができる。ジフェニルメタンジイソシアネート添加後30分後のモーター負荷値の下限は通常0.10V、好ましくは0.13V、より好ましくは0.20V、上限は通常2.00V、好ましくは1.95V、より好ましくは1.90Vである。また、ジフェニルメタンジイソシアネート添加後60分後のモーター負荷値の下限は通常0.10V、好ましくは0.13V、より好ましくは0.20V、上限は通常2.00V、好ましくは1.95V、より好ましくは1.90Vである。
【0110】
上記下限未満の場合には、もはや重合が進行しない傾向があり、上記上限超過の場合には、非常に高い分子量となってしまうかゲル化してしまう傾向がある。
また、同様に、モーター負荷値が0.7Vとなるまでの時間[分]の下限は通常8分、好ましくは10分、より好ましくは15分、上限は通常240分、好ましくは200分、より好ましくは120分である。また、モーター負荷値が1.0Vとなるまでの時間[分]の下限は通常2分、好ましくは5分、より好ましくは10分、上限は通常120分、好ましくは90分、より好ましくは60分である。
【0111】
上記下限未満の場合には、非常に高い分子量となってしまうかゲル化してしまう傾向があり、上記上限超過の場合には、もはや重合が進行しない傾向がある。
なお、モーター負荷値[V]の測定は、ポリカーボネートジオール含有組成物のN,N−ジメチルホルムアミド溶液を100rpmで攪拌した際のモーター負荷値と、ジフェニルメタンジイソシアネート添加後所定時間100rpmで攪拌した後のモーター負荷値との差分から求めることができる。なお、モーターとしては10から600rpm程度の回転範囲を持ち、最大回転数600rpm程度での最大トルクが0.49N・m程度となり、そのモーター負荷値を0から5V程度で出力できるものを用い、反応容器としては容量500mlのセパラブルフラスコを用い、攪拌羽根としてイカリ型を2枚組み合わせた4枚羽根を用いて、窒素流通または窒素封入の条件で測定を行えば良い。
【0112】
[5.ポリウレタン]
上述の本発明のポリカーボネートジオールはポリウレタンの原料として用いられる。
本発明のポリカーボネートジオールを用いてポリウレタンを製造する方法は、通常ポリウレタンを製造する公知のポリウレタン化反応条件が用いられる。本発明のポリカーボネートジオールを用いて製造したポリウレタンには、熱安定剤、光安定剤、着色剤、充填剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘着防止剤、難燃剤、老化防止剤、無機フィラー等の各種の添加剤を、本発明のポリウレタンの特性を損なわない範囲で、添加、混合する
ことができる。
【0113】
本発明のポリウレタンおよびそのウレタンプレポリマー溶液は、多様な特性を発現させることができ、フォーム、エラストマー、塗料、繊維、接着剤、床材、シーラント、医療用材料、人工皮革、コーティング剤および水系ポリウレタン塗料等に広く用いることができる。
【0114】
<5−1.注型ポリウレタンエラストマー>
本発明のポリウレタンおよびそのウレタンプレポリマー溶液は、注型ポリウレタンエラストマーに使用できる。例えば、圧延ロール、製紙ロール、事務機器およびプレテンションロール等のロール類、フォークリフト、自動車車両ニュートラム、台車および運搬車等のソリッドタイヤ並びにキャスター等が挙げられる。また、工業製品として、コンベアベルトアイドラー、ガイドロール、プーリー、鋼管ライニング、鉱石用ラバースクリーン、ギア類、コネクションリング、ライナー、ポンプのインペラー、サイクロンコーンおよびサイクロンライナー等が挙げられる。さらにまた、OA機器のベルト、紙送りロール、複写用クリーニングブレード、スノープラウ、歯付ベルトおよびサーフローラー等にも使用できる。
【0115】
<5−2.熱可塑性エラストマー>
本発明のポリウレタンおよびそのウレタンプレポリマー溶液は、熱可塑性エラストマーとしての用途にも適用される。例えば、食品、医療分野で用いる空圧機器、塗装装置、分析機器、理化学機器、定量ポンプ、水処理機器および産業用ロボット等におけるチューブおよびホース類、スパイラルチューブ並びに消防ホース等に使用できる。
【0116】
また、丸ベルト、Vべルトおよび平ベルト等のベルトとして、各種伝動機構、紡績機械、荷造り機器および印刷機械等に用いられる。
また、履物のヒールトップおよび靴底、カップリング、パッキング、ポールジョイント、ブッシュ、歯車およびロール等の機器部品、スポーツ用品、レジャー用品並びに時計のベルト等に使用できる。
【0117】
さらに自動車部品としては、例えば、オイルストッパー、ギアボックス、スペーサー、シャーシー部品、内装品およびタイヤチェーン代替品等が挙げられる。また、キーボードフィルム、自動車用フィルム等のフィルム、カールコード、ケーブルシース、ベロー、搬送ベルト、フレキシブルコンテナー、バインダー、合成皮革、ディピンイング製品および接着剤等に使用できる。
【0118】
<5−3.溶剤系二液型塗料>
本発明のポリウレタンおよびそのウレタンプレポリマー溶液は、溶剤系二液型塗料としての用途にも適用可能であり、楽器、仏壇、家具、化粧合板およびスポーツ用品等の木材製品に適用できる。また、タールエポキシウレタンとして自動車補修用にも使用できる。
本発明のポリウレタンおよびそのウレタンプレポリマー溶液は、湿気硬化型の一液型塗料、ブロックイソシアネート系溶媒塗料、アルキド樹脂塗料、ウレタン変性合成樹脂塗料、紫外線硬化型塗料および水系ウレタン塗料等の成分として使用可能である。
【0119】
例えば、プラスチックバンパー用塗料、ストリッパブルペイント、磁気テープ用コーティング剤、床タイル、床材、紙、木目印刷フィルム等のオーバープリントワニス、木材用ワニス、高加工用コイルコート、光ファイバー保護コーティング、ソルダーレジスト、金属印刷用トップコート、蒸着用ベースコートおよび食品缶用ホワイトコート等に適用できる。
【0120】
<5−4.接着剤>
本発明で製造されるポリウレタンおよびそのウレタンプレポリマー溶液は、接着剤として、食品包装、靴、履物、磁気テープバインダー、化粧紙、木材および構造部材等に適用でき、また、低温用接着剤およびホットメルトの成分としても用いることができる。
本発明のポリウレタンを接着剤として使用する場合の形態としては、得られたポリウレタンを溶剤に溶解して溶剤型接着剤として使用することも、溶剤を用いずにホットメルト型接着剤として使用することも可能である。
【0121】
溶剤を使用する場合の使用可能な溶剤としては、得られるウレタンの特性に合った溶剤であれば特にその制限はなく、水系溶剤、有機系溶剤ともに使用することが可能である。特に、最近は、環境への負荷の軽減から水性ポリウレタンエマルションを水系溶剤に溶解または分散させた水性接着剤の要望が高まっており、本発明のポリウレタンはその目的にも好適に用いることができる。
【0122】
さらに本発明のポリウレタンを用いて製造した接着剤には、必要に応じて通常の接着剤で使用される添加剤および助剤は制限なく混合することが可能である。添加剤としては、例えば、顔料、溶剤、ブロッキング防止剤、分散安定剤、粘度調節剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐熱性向上剤、無機および有機充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強材並びに触媒等が挙げられる。
【0123】
添加剤の配合方法は、攪拌および分散等公知の方法が採用可能である。このようにして得られる本発明の接着剤は、鉄、銅、アルミニウム、フェライトおよびメッキ鋼板などの金属材料、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂および塩化ビニル樹脂等の樹脂材料、並びにガラスおよびセラミック等の無機材料を効率良く接着することができる。
【0124】
<5−5.バインダー>
本発明のポリウレタンおよびそのウレタンプレポリマー溶液は、バインダーとして、磁気記録媒体、インキ、鋳物、焼成煉瓦、グラフト材、マイクロカプセル、粒状肥料、粒状農薬、ポリマーセメントモルタル、レジンモルタル、ゴムチップバインダー、再生フォームおよびガラス繊維サイジング等に使用可能である。
【0125】
<5−6.繊維加工剤>
本発明のポリウレタンおよびそのウレタンプレポリマー溶液は、繊維加工剤の成分として、防縮加工、防皺加工および撥水加工等に使用できる。
<5−7.弾性繊維>
本発明のポリウレタンを弾性繊維として使用する場合、その繊維化の方法は、紡糸できる方法であれば特に制限なく実施できる。例えば、一旦ペレット化したのち溶融させ、直接紡糸口金を通して紡糸する溶融紡糸方法が採用できる。
【0126】
本発明のポリウレタン弾性繊維を溶融紡糸により得る場合、紡糸温度は250℃以下であることが好ましく、235℃以下であることがより好ましい。また、200℃以上であることが好ましい。
本発明のポリウレタン弾性繊維はそのまま裸糸として使用したり、また、他繊維で被覆して被覆糸として使用することもできる。他繊維としては、例えば、ポリアミド繊維、ウール、綿およびポリエステル繊維など従来公知の繊維が挙げられる。中でも、本発明ではポリエステル繊維が好ましく用いられる。
また、本発明のポリウレタン弾性繊維は、染着タイプの分散染料を含有していてもよい。
【0127】
本発明のポリウレタン弾性繊維の具体的な利用分野としては、例えば、水着、スキ−ウェアー、サイクリングウェアー、レオタード、ランジェリー、ファンデ−ション、肌着、帽子、手袋、パンティストッキングおよび靴下等の衣料(用)品、包帯およびサポ−タ−等の医療品、並びにテニスラケットのガット、一体成形加工用カーシート地糸およびロボットアーム用金属被覆糸などの非衣料品等が挙げられる。
【0128】
<5−8.シーラント・コーキング>
本発明のポリウレタンおよびそのウレタンプレポリマー溶液は、シーラント・コーキングとして、コンクリート打ち壁、誘発目地、サッシ周り、壁式PC目地、ALC目地、ボード類目地、複合ガラス用シーラント、断熱サッシシーラントおよび自動車用シーラント等に使用できる。
【0129】
<5−9.医療用材料>
本発明のポリウレタンおよびそのウレタンプレポリマー溶液は、医療用材料としての使用が可能である。例えば、チューブ、カテーテル、人工心臓、人工血管および人工弁等の血液適合材料、並びにカテーテル、チューブ、バッグ、手術用手袋および人工腎臓ポッティング材料等の使い捨て素材として使用することができる。
【0130】
<5−10.活性エネルギー線硬化性樹脂組成物など>
本発明のポリウレタン、ポリウレタンウレアおよびそのウレタンプレポリマー溶液は、末端を変性させることにより、UV硬化型塗料、電子線硬化型塗料、フレキソ印刷版用の感光性樹脂組成物および光硬化型の光ファイバー被覆材組成物等の原料として用いることができる。
【0131】
特に、本発明のウレタン化合物の末端をラジカル重合基により変成させて得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、各種表面加工分野および注型成型品用途に広く用いることができる。中でも、ラジカル重合基が(メタ)アクリレートであるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、硬化させて硬化膜とした場合に、耐汚染性およびハンドリング性に優れるという特徴を有する。
【0132】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、本発明のポリカーボネートジオールの他に、ポリイソシアネートおよびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート並びに必要に応じて他化合物を添加して製造することができる。
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを製造する際に使用可能なポリイソシアネートとしては、上記有機ジイソシアネートの他、トリス(イソシアナトヘキシル)イソシアヌレート等のポリイソシアネートも挙げられる。
【0133】
また、使用可能なヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートに代表される様に、1個以上のヒドロキシル基と1個以上の(メタ)アクリロイル基とを併せ持つ化合物であれば特に限定されない。
さらに本発明のポリカーボネートジオールに加えて、必要に応じて他のポリオールおよび/またはポリアミンなど活性水素を少なくとも2個有する化合物を添加してもよく、また、これらを任意に組み合わせ用いてもよい。
【0134】
本発明のポリカーボネートジオールを原料として製造されるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、本発明のポリカーボネートジオールを原料として製造されるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー以外の活性エネルギー線反応性モノマー、活性エネルギー線硬化性オリゴマー、重合開始剤および光増加剤並びに他の添加剤などを混合してもよい。
【0135】
本発明のポリカーボネートジオールを原料として製造されるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化膜は、インキおよびエタノール等の一般家庭汚染物に対する耐汚染性および保護性に優れる膜とすることが可能である。
前記硬化膜を各種基材への皮膜として用いた積層体は、意匠性および表面保護性に優れており、塗装代替用フィルムとして用いることができ、例えば、内装または外装用の建装材並びに自動車および家電等の各種部材等に有効に適用することが可能である。
【0136】
本発明のポリカーボネートジオールは、ポリエステル系エラストマー、つまり主として芳香族ポリエステルからなるハードセグメントと、主として脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステルまたは脂肪族カーボネートからなるソフトセグメントとを主な構成成分とする、ポリエーテル、ポリエステルまたはポリカーボネート・エステルブロック共重合体のカーボネート成分として使用することが出来る。
【0137】
本発明のポリカーボネートジオールを原料として使用すると、ソフトセグメントが、脂肪族ポリエーテルまたは脂肪族ポリエステルを用いた場合に比べて、耐熱性および耐水性等の物性に優れる。また、公知のポリカーボネートジオールと比較しても、溶融時の流動性、つまりブロー成形および押出成形に適したメルトフローレートを有し、且つ機械強度その他の物性とのバランスに優れたポリカーボネートエステルエラストマーとなる。したがって、繊維、フィルムおよびシートをはじめとする各種成形材料、例えば、弾性糸並びにブーツ、ギヤ、チューブおよびパッキンなどの成形材料に好適に用いることができる。
具体的には、例えば、耐熱性および耐久性を要求される、自動車および家電部品等などのジョイントブーツ、並びに電線被覆材等の用途に有効に適用することが可能である。
【実施例】
【0138】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
以下において、各物性値の評価方法は下記の通りである。
<数平均分子量>
数平均分子量(Mn)は、ポリカーボネートジオール含有組成物をCDCl(重クロロホルム)に溶解して400MHzにてH−NMR(BRUKER製AVANCE400)を測定、その積分値より算出した。
【0139】
<エーテル結合量、原料とするジヒドロキシ化合物量、フェノール量>
ポリカーボネートジオール含有組成物をCDClに溶解して400MHz H−NMR(BRUKER製AVANCE400)を測定し、各成分のシグナルの積分値より算出した。その際の検出限界は、エーテル基の重量として500ppm、原料とするジヒドロキシ化合物またはフェノールの重量として、フェノールは100ppm、イソソルビドは0.1重量%、ネオペンチルグリコールは500ppmである。
【0140】
<副生した環状カーボネート量>
ポリカーボネートジオール含有組成物をCDClに溶解して400MHz H−NMR(BRUKER製AVANCE400)を測定し、その積分値より算出した。
<o−ジクロロベンゼン量>
ポリカーボネートジオール含有組成物をCDClに溶解して400MHz H−NMR(BRUKER製AVANCE400)を測定し、各成分のシグナルの積分値より算出した。その際の検出限界は200ppmである。
【0141】
<フェノキシド末端の割合>
ポリカーボネートジオール含有組成物をCDClに溶解して400MHz H−N
MR(BRUKER製AVANCE400)を測定し、各成分のシグナルの積分値より算出した。フェノキシド末端の割合は、フェノキシド末端の1プロトン分の積分値と、前記式(B)で表されるポリカーボネートジオール末端構造およびフェノキシド末端、それぞれの1プロトン分の積分値の合計との比から求めており、フェノキシド末端の検出限界はポリカーボネートジオール末端の全構造に対して0.05モル%である。
【0142】
<(P)及び(Q)の値の求め方>
(P):式(B)中のRが(CHlであるRのモル数}/{式(B)中のRの全モ
ル数}、及び(Q):{式(A)中のRが(CH)lであるRのモル数}/{式(A)中
のRの全モル数}、それぞれの値は生成物をCDClに溶解して400MHz H−NMR(BRUKER製AVANCE400)を測定し、その積分値より算出した。算出方法を以下に記載する。
【0143】
<水酸基価>
JIS K1557−1に記載の手法により測定、算出した。
1.実施例1−6、比較例1−6
ジヒドロキシ化合物としてイソソルビドと1,6−ヘキサンジオールを使用。
δ5.22〜4.98ppmの積分値=a
δ4.79〜4.61ppmの積分値=b
δ4.61〜4.47ppmの積分値=c
δ3.68〜3.51ppmの積分値=d
δ2.73〜2.66ppmの積分値=e
δ1.52〜1.30ppmの積分値=f
【0144】
分子鎖末端のイソソルビド由来のカーボネート基含有構造は2種の異性体であり、それぞれを「ISB末端1」、「ISB末端2」とする。また末端以外のポリカーボネートジオール中のイソソルビド由来のカーボネート基含有構造部分を「ISB中」とする。同様に分子鎖末端の1,6−ヘキサンジオール由来のカーボネート基含有構造部分を「HD末端」、末端以外のポリカーボネートジオール中の1,6-ヘキサンジオール由来のカーボ
ネート基含有構造部分「HD中」とする。
【0145】
それぞれのプロトン数を考慮し、以下の式によりそれぞれの数を計算する。
ISB末端1=b−e
ISB中=c−ISB末端1
ISB末端2=a−ISB末端1−ISB中×2
HD末端=(d−e−ISB末端1)÷2
HD中=(f−HD末端×4)÷4
原料ジヒドロキシ化合物としてイソソルビドと1,6−ヘキサンジオールを用いたポリカーボネートジオールにおいて、(P)及び(Q)は以下で表される。
(P)=HD末端/{(ISB末端1+ISB末端2+HD末端}
(Q)={HD末端+HD中}/{ISB末端1+ISB末端2+ISB中+HD末端+HD中}
【0146】
2.実施例7−9
ジヒドロキシ化合物としてネオペンチルグリコールと1,6−ヘキサンジオールを使用。
δ4.25〜4.05ppmの積分値=g
δ4.05〜3.87ppmの積分値=h
δ3.70〜3.57ppmの積分値=i
δ3.41〜3.30ppmの積分値=j
δ1.15〜1.12ppmの積分値=k
分子鎖末端のネオペンチルグリコール由来のカーボネート基含有構造部分を「NPG末端」、末端以外のポリカーボネートジオール中のネオペンチルグリコール由来のカーボネート基含有構造部分「NPG中」とする。
【0147】
それぞれのプロトン数を考慮し、以下の式によりそれぞれの数を計算する。
HD末端=i÷2
HD中=(h−i−k÷6×4)÷4
NPG末端=j÷2
NPG中=(h−i)÷4
原料ジヒドロキシ化合物としてネオペンチルグリコールと1,6−ヘキサンジオールを用いたポリカーボネートジオールにおいて、(P)及び(Q)は以下で表される。
(P)=HD末端/{HD末端+NPG末端}
(Q)={HD末端+HD中}/{HD末端+HD中+NPG末端+NPG中}
【0148】
<触媒量>
ポリカーボネートジオール含有組成物を約0.1g測り取り、4mLのアセトニトリルに溶解した後、20mLの純水を加えてポリカーボネートジオールを析出させ、析出したポリカーボネートジオールをろ過にて除去した。そしてろ過後の溶液を純水で所定濃度まで希釈し、金属イオン濃度をイオンクロマトグラフィーで分析した。なお、溶媒として使用するアセトニトリルの金属イオン濃度をブランク値として測定し、溶媒分の金属イオン濃度を差し引いた値をポリカーボネートジオール含有組成物の金属イオン濃度とした。
【0149】
測定条件は以下の表1に示す通りである。分析結果と予め作成した検量線を使用し、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオンの各濃度を求めた。
【0150】
【表1】

【0151】
<薄膜蒸留装置>
直径50mm、高さ200mm、面積0.0314m2の内部コンデンサー、ジャケット付きの柴田科学株式会社製、分子蒸留装置MS−300特型を使用した。
<ウレタン化速度試験>
得られたポリカーボネートジオール含有組成物のウレタン化反応における反応性は、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記することがある)の溶液としてから、ポリカーボネートジオール含有組成物の水酸基価から推算される、添加するポリカーボネ
ートジオール含有組成物のモル等量に対して0.98倍のジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略記することがある)量を所定温度にて添加し、その攪拌を100rpmに保った場合の攪拌モーター負荷(単位 V)の変化にて負荷値(トルク)を観察した。トルクは、MDI添加前の値を差し引いた差分を読み取った。モーターは東京理化器械株式会社の攪拌機マゼラZ−1210を用いた。重合反応容器は容量500mLのセパラブルフラスコを用い、攪拌羽根はイカリ型を2枚組み合わせた4枚羽根を用いた。用いる容器等はよく洗浄し乾燥した上で、一連の操作は空気との接触を極力避けて、窒素流通あるいは窒素封入の条件にて行った。なお、モーター負荷値の検出限界は5Vである。ただし、モーター負荷値が約2Vを超える状態では重合液の粘度が高すぎ、攪拌羽根による剪断後の重合液が重力で戻りきらず、部分的に空回りの状態となるため、正しいモーター負荷値が測定できなかった。
【0152】
[実験例1−1]
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに、1,6−ヘキサンジオール:404.3g、イソソルビド:500.1g、ジフェニルカーボネート:1095.6g、酢酸マグネシウム4水和物水溶液:4.4mL(濃度:8.4g/L、酢酸マグネシウム4水和物:37mg)を入れ、窒素ガスでセパラブルフラスコ内の気体を置換した。次に、内温130℃まで昇温して内容物を加熱溶解させた。昇温し、内容物が溶解した後に、5分間かけてセパラブルフラスコ内部の圧力を5.33kPaまで下げ、内温130℃、5.33kPaの条件下で180分間、フェノールを留出させ除きながら反応した。更に、100分間かけてセパラブルフラスコ内部の圧力を0.40kPaまで下げた後、100分間かけて内温を160℃まで上げつつ、フェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。得られたポリカーボネートジオール含有組成物に含まれるマグネシウムの量は、4.29重量ppmであった。
【0153】
このポリカーボネートジオール含有組成物中に含まれるポリカーボネートジオールのNMR分析から求めた数平均分子量(Mn)は928、(P)の値は0.29、(Q)の値は0.49で、(P)/(Q)比は、0.59であった。水酸基価は149.5mgKOH/gであった。
得られたポリカーボネートジオール含有組成物の性状は、常温で透明固体であった。また原料とするジヒドロキシ化合物であるイソソルビドの含有量は3.60重量%、フェノール含有量は1.06重量%で、フェノキシド末端となったポリカーボネートジオールやイソソルビド骨格以外のエーテル結合を含むポリカーボネートジオールは検出されなかった。
【0154】
[実験例2−1]
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに、1,6−ヘキサンジオール:404.3g、イソソルビド:500.1g、ジフェニルカーボネート:1095.6g、酢酸マグネシウム4水和物水溶液:8.7mL(濃度:8.4g/L、酢酸マグネシウム4水和物:73mg)を入れ、窒素ガスでセパラブルフラスコ内の気体を置換した。次に、内温130℃まで昇温して内容物を加熱溶解させた。昇温し、内容物が溶解した後に、5分間かけてセパラブルフラスコ内部の圧力を5.33kPaまで下げ、内温130℃、5.33kPaの条件下で180分間、フェノールを留出させ除きながら反応した。更に、120分間かけてセパラブルフラスコ内部の圧力を0.40kPaまで下げた後、70分間かけて内温を160℃まで上げつつ、フェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。得られたポリカーボネートジオール含有組成物に含まれるマグネシウムの量は、9.35重量ppmであり、イソソルビドの含有量は3.17重量%であった。
【0155】
さらに得られたポリカーボネートジオール含有組成物を20g/分の流量で薄膜蒸留(温度:180〜200℃、圧力:0.027kPa)を行った。
この薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール含有組成物中に含まれるポリカーボネートジオールのNMR分析から求めた数平均分子量(Mn)は982、(P)の値は0.30、(Q)の値は0.50で、(P)/(Q)比は、0.60であった。水酸基価は117.6mgKOH/gであった。
【0156】
また、薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール含有組成物の性状は、常温で透明固体であり、含まれるマグネシウムの量は9.97重量ppmであった。また原料とするジヒドロキシ化合物であるイソソルビドの含有量は0.60重量%、フェノール含有量は0.04重量%で、フェノキシド末端となったポリカーボネートジオールやイソソルビド骨格以外のエーテル結合を含むポリカーボネートジオールは検出されなかった。
【0157】
[実験例3−1]
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに、1,6−ヘキサンジオール:404.3g、イソソルビド:500.1g、ジフェニルカーボネート:1095.6g、酢酸マグネシウム4水和物水溶液:17.5mL(濃度:8.4g/L、酢酸マグネシウム4水和物:147mg)を入れ、窒素ガスでセパラブルフラスコ内の気体を置換した。次に、内温130℃まで昇温して内容物を加熱溶解させた。昇温し、内容物が溶解した後に、5分間かけてセパラブルフラスコ内部の圧力を5.33kPaまで下げ、内温130℃、5.33kPaの条件下で150分間、フェノールを留出させ除きながら反応した。更に、110分間かけてセパラブルフラスコ内部の圧力を0.40kPaまで下げた後、60分間かけて内温を160℃まで上げつつ、フェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。得られたポリカーボネートジオール含有組成物に含まれるマグネシウムの量は、17.5重量ppmであった。
【0158】
このポリカーボネートジオール含有組成物中に含まれるポリカーボネートジオールのNMR分析から求めた数平均分子量(Mn)は924、(P)の値は0.30、(Q)の値は0.50で、(P)/(Q)比は、0.60であった。水酸基価は152.0mgKOH/gであった。
得られたポリカーボネートジオール含有組成物の性状は、常温で透明固体であった。また原料とするジヒドロキシ化合物であるイソソルビドの含有量は3.91重量%、フェノール含有量は1.17重量%で、フェノキシド末端となったポリカーボネートジオールやイソソルビド骨格以外のエーテル結合を含むポリカーボネートジオールは検出されなかった。
【0159】
[実験例4−1]
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに、1,6−ヘキサンジオール:404.3g、イソソルビド:500.1g、ジフェニルカーボネート:1095.6g、酢酸マグネシウム4水和物水溶液:8.7mL(濃度:50.4g/L、酢酸マグネシウム4水和物:440mg)を入れ、窒素ガスでセパラブルフラスコ内の気体を置換した。次に、内温130℃まで昇温して内容物を加熱溶解させた。昇温し、内容物が溶解した後に、5分間かけてセパラブルフラスコ内部の圧力を6.67kPaまで下げ、内温130℃、6.67kPaの条件下で150分間、フェノールを留出させ除きながら反応した。更に、210分間かけて圧力を0.40kPaまで下げた後、100分間かけて内温を160℃まで上げつつ、フェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。得られたポリカーボネートジオール含有組成物に含まれるマグネシウムの量は、65.9重量ppmであり、イソソルビドの含有量は6.13重量%であった。
【0160】
さらに得られたポリカーボネートジオール含有組成物を20g/分の流量で薄膜蒸留(温度:180〜200℃、圧力:0.027kPa)を行った。
この薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール含有組成物中に含まれるポリカーボネートジオールのNMR分析から求めた数平均分子量(Mn)は1,067、(P)の値は0.15、(Q)の値は0.54で、(P)/(Q)比は、0.28であった。水酸基価は119.4mgKOH/gであった。
【0161】
また、薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール含有組成物の性状は、常温で透明固体であり、含有するマグネシウムの量は49.3重量ppmであった。また原料とするジヒドロキシ化合物であるイソソルビドの含有量は1.66重量%で、フェノールやフェノキシド末端となったポリカーボネートジオール、イソソルビド骨格以外のエーテル結合を含むポリカーボネートジオールは検出されなかった。
【0162】
[比較例1−1]
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに、1,6−ヘキサンジオール:404.3g、イソソルビド:500.1g、ジフェニルカーボネート:1095.6g、酢酸マグネシウム4水和物水溶液:0.9mL(濃度:8.4g/L、酢酸マグネシウム4水和物:7.3mg)を入れ、窒素ガスでセパラブルフラスコ内の気体を置換した。次に、内温130℃まで昇温して内容物を加熱溶解させた。昇温し、内容物が溶解した後に、5分間かけてセパラブルフラスコ内部の圧力を4.67kPaまで下げ、内温130℃、4.67kPaの条件下で20分間反応した。更に、260分間かけてセパラブルフラスコ内部の圧力を0.40kPaまで下げた後、80分間かけて内温を160℃まで上げつつ、フェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。得られたポリカーボネートジオール含有組成物に含まれるマグネシウムの量は、1.06重量ppmであり、イソソルビドの含有量は0.43重量%であった。
【0163】
さらに、得られたポリカーボネートジオール含有組成物を20g/分の流量で薄膜蒸留(温度:180〜200℃、圧力:0.027kPa)を行った。
この薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール含有組成物中に含まれるポリカーボネートジオールのNMR分析から求めた数平均分子量(Mn)は1,465、(P)の値は0.32、(Q)の値は0.39で、(P)/(Q)比は、0.82であった。水酸基価は67.1mgKOH/gであった。
【0164】
また、薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール含有組成物の性状は、常温で透明固体であり、含まれるマグネシウムの量は1.14重量ppmであった。また原料とするジヒドロキシ化合物であるイソソルビドの含有量は0.14重量%、フェノール含有量は0.23重量%で、フェノキシド末端が末端全体の9モル%を占めていた。イソソルビド骨格以外のエーテル結合を含むポリカーボネートジオールは検出されなかった。
【0165】
[比較例2−1]
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに、1,6−ヘキサンジオール:404.3g、イソソルビド:500.1g、ジフェニルカーボネート:1095.6g、酢酸マグネシウム4水和物水溶液:8.7mL(濃度:8.4g/L、酢酸マグネシウム4水和物:73mg)を入れ、窒素ガスでセパラブルフラスコ内の気体を置換した。次に、内温130℃まで昇温して内容物を加熱溶解させた。昇温し、内容物が溶解した後に、5分間かけてセパラブルフラスコ内部の圧力を6.67kPaまで下げ、内温130℃、5.33〜6.67kPaの条件下で240分間、フェノールを留出させ除きながら反応した。更に、140分間かけて圧力を0.40kPa
まで下げた後、60分間かけて内温を180℃まで上げた。その後、内温180℃、0.40kPaの条件下で280分間、フェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。得られたポリカーボネートジオール含有組成物に含まれるマグネシウムの量は、9.43重量ppmであり、イソソルビドの含有量は5.44重量%であった。
【0166】
さらに得られたポリカーボネートジオール含有組成物を20g/分の流量で薄膜蒸留(温度:180〜200℃、圧力:0.027kPa)を行った。
この薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール含有組成物中に含まれるポリカーボネートジオールのNMR分析から求めた数平均分子量(Mn)は1,082、(P)の値は0.08、(Q)の値は0.53で、(P)/(Q)比は、0.15であった。水酸基価は105.2mgKOH/gであった。
【0167】
また、薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール含有組成物の性状は、常温で透明固体であり、含まれるMg量は9.97ppmであった。また原料とするジヒドロキシ化合物であるイソソルビドの含有量は1.08重量%で、フェノールやフェノキシド末端となったポリカーボネートジオール、イソソルビド構造以外のエーテル結合を含むポリカーボネートジオールは検出されなかった。
【0168】
[比較例3−1]
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに、1,6−ヘキサンジオール:404.3g、イソソルビド:500.1g、ジフェニルカーボネート:1095.6g、酢酸マグネシウム4水和物水溶液:8.7mL(濃度:100.8g/L、酢酸マグネシウム4水和物:877mg)を入れ、窒素ガスでセパラブルフラスコ内の気体を置換した。次に、内温130℃まで昇温して内容物を加熱溶解させた。昇温し、内容物が溶解したら5分間かけてセパラブルフラスコ内の圧力を6.67kPaまで下げ、内温130℃、6.67kPaの条件下で150分間、フェノールを留出させ除きながら反応した。更に、180分間かけて圧力を0.40kPaまで下げた後、100分間かけて温度を160℃まで上げつつ、フェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。得られたポリカーボネートジオール含有組成物に含まれるマグネシウムの量は、113重量ppmであり、イソソルビドの含有量は6.97重量%であった。
【0169】
さらに得られたポリカーボネートジオール含有組成物を20g/分の流量で薄膜蒸留(温度:180〜200℃、圧力:0.027kPa)を行った。
この薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール含有組成物中に含まれるポリカーボネートジオールのNMR分析から求めた数平均分子量(Mn)は1,054、(P)の値は0.10、(Q)の値は0.54で、(P)/(Q)比は、0.19であった。水酸基価は112.7mgKOH/gであった。
【0170】
また、薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール含有組成物の性状は、常温で透明固体であり、含有するマグネシウムの量は104重量ppmであった。また原料とするジヒドロキシ化合物であるイソソルビドの含有量は1.47重量%で、フェノールやフェノキシド末端となったポリカーボネートジオール、イソソルビド骨格以外のエーテル結合を含むポリカーボネートジオールは検出されなかった。
【0171】
[比較例4−1]
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに、1,6−ヘキサンジオール:404.3g、イソソルビド:500.1g、ジフェニルカーボネート:1095.6g、酢酸マグネシウム4水和物水溶液:8.7mL(濃度
:336.0g/L、酢酸マグネシウム4水和物:2,923mg)を入れ、窒素ガスでセパラブルフラスコ内の気体を置換した。次に、内温130℃まで昇温して内容物を加熱溶解させた。昇温し、内容物が溶解したら5分間かけてセパラブルフラスコ内の圧力を6.67kPaまで下げ、内温130℃、5.33〜8.00kPaの条件下で190分間、フェノールを留出させ除きながら反応した。更に、100分間かけて圧力を0.40kPaまで下げた後、60分間かけて温度を150℃まで上げつつ、フェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。得られたポリカーボネートジオール含有組成物に含まれるマグネシウムの量は、315重量ppmであり、イソソルビドの含有量は6.97重量%であった。
【0172】
さらに得られたポリカーボネートジオール含有組成物を20g/分の流量で薄膜蒸留(温度:180〜200℃、圧力:0.027kPa)を行った。
この薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール含有組成物中に含まれるポリカーボネートジオールのNMR分析から求めた数平均分子量(Mn)は1,122、(P)の値は0.10、(Q)の値は0.55で、(P)/(Q)比は、0.18であった。水酸基価は122.8mgKOH/gであった。
【0173】
また、薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール含有組成物の性状は、常温で透明固体であり、含有するマグネシウムの量は350重量ppmであった。また原料とするジヒドロキシ化合物であるイソソルビドの含有量は2.97重量%で、フェノールやフェノキシド末端となったポリカーボネートジオール、イソソルビド構造以外のエーテル結合を含むポリカーボネートジオールは検出されなかった。
【0174】
[比較例5−1]
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに、1,6−ヘキサンジオール:404.3g、イソソルビド:500.1g、ジフェニルカーボネート:1095.6g、酢酸亜鉛:345mgを入れ、窒素ガスでセパラブルフラスコ内の気体を置換した。次に、内温130℃まで昇温して内容物を加熱溶解させた。昇温し、内容物が溶解したら5分間かけてセパラブルフラスコ内の圧力を6.67kPaまで下げ、内温130〜140℃、6.67kPaで330分間、フェノールを留出させ除きながら反応した。次に、圧力4.67〜8.67kPaの条件下で210分間かけて温度を165℃まで上げ、フェノールを留出させ除きながら反応した。更に、圧力を30分間で0.40kPaまで下げながら、120分間かけて温度を190℃まで上げ、フェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。得られたポリカーボネートジオール含有組成物に含まれるイソソルビドの含有量は4.51重量%であった。
【0175】
さらに得られたポリカーボネートジオール含有組成物を20g/分の流量で薄膜蒸留(温度:180〜200℃、圧力:0.027kPa)を行った。
この薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール含有組成物中に含まれるポリカーボネートジオールのNMR分析から求めた数平均分子量(Mn)は1,088、(P)の値は0.07、(Q)の値は0.54で、(P)/(Q)比は、0.13であった。水酸基価は96.7mgKOH/gであった。
【0176】
得られたポリカーボネートジオール含有組成物の性状は、常温で白濁のある黄色固体であった。また原料とするジヒドロキシ化合物であるイソソルビドの含有量は0.30重量%で、フェノールやフェノキシド末端となったポリカーボネートジオール、イソソルビド構造以外のエーテル結合を含むポリカーボネートジオールは検出されなかった。
【0177】
[実験例2−2]
あらかじめ融点以上(例えば100℃)に加温した実験例2−1で製造した薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール含有組成物85.0gをセパラブルフラスコに入れ、50℃設定のオイルバスにそのフラスコを浸して加温しつつ、DMFを131g加えて溶解させた。100rpmで攪拌を行いながらDMF溶液にMDIを21.9g添加した。その後、粘度増加による攪拌トルクの電圧値の変化を読み取り、内容物の様子を観察した。
この場合の増粘速度は、トルク1.0Vを超えるまでの時間が約42分であり、扱いやすい範囲内であった。それ以降増粘は緩やかになり、トルク約1.7Vで増粘が止まった。
【0178】
[実験例4−2]
あらかじめ融点以上(例えば100℃)に加温した実験例3−1で製造した薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール含有組成物84.9gをセパラブルフラスコに入れ、50℃設定のオイルバスにそのフラスコを浸して加温しつつ、DMFを131g加えて溶解させた。100rpmで攪拌を行いながらDMF溶液にMDIを22.1g添加した。その後、粘度増加による攪拌トルクの電圧値の変化を読み取り、内容物の様子を観察した。
この場合の増粘速度は、トルク1.0Vを超えるまでの時間が約14分であり、扱いやすい範囲内であった。それ以降増粘は緩やかになり、トルク約1.8Vで増粘が止まった。
【0179】
[比較例1−2]
あらかじめ融点以上(例えば150℃)に加温した実験例1−1で製造した薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール含有組成物95.6gをセパラブルフラスコに入れ、50℃設定のオイルバスにそのフラスコを浸して加温しつつ、DMFを134g加えて溶解させた。100rpmで攪拌を行いながらDMF溶液にMDIを14.0g添加した。その後、粘度増加による攪拌トルクの電圧値の変化を読み取り、内容物の様子を観察した。
この場合は重合が非常に遅く、1時間経過後でもトルクは0.2Vであった。さらに4時間経過後でも僅かずつ増粘は進行しているものの、そのトルクは約0.7Vであった。
【0180】
[比較例2−2]
あらかじめ融点以上(例えば100℃)に加温した比較例2−1で製造した薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール含有組成物85.0gをセパラブルフラスコに入れ、50℃設定のオイルバスにそのフラスコを浸して加温しつつ、DMFを129g加えて溶解させた。100rpmで攪拌を行いながらDMF溶液にMDIを20.6g添加した。その後、粘度増加による攪拌トルクの電圧値の変化を読み取り、内容物の様子を観察した。
この場合の増粘速度は、トルク1.0Vを超えるまでの時間が約16分間であり、しかも約19分間経過後には2.7Vになり、さらに急上昇し、モーター負荷値は測定不能になった。
【0181】
[比較例3−2]
あらかじめ融点以上(例えば100℃)に加温した比較例3−1で製造した薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール含有組成物85.0gをセパラブルフラスコに入れ、50℃設定のオイルバスにそのフラスコを浸して加温しつつ、DMFを129g加えて溶解させた。100rpmで攪拌を行いながらDMF溶液にMDIを20.9g添加した。その後、粘度増加による攪拌トルクの電圧値の変化を読み取り、内容物の様子を観察した。
【0182】
この場合にはMDIの添加直後にゲルの形成が多少認められたものの、全体としては取扱いやすい重合液となった。増粘速度は、トルク0.7Vを超えるまでの時間が約10分間であり、扱いやすい範囲内であった。
ただ、ゲルの形成で溶液が不均質となり一部低粘度の部分が生じたため、トルクとしては1.0Vを超えた値にはならなかった。
【0183】
[比較例4−2]
あらかじめ融点以上(例えば100℃)に加温した比較例4−2で製造した薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール含有組成物85.0gをセパラブルフラスコに入れ、50℃設定のオイルバスにそのフラスコを浸して加温しつつ、DMFを132g加えて溶解させた。100rpmで攪拌を行いながらDMF溶液にMDIを22.8g添加した。
この場合にはMDIの添加直後にゲルの形成が多量認められ、内容物のほぼ全量が攪拌羽根に絡まって団子状態となった。したがって、増粘速度を測定することは不可能であった。
【0184】
[実験例5−1]
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた1Lガラス製セパラブルフラスコに、1,6−ヘキサンジオール:293.9g、イソソルビド:121.2g、ジフェニルカーボネート:658.2g、酢酸マグネシウム4水和物:4.3mgを入れ、窒素ガスでセパラブルフラスコ内の気体を置換した。次に、内温160℃まで昇温して内容物を加熱溶解した後、内温160℃の条件下で60分間反応させた。更に、120分間かけてセパラブルフラスコ内部の圧力を0.27kPaまで下げつつ、フェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。その後、内温180℃、2.7kPaの条件下で、15分間セパラブルフラスコ内部へ窒素ガスバブリングを行い、フェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。更に、セパラブルフラスコ内にo−ジクロロベンゼンを400g加えた後、内温130℃、圧力0.27kPaの条件下で5時間反応させ、その後セパラブルフラスコ内の圧力を2.7kPaに保持したまま窒素ガスにて13時間バブリングし、フェノールを除きながらポリカーボネートジオールの重合度を上げる反応を行い、ポリカーボネートジオール含有組成物を得た。
【0185】
このポリカーボネートジオール含有組成物中に含まれるポリカーボネートジオールの水酸基価から求めた数平均分子量(Mn)は2,100、(P)の値は0.38、(Q)の値は0.76で、(P)/(Q)比は、0.50であった。水酸基価は53.4mgKOH/gであった。
得られたポリカーボネートジオール含有組成物の性状は、常温で粘性液体であり、流動性が認められた。また、原料とするジヒドロキシ化合物であるイソソルビドの含有量は0.5重量%で、フェノキシド末端となったポリカーボネートジオールやイソソルビド骨格以外のエーテル結合を含むポリカーボネートジオール、フェノール及びo−ジクロロベンゼンは検出されなかった。
【0186】
[実験例6−1]
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに、1,6−ヘキサンジオール:202.4g、イソソルビド:750.9g、ジフェニルカーボネート:1046.8g、酢酸マグネシウム4水和物水溶液:8.7mL(濃度:8.4g/L、酢酸マグネシウム4水和物:73mg)を入れ、窒素ガスでセパラブルフラスコ内の気体を置換した。次に、内温130℃まで昇温して内容物を加熱溶解させた。昇温し、内容物が溶解したら5分間かけてセパラブルフラスコ内の圧力を5.33kPaまで下げ、内温130℃、5.33kPaの条件下で240分間、フェノールを留出させ除きながら反応した。更に、120分かけてセパラブルフラスコ内の圧力を0.40kPaまで下げた後、80分間かけて内温を160℃まで上げつつ、フェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。最後に160℃、0.40kPaで40分間、フェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除去し、ポリカーボネートジオール含有組成物を得た。
【0187】
さらに得られたポリカーボネートジオール含有組成物を20g/分の流量で薄膜蒸留(
温度:180〜200℃、圧力:0.027kPa)を行った。
この薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール含有組成物中に含まれるポリカーボネートジオールの水酸基価から求めた数平均分子量(Mn)は985、(P)の値は0.09、(Q)の値は0.24で、(P)/(Q)比は、0.38であった。水酸基価は125.0mgKOH/gであった。
【0188】
また、薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール含有組成物の性状は。常温で淡黄色固体であった。また原料とするジヒドロキシ化合物であるイソソルビドの含有量は2.5重量%で、フェノール含有量やフェノキシド末端となったポリカーボネートジオール、イソソルビド骨格以外のエーテル結合を含むポリカーボネートジオールは検出されなかった。
【0189】
[実験例7−1]
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに、1,6−ヘキサンジオール:386.0g、ネオペンチルグリコール:340.2g、ジフェニルカーボネート:1273.8g、酢酸マグネシウム4水和物水溶液:8.3mL(濃度:8.4g/L、酢酸マグネシウム4水和物:73mg)を入れ、窒素ガスでセパラブルフラスコ内の気体を置換した。次に、内温130℃まで昇温して内容物を加熱溶解させた。昇温し、内容物が溶解したら5分間かけてセパラブルフラスコ内の圧力を6.67kPaまで下げ、内温130℃、6.67kPaの条件下で180分間、フェノールを留出させ除きながら反応した。更に、150分間かけてセパラブルフラスコ内の圧力を0.40kPaまで下げた後、90分間かけて内温を160℃まで上げつつ、フェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。得られたポリカーボネートジオール含有組成物の性状は常温では透明液体であった。
【0190】
このポリカーボネートジオール含有組成物中に含まれるポリカーボネートジオールのNMR分析から求めた数平均分子量(Mn)は1990、(P)の値は0.36、(Q)の値は0.53で、(P)/(Q)比は、0.68であった。水酸基価は56.6mgKOH/gであった。
得られたポリカーボネートジオール含有組成物の性状は、常温で粘性液体であり、流動性が認められた。また、原料ジヒドロキシ化合物であるネオペンチルグリコールの含有量は0.13重量%、ネオペンチルカーボネートの含有量は1.85重量%、フェノール含有量は0.24重量%で、フェノキシド末端となったポリカーボネートジオールやエーテル結合を含むポリカーボネートジオールは検出されなかった。
【0191】
[実験例8−1]
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに、1,6−ヘキサンジオール:386.0g、ネオペンチルグリコール:340.2g、ジフェニルカーボネート:1273.8g、酢酸カルシウム1水和物水溶液:6.9mL(濃度:8.4g/L、酢酸カルシウム1水和物:58.0mg)を入れ、窒素ガスでセパラブルフラスコ内の気体を置換した。次に、内温130℃まで昇温して内容物を加熱溶解させた。昇温し、内容物が溶解したら5分間かけてセパラブルフラスコ内の圧力を6.67kPaまで下げ、内温130℃、6.67kPaの条件下で180分間、フェノールを留出させ除きながら反応した。そして、150分間かけてセパラブルフラスコ内の圧力を0.40kPaまで下げた後、90分間かけて内温を160℃まで上げつつ、フェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。得られたポリカーボネートジオール含有組成物の性状は、常温では透明液体であった。
【0192】
このポリカーボネートジオール含有組成物中に含まれるポリカーボネートジオールのNMR分析から求めた数平均分子量(Mn)は3708、(P)の値は0.37、(Q)の値は0.57で、(P)/(Q)比は、0.67であった。水酸基価は33.3mgKO
H/gであった。
得られたポリカーボネートジオール含有組成物の性状は、常温で粘性液体であり、流動性が認められた。また、ネオペンチルカーボネートの含有量は0.47重量%、フェノール含有量は0.62重量%で、ネオペンチルグリコールやフェノキシド末端となったポリカーボネートジオール、エーテル結合を含むポリカーボネートジオールは検出されなかった。
【0193】
[実験例9−1]
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに、1,6−ヘキサンジオール:386.0g、ネオペンチルグリコール:340.2g、ジフェニルカーボネート:1273.8g、酢酸バリウム水溶液:9.9mL(濃度:8.4g/L、酢酸バリウム1水和物:83mg)を入れ、窒素ガスでセパラブルフラスコ内の気体を置換した。次に、内温130℃まで昇温して内容物を加熱溶解させた。昇温し、内容物が溶解したら5分間かけてセパラブルフラスコ内の圧力を6.67kPaまで下げ、内温130℃、6.67kPaの条件下で180分間、フェノールを留出させ除きながら反応した。そして、150分間かけてセパラブルフラスコ内の圧力を0.40kPaまで下げた後、90分間かけて温度を160℃まで上げつつ、フェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。得られたポリカーボネートジオール含有組成物の性状は、常温では透明液体であった。
【0194】
このポリカーボネートジオール含有組成物中に含まれるポリカーボネートジオールのNMR分析から求めた数平均分子量(Mn)は3252、(P)の値は0.27、(Q)の値は0.56で、(P)/(Q)比は、0.48であった。水酸基価は35.1mgKOH/gであった。
得られたポリカーボネートジオール含有組成物の性状は、常温で粘性液体であり、流動性が認められた。また、原料ジヒドロキシ化合物であるネオペンチルグリコールの含有量は0.09重量%、ネオペンチルカーボネートの含有量は0.55重量%、フェノール含有量は0.17重量%で、フェノキシド末端となったポリカーボネートジオールやエーテル結合を含むポリカーボネートジオールは検出されなかった。
【0195】
<(P)/(Q)比と、ウレタン化反応速度についての検討>
表1に前記実施例1−1・2−1・3−1・4−1と比較例1−1・2−1・3−1・4−1について、ポリカーボネートジオール製造時に使用した原料ジヒドロキシ化合物の組成、マグネシウム触媒の使用量、反応最高温度と、ポリカーボネートジオール含有組成物の残存物、(P)、(Q)および(P)/(Q)比の値と、ポリカーボネートジオール含有組成物を用いたウレタン化反応速度試験の結果を整理して示す。
【0196】
【表2】

【0197】
【表3】

【0198】
実施例と比較例との比較から明らかなように、製造時の触媒量が5μmol/diolmolより多く600μmol/diolmolより少ない反応条件、および最大反応温度を180℃未満とした反応条件で得られたポリカーボネートジオール含有組成物は、適度な(P)/(Q)比及びウレタン化反応速度を有しているため、十分にウレタン化反応を進めることができ、設計した物性のポリウレタンを得ることができる。
【0199】
例えば実施例1−1・2−1・3−1・4−1と比較例1−1との比較から明らかなように、(P)/(Q)比が0.8以上のポリカーボネートジオール含有組成物は末端構造にフェノキシド基が含まれており、さらにウレタン化反応が遅すぎることに起因して十分にウレタン化反応を進めることができない。具体的には、比較例1−1のポリカーボネートジオール含有組成物をウレタン化反応に用いた場合(比較例1−2)には、ウレタン化反応速度が遅く、負荷値が0.7Vを越えるのに4時間程度かかった。一方で(P)/(Q)比が0.8未満のポリカーボネートジオール含有組成物をウレタン化反応に用いた場合(例えば実施例2−2および実施例4−2)には、適度なウレタン化反応速度を有しているため、十分にウレタン化反応を進めることができた。しかし、(P)/(Q)比が0.2未満のポリカーボネートジオール含有組成物を用いた場合にはコントロールできないほどウレタン化反応速度が速いことに起因してウレタン化反応が進み過ぎ、硬度などの設計した物性のポリウレタンを得ることができなくなる場合がある。具体的には、実施例2−1と比較例2−1を比較すると、比較例2−1のポリカーボネートジオール含有組成物をウレタン化反応に用いた場合(比較例2−2)には、ウレタン化速度が速すぎるために、14分で負荷値が0.7Vに達した後も増粘がとまらず、最終負荷値を測定する事ができないほど粘度が高くなってしまった。
【産業上の利用可能性】
【0200】
本発明のポリカーボネートジオール含有組成物は、ポリカーボネートジオール末端を構成する全ポリオール由来構造において、特定の構造の比率を制御し、ウレタン化反応での反応性を安定化した。それにより、ポリウレタンの製造原料として使用した時の取り扱い性に優れる事が期待される。
また、本発明のポリカーボネートジオール含有組成物を用いてポリウレタンを製造すると、従来のポリカーボネートジオール由来のポリウレタンとしての特性である優れた耐熱性、耐候性及び耐水性を維持したまま、ポリカーボネートジオール含有組成物の構成成分として用いられたジオール化合物の種類によって、各種要求物性を付与できるという優れた特長を有しており、産業上極めて有用なものであることが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)で表される繰り返し構造のポリカーボネートジオールを含有するポリカーボネートジオール含有組成物であって、該ポリカーボネートジオールの水酸基価が10以上400以下であり、且つ下記式(C)を満たすポリカーボネートジオール含有組成物。
【化1】

(ただし、上記式(B)の構造は上記式(A)で表されるポリカーボネートジオールの末端構造を示す。また、(P)および(Q)は下記式で定義される。
(P)={式(B)中のRが(CHlであるRのモル数}/{式(B)中のRの全モ
ル数}
(Q)={式(A)中のRが(CH)lであるRのモル数}/{式(A)中のRの全モル
数}
ただし、Rはカーボネート基を含まない任意の2価の基であり、異なる複数の基で構成されていてもかまわない。また、lは2以上20以下の整数、mは1以上100以下の整数を表す。前記式(B)の波線は、この先にポリマー鎖が結合していることを示す。)
【請求項2】
ポリカーボネートジオールの数平均分子量が300以上10000以下である、請求項1に記載のポリカーボネートジオール含有組成物。
【請求項3】
ポリカーボネートジオールの全末端基に対する水酸基の割合が95モル%以上である、請求項1または請求項2に記載のポリカーボネートジオール含有組成物。
【請求項4】
前記式(A)で表されるポリカーボネートジオール中に含まれる、Rで示される構造の中で、Rが(CHである構造の割合が10モル%以上90モル%以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオール含有組成物。
【請求項5】
前記(CHのlが3以上6以下である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオール含有組成物。
【請求項6】
ポリカーボネートジオールが、分岐構造およびヘテロ原子を有する構造から選ばれる少なくとも1つの構造を有するジヒドロキシ化合物に由来し、かつカーボネート基を含む構造単位を有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオール含有組成物。
【請求項7】
ポリカーボネートジオールが下記式(D)で表される構造単位を有する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオール含有組成物。
【化2】

(式(D)において、nは0または1、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜15のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基およびアルコキシ基よりなる群から選ばれる基であり、これらの基はヘテロ原子を含有していてもよい。Xは、それぞれ独立にヘテロ原子を含有してもよい炭素数1〜15の2価の基を表す。)
【請求項8】
ポリカーボネートジオールが、下記式(E)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来し、かつカーボネート基を含む構造単位を有する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオール含有組成物。
【化3】

(式(E)において、上記式(E)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
【請求項9】
式(E)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物が、イソソルビド、イソマンニド、およびイソイディッドから選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物である、請求項8に記載のポリカーボネートジオール含有組成物。
【請求項10】
炭酸ジエステルが、ジアリールカーボネートである、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオール含有組成物。
【請求項11】
前記触媒が、長周期型周期表における第2族の金属より選ばれた少なくとも1種の金属を含む化合物であり、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオール含有組成物と、当該金属とを、当該金属がポリカーボネートジオール含有組成物に対し重量比として2ppm以上100ppm以下であるように含有する、ポリカーボネートジオール含有組成物。
【請求項12】
ポリカーボネートジオール含有組成物と、当該ポリカーボネートジオール含有組成物の製造に用いた原料ジヒドロキシ化合物とを、当該原料ジヒドロキシ化合物がポリカーボネートジオール含有組成物に対し5重量%以下であるように含有する、請求項1から11のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオール含有組成物。
【請求項13】
下記式(A)で表される繰り返し構造のポリカーボネートジオールを含有するポリカーボネートジオール含有組成物であって、該ポリカーボネートジオールの水酸基価が10以上400以下であり、且つ下記式(C)を満たすポリカーボネートジオール含有組成物を、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを触媒存在下で、反応最高温度が180℃未満の条件下で重縮合反応することにより得る、ポリカーボネートジオール含有組成物の製造方法。
【化4】

(ただし、上記式(B)の構造は上記式(A)で表されるポリカーボネートジオールの末端構造を示す。また、(P)および(Q)は下記式で定義される。
(P)={式(B)中のRが(CHlであるRのモル数}/{式(B)中のRの全モ
ル数}
(Q)={式(A)中のRが(CH)lであるRのモル数}/{式(A)中のRの全モル
数}
ただし、Rはカーボネート基を含まない任意の2価の基であり、異なる複数の基で構成されていてもかまわない。また、lは2以上20以下の整数、mは1以上100以下の整数を表す。前記式(B)の波線は、この先にポリマー鎖が結合していることを示す。)
【請求項14】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオール含有組成物を用いてなるポリウレタン。
【請求項15】
請求項13に記載のポリカーボネートジオール製造方法により得られるポリカーボネートジオール含有組成物を用いてなるポリウレタン。

【公開番号】特開2013−18979(P2013−18979A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−136083(P2012−136083)
【出願日】平成24年6月15日(2012.6.15)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】