説明

ポリカーボネート樹脂成形材料の製造方法

【課題】 粉粒体形状のポリカーボネート樹脂の連続的な溶融混練を可能としながら、酸化劣化を効率的に抑制可能な製造方法を提供する。
【解決手段】 比表面積が0.01mm/g以上で、50wt%以上が200〜2000μmの粒径を有する粉粒体形状のポリカーボネート樹脂を、酸素濃度が3%以下の不活性ガス雰囲気中を50cm以上落下させてから押出機に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂成形材料の製造方法に関し、特には、製造時の酸化によるポリカーボネート樹脂の劣化を抑制可能なポリカーボネート樹脂成形材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は優れた機械的性質に加え、透明性にも優れるため、光学材料を始めとして広く用いられている。しかしながら、溶融混練時に高温での酸化劣化により、色相が悪化(黄変)する場合がある。そのため、バレル内あるいはホッパー内に不活性ガスを送入し、溶融混練時の酸素濃度を下げることにより酸化劣化を抑制する技術が知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−132436号公報
【特許文献2】特開平8−132437号公報
【特許文献3】特開平11−165342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2に記載される方法では、ポリカーボネート樹脂材料がフレークやグラニュールと呼ばれるような粉粒体形状である場合、材料中に包含された酸素が不活性ガスで十分置換されず、酸化劣化の抑制効果が小さかった。
【0005】
一方、特定の組成を有するポリカーボネート樹脂材料を貯蔵容器に収納し、容器内のガスを吸引除去した後、不活性ガスを封入する方法も知られている(特許文献3)。このほうによれば、粉粒体形状のポリカーボネート樹脂材料中に包含された酸素を不活性ガスで置換する効果が高いと思われるが、専用の設備が必要なうえ手間がかかること、また、樹脂材料を連続して処理することが困難であり、大型押出機での連続生産には不向きである。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みなされたものであり、粉粒体形状のポリカーボネート樹脂材料を押出機で溶融混練する場合に、連続的な溶融混練を可能としながら、効率的に押出時の酸化劣化を抑制可能なポリカーボネート樹脂成形材料の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、粉粒体形状のポリカーボネート樹脂が分散した状態で不活性ガス雰囲気中を通過してから押出機へ供給されるようにすることにより、連続的な溶融混練を可能としながら酸化劣化による色相悪化の抑制効果を得ることが可能であることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
本発明によるポリカーボネート樹脂成形材料の製造方法は、比表面積が0.01mm/g以上で、50wt%以上が200〜2000μmの粒径を有する粉粒体形状のポリカーボネート樹脂を、酸素濃度が3%以下の不活性ガス雰囲気中で50cm以上落下させてから前記押出機に供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、粉粒体形状のポリカーボネート樹脂を、連続的に溶融混練を可能としながら効率的に押出時の酸化劣化による色相悪化を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の製造方法を適用可能な製造装置の構成例を示す図である。
【図2】(a)及び(b)は本発明における落下距離の定義を説明する図、(c)はポリカーボネート樹脂を段階的に落下させるためにホッパーシュート内に設ける部材の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適かつ例示的な実施形態について具体的に説明する。
本発明におけるポリカーボネート樹脂は、芳香族ヒドロキシ化合物(または芳香族ヒドロキシ化合物と少量のポリヒドロキシ化合物)を、ホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性ポリカーボネート重合体または共重合体である。ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)または溶融法(エステル交換法)などの従来法によることができる。また、溶融法で製造され、末端基のOH基量を調整して製造されたポリカーボネート樹脂であってもよい。
【0012】
本発明において使用可能な芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−P−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられ、好ましくはビスフェノールAである。
【0013】
分岐したポリカーボネート樹脂を得るには、上記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部に代えて、次に挙げる化合物を使用すればよい。化合物の具体例としては、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニルヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどで示されるポリヒドロキシ化合物、あるいは3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチンなどが挙げられる。これら化合物の使用量は、0.01〜10モル%の範囲であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
【0014】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、25℃の温度で測定した溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、10,000〜50,000の範囲のものが好適であり、15,000〜30,000の範囲のものがさらに好適であり、17,500〜27,000の範囲のものが最も好適である。粘度平均分子量が10,000未満では機械的強度に劣り、50,000を越えると成形加工性に劣るので好ましくない。
【0015】
本発明において、ポリカーボネート樹脂はフレーク状、グラニュール状などの粉粒体形状を有する。
具体的には、ポリカーボネート樹脂は、その50wt%以上が、JIS K0069(ふるい分け試験方法)に準拠した方法で測定した粒径分布で200〜2000μm、好ましくは200〜1500μm、さらに好ましくは200〜1200μmの範囲内である粉粒体である。200μm未満や2000μmを超える粒径を有する樹脂が50wt%以上含まれると、200μm未満の粒径を有する成分が舞い上がりやすく、フィーダーから押出機に定量的に供給することが困難になる。また、2000μmを超える粒径を有する成分については、粒子の体積に対する粒子が包含する空気の割合が小さいため、本発明を使用せずとも不活性ガスの置換が比較的容易に達成できる。
【0016】
また、本発明におけるポリカーボネート樹脂は、さらに、BET多点法により求めた比表面積が0.01m/g以上であり、好ましくは0.1m/g以上、更に好ましくは0.5m/g以上である。比表面積が0.01m/g未満の場合、粒子の体積に対する粒子が包含する空気の割合が小さいため、本発明を使用せずとも不活性ガスの置換が比較的容易に達成できる。
【0017】
本発明において製造するポリカーボネート樹脂成形材料には、ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂成が含まれていても良い。このような熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、液晶性ポリエステル等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂、熱可塑性エラストマー等の公知の熱可塑性樹脂がいずれも使用できる。これらの樹脂は単独で使用することも、2種以上を併用することも可能である。これらの樹脂を用いる場合、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して10〜150質量部の割合で用いることが好ましい。
【0018】
また、本発明においては、ポリカーボネート樹脂の外に、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、顔料、染料、他のポリマー、難燃剤、耐衝撃改良剤、帯電防止剤、可塑剤、相溶化剤などの添加剤を含有することができる。これらの添加剤は一種または二種以上を配合してもよい。これらのうち、特に、熱安定剤と酸化防止剤を用いることが好ましい。
【0019】
熱安定剤としては特に制限はないが、リン系安定剤が好適に用いられる。熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.001〜1質量部、好ましくは0.01〜0.5質量部配合する。配合量が0.001質量部未満の場合は熱安定剤としての効果が不十分であり、1質量部を超えると耐加水分解性が悪化する場合がある。
【0020】
また、酸化防止剤に特に制限はないが、ヒンダードフェノール系化合物が好適に用いられる。酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.01〜1質量部であり、0.02〜0.5質量部が好ましい。配合量が0.01質量部より少ない場合には、酸化防止剤としての効果が不十分であり、1質量部を超えて添加しても酸化防止剤としての効果は上昇しない。
【0021】
上述の成分を押出機で溶融混練してポリカーボネート樹脂成形材料を製造する際、各成分の混合は押出機に投入される前の任意の段階で配合することができる。例えば、タンブラー、ヘンシェルミキサー、ブレンダーによって全成分を配合したのち、必要に応じてフィーダーを介してホッパーシュートに投入し、押出機に供給してもよい。押出機には一軸押出機、二軸押出機などが使用出来る。
【0022】
ただし、本発明は、ポリカーボネート樹脂以外の材料を用いる場合でも、ポリカーボネート樹脂については、分散した状態で不活性ガス雰囲気中を通過させてから押出機に供給することを特徴とする。具体的には、内部雰囲気が不活性ガスで置換されたホッパーシュート内を落下させて押出機に供給する。
【0023】
以下、本発明における、ポリカーボネート樹脂の供給方法について詳細に説明する。
図1は、本発明によるポリカーボネート樹脂成形材料の製造方法を適用可能な製造装置の構成例を示す図である。粉粒体形状のポリカーボネート樹脂は、原料供給機に貯蔵され、そこからフィーダーによってホッパーシュートに供給される。ホッパーシュートの底部は押出機の供給口に接続されており、ポリカーボネート樹脂はホッパーシュートを介して押出機に順次供給され、溶融混練されてペレットなどの樹脂成形材料となる。上述したようにポリカーボネート樹脂以外の材料を同時に用いる場合、原料供給機で混合しておくことも可能であるし、ポリカーボネート樹脂とは別経路でホッパーシュートに供給してもよい。
【0024】
まず、本発明においては、押出機に材料を供給するホッパーシュート内部の雰囲気を、不活性ガスで置換する。本発明において、不活性ガスとは、希ガスに限らず、使用するポリカーボネート樹脂の粉粒体に対して不活性なガスを意味する。不活性ガスとしては例えば窒素ガス、炭酸ガス、希ガス等が用いられ、特に窒素ガスが好ましく用いられる。
【0025】
本発明において、ホッパーシュート内の雰囲気を置換するためにホッパーシュートへ供給される不活性ガスは乾燥状態で、純度は99%以上であることが好ましい。また、図1に点線で示すように、不活性ガスはホッパーシュートの押出機の供給口近くから、あるいはホッパーシュートの上部から供給することが可能であるが、供給口近く(最下部)から供給することが好ましい。これは、ポリカーボネート樹脂を落下させながら樹脂中の空気を雰囲気の不活性ガスと置換する上で、ホッパーシュート下部の雰囲気中に占める不活性ガス濃度が高く維持されることが望ましいからである。
【0026】
ホッパーシュートは、その内部雰囲気の不活性ガス濃度を高く維持しつつ、置換された空気を外部に排出できる程度の気密性を有することが好ましい。不活性ガスは、ホッパーシュート内で置換された空気を排出させつつ、内部雰囲気の酸素濃度が低い状態が維持されるような流量で継続的に供給させる。具体的な流量は、ホッパーシュートの大きさや気密性に応じて適宜決定することができる。
【0027】
本発明においては、ホッパーシュート内雰囲気における酸素濃度は3%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、最も好ましくは0.1%以下となるように不活性ガスを供給することが好ましい。酸素濃度は、例えばホッパーシュート下部、押出機の供給口近傍で測定することができる。酸素濃度が3%を超えると、酸化劣化の抑制効果が十分得られない。
なお、不活性ガスは、ホッパーシュート内のみならず、押出機のバレル内にも供給することができる。
【0028】
上述のように、本発明では、粉粒体形状のポリカーボネート樹脂を、ホッパーシュート内を落下するように供給する。ここで、「分散した状態」とは、個々の樹脂粒子の表面が十分に雰囲気と接することが可能な状態を意味するが、特別な供給方法は不要であり、粉粒体形状のポリカーボネート樹脂を、ホッパー上部から供給すればよい。
【0029】
ただし、樹脂が表面のくぼみなどに抱える空気を不活性ガスで十分に置換するため、粉粒体形状のポリカーボネート樹脂が、不活性ガス雰囲気中を鉛直距離で50cm以上、好ましくは80cm以上落下してから押出機の供給口に達するように供給する。例えば、図1に示すように、フィーダーを用いてポリカーボネート樹脂をホッパーシュートに供給する場合、図2(a)に示すように、フィーダー出口の高さと、押出機の材料供給口(ホッパーシュート底部)との鉛直距離hを50cm以上とする。ただし、図2(b)に示すように、溶融混練する材料がホッパーシュート内に堆積する場合には、フィーダー出口の高さと、堆積した材料の頂点との鉛直距離hを50cm以上とする。
【0030】
例えば、押出機として二軸押出機を用いる場合など、飢餓供給(飢餓フィード)を行う場合には、図2(a)の状態となる。また、単軸押出機を用いる場合など、飢餓供給を行わない場合には、図2(b)の状態となる。従って、粉粒体形状のポリカーボネート樹脂がホッパーシュート内で50cm以上落下するように、押出機の種類や飢餓フィードの採用有無、押出速度、材料の供給量を決定する。
【0031】
なお、本発明において、粉粒体形状のポリカーボネート樹脂は、不活性ガス雰囲気中を鉛直距離で50cm以上落下すればよく、落下の過程は特に限定されない。具体的には、1回で50cm以上落下しなくてもよく、例えば図2(c)に示すように、粉粒体形状のポリカーボネート樹脂が段階的に落下して押出機の材料供給口に到達するよう、ホッパーシュートの内面に、先端が下方へ傾斜した板状の部材(調整板)を1つ以上設けても良い。ホッパーシュート内に調整板が設けられている場合など、複数回段階的に落下した合計距離が50cm以上であってもよい。なお、落下とは自由落下に限定されず、鉛直下方への移動であればよい。従って、調整板の上を滑りながら下降した距離も落下距離に含まれる。
【0032】
粉粒体が堆積した状態ではなく、分散した状態で雰囲気(不活性ガス)と接する時間が長い方が、樹脂が含む空気と不活性ガスとの置換が進行するものと考えられるため、調整板を設けた場合、1回の自由落下で50cm以上落下する場合よりもゆっくりとホッパーシュート内を落下するため、空気の置換効率が高くなる。
【0033】
しかし、本発明が対象とするポリカーボネート樹脂は粒径の小さい粉粒体形状であるため、ペレットのような形状と比較すると空気抵抗が大きく、自由落下のスピードが小さいため、自由落下のみによっても空気が不活性ガスと置換される。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
以下の材料及び機器を用い、実施例及び比較例を実施した。
材料:フレーク形状ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ユーピロン(登録商標)E−2000F(比表面積1.24mm/g)
ペレット形状ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ユーピロン(登録商標)E−2000Fを下記実施例1に記載の方法で押し出してペレット状にしたもの(比表面積0.003mm/g)
なお、実施例及び比較例における試料の比表面積は、試料を110℃、真空下(約1.3Pa以下)で3時間減圧加熱処理を行った後、カンタークローム社製・オートソーブ1MPにて、液体窒素温度下で吸着等温線(吸着ガス:クリプトン)を測定し、得られた吸着等温線を用いてBET多点法にて求めた。
二軸押出機:東芝機械(株)製 37mm二軸押出機 TEM-37BS
単軸押出機:田辺プラスチックス(株)製 40mm単軸押出機VS-40-32
定量フィーダー:(株)クボタ製 ベルトウェイングフィーダ ワイドレンジ B−WF
酸素濃度計:東レ(株)製 ジルコニア式酸素濃度計 LC-750L
射出成形機:(株)ソディックプラステック製TR100EH 試験片:L=100mmの棒状成形品
日本電色工業(株)製 長光路透過色計 ASA-I: 光路長100mmの透過率およびJIS K7105に準拠した、YI(黄色指数)値測定 (光源:C/2)
【0035】
(実施例1)
図1に示した構成において、定量フィーダーの材料供給口から二軸押出機の材料供給口までの距離(高さ)を85cmに設定した。略気密性を有するホッパーシュートを用い、二軸押出機の材料供給口近傍から上向きに不活性ガス(窒素ガス 純度99.9%)を35リットル/minの流量で供給した。二軸押出機の材料供給口近傍で、窒素ガスの供給口と対応する位置に設けた酸素濃度計により、ホッパーシュート内の酸素濃度を測定し、酸素濃度が0.1%未満であることを確認した。
フレーク形状のポリカーボネート樹脂を定量フィーダーにより、窒素置換されたホッパーシュートに供給した。ポリカーボネート樹脂は、押出機に飢餓供給されるようにした。押出機のバレル設定温度を320℃、吐出量を50kg/時間、スクリュー回転数を400rpmとして押し出し、ペレット状の成型材料を製造した。
【0036】
(実施例2)
ホッパーシュート内の酸素濃度が1.0%となる様に窒素ガス置換を行った以外は実施例1と同様にしてペレットを製造した。
(実施例3)
ホッパーシュート内の酸素濃度が2.0%となる様に窒素ガス置換を行った以外は実施例1と同様にしてペレットを製造した。
(実施例4)
フィーダーの材料供給口から押出機の材料供給口までの距離(高さ)を65cmに設定したこと以外は実施例1と同様にしてペレットを製造した。
(実施例5)
窒素ガスの供給をホッパーシュートの上部から行ったこと以外は実施例1と同様にしてペレットを製造した。
(実施例6)
図1に示した構成において、定量フィーダーの材料供給口から単軸押出機の材料供給口までの距離(高さ)を80cmに設定した。略気密性を有するホッパーシュートを用い、単軸押出機の材料供給口近傍から上向きに不活性ガス(窒素ガス 純度99.9%)を35リットル/minの流量で供給した。単軸押出機の材料供給口近傍で、窒素ガスの供給口と対応する位置に設けた酸素濃度計により、ホッパーシュート内の酸素濃度を測定し、酸素濃度が0.1%未満であることを確認した。
フレーク形状のポリカーボネート樹脂を定量フィーダーにより、窒素置換されたホッパーシュートに供給した。押出機のバレル設定温度を320℃、吐出量を15kg/時間、スクリュー回転数を60rpmとして押し出し、ペレット状の成型材料を製造した。
【0037】
(比較例1)
ホッパーシュート内の雰囲気を窒素置換しないこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを製造した。ホッパーシュート内の酸素濃度は21%であった。
(比較例2)
ホッパーシュート内の雰囲気中の酸素濃度が5.0%となるように窒素置換したこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを製造した。
(比較例3)
ホッパーシュート内の鉛直落下距離を25cmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを製造した。
(比較例4)
ペレット形状の材料を用いたこと以外は、比較例1と同様にしてペレットを製造した。ホッパーシュート内の酸素濃度は21%であった。
(比較例5)
ペレット形状の材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを製造した。
(比較例6)
ペレット形状の材料を用いたこと以外は、比較例3と同様にしてペレットを製造した。
(比較例7)
ホッパーシュート内の雰囲気を窒素置換しないこと以外は、実施例6と同様にしてペレットを製造した。ホッパーシュート内の酸素濃度は21%であった。
【0038】
(評価)
得られたペレットから、射出成型機により長さ100mmの棒状試験片を成形し、一端面を光源(C/2)で照射し、対向する端面からの出射光を用いて、長光路透過色計により、JIS K7105に準拠したYI(黄色指数)値と、光路長100mmの透過率(波長460nm)とを測定した。
【0039】
評価結果を表1に示す。
【表1】

【0040】
表1から明らかなように、本発明の製造方法によれば、簡単な構成で、粉粒体状のポリカーボネート樹脂の酸化劣化を効果的に抑制することが可能である。特に、酸素濃度が2.0%程度あっても、酸化劣化を十分に抑制することが可能であり、ホッパーシュート内の不活性ガス供給制御も容易である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比表面積が0.01mm/g以上で、50wt%以上が200〜2000μmの粒径を有する粉粒体形状のポリカーボネート樹脂から押出機で樹脂成形材料を製造するポリカーボネート樹脂成形材料の製造方法であって、
前記粉粒体形状のポリカーボネート樹脂を、酸素濃度が3%以下の不活性ガス雰囲気中で50cm以上落下させてから前記押出機に供給することを特徴とする、ポリカーボネート樹脂成形材料の製造方法。
【請求項2】
前記押出機の材料供給口に接続されたホッパーシュート内を酸素濃度が3%以下の不活性ガス雰囲気とし、前記粉粒体形状のポリカーボネート樹脂を、前記ホッパーシュート内を50cm以上落下する位置から前記ホッパーシュートへ供給することを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート樹脂成形材料の製造方法。
【請求項3】
前記粉粒体形状のポリカーボネート樹脂が前記ホッパーシュート内を段階的に落下して前記材料供給口に到達するように、前記ホッパーシュートの内面に、先端が下方へ傾斜した板状の部材を設けることを特徴とする請求項2記載のポリカーボネート樹脂成形材料の製造方法。
【請求項4】
前記不活性ガスを、前記ホッパーシュートの下部から供給することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のポリカーボネート樹脂成形材料の製造方法。
【請求項5】
前記押出機が二軸押出機であり、前記粉粒体形状のポリカーボネート樹脂を前記押出機に飢餓供給することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリカーボネート樹脂成形材料の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の製造方法で得られるポリカーボネート樹脂成型材料。
【請求項7】
請求項6に記載のポリカーボネート樹脂成形材料を成形してなるポリカーボネート樹脂成形品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−37164(P2011−37164A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187474(P2009−187474)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】