説明

ポリカーボネート樹脂組成物

【課題】ヤケ、シルバーなどの外観不良がなく、衝撃特性の良好な成型品を与え、流動性や離型性等の成形性に優れたポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成型品を提供する。
【解決手段】(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、(B)ポリオールにより表面処理された酸化チタン粒子1〜22質量部、及び(C)メトキシ基を有するオルガノポリシロキサン0.01〜0.75質量部を含むポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成型品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる成型品に関し、特にヤケ、シルバーなどの外観不良がなく、衝撃特性の良好な成型品を与え、流動性や離型性等の成形性に優れたポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成型品に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクターの高出力化によりハウジングに遮光性が求められている。
また、外観に意匠性が求められるとともに、環境配慮の観点から無塗装化も求められている。
そのほか、液晶プロジェクターに限らず、パソコン、通信機器端末装置等の各種製品でも意匠性、特に白色性が求められている。
上記電子・電気機器筐体を白色に着色するには、酸化チタンが多く使用されている。
しかしながら、酸化チタンは、ポリカーボネート(PC)樹脂を分解し易いため、単純に着色材として使用するには、表面コーティング処理などの分解防止措置をとる必要がある。
また、白色、無塗装化を図る上で、材料面で良外観を得るための技術開発が求められている。
良外観を得るためには、滞留熱安定性の向上、更には製品の小型化に伴い衝撃強度の向上も求められている。
【0003】
PC樹脂/酸化チタン系では、上記のように、酸化チタンの影響によりPC樹脂が分解するため、PC樹脂の分子量低下、成形時のシルバー発生が問題となっている。
また、PC樹脂の分解物等の影響により、成形時にヤケ・黒点の発生も誘発すると考えられる。
PC樹脂の分解等を防止するために、酸化チタンの改質が検討されている。
特許文献1では、一般的にPC樹脂に適しているとされるポリシロキサン被覆の酸化チタンが検討されている。
特許文献2においても、ポリシロキサン被覆の酸化チタンが検討されている。
また、特許文献3及び4は、酸化チタンを含むPC樹脂組成物に関するものであるが、酸化チタンはシロキサン被覆のもののみが検討されている。
しかしながら、本発明者らの検討によると、ポリシロキサン被覆の酸化チタンを用いると成形時に外観上問題となるシルバーの発生がみられ、シルバーを抑制することはできない。
また、本願のポリオールにより表面処理された酸化チタンに関する検討は今日までなされていない。
特許文献5及び6等の多くの先行技術で難燃化のために用いられる有機スルホン酸の金属塩化合物は、パーフルオロブタンスルホン酸の金属塩がほとんどであり、本願発明においては、高い衝撃強度が得られず、酸化チタンについてはシロキサン被覆酸化チタンしか評価されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−37090号公報
【特許文献2】特開2006−77114号公報
【特許文献3】特開2007−191499号公報
【特許文献4】特開2005−15657号公報
【特許文献5】特開2006−8132号公報
【特許文献6】特開2003−183428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、成形時に酸化チタンの影響により、成形品表面に発生するシルバーなどの外観不良を低減すると共に、衝撃特性の良好な成型品を与え、流動性や離型性等の成形性に優れたポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成型品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、芳香族ポリカーボネート樹脂に、ポリオールにより表面処理された酸化チタンとメトキシ基を有するオルガノポリシロキサンを配合することにより、成形品表面に発生するシルバーなどの外観不良が低減し、更には衝撃特性の良好な成型品を与え、流動性や離型性等の成形性に優れたポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成型品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、(B)ポリオールにより表面処理された酸化チタン粒子1〜22質量部、及び(C)メトキシ基を有するオルガノポリシロキサン0.01〜0.75質量部を含むポリカーボネート樹脂組成物、
(2)(C)成分の量が(B)成分の2〜10質量%である上記1に記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(3)更に、(D)無機充填材として、タルク及び/又はマイカを1〜8質量部含む上記1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(4)更に、(E)難燃剤として、パラトルエンスルホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、並びに、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体型難燃剤から選ばれる少なくとも1種以上を0.01〜1質量部含む上記1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(5)更に、(F)含フッ素滴下防止剤を0.1〜0.7質量部含む上記1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(6)更に、(G)リン系酸化防止剤及び/又はフェノール系酸化防止剤を0.01〜1質量部含む上記1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(7)更に、(H)カーボンブラックを0.00001〜0.1質量部含む上記1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(8)上記1〜7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品、
(9)電気・電子機器用部品である上記8に記載の成形品、
(10)電気・電子機器用筐体である上記9に記載の成形品
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリカーボネート樹脂にポリオールで表面処理された酸化チタンとメトキシ基を有するオルガノシロキサン化合物を配合することにより、成形時に発生するヤケ、シルバーなどの外観不良を顕著に低減することができる。
また、難燃化のために、金属塩系難燃剤やシリコーン系難燃剤としてポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体型難燃剤を配合してもシルバー低減効果を得ることができる。
更に、難燃剤として、特定のパラトルエンスルホン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、好ましくは特定のパラトルエンスルホン酸のアルカリ金属塩を使用することにより、高温成形での滞留熱安定性が向上する。更にまた、酸化防止剤として、特定のリン系酸化防止剤、好ましくは特定のホスファイト系酸化防止剤を使用することにより、高温成形での滞留熱安定性が飛躍的に向上する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)ポリオールにより表面処理された酸化チタン及び(C)メトキシ基を有するオルガノポリシロキサンを必須成分とするポリカーボネート樹脂組成物である。
【0010】
本発明の(A)成分である芳香族ポリカーボネート樹脂としては、特に制限はなく種々のものが挙げられ、通常、2価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される芳香族ポリカーボネートを用いることができる。
例えば、2価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法又は溶融法、具体的には、2価フェノールとホスゲンの反応、2価フェノールとジフェニルカーボネートなどとのエステル交換反応により製造されたものを使用することができる。
【0011】
2価フェノールとしては、様々なものが挙げられるが、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4'−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンなどが挙げられる。
これらの中でも、特に好ましい2価フェノールとしては、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系、特にビスフェノールAを主原料としたものである。
この他、2価フェノールとしては、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等が挙げられる。これらの2価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、前記2価フェノールと共に適当な分岐剤を用いてもよく、この分岐剤としては、三価以上の多価フェノール、具体的には1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1−〔α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α’,α’−ビス(4”−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、フロログルシン、イサチンビス(o−クレゾール)などを挙げることができる。
また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル、又はハロホルメートなどであり、具体的にはホスゲン、2価フェノールのジハロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどが挙げられる。
【0012】
(A)成分であるPC樹脂の分子末端基として使用される分子量調節剤としては、通常、ポリカーボネートの重合に用いられるものであればよく、各種の一価フェノールを用いることができる。
具体的には、例えば、フェノール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、ブロモフェノール,トリブロモフェノール,ノニルフェノールなどが挙げられる。
【0013】
本発明のPC樹脂組成物においては、上記芳香族PC樹脂以外に、本発明の目的が損なわれない範囲で、ポリオルガノシロキサン部を有するポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体、テレフタル酸等の2官能性カルボン酸、又はそのエステル形成誘導体等のエステル前駆体の存在下でポリカーボネートの重合を行うことによって得られるポリエステル−ポリカーボネート樹脂等の共重合樹脂、或いはその他のポリカーボネート樹脂を適宣含有することができる。
【0014】
本発明の(A)成分は、高い衝撃強度を得るという点から、原料分子量(粘度平均分子量)[Mv]が17,000〜23,000であることが好ましい。
この粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ型粘度計を用いて、20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これより極限粘度[η]を求め、次式にて算出するものである。
[η]=1.23×10-5Mv0.83
【0015】
本発明のPC樹脂組成物には、(B)成分としてポリオールにより表面処理された酸化チタン粒子を配合する。
上記(B)成分のポリオールの被覆量は、酸化チタン粒子に対し0.5〜5質量%であるのが好ましく、被覆量がこの範囲にあれば、酸化チタン粒子の疎水化が十分となって、PC樹脂との親和性が良好となり、所望の効果が得られる。
好ましい被覆量は、0.5〜4質量%である。
ポリオールは、水分の吸着量をある程度まで低下させる効果も有する。
【0016】
本発明で用いることができるポリオールとしては、具体的には、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンエトキシレート、ペンタエリスリトール等が挙げられ、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンが好ましい。
【0017】
(B)成分の平均粒子径は、好ましくは0.05〜0.5μmである。
平均粒子径が上記範囲にあれば、遮光性及び光反射率が良好であると共に成形品表面にシルバー等が発生したり、衝撃強度の低下を生じ難い。
(B)成分の平均粒子径は、より好ましくは0.1〜0.5μmであり、更に好ましくは0.15〜0.35μmである。
【0018】
酸化チタン粒子は、塩素法で製造された酸化チタン粒子が好ましい。
塩素法で製造された酸化チタン粒子は、硫酸法で製造された酸化チタン粒子に比べて、白度等の点で優れている。
酸化チタン粒子の結晶形態としては、ルチル型の酸化チタン粒子が好ましく、アナターゼ型の酸化チタン粒子に比べ、白度、光線反射率及び耐候性の点で優れている。
【0019】
なお、一般に、市販されている酸化チタン粒子は、ハンドリングの観点から、通常、シリカ、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物により表面処理されている。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、かかる無機処理により酸化チタン粒子の分散性は向上するものの、成形品にシルバーが発生して外観不良を生じる。
同様に、ポリシロキサンで表面処理された酸化チタン粒子も成形品にシルバーが発生して外観不良を生じる。
【0020】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、1〜22質量部であり、好ましくは1〜18質量部、より好ましくは3〜15質量部である。
配合量が1質量部未満では、十分な遮光性(隠蔽性)が得られ難く、22質量部を超えると衝撃強度、難燃性が低下し易いという問題がある。
【0021】
本発明のPC樹脂組成物には、(C)メトキシ基を有するオルガノポリシロキサンを配合する。
(C)メトキシ基を有するオルガノポリシロキサンとしては、メトキシ基を有するものであれば特に限定されず、例えば、東レ・ダウコーニング製BY16−161、信越化学工業製KR−511等が挙げられる。
オルガノポリシロキサンがメトキシ基を有することで、ポリカーボネート樹脂の分子量低下を抑制するなどの効果を奏する。
【0022】
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.01〜0.75質量部であり、好ましくは0.01〜0.7、より好ましくは0.1〜0.5質量部である。
配合量が0.01質量部未満では、衝撃強度が低下し、高温成形滞留時に変色が起こり易く、0.75質量部を超えると金型への付着、難燃性の低下が起こり易いという問題がある。
また、(C)成分の量は、成形品表面にシルバーを発生させないためには、好ましくは(B)成分の2〜10質量%である。
【0023】
本発明のPC樹脂組成物には、所望により、更に、(D)無機充填材として、タルク及び/又はマイカを配合する。
タルクは、層状粘土鉱物の1つで、主成分は4SiO2・3MgO・H2Oで表され、「含水珪酸マグネシウム」と呼ばれる。
タルクは産地により、不純物等の組成が異なるが、Fe23或いはAl23等の不純物が多いと、得られる樹脂組成物の熱安定性等に悪影響を与えるので、これらの不純物が少ないタルクが好ましい。
【0024】
マイカは層状粘土鉱物の1つで、白雲母、黒雲母、金雲母、人造金雲母などがあり、主成分はSiO2であり、Si−O間は、共有結合で非常に強固である。
マイカの結晶はSiO正四面体が六角網目の板状に連なり、この板が二枚で一組となっている。
また、その板間に八面体位をとるイオン(例えば、Al3+、Mg2+)結合をしている。
これをタブレットと言い、これが層をなして積み重なっており、タブレット間にアルカリ金属又はアルカリ土類金属のイオン(例えば、K+)が、イオン結合で繋がっている。
このイオンは層間イオンと呼ばれ12個の酸素で囲まれている。
そして、この結合が非常に弱い為、マイカは板状に剥がれやすい。
タルク及びマイカの粒子径については、平均粒径が3〜12μmのものを使用すると、組成物の物性を犠牲にせず、外観が良好な樹脂組成物が得られるので好ましい。
なお、マイカの粒子径は、遠心沈降式粒度分布測定法で測定されたものである。
【0025】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、1〜8質量部であり、好ましくは2〜7質量部である。
(D)成分の配合量が上記範囲にあれば、得られる成型品は外観不良を生じることなく、機械的強度、寸歩安定性、難燃性などが向上する。
なお、(D)成分としては、タルクが好ましい。
【0026】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、(E)難燃剤として、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の有機スルホン酸塩、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体から選ばれる化合物を配合することが好ましい。
上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属(以下、両者を合わせて「アルカリ(土類)金属」と記載することがある)の有機スルホン酸塩としては、パーフルオロアルキルスルホン酸とアルカリ金属又はアルカリ土類金属との金属塩のようなフッ素置換アルキルスルホン酸の金属塩、並びに芳香族スルホン酸とアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩との金属塩等が挙げられる。
【0027】
アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムが挙げられ、前記アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムが挙げられる。
より好ましくはアルカリ金属である。
これらのアルカリ金属の中でも、難燃性と熱安定性の観点からカリウム及びナトリウムが好ましく、特にカリウムが好ましい。
カリウム塩と他のアルカリ金属からなるスルホン酸アルカリ金属塩とを併用することもできる。
【0028】
パーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩の具体例としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸カリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸カリウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、パーフルオロブタンスルホン酸リチウム、パーフルオロヘプタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸セシウム、パーフルオロブタンスルホン酸セシウム、パーフルオロオクタンスルホン酸セシウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸セシウム、パーフルオロブタンスルホン酸ルビジウム及びパーフルオロヘキサンスルホン酸ルビジウム等が挙げられ、これらは1種若しくは2種以上を併用して使用することができる。
ここでパーフルオロアルキル基の炭素数は、1〜18が好ましく、1〜10がより好ましく、更に好ましくは1〜8である。
これらの中で、特にパーフルオロブタンスルホン酸カリウムが好ましい。
【0029】
芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩の具体例としては、例えば、ジフェニルサルファイド−4,4’−ジスルホン酸ジナトリウム、ジフェニルサルファイド−4,4’−ジスルホン酸ジカリウム、5−スルホイソフタル酸カリウム、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、ポリエチレンテレフタル酸ポリスルホン酸ポリナトリウム、1−メトキシナフタレン−4−スルホン酸カルシウム、4−ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ジナトリウム、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,3−フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,4−フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(2,6−ジフェニルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリカリウム、ポリ(2−フルオロ−6−ブチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸リチウム、ベンゼンスルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ストロンチウム、ベンゼンスルホン酸マグネシウム、p−ベンゼンジスルホン酸ジカリウム、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸ジカリウム、ビフェニル−3,3’−ジスルホン酸カルシウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3,4’−ジスルホン酸ジカリウムな、α,α,α−トリフルオロアセトフェノン−4−スルホン酸ナトリウム、ベンゾフェノン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸ジナトリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸ジカリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸カルシウム、ベンゾチオフェンスルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホキサイド−4−スルホン酸カリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、及びアントラセンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物等が挙げられる。
これら芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩では、特にナトリウム塩及びカリウム塩が好適である。
【0030】
また、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体には特に制限はないが、好ましい具体例としては、(a)ポリオルガノシロキサン粒子40〜90質量部の存在下に、(b)多官能性単量体(f−1)100〜50質量%及びその他の共重合可能な単量体(f−2)0〜50質量%からなるビニル系単量体0.5〜10質量部を重合し、さらに(c)ビニル系単量体5〜50質量部[(a)、(b)及び(c)合わせて100質量部に対し]を重合して得られるポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体が挙げられる。
更に、好ましいポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、(a)ポリオルガノシロキサン粒子60〜80質量部の存在下に、(b)ビニル系単量体1〜5質量部を、更に(c)ビニル系単量体15〜39質量部を合計量が100質量部になるように重合して得られるものである。
【0031】
上記多官能性単量体(f−1)は、分子内に重合性不飽和結合を2つ以上含む化合物であり、具体例として、メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、フタル酸ジアリル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
これらの中では、経済性及び効果の点で、メタクリル酸アリルの使用が好ましい。
【0032】
上記共重合可能な単量体(f−2)の具体例としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、パラブチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有ビニル系単量体等が挙げられる。
これらは単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記(c)ビニル系単量体は、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を得るために使用される成分であり、更に該グラフト共重合体を芳香族ポリカーボネート樹脂に配合して難燃性及び耐衝撃性を改良する場合に、グラフト共重合体と芳香族ポリカーボネート樹脂との相溶性を確保して芳香族ポリカーボネート樹脂にグラフト共重合体を均一に分散させるために使用される成分でもある。
このため、(c)ビニル系単量体としては、該ビニル系単量体の重合体の溶解度パラメーターが9.15〜10.15[(cal/cm31/2]であり、更には9.17〜10.10[(cal/cm31/2]、特には9.20〜10.05[(cal/m31/2]であるように選ばれることが好ましい。
溶解度パラメーターが上記範囲にあると難燃性が向上する。
かかる溶解度パラメーターの詳細については、特開2003−238639号公報に記載されている。
【0034】
ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の平均粒子径は、電子顕微鏡観察から求めた値で0.1〜1.0μmであり、この平均粒子径が0.1〜1.0μmであると、十分な難燃性、剛性及び衝撃強度が得られる。
上記ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0035】
上記の(E)成分は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
特に、衝撃強度を高めるためには、パーフルオロアルキルスルホン酸とアルカリ金属又はアルカリ土類金属との金属塩のようなフッ素置換アルキルスルホン酸の金属塩を用いる場合は、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体との併用が好ましい。
(E)成分の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.01〜1質量部であり、好ましくは0.05〜0.8質量部、より好ましくは0.1〜0.5、更に好ましくは0.1〜0.3質量部である。
(E)成分の配合量が上記範囲にあれば、(E)成分の分散性が低下することなく、難燃性や耐衝撃性が良好となる。
また、(E)成分を配合することにより、成形時に発生するシルバーなどの外観不良を更に低減することができる。
なお、高温成形での熱安定性向上のためには、(E)成分としては、特定のパラトルエンスルホン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、好ましくは特定のパラトルエンスルホン酸のアルカリ金属塩、特にパラトルエンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0036】
本発明のPC樹脂組成物には、難燃性を向上させるために、(F)含フッ素滴下防止剤を配合することが好ましい。
(F)成分は、本発明の樹脂組成物に溶融滴下防止効果を付与し、優れた薄肉難燃性を発現させる。
(F)成分は、フィブリル形成能を有するものが好ましい。
ここで、「フィブリル形成能」とは、せん断力等の外的作用により、樹脂同士が結合して繊維状になる傾向を示すことをいう。
(F)成分としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等)等を挙げることができる。
これらの中では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。
フィブリル形成能を有するPTFEは、極めて高い分子量を有し、標準比重から求められる数平均分子量で、通常50万以上、好ましくは50万〜1500万、より好ましく100万〜1000万である。
具体的には、テトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウム或いはアンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、7〜700kPa程度の圧力下、温度0〜200℃程度、好ましくは20〜100℃で重合することによって得ることができる。
【0037】
また、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能であり、ASTM規格によりタイプ3に分類されるものを用いることができる。
このタイプ3に分類される市販品としては、例えば、「テフロン6−J」[商品名、三井デュポンフロロケミカル(株)製]、「ポリフロンD−1」及び「ポリフロンF−103」[商品名、ダイキン工業(株)製]等が挙げられる。
また、タイプ3以外では、「アルゴフロンF5」[商品名、ソルベイ ソレクシス社製]、及び「ポリフロンMPAFA−100」[商品名、ダイキン工業(株)製]等が挙げられる。
上記PTFEは、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0038】
(F)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜0.7質量部程度であり、好ましくは0.2〜0.6質量部である。
(F)成分の配合量が上記範囲にあると、燃焼時にドリップすることがなく、薄肉難燃性を確保できると共に、溶融樹脂組成物の流動特性が低下せず、成形性が良好となる。
【0039】
本発明のPC樹脂組成物には、(G)酸化防止剤を配合することが好ましい。
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤及び/又はフェノール系酸化防止剤等が好適に用いられる。
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルノニルホスファイト、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(イソデシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、ジブチルハイドロジェンホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、4,4’−イソプロピリデンジフェノールドデシルホスファイト、4,4’−イソプロピリデンジフェノールトリデシルホスファイト、4,4’−イソプロピリデンジフェノールテトラデシルホスファイト、4,4’−イソプロピリデンジフェノールペンタデシルホスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジトリデシルホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリル−ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、3,4,5,6−ジベンゾ−1,2−オキサホスファン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルブチルホスフィン、ジフェニルオクタデシルホスフィン、トリス−(p−トリル)ホスフィン、トリス−(p−ノニルフェニル)ホスフィン、トリス−(ナフチル)ホスフィン、ジフェニル−(ヒドロキシメチル)−ホスフィン、ジフェニル−(アセトキシメチル)−ホスフィン、ジフェニル−(β−エチルカルボキシエチル)−ホスフィン、トリス−(p−クロロフェニル)ホスフィン、トリス−(p−フルオロフェニル)ホスフィン、ジフェニルベンジルホスフィン、ジフェニル−β−シアノエチルホスフィン、ジフェニル−(p−ヒドロキシフェニル)−ホスフィン、ジフェニル−1,4−ジヒドロキシフェニル−2−ホスフィン、フェニルナフチルベンジルホスフィン等が挙げられる。
【0040】
また、リン系酸化防止剤として、例えば、Irgafos168(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商標)、Irgafos12(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商標)、Irgafos38(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商標)、ADK Stab C(株式会社ADEKA製、商標)、ADK Stab 329K(株式会社ADEKA製、商標)、ADK Stab PEP36(株式会社ADEKA製、商標)、ADK Stab PEP−8(株式会社ADEKA製、商標)、JC263(城北化学工業株式会社製、商標)、Sardstab P−EPQ(クラリアント社製、商標)、Weston 618(GE社製、商標)、Weston 619G(GE社製、商標)及びWeston 624(GE社製、商標)等の市販品を挙げることができる。
【0041】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等のヒンダードフェノール類が挙げられる。
これら酸化防止剤の中では、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のペンタエリスリトールジホスファイト構造を持つものやトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0042】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、Irganox1010(チバ・ジャパン株式会社製、商標)、Irganox1076(チバ・ジャパン株式会社製、商標)、Irganox1330(チバ・ジャパン株式会社製、商標)、Irganox3114(チバ・ジャパン株式会社製、商標)、Irganox3125(チバ・ジャパン株式会社製、商標)、BHT(武田薬品工業株式会社製、商標)、Cyanox1790(サイアナミド社製、商標)及びSumilizerGA−80(住友化学株式会社製、商標)等の市販品を挙げることができる。
【0043】
(G)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.01〜1質量部程度であり、好ましくは0.1〜0.3質量部、より好ましくは0.05〜0.3質量部である。
(G)成分の配合量が上記範囲にあると、造粒工程・成形工程での熱安定性を維持でき、分子量低下を引き起こし難い。
なお、高温成形での熱安定性向上のためには、(G)成分としては、ホスファイト系酸化防止剤が特に好ましい。
【0044】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、衝撃強度向上の目的で、(H)カーボンブラックを配合することが好ましい。
カーボンブラックとしては、MA100(三菱化学株式会社製、商標)等の市販品を挙げることができる。
【0045】
(H)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.00001〜0.1質量部程度であり、好ましくは0.001〜0.01質量部である。
(H)成分の配合量が上記範囲にあると、衝撃強度が向上する。
【0046】
本発明のPC樹脂組成物には、離型性を向上させるために、(I)離型剤を配合することが好ましい。
離型剤としては、ポリカーボネート樹脂に配合して成形時の離型性を改善できるものであれば、特に限定されるものではない。
とりわけ、蜜蝋、グリセリンモノステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、モンタン酸エステルワックス、カルボン酸エステル等有機化合物が優れた離型性を示し、好適に使用される。
これらは例えば、三木化学工業社の蜜ロウ・ゴールデンブランド、理研ビタミン社のリケマールS− 100A、SL−900、リケスターEW−440A、コグニスジャパン社のロキシオールVPG861 、クラリアントジャパン社のリコワックスE 、コグニスジャパン社のロキシオールEP−32等が挙げられる。
【0047】
(I)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.5〜1.5質量部程度が好ましい。
(I)成分の配合量が上記範囲にあれば、離型性が良好であると共に、溶融樹脂組成物の流動特性が低下せずに成形性が良好となる。
【0048】
更に、その他の合成樹脂、エラストマー、熱可塑性樹脂に常用されている添加剤成分を必要により含有させることもできる。
これらの添加剤としては帯電防止剤、ポリアミドポリエーテルブロック共重合体(永久帯電防止性能付与)、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の光安定剤(耐候剤)、可塑剤、抗菌剤、相溶化剤及び着色剤(染料、顔料)等が挙げることができる。
上記の任意成分の配合量は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の特性が維持される範囲であれば特に制限はない。
【0049】
次に、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、前記の各成分(A)〜(H)、必要に応じて(I)成分を上記割合で、更に必要に応じて用いられる各種任意成分を適当な割合で配合し、混練することにより得られる。
配合及び混練は、通常用いられている機器、例えば、リボンブレンダー、ドラムタンブラーなどで予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機及びコニーダ等を用いる方法で行うことができる。
混練の際の加熱温度は、通常、240〜320℃の範囲で適宜選択される。
この溶融混練成形としては、押出成形機、特に、ベント式の押出成形機の使用が好ましい。
尚、ポリカーボネート樹脂以外の含有成分は、あらかじめ、ポリカーボネート樹脂又は他の熱可塑性樹脂と溶融混練、即ち、マスターバッチとして添加することもできる。
【0050】
本発明のPC樹脂組成物は、上記の溶融混練成形機、又は、得られたペレットを原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法及び発泡成形法等により各種成形品を製造することができる。
特に、得られたペレットを用いて、射出成形及び射出圧縮成形による射出成形品の製造に好適に用いることができる。
本発明のPC樹脂組成物からなる成型品は、例えば、
(1)テレビ、ラジオカセット、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダ、オーディオプレーヤー、DVDプレーヤー、エアコンディショナ、携帯電話、ディスプレイ、コンピュータ、レジスター、電卓、複写機、プリンター、ファクシミリ等の電気・電子機器用部品、
(2)上記1の電気・電子機器用の筐体等として好適に用いることができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明について実施例及び比較例を示してより具体的に説明するが、本発明はこれらによって、何ら制限されるものではない。
性能評価方法及び用いた成形材料を次に示す。
〔性能評価方法〕
(1)シルバー評価
射出成形機(東芝機械EC40N)を用いてシリンダ温度340℃において、シリンダ内で樹脂組成物を20分間滞留させた後、長さ40mm、幅80mm、厚さ4mmの試験片を成形した。
試験片の外観を目視してシルバーの発生の有無を評価し、試験片表面に、シルバーが生じた場合を×、シルバーが発生しなかった場合を○とした。
(2)曲げ強度(MPa)
射出成形機(東芝機械IS−100EN)を用い、シリンダ温度280℃、金型温度80℃で試験片を作製し、ASTM D790に準拠して測定した。
(3)引張降伏強度(MPa)
射出成形機(東芝機械IS−100EN)を用い、シリンダ温度280℃、金型温度80℃で試験片を作製し、ASTM D638に準拠して測定した。
(4)熱安定性評価(色差 ΔE)
射出成形機(東芝機械株式会社製 EC40N)にて、120℃で5時間の乾燥を行った樹脂組成物を使用し、シリンダ温度340℃、360℃において、シリンダ内で樹脂組成物を20分間滞留させた後、長さ40mm、幅80mm、厚さ4mmの試験片を成形した。20分間滞留前後の成形品の色差をSZ−Σ90(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。
(5)IZOD(アイゾット衝撃強度)
120℃で5時間乾燥した原料ペレットを使用して、試験片を射出成形機(東芝機械株式会社製 IS−100EN、成形温度280℃、金型温度80℃)を用いて作製し、ASTM D256に準拠し23℃で測定した。
肉厚1/8インチの5本試験を行い、その平均値を示した。単位:kJ/m2
(6)燃焼性
UL94燃焼試験に準拠して測定した。
試験片厚みは1.5mm、1.2mmで、アンダーライターズラボラトリー・サブジェクト94に従って垂直燃焼試験を行った。
【0052】
〔成形材料〕
(A)成分
A−1:芳香族ポリカーボネート樹脂[出光興産(株)製、「FN1500」、Mv=14,500]
A−2:芳香族ポリカーボネート樹脂[出光興産(株)製、「FN1700A」、Mv=17,000]
A−3:芳香族ポリカーボネート樹脂[出光興産(株)製、「FN1900A」、Mv=19,500]
【0053】
(B)成分
B−1:CR−60−2;ポリオールにより被覆された酸化チタン粒子(石原産業(株)製、平均粒子径 0.21μm)
B−2:CR−50−2;ポリオールにより被覆された酸化チタン粒子(石原産業(株)製、平均粒子径 0.25μm)
B−3:CR−90−2;ポリオールにより被覆された酸化チタン粒子(石原産業(株)製、平均粒子 0.25μm)
B−4:PF726;表面がシリカ・アルミナ(合計5〜6質量%)で被覆された酸化チタン粒子(石原産業(株)製、平均粒子径 0.21μm)
B−5:PC−3;PF−726をポリシロキサンで被覆したもの(石原産業(株)製、平均粒子径 0.21μm)
【0054】
(C)成分(メトキシ基を有するオルガノポリシロキサン)
C−1:メトキシ変性シリコーンBY16−161(東レ・ダウコーニング社製)
(D)成分(タルク)
D−1:TP−A25(富士タルク工業社製;平均粒径;4.9μm)
(E)成分(難燃剤)
E−1:パーフルオロブタンスルホン酸カリウム(商品名:エフトップKFBS、株式会社ジェムコ製)
E−2:パラトルエンスルホン酸ナトリウム(DAH DIING CHEMICAL INDUSTRY製、純度93%以上、不純物として硫酸ナトリウム3質量%以下、水分5質量%以下〕
E−3:ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体型難燃剤(商品名:MR−01、株式会社カネカ製)
【0055】
(F)成分(含フッ素滴下防止剤)
F−1:CD076(旭硝子株式会社製)
(G)成分(酸化防止剤)
G−1:JC263(城北化学工業株式会社製;トリフェニルホスフィン)
G−2:Irgafos168(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製;トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト)
G−3:Irganox1076(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)
G−4:ADK Stab C(株式会社ADEKA製、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスファイト)
(H)成分(カーボンブラック)
H−1:MA100(三菱化学株式会社製)
(I)成分(離型剤)
I−1:S−100A(理研ビタミン株式会社製;グリセリンモノステアレート)
I−2:EW−440A(理研ビタミン株式会社製;ペンタエリストールテトラステアレート)
【0056】
実施例1〜20及び比較例1〜21
表1〜3に示す割合で各成分を混合し、ベント式二軸押出成形機〔東芝機械社製:TEM35〕に供給し、バレル温度280℃、スクリュ回転数300〜600回転、吐出量30kg/hrにて溶融混練し、評価用ペレットサンプルを得た。
この評価用ペレットサンプルを用いて、射出成形機にて、シリンダー温度280〜340℃で各試験を行うための試験片を作製し、各試験を行った。
その結果を表1〜3に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
表1及び表2より下記のことが判明した。
実施例1乃至実施例15では全てシルバーの発生がなく、曲げ強度及び引張降伏強度のバランスに優れる成型品を与えるポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
比較例1〜12では、全てシルバーが発生した。
【0062】
【表5】

【0063】
【表6】

【0064】
表3より下記のことが判明した。
高温成形での熱安定性向上のためには、(E)成分としては、パラトルエンスルホン酸のアルカリ金属塩、特にパラトルエンスルホン酸ナトリウムが好ましく、(G)成分としては、ホスファイト系酸化防止剤が好ましい。
また、(I)成分を添加すると、衝撃強度が向上する。
更に、1.5mmV−0/1.5mm5VBの薄肉難燃性が達成された。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のPC樹脂組成物からなる成型品は、シルバーなどの外観不良がなく、衝撃特性、流動性や離型性等の成形性に優れるため、例えば、電気・電子機器用部品、電気・電子機器用の筐体(液晶プロジェクターハウジング、パソコンハウジング、通信機器端末装置ハウジングなど)等として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、(B)ポリオールにより表面処理された酸化チタン粒子1〜22質量部、及び(C)メトキシ基を有するオルガノポリシロキサン0.01〜0.75質量部を含むポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
(C)成分の量が(B)成分の2〜10質量%である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
更に、(D)無機充填材として、タルク及び/又はマイカを1〜8質量部含む請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
更に、(E)難燃剤として、パラトルエンスルホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、並びに、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体型難燃剤から選ばれる少なくとも1種以上を0.01〜1質量部含む請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
更に、(F)含フッ素滴下防止剤を0.1〜0.7質量部含む請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
更に、(G)リン系酸化防止剤及び/又はフェノール系酸化防止剤を0.01〜1質量部含む請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
更に、(H)カーボンブラックを0.00001〜0.1質量部含む請求項1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
【請求項9】
電気・電子機器用部品である請求項8に記載の成形品。
【請求項10】
電気・電子機器用筐体である請求項9に記載の成形品。

【公開番号】特開2011−174031(P2011−174031A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124932(P2010−124932)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】