説明

ポリカーボネート繊維の製造方法

【課題】細繊度のポリカーボネートを含む繊維を安定して製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明のポリカーボネート繊維の製造方法は、加熱溶融されたポリカーボネートを、ノズル吐出口から35℃以上前記ポリカーボネートのガラス転移点未満の雰囲気温度で、かつ気体雰囲気中に紡出し、フィラメントを得る。気体雰囲気は、風速1〜3m/minの範囲であることが好ましい。これにより、繊維形成された紡糸直後のポリマーの冷却を遅くし、冷却速度を緩和することにより、ポリカーボネート繊維特有の脆化現象が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネートを含む成分を少なくとも含む細繊度の繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、エンジニアリングプラスチックとして大量に使用されている。ポリカーボネートを用いた繊維は、これまでに種々の構成のものが提案されており、優れた透明性を活かし、光ファイバーのような特殊な用途にも使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリカーボネートを溶融紡糸にて紡糸し繊維化すること、及び繊維を加熱延伸して繊維を配向せしめれば、繊維性能の優れたポリカーボネート単一繊維が得られることが開示されている。この繊維は、織物、衣類、工業用繊維として利用出来るとされている。
【0004】
特許文献2は、ポリカーボネートからなる成分とエラストマー性ポリウレタンからなる成分がそれらの長さに沿って接着している複合繊維が開示されている。この繊維は、らせん状に捲縮された2成分織物フィラメントおよびこれからつくられる織物製品を得ることを目的としている。
【0005】
特許文献3は、ポリカーボネート成分中にポリプロピレン成分よりなる極細繊維が束状をなして分散配列されているポリカーボネート繊維が開示されている。この繊維は、ポリカーボネートにポリプロピレンをペレットの段階で加え、均一に混合溶融し、溶融紡糸して得られた繊維であり、ポリカーボネート成分中に発生したクレイズ(配向)の伝播を遮断、若しくはクレイズの発生を防止する効果を奏し、ポリカーボネート繊維の脆化を抑制する作用・効果を奏するものである。
【0006】
特許文献4は、芯部が熱可塑性ポリマーを含み、鞘部がポリオレフィンを含む芯鞘型複合繊維が開示されている。この繊維は、芯成分と鞘成分のなじみ性が良好であり、さらに、ゴム組成物等の弾性組成物ともなじみ性が良好であり、弾性材の補強に好適に利用できるものである。
【0007】
特許文献5は、ポリカーボネートを紡糸孔から溶融紡糸すると同時に隣接した気体吐出孔から高温高速の気体を噴射して極細繊維流とし、シート状に捕集された不織布が開示されている。
【特許文献1】特公昭37−018328号公報
【特許文献2】特公昭48−013730号公報
【特許文献3】特開昭51−072610号公報
【特許文献4】特開2003−193332号公報
【特許文献5】特開平5−279947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ポリカーボネートを用いた単一成分の繊維は、例えば、特許文献1に、繊度75デニールのポリカーボネート繊維が開示されている。特許文献2は、繊度105デニールのポリカーボネートとエラストマー性ポリウレタンとの芯鞘型複合繊維又は並列型複合繊維を製造する方法を開示している。特許文献3はポリカーボネートとポリオレフィンとを混合した海島構造の繊維を開示している。引用文献4は、熱可塑性ポリマーとポリオレフィンからなる芯鞘型複合繊維の一例として、ポリカーボネートを芯成分とし、ポリオレフィンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維が開示されているものの、ポリカーボネートを含む繊維の製造における問題点、及び細繊度のポリカーボネート芯鞘型複合繊維を製造する具体的な方法を示していない。引用文献5はメルトブローによる平均繊維径12ミクロン以下のポリカーボネート繊維からなる長繊維不織布を開示している。
【0009】
以上のように、ポリカーボネート繊維については、様々な研究がなされ、ポリカーボネートの単一繊維、複合繊維が提案されている。しかし、ポリカーボネートを用いた不織布等に使用する細繊度の繊維は、今まで実用化されてこなかった。その理由は、紡出直後にポリカーボネート成分が脆化しやすく、糸切れが発生しやすくなり、細繊度の繊維を得ることが困難であったからである。また、特許文献5のように同時に隣設した気体吐出孔から高温高速の気体を噴出するいわゆるメルトブローン法によれば、細繊度化は可能であるが、一般に得られる不織布は強力が低く、用途も限定されるという問題があった。
【0010】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、細繊度のポリカーボネートを含む繊維を安定して製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のポリカーボネート繊維の製造方法は、加熱溶融されたポリカーボネートを、ノズル吐出口から35℃以上前記ポリカーボネートのガラス転移点未満の雰囲気温度で、かつ温風雰囲気中に紡出し、フィラメントを得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、加熱溶融されたポリカーボネートを、ノズル吐出口から35℃以上前記ポリカーボネートのガラス転移点未満の雰囲気温度で、かつ温風雰囲気中に紡出し、フィラメントを形成することにより、繊維形成されたポリマーの冷却を遅くし、比較的細繊度のポリカーネート繊維を得ることができる。紡出直後のポリカーボネート成分の温度低下を緩和することにより、ポリカーボネート繊維特有の脆化現象が抑制され、糸切れが発生し難くなる。すなわち、繊維形成された紡糸直後のポリマーの冷却を遅くし、冷却速度を緩和することにより、ポリカーボネート繊維特有の脆化現象が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
一般にポリエステル繊維やポリオレフィン繊維は、ノズル吐出口から紡出フィラメントを10〜25℃程度の雰囲気中へ紡出し、フィラメントを引き取る。これは、紡出直後に、フィラメント同士が融着するのを防止するためである。しかし、ポリエステル繊維やポリオレフィン繊維と同様に紡出フィラメントを10〜25℃程度の雰囲気中へ紡出しポリカーボネートを繊維化すると、紡出直後にポリカーボネート成分が脆化しやすく、細繊度の繊維は得られなかった。そこで、本発明者は、細繊度のポリカーボネート成分を含む細繊度の繊維を得る方法を検討し、特定温度の風を吹き出す雰囲気中に紡出すれば、脆化現象を抑制することができ、ポリカーボネート成分を含む細繊度の繊維が得られることを見出した。
【0014】
本発明のポリカーボネート繊維の製造方法は、加熱溶融されたポリマーをノズル吐出口から35℃以上ガラス転移点以下に保持できる雰囲気中に紡出し、フィラメントを形成する。このような方法でポリカーボネート繊維成分を少なくとも含む繊維を製造すれば、繊度が0.1〜20dtexである繊維を容易に得ることができる。本発明の加熱溶融されたポリマーは、ポリカーボネート繊維を構成する成分が加熱溶融されたポリマーをいい、本発明の加熱溶融されたポリマーは、ポリカーボネートを50質量%以上含む成分を少なくとも構成成分とするとよい。
【0015】
ポリマーを紡出する雰囲気温度は、35℃以上ポリカーボネートのガラス転移点未満であり、好ましい下限は、40℃であり、好ましい上限は、ポリカーボネートのガラス転移点より10℃以上低い温度である。例えば、一般的なポリカーボネートを用いる場合には、ポリマーを紡出する雰囲気温度は、35℃〜140℃としてよい。35℃以上の雰囲気中に加熱溶融されたポリマーを紡出すると、ポリカーボネート成分が冷めにくく、脆化を抑制することができ、紡出後のドラフト率を大きくすることができるので、細繊度の繊維を得ることができる。また、雰囲気温度がガラス転移点未満であると、適度な流動性を有し、可紡性がよくなる。また、ポリカーボネート繊維が芯鞘型複合繊維である場合は、フィラメント同士の融着の観点から、雰囲気温度を鞘成分の融着温度より10℃以上低い温度にすることが好ましい。ここで、ガラス転移点は、繊維製造前の樹脂について、示差走査熱量計(DSC)を用いて、−20℃から200℃まで昇温速度10℃/minで昇温した時のガラス転移温度をいう。
【0016】
ポリマーを紡出する雰囲気は、気体雰囲気であり、好ましくは温風雰囲気である。温風は、35℃以上の温風を紡糸筒の上方から風速1〜3m/minの範囲で吹き出すのが好ましく、温風は、紡糸筒のチムニー上方から吹き出すのがより好ましい。紡出する雰囲気が気体雰囲気であると、気体の流動性の観点から、雰囲気中の温度管理がしやすい。また、ポリマーを紡出する際の未延伸糸の引き取り速度は150〜850m/minの範囲で適宜選択できる。
【0017】
本発明のポリカーボネート繊維は、ポリカーボネートを含む成分のみから構成される単一繊維、又は他の成分を構成成分として含む複合繊維であってよい。また、加熱溶融されたポリマーは、ポリカーボネートを50質量%以上含む成分を少なくとも含むポリマーであってよい。つまり、ポリカーボネート繊維が単一繊維である場合は、加熱溶融されたポリマーは、ポリカーボネートを50質量%以上含む成分のみからなるポリマーであってよく、ポリカーボネート繊維が複合繊維である場合は、加熱溶融されたポリマーは、ポリカーボネートを50質量%以上含む成分と他の成分を含むポリマーであってよい。
【0018】
本発明のポリカーボネート繊維は、ポリカーボネートを50質量%以上含む成分を少なくとも含むことが好ましく、より好ましくは、ポリカーボネートを60質量%〜100質量%含む成分を少なくとも含み、さらに好ましくは、ポリカーボネートを70質量%〜100質量%含む成分を少なくとも含む。ポリカーボネートを含む成分中に、ポリカーボネートが50質量%以上であると、耐熱性、耐衝撃性を得やすく、ポリカーボネートの脆化現象が生じやすく、細繊度の繊維を得る場合には、特に本発明の製造方法が好適である。
【0019】
本発明のポリカーボネートは、JIS−K−7210に準じて、300℃、荷重11.76N(1.2kgf)で測定されるメルトフローレート(以下、MFRともいう)が20〜120g/10minであることが好ましく、より好ましいポリカーボネートのMFRは50〜80g/10minである。ポリカーボネートのMFRが比較的高いと、硬化する温度が低下することが予想され、さらに脆化現象を抑制できる。
【0020】
本発明のポリカーボネート繊維が、単一繊維、又は他の成分を構成成分として含む複合繊維である場合、ポリカーボネート成分は、ポリカーボネートに加えて他の成分を混合してもよい。他の成分として、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のオレフィン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6等のポリアミドなどのホモポリマーや共重合体、を用いてもよい。また、ポリカーボネートと他の成分とのポリマーアロイであってもよい。さらに、必要に応じて、ワックス、粘着材、又は難燃剤等の添加剤を添加してもよい。ポリカーボネートに加えて他の成分を混合することで、溶融または軟化温度を任意に調節することができる。
【0021】
ポリカーボネートに加えて他の成分を混合する場合は、公知の混合装置を用いて混合することができる。公知の装置は、例えば、ヘンシェルミキサーおよびスーパーミキサー等である。あるいは、ポリカーボネートに必要に応じて添加される他の成分を、公知の単軸または2軸押出機等で溶融混合して、繊維化の前に、第一成分をマスターバッチにすると好都合である。
【0022】
本発明のポリカーボネート繊維は、ポリカーボネートを50質量%以上含む成分と他の成分からなる複合繊維としてもよい。複合繊維の断面形態は、例えば、同心、偏心型の芯鞘型、並列型、分割型、海島型等が挙げられる。
【0023】
本発明のポリカーボネート繊維は、ポリカーボネートを50質量%以上含む成分を芯成分とし、熱可塑性ポリマーを50質量%以上含む成分を鞘成分とする芯鞘型複合繊維としてもよい。芯成分がポリカーボネートを含む成分であり、鞘成分が熱可塑性ポリマーを含む成分であると、さらに、細繊度の繊維を得ることができる。これは、芯成分のポリカーボネートを鞘成分が被覆し、ポリカーボネートを比較的冷めにくくし、脆化現象を抑制するためであると予想される。
【0024】
ポリカーボネート繊維が芯鞘型複合繊維である場合、芯成分はポリカーボネートを50質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは、芯成分はポリカーボネートを60質量%〜100質量%含むことであり、さらに好ましくは、芯成分はポリカーボネートを70質量%〜100質量%含むことである。芯成分のポリカーボネートが50質量%以上であると、耐熱性、耐衝撃性を得やすく、ポリカーボネートの脆化現象が生じやすく、細繊度の繊維を得る場合には、特に本発明の製造方法が好適である。
【0025】
また、ポリカーボネート繊維が芯鞘型複合繊維である場合、鞘成分は熱可塑性ポリマーを50質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは、鞘成分は熱可塑性ポリマーを70質量%〜100質量%含むことである。鞘成分の熱可塑性ポリマーが50質量%以上であると、鞘成分が芯成分のポリカーボネートをさらに冷めにくくする効果がある。鞘成分として用いられる熱可塑性ポリマーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のオレフィン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、ナイロン6等のポリアミドのホモポリマーまたは共重合体から1または2以上選択できる。中でも、鞘成分がポリオレフィン系ポリマーであることが好ましい。鞘成分が、これらのポリマーであると、芯成分を保温する効果がより顕著である。また、必要に応じて、ワックス、粘着材、又は難燃剤等の添加剤を添加してもよい。熱可塑性ポリマーに加えて他の成分を混合すると、溶融または軟化温度を任意に調節することができる。
【0026】
さらに、ポリカーボネート繊維が芯鞘型複合繊維である場合、芯/鞘複合比(容積比)は、2:8〜8:2であることが好ましく、より好ましくは、芯/鞘複合比は3:7〜7:3であり、さらに好ましくは、芯/鞘複合比は4:6〜6:4である。芯/鞘複合比がこの範囲であると、芯成分のポリカーボネートに起因する耐熱性、耐衝撃性を得やすく、十分な鞘成分があるので、鞘成分が芯成分を冷めにくくする効果も十分に得ることができる。
【0027】
本発明のポリカーボネート繊維は、ポリカーボネートを50質量%以上含む成分を第一成分とし、熱可塑性ポリマーを50質量%以上含む成分を第二成分とを構成成分として含み、繊維の断面において、少なくとも第一成分が他の成分により2以上のセグメントに区分されている分割型複合繊維であることが好ましい。分割型複合繊維の断面形態としては、例えば、放射状、多層状、十字状等が挙げられる。このような構成であると、さらに、細繊度の繊維を得ることができる。これは、第一成分と第二成分の界面で熱が伝わり、第一成分を冷めにくくし、脆化を抑制するためであると予想される。また、分割型複合繊維の形態であれば、分割型複合繊維に外力を加え、割繊させることで、さらに細繊度の繊維を得ることができる。
【0028】
そして、ポリカーボネート繊維が分割型複合繊維である場合、第一成分はポリカーボネートを50質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは、第一成分はポリカーボネートを60質量%〜100質量%含むことであり、さらに好ましくは、第一成分はポリカーボネートを70質量%〜100質量%含むことである。第一成分のポリカーボネートが50質量%以上であると、耐熱性、耐衝撃性を得やすく、ポリカーボネートの脆化現象が生じやすく、細繊度の繊維を得る場合には、特に本発明の製造方法が好適である。
【0029】
また、ポリカーボネート繊維が分割型複合繊維である場合、第二成分は熱可塑性ポリマーを50質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは、第二成分は熱可塑性ポリマーを70質量%〜100質量%含むことである。第二成分の熱可塑性ポリマーが50質量%以上であると、さらに脆化現象を抑制できる。第二成分として用いられる熱可塑性ポリマーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のオレフィン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、ナイロン6等のポリアミドのホモポリマーまたは共重合体から1または2以上選択できる。中でも、第二成分がポリオレフィン系ポリマーであることが好ましい。第二成分が、これらのポリマーであると、第一成分との相溶性が小さく、さらに分割性に優れる。
【0030】
さらに、ポリカーボネート繊維が分割型複合繊維である場合、複合比(容積比)は、2:8〜8:2であることが好ましく、より好ましくは、複合比は3:7〜7:3であり、さらに好ましくは、複合比は4:6〜6:4である。複合比がこの範囲であると、第一成分のポリカーボネートに起因する耐熱性、耐衝撃性を得やすく、第二成分が第一成分を冷めにくくする効果も十分に得ることができる。
【0031】
本発明のポリカーボネート繊維は、未延伸フィラメントのままでも使用できるが、延伸しても良い。延伸する場合は、熱水中でも良いし、空気雰囲気中で加熱ピンや熱ローラーを使用しても良い。延伸倍率は、1〜3倍が好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の内容について実施例を挙げて具体的に説明する。
【0033】
[軟化点]
繊維製造前の樹脂について、JIS−K−6863に準じて、測定した。
【0034】
[ガラス転移点]
繊維製造前の樹脂について、示差走査熱量計(DSC)を用いて、−20℃から200℃まで昇温速度10℃/minで昇温した時のガラス転移温度をガラス転移点とした。
【0035】
(試料1)
ポリカーボネートからなる単一繊維を製造した。ガラス転移点が約145℃、軟化点が240℃、JIS−K−7210に準じて測定温度300℃、測定荷重11.76N(1.2kgf)におけるメルトフローレートが70g/10minであるポリカーボネート(商品名:ノバレックス7020A、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)を、単一型ノズルを用い、紡糸温度285℃として溶融させ、ノズル吐出口から、45℃の温風吹き出し雰囲気(風速:2m/min)中に紡出し、450m/minの速度で引き取り、繊度11dtexの未延伸フィラメントを得た。紡糸中、フィラメントの糸切れは見られず、良好に紡糸できた。次に、未延伸フィラメントを90℃の熱水中で1.3倍に延伸し、繊度8.9dtexの延伸フィラメントとした。
【0036】
(試料2)
芯成分と鞘成分とから成る、図1に示すような、繊維断面を有する芯鞘型複合繊維を製造した。芯成分として、ガラス転移点が約145℃、軟化点が240℃、JIS−K−7210に準じて測定温度300℃、測定荷重11.76N(1.2kgf)におけるメルトフローレートが70g/10minであるポリカーボネート(商品名:ノバレックス7020A、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)を用意した。鞘成分として、融点が135℃、JIS−K−6922−2に規定される測定温度190℃、測定荷重21.18N(2.16kgf)におけるメルトフローレートが7g/10minであるポリエチレン(商品名:HF560、日本ポリエチレン(株)製)を用意した。これらの2つの成分を、芯鞘型複合ノズルを用い、芯/鞘複合比(容積比)を5/5とし、芯成分の紡糸温度を285℃、鞘成分の紡糸温度を270℃として溶融させ、ノズル吐出口から、40℃の温風吹き出し雰囲気(風速:2m/min)中に紡出し、750m/minの速度で引き取り、繊度11dtexの未延伸フィラメントを得た。紡糸中、糸切れは見られず、良好に紡糸できた。次に、前記未延伸フィラメントを90℃の熱水中で1.4倍に延伸し、繊度8.9dtexの延伸フィラメントとした。
【0037】
(試料3)
鞘成分として、融点が125℃、JIS−K−7210に規定される測定温度230℃、測定荷重21.18N(2.16kgf)におけるにおけるメルトフローレートが25g/10minであるエチレンプロピレンランダム共重合体(商品名:ウィンテック(商標名)、日本ポリプロ(株)製)を用いたこと以外は、試料2と同様にして芯鞘型複合繊維を得た。得られた繊維は、11dtexの未延伸フィラメントであり、この未延伸フィラメントを90℃の熱水中で1.3倍に延伸し、繊度10dtexの延伸フィラメントとした。
【0038】
(試料4)
第一成分と第二成分とからなる、図2に示すような、分割数が16である繊維断面を有する分割型複合繊維を製造した。第一成分として、ガラス転移点が約145℃、軟化点が240℃、JIS−K−7210に準じて測定温度300℃、測定荷重11.76N(1.2kgf)におけるメルトフローレートが70g/10minであるポリカーボネート(商品名:ノバレックス7020A、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)を用意した。第二成分として、融点が165℃、JIS−K−7210に準じて測定温度230℃、測定荷重21.18N(2.16kgf)におけるメルトフローレートが24g/10min、密度が0.90g/cm3であるポリプロピレン(商品名:SA03A、日本ポリプロ(株)製)を用意した。これらの2つの成分を、分割数が16である分割型複合ノズルを用い、第一成分/第二成分の複合比(容積比)を5/5とし、第一成分の紡糸温度を275℃、第二成分の紡糸温度を275℃として溶融させ、ノズル吐出口から、40℃の温風吹き出し雰囲気(風速:2m/min)中に紡出し、750m/minの速度で引き取り、繊度11dtexの未延伸フィラメントを得た。紡糸中、糸切れは見られず、良好に紡糸できた。次に、前記未延伸フィラメントを90℃の熱水中で1.4倍に延伸し、繊度7.8dtexの延伸フィラメントとした。
【0039】
(試料5)
第二成分として、融点が135℃、JIS−K−6922−2に規定される測定温度190℃、測定荷重21.18N(2.16kgf)におけるメルトフローレートが7g/10minであるポリエチレン(商品名:HF560、日本ポリエチレン(株)製を用いたこと以外は、試料4と同様にして分割型複合繊維を得た。得られた繊維は、11dtexの未延伸フィラメントであり、未延伸フィラメントを90℃の熱水中で1.4倍に延伸し、繊度7.8dtexの延伸フィラメントとした。
【0040】
(試料6)
分割数が8である分割型複合ノズルを用いたこと以外は試料4と同様にして分割型複合繊維を得た。得られた繊維は、9dtexの未延伸フィラメントであり、この未延伸フィラメントを90℃の熱水中で1.4倍に延伸し、繊度7dtexの延伸フィラメントとした。
【0041】
【表1】

【0042】
(試料7)
20℃の冷風吹き出し雰囲気(風速:2m/min)中に紡出したこと以外は、試料1と同様にしてポリカーボネート単一繊維を製造した。この未延伸フィラメントは、溶融したポリマーの塊ができ、糸切れが多く、紡糸することができなかった。
【0043】
試料1−6は、紡糸性に優れ、融着した繊維や糸切れした繊維が殆ど無く、細繊度の繊維を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のポリカーボネート繊維の製造方法を用いれば、ポリカーボネート成分を含む細繊度の繊維を良好に紡糸可能である。また、この繊維は、ポリカーボネート繊維の特徴である耐熱性、耐衝撃性、機械的強度に優れているので、例えば、不織布の形態であれば、耐熱フィルター等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は本発明の一実施例における複合繊維の断面図である。
【図2】図2は本発明の別の実施例における複合繊維の断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 ポリカーボネート成分
2 ポリカーボネート以外の他の成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート繊維の製造方法であって、
加熱溶融されたポリカーボネートを、ノズル吐出口から35℃以上前記ポリカーボネートのガラス転移点未満の雰囲気温度である気体雰囲気中に紡出し、フィラメントを得ることを特徴とするポリカーボネート繊維の製造方法。
【請求項2】
前記気体雰囲気が温風雰囲気であり、風速が1〜3m/minの範囲である請求項1に記載のポリカーボネート繊維の製造方法。
【請求項3】
前記ポリカーボネート繊維が芯鞘型複合繊維であって、ポリカーボネートを50質量%以上含む成分を芯成分とし、熱可塑性ポリマーを50質量%以上含む成分を鞘成分とする請求項1又は2に記載のポリカーボネート繊維の製造方法。
【請求項4】
前記ポリカーボネート繊維が分割型複合繊維であって、ポリカーボネートを50質量%以上含む成分を第一成分とし、熱可塑性ポリマーを50質量%以上含む成分を第二成分とを構成成分として含み、繊維の断面において、少なくとも第一成分が他の成分により2以上のセグメントに区分されている請求項1又は2に記載のポリカーボネート繊維の製造方法。
【請求項5】
前記ポリカーボネート繊維の単繊維の繊度が0.1dtex〜20dtexの範囲である請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート繊維の製造方法。
【請求項6】
前記紡糸した未延伸フィラメントを延伸する請求項1に記載のポリカーボネート繊維の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−84736(P2009−84736A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254523(P2007−254523)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000002923)大和紡績株式会社 (173)
【出願人】(300049578)ダイワボウポリテック株式会社 (120)
【Fターム(参考)】