説明

ポリグリセロールを脱色する方法

【課題】ポリグリセロールを脱色する方法の提供。
【解決手段】漂白土などを第一漂白剤により前記ポリグリセロールを処理するステップと、過酸化水素などを第二漂白剤により前記処理済ポリグリセロールを処理するステップと、を含む方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリグリセロールを脱色する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品および化粧品産業においてポリグリセロールは広く用いられている。概して、高温(250〜270℃)で生産されるポリグリセロールは、濃く着色されており、審美的理由から、ポリグリセロールは使用する前に脱色処理が必要とされる。
【0003】
ポリグリセロールを脱色する従来技術の方法は、吸着剤により発色物質を吸着することで行う。ベントナイトとも呼ばれる、酸で活性化される漂白土は、最も頻繁に用いられてきた吸着剤である。この物質は、主に含水ケイ酸ナトリウムから成る。限られた範囲にて、無水シリカゲルおよび活性炭が脱色吸着剤として用られてきた。
【0004】
しかしながら、この吸着剤は、その内部に吸着剤の重量とほぼ同じ重量の油を吸着し捕捉する。そのため、脱色工程中は大容量の吸着剤を必要とする。さらに、廃棄される、使用済みの吸着剤から多くの油を回収すること、もしくは、処理工程において、使用済み吸着剤中から多くの油が失われることが希求されている。そのことから、より少量の吸着剤を必要とし、また、吸着剤の使用効率を高める方法が非常に望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は、ポリグリセロールを脱色する方法を提供するものであり、この方法は、前記のポリグリセロールを漂白土で処理すること、および、前記処理済のポリグリセロールを過酸化水素で処理することを含む。
【0006】
本発明は、明細書内にて充分に記載され、図示されら、以下に示す、いくつかの新しい特徴および部分の組み合わせから成り、本発明の範囲から離れることなく、また、本発明のいかなる利点を損なうことなく、詳細にわたり多様な改変が可能であることには留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、ポリグリセロールを脱色する方法に関する。以下、本明細書は、本発明の好ましい実施形態に従い、本発明を説明するものである。しかしながら、本記述を本発明の好ましい実施形態に限定することは、単に本発明の議論を容易にするためのものであり、当業者が添付の請求項の範囲から離れることなく、様々な改変やそれと同等のものを想到し得ることには留意されたい。
【0008】
本発明の方法は、ある特定の方法によって得たポリグリセロールの脱色に利用することができる。しかしながら、天然のポリグリセロールのような、直ちに利用可能なポリグリセロールの脱色にも利用することができる。
【0009】
グリセロールの重合反応により、本発明のポリグリセロールの調製を行う。グリセロールの重合は、好適には触媒の存在下において、電子レンジを用いて行う。本発明では、求めるポリグリセロールの収率を増大させるために触媒を用いる。本発明で用いる触媒は、酢酸カリウム、無水酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物、ギ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、またはそれに類似した触媒から選択される。本発明のポリグリセロールの調製には、グリセロールの重量に基づいて、好ましくは約0.5〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜1.0重量%の触媒を用いる。
【0010】
しかしながら、触媒の存在なしでグリセロールの重合を行うことも可能であることにも留意されたい。
【0011】
グリセロールの重合は、200℃〜310℃の範囲、好ましくは250℃〜270℃の範囲の反応温度にて加熱することにより行われる。この温度範囲を用いることで、ポリグリセロールへの変換を、不要な副産物を最小限に抑えつつ行うことが可能である。また、かかる処理を大気圧条件にて行なうことが好ましい。
【0012】
このグリセロール重合の最終生成物の収率は、グリセロールの重量に対して78〜85%のジグリセロールおよびポリグリセロールを含むのが一般的である。グリセロールを重合した後に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて最終生成物を分析することにより、この収量を確認することが可能である。HPLCによって分析した、グリセロールポリマーの一般的な組成を以下に示す。
【0013】
一般的なポリグリセロールの組成は、
(a)15〜20%の未反応のグリセロール、
(b)25〜30%のジグリセロール、
(c)20〜25%のトリグリセロール、
(d)10〜15%のテトラグリセロール、
(e)15〜10%のペンタグリセロール、および、
(f)1〜5%のヘキサグリセロールである。
【0014】
HPLCクロマトグラムから、標準的なグリセロールのポリマーに比べ、最終生成物には、環状ジグリセロールまたは環状ポリグリセロールについて少し及び全くの形跡が見当たらない。そのことから、本発明のポリグリセロールの調製は、グリセロールから直鎖状のジグリセロールとポリグリセロールを選択的に生成するものである。
【0015】
最終生成物は等量の脱イオン水で希釈され、次いで、溶解している触媒を取り除くために、Amberlite IR-120のような陽イオン交換樹脂のカラムを通過させる。また、最終生成物は、余分な水分を取り除くために蒸留される。
【0016】
かかる処理により得られたポリグリセロールは、次いで、ポリグリセロールを溶解させるために、ポリグリセロール:水が1:5となるよう水に希釈し撹拌される。
【0017】
第一段階では、漂白剤として漂白土を、ポリグリセロールの重量に対して、10〜50重量%、好ましくは50重量%の濃度にて混合物に加えられる。本発明で用いる漂白土の性質を表1に示す。本発明で用いる漂白土は、商用銘柄である。しかしながら、本発明では、漂白土のみに限定されるものではなく、同様な吸着材料又はその類似物を漂白剤として適用することが可能である。
【0018】
【表1】

【0019】
ポリグリセロールと漂白土を、200〜600rpm、好ましくは600rpmにて30分間、反応温度50〜60℃の範囲で撹拌する。次に、使用済みの漂白土から、前記の処理済ポリグリセロールを回収するため、ポリグリセロールと漂白土をよく混合したものをろ過する。内容物中の余分な水分を取り除くために、処理済ポリグリセロールを乾燥させる。
【0020】
本発明の第二段階では、更なる漂白剤として過酸化水素(H)を用いて、第一段階で得た処理済ポリグリセロールをさらに漂白する。50%濃度の過酸化水素を、処理済ポリグリセロールの重量に対して10%の濃度となるよう混合物に加えられる。次いで、処理済ポリグリセロールと過酸化水素との混合物は、50〜60℃の反応温度にて加熱される。かかる混合物は、200〜600rpm、好ましくは600rpmにて、10〜30分間、好ましくは15分間、撹拌される。最後に、内容物中の余分な水分を取り除くために、処理済ポリグリセロールを乾燥させる。
【0021】
本発明の有利な点は、化粧品の保湿剤としての使用や、ローションやシャンプーといった多くの様々な用途のパーソナルケア製品としての使用が可能な、薄色、または実質的には無色のポリグリセロールの生成にある。本発明のその他の有利な点は、本発明の漂白工程に要する時間が、従来技術の吸着処理法よりも短くて済むという点にある。
【実施例】
【0022】
以下の実施例は、本発明をさらに記述することを意図したものであり、本発明をそこに記述された特定の実施形態に限定することを意図したものではない。
【実施例1】
【0023】
第一段階:漂白土を用いた漂白
ビーカーに50gのポリグリセロールを計り取った。次いで、ポリグリセロールを溶解させるために、250gの水を加えた。それから、25gの漂白土を溶液に加えた。次いで、混合物を50℃〜60℃に加熱し、600rpmで30分間撹拌した。その後、使用済みの漂白土を取り除くために、混合物をろ過した。次いで、含水率が約0.1%となるまでろ液を乾燥させた。そして、ポリグリセロールの色を、Lovibond Tintometer Model Fを用いて決定した。
【0024】
第二段階:過酸化水素を用いた漂白
(第一段階の漂白で)処理済のポリグリセロールを、50gビーカーに計り取った。次に、過酸化水素(50%濃度)5gを混合物に加えた。次に、50℃まで混合物を加熱し、600rpmで15分間撹拌した。その後、含水率が約0.1%となるまで混合物を乾燥させた。そして、ポリグリセロールの色を、Lovibond Tintometer Model Fを用いて決定した。
【0025】
本発明の漂白工程の後に、純粋なグリセロールを加熱脱水して調製した、ポリグリセロールの1%希釈物の一般的な特性を表2に示す。
【0026】
【表2】

【0027】
本発明の漂白工程の後に、純粋なグリセロールを加熱脱水したものから得た、未希釈のポリグリセロールの色を表3に示す。
【0028】
【表3】

【0029】
本発明の漂白工程の後に、未加工のグリセロールを加熱脱水したものから得た、未希釈のポリグリセロールの色を表4に示す。
【0030】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグリセロールを脱色する処理方法であって、該処理方法は、
(a)前記のポリグリセロールを漂白土で処理する工程と、
(b)前記処理されたポリグリセロールを、過酸化水素で処理する工程と、
を含むことを特徴とするポリグリセロールを脱色する処理方法。
【請求項2】
マイクロ波照射によりモノマーを加熱することにより、前記ポリグリセロールを得る、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
マイクロ波照射によりグリセロールを加熱することにより、前記ポリグリセロールを得る、請求項1に記載の処理方法。
【請求項4】
触媒の存在下において、200℃〜310℃、好ましくは250℃〜270℃の温度にて、約30分間マイクロ波を照射して、グリセロールを反応させることで、ポリグリセロールを得る、請求項1に記載の処理方法。
【請求項5】
前記触媒は、酢酸カリウム、無水酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物、ギ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、またはそれらの類似物から選択する、請求項4に記載の処理方法。
【請求項6】
前記触媒を、前記グリセロールの重量に対して、0.5〜10重量%にて加える、請求項5に記載の処理方法。
【請求項7】
前記漂白土を、前記ポリグリセロールの重量に対して50%の濃度で、前記ポリグリセロールに加える、請求項1に記載の処理方法。
【請求項8】
前記漂白土と前記ポリグリセロールの混合物を、50℃〜60℃の反応温度にて加熱する、請求項7に記載の処理方法。
【請求項9】
前記混合物を600rpmで30分間撹拌する、請求項8に記載の処理方法。
【請求項10】
前記反応時間後に前記混合物をろ過して、前記漂白土から前記処理済ポリグリセロールを回収する、請求項9に記載の処理方法。
【請求項11】
前記処理済ポリグリセロールを乾燥させることにより、余分な水を取り除く、請求項10に記載の処理方法。
【請求項12】
50%濃度の前記処理済ポリグリセロールに、前記過酸化水素を加える、請求項1に記載の処理方法。
【請求項13】
前記過酸化水素を、ポリグリセロールの重量に対して10%の濃度で加える、請求項12に記載の処理方法。
【請求項14】
前記処理済ポリグリセロールと前記過酸化水素を50℃〜60℃の反応温度にて加熱する、請求項13に記載の処理方法。
【請求項15】
前記処理済ポリグリセロールと前記過酸化水素を、600rpmにて15分間撹拌する、請求項14に記載の処理方法。
【請求項16】
最終的な処理を済ませたポリグリセロールを、乾燥させることにより、余分な水を取り除く、請求項15に記載の処理方法。
【請求項17】
前記漂白土によるポリグリセロールの漂白を、過酸化水素による漂白前に複数回行い得る、請求項1に記載の処理方法。
【請求項18】
前記最終的な処理を済ませたポリグリセロールは、カラースケールが、0.8R以下である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の処理方法。

【公開番号】特開2009−196993(P2009−196993A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−37935(P2009−37935)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(500511648)マレーシアン・パーム・オイル・ボード (12)
【Fターム(参考)】