説明

ポリサッカライドによるタンパク質のN末端誘導体化

本発明は、好ましくは少なくとも末端にシアル酸ユニットを有し、且つ好ましくは本質的にシアル酸ユニットのみから成るポリサッカライドが、制御条件下でタンパク質又はペプチドのN末端で反応し、N末端誘導体を生成する、タンパク質のN末端誘導体を製造する方法に関する。制御条件は、誘導体化工程のための酸性pH、及び精製のためのより高いpHの使用を含む。誘導体は、タンパク質及びペプチドの薬物動態及び薬力学を改善するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは少なくとも末端にシアル酸ユニットを有し、且つ好ましくは本質的にシアル酸ユニットのみから成るポリサッカライドが、制御条件下でタンパク質又はペプチドのN末端で反応し、N末端誘導体を生成する、タンパク質のN末端誘導体を製造する方法に関する。誘導体は、タンパク質及びペプチドの薬物動態及び薬力学を改善するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
ポリシアル酸(PSA)は、或る特定の細菌株によって、及び哺乳動物の或る特定の細胞において生成された、自然発生的な非分岐ポリマーである。ポリシアル酸は、限定酸加水分解、又はノイラミニダーゼによる消化、又は天然の細菌誘導形態のポリマーの分別によって、n=約80以上から下はn=2までの様々な重合度で生成することができる。近年、タンパク質及び低分子量の薬物分子の薬物動態特性を変えるために、ポリシアル酸、特にα−2,8結合したホモポリマー状のポリシアル酸の生物学的特性が活用されている。ポリシアル酸の誘導体化によって、カタラーゼ及びアスパラギナーゼを含む多くの治療タンパク質に対する血中半減期が劇的に改善され、治療タンパク質への事前曝露の望ましくない(不可避である場合もある)結果として既存の抗体に直面した場合にもこのようなタンパク質を使用することが可能である(非特許文献1、非特許文献2)。α−2,8結合したポリシアル酸はPEGに対する魅力的な代替手段を提供し、ヒトの身体の天然部分であり、且つ組織ノイラミニダーゼを介して非毒性サッカライドであるシアル酸へと分解する免疫学的に不可視の生分解性ポリマーである。
【0003】
本発明者らは、ポリサッカライドとタンパク質等の治療薬とを連結する方法をこれまでに記載している(特許文献1、特許文献2)。これらの方法の幾つかは、第1級アミン基で反応するタンパク質反応性のアルデヒド部分を作製する、ポリマーの「非還元性」末端の化学的誘導体化によるものである。非還元性シアル酸末端ユニットは、隣接ジオールを含有するため、過ヨウ素酸塩により容易に(且つ選択的に)酸化され、タンパク質への反応性が非常に高く、且つ還元的アミノ化及び他の化学反応を介したタンパク質の連結に好適な反応因子を含む、モノアルデヒド形態を得ることができる。この反応は、図1に示され、
A)非還元性末端でタンパク質反応性アルデヒドを形成する、過ヨウ素酸ナトリウムによるコロミン酸(大腸菌由来のα−2,8結合ポリシアル酸)の酸化を示し、
B)タンパク質アミノ基との安定な不可逆共有結合を形成する、シアノ水素化ホウ素ナトリウムによるシッフ塩基の選択的還元を示す。
【0004】
タンパク質の多官能性のために、PSA及びPEG結合戦略によって不可逆的に、化学的に異なる分子化合物(molecular entities)の混合物が得られる。例えば、コロミン酸とアミノ酸の側鎖との反応によって上記の従来の結合反応中に意図しない副産物が生成する可能性がある。これらは、ヒト及び動物における治療的使用のために規制当局が要求する化学的に定義された複合体を製造するのを困難にするのに十分であり得る。
【0005】
タンパク質のアミン末端と結合する単一のPEG鎖を有する本質的に均質のPEG−タンパク質誘導体の調製を可能にする、タンパク質とポリ(エチレングリコール)との結合の部位特異的(site-directed)アプローチが非特許文献3に記載されている。この選択性は、通常より低いpHでPEG−アルデヒドによるタンパク質の還元アルキル化を行うことによって達成される。しかし本方法は、PEGのみとの結合に適用された。
【0006】
PEG化の化学的役割は、これらの分子の生理化学的特性の違い等からポリシアル化に適用することはできない。PSAは酸に不安定なポリマーであり、中性pH付近では数週間安定である(図2.2)。図2.2の結果は、pH6.0及び7.4では、CAは8日間安定であり、pH5.0では、分解は緩やかであり(48時間後で最初のMWの92%)、pH4.0では、分解が緩やかである(48時間後で最初のMWの70%)。ポリシアル酸が高親水性である一方で、PEGは自然状態で両親媒性分子である。PEG化に使用する条件を用いてポリシアル化を行う場合、多くの場合でタンパク質の凝集及び析出が見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,846,951号(A)
【特許文献2】国際公開第0187922号(A)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Fernandes and Gregoriadis, 2006
【非特許文献2】Jain et al., 2003, 2004
【非特許文献3】Kinstler et. al., 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
タンパク質製剤の開発において残る最難題の1つは、タンパク質の物理的及び化学的な不安定性に対処することである。タンパク質製剤は通常、許容される貯蔵寿命を達成するために、冷条件下で保存されるか又は凍結乾燥しなければいけない。タンパク質の安定性を改善し、タンパク質製剤により大きな安定性及び貯蔵寿命を与えるために、賦形剤(例えば、安定バッファー、糖、ポリオール、界面活性剤、塩、PEG、ポリマー、金属イオン及びアミノ酸)及び構造的変化を利用している。依然としてタンパク質−PSA複合体の配合を改善する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に従って、本発明者らは、タンパク質又はペプチドの精製N末端誘導体を製造する方法であって、(i)酸性の水溶液中でタンパク質又はペプチドのN末端のアミン基でポリサッカライドを反応させ、N末端誘導体を生成し、(ii)工程(i)よりも高いpHの水溶液中で、得られたN末端誘導体を精製する、タンパク質又はペプチドの精製N末端誘導体を製造する方法を提供する。
【0011】
本発明において、本発明者らは、ポリサッカライド、好ましくはポリシアル酸(PSA)のタンパク質のN末端との化学量論的に規定された部位特異的な複合体を調製することを可能にする簡易で且つ拡大縮小可能な化学的アプローチの適用結果を記載する。典型的に、これは水性環境下でPSA−アルデヒドによる還元アルキル化によるものである。N末端結合は、タンパク質におけるポリサッカライドと残りのアミノ酸残基との間の任意の望ましくない干渉を最小限にすると考えられるので好都合である。
【0012】
本方法は、誘導体化、そうでなければ酸性環境の誘導体化バッファーに曝露することによって、ポリサッカライドが十分に分解された直後に、中性pHに戻す必要がある。本方法は、pHの制御、及び任意でタンパク質の析出を防ぐために反応中の製剤添加剤の存在も必要とする。
【0013】
本発明によって、製薬産業における有用性が高いタンパク質の規定の化学的に均質で且つ効果的な複合体の合成が可能になる。
【0014】
本明細書中では、「タンパク質」及び「ペプチド」という用語は区別なく使用される。
【0015】
タンパク質は主にN末端アミン基で反応する。タンパク質のN末端で化学反応を選択的に促進する反応のpH条件によって、この反応が行われる。図2.1は、PSAによるタンパク質の誘導体化を示す。N末端アミノ基と安定した不可逆的な共有結合を形成するためのシアノ水素化ホウ素(cyanoborohydride)によるシッフ塩基の選択的な還元が示される。
【0016】
酸性水溶液は、誘導体化反応が行われる反応媒体である。これは、緩衝溶液、例えば酢酸ナトリウムであり得る。反応媒体は水性である。
【0017】
本発明の第1の態様による方法では、精製工程である工程(ii)が誘導体化工程である工程(i)よりも高いpHで行われる必要がある。好ましくは、実質的に中性のpHで精製工程が行われる。誘導体化工程と同じ(酸性)pHで精製を行う場合、ポリサッカライドが分解を受けやすいと考えられる。酸性のpHとは、本発明者らは7未満のpHを意図する。好ましくは、本方法の工程(i)では、酸性の水溶液のpHは3.0〜6.5の範囲、より好ましくは4.0〜6.0の範囲である。本方法の工程(ii)で使用される溶液のpHは、第1の工程における溶液のpHより酸性ではない。このpHは実質的に中性であることが好ましく、6.5〜9.5、好ましくは6.5〜8.5、最も好ましくは6.5〜8.0の範囲のpHを有する。
【0018】
本発明の一実施の形態において、タンパク質又はペプチドとの反応の前にポリサッカライドを活性化し、活性化誘導体を生成する。典型的に、ポリサッカライドの活性化誘導体は反応性アルデヒド基を有し、還元条件下で工程(i)が行なわれる。還元条件を得るのに、水素化ホウ素(borohydride)を使用してもよい。タンパク質のN末端は、反応性アルデヒド基と反応し、還元するとタンパク質又はペプチドのN末端誘導体を生成する付加物を産生する。
【0019】
反応性アルデヒドは、過ヨウ素酸塩を使用したポリサッカライドの選択的酸化によって生成され得る。
【0020】
好ましくはポリサッカライドの活性化は、長鎖(重合)出発物質の骨格の中鎖開裂が実質的にない、すなわち分子量の減少が実質的にないような条件下で行わなければいけない。活性化工程は典型的に、アルデヒド部分がポリサッカライドの末端にあることを条件とする。この工程を行うことのできる酵素を使用してもよい。最も都合がいいことには、酸化は化学的酸化である。反応は、ポリマーベースの過ルテニウム酸塩(perrhuthenate)等の固定化試薬によって行ってもよい。最も直接的な方法は溶解試薬を使用して行われる。酸化剤は好適には過ルテニウム酸、又は好ましくは過ヨウ素酸塩である。1mM〜1Mの範囲の濃度の過ヨウ素酸塩、3〜10の範囲のpH、0℃〜60℃の範囲の温度、1分〜48時間の範囲の時間で酸化を行ってもよい。
【0021】
誘導体化反応に好適な還元条件は、触媒、好ましくは水素化ホウ素等の水素化物で水素を利用してもよい。これらは、アンバーライト(商標)支持水素化ホウ素等で固定化されてもよい。好ましくは、1μM〜0.1Mの範囲の濃度、5.0〜10の範囲のpH、0℃〜60℃の範囲の温度、及び1分〜48時間の範囲の期間で水素化ホウ素ナトリウム等のアルカリ金属水素化物を還元剤として使用する。出発物質上のペンダント型カルボキシル基が還元されないように、反応条件を選択する。他の好適な還元剤は酸性条件下のシアノ水素化ホウ素、例えばポリマー支持シアノ水素化ホウ素又はアルカリ金属シアノ水素化ホウ素、L−アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、L−セレクトリド、トリアセトキシ水素化ホウ素等である。
【0022】
本発明者らの以前の特許出願である国際特許出願第WO06/00540号に記載されるようにNHS等のペンダント型官能基を有するものを含むポリサッカライドの他の活性化誘導体が本発明において有用性を有し得る。
【0023】
好ましくはポリサッカライドは、ポリシアル酸(PSA)、ヘパリン又は硫酸コンドロイチン等のアニオン性ポリサッカライドである。最も好ましくは、ポリサッカライドはPSAである。しかし、本発明ではこの好ましいポリサッカライド出発物質は、分子中にシアル酸以外のユニットを含んでいてもよい。例えばシアル酸ユニットは、他のサッカライドユニットを代わりにしてもよい。しかし好ましくは、ポリサッカライドは実質的にシアル酸ユニットのみから成る。好ましくはこれらは、2→8及び/又は2→9で結合する。
【0024】
好ましくは、ポリサッカライド出発物質は、少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも5つ、より好ましくは少なくとも10個、例えば少なくとも50個のサッカライドユニットを有する。例えば、ポリサッカライドは少なくとも5つのシアル酸ユニットを含み得る。
【0025】
ポリシアル酸は、任意の供給源、好ましくは細菌源(例えば大腸菌(E. coli)K1又はK92、B群髄膜炎菌(meningococci)、又はさらに牛乳若しくはN−CAM)等の自然源に由来し、シアル酸ポリマーは、ナイセリア−メニンジティディス(N. meningitidis)の135群又はV群等のヘテロ高分子ポリマーであり得る。
【0026】
ポリシアル酸は、塩又は遊離酸の形態であり得る。ポリシアル酸は、細菌源からの回収の後に分子量を低減させるような加水分解形態であり得る。
【0027】
ポリサッカライド、好ましくはポリシアル酸は、1.3を超える、例えば2以上もの多分散度を有するような広範な分子量の物質であり得る。好ましくは、分子量の多分散度は、1.3又は1.2未満、より好ましくは1.1未満、例えば1.01と低いものである。
【0028】
当該技術分野で既知の様々な方法を使用して、本発明の第1の態様の方法の工程(ii)におけるN末端誘導体の精製を行ってもよい。好適な精製方法の例としては、HIC(疎水性相互作用クロマトグラフィ)、SEC(サイズ排除クロマトグラフィ)、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)及びAEX(アニオン交換クロマトグラフィ)が挙げられる。
【0029】
本発明の方法では、反応性アルデヒドがポリサッカライドの非還元性末端にあるのが好ましい。しかし、反応性アルデヒドはポリサッカライドの還元性末端で与えられてもよい。ポリサッカライドの還元性末端で反応性アルデヒドによってポリサッカライドを調製するのに好適な化学的性質は本発明者らの以前の特許出願である国際特許出願第WO05/016974号に記載されている。このプロセスは、予備選択的な酸化工程、続く還元工程、その後の酸化工程を伴い、還元性末端及び不動態化非還元性末端にアルデヒドを有する化合物を生成する。
【0030】
本発明は、治療タンパク質の誘導体の生成に特に有用性がある。このタンパク質は、例えばオベスタチン、レプチン、インターフェロン、FSH、ガラクトシダーゼ又はDNアーゼであり得る。
【0031】
製剤添加剤は、本発明の第1の態様による方法の工程(i)及び工程(ii)のいずれか又は両方における水溶液中に存在してもよい。
【0032】
製剤添加剤とは、本発明者らは、Wang et al.(1999)に記載されるように内部又は外部のいずれかでタンパク質又はペプチドを安定化することが可能な賦形剤を意図する。賦形剤は、安定剤、可溶化剤又は金属イオンであり得る。製剤添加剤の好適な例としては、バッファー、安定剤、界面活性剤、塩、ポリマー、金属イオン、糖、ポリオール、又はアミノ酸のうちの1つ又は複数が挙げられる。これらは単独で又は組合せて使用してもよい。
【0033】
典型的に、タンパク質のアンフォールディングのためのギブズ自由エネルギー変化の増大をもたらす変性状態のタンパク質の脱安定化によって、安定剤は作用する。安定剤は、糖又はポリオール、例えばスクロース、ソルビトール、トレハロース、グリセロール、マンニトール、ラクトース及びエチレングリコールであるのが好ましい。安定化バッファーはリン酸ナトリウムである。
【0034】
可溶化剤は界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤であることが好ましい。好適な例としては、Tween80、Tween20、Tween40、Pluoronic F68、Brij35及びTriton X100が挙げられる。
【0035】
金属イオンは二価であることが好ましい。好適な金属イオンとしては、Zn2+、Ni2+、Co2+、Sr2+、Cu2+、Ca2+、Mg2+及びFe2+が挙げられる。
【0036】
製剤添加剤は、PSA、PEG又はヒドロキシ−β−シクロデキストリンから選択されるポリマーでもあり得る。
【0037】
製剤添加剤として使用するのに好適なアミノ酸及びアミノ酸誘導体としては、ヒスチジン、グリシン、他の同様のアミノ酸及びアスパラギン酸ナトリウムが挙げられる。
【0038】
分子量分布が幅広いポリシアル酸集団は、多分散度がより低い画分で、すなわち平均分子量が異なる画分に分別してもよい。本発明者らの以前の国際特許出願第WO2005/016794号及び同第WO2005/03149号に記載されるように溶離に好適な塩基性バッファーを使用したアニオン交換クロマトグラフィによって、分別が行われるのが好ましい。分別方法は、ポリシアル酸出発物質及び誘導体に好適である。したがってこの技法は、本発明の必須のプロセス工程の前又は後に適用してもよい。好ましくは、得られたポリシアル酸誘導体の多分散度は1.1未満である。
【0039】
本発明の第2の態様によれば、本発明者らは、タンパク質のポリシアル酸誘導体集団を含む組成物であって、誘導体が2個〜200個のシアル酸ユニットを含み、集団が実質的にタンパク質のN末端誘導体のみから成る、タンパク質のポリシアル酸誘導体集団を含む組成物を提供する。
【0040】
集団とは、本発明者らは、組成物中に2つ以上のポリシアル酸誘導体が存在することを意図する。誘導体は、同数又は異なる数のシアル酸ユニットを含み得る。好ましくは、組成物中のポリシアル酸の多分散度は1.3未満、より好ましくは1.1未満である。
【0041】
集団において、実質的に全てのタンパク質がN末端のアミンのみで誘導体化される。このことは、本発明者らは、集団中のタンパク質の少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%が、N末端のアミンのみでPSAによって誘導体化されることを意図する。ペプチドマッピング及びエドマン分解等の当該技術分野で既知の技法を使用して、N末端での誘導体化度を測定することができる。
【0042】
タンパク質は、治療的用途を有する任意のタンパク質、例えばオベスタチン、レプチン、インターフェロン、FSH、ガラクトシダーゼ又はDNアーゼであり得る。
【0043】
タンパク質がFSHである場合、誘導体は典型的に75個〜200個のシアル酸ユニットを含む。
【0044】
タンパク質がα−ガラクトシダーゼである場合、誘導体は典型的に20個〜150個のシアル酸ユニットを含む。
【0045】
タンパク質がDNアーゼである場合、誘導体は典型的に2個〜120個のシアル酸ユニットを含む。
【0046】
タンパク質がIFNである場合、誘導体は典型的に80個〜180個のシアル酸ユニットを含む。好ましいポリシアル酸は、本発明の他の態様において上記で詳述されるようなものである。
【0047】
ポリシアル酸は、直接的に、すなわち図1で示されるように、又はリンカーを介してタンパク質と結合してもよい。好適なリンカーは、N−マレイミド、ビニルスルホン、N−ヨードアセトアミド、オルトピリジル又はN−ヒドロキシスクシンイミド官能基含有試薬由来である。リンカーは生物学的安定又は生分解性であってもよく、例えばポリペプチド又は合成オリゴマーを含んでいてもよい。リンカーは、さらに国際特許出願第WO2005/016973号に記載されるように二官能基含有試薬由来であり得る。例えば、好適な二官能性試薬はBis−NHSである。この試薬は、一般式Z−R−Z(式中、各Zは官能基であり、同じであっても又は異なっていてもよく、Rは二官能性有機基である)を有し得る。好ましくは、Rは、アルカンジイル、アリーレン、アルカリーレン、ヘテロアリーレン及びアルキルへテロアリーレン(そのいずれかがカルボニル結合、エステル結合、スルフィド結合、エーテル結合、アミド結合及び/又はアミン結合で置換及び/又は介在されてもよい)から成る群から選択される。C〜Cアルカンジイルが特に好ましい。最も好ましくは、Rは好適な二官能性試薬の適切な部分に対応する。
【0048】
ポリシアル酸誘導体は、一般式(I)
【0049】
【化1】

【0050】
(式中、mは少なくとも1であり、
HNBは、タンパク質のN末端アミンであるB−NH由来であり、
Lは化学結合若しくは連結基であるか、又はポリペプチド若しくは合成オリゴマーを含み、
GlyOはシアル酸ユニットであり、
連結基(存在する場合)は、一般式−Y−C(O)−R−C(O)−(式中、YはNR又はNR−NRであり、Rは上記のような二官能性有機基であり、RはH又はC1〜6アルキルである)を有する)を有し得る。
【0051】
本発明のこの態様において、タンパク質はポリサッカライドの非還元性末端と結合する。
【0052】
タンパク質がポリサッカライドに直接付着する場合、L基は結合である。しかし、L基は代替的にN−マレイミド、ビニルスルホン、N−ヨードアセトアミド、オルトピリジル又はN−ヒドロキシスクシンイミド含有試薬由来であってもよい。試薬は、上記のような一般式Z−R−Zを有し得る。この実施の形態では、Lは典型的に、基
【0053】
【化2】

【0054】
である。
【0055】
ポリシアル酸誘導体及び希釈剤を含む組成物、生物学的に活性な新規の化合物を含む薬学的組成物、並びに薬学的に許容される賦形剤も本発明の一部を形成する。薬学的組成物は、ヒト又は獣医学的使用のために経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、鼻腔内、皮内、局所又は気管内に投与されてもよい。
【0056】
組成物は、上で詳述されるように製剤添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0057】
本発明の最後の態様は、本発明の第1の態様による方法によって得ることができるタンパク質又はペプチドのN末端誘導体である。また上記の誘導体の好ましい特性のいずれかが本発明のこの態様に適用可能である。
【0058】
タンパク質及びペプチド等の誘導体化によって、半減期の増大、安定性の改善、免疫原性の低減、及び/又は溶解性の制御、したがってバイオアベイラビリティ及び薬物動態特性が得られるか、又は活性剤(actives)の溶解性、若しくは誘導体化された活性剤を含有する溶液の粘性を高め得る。新規の方法は、モノポリシアル化タンパク質複合体の生成に関して特別な価値がある。このことは、低pHでN末端のアミン基がプロトン化すればするほど、反応性が高くなるという理解に基づく。
【0059】
本発明は実施例1〜実施例10によって及び添付の図面を参照して例示される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1a】非還元性シアル酸末端ユニットの従来技術の活性化を示す反応スキームである。
【図1b】タンパク質−アミン部分を用いた反応スキーム1aの生成物のアルデヒド部分の従来技術の還元アミノ化を示す反応スキームである。
【図2.1】タンパク質のN末端誘導体化を示す反応スキームである。
【図2.2】三重検出GPC(Viscotek:RI+RALS+粘度計(Viscosiometer)を使用した異なるpHでのコロミン酸(CA)の分解を示す図である。
【図3.1】SE−HPLC及びSDS−PAGEによるGCSF−CA複合体の特徴を示す図である。
【図4.1】50kDaのCAO−レプチン複合体のSDS−PAGE及びSE−HPLCを示す図である。
【図5.1】EPO製剤のin vivoクリアランスを示す図である(静脈内)。
【図5.2】EPO製剤のさらなるin vivoクリアランスを示す図である(皮下)。
【図5.3】SE−HPLC及びSDS−PAGEによるEPO−CA複合体の特徴を示す図である。
【図6.1】ポリシアル化非グリコシル化EPOに対する非グリコシル化EPOのin vivoクリアランスを示す図である(n=3〜4±、皮下)。
【図6.2】ポリシアル化EPOに対する非グリコシル化EPOのin vivoクリアランスをさらに示す図である(静脈注射、n=3〜4±SEM)。
【図6.3】SE−HPLC及びSDS−PAGEによるNGEPO−CA複合体の特徴付けを示す図である。
【図7.1】SDS−PAGE(トリス−グリシン(4%〜20%)ゲル)によるCA−インスリン複合体の特徴付けを示す図である。
【図7.2】SE−HPLCによる精製CAO−インスリン複合体の特徴付けを示す図である。
【図7.3】非近交系の雌マウスに対するCAO−インスリン製剤(皮下で0.3U、n=4)(約25g)のin vivo有効性を示す図である。
【図8.1】ポリシアル化インターフェロンα2bのSE−HPLCを示す図である(24時間後のCAとの39kDaの反応混合物)。
【図8.2】ポリシアル化インターフェロンのin vivoクリアランスを示す図である(静脈注射、n=4±SEM)。
【図9】複合体オベスタチンのSDS−PAGEを示す図である。
【図10.1】実施例10.4における複合体のSDS−PAGEを示す図である。
【図10.2】実施例10.5における複合体のSE−HPLCを示す図である。
【図10.3】DNアーゼI活性対塩化カルシウム濃度を示すグラフである。
【実施例】
【0061】
材料
炭酸アンモニウム、エチレングリコール、ポリエチレングリコール(8kDa)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(98%超純粋)、メタ過ヨウ素酸ナトリウム及び分子量マーカーは、Sigma Chemical Laboratory(英国)から得た。使用されるコロミン酸、鎖状α−(2→8)結合大腸菌K1ポリシアル酸(平均22.7kDa 高多分散度1.34、39kDa 多分散度1.4、11kDa 多分散度1.27)はCamida(アイルランド)から、放射性ヨウ化物(Na125I)はAmersham(英国)から購入した。他の材料は、2,4ジニトロフェニルヒドラジン(Aldrich Chemical Company、英国)、透析チューブ(3.5kDa及び10kDaのカットオフ限界、Medicell International Limited、英国)、Sepharose SP HiTrap、PD−10カラム(Pharmacia、英国)、トリス−グリシンポリアクリルアミドゲル(4%〜20%及び16%)、トリス−グリシンドデシル硫酸ナトリウムランニングバッファー及びローディングバッファー(Novex、英国)を含んでいた。脱イオン水は、Elgastat Option4水精製ユニット(Elga Limited、英国)から得た。使用される全ての試薬は分析用グレードであった。プレートリーダー(Dynex Technologies、英国)を、タンパク質又はCA分析における分光測定に使用した。B6D2F1マウス(7週齢〜8週齢、体重20g)は、Harlan(英国)から購入し、これらを使用する前に少なくとも1週間順化させた。
【0062】
硫酸アンモニウム、GCSF(Sll、インド)、ソルビトール、Tween20、Q FF(カラム1ml又は5ml、Amersham Biosciences、英国)、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、Hitrap Butyl HPカラム(1ml又は5ml、Amersham Biosciences、英国)、マウスレプチン組み換え体(Biomyx)、エリスロポエチン(EPO)及び非グリコシル化EPO(NGEPO)(分子量30600、SIIL、インド)、トリス(Sigma、英国)、酢酸ナトリウム(BDH、英国)、リン酸ナトリウム(BDH、英国)、インスリン(Sigma、英国)。
1. タンパク質及びコロミン酸測定
レゾルシノール試薬を用いたポリシアル酸(シアル酸として)の定量的評価は、別記されるようなレゾルシノール法(Svennerholm, 1957)によって行われた(Gregoriadis et.al., 1993;Fernandes and Gregoriadis, 1996, 1997)。タンパク質を、BCA比色法又は280nmでのUV吸光によって測定した。
2.1 コロミン酸の活性化
新たに調製した0.02Mのメタ過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)溶液(8倍モル過剰)を20℃でCAと混合し、反応混合物を暗所で15分間、磁気的に攪拌した。その後、2倍体積のエチレングリコールを反応混合物に添加して過剰なNaIOを消費し、混合物を20℃でさらに30分間攪拌した。酸化したコロミン酸を、4℃で、0.01%炭酸アンモニウムバッファー(pH7.4)に対して十分に(24時間)透析した(分子量カットオフが3.5kDaの透析チューブ)。限外濾過(分子量カットオフが3.5kDaを超える)を、透析チューブからCAO溶液を濃縮するために用いた。必要な体積に濃縮した後、濾液を凍結乾燥し、後に使用するまで−40℃で保存した。代替的に、エタノールによる(2回の)析出によって、CAを反応混合物から回収した。
2.2 CA及び誘導体の酸化状態の測定
コロミン酸の酸化度の定量的評価は、カルボニル化合物との相互作用において、やや溶けにくい2,4ジニトロフェニル−ヒドラゾンを生じる2,4ジニトロフェニルヒドラジン(2,4−DNPH)を用いて行われた。非酸化コロミン酸(CA)/酸化コロミン酸(CAO)を、2,4−DNPH試薬(1.0ml)に添加し、溶液を振盪し、その後、結晶性沈殿が観察されるまで37℃に置いた(Shriner et al., 1980)。CAの酸化度(定量的)は、アルカリ性溶液中のフェリシアン化物イオンのフェロシアン化第二鉄(ペルシアンブルー)への還元(その後630nmで測定する)に基づく方法(Park and Johnson, 1949)を用いて測定した。この例では、グルコースを標準として用いた。
2.3 ゲル浸透クロマトグラフィ
コロミン酸試料(CA及びCAO)をNaNO(0.2M)、CHCN(10%、5mg/ml)に溶解し、2倍を超えるGMPWXLカラム上で、屈折率を検出しながら(GPCシステム:VE1121 GPC溶媒ポンプ、VE3580 RI検出器及びTrisec3ソフトウェア(Viscotek Europe Ltd.)による照合)、クロマトグラフィを行った。試料(5mg/ml)を、0.45μmナイロン膜で濾過し、移動相として0.2MのNaNO及びCHCN(10%)を用いて0.7cm/分で流した。
結果
コロミン酸(CA)(ポリシアル酸)は、N−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)残基の鎖状のα−2,8結合したホモポリマーである(図1a)。室温で20mMの過ヨウ素酸塩を使用して15分間、コロミン酸の酸化曝露を行った(Lifely et. al., 1981)。ゲル浸透クロマトグラフィ、及び酸化コロミン酸(CAO)に関して得られたクロマトグラフによって、過ヨウ素酸塩処理後の内部のα−2,8結合したNeu5Ac残基の完全性を分析し、その物質を天然CAのものと比較した。酸化及び天然のCAは、ほとんど同一の溶出プロファイルを示し、連続する酸化工程によって、ポリマー鎖の顕著な断片化が起こる証拠はないことが見出された。
【0063】
CAの酸化状態の定量的測定は、グルコースを標準として使用し、アルカリ性溶液中でフェリシアン化物イオンをフェロシアン化物(プルシアンブルー)に還元することにより行われた(Park and Johnson, 1949)。表1は、酸化したコロミン酸が、化学量論を超える(100%超)量の還元剤、即ち、還元性末端ヘミケタール及び(他の末端において)導入されたアルデヒドの組み合わされた還元力を含む、112モル%の見かけのアルデヒド含有量を有することが見出されたことを示す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1:グルコースを標準として用いて2重酸化反応スキーム中の各種コロミン酸の酸化度を平均化する(intermediates)(100%、グルコース1モル当たり1モルのアルデヒド、n=3±標準偏差)。
3. 製剤添加剤を使用したN末端タンパク質−CA複合体の調製
3.1 GCSF−CA複合体の調製
G−CSF(18.8kDa)は溶液として与られ(5%ソルビトール、0.025mg/mlのポリソルベート80を含有する10mMの酢酸ナトリウムバッファー(pH4.0)中で1.05mg/ml)、2℃〜8℃で保存した。必要量のGCSFをエッペンドルフ管に入れ、氷上に置いた。結合のために添加するCA(例えば酸化又は非酸化CA、11モル過剰を超えるタンパク質)の量を式:
CAの重量={タンパク質量(g)/(タンパク質分子量)}×(CA分子量)×(モル過剰のCA)
に基づき算出した。
【0066】
必要量のCAを秤量した。10mMのNaOAc、5%ソルビトール(pH5.5)(ここでは、最終反応体積の20体積%を使用した)中でCAを可溶化し、CAが全て溶解するまで、混合物をゆっくりとボルテックスした後、新しいエッペンドルフ管に濾過するか、又は4000rpmで5分間遠心分離をし、上清を新しいエッペンドルフ管に移し、任意の凝集/析出材料を取り除いた。最終反応混合物中でTween20の最終濃度を0.5mg/mlにするのに必要な量の10mg/mlのTween20ストック溶液を添加した。必要量のG−CSFタンパク質溶液をCA溶液に添加し、(40kDaに関して)11モル過剰のCAを得て、4±1℃で緩速振盪器(gentle shaker)に反応混合物を置くことによってゆっくり混合させた。最終反応混合物中で50mM又は3.17mg/mlにするために、100mg/mlのNaCNBH溶液を添加し、ゆっくりと混合して、最終反応混合物のpHを調べ、必要に応じて4±1℃の1MのNaOH/HClでpHを5.5に調整した。最後に10mMのNaOAc、5%ソルビトール(pH5.5)を用いて、反応体積を調整し、反応混合物中で0.67mg/mlのタンパク質濃度を得た。管を封止し、所望の温度(4±1℃)で24時間撹拌した。適切な方法で反応を止め、MNFS60セル、SDS−PAGE(4%〜20%トリスグリシンゲルを使用する)、SE−HPLC;superose6カラム)でのin vitro活性分析のために試料を回収し、反応混合物のpHを調べた。いかなる析出物も取り除くために、反応混合物を13000rpmで5分間遠心分離した後、SE−HPLC分析及び精製を行った。SE−HPLCに好ましいバッファーは0.1Mのリン酸Na(pH6.9)であった。
3.2 GCSF−CA複合体の精製及び特徴付け
残りの反応混合物試料をAEXバッファーA(20mMの酢酸ナトリウム、50mMの塩化ナトリウム(pH5.0))で希釈して(反応混合物1.5ml+バッファーA 9ml)、pHを調べ、必要に応じてpHを5.0に調整し、AEXバッファーAで予め平衡化したAEXカラムに充填した。充填画分を回収し、標識した。カラムをAEXバッファーA(少なくとも5カラム体積)で洗浄し、画分(各画分1.5カラム体積)を回収し、標識した。AEXバッファーB(50mMのリン酸ナトリウム、0.65Mの塩化ナトリウム(pH7.0))で生成物を溶離し、画分(各1カラム体積の画分、6カラム体積)を回収し、標識した。2つの連続した画分がタンパク質含量中に存在しなかった場合(UV280nm)、次の工程に移った。精製中は試料を氷上に置いた。UV(280nm)でタンパク質濃度を分析した(1mg/mlのG−CSFの吸光度は約0.872であった)。SDS−PAGE及びSE−HPLCのために試料を回収した。混合物から遊離CAを取り除くために、HICを使用した。必要に応じて、試料を濃縮した。
【0067】
AEX画分含有複合体をプールし、充填溶液中で2.75Mの濃度になるように、(NHSOを添加した。それから、HICバッファーA(10mMのリン酸ナトリウム、2.75Mの硫酸アンモニウム(pH6.5))で予め平衡化したHICカラムにこの溶液を充填した。充填画分(各1.5カラム体積の画分)を回収し、標識した。HICバッファーAでカラムを洗浄し(少なくとも5カラム体積、流速=0.5ml/分)、画分(1.5カラム体積)を回収し、標識した。HICバッファーB(20mMのリン酸ナトリウム(pH7.4))で生成物を溶離し(流速=5ml/分)、画分(1カラム体積の画分、6カラム体積)を回収し、標識した。精製中は試料を氷上に置いた。UV(280nm)でタンパク質濃度を分析した。精製複合体を含有するHIC画分を組合せて、溶液中の複合体組成物を50%ソルビトール溶液及び10mg/mlのTween20溶液で調整し、5%ソルビトール及び0.025mg/mlのTween20の最終組成物を得た。それから、4±1℃で溶液を濃縮し、UV(280nm)でタンパク質濃度を分析した。(例えば遊離のタンパク質/凝集体等から複合体を分離するために)SE−HPLCによってさらに精製することも可能である。複合体を滅菌濾過し、活性分析のために並びにSDS−PAGE及びSE−HPLCによる特徴付けのために試料を回収した。必要に応じて、タンパク質分析及びCA分析のために、アリコートを取り出した。次に使用するまで残りを4±1℃で保存し、SE−HPLCで物理的安定性を試験した。
【0068】
溶液中のGCSFの安定性及び誘導体化度に影響を与える様々なプロセスの効果を試験した。
結果
低pH(pH5.5)及び4±1℃で反応を行うことによってN末端で選択的に、(20mgスケールで)顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)のコロミン酸(CA)複合体を調製及び精製する手法が上記に詳述される。これは、シアノ水素化ホウ素ナトリウム存在下での結合、その後の遊離G−CSFを取り除くためのイオン交換クロマトグラフィ(AEX)を用いた精製、その後の疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)によるCAの除去を伴う。N末端のαアミノ基の選択的誘導体化に有利なように、及びまた反応中のGCSFの凝集を最小限にするのに低pHを用いた。最終反応バッファーの組成は、10mMのNaOAc(pH5.5)において5%ソルビトール、0.5mg/mlのTween20であった。
【0069】
SE−HPLC(GCSFと比較したGCSF−CSのリテンションタイムの変化、両方の部分が同時に溶離もする)、イオン交換クロマトグラフィ(AECカラムでの複合体の結合)及びポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE、分子量の高い種のバンドのシフト)によって、GCSF−CA複合体の形成を確認した。(MNFS−60セルにおける)in vitro細胞株分析で使用される複合体は、天然タンパク質に比べて約40%活性であった。製剤添加剤なしで調製した複合体によって、誘導体化度が低いタンパク質が凝集した。図3.1の左側は、Tween20の存在下で調製した、GCSF−CAの39kDaの反応混合物に対する24時間後のSE−HPLCデータを示す。特徴付け条件は、Superdex200、0.15Mの重炭酸アンモニウム(pH7.8)であった。表2はピーク解析を示す。
【0070】
【表2】

【0071】
図3.1の右側はSDS−PAGEの結果を示す。
4.1 製剤添加剤によるN末端レプチン−CA複合体の調製
レプチンは凍結乾燥粉末として与えられ(分子量16240)、−80℃で保存した。結合のために添加するコロミン酸(例えば酸化又は非酸化コロミン酸、7.5モル過剰)の量を算出した。最小量の酢酸ナトリウムバッファー中にコロミン酸を溶解し、濾過して、pHを5.5に調整した。レプチン溶液(20mMの酢酸ナトリウム、1%スクロース、10mMのL−グルタミン酸および0.01% Tween20(pH5.5)におけるタンパク質)中にコロミン酸溶液を添加した後、反応混合物中で50mM又は3.17mg/mlにするのに必要なμlのNaCNBHを添加して、ゆっくり混合し、最終反応混合物のpHを調べて、pHを5.5に調整した。管を封止し、所望の温度(4±1℃)で24時間撹拌した。インキュベート後、(SDS−PAGE、SE−HPLC等のために)必要な試料を回収した。UV(280nm)でタンパク質濃度を分析した(1mg/mlのレプチンの吸光度は0.878である)。タンパク質の誘導体化度及び安定性への影響が異なる様々なプロセスを試験した。
4.2 レプチン−CA複合体の精製及び特徴付け
余分なCA及び遊離レプチンを反応混合物から取り除くのに、それぞれHIC及びIECを使用した。タンパク質分析及びCA分析のためにアリコートを取り出した。使用するまで残りを−80℃で保存した。SDS−PAGE、SE−HPLC、ウェスタンブロッティング、CA及びタンパク質分析等によって、生成物を特徴付けた。
結果
低pH(pH5.5)及び4±1℃で反応を行うことによってN末端で選択的に、(5mgスケールで)レプチンのコロミン酸(CA)複合体を調製及び精製する手法が上記に示されている。これは、シアノ水素化ホウ素ナトリウム存在下での結合、その後の遊離G−CSFを取り除くためのイオン交換クロマトグラフィ(AEX)を用いた精製、その後の疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)によるCAの除去を伴う。N末端のαアミノ基の選択的誘導体化に有利なように、及びまた反応中のGCSFの凝集を最小限にするのに低pH及び製剤添加剤を用いた。最終反応バッファーの組成は、20mMの酢酸ナトリウム、1%スクロース、10mMのL−グルタミン酸及び0.01% Tween20(pH5.5)中のタンパク質であった。
【0072】
SE−HPLC(レプチンと比較したレプチン−CAのリテンションタイムの変化、両方の部分が同時に溶離もする)、イオン交換クロマトグラフィ(AECカラムへの複合体の結合)及びポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE、分子量の高い種のバンドのシフト)によって、レプチン−CA複合体の形成を確認した。製剤添加剤なしで調製した複合体によって、誘導体化度が低いタンパク質が凝集した。
【0073】
図4.1の左側は、50kDaのCAO−レプチン複合体のSDS−PAGEを示し、右側はSEC−HPLCの結果を示す。
5.1 N末端エリスロポエチン(EPO)−CA複合体の調製
EPOは溶液として与えられ(10mMのリン酸バッファー、130mMのNaCl(pH7.0)中0.34mg/ml、比活性:110,000U/ml、分子量30600)、−32℃で保存した。タンパク質を2℃〜8℃で解凍し、必要量を2ml容エッペンドルフ管に入れた。必要量のコロミン酸を取り、タンパク質溶液を固体CAに添加しゆっくり混合した。反応混合物中で50mM又は3.17mg/mlにするのに必要なμlのシアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液を添加し、ボルテックスして、最終反応混合物のpHを調べて、必要に応じてpHを7.4に調整した。管を封止し、所望の温度(4±1℃)で24時間撹拌した。インキュベート後、(例えば活性分析、SDS−PAGE、SE−HPLCのために)必要な試料を回収した。
5.2 epo−CA複合体の精製及び特徴付け
残りの反応混合物試料をHICバッファーA(1.2Mの硫酸アンモニウム(pH6.3))で希釈して(試料1ml+バッファーA 4ml)、HICバッファーAで予め平衡化したHICカラムに充填した。充填画分を回収し、標識した。カラムをHICバッファーA(1.2Mの硫酸アンモニウム(pH6.3))(少なくとも10ml)で洗浄し、画分を回収し、標識した。HICバッファーB(10mMのトリスバッファー(pH7.0))で生成物を溶離し、初めの画分(0.5ml)を回収し、その後の0.5ml〜1ml画分を標識した。精製中は試料を氷上に保持した。
【0074】
UV(280nm)でタンパク質濃度を分析した(1mg/mlのEPOの吸光度は約0.743であった)。SDS−PAGEのために試料を取った。SE−HPLCによって複合体とEPOとを分離するにはCAの分子量が小さすぎる(例えば22kDa)場合、アニオン交換クロマトグラフィ(AXC)を用いて非結合EPOの分離を行った。AXCのために、HIC画分含有タンパク質をAXCバッファーA(10mMのトリスバッファー(pH7.0))で希釈して(試料1ml+AXCバッファーA 5ml)、AXCバッファーAで予め平衡化したAXCカラムに充填した。充填画分を回収し、標識した。カラムをAXCバッファーB(20mMの酢酸ナトリウム(pH3.0))(少なくとも10ml)で洗浄し、画分を回収し、標識した。AXCバッファーC(50mMのリン酸ナトリウムバッファー、1Mの塩化ナトリウム(pH7.0))で生成物を溶離し、初めの画分(0.5ml)を回収し、その後の0.5ml〜1ml画分を標識した。精製中は試料を氷上に保持した。
【0075】
(例えば使用するCAの分子量が高い場合(例えば39kDa)に、EPOから複合体を分離するために)SE−HPLCによって代替的な精製を行うことが可能である。UV(280nm)でタンパク質濃度を分析した(1mg/mlのEPOの吸光度は約0.743である)。SDS−PAGEのために試料を回収した。
【0076】
タンパク質分析及びCA分析のためにアリコートを取り出した。使用するまで残りを−20℃で保存した。SDS−PAGEによって、生成物を特徴付けた。EPOの活性を測定するために、フェニルヒドラジンを腹腔内注射することによって人為的に貧血状態にしたマウスの脾臓から単離した、in vitroで増殖を誘導する赤血球前駆細胞における試料を使用した。Krystal(1972)で報告された方法に基づき、プロトコルを調整した。この分析は、赤血球前駆細胞にEPOを添加すること、及びH−チミジンの取り込み速度を求めることによってDNA複製速度を測定することによる。in vivoの薬物動態(PK)及び薬力学(PD)試験をB6D2F1マウスで行った。
結果
SE−HPLC(EPOと比較したEPO−CAのリテンションタイムの変化、両方の部分が同時に溶離もする)、イオン交換クロマトグラフィ(AECカラムへの複合体の結合)及びポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE、分子量の高い種のバンドのシフト)によって、EPO−CA複合体の形成を確認した(図5.3)。ポリシアル化試料はin vitroで活性であり、未処理(plain)EPOに対して非常に優れたプロファイル(PK及びPD)を示した。図5.1及び図5.2はin vivoの結果を示す。
【0077】
図5.3の左側は、24時間後のEPO−CAの39kDaの複合体のSE−HPLCを示す。表3はピーク解析表である。特徴付けの条件:カラム Superdex200、バッファー 0.15Mの重炭酸アンモニウム(pH7.8)。
【0078】
【表3】

【0079】
6.1 N末端非グリコシル化(NGepo−CA)複合体の調製
無処理の(naked)EPOは溶液として与えられ(20mMのリン酸ナトリウムバッファー、300mMのNaCl(pH6.65)中0.18mg/ml、比活性:100000U/ml、分子量19000)、−32℃で保存した。タンパク質を2℃〜8℃で解凍し、必要量を2ml容エッペンドルフ管に入れた。結合のために添加するコロミン酸(例えば酸化又は非酸化コロミン酸)の量を算出した。必要量のコロミン酸を秤量し、重量を記録した。タンパク質溶液を固体CAに添加しゆっくり混合した。反応混合物中で50mM又は3.17mg/mlにするのに必要なμlのシアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液を添加し、ボルテックスして、最終反応混合物のpHを調べて、必要に応じてpHを7.4に調整した。管を封止し、所望の温度(4±1℃)で24時間撹拌した。インキュベート後、(例えば活性分析、SDS−PAGE、SE−HPLCのために)必要な試料を回収した。
6.2 NGepo−CA複合体の精製及び特徴付け
残りの反応混合物試料をHICバッファーA(1.2Mの硫酸アンモニウム(pH6.3))で希釈して(試料1ml+バッファーA 4ml)、HICバッファーAで予め平衡化したHICカラムに充填した。充填画分を回収し、標識した。カラムをHICバッファーA(少なくとも10ml)で洗浄し、画分を回収し、標識した。HICバッファーBで生成物を溶離し、初めの画分(0.5ml)を回収し、その後の0.5ml〜1ml画分を標識した。精製中は試料を氷上に保持した。UV(280nm)でタンパク質濃度を分析した(1mg/mlのnEPOの吸光度は約0.743であった)。SDS−PAGEのために試料を回収した。反応条件によっては、反応混合物中の無処理の遊離EPOがなくなるので、さらなる精製の必要はなかった。無処理のEPOが反応混合物中に存在していた場合は、Vivaspin6(5000 MWCO)を使用してHIC画分含有タンパク質を濃縮し、精製をSE−HPLCによって行うことが可能である。UV(280nm)でタンパク質濃度を分析した(1mg/mlのnEPOの吸光度は約0.743である)。SDS−PAGEのために試料を回収した。
【0080】
タンパク質分析及びCA分析のためにアリコートを取り出した。使用するまで残りを−20℃で保存した。SDS−PAGEによって、生成物を特徴付けた。
結果
SE−HPLC(NGEPOと比較したNGepo−CAのリテンションタイムの変化、両方の部分が同時に溶離もする)、イオン交換クロマトグラフィ(AECカラムでの複合体の結合)及びポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE、分子量の高い種のバンドのシフト)によって、NGepo−CA複合体の形成を確認した(図6.1〜図6.3)。図6.3の左側は、24時間後のEPO−CAの39kDaの複合体を示す。ポリシアル化試料はin vitroで活性であり、未処理NGepoに対して非常に優れたプロファイル(PK及びPD)を示した。
【0081】
図6.3は、SE−HPLCの結果を示す。ピーク解析を以下の表4に示す。特徴付け条件 − カラム Superdex200、バッファー:0.15Mの重炭酸アンモニウム(pH7.8)。
【0082】
【表4】

【0083】
図6.1はin vivoクリアランスの結果を示す。PSA−NGEPOは、NGEPOと比較して非常に優れたプロファイルを示した。
7.1 N末端インスリン−CA複合体の調製
インスリンを最低100mMのHClで溶解した後、必要なpHに調整した。結合のためのコロミン酸(例えば酸化又は非酸化コロミン酸)の量を算出した。必要量のコロミン酸を秤量し、最低量の反応バッファー中に溶解し、タンパク質溶液に添加して、ボルテックスミキサを使用してゆっくり混合した。反応混合物1ml当たり4mgの最終濃度を得るのに必要なμlのシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加した。必要に応じて反応混合物中に好適な安定剤を使用した。管を封止し、所望の温度(場合に応じて37℃)で48時間撹拌した。使用するタンパク質によって時間及び温度を変えてもよい。ポリシアル化タンパク質をIEC及びHICで精製した。24時間後、タンパク質−ポリマー複合体が100%に達した。これは、native−page、SDS−page、サイズ排除クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ等によって特徴付けられた。
【0084】
IECでは、(カラムに残留する)遊離インスリンから(カラムと結合しない)ポリシアル化インスリンを分離するために、High Trap SPカラムによるカチオン交換クロマトグラフィによって、インスリン及びインスリン−コロミン酸複合体を精製する。これは、カチオン交換樹脂を使用する5.2の等電点以下(少なくとも1つの以下のユニット)での複合体の分離を伴う。これらの複合体の活性は、健常なマウスで測定した。
7.2 インスリン−CA複合体の精製及び特徴付け
反応混合物試料をAEXバッファーA(0.05Mの酢酸ナトリウム(pH4.4))で5倍に希釈し、pHを調べて、必要に応じてpHを4.4に調整し、AEXバッファーAで予め平衡化したAEXカラム(流速=1ml/分)に充填した。充填画分(各1.5カラム体積の画分)を回収し、標識した。AEXバッファーA(0.05Mの酢酸ナトリウム(pH4.4))でカラムを洗浄し(少なくとも5カラム体積、流速=1ml/分)、画分(各1.5カラム体積の画分)を回収し、標識した。AEXバッファーB(0.05Mの酢酸ナトリウム、1Mの塩化ナトリウム(pH4.4))で生成物を溶離し(流速=1ml/分)、画分(各1カラム体積の画分、6カラム)を回収し、標識した。2つの連続した画分がタンパク質含量中に存在しなかった場合、次の工程に移った。精製中は試料を氷上に保持した。
【0085】
AEX画分含有複合体をプールし、HICバッファーA(0.8Mの硫酸アンモニウム、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.4))で10倍に希釈し、塩酸溶液又は水酸化ナトリウム溶液でpHを7.4に調整した。それから、HICバッファーA(0.8Mの硫酸アンモニウム、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.4))で予め平衡化したHICカラム(流速=0.3ml/分)にこの溶液を充填した。充填画分(各1.5カラム体積の画分)を回収し、標識した。HICバッファーAでカラムを洗浄し(少なくとも5カラム体積、流速=0.5ml/分)、画分(1.5カラム体積)を回収し、標識した。HICバッファーB(50mMのリン酸ナトリウム(pH7.4))で生成物を溶離し(流速=5ml/分)、画分(1カラム体積の画分、6カラム体積)を回収し、標識した。精製中は試料を氷上に保持した。UV(280nm)でタンパク質濃度を分析した。精製複合体を含有するHIC画分を組合せて、4±1℃で溶液を濃縮し、UV(280nm)でタンパク質濃度を分析した。
結果
SE−HPLC(インスリンと比較したインスリン−CAのリテンションタイムの変化、両方の部分が同時に溶離もする)、イオン交換クロマトグラフィ(CECカラムでの複合体の溶離)及びポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE、分子量の高い種のバンドのシフト)によって、インスリン−CA複合体の形成を確認した(図7.1及び図7.2)。ポリシアル化試料は、天然タンパク質と比べて優れたin vivo有効性を示した。
【0086】
図7.2において、HPLC条件は以下の通りである:カラム Superose12、バッファー:0.1Mのリン酸ナトリウム(pH6.9)、流速 0.25ml/分、注入量 200μl。
8.1 N末端インターフェロン−CA複合体の調製
IFNα2bのコロミン酸(CA)複合体を調製及び精製する手法は、シアノ水素化ホウ素ナトリウム存在下での結合、その後の遊離コロミン酸を取り除くためのHICによる精製、その後のAXC又はSE−HPLC(任意)のいずれかによる非結合IFNの除去を伴う(例として1mgスケール)。
【0087】
IFNα2bは溶液として与えられ(酢酸バッファー(pH5)中1.75mg/ml)、−32℃で保存した。タンパク質を2℃〜8℃で解凍し、必要量を2ml容エッペンドルフ管に入れた。反応混合物中のタンパク質濃度が1.75mg/mlよりも低かった場合、必要量のPBS(pH7.4)で希釈した。
【0088】
必要量のCAを秤量し、記録した。CAを最低量の反応バッファーに可溶化させ、タンパク質溶液に添加し、ボルテックスを使用してゆっくりと混合した。反応混合物中で50mM又は3.17mg/mlにするのに必要なμlを添加し、ゆっくり混合して、最終反応混合物のpHを調べて、必要に応じてpHを6.0に調整した。管を封止し、所望の温度(4±1℃)で24時間撹拌した。インキュベーション時間後、(例えば活性分析、SDS−PAGE、SE−HPLCのために)必要な試料を回収した。
8.2 インターフェロン−CA複合体の精製及び特徴付け
残りの反応混合物試料をHICバッファーA(25mMのトリスバッファー、3Mの塩化ナトリウム(pH7.5))で希釈して(試料1ml+バッファーA 4ml)、HICバッファーAで予め平衡化したHICカラムに充填した。充填画分を回収し、標識した。カラムをHICバッファーA(25mMのトリスバッファー、3Mの塩化ナトリウム(pH7.5))(少なくとも10ml)で洗浄し、画分を回収し、標識した。HICバッファーB(25mMのトリスバッファー(pH7.5))でカラムを溶離し、初めの画分(0.5ml)を回収し、その後の0.5ml〜1ml画分を回収し、標識した。精製中は試料を氷上に保持した。
【0089】
UV(280nm)でタンパク質濃度を分析した(1mg/mlのIFNの吸光度は約1である)。SDS−PAGEのために試料を回収した。
【0090】
アニオン交換クロマトグラフィ(AXC)又はSE−HPLCを使用して、非結合IFNの分離を行った。AXCのために、HIC画分含有タンパク質をAXCバッファーA(25mMのトリスバッファー(pH7.5))で希釈して(試料1ml+AXCバッファーA 5ml)、AXCバッファーAで予め平衡化したAXCカラムに充填した。充填画分を回収し、標識した。カラムをAXCバッファーB(50mMのリン酸ナトリウム、150mMの塩化ナトリウム(pH5))(少なくとも10ml)で洗浄し、画分を回収し、標識した。AXCバッファーC(50mMのリン酸ナトリウム、1Mの塩化ナトリウム(pH7))で生成物を溶離し、初めの画分(0.5ml)を回収し、その後の0.5ml〜1ml画分を標識した。精製中は試料を氷上に保持した。
【0091】
(例えばモノ複合体からジ複合体を分離するために)SE−HPLCによってさらなる精製を行った(図8.1)。
【0092】
UV(280nm)(1mg/mlのIFNの吸光度は約1である)又はBCA分析でタンパク質濃度を分析した。SDS−PAGEのために試料を回収した。タンパク質分析及びCA分析のためにアリコートを取り出した。使用するまで残りの生成物を−20℃で保存した。SDS−PAGEによって、生成物を特徴付けた。活性をダウディ細胞株で求めた。
結果
SE−HPLC(インターフェロンと比較したインターフェロン−CAのリテンションタイムの変化、両方の部分が同時に溶離もする)、イオン交換クロマトグラフィ(AECカラムへの複合体の結合)及びポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE、分子量の高い種のバンドのシフト)によって、インターフェロン−CA複合体の形成を確認した(図8.1〜図8.2)。ポリシアル化試料はin vitroで活性であり、未処理インターフェロンに対して非常に優れたプロファイル(PK)を示した。
【0093】
表5は、図8.1のSE−HPLCのピーク解析を示す。
【0094】
【表5】

【0095】
9.1. オベスタチンのポリシアル化
オベスタチンは、2.5kDaの食欲抑制ホルモンである。グレリン遺伝子によってコードされるが、オベスタチンはグレリンの食欲刺激効果に拮抗する。ラットのオベスタチン処理によって、食物摂取の抑制、空腸収縮の阻害、及び体重増加の低減が示されている。
9.2 N末端結合(部位特異的)
15モル過剰の14kDaの酸化したポリシアル酸(PSA)をバッファー中で溶解し、pHを6.0に調整した。それから、オベスタチン及び50mM(最終濃度)のシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加し、pHを再び調整して、反応混合物を必要量にした。18時間、ゆっくりと振盪させながら4±1℃で反応を行った。
9.3 ランダム結合(相対的)
10モル過剰の14kDaの酸化したPSAをバッファー中で溶解し、pHを7.4に調整した。それから、オベスタチン及び50mM(最終濃度)のシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加し、pHを再調整して、反応混合物を必要量にした。18時間、ゆっくりと振盪させながら4±1℃で反応を行った。
結合の解析
サイズ排除高速液体クロマトグラフィ(SE−HPLC)でリテンションタイムの低減、したがってサイズの増大によって、結合を確認する。0.25mL/分の流速で、0.1Mのリン酸ナトリウム(pH6.9)で予め平衡化したSE−HPLC Superose12カラムに結合反応物100μLを注入した。280nmでの吸光度の記録した。
【0096】
ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)ゲルでの移動性の低減によって、複合体を可視化する(図9)。非変性条件下で4%〜20%トリスグリシンゲルで試料を電気泳動した。レーン1:分子量マーカー、2:オベスタチン、3:pH6.0の反応物、4:pH7.4の反応物。
【0097】
SE−HPLCによって確認されたように、pH6.0及びpH7.4の両方でオベスタチン−PSA複合体が首尾よく作製された。SDS−PAGEによって、pH7.4で作製された複合体も可視化した。
10.1 DNアーゼIのポリシアル化
嚢胞性線維症(CF)患者では、気道中の粘性の化膿分泌物の滞留が、肺機能の低下及び感染の増悪の一因となる。肺の化膿分泌物は、感染に応じて集積する白血球を変性することによって放出される非常に高濃度の細胞外DNAを含有する。デオキシリボヌクレアーゼI(DNアーゼI)によるCF患者の治療によって、DNAが加水分解し、これにより痰の粘弾性が低減する。この治療は、全身性エリテマトーデスの治療及び腫瘍の標的化にも提案されている。
10.2 N末端結合(部位特異的)
20モル過剰の26kDaの酸化したポリシアル酸(PSA)をバッファー中で溶解し、pHを6.0に調整した。それから、ウシDNアーゼI(Samsong & Sigma)及び50mM(最終濃度)のシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加し、pHを再び調整して、反応混合物を必要量にした。18時間、ゆっくりと振盪させながら、37±1℃及び4±1℃で反応を行った。
10.3 ランダム結合(相対的)
10〜50モル過剰の14kDaの酸化したPSAをバッファー中で溶解し、pHを7.4に調整した。それから、ウシDNアーゼI(Samsong & Sigma)及び50mM(最終濃度)のシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加し、pHを再び調整して、反応混合物を必要量にした。18時間、ゆっくりと振盪させながら、37±1℃及び4±1℃で反応を行った。
10.4 結合の解析
ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)ゲルでの移動性の低減によって、複合体を可視化した(図10.1)。非変性条件下で4%〜20%トリスグリシンゲルで試料を電気泳動した。レーン1:分子量マーカー、2:ブランク、3:DNアーゼI、4:SigmaのDNアーゼI、5:ブランク、6:非酸化PSAを有するDNアーゼI、7:DNアーゼI酸化PSA(pH7.4)反応物、8:DNアーゼI酸化PSA(pH6.0)反応物。
10.5 複合体の精製
疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)−フェニルセファロースマトリクス、2.0Mの硫酸アンモニウムを含有する開始バッファー、硫酸アンモニウムを有しないバッファー中の溶離を用いて、DNアーゼI−PSA複合体を精製した。それから、溶離画分をイオン交換マトリクスQ−セファロースFast Flowに加え、塩化ナトリウムを含有するバッファーで溶離した。サイズ排除高速液体クロマトグラフィ(SE−HPLC)で、複合体の精製を確認した(図10.2)。0.25mL/分の流速で、0.1Mのリン酸ナトリウム(pH6.9)で予め平衡化したSE−HPLC Superose12カラムに結合反応物100μlを注入した。280nmでの吸光度の記録した。
【0098】
DNアーゼI−PSA複合体は、DNアーゼI単独と比べて、サイズ排除カラムにおけるリテンションタイムの低減を示す。
10.6 活性DNアーゼIの精製
ヘパリン−セファロース(sepahrose)クロマトグラフィによって活性DNアーゼIと熱不活化DNアーゼIとの混合物から活性DNアーゼIを精製した。低塩バッファー中のカラムにDNアーゼI混合物を加え、漸増勾配の塩化ナトリウムで溶離した。画分A12中のDNアーゼI 1mg当たりの活性は、試料の活性よりもおよそ4倍高かった。
10.7 複合体の活性
複合体の活性を測定し、メチル−グリーン分析(Sinicropi et. al.,(1994) Anal Biochem, 222(2):351-8)を使用して非結合DNアーゼIの活性と比較した。37±1℃で作製された精製DNアーゼI−PSA複合体は、非結合DNアーゼIと比べて(4mMのCaClバッファー(下記を参照されたい))中でおよそ10%の活性を示した。
【0099】
DNアーゼI及びDNアーゼI−PSA複合体のDNA加水分解活性に対するCaCl滴定の効果を測定した(n=1)(図10.3)。CaClは製剤添加剤である。メチル−グリーンDNアーゼI分析を設定し、さらにCaClを添加した。活性は、4mMのCaClバッファーにおける活性と比較して表す。結合DNアーゼI及び遊離DNアーゼIで、DNアーゼIのメチル−グリーン分析を設定し、最大100mMの濃度までの様々な濃度でCaClを添加した。CaClの添加によって、遊離DNアーゼIの活性よりも結合DNアーゼIの活性が増大したことが見出された。したがって、DNアーゼ−PSA複合体の完全活性化にはより多くのCaClが必要である。
結論
活性なDNアーゼI−PSA複合体は、シアノ水素化ホウ素ナトリウムの存在下で作製されている。複合体は、遊離DNアーゼIから精製され、遊離DNアーゼの活性に比べて、DNアーゼI 1mg当たりの活性はおよそ10%を示す。
参照文献
【0100】
【表6】


【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質又はペプチドの精製N末端誘導体を製造する方法であって、(i)酸性の水溶液中でタンパク質又はペプチドのN末端のアミン基でポリサッカライドを反応させ、N末端誘導体を生成し、(ii)工程(i)よりも高いpHの水溶液中で、得られたN末端誘導体を精製する、タンパク質又はペプチドの精製N末端誘導体を製造する方法。
【請求項2】
前記ポリサッカライドが反応性アルデヒド基を有し、工程(i)を還元条件下で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応性アルデヒド基が前記ポリサッカライドの非還元性末端にある、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリサッカライドが少なくとも1つのシアル酸ユニット、又はシアル酸ユニット由来の部分を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリサッカライドが、その非還元性末端及び/又は還元性末端でシアル酸ユニット、又はシアル酸ユニット由来の部分を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリサッカライドが実質的にシアル酸ユニットのみから成るポリシアル酸である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリサッカライドが、前記分子中に少なくとも2つ、好ましくは少なくとも5つ、より好ましくは少なくとも10個、最も好ましくは少なくとも50個のシアル酸ユニットを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記反応性アルデヒドが前記ポリサッカライドの還元性末端にあり、前記非還元性末端が、タンパク質のN末端と反応しないように不動態化している、請求項2、又は4〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(i)における前記水溶液のpHが4.0〜6.0の範囲であり、工程(ii)における前記水溶液のpHが6.5〜8.5の範囲である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記タンパク質が治療タンパク質である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記タンパク質がレプチン、インターフェロン、FSH、ガラクトシダーゼ又はDNアーゼである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
製剤添加剤が、工程(i)における前記酸性の水溶液に添加される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記製剤添加剤が、バッファー、安定剤、界面活性剤、塩、ポリマー、金属イオン、糖、ポリオール又はアミノ酸のうちの1つ又は複数から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記製剤添加剤がソルビトール、トレハロース又はスクロースである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記製剤添加剤が非イオン性界面活性剤である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記製剤添加剤が、PSA、PEG又はヒドロキシ−β−シクロデキストリンから選択されるポリマーである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記製剤添加剤が二価の金属イオン、好ましくはZn2+、Ni2+、Co2+、Cu2+、Sr2+、Fe2+、Ca2+又はMg2+である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記製剤添加剤がバッファーであり、該バッファーがリン酸ナトリウム/酢酸ナトリウムである、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
水素化ホウ素が工程(i)における前記酸性の水溶液中に存在することにより、前記還元条件が得られる、請求項2、又は3〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
タンパク質のポリシアル酸誘導体集団を含む組成物であって、該誘導体が2個〜200個のシアル酸ユニットを含み、該集団が実質的に該タンパク質のN末端誘導体のみから成る、タンパク質のポリシアル酸誘導体集団を含む組成物。
【請求項21】
前記タンパク質がレプチンであり、前記誘導体が100個〜150個のシアル酸ユニットを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記タンパク質がFSHであり、前記誘導体が75個〜200個のシアル酸ユニットを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
前記タンパク質がα−ガラクトシダーゼであり、前記誘導体が20個〜150個のシアル酸ユニットを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
前記タンパク質がDNアーゼであり、前記誘導体が2個〜120個のシアル酸ユニットを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項25】
前記タンパク質がIFNであり、前記誘導体が80個〜180個のシアル酸ユニットを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項26】
前記タンパク質がオベスタチンであり、前記誘導体が20個〜100個のシアル酸ユニットを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項27】
前記ポリシアル酸の多分散度が1.3未満、好ましくは1.2未満、最も好ましくは1.1未満である、請求項20〜25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
薬学的組成物であり、1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項20〜27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法によって得ることができるタンパク質又はペプチドのN末端誘導体。

【図2.1】
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【図2.2】
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【図3.1】
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【図4.1】
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【図5.1】
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【図5.2】
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【図5.3】
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【図6.1】
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【図6.2】
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【図6.3】
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【図7.1】
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【図7.2】
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【図7.3】
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【図8.1】
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【図8.2】
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【図9】
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【図10.1】
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【図10.2】
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【図10.3】
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【公表番号】特表2009−544680(P2009−544680A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521342(P2009−521342)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002839
【国際公開番号】WO2008/012540
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(507042545)リポクセン テクノロジーズ リミテッド (15)
【Fターム(参考)】