説明

ポリシラン系樹脂組成物

【課題】撥水性、耐熱性、耐光性、透明性などの特性が高い樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリシランと疎水性アルキル化合物とで樹脂組成物を構成する。前記ポリシランは、ポリモノアリールシラン単位、ポリジアリールシラン単位、及びポリアルキルアリールシラン単位から選択された少なくとも一種を含んでいてもよい。また、前記ポリシランは、モノC6−20アリールシラン単位、及びC1−6アルキルC6−20アリールシラン単位から選択された少なくとも一種を含んでいてもよい。前記疎水性アルキル化合物は、C6−24アルキル基と、重合性不飽和基、加水分解縮合性基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボニルハライド基、エポキシ基、及びイソシアネート基から選択された少なくとも一種とを有していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置(テレビジョン、パーソナルコンピュータなど)、携帯電話、デジタルカメラ、ゲーム機などの液晶ディスプレイに有用な撥水性、耐熱性、耐光性、透明性などの特性が高い樹脂組成物、この樹脂組成物で形成された液晶配向膜、その形成方法、及び前記液晶配向膜を備えた液晶素子に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビジョンやプロジェクターなどの電子機器の表示部分に液晶素子が用いられている。液晶素子は、一対の基板間に液晶を挟み込んだ構造をしており、液晶と接する基板の内面には、液晶分子の初期配向状態を制御するために配向膜が形成されている。前記配向膜としては、ポリイミドなどの有機配向膜が一般的である。
【0003】
例えば、特開平10−161133号公報(特許文献1)には、ポリイミド系高分子材料を基板に塗布し、加熱処理した後、ラビング処理を行うことにより形成される液晶配向膜において、薄膜が13nm以上20nm以下である液晶配向膜が記載されている。しかし、ポリイミドで構成された配向膜は、耐熱性が不十分であり、また、使用環境、使用時間などにより、光劣化を生じることがある。このような光劣化が起こると、配向膜が分解し、分解生成物が液晶の性能に悪影響を及ぼす場合がある。
【0004】
特に現在、普及が著しい表示装置(例えば、液晶テレビジョン、パーソナルコンピュータ)、携帯電話などの用途では、液晶配向膜の長期信頼性が課題とされている。そこで、熱、光、及び湿熱環境に影響を受けにくい配向膜として、酸化ケイ素などの無機材料で構成された無機配向膜を用いることが提案されている。例えば、特開平10−339876号公報(特許文献2)には、電極が形成され且つ前記電極表面が薄膜を形成した後ラビングされている基板の表面に単分子膜状の被膜が形成された液晶配向膜が記載されている。また、この文献では、被膜を構成する分子として臨界表面エネルギーの異なる複数種のシラン系界面活性剤を混合して用いることが記載されている。しかし、この文献の配向膜では、撥水性が充分でない場合がある。また、ゾルゲル法を用いて形成した酸化シリコン膜にラビング処理を施し、その表面に被膜を形成するため、酸化シリコン膜を形成する工程での材料の利用効率が低い。さらに、基板上の不要な位置にまで酸化シリコン膜が形成されるため、被膜を部分的に除去する処理や表面改質処理が必要となり、製造コストの増加や工程の複雑化が問題となる。さらにまた、ラビング処理を行うと、被膜の表面に付着したラビングクロス片などにより歩留まりが低下する。
【特許文献1】特開平10−161133号公報(請求項1)
【特許文献2】特開平10−339876号公報(請求項1及び3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、撥水性、耐熱性、耐光性、透明性などの特性が高い樹脂組成物、この樹脂組成物で形成された液晶配向膜、その形成方法、及び前記液晶配向膜を備えた液晶素子を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、耐溶剤性の高い樹脂組成物、この樹脂組成物で形成された液晶配向膜、その形成方法、及び前記液晶配向膜を備えた液晶素子を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、ラビング処理を行うことなく、簡便にかつ効率よく液晶配向膜を形成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ポリシランと疎水性アルキル化合物とで樹脂組成物を構成すると、耐熱性、耐光性、透明性などが高く、特に、撥水性を向上でき、有効な液晶配向膜を形成できることを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の樹脂組成物は、ポリシランと疎水性アルキル化合物とで構成されている。前記ポリシランは、ポリモノアリールシラン単位、ポリジアリールシラン単位、及びポリアルキルアリールシラン単位から選択された少なくとも一種を含んでいてもよい。また、前記ポリシランは、モノC6−20アリールシラン単位、及びC1−6アルキルC6−20アリールシラン単位から選択された少なくとも一種を含んでいてもよい。前記疎水性アルキル化合物は、C6−24アルキル基と、重合性不飽和基、加水分解縮合性基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボニルハライド基、エポキシ基、及びイソシアネート基から選択された少なくとも一種とを有していてもよい。また、前記疎水性アルキル化合物は、直鎖状C6−24アルキル基を有するシラン化合物、及び直鎖状C6−24アルキル基とエポキシ基とを有するエポキシ化合物から選択された少なくとも一種であってもよい。前記ポリシランと前記疎水性アルキル化合物との割合(重量比)は、ポリシラン/疎水性アルキル化合物=5/95〜95/5程度であってもよい。前記樹脂組成物は、さらに、架橋剤を含んでいてもよい。樹脂組成物が架橋剤を含んでいると、耐溶剤性を向上できる。
【0010】
本発明には、前記樹脂組成物で構成された液晶配向膜も含まれる。また、前記液晶配向膜は、透明基板上に形成されていてもよい。
【0011】
さらに、本発明には、互いに対向して形成された前記液晶配向膜と、これらの液晶配向膜の間に封入された液晶とで構成された液晶素子も含まれる。前記液晶は、ホメオトロピック又はホモジニアス配向性液晶であってもよい。
【0012】
さらにまた、本発明には、前記樹脂組成物を透明基板に塗布し、ラビング処理を行うことなく前記液晶配向膜を形成する方法も含まれる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、ポリシランと疎水性アルキル化合物とで樹脂組成物を構成するため、耐熱性、耐光性、透明性などが高く、特に、撥水性を向上できる。また、本発明の樹脂組成物は、架橋剤を含むことにより、特に、耐溶剤性を向上できる。さらに、前記樹脂組成物は、有効な液晶配向膜を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の樹脂組成物(ポリシラン系樹脂組成物)は、ポリシランと疎水性アルキル化合物とで構成されている。
【0015】
[ポリシラン]
前記ポリシランは、式(1a)、式(1b)及び式(1c)で表される構造単位から選択された少なくとも一種の構造単位を有していてもよい。
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、R〜Rは置換基を示す。)
前記式(1a)及び式(1b)において、R〜Rで表される置換基としては、炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基など)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、シリル基、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0018】
アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、へキシルなどのC1−14アルキル基(好ましくはC1−10アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基など)などが挙げられる。アルケニル基としては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニルなどのC2−14アルケニル基(好ましくはC2−10アルケニル基、さらに好ましくはC2−6アルケニル基など)などが挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシルなどのC5−14シクロアルキル基(好ましくはC5−10シクロアルキル基、さらに好ましくはC5−8シクロアルキル基など)などが挙げられる。シクロアルケニル基としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニルなどのC5−14シクロアルケニル基(好ましくはC5−10シクロアルケニル基、さらに好ましくはC5−8シクロアルケニル基など)などが挙げられる。アリール基としては、フェニル、メチルフェニル(トリル)、ジメチルフェニル(キシリル)、ナフチルなどの置換基を有していてもよいC6−20アリール基(好ましくは置換基を有していてもよいC6−15アリール基、さらに好ましくは置換基を有していてもよいC6−12アリール基など)などが挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピルなどのC6−20アリール−C1−4アルキル基(好ましくはC6−10アリール−C1−2アルキル基)などが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシなどのC1−14アルコキシ基(好ましくはC1−10アルコキシ基、さらに好ましくはC1−6アルコキシ基)が挙げられる。シクロアルキルオキシ基としては、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどのC5−14シクロアルキルオキシ基(好ましくはC5−10シクロアルキルオキシ基、さらに好ましくはC5−8シクロアルキルオキシ基)などが挙げられる。アリールオキシ基としては、フェノキシ、ナフチルオキシなどのC6−20アリールオキシ基(好ましくはC6−15アリールオキシ基、さらに好ましくはC6−12アリールオキシ基)などが挙げられる。アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ、フェニルプロピルオキシなどのC6−20アリール−C1−4アルキルオキシ基(好ましくはC6−10アリール−C1−2アルキルオキシ基)などが挙げられる。アミノ基としては、アミノ基(−NH)、置換アミノ基(前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基などで置換されたN−モノ又はN,N−ジ置換アミノ基など)などが挙げられる。シリル基としては、シリル基、ジシラニル基、トリシラニル基などのSi1−10シラニル基(好ましくはSi1−6シラニル基)、置換シリル基(例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基などで置換された置換シリル基)などが挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0019】
また、R〜Rで表される置換基が、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、シリル基である場合は、これらの置換基は、さらに、前記例示のアルキル基、アリール基、アルコキシ基などの置換基を有していてもよい。
【0020】
〜Rで表される置換基のうち、アルキル基(例えば、メチル基など)などの炭化水素基;アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基などの芳香族環を含む置換基(特に、フェニル基などのアリール基など)などが好ましい。
【0021】
好ましいポリシランとしては、置換基R及びRのうち少なくとも一方がアリール基(特にC6−20アリール基)である式(1a)で表される構造単位、及び置換基Rがアリール基(特にC6−20アリール基)である式(1b)で表される構造単位から選択された少なくとも一種を有するポリシラン[例えば、置換基Rがアリール基(特にC6−20アリール基)であり、かつRがアルキル基(特にC1−6アルキル基)である式(1a)で表される構造単位と、置換基Rがアリール基(特にC6−10アリール基)である式(1b)で表される構造単位とを有するポリシランなど]などが挙げられる。
【0022】
式(1a)で表される構造単位と式(1b)で表される構造単位との割合(モル比)は、前者/後者=1/99〜90/10、好ましくは5/95〜80/20、さらに好ましくは10/90〜70/30(10/90〜50/50)程度であってもよい。
【0023】
また、式(1c)で表される構造単位の割合は、ポリシランを構成するケイ素原子換算(モル換算)で、式(1a)、式(1b)及び式(1c)で表される構造単位の総量に対し、15モル%以下(例えば、0.01〜13モル%)、好ましくは10モル%以下(例えば、0.05〜8モル%)、さらに好ましくは5モル%以下(例えば、0.1〜4モル%程度)であってもよい。
【0024】
代表的なポリシランとしては、例えば、ホモポリマー[ポリジメチルシラン、ポリ(メチルプロピル)シラン、ポリ(メチルブチル)シラン、ポリ(メチルペンチル)シラン、ポリ(ジブチル)シラン、ポリ(ジヘキシル)シランなどのポリジアルキルシラン;ポリフェニルシランなどのポリモノアリールシラン(ポリアリールシラン);ポリ(ジフェニル)シランなどのポリジアリールシラン、ポリ(メチルフェニル)シランなどのポリ(アルキルアリール)シランなど];コポリマー[ジメチルシラン−メチルヘキシルシラン共重合体などのジアルキルシランと他のジアルキルシランとの共重合体;フェニルシラン−メチルフェニルシラン共重合体などのアリールシラン−アルキルアリールシラン共重合体;ジメチルシラン−メチルフェニルシラン共重合体、ジメチルシラン−フェニルヘキシルシラン共重合体、ジメチルシラン−メチルナフチルシラン共重合体、メチルプロピルシラン−メチルフェニルシラン共重合体などのジアルキルシラン−アルキルアリールシラン共重合体など]などが例示できる。詳しくは、例えば、R.D.Miller、J.Michl;Chemical Review、第89巻、1359頁(1989)、N.Matsumoto;Japanese Journal of Physics、第37巻、5425頁(1998)などに例示されている。これらのポリシランは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0025】
これらのうち、モノアリールシラン単位、ジアリールシラン単位、アルキルアリールシラン単位などを含むポリシラン、例えば、ポリモノアリールシラン(ポリモノC6−12アリールシランなど)、ポリジアリールシラン(ポリジC6−20アリールシランなど)、ポリアルキルアリールシラン(ポリC1−6アルキルC6−20アリールシランなど)などのホモポリマー;ジアリールシラン単位(ジC6−20アリールシラン単位など)とアルキルアリールシラン単位(C1−6アルキルC6−20アリールシラン単位など)とを含むコポリマー、アリールシラン単位(C6−20アリールシラン単位など)とアルキルアリールシラン単位(C1−6アルキルC6−20アリールシラン単位など)とを含むコポリマー、特に、アリールシラン−アルキルアリールシラン共重合体などのC6−20アリールシラン−C1−6アルキルC6−20アリールシラン共重合体(例えば、C6−20アリールシラン−C1−3アルキルC6−20アリールシラン共重合体など)などが好ましい。
【0026】
前記ポリシランの平均重合度(例えば、数平均重合度)は、例えば、5〜400、好ましくは10〜350、さらに好ましくは20〜300程度であってもよい。
【0027】
また、前記ポリシランの重量平均分子量は、300〜100,000、好ましくは400〜50,000、さらに好ましくは500〜20,000程度であってよい。
【0028】
前記ポリシラン(前記式(1a)〜式(1c)で表される構造単位のうち少なくとも1つの構造単位を有するポリシランなど)の形態は、特に制限されず、例えば、共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、くし型共重合体などであってもよい。
【0029】
前記ポリシランは、非環状ポリシラン(直鎖状ポリシラン、分岐鎖状ポリシラン、網目状ポリシランなど)であってもよく、環状ポリシランであってもよい。前記ポリシランが非環状ポリシランである場合は、ポリシランの末端基(末端置換基)は、水素原子、ハロゲン原子(塩素原子など)、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シリル基などであってもよく、通常、ハロゲン原子(塩素原子など)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、特に、ヒドロキシル基などである場合が多い。
【0030】
前記ポリシランが末端及び/又は側鎖にヒドロキシル基を有する場合、ポリシランの水酸基当量は、100〜50,000g/eq、好ましくは200〜30,000g/eq、さらに好ましくは300〜10,000g/eq程度であってもよい。
【0031】
(ポリシランの製造方法)
前記ポリシランは、種々の公知な方法を用いて調製できる。これらのポリシランを製造する方法としては、例えば、特定の構造単位を有するケイ素含有モノマーを原料として、マグネシウムを還元剤としてハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(「マグネシウム還元法」、WO98/29476号公報など)、アルカリ金属の存在下でハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(「キッピング法」、J.Am.Chem.Soc.,110,124(1988)、Macromolecules,23,3423(1990)など)、電極還元によりハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1161(1990)、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.897(1992)など)、金属触媒の存在下にヒドラジン類を脱水素縮重合させる方法(特開平4−334551号公報など)、ビフェニルなどで架橋されたジシレンのアニオン重合による方法(Macromolecules,23,4494(1990)など)、環状シラン類の開環重合による方法などが挙げられる。
【0032】
これらの製造方法のうち、得られるポリシランの純度、分子量分布、樹脂との相溶性が優れる点、ナトリウムや塩素含有量が少ない点、製造コストや安全性などの工業性の点から、マグネシウム還元法が最も好ましい。このようなマグネシウム還元法では、少なくともマグネシウム金属成分の存在下で、ハロシラン類を重合させることによりポリシランを合成できる。なお、マグネシウム還元法では、より効率よく高性能のポリシランを得るため、触媒として、マグネシウム金属成分と他の金属成分[例えば、リチウム化合物、リチウム化合物(リチウムハロゲン化物、ハロゲン化リチウム)ではないハロゲン化物]とを併用する場合が多い。このようなマグネシウム還元法の詳細については、特開2007−77190号公報などに記載されている。本発明のポリシランは、下記式(2a)〜式(2c)で表される化合物から選択された少なくとも一種を用い、特開2007−77190号公報に記載された方法に準じて製造できる。
【0033】
【化2】

【0034】
(式中、X〜Xはハロゲン原子、R〜Rは前記と同じ。)
前記式(2a)〜式(2c)において、X〜Xで表されるハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)としては、塩素原子及び臭素原子(特に塩素原子)が好ましく、同一又は異なるハロゲン原子であってもよい。
【0035】
[疎水性アルキル化合物]
疎水性アルキル化合物は、通常、疎水性アルキル基、例えば、へキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基などの直鎖状C6−24アルキル基(好ましくは直鎖状C6−20アルキル基、さらに好ましくは直鎖状C6−18アルキル基)などを有している。前記疎水性アルキル基は、環状であってもよいが、通常、非環状(直鎖状又は分岐状)である。これらの疎水性アルキル基は、一部又は全部がフッ素置換されていてもよい。フッ素置換された疎水性アルキル基を有するアルキル化合物を用いると、疎水性を向上することができる。前記疎水性アルキル化合物は、このような疎水性アルキル基を末端及び/又は側鎖に有していてもよい。
【0036】
また、前記疎水性アルキル化合物は、官能基又は反応性基(例えば、ポリシランの残存ヒドロキシル基など)と反応可能な置換基、例えば、重合性不飽和基[ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基など]、加水分解縮合性基(シラノール基、アルコキシシリル基、メルカプトシリル基、アルキルチオシリル基、ハロシリル基などの置換シリル基など)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボニルハライド基、エポキシ基、イソシアネート基などを有していてもよい。これらのうち、加水分解縮合性基(シラノール基、アルコキシシリル基、メルカプトシリル基、アルキルチオシリル基、ハロシリル基など)、エポキシ基、イソシアネート基などが好ましい。
【0037】
具体的な疎水性アルキル化合物としては、前記疎水性アルキル基(例えば、C6−24アルキル基、好ましくはC10−20アルキル基)を有するシラン化合物[疎水性アルキル基と、アルコキシル基とを有するシラン化合物(n−オクタデシルジメトキシシラン、n−オクタデシルメチルジメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチルメトキシジメトキシシランなどのC6−24アルキルジC1−2アルコキシシラン;n−へキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチルトリエトキシシランなどのC6−24アルキルトリC1−2アルコキシシランなど)など];前記疎水性アルキル基(例えば、C6−24アルキル基、好ましくはC6−20アルキル基)と、エポキシ基とを有するエポキシ化合物(1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシエイコサン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシデカン、3−ペルフルオロヘキシル−1,2−エポキシプロパン、3−ペルフルオロオクチル−1,2−エポキシプロパン、3−ペルフルオロデシル−1,2−エポキシプロパンなどのC6−12アルキル基と、エポキシ基とを有するエポキシ化合物など);高級脂肪族アルコール(オクチルアルコール、デシルアルコールなどのC6−24アルコールなど)のグリシジルエーテル;高級脂肪酸(オクタン酸、デカン酸などのC6−24アルカン酸など)のグリシジルエステル;高級脂肪族アミン(オクチルアミン、デシルアミンなどのC6−24アルキルアミンなど)のグリシジルアミンなどが挙げられる。
【0038】
これらの疎水性アルキル化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、C6−20アルキルトリC1−2アルコキシシラン(n−オクタデシルトリメトキシランなどのC15−20アルキルトリメトキシシランなど)などの疎水性アルキル基を有するシラン化合物などが好ましい。
【0039】
前記疎水性アルキル化合物の分子量は、100〜1,500、好ましくは200〜1,200、さらに好ましくは300〜1,000程度であってもよい。
【0040】
このような疎水性アルキル化合物を用いると、前記ポリシランの末端基(例えば、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ハロゲン原子)と、疎水性アルキル化合物の末端基とが架橋するためか、樹脂組成物の撥水性を向上できる。
【0041】
前記ポリシランと疎水性アルキル化合物との割合(重量比)は、樹脂組成物の塗布性及び液晶配向性を損なわない範囲から選択でき、前者/後者=5/95〜95/5、好ましくは30/70〜90/10、さらに好ましくは40/60〜85/15程度であってもよい。
【0042】
前記樹脂組成物は、触媒を含んでいてもよい。前記触媒を用いると、加水分解反応(ポリシランと疎水性アルキル化合物との反応など)を促進することができる。前記触媒は、通常、酸触媒である場合が多い。前記酸触媒としては、特に限定されず、無機酸[例えば、プロトン酸(硫酸、塩化水素(又は塩酸)、リン酸など)、ルイス酸(三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、塩化亜鉛など)など]、有機酸{例えば、スルホン酸(メタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸など)、脂肪族カルボン酸[例えば、アルカン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などのアルカンモノカルボン酸など)]、オキシカルボン酸(グリコール酸、乳酸、オキシプロピオン酸などの脂肪族オキシカルボン酸、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸などの芳香族オキシカルボン酸など)などのカルボン酸}などが挙げられる。これらの酸触媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。これらのうち、無機酸(プロトン酸など)、有機酸(酢酸などのC1−3アルカン酸など)などを用いる場合が多い。
【0043】
触媒の使用量は、特に制限されず、例えば、ベース樹脂成分(ポリシラン及び疎水性アルキル化合物の総量)100重量部に対して、0.01〜50重量部、好ましくは0.02〜30重量部、さらに好ましくは0.03〜10重量部(特に、0.05〜5重量部)程度であってもよい。
【0044】
また、前記樹脂組成物は、架橋剤を含んでいてもよい。前記架橋剤としては、シランカップリング剤、多価カルボン酸又はその酸無水物、多価エポキシ化合物、ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0045】
前記シランカップリング剤としては、前記疎水性アルキル化合物の項で例示の重合性不飽和基、加水分解縮合性基などを有するC1−4アルコキシシラン類(テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランなどのテトラC1−4アルコキシシランなど)などが挙げられる。
【0046】
前記多価カルボン酸としては、脂肪族多価カルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸;ブタントリカルボン酸などの脂肪族トリカルボン酸;ヘプタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸など)、芳香族多価カルボン酸(フタル酸など芳香族ジカルボン酸など)又はそれらの酸無水物などが挙げられる。
【0047】
前記多価エポキシ化合物としては、例えば、ジグリシジルエーテル類(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテルなどのビスフェノール型ジグリシジルエーテル;フェノールノボラックジグリシジルエーテル、クレゾールノボラックジグリシジルエーテルなどのノボラック型グリシジルエーテル;エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテルなどのアルキレングリコールジグリシジルエーテルなど);トリグリシジルエーテル類[グリセリントリグリシジルエーテル、トリアジン環を有するトリグリシジルエーテル類(トリグリシジルイソシアヌレートなど);2個以上のグリシジル基を有するグリシジルエステル類(フタル酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステルなどのジカルボン酸ジグリシジルエステルなど);2個以上のグリシジル基を有するグリシジルアミン類(ジグリシジルアニリンなどのジグリシジルアミン類、トリグリシジルアミノフェノールなどのトリグリシジルアミン類、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどのテトラグリシジルアミン類など)などが挙げられる。
【0048】
前記ポリイソシアネートとしては、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート[トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などのジイソシアネートなど]が挙げられる。
【0049】
これらのうち、多価エポキシ化合物、特に、トリグリシジルエーテル類[トリアジン環を有するトリグリシジルエーテル類(トリグリシジルイソシアネートなど)など]を用いる場合が多い。これらの架橋剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの架橋剤を使用すると、前記樹脂組成物の耐溶剤性を向上できる。
【0050】
架橋剤の使用量は、特に制限されず、例えば、ベース樹脂成分(ポリシラン及び疎水性アルキル化合物の総量)100重量部に対して、0.01〜50重量部、好ましくは0.03〜30重量部、さらに好ましくは0.06〜10重量部(特に、0.1〜5重量部)程度であってもよい。
【0051】
さらに、前記樹脂組成物は、慣用の添加剤(安定剤、硬化剤、可塑剤、界面活性剤、溶解促進剤、着色剤など)を含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0052】
添加剤の使用量は、特に制限されず、例えば、ベース樹脂成分(ポリシラン及び疎水性アルキル化合物の総量)100重量部に対して、0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜50重量部程度の範囲から適宜選択できる。
【0053】
また、前記樹脂組成物の被覆性(塗布性)を改善するため、樹脂組成物は、溶媒を含んでいてもよい。前記溶媒としては、例えば、エーテル類(1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状C4−6エーテル;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタンなどの鎖状C4−6アルキルエーテルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなどのC3−6ジアルキルケトン、シクロヘキサノンなどのシクロアルカノンなど)、エステル類(ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのカルボン酸C1−4アルキルエステル;エトキシエチルプロピオネートなど)、炭化水素系類[脂肪族炭化水素類(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレンなど)など]、アルコール類(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどの一価アルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどの多価アルコール類など)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのC1−4アルキルセロソルブ類など)、カルビトール類(メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトールなどのC1−4アルキルカルビトール類など)、グリコールエーテルエステル類(セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて混合溶媒として使用してもよい。
【0054】
前記溶媒の使用量は、樹脂組成物中の固形分1重量部に対して、10〜500重量部、好ましくは20〜300重量部、さらに好ましくは30〜200重量部程度であってもよい。
【0055】
[液晶配向膜]
前記樹脂組成物は、耐熱性、耐光性、透明性、撥水性などの特性が高いため、液晶配向膜として有用である。また、前記液晶配向膜は、透明基板上に形成されていてもよい。
【0056】
液晶配向膜の厚みは、10〜300nm、好ましくは20〜200nm、さらに好ましくは30〜100nm程度であってもよい。
【0057】
前記透明基板の原料としては、例えば、ガラス[酸化物系ガラス(シリカガラス(石英ガラス)、ソーダ石灰ガラス、鉛アルカリケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、アミノケイ酸ガラスなどのケイ酸系ガラス;ホウ酸塩系ガラス;リン酸塩系ガラスなど)、非酸化物系ガラス(カルコゲナイドガラス、フッ化物ガラス、合金ガラス、オキシハライドガラスなど)など]、セラミックス、透明性を有するプラスチック[環状オレフィン系樹脂(シクロペンタジエンなどのシクロアルカジエンなどを重合成分とするポリマーなど)、アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチルなどのポリメタクリル酸アルキルなど)、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂など]などが挙げられる。これらのうち、ケイ酸系ガラス(酸化物系ガラスなど)などを用いる場合が多い。
【0058】
なお、透明基板の表面は、透明導電膜で被覆されていてもよい。前記透明導電膜は、透明性及び導電性を有する金属(酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛などの金属酸化物など)などで構成されていてもよい。
【0059】
前記液晶配向膜は、前記樹脂組成物を透明基板に塗布し、必要により、慣用の方法で加熱処理などを行い形成できる。前記樹脂組成物を用いるため、ラビング処理を行うことなく、簡便にかつ効率よく液晶配向膜を形成できる。
【0060】
前記樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、スピンコーティング法、ロールコーティング法、カーテンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、キャスト法、バーコーティング法、グラビアコーティング法などが挙げられる。
【0061】
加熱温度は、40〜250℃、好ましくは80〜200℃、さらに好ましくは100〜190℃(特に、120〜180℃)程度であってもよい。溶媒を使用する場合、加熱温度(乾燥温度)は、溶媒の種類に応じて、40〜200℃、好ましくは60〜180℃、さらに好ましくは80〜160℃程度であってもよい。また、架橋剤を使用する場合、加熱温度(硬化温度)は、架橋剤の種類に応じて、100〜250℃、好ましくは110〜230℃、さらに好ましくは120〜200℃程度であってもよい。
【0062】
加熱時間(又は乾燥時間又は硬化時間)は、10秒間〜5時間、好ましくは30秒間〜3時間、さらに好ましくは1分間〜1時間程度であってもよい。
【0063】
また、本発明には、互いに対向して形成された前記液晶配向膜と、これらの液晶配向膜の間に封入された液晶とで構成された液晶素子も含まれる。
【0064】
前記液晶としては、ネマチック液晶、コレステリック液晶、ディスコチック液晶、ライオトロピック液晶ポリマー、サーモトロピック液晶ポリマーなどが挙げられる。
【0065】
前記液晶は、ホメオトロピック配向性液晶(垂直配向性液晶)、ホモジニアス配向性液晶(平行配向性液晶)、傾斜配向性液晶などであってもよい。これらのうち、特に、ホメオトロピック配向性液晶、ホモジニアス配向性液晶などである場合が多い。
【0066】
また、液晶層の厚みを正確に、かつ均一に制御するために、前記液晶配向膜の間にスペーサーを用いてもよい。スペーサーとしては、ガラス、シリカ、フォトスペーサー(光硬化反応により形成されるスペーサー、例えば、光硬性樹脂で形成されるスペーサーなど)が挙げられる。これらのうち、フォトスペーサーなどを用いる場合が多い。スペーサーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0067】
前記スペーサーは、対向させた液晶配向膜の間に形成されていればよく、フォトスペーサーを用いる場合は、例えば、光硬化性樹脂と溶媒とで構成された組成物を前記液晶配向膜に塗布し、光硬化させてフォトスペーサーを形成できる。前記液晶配向膜は、撥水性、耐溶剤性などの特性が高いため、溶媒を用いても好適に使用できる。
【0068】
溶媒としては、前記樹脂組成物の項で例示の溶媒が挙げられ、ケトン類(メチルエチルケトンなど)、エステル類(乳酸エチル、エトキシエチルプロピオネートなど)、芳香族炭化水素類(キシレンなど)、グリコールエーテルエステル類(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)などを用いる場合が多い。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の樹脂組成物は、撥水性、耐熱性、耐光性、透明性などの特性が高いため、画像表示装置(テレビジョン、パーソナルコンピュータなど)、携帯電話、デジタルカメラ、ゲーム機(携帯ゲーム機など)、電子辞書などの液晶ディスプレイの液晶配向膜などに利用できる。
【実施例】
【0070】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0071】
[耐溶剤性]
作製した液晶配向膜(3cm×3cm)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20mLに浸漬し、耐溶剤性を評価した。
【0072】
[耐熱性]
島津製作所(株)製、「TGA−50」装置を用いて、空気雰囲気下及び窒素雰囲気(流量100ml/分)中、加熱速度5℃/分で、熱重量分析(TGA)を行い、液晶配向膜の耐熱性を評価した。
【0073】
[撥水性]
接触角測定装置(協和界面科学(株)製、DropMaster)を用いて、水の接触角を測定した。
【0074】
実施例1
(1)樹脂組成物の調製
フェニルシラン−メチルフェニルシラン共重合体(大阪ガスケミカル(株)製、オグソールSI−20−10)10重量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40重量部に溶解した。この溶液にn−オクタデシルトリメトキシシラン(アヅマックス(株)製)3重量部、及び触媒である酢酸1重量部を添加して室温で3日間撹拌した。この溶液にエポキシ系架橋剤(トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート、日産化学工業(株)製、TEPIC)1.25重量部を加え、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート45重量部で希釈した後、濾過し樹脂組成物を得た。
【0075】
(2)液晶配向膜の作製
得られた樹脂組成物を、ITO(酸化インジウムスズ)蒸着ガラス基板にスピンコーティング法により、塗布し、160℃の温度で30分間加熱乾燥し、液晶配向膜を得た。膜厚は、約100nmであった。液晶配硬膜の撥水性を測定した。また、液晶配向膜の耐溶剤性を評価したところ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対して耐溶剤性を示した。さらに、液晶配向膜の耐熱性を評価したところ、200℃程度の高温でも、重量減少が2%程度であり、高い耐熱性を示した。
【0076】
(3)液晶セルの作製
配向膜が形成された基板を2枚用意した。セルギャップを6μmに設定して2枚の基板を対向配置し、その間に液晶(メルク(株)製、MLC−2038、液晶転移温度79.9℃)を注入して液晶セルを作製した。得られた液晶セルについて、2枚の直交偏光板間で配向性を調べたところ、良好なホメオトロピック配向を示した。さらに、3Vの電圧を印加することにより、可視光の透過が確認され、配向変化が起こっていることが示された。
【0077】
実施例2
n−オクタデシルトリメトキシシランを3重量部に代えて、5重量部用いる以外は実施例1と同様にして液晶配向膜を得た。膜厚は、約100nmであった。液晶配硬膜の撥水性を測定した。また、液晶配向膜の耐溶剤性を評価したところ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対して不溶であり、高い耐溶剤性を示した。さらに、実施例1と同様に液晶セルを作製し、配向性を調べたところ、良好なホメオトロピック配向を示した。
【0078】
実施例3
n−オクタデシルトリメトキシシランを3重量部に代えて、10重量部用いる以外は実施例1と同様にして液晶配向膜を得た。膜厚は、約100nmであった。液晶配硬膜の撥水性を測定した。また、液晶配向膜の耐溶剤性を評価したところ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対して不溶であり、高い耐溶剤性を示した。さらに、実施例1と同様に液晶セルを作製し、配向性を調べたところ、良好なホメオトロピック配向を示した。
【0079】
比較例1
n−オクタデシルトリメトキシシラン及び触媒を使用しない以外は、実施例1と同様にして、液晶配向膜を得た。膜厚は、約100nmであった。液晶配向膜の撥水性を測定した。また、実施例1と同様に液晶セルを作製し、配向性を調べたところ、一軸配向しなかった。
【0080】
比較例2
ポリシラン及び触媒を使用しない以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を、ITO蒸着ガラス基板にスピンコーティング法により塗布したが、製膜できなかった。
【0081】
結果を表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
表1から明らかなように、比較例に比べ、実施例では、ポリシランと疎水性アルキル化合物とで樹脂組成物を構成するため、撥水性が高い液晶配向膜が得られた。また、実施例では、液晶分子がホメオトロピック配向である液晶セルが得られた。さらに、実施例では、耐溶剤性が高く、200℃程度の高温でも高い耐熱性を示す液晶配向膜が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシランと疎水性アルキル化合物とで構成された樹脂組成物。
【請求項2】
ポリシランが、モノアリールシラン単位、ジアリールシラン単位、及びアルキルアリールシラン単位から選択された少なくとも一種を含む請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
ポリシランが、モノC6−20アリールシラン単位、及びC1−6アルキルC6−20アリールシラン単位から選択された少なくとも一種を含む請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
疎水性アルキル化合物が、C6−24アルキル基と、重合性不飽和基、加水分解縮合性基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボニルハライド基、エポキシ基、及びイソシアネート基から選択された少なくとも一種とを有する請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
疎水性アルキル化合物が、C6−24アルキル基を有するシラン化合物、及びC6−24アルキル基とエポキシ基とを有するエポキシ化合物から選択された少なくとも一種である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
ポリシランと疎水性アルキル化合物との割合(重量比)が、ポリシラン/疎水性アルキル化合物=5/95〜95/5である請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、架橋剤を含む請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物で構成された液晶配向膜。
【請求項9】
透明基板上に形成されている請求項8記載の液晶配向膜。
【請求項10】
互いに対向して形成された請求項8又は9記載の液晶配向膜と、これらの液晶配向膜の間に封入された液晶とで構成された液晶素子。
【請求項11】
液晶が、ホメオトロピック又はホモジニアス配向性液晶である請求項10記載の液晶素子。
【請求項12】
請求項1記載の樹脂組成物を透明基板に塗布し、ラビング処理を行うことなく請求項8又は9記載の液晶配向膜を形成する方法。

【公開番号】特開2009−235358(P2009−235358A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86892(P2008−86892)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】