説明

ポリシラン類の製造方法

【課題】煩雑な操作を必要とすることなく、安全性に優れ、しかも安価に所望のポリシランを製造する方法を提供する。
【解決手段】一般式(1):
(R12Si(X12 (1)
で表わされるジハロシラン化合物、一般式(2):
2Si(X23 (2)
で表わされるトリハロシラン化合物、または一般式(3):
Si(X34 (3)
で表わされるテトラハロシラン化合物よりなる群から選択される1種または2種以上に、溶媒中、アルカリ金属塩および一般式(4):
【化1】


で表わされる金属錯体の存在下でマグネシウムを作用させることを特徴とするポリシラン類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシラン類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリシランは炭化ケイ素材料前駆体として実用化されているほか、従来の炭素系高分子材料と異なったユニークな性質を持つため注目を集めている。特に、光に活性な主鎖を有することから光・電子機能材料として種々の応用が期待できるため、フォトレジスト、有機感光体、光導波路、光メモリーなどへの応用が精力的に行われている。
【0003】
ポリシラン類の製造方法として、金属ナトリウムを用いてジクロロジフェニルシランを反応させる方法が報告されている(非特許文献1)。その後、この方法の変法としてオートクレーブ中で反応させる方法が報告されている(非特許文献2)。しかしながら、これらの方法では空気中で発火する危険性の高いアルカリ金属を加熱し、激しく攪拌して分散させることが必要で、場合により加圧装置が必要となり、収率も低く、生成したポリシラン類はその分子量分布が多数の分子量フラクションからなる分布を示し、品質面においても問題があるなど工業的な製造としては安全性、操作性、収益性に問題がある。
【0004】
これらの欠点を解決するために種々のポリシランの製造法が報告されている。たとえば、(1)ビフェニルでマスクしたジシレンをアニオン重合させる方法(特許文献1)、(2)ヒドロシラン類を遷移金属錯体触媒により脱水素重縮合させる方法(特許文献2)、(3)環状シラン類を開環重合させる方法(特許文献3)、(4)ジハロシラン類を室温以下の温度で電極還元する方法(特許文献4)、(5)アルカリ金属塩の存在下、金属ハロゲン化物を触媒としてハロシラン類と金属マグネシウムを反応させる方法(特許文献5〜9)などがあげられる。
【0005】
しかしながら、(1)の方法では原料モノマーの合成が難しいこと、(2)の方法では生成したポリシランの物性に改良すべき点があること、(3)の方法では原料シラン化合物の合成が難しく、アルキルリチウム化合物が重合の際に必要になること、(4)の方法では高分子量のポリシランが得られるものの特殊な電解槽が必要であることなどの問題があり、これらの方法は工業的製造に適した方法であるとは言いがたい。(5)の方法では金属ナトリウム等のアルカリ金属に代えて金属マグネシウムを用いることで安全性が向上しており、特殊な原料や装置を用いることなく製造ができるものの、金属ハロゲン化物は触媒活性が低く、また有機溶媒への溶解性も低いことから、少量添加では反応が進行し難く、また添加量を多くしても得られるポリシランの収率は低く、分子量も小さいといった問題がある。さらに、分子量の制御も難しいという問題を抱えている。他方、多くの金属ハロゲン化物は吸湿性が非常に高く、空気中で容易に水和物や水酸化物(もしくは酸化物)に変換される傾向がある。本反応系において系中に水分や酸が混入されると、反応の進行を阻害したり、ポリマー鎖中に酸素が導入されることにより、高品質なポリシランを得ることが出来ないといった弊害が生じる。このため、金属ハロゲン化物を扱う際には、厳密な水分管理が必要となり、ハンドリング性の面において、金属ハロゲン化物を多量に用いた製造法は工業的に好ましくない。また、反応を進行させるために多量の金属ハロゲン化物を添加した場合、目的物であるポリシラン類中に金属ハロゲン化物由来の金属イオンが残存することになる。特に光導波路等の電子材料の用途においては、当該残存金属イオンは伝搬損失等の要因ともなり得ることから問題視され、金属ハロゲン化物の使用量の低減が求められている。さらに、重金属を含む金属ハロゲン化物においては環境的見地からその使用量低減が要望されている。
【0006】
【特許文献1】特開平3−91537号公報
【特許文献2】特開平5−32785号公報
【特許文献3】特開平5−170913号公報
【特許文献4】特開平5−230217号公報
【特許文献5】特開2002−226586号公報
【特許文献6】国際公開WO98/29476号パンフレット
【特許文献7】特開2001−281871号公報
【特許文献8】特開2001−48987号公報
【特許文献9】特開平10−182834号公報
【非特許文献1】J.Chem.Soc.,Vol.125(1924),p.2291
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.,Vol.71(1949),p.963
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、煩雑な操作を必要とすることなく、安全性に優れ、しかも安価に所望のポリシランを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究の結果、金属ハロゲン化物に代えて一般式(4)で示される金属錯体を用いることにより、従来技術が抱えていた問題点を解決することに成功した。つまり、金属ハロゲン化物に比べて、触媒活性および有機溶媒への溶解性が高く、かつ、空気中の水分に対して非常に安定である一般式(4)で示される金属錯体を金属ハロゲン化物に代えて使用することにより、次の作用効果が得られることを見出した。まず触媒の使用量を大幅に低減できる点、それにより製品中の残留金属イオンを大幅に低減できる点、また金属錯体が空気中の水分に安定で取り扱いが容易な面から工業的製造に適している点、さらに反応系に水分が混入しないことによりポリマー鎖中の酸素含有量が低い高品質のポリシランを得ることができる点である。これにより、安全性に優れ、しかも安価に分子量を制御しながら高収率で所望のポリシランを製造する方法を提供することができる。
【0009】
すなわち、本発明は次のポリシラン類の製造方法を提供する。
[1]一般式(1):
(R12Si(X12 (1)
(式中、2つのR1は、相互に同一または異なって、水素原子、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシアルキル基、アミノ基またはシリル基を表わし、2つのR1はそれらが結合しているケイ素原子と一緒になって環を形成していてもよい。2つのX1は、相互に同一または異なって、ハロゲン原子を表わす)で表わされるジハロシラン化合物、一般式(2):
2Si(X23 (2)
(式中、R2は、水素原子、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシアルキル基、アミノ基、シリル基またはシロキシ基を表わす。3つのX2は、相互に同一または異なって、ハロゲン原子を表わす)で表わされるトリハロシラン化合物、または一般式(3):
Si(X34 (3)
(式中、4つのX3は、相互に同一または異なって、ハロゲン原子を表わす)で表わされるテトラハロシラン化合物よりなる群から選択される1種または2種以上(ただし、一般式(3)で表わされるテトラハロシラン化合物の単独使用は除く)に、溶媒中、アルカリ金属塩および一般式(4):
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、nは1以上の整数である。Mは、銀、アルミニウム、ビスマス、セリウム、コバルト、銅、ジスプロシウム、エルビウム、ユーロピウム、鉄、ガリウム、ガドリニウム、ハフニウム、ホルミウム、インジウム、イリジウム、ランタン、ルテチウム、マンガン、モリブデン、ネオジム、ニッケル、オスミウム、パラジウム、プロメチウム、プラセオジム、白金、レニウム、ロジウム、ルテニウム、サマリウム、スカンジウム、スズ、テルビウム、チタン、ツリウム、バナジウム、タングステン、イットリウム、亜鉛、ジルコニウムよりなる群から選択される金属原子を表す。2つのR3は、相互に同一または異なって、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシアルキル基を表わす。R4は、水素原子、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、アラルキル基を表わす。)で表わされる金属錯体の存在下でマグネシウムを作用させることを特徴とする、式(5)〜(7):
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R1は、相互に同一または異なって、水素原子、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシアルキル基、アミノ基またはシリル基を表し、2つのR1はそれらが結合しているケイ素原子と一緒になって環を形成していてもよい。R2は、水素原子、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシアルキル基、アミノ基、シリル基またはシロキシ基を表わす)で表わされる構成単位の1種または2種以上(ただし、式(7)で表わされる構成単位のみからなるものは除く)からなるポリシラン類の製造方法。
【0014】
[2](a)一般式(1)で表わされるジハロシラン化合物、もしくは、(b)一般式(1)で表わされるジハロシラン化合物と一般式(2)で表わされるトリハロシラン化合物および/または一般式(3)で表わされるテトラハロシラン化合物とを使用し、(a)式(5)で表わされる構成単位からなるポリシラン類、もしくは、(b)式(5)で表わされる構成単位と式(6)で表わされる構成単位および/または式(7)で表わされる構成単位とからなるポリシラン類を得る前記[1]に記載のポリシラン類の製造方法。
【0015】
[3]一般式(4)において、Mが、コバルト、銅、鉄、イリジウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、亜鉛、アルミニウム、ビスマス、スズよりなる群から選択される金属原子である金属錯体を使用する前記[1]または[2]に記載のポリシラン類の製造方法。
【0016】
[4]一般式(4)において、R3がメチル基、R4が水素原子である金属錯体を使用する前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載のポリシラン類の製造方法。
【0017】
[5]アルカリ金属塩として、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウムから選択される少なくとも1種を使用する前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載のポリシラン類の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明のポリシラン類の製造方法によれば、従来法における金属ナトリウムや金属リチウムの代わりに取り扱いやすい金属マグネシウムを用い、アルカリ金属塩、金属錯体およびハロシラン類を混合して攪拌することにより目的のポリシラン類を簡便かつ安全に得ることができる。金属錯体は触媒として機能し、その使用量は金属マグネシウムを使用する従来法における金属ハロゲン化物に比べて極めて少量でよく、また金属錯体の添加量を変えることによりポリシランの分子量が制御でき、目的に応じたポリシランを製造することが可能となり、さらに副生物としての環状シラン化合物の生成を抑制できるので、ポリシランの収率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の方法においては、出発原料として、一般式(1)で表わされるジハロシラン化合物、一般式(2)で表わされるトリハロシラン化合物、一般式(3)で表わされるテトラハロシラン化合物の1種または2種以上が使用される。
【0020】
一般式(1)におけるR1は、相互に同一または異なって、水素原子、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシアルキル基、アミノ基またはシリル基を表わし、一般式(2)におけるR2は、相互に同一または異なって、水素原子、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシアルキル基、アミノ基、シリル基またはシロキシ基を表わす。
【0021】
1、R2で表わされる飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基、2−ドデシルヘキサデシル基、トリアコンチル基、ドトリアコンチル基、テトラコンチル基などの炭素数1〜40の直鎖状または分岐状アルキル基、さらに、これらがハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨード原子)、アルコキシ基(下記に記載するものなど)、シリル基(下記に記載するものなど)などの置換基の1種または2種以上で置換されたアルキル基、たとえばクロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル基、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル基、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピル基、トリメチルシリルメチル基など;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基などの炭素数3〜18の単環または2環以上の多環の環状飽和炭化水素基、さらにこれら環状飽和炭化水素基がアルキル基(前記したものなど)、アリール基(下記に記載するものなど)の置換基の1種または2種以上で置換されたもの、たとえば、4−t−ブチルシクロヘキシル基、4−フェニルシクロへキシル基など;または前記環状飽和炭化水素基を有するアルキル基(前記したものなど)、たとえばシクロヘキシルメチル基、アダマンチルエチル基などが挙げられる。
【0022】
1、R2で表わされる不飽和炭化水素基としては、ビニル基、エチニル基、アリル基、1−プロペニル基、プロパルギル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デカニル基、ドデカニル基、オクタデカニル基などの炭素数2〜18の直鎖状または分岐状アルケニル基、アルキニル基、さらに、これらの不飽和炭化水素基が、ハロゲン原子(前記したものなど)、アルコキシ基(下記に記載するものなど)、シリル基(下記に記載するものなど)、アリール基(下記に記載するものなど)の置換基の1種または2種以上で置換されたもの、たとえば、2−トリフルオロメチルエテニル基、2−トリフルオロメチルエチニル基、3−メトキシ−1−プロペニル基、3−メトキシ−1−プロピニル基、2−トリメチルシリルエテニル基、2−トリメチルシリルエチニル基、2−フェニルエテニル基、2−フェニルエチニル基など;シクロプロペニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基などの炭素数3〜18の環状不飽和炭化水素基;前記環状不飽和炭化水素基を有するアルキル基(前記したものなど)、たとえばシクロヘキセニルエチル基などが挙げられる。
【0023】
1、R2で表わされる芳香族炭化水素基としては、フェニル基、および、トリル基、ブチルフェニル基、ブトキシフェニル基などのアルキル基、アルコキシ基、アミノ基などの1種または2種以上で置換された置換フェニル基などが挙げられる。
【0024】
1、R2で表わされるアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基、ブチルフェネチル基、フェニルプロピル基、メトキシフェニルプロピル基などが挙げられ、ヘテロアラルキル基としては、ピリジルメチル基、ピリジルエチル基などが挙げられる。
【0025】
1、R2で表わされるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基などの炭素数1〜18のアルコキシ基が挙げられ、アリールオキシ基としては、フェノキシ基、およびトリルオキシ基、ブチルフェノキシ基などアルキル基などの置換基で置換された置換フェノキシ基などが挙げられる。R1、R2で表わされるアラルキルオキシ基としては、ベンジロキシ基、フェネチロキシ基などが挙げられ、アリールオキシアルキル基としては、フェノキシプロピル基、フェノキシブチル基などが挙げられる。
【0026】
1、R2で表わされるアミノ基としては、アミノ基、およびN−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジプロピルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、N,N−ジイソブチルアミノ基、N,N−ジ−tert−ブチルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基などのモノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基などが挙げられる。
【0027】
1、R2で表わされるシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基などのトリアルキルシリル基などが挙げられる。
【0028】
2で表わされるシロキシ基としては、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基、トリイソプロピルシロキシ基、トリプロピルシロキシ基、トリブチルシロキシ基などのトリアルキルシロキシ基、トリス(トリメチルシロキシ)シロキシ基、トリス(トリエチルシロキシ)シロキシ基、トリス(トリプロピルシロキシ)シロキシ基などのトリス(トリアルキルシロキシ)シロキシ基などが挙げられる。
【0029】
一般式(1)において、2つのR1がそれらが結合しているケイ素原子と一緒になって環を形成している場合の環状化合物としては、1,1−ジハロシロラン、1,1−ジハロシリナン、1,1−ジハロシレパン、1,1−ジハロシロカン、1,1−ジハロシロナン、1,1−ジハロ−1H−シロールなどが挙げられる。
【0030】
1、R2として好ましいものは、炭素数が1〜30の飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基などであり、特に好ましいものは、炭素数が1〜15のアルキル基、フェニル基などである。
【0031】
1〜X3で表わされるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨード原子などが挙げられ、塩素原子が特に好ましい。
【0032】
本発明の方法における出発物質である一般式(1)〜(3)で表わされるハロシラン化合物としては、R1〜R2、X1〜X3の組み合わせにより種々の化合物がある。これらハロシラン化合物を具体的に例示すると、アダマンチルエチルトリクロロシラン、アリル(クロロプロピル)ジクロロシラン、アリル(2−シクロヘキセニル−2−エチル)ジクロロシラン、アリルジクロロシラン、アリルヘキシルジクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、アリルトリクロロシラン、ベンジルトリクロロシラン、5−(ビシクロヘプテニル)メチルジクロロシラン、5−(ビシクロヘプテニル)トリクロロシラン、2−(ビシクロヘプチル)トリクロロシラン、ビス(トリメチルシリルメチル)ジクロロシラン、ビス[トリス(トリメチルシロキシ)シロキシ]ジクロロシラン、ブテニルメチルジクロロシラン、t−ブチルジクロロシラン、ブチルメチルジクロロシラン、t−ブチルメチルジクロロシラン、p−(t−ブチル)フェネチルトリクロロシラン、t−ブチルフェニルジクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、t−ブチルトリクロロシラン、クロロフェニルメチルジクロロシラン、クロロフェニルトリクロロシラン、[2−(3−シクロヘキセニル)エチル]メチルジクロロシラン、[2−(3−シクロヘキセニル)エチル]トリクロロシラン、3−シクロヘキセニルトリクロロシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、(シクロヘキシルメチル)トリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、(4−シクロオクテニル)トリクロロシラン、シクロオクチルトリクロロシラン、シクロペンチルトリクロロシラン、シクロブチルジクロロシラン、シクロプロピルジクロロシラン、デシルメチルジクロロシラン、デシルトリクロロシラン、ジアリルジクロロシラン、ジベンジロキシジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、ジ−t−ブチルジクロロシラン、ジクロロフェニルトリクロロシラン、ジシクロヘキシルジクロロシラン、ジシクロペンチルジクロロシラン、ジエトキシジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジヘキシルジクロロシラン、ジヨードシラン、ジイソプロピルジクロロシラン、ジメシチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジオクチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジ(p−トリル)ジクロロシラン、ジビニルジクロロシラン、ドコシルメチルジクロロシラン、ドデシルメチルジクロロシラン、ドデシルトリクロロシラン、エチルジクロロシラン、エチルメチルジクロロシラン、エチルトリクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)メチルジクロロシラン、(ヘプタフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリクロロシラン、ヘプチルメチルジクロロシラン、ヘプチルトリクロロシラン、ヘキサデシルトリクロロシラン、5−ヘキセニルトリクロロシラン、ヘキシルジクロロシラン、ヘキシルメチルジクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、イソブチルメチルジクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、イソプロピルメチルジクロロシラン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルメチルジクロロシラン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルトリクロロシラン、(p−メチルフェネチル)メチルジクロロシラン、2−メチル−2−フェニルエチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルメチルジクロロシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン、ノニルトリクロロシラン、オクタデシルメトキシジクロロシラン、オクタデシルメチルジクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、7−オクテニルトリクロロシラン、オクチルメチルジクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリクロロシラン、ペンチルトリクロロシラン、フェネチルメチルジクロロシラン、フェネチルトリクロロシラン、フェノキシトリクロロシラン、3−フェノキシプロピルトリクロロシラン、フェニルジクロロシラン、フェニルエチルジクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、(3−フェニルプロピル)メチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、1−プロペニルメチルジクロロシラン、プロピルメチルジクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラクロロシラン、テトラデシルトリクロロシラン、p−トリルメチルジクロロシラン、p−トリルトリクロロシラン、トリアコンチルトリクロロシラン、2−[2−(トリクロロシリル)エチル]ピリジン、4−[2−(トリクロロシリル)エチル]ピリジン、13−(トリクロロシリルメチル)ヘプタコサン、1−(トリクロロシリル)−3−(トリクロロシリルメチル)−7−メチルオクタ−6−エン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)メチルジクロロシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリクロロシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルジクロロシラン、(2−トリフルオロメチルエテニル)ジクロロシラン、ビス(2−トリフルオロメチルエテニル)ジクロロシラン、(2−トリフルオロメチルエチニル)ジクロロシラン、ビス(2−トリフルオロメチルエチニル)ジクロロシラン、(3−メトキシ−1−プロペニル)ジクロロシラン、ビス(3−メトキシ−1−プロペニル)ジクロロシラン、(3−メトキシ−1−プロピニル)ジクロロシラン、ビス(3−メトキシ−1−プロピニル)ジクロロシラン、(2−トリメチルシリルエテニル)ジクロロシラン、ビス(2−トリメチルシリルエテニル)ジクロロシラン、ビス(2−トリメチルシリルエチニル)ジクロロシラン、(2−フェニルエテニル)ジクロロシラン、ビス(2−フェニルエテニル)ジクロロシラン、(2−フェニルエチニル)ジクロロシラン、ビス(2−フェニルエチニル)ジクロロシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリクロロシラン、トリス(トリメチルシロキシ)シロキシジクロロシラン、ウンデシルトリクロロシラン、ビニルエチルジクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルオクチルジクロロシラン、ビニルフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシランなどが挙げられる。
【0033】
本発明の方法における目的化合物は、前記式(5)〜(7)で表わされる構成単位の1種または2種以上(ただし、式(7)で表わされる構成単位のみからなるものは除く)からなるポリシラン類である。式(5)の構成単位は、一般式(1)のジハロシラン化合物に由来するものである。式(6)の構成単位は、一般式(2)のトリハロシラン化合物に由来するものである。式(7)の構成単位は、式(3)のテトラハロシラン化合物に由来するものである。ポリシラン類の主鎖はケイ素原子同士が直接結合した鎖状構造のものであり、式(5)〜(7)におけるR1やR2と結合していない結合手は隣接する構成単位のケイ素原子と結合している。
【0034】
本発明においては、(A)式(5)で表わされる構成単位からなるポリシラン類、(B)式(5)で表わされる構成単位と式(6)で表わされる構成単位とからなるポリシラン類、(C)式(5)で表わされる構成単位と式(7)で表わされる構成単位とからなるポリシラン類、(D)式(5)で表わされる構成単位と式(6)で表わされる構成単位と式(7)で表わされる構成単位とからなるポリシラン類が好ましい。ポリシラン類(A)は、ケイ素原子からなる主鎖が実質的に直鎖状のものである。ポリシラン類(B)、(C)、(D)は、ケイ素原子からなる主鎖が分岐状のものであり、部分的に架橋している場合もある。
【0035】
ポリシラン類の分子量は、重量平均分子量で1000〜500000の範囲が好ましく、より好ましくは1000〜100000、さらに好ましくは5000〜50000の範囲である。
【0036】
本発明の方法で用いるアルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩などが挙げられる。
【0037】
前記アルカリ金属塩の具体例としては、例えば、臭化リチウム、炭酸リチウム、塩化リチウム、リン酸二水素リチウム、フッ化リチウム、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウム、ヘキサフルオロフッ化リン酸リチウム、ヨウ素酸リチウム、ヨウ化リチウム、硝酸リチウム、過塩素酸リチウム、リン酸リチウム、硫酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、チオシアン酸リチウムなどのリチウム塩;
臭化ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、フッ化ナトリウム、ヘキサフルオロアンチモン酸ナトリウム、ヘキサフルオロフッ化リン酸ナトリウム、ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硝酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、チオシアン酸ナトリウムなどのナトリウム塩;
臭素酸カリウム、臭化カリウム、炭酸カリウム、塩素酸カリウム、塩化カリウム、シアン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、フッ化カリウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸水素カリウム、硫酸水素カリウム、ヨウ素酸カリウム、ヨウ化カリウム、硝酸カリウム、リン酸カリウム、硫酸カリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム、チオシアン酸カリウムなどのカリウム塩;
臭化ルビジウム、炭酸ルビジウム、塩化ルビジウム、フッ化ルビジウム、ヨウ化ルビジウム、硝酸ルビジウム、過塩素酸ルビジウム、硫酸ルビジウムなどのルビジウム塩;
臭化セシウム、炭酸セシウム、塩化セシウム、フッ化セシウム、炭酸水素セシウム、ヨウ化セシウム、硝酸セシウム、過塩素酸セシウム、硫酸セシウムなどのセシウム塩などが挙げられる。これらアルカリ金属塩は単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0038】
前記アルカリ金属塩の中では、より好ましくは、リチウム塩、ナトリウム塩であり、特に好ましくは、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウムである。
【0039】
本発明の方法で用いる金属錯体は、一般式(4):
【0040】
【化3】

【0041】
で表わされ、Mは金属原子を示す。nは1以上の整数であり、好ましくは、2または3である。
【0042】
Mで表される金属原子としては、銀、アルミニウム、ビスマス、セリウム、コバルト、銅、ジスプロシウム、エルビウム、ユーロピウム、鉄、ハフニウム、ガリウム、ガドリニウム、ハフニウム、ホルミウム、インジウム、イリジウム、ランタン、ルテチウム、マンガン、モリブデン、ネオジム、ニッケル、オスミウム、パラジウム、プロメチウム、プラセオジム、白金、レニウム、ロジウム、ルテニウム、サマリウム、スカンジウム、スズ、テルビウム、チタン、ツリウム、バナジウム、タングステン、イットリウム、亜鉛、ジルコニウムなどが挙げられ、より好ましくは、コバルト、銅、鉄、イリジウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、亜鉛、アルミニウム、ビスマス、スズであり、特に好ましくは、ニッケル、パラジウム、鉄、コバルト、ロジウム、ルテニウムである。
【0043】
一般式(4)におけるR3は、相互に同一または異なって、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシアルキル基を表わす。R4は、水素原子、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、アラルキル基を表わす。
【0044】
3、R4で表わされる飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基、2−ドデシルヘキサデシル基、トリアコンチル基、ドトリアコンチル基、テトラコンチル基などの炭素数1〜40の直鎖状または分岐状アルキル基、さらに、これらがハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨード原子)、アルコキシ基(下記に記載するものなど)、シリル基(下記に記載するものなど)などの置換基の1種または2種以上で置換されたアルキル基、たとえばクロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル基、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル基、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピル基、トリメチルシリルメチル基など;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基などの炭素数3〜18の単環または2環以上の多環の環状飽和炭化水素基、さらにこれら環状飽和炭化水素基がアルキル基(前記したものなど)、アリール基(前記したものなど)などの置換基の1種または2種以上で置換されたもの、たとえば、4−t−ブチルシクロヘキシル基、4−フェニルシクロへキシル基など;または前記環状飽和炭化水素基を有するアルキル基(前記したものなど)、たとえばシクロヘキシルメチル基、アダマンチルエチル基などが挙げられる。
【0045】
3、R4で表わされる不飽和炭化水素基としては、ビニル基、エチニル基、アリル基、1−プロペニル基、プロパルギル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デカニル基、ドデカニル基、オクタデカニル基などの炭素数2〜18の直鎖状または分岐状アルケニル基、アルキニル基、さらに、これらの不飽和炭化水素基が、ハロゲン原子(前記したものなど)、アルコキシ基(下記に記載するものなど)、シリル基(下記に記載するものなど)、アリール基(下記に記載するものなど)の置換基の1種または2種以上で置換されたもの、たとえば、2−トリフルオロメチルエテニル基、2−トリフルオロメチルエチニル基、3−メトキシ−1−プロペニル基、3−メトキシ−1−プロピニル基、2−トリメチルシリルエテニル基、2−トリメチルシリルエチニル基、2−フェニルエテニル基、2−フェニルエチニル基など;シクロプロペニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基などの炭素数3〜18の環状不飽和炭化水素基;前記環状不飽和炭化水素基を有するアルキル基(前記したものなど)、たとえばシクロヘキセニルエチル基などが挙げられる。
【0046】
3、R4で表わされる芳香族炭化水素基としては、フェニル基、および、トリル基、ブチルフェニル基、ブトキシフェニル基などのアルキル基、アルコキシ基、アミノ基などの1種または2種以上で置換された置換フェニル基などが挙げられる。
【0047】
3、R4で表わされるアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基、ブチルフェネチル基、フェニルプロピル基、メトキシフェニルプロピル基などが挙げられ、ヘテロアラルキル基としては、ピリジルメチル基、ピリジルエチル基などが挙げられる。
【0048】
3で表わされるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基などの炭素数1〜18のアルコキシ基が挙げられ、アリールオキシ基としては、フェノキシ基、およびトリルオキシ基、ブチルフェノキシ基などアルキル基などの置換基で置換された置換フェノキシ基などが挙げられる。
【0049】
3で表わされるアラルキルオキシ基としては、ベンジロキシ基、フェネチロキシ基などが挙げられ、アリールオキシアルキル基としては、フェノキシプロピル基、フェノキシブチル基などが挙げられる。
【0050】
3として好ましいものは、炭素数が1〜30の飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基などであり、さらに好ましいものは、炭素数が1〜15のアルキル基、フェニル基などであり、特に好ましいものは、メチル基である。
【0051】
4として好ましいものは、水素原子、炭素数が1〜18の飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基などであり、さらに好ましいものは、水素原子、炭素数が1〜10のアルキル基、フェニル基、フェニルエチル基などであり、特に好ましいものは、水素原子である。
【0052】
金属錯体としては、上記の金属原子MとR3、R4の組み合わせにより種々の金属錯体が挙げられる。具体例を例示すると、アセチルアセトナト銀(I)、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)アルミニウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ビスマス(III)、トリス(アセチルアセトナト)セリウム(III)、ビス(アセチルアセトナト)コバルト(II)、トリス(アセチルアセトナト)コバルト(III)、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)コバルト(III)、トリス(3−メチル−2,4−ペンタンジオナト)コバルト(III)、トリス(3−フェニル−2,4−ペンタンジオナト)コバルト(III)、トリス(3−(1−フェニルエチル)−2,4−ペンタンジオナト)コバルト(III)、ビス(ベンゾイルアセトン)コバルト(II)ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)コバルト(II)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)コバルト(III)、ビス(アセチルアセトナト)銅(II)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタジオナト)銅(II)、トリス(2,2,4,6,6−ペンタメチル−3,5−ヘプタンジオナト)コバルト(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−(1−フェニルエチル)−3,5−ヘプタンジオナト)コバルト(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−フェニル−3,5−ヘプタンジオナト)コバルト(III)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)銅(II)、ビス(トリフルオロアセチルアセトナト)銅(II)、トリス(アセチルアセトナト)ジスプロシウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)エルビウム(III)、トリス(2,2,6,6,−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)エルビウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)ユーロピウム(III)、ビス(アセチルアセトナト)鉄(II)、トリス(アセチルアセトナト)鉄(III)、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)鉄(III)、トリス(3−メチル−2,4−ペンタンジオナト)鉄(III)、トリス(3−フェニル−2,4−ペンタンジオナト)鉄(III)、トリス(3−(1−フェニルエチル)−2,4−ペンタンジオナト)鉄(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)鉄(III)、トリス(2,2,4,6,6−ペンタメチル−3,5−ヘプタンジオナト)鉄(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−(1−フェニルエチル)−3,5−ヘプタンジオナト)鉄(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−フェニル−3,5−ヘプタンジオナト)鉄(III)、テトラキス(アセチルアセトナト)ハフニウム(IV)、トリス(アセチルアセトナト)ガリウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)ガドリニウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)ホルミウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)インジウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)ランタン(III)、トリス(アセチルアセトナト)ルテチウム(III)、ビス(アセチルアセトナト)マンガン(II)、トリス(アセチルアセトナト)マンガン(III)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)マンガン(II)、ビス(アセチルアセトナト)ジオキソモリブデン(IV)、トリス(アセチルアセトナト)ネオジム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタジオナト)ネオジム(III)、ビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタジオナト)ニッケル(II)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ニッケル(II)、ビス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)ニッケル(II)、ビス(3−メチル−2,4−ペンタンジオナト)ニッケル(II)、ビス(3−フェニル−2,4−ペンタンジオナト)ニッケル(II)、ビス(3−(1−フェニルエチル)−2,4−ペンタンジオナト)ニッケル(II)、ビス(2,2,4, 6,6−ペンタメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ニッケル(II)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−(1−フェニルエチル)−3,5−ヘプタンジオナト)ニッケル(II)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−フェニル−3,5−ヘプタンジオナト)ニッケル(II)、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)パラジウム(II)、ビス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)パラジウム(II)、ビス(3−メチル−2,4−ペンタンジオナト)パラジウム(II)、ビス(3−フェニル−2,4−ペンタンジオナト)パラジウム(II)、ビス(3−(1−フェニルエチル)−2,4−ペンタンジオナト)パラジウム(II)、ビス(2,2,4,6,6−ペンタメチル−3,5−ヘプタンジオナト)パラジウム(II)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−(1−フェニルエチル)−3,5−ヘプタンジオナト)パラジウム(II)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−フェニル−3,5−ヘプタンジオナト)パラジウム(II)、トリス(アセチルアセトナト)プロメチウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)プラセオジム(III)、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)プラセオジム(III)、ビス(アセチルアセトナト)白金(II)、トリス(アセチルアセトナト)ロジウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)スカンジウム(III)、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)スカンジウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタジオナト)スカンジウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)サマリウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)サマリウム(III)、ビス(アセチルアセトナト)スズ(II)、トリス(アセチルアセトナト)テルビウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)テルビウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ツリウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)バナジウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)イットリウム(III)、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)イットリウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)イットリウム(III)、ビス(アセチルアセトナト)亜鉛(II)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)亜鉛(II)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)亜鉛(II)、テトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム(IV)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ジルコニウム(IV)、テトラキス(トリフルオロアセチルアセトナト)ジルコニウム(IV)などが挙げられる。これら金属錯体は、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。本発明においては、金属錯体として、あらかじめ合成した金属錯体を使用してもよく、系中で製造したものを使用してもよい。
【0053】
本発明の反応は、アルカリ金属塩、金属錯体、マグネシウムを溶媒に加え、不活性ガス雰囲気下、ハロシラン化合物を加え、適宜な反応温度で攪拌することにより行うことができる。ハロシラン化合物の添加は、反応温度より低い温度下で一括添加しても、あるいは滴下してもよく、さらに反応温度で滴下することもできる。
【0054】
一般式(1)で表わされるジハロシラン化合物、一般式(2)で表わされるトリハロシラン化合物、一般式(3)で表わされるテトラハロシラン化合物は、目的とするポリシラン類に応じて、単独または2種以上を混合して使用することができる(ただし、一般式(3)で表わされるテトラハロシラン化合物の単独使用は除く)。通常(A)ジハロシラン化合物の1種または2種以上の混合物を用いるか、または、(B)ジハロシラン化合物の1種または2種以上と、トリハロシラン化合物および/またはテトラハロシラン化合物の1種または2種以上の混合物を用いるのが好ましい。(B)の態様においては、ジハロシラン化合物に対して、トリハロシラン化合物および/またはテトラハロシラン化合物を0.01〜0.2モル倍量使用するのが好ましい。
【0055】
本発明において用いられる溶媒は、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アニソール、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒が主に用いられるが、場合により、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカリンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素系溶媒と併用することができる。
【0056】
本発明において用いられるマグネシウムの使用量は、ハロシラン化合物に対して、1〜20モル倍の範囲が好ましく、より好ましくは2〜10モル倍の範囲である。マグネシウムの使用量が前記範囲未満の場合、反応が途中で進まなくなり収率が低下する傾向があり、一方前記範囲を超えると、反応中副生する塩と残存するマグネシウムのために反応液の攪拌が困難になり、反応後に未反応のマグネシウムを除去する工程が煩雑になる傾向がある。本発明において、マグネシウムの代わりにマグネシウム合金を用いることもできる。マグネシウム合金としては、アルミニウム、亜鉛、希土類元素等の成分を含むマグネシウム合金などが挙げられる。
【0057】
本発明において用いられるアルカリ金属塩の使用量は、ハロシラン化合物に対して、0.01〜5モル倍の範囲が好ましく、より好ましくは0.05〜1モル倍の範囲が好ましい。アルカリ金属塩の使用量が前記範囲未満の場合、反応速度が小さくなり低分子量のポリシランしか得られない傾向があり、一方前記範囲を超えると、溶媒に溶けないアルカリ金属塩の量が増え、不溶分は反応に有効に働かず無駄であるばかりか、反応液の攪拌効率が悪くなり反応速度が小さくなる傾向がある。
【0058】
本発明において用いられる金属錯体の使用量は、ハロシラン化合物に対して、0.001〜10モル倍の範囲が好ましく、より好ましくは0.001〜1モル倍の範囲、特に好ましくは0.001〜0.1モル倍の範囲である。高分子量のポリシランを得るためには、0.001〜0.05モル倍の範囲が特に好ましい。金属錯体の使用量が前記範囲未満では、反応が進行しない傾向があり、一方前記範囲を超えると、低分子量のポリシラン類しか得られない傾向がある。本発明の方法においては、金属錯体の使用量を前記の範囲内で調節し適切な反応温度、時間を設定することにより得られるポリシランの分子量を調節することができる。
【0059】
本発明の方法における反応温度および反応時間は基質により異なるが、一般的に反応温度は、−40℃〜200℃の範囲、より好ましくは−10℃〜60℃の範囲であり、反応時間は4〜96時間、より好ましくは12〜48時間である。
【0060】
本発明において、反応が完結した後、反応混合物に水または酸の水溶液を大過剰量加えるか、大過剰量の水また酸の水溶液に反応混合物を加えることにより反応を終了させる。このとき用いられる酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、酢酸などの有機酸が挙げられる。
【0061】
次に、処理後生成した無機塩を濾過、分液などの方法により分離除去し、有機層を濃縮することにより目的の化合物を得ることが出来る。必要に応じて固化粉砕、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、凍結乾燥などの常法により単離または精製することができる。
【0062】
前記再沈殿は通常の方法にしたがって行なうことができる。再沈殿に用いられる良溶剤
としてはテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アニソール、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、トルエン、キシレン、メシチレンなどの反応に使用される主溶媒と同様なものが挙げられ、貧溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、もしくは、これらの溶剤の混合物が挙げられる。使用される溶剤量は生成したポリシランによって異なるが、通常良溶剤はポリシランの1〜20倍量、貧溶剤はポリシランの10〜10000倍量が使用される。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例をあげて説明する。
【0064】
比較例1
窒素ガス雰囲気下、フラスコに金属マグネシウム(切削片状)19.8g(816mmol)、無水塩化リチウム0.56g(13mmol)、無水塩化亜鉛0.89g(6.55mmol)、テトラヒドロフラン79mlを仕込み、これにメチルフェニルジクロロシラン25.0g(131mmol)、フェニルトリクロロシラン1.00g(4.7mmol)を添加し、氷冷下(反応液内温2℃±2℃、以下同様)で24時間攪拌したが、ポリシランは得られなかった。
【0065】
比較例2
窒素ガス雰囲気下、フラスコに金属マグネシウム(切削片状)19.8g(816mmol)、無水塩化リチウム0.56g(13mmol)、無水塩化鉄(III)1.06g(6.55mmol)、テトラヒドロフラン79mlを仕込み、これにメチルフェニルジクロロシラン25.0g(131mmol)、フェニルトリクロロシラン1.00g(4.7mmol)を添加し、氷冷下で24時間攪拌したが、ポリシランは得られなかった。
【0066】
実施例1
窒素ガス雰囲気下、フラスコに金属マグネシウム(切削片状)19.8g(816mmol)、無水塩化リチウム0.56g(13mmol)、トリス(アセチルアセトナト)鉄(III)2.31g(6.55mmol)、テトラヒドロフラン79mlを仕込み、これにメチルフェニルジクロロシラン25.0g(131mmol)、を添加し、氷冷下で18時間攪拌した。
【0067】
反応終了後、トルエン100mlを添加し、冷却しながら水20mlを内温20℃以下で滴下した。滴下後、室温で30分撹拌した。
【0068】
その後、この反応混合物を濾過し、濾液を5重量%塩酸水溶液50ml、5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液50ml、水50mlの順で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して粗ポリシランを得た。これをテトラヒドロフラン70ml、エタノール700mlを用いて再沈殿による精製を行い精製ポリシラン9.92g(収率:63%)を得た。GPC分析の結果、重量平均分子量:9600(ポリスチレン換算、以下同様)であった。
【0069】
実施例2
金属錯体としてビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)1.68g(6.55mmol)、アルカリ金属塩として無水ヨウ化リチウム1.75g(13mmol)を用いる以外は実施例1と同様の操作を行った。
【0070】
その結果、重量平均分子量10000のポリシランが10.08g(収率:64%)得られた。
【0071】
実施例3
金属錯体としてトリス(アセチルアセトナト)鉄(III)0.93g(3.28mmol)、無水塩化リチウムの量を1.12g(26mmol)に変更する以外は実施例1と同様の操作を行った。
【0072】
その結果、重量平均分子量11000のポリシランが10.55g(収率:67%)得られた。
【0073】
実施例4
金属マグネシウム(切削片状)の量を12.7g(524mmol)に変更し、金属錯体としてビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)1.68g(6.55mmol)、アルカリ金属塩として無水ヨウ化リチウム1.75g(13mmol)を用いる以外は実施例1と同様の操作を行った。
【0074】
その結果、重量平均分子量7800のポリシランが9.92g(収率:63%)得られた。
【0075】
実施例5
金属錯体としてトリス(アセチルアセトナト)コバルト(III)2.33g(6.55mmol)、アルカリ金属塩として無水臭化リチウム1.14g(13mmol)を用いる以外は実施例1と同様の操作を行った。
【0076】
その結果、重量平均分子量9500のポリシランが10.40g(収率:66%)得られた。
【0077】
実施例6
アルカリ金属塩として無水ヨウ化ナトリウム1.96g(13mmol)を用いる以外は実施例1と同様の操作を行った。
【0078】
その結果、重量平均分子量6000のポリシランが9.61g(収率:61%)得られた。
【0079】
実施例7
金属錯体としてトリス(アセチルアセトナト)コバルト(III)3.50g(9.82mmol)、アルカリ金属塩として無水臭化リチウム0.57g(6.55mmol)を用いる以外は実施例1と同様の操作を行った。
【0080】
その結果、重量平均分子量8500のポリシランが9.92g(収率:63%)得られた。
【0081】
実施例8
窒素ガス雰囲気下、フラスコに金属マグネシウム(切削片状)19.8g(816mmol)、無水塩化リチウム0.56g(13mmol)、トリス(アセチルアセトナト)鉄(III)2.31g(6.55mmol)、テトラヒドロフラン79mlを仕込み、これにメチルフェニルジクロロシラン25.0g(131mmol)、フェニルトリクロロシラン1.00g(4.7mmol)を添加し、氷冷下で18時間攪拌した。
【0082】
反応終了後、トルエン100mlを添加し、冷却しながら水20mlを内温20℃以下で滴下した。滴下後、室温で30分撹拌した。
【0083】
その後、この反応混合物を濾過し、濾液を5重量%塩酸水溶液50ml、5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液50ml、水50mlの順で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して粗ポリシランを得た。これをテトラヒドロフラン70ml、エタノール700mlを用いて再沈殿による精製を行い精製ポリシラン11.52g(収率:71%)を得た。GPC分析の結果、重量平均分子量:22800であった。
【0084】
実施例9
金属錯体としてビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)1.68g(6.55mmol)、アルカリ金属塩として無水ヨウ化リチウム1.75g(13mmol)を用いる以外は実施例8と同様の操作を行った。
【0085】
その結果、重量平均分子量20900のポリシランが11.36g(収率:70%)得られた。
【0086】
実施例10
金属錯体としてビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)0.67g(3.28mmol)を用い、反応を室温(23℃±2℃、以下同様)で行う以外は実施例8と同様の操作を行った。
【0087】
その結果、重量平均分子量17500のポリシランが11.52g(収率:71%)得られた。
【0088】
実施例11
金属錯体としてトリス(アセチルアセトナト)コバルト(III)3.50g(9.82mmol)、アルカリ金属塩として無水ヨウ化リチウム0.88g(6.55mmol)を用いる以外は実施例8と同様の操作を行った。
【0089】
その結果、重量平均分子量16100のポリシランが10.71g(収率:66%)得られた。
【0090】
実施例12
金属錯体としてトリス(3−メチル−2,4−ペンタンジオナト)鉄(III)2.59g(6.55mmol)を用いる以外は実施例8と同様の操作を行った。
【0091】
その結果、重量平均分子量22500のポリシランが11.86g(収率:72%)得られた。
【0092】
実施例13
金属錯体としてビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)0.67g(3.28mmol)、アルカリ金属塩として無水ヨウ化ナトリウム1.96g(13mmol)を用いる以外は実施例8と同様の操作を行った。
【0093】
その結果、重量平均分子量6800のポリシランが10.22g(収率:63%)得られた。
【0094】
実施例14
金属錯体としてトリス(アセチルアセトナト)コバルト(III)3.50g(9.82mmol)、アルカリ金属塩として無水臭化リチウム2.28g(26mmol)を用いる以外は実施例8と同様の操作を行った。
【0095】
その結果、重量平均分子量18000のポリシランが11.85g(収率:73%)得られた。
【0096】
実施例15
金属マグネシウム(切削片状)の量を12.7g(524mmol)に変更し、アルカリ金属塩として無水ヨウ化リチウム1.75g(13mmol)を用い、反応時間を24時間に変更する以外は実施例8と同様の操作を行った。
【0097】
その結果、重量平均分子量18400のポリシランが10.71g(収率:66%)得られた。
【0098】
実施例16
窒素ガス雰囲気下、フラスコに金属マグネシウム(切削片状)19.8g(816mmol)、無水塩化リチウム0.56g(13mmol)、トリス(アセチルアセトナト)鉄(III)2.31g(6.55mmol)、テトラヒドロフラン79mlを仕込み、これにメチルフェニルジクロロシラン25.0g(131mmol)、フェニルトリクロロシラン1.50g(7.1mmol)を添加し、氷冷下で18時間攪拌した。
【0099】
反応終了後、トルエン100mlを添加し、冷却しながら水20mlを内温20℃以下で滴下した。滴下後、室温で30分撹拌した。
【0100】
その後、この反応混合物を濾過し、濾液を5重量%塩酸水溶液50ml、5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液50ml、水50mlの順で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して粗ポリシランを得た。これをテトラヒドロフラン70ml、エタノール700mlを用いて再沈殿による精製を行い精製ポリシラン11.86g(収率:72%)を得た。GPC分析の結果、重量平均分子量:20500であった。
【0101】
実施例17
金属錯体としてビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)1.68g(6.55mmol)、アルカリ金属塩として無水ヨウ化リチウム1.75g(13mmol)を用いる以外は実施例16と同様の操作を行った。
【0102】
その結果、重量平均分子量19500のポリシランが11.69g(収率:71%)得られた。
【0103】
実施例18
金属錯体としてビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)1.68g(6.55mmol)、アルカリ金属塩として無水ヨウ化リチウム1.75g(13mmol)を用い、反応を室温で行う以外は実施例16と同様の操作を行った。
【0104】
その結果、重量平均分子量20800のポリシランが10.87g(収率:66%)得られた。
【0105】
実施例19
アルカリ金属塩として無水臭化リチウム1.14g(13mmol)を用いる以外は実施例16と同様の操作を行った。
【0106】
その結果、重量平均分子量18000のポリシランが10.71g(収率:65%)得られた。
【0107】
実施例20
金属錯体としてトリス(アセチルアセトナト)コバルト(III)2.33g(6.55mmol)、アルカリ金属塩として無水臭化リチウム1.14g(13mmol)を用いる以外は実施例16と同様の操作を行った。
【0108】
その結果、重量平均分子量19800のポリシランが11.53g(収率:70%)得られた。
【0109】
実施例21
アルカリ金属塩として無水ヨウ化ナトリウム1.96g(13mmol)を用いる以外は実施例16と同様の操作を行った。
【0110】
その結果、重量平均分子量6400のポリシランが10.37g(収率:63%)得られた。
【0111】
実施例22
金属錯体としてビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)2.52g(9.82mmol)、無水塩化リチウムの量を0.28g(6.55mmol)に変更する以外は実施例16と同様の操作を行った。
【0112】
その結果、重量平均分子量17200のポリシランが11.20g(収率:68%)得られた。
【0113】
実施例23
金属マグネシウム(切削片状)の量を12.7g(524mmol)に変更し、金属錯体としてトリス(アセチルアセトナト)コバルト(III)0.93g(3.28mmol)、アルカリ金属塩として無水塩化リチウム1.10g(26mmol)を用い、反応時間を24時間に変更する以外は実施例16と同様の操作を行った。
【0114】
その結果、重量平均分子量21000のポリシランが11.69g(収率:71%)得られた。
【0115】
実施例24
窒素ガス雰囲気下、フラスコに金属マグネシウム(切削片状)19.8g(816mmol)、無水塩化リチウム0.56g(13mmol)、トリス(アセチルアセトナト)鉄(III)2.31g(6.55mmol)、テトラヒドロフラン79mlを仕込み、これにメチルフェニルジクロロシラン25.0g(131mmol)、フェニルトリクロロシラン2.00g(9.4mmol)を添加し、氷冷下で18時間攪拌した。
【0116】
反応終了後、トルエン100mlを添加し、冷却しながら水20mlを内温20℃以下で滴下した。滴下後、室温で30分撹拌した。
【0117】
その後、この反応混合物を濾過し、濾液を5重量%塩酸水溶液50ml、5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液50ml、水50mlの順で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して粗ポリシランを得た。これをテトラヒドロフラン70ml、エタノール700mlを用いて再沈殿による精製を行い精製ポリシラン12.21g(収率:73%)を得た。GPC分析の結果、重量平均分子量:19000であった。
【0118】
実施例25
金属錯体としてビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)1.68g(6.55mmol)、アルカリ金属塩として無水ヨウ化リチウム1.75g(13mmol)を用いる以外は実施例24と同様の操作を行った。
【0119】
その結果、重量平均分子量17500のポリシランが11.37g(収率:68%)得られた。
【0120】
実施例26
金属錯体としてトリス(アセチルアセトナト)コバルト(III)3.50g(9.82mmol)を用い、無水塩化リチウムの量を0.28g(6.55mmol)に変更する以外は実施例24と同様の操作を行った。
【0121】
その結果、重量平均分子量16500のポリシランが11.04g(収率:66%)得られた。
【0122】
実施例27
金属マグネシウム(切削片状)の量を12.7g(524mmol)に変更し、金属錯体としてビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)0.67g(3.28mmol)、アルカリ金属塩として無水ヨウ化リチウム1.75g(13mmol)を用い、反応時間を24時間に変更する以外は実施例24と同様の操作を行った。
【0123】
その結果、重量平均分子量19000のポリシランが12.04g(収率:72%)得られた。
【0124】
実施例28
金属錯体としてトリス(アセチルアセトナト)コバルト(III)2.33g(6.55mmol)、アルカリ金属塩として無水臭化リチウム1.14g(13mmol)を用いる以外は実施例24と同様の操作を行った。
【0125】
その結果、重量平均分子量18400のポリシランが12.03g(収率:72%)得られた。
【0126】
実施例29
金属錯体としてビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)1.68g(6.55mmol)、アルカリ金属塩として無水ヨウ化ナトリウム1.96g(13mmol)を用いる以外は実施例24と同様の操作を行った。
【0127】
その結果、重量平均分子量6300のポリシランが10.70g(収率:64%)得られた。
【0128】
実施例30
アルカリ金属塩として無水臭化リチウム2.28g(26mmol)を用いる以外は実施例24と同様の操作を行った。
【0129】
その結果、重量平均分子量20200のポリシランが12.21g(収率:73%)得られた。
【0130】
実施例31
フェニルトリクロロシラン1.00g(4.7mmol)の代わりにテトラクロロシラン0.80g(4.7mmol)を用いる以外は実施例8と同様の操作を行った。
【0131】
その結果、重量平均分子量15000のポリシランが11.22g(収率:71%)得られた。
【0132】
実施例32
メチルフェニルジクロロシラン25.0g(131mmol)の代わりにジ−n−ヘキシルジクロロシラン35.28g(131mmol)を用いる以外は実施例8と同様の操作を行った。
【0133】
その結果、重量平均分子量23400のポリシランが18.78g(収率:71%)得られた。
【0134】
実施例33
メチルフェニルジクロロシラン25.0g(131mmol)の代わりにジイソプロピルジクロロシラン24.25g(131mmol)を用いる以外は実施例8と同様の操作を行った。
【0135】
その結果、重量平均分子量15300のポリシランが10.49g(収率:68%)得られた。
【0136】
実施例34
フェニルトリクロロシランの量を2.77g(13.1mmol)に変更する以外は実施例8と同様の操作を行った。
【0137】
その結果、重量平均分子量17200のポリシランが12.33g(収率:72%)得られた。
【0138】
実施例35
フェニルトリクロロシランの量を5.50g(26.0mmol)に変更し、アルカリ金属塩として無水臭化リチウム1.14g(13mmol)を用いる以外は実施例16と同様の操作を行った。
【0139】
その結果、重量平均分子量16800のポリシランが13.50g(収率:73%)得られた。
【0140】
実施例36
フェニルトリクロロシラン1.50g(7.1mmol)の代わりにフェニルトリクロロシラン1.00g(4.7mmol)、テトラクロロシラン0.17g(1.0mmol)を用い、アルカリ金属塩として無水臭化リチウム1.14g(13mmol)を用いる以外は実施例16と同様の操作を行った。
【0141】
その結果、重量平均分子量16200のポリシランが1.22g(収率:69%)得られた。
【0142】
実施例37
トリス(アセチルアセトナト)鉄(III)の量を0.46g(1.31mmol)に変更し、反応時間を30時間に変更する以外は実施例8と同様の操作を行った。
【0143】
その結果、重量平均分子量17000のポリシランが11.20g(収率:69%)得られた。
【0144】
前記比較例および実施例における反応条件および得られた結果を表1〜3にまとめて示す。なお、表1〜3において、下記の化合物は下記の化学式で示した。
メチルフェニルジクロロシラン:MePhSiCl2
ジ−n−ヘキシルジクロロシラン:(n−Hexyl)2SiCl2
ジイソプロピルジクロロシラン:(i−Propyl)2SiCl2
フェニルトリクロロシラン:PhSiCl3
テトラクロロシラン:SiCl4
【0145】
【表1】

【0146】
【表2】

【0147】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
(R12Si(X12 (1)
(式中、2つのR1は、相互に同一または異なって、水素原子、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシアルキル基、アミノ基またはシリル基を表わし、2つのR1はそれらが結合しているケイ素原子と一緒になって環を形成していてもよい。2つのX1は、相互に同一または異なって、ハロゲン原子を表わす)で表わされるジハロシラン化合物、一般式(2):
2Si(X23 (2)
(式中、R2は、水素原子、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシアルキル基、アミノ基、シリル基またはシロキシ基を表わす。3つのX2は、相互に同一または異なって、ハロゲン原子を表わす)で表わされるトリハロシラン化合物、または一般式(3):
Si(X34 (3)
(式中、4つのX3は、相互に同一または異なって、ハロゲン原子を表わす)で表わされるテトラハロシラン化合物よりなる群から選択される1種または2種以上(ただし、一般式(3)で表わされるテトラハロシラン化合物の単独使用は除く)に、溶媒中、アルカリ金属塩および一般式(4):
【化1】

(式中、nは1以上の整数である。Mは、銀、アルミニウム、ビスマス、セリウム、コバルト、銅、ジスプロシウム、エルビウム、ユーロピウム、鉄、ガリウム、ガドリニウム、ハフニウム、ホルミウム、インジウム、イリジウム、ランタン、ルテチウム、マンガン、モリブデン、ネオジム、ニッケル、オスミウム、パラジウム、プロメチウム、プラセオジム、白金、レニウム、ロジウム、ルテニウム、サマリウム、スカンジウム、スズ、テルビウム、チタン、ツリウム、バナジウム、タングステン、イットリウム、亜鉛、ジルコニウムよりなる群から選択される金属原子を表す。2つのR3は、相互に同一または異なって、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシアルキル基を表わす。R4は、水素原子、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、アラルキル基を表わす。)で表わされる金属錯体の存在下でマグネシウムを作用させることを特徴とする、式(5)〜(7):
【化2】

(式中、R1は、相互に同一または異なって、水素原子、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシアルキル基、アミノ基またはシリル基を表し、2つのR1はそれらが結合しているケイ素原子と一緒になって環を形成していてもよい。R2は、水素原子、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシアルキル基、アミノ基、シリル基またはシロキシ基を表わす)で表わされる構成単位の1種または2種以上(ただし、式(7)で表わされる構成単位のみからなるものは除く)からなるポリシラン類の製造方法。
【請求項2】
(a)一般式(1)で表わされるジハロシラン化合物、もしくは、(b)一般式(1)で表わされるジハロシラン化合物と一般式(2)で表わされるトリハロシラン化合物および/または一般式(3)で表わされるテトラハロシラン化合物とを使用し、(a)式(5)で表わされる構成単位からなるポリシラン類、もしくは、(b)式(5)で表わされる構成単位と式(6)で表わされる構成単位および/または式(7)で表わされる構成単位とからなるポリシラン類を得る請求項1記載のポリシラン類の製造方法。
【請求項3】
一般式(4)において、Mが、コバルト、銅、鉄、イリジウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、亜鉛、アルミニウム、ビスマス、スズよりなる群から選択される金属原子である金属錯体を使用する請求項1または2に記載のポリシラン類の製造方法。
【請求項4】
一般式(4)において、R3がメチル基、R4が水素原子である金属錯体を使用する請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリシラン類の製造方法。
【請求項5】
アルカリ金属塩として、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウムから選択される少なくとも1種を使用する請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリシラン類の製造方法。

【公開番号】特開2006−316197(P2006−316197A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141566(P2005−141566)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000227342)日東化成株式会社 (28)
【Fターム(参考)】