説明

ポリシロキサン変性ポリイソシアネート

本発明は、ヒドロキシル官能性ポリジメチルシロキサンユニットを含有する新規変性ポリイソシアネート、並びに更にコーティング組成物および接着剤におけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシル官能性ポリジメチルシロキサンユニットを含有する新規変性ポリイソシアネート、および更にコーティング組成物および接着剤におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
US20070032623は、ポリイソシアネートとシロキサンとの反応による炭素結合ヒドロキシル基を含むポリイソシアネート混合物を記述している。この混合物は、表面張力の低いコーティングの製造用の架橋剤として好適である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
WO2007025671は、特定のOH基官能性ポリジメチルシロキサンおよび更にポリオールまたはポリアミンおよびポリイソシアネートを含有する組成物を開示している。しかしながら、応用技術に依存して、この組成物は、洗浄容易性が良好なヘイズのないコーティングフィルムの製造に好適でない。ポリイソシアネートと上記の特定のシロキサンとの直接反応およびそれらのポリイソシアネート架橋剤としての使用もまた記述されていない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
意外なことに、WO2007025671を発端として、この種類のOH官能性ポリジメチルシロキサンとポリイソシアネートとの反応によって、ゲル化のないポリシロキサン含有ポリイソシアネートを製造することが可能であること、これらが次に、ポリヒドロキシ化合物を用いるコーティング操作において、ポリオールを用いた配合物と比較して、より均質のフィルムの形成および改良された性能特性を示すことがわかった。
【0005】
従って、本発明は、(A)ポリイソシアネートを(B)ヒドロキシル含有シロキサンおよび要すれば(C)ブロッキング剤と反応させるシロキサン変性ポリイソシアネートの製造方法であって、(B)が数平均分子量200〜3000g/molおよび平均OH官能価1.8以上を有し、式(I)
【化1】

〔式中、
Xは、脂肪族、非分枝もしくは分枝C〜C10基、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル基、より好ましくはメチル基、またはSi−[−[O−CH−CHZ]−O−]ユニット(式中、Z=Hまたはメチル、好ましくはH、n=1〜12、好ましくは1〜5である。)または、より好ましくは、[−CH−O−(CH]−Siユニット(式中、r=1〜4、好ましくはr=3)であり、
Rは、次式
【化2】

(式中、x=3〜5、好ましくは5である。)のヒドロキシ官能性カルボン酸エステルまたは、好ましくは−CH(OH)Y基(式中、Yは、−CH−N(R)基であり、Rは、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロヘキシル基、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル基であり、Rは、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル基である。)であり、
は、同一であっても異なっていてもよく、水素または任意にヘテロ原子を含んでいてもよいC〜C10炭化水素基であり、
nは、1〜40である。〕
のヒドロキシル含有シロキサンである、シロキサン変性ポリイソシアネートの製造方法に関する。
【0006】
同様に、本発明は、そのようなシロキサン変性ポリイソシアネートおよび少なくとも一種類のポリオールまたはポリアミンを含有するポリウレタンシステムを提供する。
【0007】
(A)において、原則として、それ自体当業者に既知であり、1分子あたり1個よりも多くのNCO基を有する全てのNCO−官能性化合物を使用することが可能である。これらの化合物は、好ましくは、NCO官能価が2.3〜4.5であり、NCO基含量が11.0重量%〜24.0重量%であり、かつ、モノマージイソシアネート含量が好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下である。
【0008】
この種類のポリイソシアネートは、単純な脂肪族、脂環式、芳香脂肪族および/または芳香族ジイソシアネートの変性によって得られ、ウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造を含みうる。更に、この種類のポリイソシアネートは、NCO含有プレポリマーとして使用されうる。この種類のポリイソシアネートは、例えば、Laas等著,(1994年),J.prakt.Chem.336号,185〜200頁またはBock著(1999年),Polyurethane fuer Lacke und Beschichtungen,Vincentz Verlag,ハノファー,21〜27頁に記述されている。
【0009】
そのようなポリイソシアネートの製造に好適なジイソシアネートは、分子量140〜400g/molのジイソシアネートであって、ホスゲン化によって得られるか、またはホスゲンフリー法によって、例えばウレタンの熱開裂によって、得られ、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族および/または芳香族に結合されたイソシアネート基を有するあらゆるジイソシアネートであり、例えば1,4−ジイソシアナトブタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2−メチル−1,5−ジイソシアナトペンタン、1,5−ジイソシアナト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−ジイソシアナトデカン、1,3−および1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−および1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、1−イソシアナト−1−メチル−4(3)イソシアナトメチルシクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン、1,3−および1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(TMXDI)、2,4−および2,6−ジイソシアナトトルエン(TDI)、2,4’−および4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、1,5−ジイソシアナトナフタレンまたはそのようなジイソシアネートの所望の混合物である。
【0010】
(A)として、好ましくは、IPDI、MDI、TDI、HDIまたはそれらの混合物ベースの上記種類のポリイソシアネートが使用される。HDIおよびIPDIベースの脂肪族ポリイソシアネートの使用が特に好ましい。
【0011】
一般式(I)のヒドロキシル含有シロキサン(B)の数平均分子量は、好ましくは250〜2250g/mol、より好ましくは350〜1500g/molである。
【0012】
一般式(I)のヒドロキシル含有シロキサン(B)は、対応エポキシ官能性ポリジメチルシロキサンをヒドロキシアルキル官能性アミンと、好ましくはエポキシ基をアミノ官能基に対して化学量論比において反応させることによって得られる。
【0013】
この目的で使用されるエポキシ官能性シロキサンは、好ましくは、1分子あたり1〜4個、より好ましくは2個のエポキシ基を含む。加えて、その数平均分子量は150〜2000g/mol、好ましくは250〜1500g/mol、より好ましくは250〜1250g/molである。
【0014】
好ましいエポキシ官能性シロキサンは、式(II)
【化3】

〔式中、
Xは、脂肪族、任意に分枝されていてもよいC〜C10基、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル基、より好ましくはメチル基、または[−CH−O−(CH]−Siユニット(式中、r=1〜4、好ましくはr=3)であり、
は、同一であっても異なっていてもよく、水素または任意にヘテロ原子を含んでいてもよいC〜C10炭化水素基であり、
nは、1〜40である。〕
のα,ω−エポキシシロキサンである。
【0015】
式(I)および(II)中のRは、好ましくは、フェニル、アルキル、アラルキル、フルオロアルキル、アルキルエチレン−co−プロピレンオキシド基または水素であり、フェニル基またはメチル基が特に好ましい。とりわけ好ましいRはメチル基である。
【0016】
式(II)の好適な化合物は、例えば、式(IIa)および(IIb)
【化4】

(式中、nは、4〜12の整数、好ましくは6〜9の整数である。)
の化合物である。
【0017】
このシリーズの市販の製品の例は、例えば、CoatOsilTM2810(ドイツ国レーフエルクーゼン在Momentive Performance Materials)またはTegomerTME−Si2330(ドイツ国エッセン在Tego Chemie Service GmbH)である。
【0018】
好適なヒドロキシアルキル官能性アミンは、一般式(III)
【化5】

(式中、
は、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロヘキシル基、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル基であり、
は、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル基である。)
の化合物である。
【0019】
好ましいヒドロキシアルキルアミンは、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、エチルエタノールアミン、プロピルエタノールアミンおよびシクロヘキシルエタノールアミンである。ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンまたはシクロヘキシルエタノールアミンが特に好ましい。ジエタノールアミンがとりわけ好ましい。
【0020】
成分(B)を製造するには、一般式(II)のエポキシ官能性シロキサンを、適切な場合、溶媒中に導入し、次に必要な量のヒドロキシアルキルアミン(III)または2種類以上のヒドロキシアルキルアミン(III)の混合物と反応させる。反応温度は、典型的には20〜150℃であり、遊離エポキシ基が検出されなくなるまで継続する。
【0021】
エポキシ官能性ポリオルガノシロキサンとヒドロキシアルキルアミンとの上記反応によって得られた式(I)のヒドロキシアルキル官能性シロキサン(B)を使用することが特に好ましい。
【0022】
特に好ましいポリオルガノシロキサン(B)は、例えば、式(Ia)〜(Ih)
【化6】

(式中、n=4〜12、好ましくは6〜9である。)
のポリオルガノシロキサンである。
【0023】
例えば式(IV)
【化7】

(式中、
mは、5〜15であり、
Zは、Hまたはメチル、好ましくはHであり、かつ、
n、oは、1〜12、好ましくは1〜5である。)
のヒドロキシアルキル官能性シロキサン(α,ω−カルビノール)も同様に、成分(B)として好適である。
【0024】
式(IV)のヒドロキシアルキル−官能性シロキサン(α,ω−カルビノール)の数平均分子量は、好ましくは250〜2250g/mol、より好ましくは250〜1500g/mol、より好ましくは250〜1250g/molである。上記タイプの市販のヒドロキシアルキル官能性シロキサンの例は、GE−Bayer Silicones(ドイツ国レーフエルクーゼン)製のBaysiloneTMOF−OH 502 3および6%である。
【0025】
成分(B)に一致する好適なヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサンの別の製造経路は、上記式(IV)のα,ω−カルビノールタイプのヒドロキシルアルキル官能性シロキサンと環状ラクトンとの反応である。好適な環状ラクトンは、例えばε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトンまたはバレロラクトンである。
【0026】
これは、OH基対ラクトン官能基の比1:2〜2:1、好ましくはOH基対ラクトン官能基の化学量論比において行われる。このようにして得られるヒドロキシアルキル官能性シロキサン(B)が好ましい。このような化合物の例は、一般式(V)
【化8】

(式中、
mは、5〜15であり、かつ、
yは、2〜5、好ましくは5である。)
のポリオルガノシロキサン(B)である。
【0027】
式(I)において、Rは、好ましくは次式
【化9】

(式中、x=3〜5、好ましくは5である。)
のヒドロキシル官能性カルボン酸エステル、または次式
【化10】

(式中、
は、脂肪族直鎖、分枝または環状ヒドロキシアルキルであり、
は、水素であるか、または基Rの定義に一致する。)
のヒドロキシアルキル官能性アミノ基である。
【0028】
式(I)において、Rは、特に好ましくは、上記タイプのヒドロキシアルキル官能性アミノ基である。
【0029】
式(I)および(II)において、Rは、好ましくは、フェニル、アルキル、アラルキル、フルオロアルキル、アルキルエチレン−co−プロピレンオキシド基または水素であり、フェニルおよびメチルが特に好ましい。この場合、複数の基Rが同一の基であるか異なる基であるかは重要でない。
【0030】
とりわけ好ましいRは、メチル基であり、従って問題になっているユニットは純粋なジメチルシリルユニットである。
【0031】
上記のように得られる成分(B)のヒドロキシル含有シロキサンの数平均分子量は、好ましくは250〜2250g/mol、より好ましくは250〜1500g/molである。
【0032】
変性との関連で、変性されるイソシアネートの遊離NCO基対式(I)のヒドロキシ含有シロキサンのNCO反応性OH基の比は、好ましくは1:0.001〜1:0.4、より好ましくは1:0.01〜1:0.2である。
【0033】
シロキサン変性に続いて、そのようにして変性されるポリイソシアネートの遊離NCO基を更に変性してもよい。これは、例えば、それ自体当業者に既知のブロッキング剤を用いる遊離NCO基の部分的または完全なブロッキングである(イソシアネート基のブロッキングに関しては、DE−A 10226927、EP−A 0 576 952、EP−A 0 566 953、EP−A 0 159 117、US−A 4 482 721、WO 97/12924またはEP−A 0 744 423参照。)。例としては、ブタノンオキシム、ε−カプロラクタム、メチルエチルケトオキシム、マロン酸エステル、第2級アミン、更にトリアゾール誘導体およびピラゾール誘導体が挙げられる。
【0034】
NCO基のブロッキングは、これをベースとするシロキサン変性ポリイソシアネートが遊離NCO基を有する同様の生成物よりもゲル化に対する良好な安定性を有する傾向があるという利点を有する。このことは、特に、NCO:OH反応比1:0.1〜1:0.4において当てはまる。
【0035】
ヒドロキシル官能性ポリジメチルシロキサンとポリイソシアネートとの反応は、0〜100℃において、好ましくは10〜90℃において、より好ましくは15〜80℃において行われる。所望の場合、R−OHとNCOとの反応を触媒する一般的な触媒を使用することが可能である。
【0036】
本発明の方法において、原則として、任意の時点において、それ自体当業者に既知であり、NCO基に対して不活性である溶媒を添加することが可能である。これらは、例えば酢酸ブチル、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、酢酸エチル、トルエン、キシレン、溶媒ナフサ、およびそれらの混合物のような溶媒である。
【0037】
上記種類の変性ポリイソシアネートを含有するポリウレタンシステムは、NCO基がブロックされているか否かに依存して、1成分または2成分PUシステムとして処方される。
【0038】
本発明のポリシロキサン変性ポリイソシアネートの他に、本発明のポリウレタンシステムは、架橋用にポリヒドロキシおよび/またはポリアミン化合物を含有する。加えて、本発明のポリイソシアネートと異なる別のポリイソシアネートおよび更に助剤および添加剤が存在しうる。
【0039】
好適なポリヒドロキシル化合物は、例えば、3−および/または4−官能性アルコールおよび/またはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよび/またはポリアクリレートポリオールであって、それ自体コーティング技術において典型的であるものである。
【0040】
更に、架橋のために、ウレタンまたはウレア基中に存在する活性水素原子によってポリイソシアネートと架橋性であるポリウレタンまたはポリウレアを使用することも可能である。
【0041】
同様に、アミノ基がブロックされるポリアミン、例えばポリケチミン、ポリアルジミンまたはオキサゾランの使用も可能である
【0042】
本発明のポリイソシアネートを架橋するために、ポリアクリレートポリオールおよびポリエステルポリオールを使用することが好ましい。
【0043】
助剤および添加剤として、溶媒、例えば酢酸ブチル、酢酸エチル、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、トルエン、2−ブタノン、キシレン、1,4−ジオキサン、ジアセトンアルコール、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたはそのような溶媒の任意の所望の混合物を使用することが可能である。好ましい溶媒は、酢酸ブチル、2−エチルアセテートおよびジアセトンアルコールである。
【0044】
加えて、助剤および添加剤として、例えば、有機または無機顔料、光安定剤、コーティング添加剤、例えば分散剤、流動性調節剤、増粘剤、脱泡剤および別の助剤、粘着付与剤、殺カビ剤、殺菌剤、安定剤または阻害剤および触媒が存在することも可能である。
【0045】
本発明のポリウレタンシステムの基材への塗布は、コーティング技術において典型的な塗布方法、例えばスプレー、流延、浸漬、スピンコーティングまたはナイフコーティングによって行われる。
【0046】
本発明のポリシロキサン変性ポリイソシアネートおよび更にそれらをベースとするポリウレタンシステムは、ポリウレタン接着剤、ポリウレタンコーティング材料およびポリウレタンコーティングの製造に好適である。
【実施例】
【0047】
DesmophenTMA 870: ポリアクリレートポリオール;酢酸ブチル中70%、OH価97、OH含量2.95%、23℃における粘度約3500mPas、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン)の市販品
【0048】
DesmodurTMN 3300: ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー;NCO含量21.8+/−0.3重量%、23℃における粘度約3000mPas、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン)
【0049】
DesmodurTMVP LS 2253: HDIベースの3,5−ジメチルピラゾールブロックポリイソシアネート(トリマー);SN 100/MPA(17:8)中75%、23℃における粘度約3600mPas、ブロックNCO含量10.5%、当量400、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン)
【0050】
Baysilone OF/OH 502 6%: 有機官能性ポリジメチルシロキサン;OH含量5.5%〜6.5%、GE−Bayer Silicones(Momentive)(ドイツ国レーフエルクーゼン)
【0051】
CoatosilTM 2810: エポキシ変性シリコーン流体、エポキシド含量11.4重量%、Momentive Performance Materials(ドイツ国レーフエルクーゼン)
【0052】
ヒドロキシル価(OH価)は、DIN 53240−2に従って測定した。
【0053】
粘度測定は、Haake(ドイツ国)製の「Roto Visco 1」回転式粘度計によってDIN EN ISO 3219に従って行った。
【0054】
酸価の測定は、DIN EN ISO 2114に従って行った。
【0055】
カラーナンバー測定(APHA)は、DIN EN 1557に従って行った。
【0056】
NCO含量の測定は、DIN EN ISO 11909に従って行った。
【0057】
DIN EN ISO 1522「振子型ダンピング試験(pendulum damping test)」に従う振子型ダンピング(Koenig)
【0058】
DIN EN ISO 20566「コーティング・マテリアル−実験室用洗浄ユニットを使用するコーティングシステムの耐引掻き性の試験−」に従う耐引掻き性、実験室用洗浄ユニット(湿式表面損傷)
【0059】
耐溶剤性の測定
この試験を使用して硬化コーティングフィルムの様々な溶媒に対する耐性を評価した。これは、コーティング面に溶媒を所定の時間作用させることによって行う。次に、試験領域に変化が起こるかどうかに関して視覚によって評価を行い、変化が起こっている場合、手で触ることによって評価を行う。コーティングフィルムを、一般的に、ガラスプレート上に配置する。他の基材も同様に可能である。溶媒キシレン、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、酢酸エチルおよびアセトン(下記参照。)を有する試験管台を、脱脂綿栓を有する試験管の口がフィルム上に位置するようにコーティング面に置く。重要な因子は、溶媒によって生じるコーティング面の濡れである。所定の溶媒暴露時間(1分および5分)後、試験管台をコーティング面からはずす。次に、溶媒の残留物を吸取紙または織布によって迅速に取り除く。次に試験した領域を、指の爪で注意してこすった後に、変化を迅速に目視検査する。次の等級に分類する:
0=変化なし
1=ごくわずかに変化 可視変化のみ
2=わずかに変化 指の爪でわかる軟化が確認される
3=明らかに変化 著しい軟化が指の爪で確認される
4=激しく変化 指の爪が基材に届く
5=破壊 コーティング面が外部暴露なしに破壊する
【0060】
上記溶媒について得られた評価等級を下記順序で記録する:
例 0000 (変化なし)
例 0001 (アセトンの場合可視変化のみ)
【0061】
ここで、数字の順番は、試験溶媒の順番(キシレン、メトキシプロピルアセテート、酢酸エチル、アセトン)を表している。
【0062】
ハンマー試験による耐引掻き性の測定(乾式表面損傷)
平坦面がスチールウールまたは研磨紙を備えるハンマー(重量:柄を除いて800g)を使用して表面損傷を行う。そのために、ハンマーを慎重に被覆面上に直角に置き、傾けたり付加的な物理力を加えたりせずにコーティング上の経路に沿って移動させる。10往復のストロークを行う。表面損傷媒体への暴露後に、試験した領域を軟らかい布で拭き、次にDIN EN ISO 2813による光沢を表面損傷の方向に対して直角に測定する。測定される領域は均質でなければならない。
【0063】
例1a:ヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサン
WO 2007025670に従って、次式
【化11】

のエポキシ官能性ポリジメチルシロキサンCoatosilTM2810 770gを導入し、80℃に予熱し、ジエタノールアミン231gと混合した(エポキシド/アミン当量比1:1)。次に、この混合物を100℃において2時間撹拌した。生成物のエポキシド含量は0.01%未満であり、OH価は約365mgKOH/g(11.1%)であり、23℃における粘度は約2900mPasであった。
【0064】
例1b〜1c
例2aと同様に、各種アミンを用いてビスエポキシドの反応を行った。反応が収束した後、エポキシド含量は0.01%未満であった。ある場合は、合成を酢酸ブチルの存在下において行った。

【0065】
例1d
PDMSビスヒドロキシドTegomer H−Si2111(OH含量3.9%、分子量876g/mol;ドイツ国エッセン在Degussa AG)438g(2当量)をカプロラクトン57g(1当量)およびDBTL0.05w/w%と混合し、この混合物を150℃において6時間撹拌した。OH価が113mgKOH/gの透明生成物を得た。
【0066】
例2a:本発明のポリシロキサン変性ポリイソシアネート
標準的撹拌装置において、80℃においてDesmodurTMN3300 321.1g(1当量)を酢酸ブチル250gに導入し、2L/時間の窒素でガスシールした。次に、例1のシロキサンブロックコポリオール51.28g(0.2当量)を80℃において添加し、この温度を4時間保持した。理論的に予想されるNCO含量を滴定によって確認し、次に、この混合物を室温に冷却し、酢酸ブチル250gを添加した。理論NCO含量を確認した後、混合物を室温に冷却し、温度を最大40℃に調節しながら、約15分かけてブロッキング剤3,5−ジメチルピラゾール(DMP)127.59g(0.8当量)を添加した。IR分光計におけるNCOピークが消失するまで温度を40℃に保持した。
【0067】
下記特性を有する透明のブロックポリイソシアネートを得た:固形分49.6重量%およびDMPベースのブロックNCO含量6.5%。室温における貯蔵安定性は3ヶ月以上であった。
【0068】
例2b:本発明のポリシロキサン変性ポリイソシアネート
標準的撹拌装置において、DesmodurTMN3300 492.1g(1当量)を80℃において酢酸ブチル250gに導入し、2L/時間の窒素でガスシールした。次に例2aのシロキサンブロックコポリオール7.86g(0.02当量)を80℃において添加し、この温度を4時間保持した。理論的に予想されるNCO含量を滴定によって確認し、次に、この混合物を室温に冷却し、酢酸ブチル250gを添加した。
【0069】
下記特性を有する透明のポリシロキサン変性ポリイソシアネートを得た:固形分50.3重量%およびNCO含量10.4%。室温における貯蔵安定性は3ヶ月以上であった。
【0070】
例2c:比較例、ポリシロキサン変性ポリイソシアネート
標準的撹拌装置において、DesmodurTMN3300 295.8g(1当量)を80℃において酢酸ブチル250g中に導入し、2L/時間の窒素でガスシールした。次にBaysilone OF/OH 502(OH含量6%)86.6g(0.2当量)を80℃において添加し、この温度を4時間保持した。理論的に予想されるNCO含量を滴定によって確認し、次にこの混合物を室温に冷却し、酢酸ブチル250gを添加した。理論NCO含量が確認された後に、混合物を室温に冷却し、温度を最大40℃に調節し、約15分かけてブロッキング剤3,5−ジメチルピラゾール(DMP)117.6g(0.8当量)を添加した。IR分光計におけるNCOピークが消失するまで温度を40℃に保持した。
【0071】
下記特性を有する透明のポリシロキサン変性ブロックポリイソシアネートを得た:固形分48.6重量%およびDMPベースのブロックNCO含量6.14%。
【0072】
例3a:比較例、シロキサン変性ポリオール
標準的撹拌装置において、Desmophen A 870BA 496.5gを80℃において例2aからのシロキサンブロックコポリオール3.5gと、よく溶解するまで混合した。無色の貯蔵安定ポリオール(3ヶ月以上)を得た。このOH含量は3.1%であり、シロキサンブロックコポリオール含量は1%(ソリッド・オン・ソリッド)であり、固形分は70.9%であった。
【0073】
例3b:比較例、シロキサン変性ポリオール
標準的撹拌装置において、Desmophen A 870BA 482.2gを80℃において例2aからのシロキサンブロックコポリオール17.8gと、よく溶解するまで混合した。OH含量が3.4%であり、シロキサンブロックコポリオール含量が5%(ソリッド・オン・ソリッド)であり、固形分71.7%の無色の貯蔵安定ポリオール(3ヶ月以上)を得た。
【0074】
本発明のシロキサン変性ポリイソシアネートの性能試験:
例2aおよび2bの本発明のポリイソシアネートを、DesmophenTMA 870BAと、NCO/OH比1.0で、更に、コーティング添加剤としてのBaysilone OL 17(ソリッド/バインダー・ソリッド、MPA中10%強度溶液)0.1%、BYK 070(供給されたままの形態/バインダー・ソリッド)2.0%、Tinuvin 123(供給されたままの形態/バインダー・ソリッド)1.0%、Tinuvin 384−2(供給されたままの形態/バインダー・ソリッド)1.5%およびDBTL(ソリッド/バインダー・ソリッド、MPA中10%強度溶液)0.5%と、ブレンドし、これらの成分を共に十分に撹拌した。コーティング材料の固形分は40〜50%であり、適切な場合、1:1MPA/SN溶媒混合物を使用して調節した。加工前に、コーティング材料を10分間脱気した。次に、1.5クロス−パスの重力式スプレーガンを使用してコーティング材料を提供基材に塗布した(気圧3.0〜3.5bar、ノズル:1.4〜1.5mmφ、ノズル−基材距離:約20〜30cm)。15分のフラッシュオフ時間後、コーティング材料を140℃において30分間焼き付けた。ドライフィルム厚はそれぞれ40〜50μmであった。
【0075】
比較のために、DesmophenTMA 870およびDesmodurTMVP LS 2253を含有する常套のコーティングシステムおよび更に比較例3aおよび3bからのシロキサン変性ポリオールを含有するコーティングシステムを配合し、同様に塗布した。
【0076】
例2aからの本発明のシロキサン含有ポリイソシアネートおよび比較システムの結果を表1に表示する。

【0077】
例2aおよび2bからの本発明のポリシロキサン変性ポリイソシアネートは良好なレベリングを有するフィルムを形成したが、常套のOH含有ポリシロキサンユニットで変性されたポリイソシアネートは深刻な湿潤問題を示した。更に本発明のポリシロキサン変性ポリイソシアネートは、改良された耐溶剤性および更に耐引掻き性(リフロー(reflow)後の相対残留光沢)を示した。常套のポリシロキサンユニットで変性されたポリイソシアネートは、標準との関連でさえ、振子硬度および耐溶媒性の明確な劣化を示した。
【0078】
WO2007025671とのコーティング技術特性の比較
例3aおよび3bにおいて、WO2007025671のように、官能性の高いヒドロキシアルキル官能性ポリジメチルシロキサンを最初にポリオールと混合し、その後、それらを塗布前にポリイソシアネートと混合し、次にWO 2007/025671に記述されているようにナイフコーティングではなくスプレーによって塗布した。スプレー塗布が深刻な湿潤欠陥を有するフィルムを生じる(評価不能)WO2007/025671とは対照的に、本発明に従ってポリシロキサンポリオールを予めポリイソシアネートと反応させると(「プレポリマーバッチング(prepolymer batching)」)、妥当なスプレー塗布が行われ、このことが改良されたフィルム特性をもたらす(表1参照。)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリイソシアネートを(B)ヒドロキシル含有シロキサンおよび要すれば(C)ブロッキング剤と反応させるシロキサン変性ポリイソシアネートの製造方法であって、該(B)が、数平均分子量200〜3000g/molおよび平均OH官能性1.8以上を有し、式(I)
【化1】

〔式中、
Xは、脂肪族の非分枝もしくは分枝C〜C10基、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル基、より好ましくはメチル基、またはSi−[−[O−CH−CHZ]−O−]ユニット(式中、Z=Hまたはメチル、好ましくはH、かつ、n=1〜12、好ましくは1〜5)、または、より好ましくは[−CH−O−(CH−]−Siユニット(式中、r=1〜4、好ましくはr=3)であり、
Rは、次式のヒドロキシ官能性カルボン酸エステル
【化2】

(式中、x=3〜5、好ましくは5)または、好ましくは−CH(OH)Y基(式中、Yは、−CH−N(R)基であり、Rは、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロヘキシル基、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル基であり、Rは、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル基である。)であり、
は、同一であっても異なっていてもよく、水素または任意にヘテロ原子を含有していてもよいC〜C10炭化水素基であり、
nは、1〜40である。〕
のヒドロキシル含有シロキサンである、シロキサン変性ポリイソシアネートの製造方法。
【請求項2】
ウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造を有する(A)ポリイソシアネートを使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
IPDI、MDI、TDI、HDIまたはそれらの混合物ベースの(A)ポリイソシアネートを使用することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
式(I)において、Rが次式
【化3】

(式中、x=3〜5、好ましくは5)
のヒドロキシ官能性カルボン酸エステルまたは次式
【化4】

(式中、
は、脂肪族直鎖、分枝または環状ヒドロキシアルキル基であり、
は、水素であるかまたは基Rの定義に一致する。)
のヒドロキシアルキル官能性アミノ基であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
式(I)中のRがフェニルまたはメチル基であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
該変性されるポリイソシアネートの遊離NCO基対式(I)のヒドロキシル含有シロキサンのNCO反応性OH基の比が1:0.001〜1:0.4であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
該残留遊離NCO基が工程(C)においてブロックされることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
該(A)と(B)との反応が、(B)以外の2以上のヒドロキシル基を有する化合物の不存在下に行われることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法によって得られる、シロキサン基含有ポリイソシアネート。
【請求項10】
請求項9に記載のシロキサン基含有ポリイソシアネートを含有するポリウレタンシステム。
【請求項11】
架橋用にポリヒドロキシ化合物および/またはポリアミン化合物、並びに所望により助剤および添加剤を含有することを特徴とする、請求項10に記載のポリウレタンシステム。
【請求項12】
請求項9に記載のシロキサン基含有ポリイソシアネートを使用して得られるポリウレタン接着剤、ポリウレタンコーティング材料およびポリウレタンコーティング。

【公表番号】特表2011−503267(P2011−503267A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532466(P2010−532466)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009002
【国際公開番号】WO2009/059694
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】