説明

ポリフェノール含有量を低減させたサラシア抽出物

【課題】生体に対する安全性の高いサラシア抽出物、即ち、メラニン生成抑制作用を損なうことなく細胞毒性を低減させたサラシア抽出物を提供すること。
【解決手段】ポリフェノールを含有するサラシア粗抽出物におけるポリフェノール含有量を低減させることにより得られる、ポリフェノール含有量を低減させたサラシア抽出物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェノール含有量を低減させたサラシア抽出物、それを含有する皮膚外用剤、及び上記サラシア抽出物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚外用剤には種々の薬効を有する薬剤や皮膚水分保持能向上が期待される保湿剤や抗酸化剤が配合されている。例えば、日焼けによるシミ、ソバカスを予防又は改善するために、メラニン生成の抑制物質や抗炎症成分、例えばアルブチン、トラネキサム酸、コウジ酸、アスコルビン酸類等が配合されている。特に、メラニン生成を抑制することにより、外用剤として美白の効果があることは一般的に知られている。皮膚の色素沈着の原因となるメラニンは、表皮基底層にある色素細胞であるメラノサイト内のメラノソームと呼ばれる小器官において生成される。メラノソームでは、酵素チロシナーゼの作用によりチロシンからドーパキノンが生成し、ドーパキノンは酸化後に重合することにより黒色のメラニンに変化する。したがって、チロシナーゼ活性の抑制は、メラニンの生成を抑制する上で重要である。
【0003】
植物抽出物の1種であるサラシア抽出物が、メラニン生成抑制効果を示すことが知られている。例えば、特許文献1には、サラシア・レティキュラータ、サラシア・キネンシスおよびサラシア・オブロンガから選ばれる1種以上の植物抽出物を含有することを特徴とするメラニン生成抑制剤、並びに上記メラニン生成抑制剤を配合することを特徴とする化粧料組成物が記載されている。しかしながら、特許文献1に記載のサラシアの水抽出物及びエタノール抽出物は細胞毒性を示すことも判明しており、より安全面で問題があった。
【0004】
また、サラシア抽出物にはポリフェノールが含まれていることも知られている(非特許文献1)。さらにポリフェノール類の1種であるエピカテキンガレートが、チロシナーゼ阻害を示し、メラニン生成抑制に有用であることが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−188463号公報
【特許文献2】特許3200187号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】古川雅之他、YAKUGAKU ZASSHI、Vol. 121、No. 5、371-378 (2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、生体に対する安全性の高いサラシア抽出物、即ち、メラニン生成抑制作用を損なうことなく細胞毒性を低減させたサラシア抽出物を提供することを解決すべき課題とした。更に本発明は、上記サラシア抽出物を含有する皮膚外用剤、及び上記サラシア抽出物の製造方法を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリフェノールを含有するサラシア粗抽出物においてポリフェノール含有量を低減させることによってメラニン生成抑制効果を損うことなく、細胞毒性のみを低下できることを見出した。特に、サラシア抽出物から意図的にポリフェノールを除去するクロマトグラフィー工程によってポリフェノール含有量を低減させることによって、顕著な効果が得られた。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0009】
即ち、本発明によれば、ポリフェノールを含有するサラシア粗抽出物におけるポリフェノール含有量を低減させることにより得られる、ポリフェノール含有量を低減させたサラシア抽出物が提供される。
好ましくは、ポリフェノールを含有するサラシア粗抽出物におけるポリフェノール含有量は50%以下まで低減されている。
好ましくは、ポリフェノールを含有するサラシア粗抽出物におけるポリフェノール含有量が25%以下まで低減されている。
好ましくは、フォリン・チオカルトー比色分析法を用いてエピカテキン換算で算出したポリフェノール含有量は10%以下である。
好ましくは、フォリン・チオカルトー比色分析法を用いてエピカテキン換算で算出したポリフェノール含有量は5%以下である。
【0010】
好ましくは、ポリフェノールを含有するサラシア粗抽出物をクロマトグラフィーで処理することによって当該サラシア粗抽出物におけるポリフェノール含有量を低減させる。
好ましくは、クロマトグラフィーは逆相クロマトグラフィーである。
好ましくは、オクタデシルシリル基で表面修飾されたシリカゲル担体を用いてクロマトグラフィーを行う。
【0011】
本発明によればさらに、上記した本発明のサラシア抽出物を含有する皮膚外用剤が提供される。
【0012】
本発明によればさらに、ポリフェノールを含有するサラシア粗抽出物をクロマトグラフィーで処理することによって当該サラシア粗抽出物におけるポリフェノール含有量を低減させることを含む、上記した本発明のサラシア抽出物の製造方法が提供される。
好ましくは、クロマトグラフィーは逆相クロマトグラフィーである。
好ましくは、オクタデシルシリル基で表面修飾されたシリカゲル担体を用いてクロマトグラフィーを行う。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、メラニン生成抑制作用を損なうことなく細胞毒性を低減させたサラシア抽出物が提供される。ポリフェノール類は、チロシナーゼ阻害によりメラニン生成抑制作用を示すことが当業者の間では認識されていることから、植物抽出物からポリフェノール類を除去することはメラニン抑制作用をも低下させることが当然に予想される。この予想に反し、本発明においては、サラシア抽出物に関しては、ポリフェノール含有量を低減させることによってメラニン生成抑制効果を損うことなく細胞毒性のみを低下できることが見出された。ポリフェノール含有量を低減させることによってメラニン生成抑制効果を損うことなく細胞毒性のみを低下できることは、本発明により見出された全く予想外の有利な効果である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明についてさらに具体的に説明する。
本発明のサラシア抽出物は、ポリフェノールを含有するサラシア粗抽出物におけるポリフェノール含有量を低減させることにより得られるものであり、サラシア抽出物のポリフェノール含量を減らすことにより、細胞毒性を低下しつつ優れたメラニン生成抑制作用を示すことを特徴とする。
【0015】
サラシア属植物とは、主としてスリランカやインドや東南アジア地域に自生するニシキギ科の植物で、より具体的にはサラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata)、サラシア・オブロンガ(Salacia oblonga)、サラシア・プリノイデス(Salacia prinoides)、サラシア・キネンシス(Salacia chinensis)、サラシア・ラティフォリア(Salacia latifolia)、サラシア・ブルノニアーナ(Salacia burunoniana)、サラシア・グランディフローラ(Salacia・grandiflora)、サラシア・マクロスペルマ(Salacia macrosperma)から選ばれる1種類以上の植物を用いることができる。
【0016】
サラシア粗抽出物とは、根、幹、葉、花、果実など可食部の粉砕物、乾燥物、抽出物またはその乾燥粉末(エキス末)などを意味する。1種類以上の部位を混合して使用しても良い。より好ましくは根、幹から抽出したエキス末が用いられる。
【0017】
該エキス末は、前述の可食部等から溶媒抽出によって得られたものを乾燥させたものである。抽出溶媒としては、水、またはメタノール、エタノールを初めとするアルコール類、あるいは水とアルコール類またはアセトンなどのケトン類との混合溶媒から選択されてよい。好ましくは水、アルコール、含水アルコールを用いる。より好ましくは、抽出溶媒として熱水もしくはエタノールあるいは含水エタノールを用いる。前記含水アルコールのアルコール濃度は、30〜90質量%、好ましくは40〜70質量%の濃度のものを使用すればよい。乾燥方法は噴霧乾燥、凍結乾燥などが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0018】
本発明のサラシア抽出物は、ポリフェノールを含有するサラシア粗抽出物におけるポリフェノール含有量を低減させることにより得られる。ポリフェノール含量を低減させる方法としては、抽出溶媒の選択、あるいは抽出後にポリフェノール類を選択的にクロマトグラフィーで除去する方法があるが、サラシア属植物抽出物の有効成分を維持する目的においては、熱水もしくはエタノールあるいは含水エタノールを用いて抽出後、クロマトグラフィーでポリフェノールを除去することが好ましい。クロマトグラフィーは、順相クロマトグラフィーでも逆相クロマトグラフィーでもよいが、逆相クロマトグラフィーがより好ましい。逆相クロマトグラフィーで用いる担体は、サラシア粗抽出物におけるポリフェノール含有量を低減させるという本発明の目的が達成できる限り特に限定されないが、例えば、オクタデシルシリル基で表面修飾されたシリカゲル担体(ODS担体又はODSカラムとも称される)、又はスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤(具体的には、DIAION HP-20(合成吸着剤,三菱化学(株)社製))などを用いることができる。なお、ODSカラムは高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 分析に用いるカラムの一種で、オクタデシルシリル基 (C18H37Si) で表面修飾された化学結合型多孔性球状シリカゲルが固定相として充填されているカラムで、通常は逆相クロマトグラフィーに用いられる。
【0019】
ポリフェノールは、同一ベンゼン環上に2個以上のヒドロキシル基を有する化合物の総称である。ポリフェノールは植物体内に含まれており、光合成によって生成する。例えば、お茶のカテキン、そばのルチン、コーヒーのクロロゲン酸、タマネギのクエルセチン、むらさき芋のアントシアニンに代表されるようにポリフェノールの種類は極めて多岐にわたる。本発明で言うポリフェノールとは、サラシア粗抽出物に含まれているポリフェノールを意味し、例えば、マンギフェリン、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−4’−O−メチルエピガロカテキン、(−)−エピアフゼレチン−(4β→8)−(−)−4’−O−メチルエピガロカテキン、(−)−エピカテキン−(4β→8)−(−)−4’−O−メチルエピガロカテキン、サラシノール、及びコタラノールなど(古川雅之他、YAKUGAKU ZASSHI、Vol. 121、No. 5、371-378 (2001))を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。上記以外のポリフェノールとしては、フラボノイド類(カテキン、アントシアニン、フラボン、イソフラボン、フラバン、フラバノン、ルチン)、フェノール酸類(クロロゲン酸、エラグ酸、没食子酸、没食子酸プロピル)、リグナン類、クルクミン類、クマリン類などを挙げることができ、サラシア抽出物に含まれているものは全て本発明で言うポリフェノールに該当することになる。
【0020】
本発明のサラシア抽出物においては、好ましくは、ポリフェノールを含有するサラシア粗抽出物におけるポリフェノール含有量が50%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下まで低減されている。また、本発明のサラシア抽出物においては、フォリン・チオカルトー比色分析法を用いてエピカテキン換算で算出したポリフェノール含有量が10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下である。なお、本明細書で言うエピカテキン換算で算出したポリフェノール含有量(%)は、検量線から求めた試料溶液中のエピカテキンの量を基準とした含有量を元に計算された抽出物固形分に対する重量%を意味する。
【0021】
ポリフェノール含有量の測定方法は、リンタングステン−モリブデン酸の還元に伴う発色の強度を比較するフォーリン・デニス法や、フォリン・チオカルトー比色分析法などが知られている。上記測定方法の中でも、ポリフェノール含有量の値としては、好ましくは、フォリン・チオカルトー(Folin Ciocalteu)比色分析法を用いてエピカテキン換算で算出したポリフェノール含有量を用いることができる。フォリン・チオカルトー法は茶葉や茶飲料のポリフェノール総量の分析法としてISOの公定法(ISO14502-1:2005)に記載されている方法である。フォリン・チオカルトー法では、フォリン-チオカルト試薬(Folin-Ciocalteu's reagent)を加えて反応させ、750nm吸光度(眼には青藍色に見える)を測定する。フォリン-チオカルト試薬はタングステン酸、モリブデン酸、リン酸等から作られ、フェノールの検出にも用いられるのでフェノール試薬ともいう。フェノール性水酸基との反応によりホスホタングステン酸・ホスホモリブデン酸が還元され、750nm付近に吸収を生じる。
【0022】
本発明によれば、上記した本発明のサラシア抽出物は皮膚外用剤として提供することができる。
【0023】
本発明の皮膚外用剤において、サラシア抽出物の配合量は、乾燥質量で組成物全量中0.00001〜10質量%、より好ましくは0.00001〜1質量%である。
【0024】
本発明の皮膚外用剤にはさらに、本発明のサラシア抽出物以外の添加物を配合することができる。添加物としては特に限定することはないが、美白剤、メラニン生成抑制物剤、紫外線防止剤、活性酸素除去剤、抗炎症剤、ビタミン剤、ミネラル、アミノ酸類、抗菌剤、保湿剤、柔軟剤、経皮吸収促進剤、無痛化剤、防腐剤、酸化防止剤、色素剤、増粘剤、香料、又はpH調整剤から選択される1種以上のものを使用することができる。
【0025】
美白剤としては、アルブチン、L−アスコルビン酸およびその誘導体、ハイドロキノン類、グルタチオン及びその誘導体並びにそれらの塩、胎盤抽出物、トラネキサム酸およびその誘導体グルコシド、アルコキシサリチル酸及びその塩、コウジ酸及びその誘導体、システインおよびその誘導体、エラグ酸、ルシノールなどのレゾルシン誘導体、カミツレエキス、カンゾウ抽出物、センプクカ抽出物、ケイケットウ抽出物、サンペンズ抽出物、ソウハクヒ抽出物、トウキ抽出物、イブキトラノオ抽出物、クジン抽出物、サンザシ抽出物、シラユリ抽出物、ホップ抽出物、ノイバラ抽出物、マイカイカ抽出物、ゴカヒ抽出物、モッカ抽出物、黒砂糖抽出物、小麦胚芽抽出物、インチンコウ抽出物、ヨクイニン抽出物、タラノキ抽出物、アルテア抽出物並びにブドウ種子抽出物等が挙げられる。
【0026】
メラニン生成抑制剤としては、チロシナーゼ活性を阻害してメラニン産生を抑制するグルタチオンに代表される硫黄化合物等、産生したメラニンを淡色漂白する過酸化水素、ヒドロキノン、アルブチンやビタミンC等、ケラチン細胞内のメラニンを減少させるビタミンA酸やビタミンA類等が挙げられる。
【0027】
紫外線防止剤としては、サリチル酸ホモメンチル、4−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンスルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、4−t−ブチル−4'−メトキシ−ジベンゾイルメタン、酸化チタンおよび酸化亜鉛等が挙げられる。
【0028】
活性酸素除去剤としては、スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)、マンニトール、ベータカロチン等のカロテノイド類、アスタキサンチン、ルチン及びその誘導体、ビリルビン、コレステロール、トリプトファン、ヒスチジン、クエルセチン、クエルシトリン、カテキン、カテキン誘導体、没食子酸、没食子酸誘導体、オウゴン抽出物、イチョウ抽出物、ユキノシタ抽出物、メリッサ抽出物、ゲンノショウコ抽出物、ボタンピ抽出物、パセリ抽出物、トルメンチラ抽出物、羅漢果抽出物、海藻抽出物、ヤシャジツ抽出物、ジコッピ抽出物等が挙げられる。
【0029】
抗炎症剤としては、アズレン、グアイアズレン、塩酸ジフェンヒドラミン、酢酸ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、メフェナム酸、フェニルブタゾン、インドメタシン、イブプロフェン及びケトプロフェンから選ばれる化合物並びにそれらの誘導体並びにそれらの塩、オウゴンエキス、カワラヨモギエキス、キキョウエキス、キョウニンエキス、クチナシエキス、クマザサ抽出液、ゲンチアナエキス、コンフリーエキス、シラカバエキス、ゼニアオイエキス、トウニンエキス、桃葉エキス並びにビワ葉エキスから選ばれる植物抽出物などが挙げられる。
【0030】
抗酸化剤としては、例えば、カロテン類、レチノイン酸、レチノール、ビタミンC及びその誘導体、カイネチン、アスタキサンチン、トレチノイン、ビタミンEおよびその誘導体、セサミン、α−リポ酸、コエンザイムQ10、フラボノイド類、エリソルビン酸、没食子酸プロピル、BHT(ジ-n-ブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、コウキエキス、大豆エキス、紅茶エキス、茶エキス、エイジツエキスなどを挙げられる。
【0031】
ビタミン剤、ミネラル、又はアミノ酸類も、それぞれ公知の成分を用いることができる。
【0032】
本発明で用いることができる抗菌剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。抗菌剤が、ピロクトンオラミン、イソプロピルメチルエーテル、ヒノキチオール、ジンクピリチオン、クリンバゾール、塩化ベンザルコニウム、感光色素101、感光色素201、クロルヘキシジン、サリチル酸、フェノール、ケトコナゾール及びミコナゾールなどが挙げられる。
【0033】
本発明で用いることができる保湿剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。カンテン、ジグリセリン、ジステアリルジモニウムヘクトライト、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、へキシレングリコール、ヨクイニンエキス、ワセリン、尿素、ヒアルロン酸、セラミド、リピジュア、イソフラボン、アミノ酸、コラーゲン、ムコ多糖、フコダイン、ラクトフェリン、ソルビトール、キチン・キトサン、リンゴ酸、グルクロン酸、プラセンタエキス、海藻エキス、ボタンピエキス、アマチャエキス、オトギリソウエキス、コレウスエキス、マサキ抽出物、コウカエキス、マイカイ花エキス、チョレイエキス、サンザシエキス、ローズマリーエキス、デュークエキス、カミツレエキス、オドリコソウエキス、レイシエキス、セイヨウノコギリソウエキス、アロエエキス、マロニエエキス、アスナロエキズ、ヒバマタエキス、オスモインエキス、オーツ麦エキス、チューベロースポリサッカライド、冬虫夏草エキス、大麦エキス、オレンジ抽出物、ジオウエキス、サンショウエキス、ヨクイニンエキスなどが挙げられる。
【0034】
本発明で用いることができる柔軟剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。グリセリン、ミネラルオイル、エモリエント成分(例えば、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸ポリグリセリル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸オクチル、オレイン酸、オレイン酸グリセリル、カカオ脂、コレステロール、混合脂肪酸トリグリセリド、コハク酸ジオクチル、酢酸ステアリン酸スクロース、シクロペンタシロキサン、ジステアリン酸スクロース、パルミチン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ベヘン酸アラキル、ポリベヘン酸スクロース、ポリメチルシルセスキオキサン、ミリスチルアルコール、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシルなど)が挙げられる。
【0035】
本発明で用いることができる経皮吸収促進剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。エタノール、ミリスチン酸イソプロピル、クエン酸、スクワラン、オレイン酸、メントール、N-メチル-2-ピロリドン、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸オクチルドデシル、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、尿素、植物油、動物油が挙げられる。
【0036】
本発明で用いることができる無痛化剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ベンジルアルコール、塩酸プロカイン、塩酸キシロカイン、 クロロブタノールなどが挙げられる。
【0037】
本発明で用いることができる防腐剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、過酸化水素、ギ酸、ギ酸エチル、ジ亜塩素酸ナトリウム、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、ペクチン分解物、ポリリジン、フェノール、イソプロピルメチルフェノール、オルトフェニルフェノール、フェノキシエタノール、レゾルシン、チモール、チラム、ティートリー油が挙げられる。
【0038】
本発明で用いることができる酸化防止剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ビタミンA、レチノイン酸、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、レチニルアセテート、レチニルパルミテート、レチノイン酸トコフェリル、ビタミンCおよびその誘導体、カイネチン、β−カロテン、アスタキサンチン、ルテイン、リコピン、トレチノイン、ビタミンE、α−リポ酸、コエンザイムQ10、ポリフェノール、SOD、フィチン酸などが挙げられる。
【0039】
本発明で用いることができる色素剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。オキアミ色素、オレンジ色素、カカオ色素、カオリン、カルミン類、グンジョウ、コチニール色素、酸化クロム、酸化鉄、二酸化チタン、タール色素、クロロフィルなどが挙げられる。
【0040】
本発明で用いることができる増粘剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。クインスシード、カラギーナン、アラビアガム、カラヤガム、キサンタンガム、ジェランガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、ペクチン、デンプン、シクロデキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0041】
本発明で用いることができる香料として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ジャコウ、アカシア油、アニス油、イランイラン油、シナモン油、ジャスミン油、スウィートオレンジ油、スペアミント油、ゼラニウム油、タイム油、ネロリ油、ハッカ油、ヒノキ油、フェンネル油、ペパーミント油、ベルガモット油、ライム油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ローズ油、ローズウッド油、アニスアルデヒド、ゲラニオール、シトラール、シベトン、ムスコン、リモネン、バニリンなどが挙げられる。
【0042】
本発明で用いることができるpH調整剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸、コハク酸が挙げられる。
【0043】
上記した添加物は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて用いることもできる
【0044】
本発明の皮膚外用剤の剤型は特に限定されないが、例えば、液剤、湿布剤、塗布剤、ゲル剤、クリーム剤、エアゾール剤、ローション剤、粉剤、泡剤、化粧水、ボディーソープ、石鹸、化粧料などを挙げることができる。
【0045】
本発明の皮膚外用剤の投与方法としては、経皮投与が挙げられる。
【0046】
本発明の皮膚外用剤の投与量は、活性成分であるサラシア抽出物の種類及び使用量、使用者の体重、疾患の状態などに応じて適宜設定することができるが、一般的には、1回の投与につき、1μg〜50mg/cm2程度を投与することができ、好ましくは2μg〜10mg/cm2程度を投与することができる。
【0047】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
実施例1
サラシアの可食部等から溶媒抽出によって得られたものを乾燥することによって、サラシア粗抽出物を調製した。溶媒としては、熱水を用いた。上記で得たサラシア属植物の抽出物(ポリフェノール含量20%:以下、サラシア粗抽出物)10gを、ODS担体を用いて精製を行った。分画部分を調整して、ポリフェノール含有量が1〜10%のサンプルを得た。具体的には、サラシア属植物の抽出物100gを精製水に溶解させ、フィルター濾過により残渣を除き、下記条件で分取クロマトにより成分を分画した。
カラム:ODS担体Wakosil 40C18 φ26mmx50cm(和光純薬)
流速:10mL /min
移動相:100%水
検出:Abs.200、280、540、conductivity
【0049】
ポリフェノール含有量は、Folin Ciocalteu's比色分析法を用いてエピカテキン換算で算出した。具体的には、以下の通りである。
本品1gを精密に量りとり、水を加えて正確に50mL とし、試料溶液とする。別にエピカテキン0.1g を精密に量り、水を加えて溶かし正確に100mL とする。この液0,1,3,5mL をそれぞれ正確に量り、水を加えて正確に100mL とし、検量線作成用標準溶液とする。試料溶液及び標準溶液各1mL を正確に量り、水で5倍に希釈したFolin & Ciocalteu's phenol reagent(Sigma-Aldrich)5mL を加えて振り混ぜる。これに無水炭酸ナトリウム溶液5mL を加えて振り混ぜ、1 時間放置する。この液について、対照を水として、波長750nm における吸光度を測定する。
【0050】
本品中のポリフェノール(エピカテキン C15H14O6:290.3)として)の量(%)=検量線から求めた試料溶液中のエピカテキンの量(μg/mL)×(50/本品採取量(g))×(1/1,000,000)×100
【0051】
【表1】

【0052】
実施例2:メラノーマB16を用いた細胞毒性試験
B16メラノーマ細胞(マウス由来のメラニン生成能力を有する癌細胞)を、10%(v/v)FBS含有MEM培地で、24穴培養プレートに1.25×105個/wellとなるように播種し、常法にて24時間前培養した。前培養後、評価試料を表2に記載の濃度にした試験培地に培地交換し、72時間培養を行った。試験培地としては、上記前培養用培地にテオフィリンを0.25mmol/L、ジメチルスルホキシドを0.5%(v/v)となるように添加したものを使用した。培養終了後、細胞をPBSで洗浄した後、0.5mg/mL MTT溶液を500μL/well加え、インキュベーターで2時間保温した。その後、ジメチルスルホキシド1.5mLを添加し、波長570nmにおける吸光度を測定し生細胞数の指標とした。評価試料を添加しない場合の生細胞数を100として、評価試料を添加した場合の細胞生存率(%)を求めた。結果を表2に示す。
【0053】
実施例3:メラノーマB16を用いたメラニン産生抑制試験
B16メラノーマ細胞を、10%(v/v)FBS含有MEM培地で、12穴培養プレートに2.5×105個/wellとなるように播種し、常法にて24時間前培養した。前培養後、評価試料を表2に記載の濃度にした試験培地に培地交換し、72時間培養を行った。試験培地としては、上記前培養用培地にテオフィリンを0.25mmol/L、ジメチルスルホキシドを0.5%(v/v)となるように添加したものを使用した培養終了後、細胞をPBSで洗浄した後、10%(v/v)ジメチルスルホキシドを含有する1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を添加し、50℃で30分間超音波処理した後、溶解液の波長400nmにおける吸光度を測定し、well中のメラニン量とした。また、well中のメラニン量を実施例2で実施した細胞毒性試験結果の生細胞数を用いて、規格化することで単位細胞あたりのメラニン含有率とした。メラニン含有率が低いほど、メラニン産生抑制効果が高いことを表す。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
表2に示すように、本発明によるポリフェノール含有量を低減させたサラシア抽出物は、細胞毒性が少なく、メラニン抑制効果が良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェノールを含有するサラシア粗抽出物におけるポリフェノール含有量を低減させることにより得られる、ポリフェノール含有量を低減させたサラシア抽出物。
【請求項2】
ポリフェノールを含有するサラシア粗抽出物におけるポリフェノール含有量が50%以下まで低減されている、請求項1に記載のサラシア抽出物。
【請求項3】
ポリフェノールを含有するサラシア粗抽出物におけるポリフェノール含有量が25%以下まで低減されている、請求項1又は2に記載のサラシア抽出物。
【請求項4】
フォリン・チオカルトー比色分析法を用いてエピカテキン換算で算出したポリフェノール含有量が10%以下である、サラシア抽出物。
【請求項5】
フォリン・チオカルトー比色分析法を用いてエピカテキン換算で算出したポリフェノール含有量が5%以下である、請求項4に記載のサラシア抽出物。
【請求項6】
ポリフェノールを含有するサラシア粗抽出物をクロマトグラフィーで処理することによって当該サラシア粗抽出物におけるポリフェノール含有量を低減させる、請求項1から5の何れかに記載のサラシア抽出物。
【請求項7】
クロマトグラフィーが逆相クロマトグラフィーである、請求項6に記載のサラシア抽出物。
【請求項8】
オクタデシルシリル基で表面修飾されたシリカゲル担体を用いてクロマトグラフィーを行う、請求項6又は7に記載のサラシア抽出物。
【請求項9】
請求項1から8の何れかに記載のサラシア抽出物を含有する皮膚外用剤。
【請求項10】
ポリフェノールを含有するサラシア粗抽出物をクロマトグラフィーで処理することによって当該サラシア粗抽出物におけるポリフェノール含有量を低減させることを含む、請求項1から8の何れかに記載のサラシア抽出物の製造方法。
【請求項11】
クロマトグラフィーが逆相クロマトグラフィーである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
オクタデシルシリル基で表面修飾されたシリカゲル担体を用いてクロマトグラフィーを行う、請求項10又は11に記載の方法。

【公開番号】特開2011−157306(P2011−157306A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20850(P2010−20850)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】