説明

ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物

【課題】冷熱サイクル環境での高度な耐久性等の性能と、付加反応型シリコーンゴムとの接着性を両立させたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、(B)スチレン成分が40重量%以下であるスチレン系熱可塑性エラストマー5〜30重量部、(C)ガラス繊維20〜100重量部を配合してなる、付加反応型シリコーンゴムとの接着性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加反応型シリコーンゴムとの接着性に優れ、自動車部品、電気・電子部品等に用いて有用なポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及びポリブチレンテレフタレート樹脂とシリコーンゴムの一体成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、機械的性質、電気的性質、その他物理的、化学的性質に優れ、且つ加工性が良好であるがゆえにエンジニアリングプラスチックとして、自動車、電気・電子部品等の広範な用途に使用されている。特に、水分やダスト、外部からの衝撃等からのダメージを保護する目的で、電子部品が搭載された基板を収容するケース材や、センサープローブやコネクター端子等が配置されるインサート成形品等の用途において好ましく用いられる。
【0003】
かかる用途では、基板やセンサー本体に対する水分やダスト等の影響を極力避ける目的で、基板を収めたカバー内にポッティング材を満たして加熱硬化させたり、カバーとケースを接着剤によって接合・シールする場合が多い。このようなポッティング材等としては、エポキシ樹脂やシリコーンゴムが使用されることが多いが、特に耐熱性、耐寒性が必要とされる部品にはシリコーンゴムが使用されることが多い。近年、二重成形や、熱板溶着、振動溶着、レーザー溶着等、様々な接合工法が実用化されてきているものの、基板の保護を目的としたポッティングに関しては、接合工法によらずシリコーンゴムが広く利用されている。
【0004】
また、コンデンサー等の回路部品を簡易的に接合する手法としてもシリコーンゴムが使用されており、硬化時間を短縮するため、特に付加反応型シリコーンゴムが使われることが多い。ここでいうシリコーンゴムとは、接着剤や電気・電子部品をポッティングするために使用する液状のシリコーンゴムであり、大きく分けて付加反応型シリコーンゴムと縮合反応型シリコーンゴムの2つのタイプがある。
【0005】
上記の工法が適用される用途においては、コネクター等の金属端子や、電気回路を構成する金属製のバスバー、各種センサー部品等が圧入やインサート成形によって配置されるのが通例であり、特に自動車に搭載される部品用途においては、高温・高湿環境や冷熱サイクル環境での高度な耐久性が求められることが多く、エラストマーや各種添加剤によって特徴付けられたポリブチレンテレフタレート材料が用いられるのが一般的である。
【0006】
しかし、ケース材やカバー材の選定によっては、かかるシリコーンゴムが硬化不良や界面密着不良を生じ、部品として十分な機能を発揮できない場合があった。
【0007】
特許文献1では、付加反応型シリコーンとの接着強度の改善に関して、ポリブチレンテレフタレートと、特定の珪素化合物、フェノール系抗酸化剤及び/又はチオエーテル系抗酸化剤を含む組成物が提案されている。
【0008】
しかしながら、かかる組成では、自動車産業で要求される材料の耐冷熱サイクル性を満たすことができない。また、一般的に、特定の珪素化合物を多量に添加することでシリコーンゴム自体の物性低下を招いたり、硫黄系化合物や三価のリン化合物により、硬化触媒の白金化合物が失活して反応阻害を招くことが知られており、特許文献1の組成物は実用性に欠けるものであった。
【0009】
特許文献2では、ポリブチレンテレフタレートに、イソプレン・ブタジエン・スチレン系共重合体、ポリカーボネート及び/又はビニル系共重合体を配合した組成物について、インサート成形品の耐ヒートショック性を向上させる記載があるが、シリコーンゴムとの接着性に関する記載はない。また、ビニル系共重合体やポリカーボネートは添加することによりシリコーンゴムとの接着性を低下させてしまう場合がある。
【0010】
特許文献3では、ポリブチレンテレフタレートに溶融混練工程なしにベント式射出成形機でSEBSを添加した組成物が、機械的強度、耐熱性、耐衝撃性、耐薬品性が良好である旨記載されているが、シリコーンゴムとの接着性については記載がない。
【0011】
特許文献4では、ポリエステルに、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと未水素化および/または水素化した共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック重合体を配合することにより、エポキシ接着性が向上するとの記載があるが、シリコーンゴムとの接着性については記載がない。また、未水素化の共役ジエン化合物は付加反応型シリコーンゴムとの接着性を低下させてしまうことを確認した。
【特許文献1】特開平9−165503号公報
【特許文献2】特開平2006−111693号公報
【特許文献3】特開平6−32912号公報
【特許文献4】特開平10−235819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み案出されたものであり、冷熱サイクル環境での高度な耐久性等の性能と、付加反応型シリコーンゴムとの接着性を両立させたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記目的を達成し得るポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を得るため鋭意検討を行った結果、ポリブチレンテレフタレート樹脂を主体とし、これにスチレン系熱可塑性エラストマー及びガラス繊維を併用配合した組成物は、機械的物性の大きな低下なしに、付加反応型シリコーンゴムとの接着性および耐ヒートショック性に極めて優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち本発明は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、(B)スチレン成分が40重量%以下であるスチレン系熱可塑性エラストマー5〜30重量部、(C)ガラス繊維20〜100重量部を配合してなる、付加反応型シリコーンゴムとの接着性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、およびかかる樹脂組成物を成形してなる成形品、特にインサート成形品である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、冷熱サイクル環境での高度な耐久性等の性能と、付加反応型シリコーンゴムとの接着性を両立させたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が提供される。本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、各種電気・電子部品、特に電子部品を収容するケース、カバー又はハウジング成形品、金属端子、金属バスバー又はセンサーをインサート成形・圧入加工してなる成形品に有用である。更に、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂成形品は、シリコーンゴムによりポッティング及び/又は接着されてなる電子部品を収容するケース、カバー又はハウジング成形品に特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、順次本発明の樹脂材料の構成成分について詳しく説明する。まず本発明の樹脂組成物の基礎樹脂である(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂とは、少なくともテレフタル酸またはそのエステル形成誘導体(低級アルコールエステルなど)を含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素数4のアルキレングリコール(1,4 −ブタンジオール)又はそのエステル形成誘導体を含むグリコール成分とを重縮合して得られるポリブチレンテレフタレート系樹脂である。ポリブチレンテレフタレート樹脂はホモポリブチレンテレフタレート樹脂に限らず、ブチレンテレフタレート単位を60モル%以上(特に75〜95モル%程度)含有する共重合体であってもよい。
【0017】
ポリブチレンテレフタレート樹脂において、テレフタル酸及びそのエステル形成誘導体以外のジカルボン酸成分(コモノマー成分)としては、例えば、芳香族ジカルボン酸成分(イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などの、C6〜C12 アリールジカルボン酸など)、脂肪族ジカルボン酸成分(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC4〜C16 アルキルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などのC5〜C10 シクロアルキルジカルボン酸など)、またはそれらのエステル形成誘導体などが例示できる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0018】
好ましいジカルボン酸成分(コモノマー成分)には、芳香族ジカルボン酸成分(特にイソフタル酸などのC6〜C10 アリールジカルボン酸)、脂肪族ジカルボン酸成分(特にアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC6〜C12 アルキルジカルボン酸)が含まれる。
【0019】
1,4 −ブタンジオール以外のグリコール成分(コモノマー成分)としては、例えば、脂肪族ジオール成分〔例えば、アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3 −ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3 −オクタンジオールなどのC2〜C10 アルキレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのポリオキシC2〜C4アルキレングリコールなど)、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAなどの脂環式ジオールなど〕、芳香族ジオール成分〔ビスフェノールA、4,4 −ジヒドロキシビフェニルなどの芳香族アルコール、ビスフェノールAのC2〜C4アルキレンオキサイド付加体(例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体など)など〕、またはそれらのエステル形成誘導体などが挙げられる。これらのグリコール成分も単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0020】
好ましいグリコール成分(コモノマー成分)には、脂肪族ジオール成分(特に、C2〜C6アルキレングリコール、ジエチレングリコールなどのポリオキシC2〜C3アルキレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオール)が含まれる。
【0021】
前記化合物をモノマー成分とする重縮合により生成するポリブチレンテレフタレート系重合体は、いずれも本発明の(A) 成分として使用できる。ホモポリブチレンテレフタレート重合体とポリブチレンテレフタレート共重合体との併用も有用である。
【0022】
本発明においては、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、固有粘度が0.65〜1.0、且つ末端カルボキシル基の含有量が10〜40m当量/kgのものであることが好ましい。固有粘度がかかる範囲を超えて低いと、所望の機械的特性が得られず、かかる範囲を超えて高いと、組成物の流動性が著しく低下し、射出成形性が低下する。末端カルボキシル基の含有量がかかる範囲を超えて低いと、ガラス繊維の補強効果が著しく低下し、所望の機械的特性が得られず、かかる範囲を超えて高いと、所望の耐ヒートショック性が得られず、好ましくない。
【0023】
本発明で使用される(B)スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、ポリスチレンブロックとポリオレフィン構造のエラストマーブロックで構成されたブロック共重合体が望ましい。
【0024】
これらブロック共重合体としては、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体(SIS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレンブロック共重合体(SEPS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリスチレンブロック共重合体(SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)−ポリスチレンブロック共重合体(SEEPS)等が挙げられる。
【0025】
これらスチレン系熱可塑性エラストマーは、芳香族ビニル化合物と、オレフィン系化合物あるいは共役ジエン化合物とからなるブロック共重合体である。
【0026】
ブロック共重合体を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−、m−またはp−メチルスチレン、2,3−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、p−ブロモスチレン、2,4,5−トリブロモスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、o−、m−またはp−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられ、芳香族ビニル化合物の1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記ブロック共重合体を構成するオレフィン系化合物としては、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。共役ジエン化合物のブロック部は、これらの化合物の1種から構成されていてもよいし、また2種以上から構成されていてもよいが、ブタジエン、イソプレンまたはこれらの混合物から構成されているのが望ましい。
【0028】
共役ジエン化合物のブロック部は、脂肪族炭素−炭素二重結合を側鎖に含有していてもよい。例えば、共役ジエン化合物として、ブタジエンとイソプレンの混合物またはイソプレンを使用する場合、共役ジエン化合物のブロック部は、1,2−結合および3,4−結合に由来して側鎖に脂肪族炭素−炭素二重結合を含有することがある。この場合、共役ジエン化合物中の1,2−結合と3,4−結合の割合は特に限定されないが、1,2−結合と3,4−結合の合計が、ブロック共重合体を構成する構造単位の全量に対し30モル%以上の割合で含まれていることが好ましく、40モル%以上の割合で含まれていることがより好ましい。
【0029】
共役ジエン化合物のブロック部は、耐熱性を向上させるために共役ジエン化合物に由来する脂肪族炭素−炭素二重結合が水素添加されていたほうがよい。
【0030】
本発明で使用されるブロック共重合体は、アルキルリチウム化合物を重合開始剤として使用し、ブタジエン、イソプレン、ブタジエン−イソプレン、芳香族ビニルモノマー等を、目的とする共重合体の順に逐次重合させることによって得られる。
【0031】
アルキルリチウム化合物は、例えばアルキル残基の炭素原子数が1〜10のアルキル化合物であり、特にメチルリチウム、エチルリチウム、ペンチルリチウム、ブチルリチウムが好ましい。
【0032】
重合反応の際には、反応の制御を容易にするために溶媒を使用することが好ましく、重合開始剤に対して不活性な有機溶媒が用いられる。特に炭素原子数が6〜12の炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、およびこれらに対応する脂環式炭化水素、さらにはトルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素等が利用される。
【0033】
また、スチレン系熱可塑性エラストマー中のスチレン成分は40重量%以下であることが望ましい。40重量%を超えると耐ヒートショック性が不十分な場合がある。
【0034】
本発明における(B)スチレン系熱可塑性エラストマーの配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し5〜30重量部であり、好ましくは10〜25重量部、更に好ましくは15〜20重量部である。(B)成分が少なすぎると一体成形体にインサートされた金属製端子やバスバー部から割れが発生する場合がある。また、(B)成分が多すぎると成形体に必要な剛性等の機械的性質を阻害するため好ましくない。
【0035】
本発明で用いられる(C)ガラス繊維とは、公知のガラス繊維がいずれも好ましく用いられ、ガラス繊維径や、円筒、繭形断面、長円断面等の形状、あるいはチョップドストランドやロービング等の製造に用いる際の長さやガラスカットの方法にはよらない。本発明では、ガラスの種類にも限定されないが、品質上、Eガラスや、組成中にジルコニウム元素を含む耐腐食ガラスが好ましく用いられる。
【0036】
また、本発明では、ガラス繊維と樹脂マトリックスの界面特性を向上させる目的で、アミノシラン化合物やエポキシ化合物等の有機処理剤で表面処理されたガラス繊維が好ましく用いられ、加熱減量値で示される有機処理剤量が1重量%以上であるガラス繊維が特に好ましく用いられる。かかるガラス繊維に用いられるアミノシラン化合物やエポキシ化合物としては公知のものがいずれも好ましく用いることができ、本発明でガラス繊維の表面処理に用いられるアミノシラン化合物、エポキシ化合物の種類には依存しない。
【0037】
(C)ガラス繊維は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し20〜100重量部が用いられる。かかる範囲より少ないと冷熱サイクルに伴う線膨張変化が大きく、耐ヒートショック性上好ましくない。かかる範囲を超えて配合されると、材料の許容歪量が低下し、耐ヒートショック性上好ましくない。好ましくは20〜80重量部、特に好ましくは30〜60重量部である。
【0038】
本発明組成物には更にその目的に応じ所望の特性を付与するため、本来の目的であるシリコーンゴムとの接着性を損なわない範囲で、一般に熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂等に添加される公知の物質、すなわち酸化防止剤や耐熱安定剤、紫外線吸収剤等の安定剤、帯電防止剤、染料や顔料等の着色剤、潤滑剤、可塑剤及び結晶化促進剤、結晶核剤、加水分解向上剤(エポキシ化合物、カルボジイミド等)、タルク、ガラスフレーク等の無機充填剤等を配合してもよい。
【0039】
尚、本発明で言うシリコーンゴムとは、接着剤として、あるいは電気・電子部品をポッティングするために使用される液状のシリコーンゴムであり、室温または加熱することにより硬化するものである。中でも本発明では、白金系触媒による付加反応で硬化が進行する付加反応型シリコーンゴムが使用される。
【0040】
本発明で用いる樹脂組成物の調製は、従来の樹脂組成物調製法として一般に用いられる設備と方法を用いて容易に調製できる。例えば、1)各成分を混合した後、1軸又は2軸の押出機により練り混み押出してペレットを調製し、しかる後成形する方法、2)一旦組成の異なるペレットを調製し、そのペレットを所定量混合して成形に供し成形後に目的組成の成形品を得る方法、3)成形機に各成分の1又は2以上を直接仕込む方法等、何れも使用できる。また、樹脂成分の一部を細かい粉体として、これ以外の成分と混合して添加する方法は、これらの成分の均一配合を図る上で好ましい方法である。
【実施例】
【0041】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〜5、比較例1〜6
表1〜2に示すように、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し各成分を表1〜2に示す混合比率でドライブレンド後、30mmφ2軸押出機((株)日本製鋼所製TEX-30)を用いて溶融混練しペレットを作成した(シリンダー温度260℃、吐出量15g/h、スクリュー回転数150rpm)。次いで、このペレットから各試験片を作成し、各種物性を測定した。結果をあわせて表1〜2に示す。
【0042】
また、使用した成分の詳細、物性評価の測定法は以下の通りである。
(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂
・(A-1) ウインテックポリマー(株)製、固有粘度0.69
・(A-2) テレフタル酸と1,4 −ブタンジオールとの反応において、テレフタル酸の一部(12.5モル%)に代えて、共重合成分としてのジメチルイソフタル酸12.5モル%を用いた変性ポリブチレンテレフタレート、固有粘度0.74
(B) エラストマー成分
・(B-1) (株)クラレ製、ハイブラー7311(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体、スチレン成分12重量%)
・(B-2) (株)クラレ製、セプトン2005(ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレンブロック共重合体、スチレン成分20重量%)
・(B-3) (株)クラレ製、セプトン4055(ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)−ポリスチレンブロック共重合体、スチレン成分30重量%)
・(B-4) (株)クラレ製、セプトン8006(ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリスチレンブロック共重合体、スチレン成分33重量%)
・(B'-1) (株)クラレ製、セプトン8104(ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリスチレンブロック共重合体、スチレン成分60重量%)
・(B'-2) スチレン系エラストマー;ダイセル化学工業(株)製、エポフレンドAT504(エポキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン成分70重量%)
・(B'-3) アクリル系エラストマー;(株)ロームアンドハース製、EXL2311
・(B'-4) オレフィン系エラストマー;三井化学(株)製、タフマーMP0610
・(B'-5) オレフィン系エラストマー;ATOFINA社製、ロタダーAX8900
・(B'-6) オレフィン系エラストマー;住友化学(株)製、ボンドファーストBF7M
(C) ガラス繊維
・(C-1) 日東紡(株)製、CS 3J-948S
[接着強度]
ISO3167に準拠した多目的試験片の中央部を切断し、一方の試験片に7mm×7mmの穴を開けたニトフロンテープ(厚み0.18mm)を貼り付け、穴の部分にシリコーン接着剤を塗布した。塗布後、試験片の他方を重ね合わせ、クリップで固定し、所定の硬化条件で接着を行った。接着後の試験片を23℃、50%RHの環境に24時間以上放置し、万能試験機を用いて押剥がし試験速度5mm/minで接着した試験片を押剥がし、そのときの押剥がし強度の最高値を測定した。
【0043】
使用したシリコーンゴムは東レダウコーニングシリコーン製SE1714であり、硬化条件は120℃×1時間とした。
[溶融粘度特性]
ISO11443に準拠しシリンダー温度260℃で測定した。
[耐ヒートショック性]
ペレットを用いて、樹脂温度260℃、金型温度65℃、射出時間25秒、冷却時間10秒で、試験片成形用金型(縦22mm、横22mm、高さ51mmの角柱内部に縦18mm、横18mm、高さ30mmの鉄芯をインサートする金型)に、一部の樹脂部の最小肉厚が1mmとなるようにインサート射出成形し、インサート成形品を製造した。得られたインサート成形品について、冷熱衝撃試験機を用いて140℃にて1時間30分加熱後、−40℃に降温して1時間30分冷却後、さらに140℃に昇温する過程を1サイクルとする耐ヒートショック試験を行い、成形品にクラックが入るまでのサイクル数を測定し、耐ヒートショック性を評価した。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、(B)スチレン成分が40重量%以下であるスチレン系熱可塑性エラストマー5〜30重量部、(C)ガラス繊維20〜100重量部を配合してなる、付加反応型シリコーンゴムとの接着性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項2】
(B)スチレン系熱可塑性エラストマーの共役ジエン部分が水素添加されており、共役ジエン部分がポリイソプレン、ポリブタジエン又はポリイソプレン−ブタジエンからなる請求項1記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形して得た成形品の表面に、付加反応型シリコーンゴムを注入して硬化せしめてなるポリブチレンテレフタレート樹脂とシリコーンゴムの一体成形体。
【請求項4】
一体成形体が、金属端子、金属バスバー又はセンサーをインサート成形・圧入加工してなる成形品に付加反応型シリコーンゴムを注入して硬化せしめたものである請求項3記載の一体成形体。
【請求項5】
一体成形体が、電子部品を成形品に付加反応型シリコーンゴムによって接合したものである請求項3記載の一体成形体。

【公開番号】特開2009−155447(P2009−155447A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334704(P2007−334704)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(501183161)ウィンテックポリマー株式会社 (54)
【Fターム(参考)】