説明

ポリプロピレンおよびオレフィンインターポリマーの反応処理された高耐熱性組成物

反応処理条件下で、少なくとも、それぞれプロピレンポリマー、オレフィンインターポリマーおよび金属水和物の合わせた重量を基準とした重量パーセントで、A.10重量%の少なくとも1種のプロピレンポリマーと、B.10重量%の少なくとも1種のオレフィンインターポリマーと、C.35重量%の少なくとも1種の金属水和物と、D.カップリング量のカップリング剤とを接触させるステップを含む方法により、プロピレンポリマーがオレフィンインターポリマーとカップリングされる。カップリングされたポリマーを含む組成物から作製されたワイヤおよびケーブル絶縁シースは、所望の耐熱性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により全内容が本明細書に組み込まれている、2008年6月6日に出願した米国特許出願第61/059,356号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、ポリプロピレンポリマーおよびオレフィンインターポリマーを含む組成物に関する。一態様において、本発明は、反応処理され、ワイヤおよびケーブルコーティングに好適な高耐熱性の特性を示すポリプロピレンおよびオレフィンインターポリマーを含む組成物に関する。別の態様において、本発明は、絶縁層を備える電力ケーブルに関し、さらに別の態様において、本発明は、絶縁層が、反応処理されたポリプロピレンおよびオレフィンインターポリマーを含む組成物を含む、電力ケーブルに関する。
【背景技術】
【0003】
ポリマー組成物は、ワイヤおよびケーブル用の主要な絶縁材料として広く使用されている。絶縁材として、組成物は、耐熱性、機械的切断に対する耐性、応力亀裂抵抗および絶縁破損等、様々な物理的および電気的特性を示す必要がある。導電体用の絶縁材料は、多くの場合、所望の耐熱性を達成するために架橋を必要とする。
【0004】
架橋は、多くの機構によりポリマーの異なる分子鎖間に導入することができるが、その機構の1つは、1つの骨格上のグラフトされた化合物が、その後別の骨格上の類似のグラフトされた化合物と反応して架橋を形成するように、バルクポリマーを構成する個々のポリマー骨格または鎖に化学反応性化合物をグラフトすることである。このプロセスの例は、「シラン架橋」プロセスである。
【0005】
シラン架橋プロセスは、ポリマー分子を架橋するシラン含有化合物を使用する。シランは、成型または成形操作の前またはその最中に、好適な量の有機過酸化物またはその他のフリーラジカル開始剤を使用することにより、好適なポリマーにグラフトされ得る。安定剤、顔料、充填剤、触媒、加工助剤等の追加の成分が混合物に含まれてもよい。
【0006】
シラン−過酸化物ブレンドをポリマー架橋に使用する場合、グラフト効率と、押出速度および運転時間等のプロセス効率との間で妥協点が見出されなければならない。この手段による架橋材料の形成は、プロセスの重要な制御を必要とするため、実行が困難である。例えば、高すぎる温度でプロセスが行われると、ポリマーは、押出機等の処理装置内で部分的に架橋する可能性があり、その結果一貫して良好な品質の生成物を達成することが困難となる。処理機器から部分的に架橋した生成物を除去する必要性の結果、プロセスの遅延もまた生じ得る。また、架橋プロセスを生じさせるためのその後の加熱の間、ポリマーから調製された物品がその形状を維持することを確実とするように、注意しなければならない。
【0007】
さらに、高反応性シラン−過酸化物ブレンドを使用すると、ゲル形成、スクリューにおける蓄積(screw-build up)および焼けが生じ得る。これは、特に、ポリオレフィンに高いせん断応力をもたらす過酷な溶融および混合状態を課す条件および処理機器を使用するプロセスにおいて顕著である。これらの問題は、一般に、最初の溶融および均質化プロセス中の過酸化物の早期の、および最終的には完全な活性化に起因して生じる。従来は、この問題はより反応性の低いシランブレンドを使用することにより対処されてきたが、この手法は架橋反応のグラフト効率を低下させ得る。
【0008】
別の架橋方法は、放射線の使用である。放射線架橋は、複雑な機器を必要とし、したがって実行するのに比較的コストを要する。さらに、放射線は、酸化および/または鎖切断によるポリマー分解をもたらし得るため、特別な安定化を必要とする。さらに、商業的な放射線機器が対応し得るケーブルのサイズは、ジャケット厚およびケーブルの全体的な直径の両方の点で制限されている。この制限は、典型的には、ジャケットの不均一な架橋、およびそれによりもたらされるケーブル外周またはジャケットの材料の壁内の物理的特性の変動として顕現する。
【0009】
ポリウレタンおよびフッ素化エチレンプロピレンエラストマー等の代替材料は高価であり、またこの材料は水に敏感である。さらに、材料を難燃性にするためにはハロゲンを必要とすることが多く、これによりこれらの化合物の魅力は低減される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、さらなる架橋を必要とせずに押出し可能であり、また耐熱性ならびに点火および火炎拡散に対する耐性と共に、好ましくは良好な可撓性を示す、ポリオレフィン組成物の必要性が、ワイヤおよびケーブル産業において依然として関心の対象である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態において、本発明は、組成物が耐熱性ならびに点火および火炎拡散に対する耐性を示すように、オレフィンインターポリマーと反応処理されたポリプロピレンポリマーを含む組成物に関する。さらに、組成物はまた、良好な可撓性を示すことができる。
【0012】
一実施形態において、本発明は、プロピレンポリマーをオレフィンインターポリマーとカップリングさせるための方法であって、反応処理条件下で、少なくとも、それぞれプロピレンポリマー、オレフィンインターポリマーおよび金属水和物の合わせた重量を基準とした重量パーセントで、
A.10重量%の少なくとも1種のプロピレンポリマーと、
B.10重量%の少なくとも1種のオレフィンインターポリマーと、
C.35重量%の少なくとも1種の金属水和物と、
D.カップリング量(coupling amount)のカップリング剤と
を接触させるステップを含む方法である。典型的には、カップリング剤は、(i)ビニル基を有するシラン、または(ii)ポリ(アジド)である。
【0013】
ポリプロピレンポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。オレフィンインターポリマーは、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、均一に分岐した、直鎖エチレン/α−オレフィンコポリマー、均一に分岐した、実質的に直鎖のエチレン/α−オレフィンコポリマー、直鎖中密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、およびマルチブロックオレフィンポリマーを含むが、これらに限定されない。本発明において使用される金属水和物は、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムを含むが、これらに限定されない。
【0014】
一実施形態において、本発明は、反応処理されたポリプロピレンポリマー、オレフィンインターポリマーおよび金属水和物を含む組成物を含む絶縁層を備えるケーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示における数値範囲は概数であり、したがって、別段の指定がない限り、その範囲外の値を含み得る。数値範囲は、より小さい値およびより大きい値からの、およびそれらを含むすべての値を含み、任意のより小さい値と任意のより大きい値との間に少なくとも2つの単位の開きがある場合は、1つの単位の増分での値を含む。一例として、組成特性、物理的特性またはその他の特性、例えば分子量、粘度、メルトインデックス等が、100から1000である場合、すべての個々の値、例えば100、101、102等、および部分範囲、例えば100から144、155から170、197から200等が、明示的に列挙される。1未満の値を含む範囲、または1を超える分数(例えば1.1、1.5等)を含む範囲の場合、1つの単位は、必要に応じて0.0001、0.001、0.01または0.1とみなされる。10未満の一桁の数を含む範囲(例えば1から5)の場合、1つの単位は、典型的には0.1とみなされる。これらは、具体的に意図されるものの単なる例であり、列挙される下限値と上限値との間の数値のすべての可能な組合せが、本開示において明示的に記載されるとみなされることとする。数値範囲は、本開示内において、特に、組成物中のポリプロピレンの量、オレフィンコポリマーの量、および金属水和物の量に対して示される。
【0016】
「ケーブル」、「電力ケーブル」および類似の用語は、保護ジャケットまたはシース内の少なくとも1つのワイヤまたは光ファイバを意味する。典型的には、ケーブルは、典型的には一般的な保護ジャケットまたはシース内の、互いに結束された2つ以上のワイヤまたは光ファイバである。ジャケット内の個々のワイヤまたはファイバは、裸であっても、被覆されていても、または絶縁されていてもよい。結合ケーブルは、電線および光ファイバの両方を含んでもよい。ケーブル等は、低、中、および高電圧用途用に設計され得る。
【0017】
「ポリマー」は、同じ種類か異なる種類かにかかわらず、モノマーの重合により調製されるポリマー化合物を意味する。したがって、ポリマーという総称は、通常1種類のモノマーのみから調製されるポリマーを指すホモポリマーという用語、および以下で定義されるようなインターポリマーという用語を包含する。
【0018】
「インターポリマー」、「コポリマー」および類似の用語は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合により調製されるポリマーを意味する。これらの総称は、2つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマー、および3つ以上の異なる種類のモノマーから調製されるポリマー、例えばターポリマー、テトラポリマー等の両方を指す。
【0019】
「ポリオレフィン」、「PO」および類似の用語は、単純なオレフィンから得られるポリマーを意味する。多くのポリオレフィンは熱可塑性であり、本発明の目的において、ゴム相を含み得る。代表的なポリオレフィンには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレンおよびそれらの各種インターポリマーが含まれる。
【0020】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」および類似の用語は、2種以上のポリマーの組成物を意味する。そのようなブレンドは、混和性であってもなくてもよい。そのようなブレンドは、相分離していてもしていなくてもよい。そのようなブレンドは、透過型電子分光法、光散乱、X線散乱、および当技術分野で知られるその他の任意の方法から決定されるように、1つまたは複数のドメイン構成を含有してもしなくてもよい。
【0021】
「組成物」、「製剤」および類似の用語は、2種以上の成分の混合物またはブレンドを意味する。ケーブルシースまたはその他の製造品が製造される材料のミックスまたはブレンドに関して、組成物は、ミックスのすべての成分、例えばカップリングされたプロピレンポリマーおよびオレフィンインターポリマー、金属水和物、カップリングされていないポリマーおよびカップリング剤、ならびに加工助剤、酸化防止剤等のその他の任意の添加剤等を含む。
【0022】
「分子溶融物(molecular melt)」は、例えば国際公開第2003/040229A1号に記載のようなその他のポリマー添加剤も任意選択で含有する、カップリング剤(改質剤)および酸化防止剤の室温で少なくとも部分的に非晶質であるブレンドを意味する。カップリング剤および酸化防止剤は共に、ブレンドの非晶質相に少なくとも部分的に含有される。また、好ましくは、カップリング剤および酸化防止剤は錯体を形成し、そのニトレン基形成基に関連したラマンスペクトルは、カップリング剤のみのニトレン基形成基により示されるラマンスペクトルと比較してシフトしている。
【0023】
「カップリング」および類似の用語は、カップリング剤により1つのポリマーストランドが別のポリマーストランドに結合されることを意味する。
【0024】
「カップリング剤」および類似の用語は、それぞれ、共に脂肪族および/または芳香族である、ポリマー鎖のCH、CHまたはCH基の炭素−水素結合に挿入され得るカルベンまたはニトレン基を形成することができる、少なくとも2つの反応基を含有する化学化合物を意味する。反応基は、一緒になってポリマー鎖をカップリングまたは架橋させることができる。カップリング剤は、効果的にポリマー鎖をカップリングすることができるまで、熱、音波エネルギー、放射線または化学活性化エネルギーによる活性化を必要とし得る。
【0025】
「カップリング量」および類似の用語は、本発明の文脈において、ケーブルまたはワイヤ絶縁シースの形態の組成物の耐熱性が、プロピレンポリマーおよびオレフィンインターポリマーがカップリングされていないことを除きすべての点で同様である組成物から作製された類似のケーブルまたはワイヤ絶縁シースの耐熱性よりも改善されるように、反応処理条件下および金属水和物の存在下で、プロピレンポリマーとオレフィンインターポリマーとをカップリングさせるのに十分なカップリング剤の量を意味する。
【0026】
「ニトレン基」は、構造R−Nを有する化合物を意味し、式中、Nは、共に脂肪族および/または芳香族である、ポリマー鎖のCH、CHまたはCH基の炭素−水素結合に挿入されることにより、ポリマー鎖と反応することができる窒素である。炭素−水素結合への挿入に最も好ましいニトレン窒素は、2つの孤立電子対を有する。Rは、上述の炭素−水素結合への窒素挿入に不利に干渉しない、任意の1つまたは複数の原子であってもよい。
【0027】
「カルベン基」は、構造R−C−R’を有する化合物を意味し、式中、Cは、共に脂肪族および/または芳香族である、ポリマー鎖のCH、CHまたはCH基の炭素−水素結合に挿入されることにより、ポリマー鎖と反応することができる炭素である。炭素−水素結合への挿入に最も好ましい炭素は、1つの孤立電子対を有する。RおよびR’は、独立して、上述の炭素−水素結合への炭素挿入に不利に干渉しない、任意の1つまたは複数の原子である。
【0028】
「酸化防止剤」は、ポリマーの処理中に生じ得る酸化を最小限化するために使用され得る化学化合物の種類またはクラスを意味する。この用語はまた、酸化防止剤の化学誘導体を含む。この用語は、さらに、カップリング剤と適切に合わせられると、カップリング剤と相互作用して、カップリング剤単独と比較して変化したラマンスペクトルを示す錯体を形成する、酸化防止剤の説明において後述されるような化学化合物を含む。
【0029】
「反応処理」は、ポリマー成分がインサイチュで互いに反応するようにポリマー成分を混合することによる、ポリマーブレンドの相溶化(compatibilization)または化学的カップリングのための方法を意味する。組成物の成分は、溶融相境界を越えて反応が生じ得る十分な反応性を有する。
【0030】
「反応処理条件」は、ポリマーブレンドが、(1)形態学的質感の所望の微細度を達成するのに十分な混合、および(2)混合/混錬プロセス中にポリマー分子の少なくともいくつかを互いに反応またはカップリングさせることによる共有結合の形成に供されることを意味する。反応は、押出機またはミキサー内での処理中、適切な時間内で完了するように十分迅速に生じる。典型的には、処理条件は、100℃から280℃、より典型的には150℃から250℃、さらにより典型的には180℃から250℃の温度を含む。圧力は、典型的には、少なくとも部分的に、ポリマーがブレンドされる機器の機能であるが、典型的には、圧力は、大気圧から若干の陽圧までの範囲である。反応処理条件は、典型的には、アジドの少なくとも50パーセント、より典型的には少なくとも70パーセント、さらにより典型的には少なくとも80パーセントが反応するまで、または、シランカップリング剤の場合は、過酸化物の少なくとも50パーセント、より典型的には少なくとも70パーセント、さらにより典型的には少なくとも80パーセントが消費されるまで継続する。
【0031】
ポリオレフィン合成:
具体的にはプロピレンポリマーおよびオレフィンインターポリマーを含む、本発明の実践に使用されるポリオレフィンは、従来のポリオレフィン重合技術、例えば、当然ながら対象となるポリオレフィン用にそれぞれ適合された、チーグラーナッタ、メタロセンまたは拘束幾何触媒等を使用して生成することができる。メタロセンおよび拘束幾何触媒(CGC)は、活性剤、例えばアルモキサンと組み合わせた、モノ−もしくはビス−シクロペンタジエニル、インデニル、またはフルオレニル遷移金属(好ましくは第4族)錯体を含む。米国特許第5,064,802号、国際公開第93/19104号および国際公開第95/00526号は、拘束幾何金属錯体およびその調製のための方法を開示している。様々に置換されたインデニル含有金属錯体が、国際公開第95/14024号および国際公開第98/49212号に教示されている。
【0032】
一般に、重合は、チーグラー−ナッタまたはカミンスキー−シン型重合反応に対して当技術分野において周知の条件下、すなわち、0〜250℃、好ましくは30〜200℃の温度、および大気圧から10,000気圧(1013メガパスカル(MPa))の圧力で達成することができる。所望により、懸濁液、溶液、スラリー、気相、固体状態粉末重合またはその他のプロセス条件を使用してもよい。触媒は、担持されていても担持されていなくてもよく、また担体の組成は広く変動し得る。シリカ、アルミナまたはポリマー(特にポリ(テトラフルオロエチレン)もしくはポリオレフィン)が代表的な担体であり、望ましくは、気相重合プロセスにおいて触媒が使用される場合に担体が使用される。好ましくは、担体は、1:100,000から1:10、より好ましくは1:50,000から1:20、最も好ましくは1:10,000から1:30の範囲内の担体に対する触媒(金属ベース)の重量比を提供するのに十分な量で使用される。ほとんどの重合反応において、使用される重合可能な化合物に対する触媒のモル比は、10−12:1から10−1:1、より好ましくは10−9:1から10−5:1である。
【0033】
不活性液体は、重合に好適な溶媒として機能する。例には、イソブタン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、およびこれらの混合物等の直鎖および分岐鎖炭化水素;シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘプタン、およびこれらの材料の2種以上の混合物等の環式および脂環式炭化水素;過フッ素化C4〜10アルカン等の過フッ素化炭化水素;ならびに、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼン等の芳香族およびアルキル置換芳香族化合物が含まれる。
【0034】
プロピレンポリマー:
本発明の実践において使用されるプロピレンポリマー(組成物中の成分A)は、オレフィンインターポリマー(組成物中の成分B)ではない。プロピレンポリマーは、プロピレンホモポリマー、またはプロピレンと1種または複数の他のオレフィンとのコポリマー、または2種以上のホモポリマーもしくは2種以上のコポリマーのブレンド、または1種もしくは複数のホモポリマーと1種もしくは複数のコポリマーとのブレンドであってもよい。本発明の組成物中に使用されるプロピレンポリマーの形態は広く変動し得、例えば、実質的にアイソタクチックなプロピレンホモポリマー、ランダムプロピレンコポリマー、およびグラフトまたはブロックプロピレンコポリマーが含まれる。
【0035】
プロピレンコポリマーは、典型的には、90モルパーセント以上のプロピレン由来単位を含む。プロピレンコポリマー中の単位の残りは、少なくとも1種のα−オレフィンの単位から得られる。
【0036】
プロピレンコポリマーのα−オレフィン成分は、好ましくは、エチレン(本発明の目的においてα−オレフィンとみなされる)またはC4〜20直鎖、分岐鎖もしくは環式α−オレフィンである。C4〜20α−オレフィンの例には、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセンおよび1−オクタデセンが含まれる。α−オレフィンはまた、シクロヘキサンまたはシクロペンタン等の環式構造を含有して3−シクロヘキシル−1−プロペン(アリルシクロヘキサン)およびビニルシクロヘキサン等のα−オレフィンとなってもよい。用語の古典的な意味でのα−オレフィンではないが、本発明の目的において、ある特定の環式オレフィン、例えばノルボルネンおよび関連オレフィン、具体的には5−エチリデン−2−ノルボルネン等は、α−オレフィンであり、上述のα−オレフィンの一部またはすべてと置き換えて使用することができる。同様に、スチレンおよびその関連オレフィン(例えば、α−メチルスチレン等)は、本発明の目的において、α−オレフィンである。例示的なポリプロピレンコポリマーには、プロピレン/エチレン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/1−ヘキセン、プロピレン/1−オクテン等が含まれるが、これらに限定されない。例示的なターポリマーには、エチレン/プロピレン/1−オクテン、エチレン/プロピレン/1−ブテン、およびエチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)が含まれる。コポリマーは、ランダムまたはブロックコポリマーであってもよい。
【0037】
以下は、本発明の組成物中に使用可能な、例示的であるが限定されないプロピレンポリマーである:DOWポリプロピレンT702−12Nを含むがこれらに限定されないプロピレン衝撃コポリマー(propylene impact copolymer);DOWポリプロピレンH502−25RZを含むがこれらに限定されないプロピレンホモポリマー;およびDOWポリプロピレンR751−12Nを含むがこれらに限定されないプロピレンランダムコポリマー。上述のDowプロピレンポリマーは、典型的には、ASTM D792を使用して測定される、0.90g/cmの密度を有する。
【0038】
さらに、0.5dg/分(230℃/2.16kg)のメルトフローインデックスおよび164℃の融点を有する分岐衝撃プロピレンコポリマーであるINSPIRE(商標)D114を使用することができる(これもThe Dow Chemical Companyから入手可能)。
【0039】
さらに、0.90g/ccの密度および2g/10分のMFRを有する精製プロピレンコポリマー樹脂であるPROFAX(商標)SR−256M、0.90g/ccの密度および1.5g/10分のMFRを有する衝撃プロピレンコポリマー樹脂であるPROFAX(商標)8623、ならびにポリプロピレン(ホモポリマーまたはコポリマー)と1種または複数のプロピレン−エチレンまたはエチレン−プロピレンコポリマーとの反応器内ブレンドCATALLOY(商標)(すべてBasell社、Elkton、MDから入手可能)も使用可能である。他のプロピレンポリマーには、Solvay社製KS4005プロピレンコポリマー、およびSolvay社製KS300プロピレンターポリマーが含まれる。
【0040】
オレフィンインターポリマー:
本発明の実践において使用されるオレフィンインターポリマー(組成物の成分B)は、上述のプロピレンポリマー(組成物の成分A)を含まない。オレフィンインターポリマーには、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンフレキソマー、およびポリオレフィンプラストマーが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、オレフィンインターポリマーは、オレフィンインターポリマーの重量を基準として、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも80重量%のエチレン由来単位を含むエチレンインターポリマーである。
【0041】
本発明の実践において有用なオレフィンインターポリマーの例には、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、均一に分岐した、直鎖エチレン/α−オレフィンコポリマー(例えば、三井石油化学工業株式会社製TAFMER(登録商標)およびDEXPlastomers社製EXACT(登録商標))、ならびに均一に分岐した、実質的に直鎖のエチレン/α−オレフィンポリマー(例えば、The Dow Chemical Companyから入手可能なAFFINITY(登録商標)ポリオレフィンプラストマーおよびENGAGE(登録商標)ポリオレフィンエラストマー)が含まれる。実質的に直鎖のエチレンコポリマーは、米国特許第5,272,236号、米国特許第5,278,272号および米国特許第5,986,028号においてより十分に記載されている。
【0042】
本発明において有用な他のオレフィンインターポリマーには、直鎖中密度ポリエチレン(LMDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、および超低密度ポリエチレン(ULDPE)を含むがこれらに限定されない、不均一に分岐したエチレン系インターポリマーが含まれる。市販のポリマーには、DOWLEX(商標)ポリマー、ATTANE(商標)ポリマーおよびFLEXOMER(商標)ポリマー(すべてThe Dow Chemical Company製)、ならびにESCORENE(商標)およびEXCEED(商標)ポリマー(共にExxon Mobil Chemical製)が含まれる。
【0043】
さらに別のオレフィンインターポリマーには、マルチブロックまたはセグメントコポリマーが含まれる。これらは、好ましくは直鎖状に結合した2種以上の化学的に異なる領域またはセグメント(「ブロック」と呼ばれる)を含むポリマー、すなわち、懸垂またはグラフトによる結合ではなく、重合化エチレン官能基において端部同士が結合した化学的に区別される単位を含むポリマーである。ある特定の実施形態において、ブロックは、それに組み込まれるコモノマーの量および種類、密度、結晶化度、そのような組成物のポリマーに帰属する微結晶サイズ、立体規則性の種類または程度(アイソタクチックもしくはシンジオタクチック)、位置規則性または位置不規則性、長鎖分岐または超分岐を含む分岐の量、均質性、あるいはその他の任意の化学的または物理的特性が異なる。マルチブロックコポリマーは、コポリマーの独特の作製プロセスに起因する多分散性指数(PDIもしくはM/M)の独特の分布、ブロック長分布、および/またはブロック数分布を特徴とする。より具体的には、連続プロセスにおいて生成される場合、ポリマーの実施形態は、約1.7から約8;別の実施形態においては約1.7から約3.5;別の実施形態においては約1.7から約2.5;さらに別の実施形態においては約1.8から約2.5または約1.8から約2.1の範囲のPDIを有し得る。バッチまたは半バッチプロセスにおいて生成される場合、ポリマーの実施形態は、約1.0から約2.9;別の実施形態においては約1.3から約2.5;別の実施形態においては約1.4から約2.0;さらに別の実施形態においては約1.4から約1.8の範囲のPDIを有し得る。
【0044】
エチレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマーは、重合化形態のエチレンおよび1種または複数の共重合可能なα−オレフィンコモノマーを含み、化学的および物理的特性が異なる2種以上の重合化モノマー単位の複数の(すなわち2つ以上の)ブロックまたはセグメント(ブロックインターポリマー)、好ましくはマルチブロックインターポリマーにより特徴付けられる。いくつかの実施形態において、マルチブロックインターポリマーは、以下の式で表すことができる。
(AB)
【0045】
式中、nは、少なくとも1、好ましくは1を超える整数、例えば2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、またはそれ以上であり、「A」は、硬質ブロックまたはセグメントを表し、「B」は、軟質ブロックまたはセグメントを表す。好ましくは、AおよびBは、分岐状または星状ではなく直鎖状に結合している。「硬質」セグメントは、いくつかの実施形態においては95重量パーセントを超える量で、また別の実施形態においては98重量パーセントを超える量でエチレンが存在する重合化単位のブロックを指す。換言すれば、硬質セグメントにおけるコモノマー含量は、いくつかの実施形態においては硬質セグメントの総重量の5重量パーセント未満であり、別の実施形態においては2重量パーセント未満である。いくつかの実施形態において、硬質セグメントは、すべてがエチレンであるもの、または実質的にすべてがエチレンであるものを含む。一方、「軟質」セグメントは、コモノマー含量が、いくつかの実施形態においては軟質セグメントの総重量の5重量パーセントを超える、他の様々な実施形態においては8重量パーセントを超える、10重量パーセントを超える、または15重量パーセントを超える重合化単位のブロックを指す。いくつかの実施形態においては、軟質セグメントにおけるコモノマー含量は、20重量パーセントを超えてもよく、他の様々な実施形態においては、25重量パーセントを超えてもよく、30重量パーセントを超えてもよく、35重量パーセントを超えてもよく、40重量パーセントを超えてもよく、45重量パーセントを超えてもよく、50重量パーセントを超えてもよく、または60重量パーセントを超えてもよい。
【0046】
本発明の実践に有用なエチレンマルチブロックコポリマー、ならびにその調製および使用は、国際公開第2005/090427号、米国特許出願公開第2006/0199931号、米国特許出願公開第2006/0199930号、米国特許出願公開第2006/0199914号、米国特許出願公開第2006/0199912号、米国特許出願公開第2006/0199911号、米国特許出願公開第2006/0199910号、米国特許出願公開第2006/0199908号、米国特許第7,355,089号、米国特許出願公開第2006/0199906号、米国特許出願公開第2006/0199905号、米国特許第7,524,911号、米国特許出願公開第2006/0199896号、米国特許出願公開第2006/0199887号、米国特許第7,514,517号、米国特許出願公開第2006/0199872号、米国特許出願公開第2006/0199744号、米国特許出願公開第2006/0199030号、米国特許第7,504,347号および米国特許出願公開第2006/0199983号により十分に記載されている。代表的なオレフィンマルチブロックインターポリマーには、The Dow Chemical Companyが製造および販売しているオレフィンブロックコポリマーが含まれる。
【0047】
本発明において有用なエチレンインターポリマーには、インターポリマーの重量を基準として、典型的には少なくとも5重量%、より典型的には少なくとも15重量%、さらにより典型的には少なくとも20重量%のα−オレフィン含量を有するエチレン/α−オレフィンインターポリマーが含まれる。これらのインターポリマーは、典型的には、インターポリマーの重量を基準として、90重量%未満、より典型的には75重量%未満、さらにより典型的には50重量%未満のα−オレフィン含量を有する。α−オレフィン含量は、Randall(Rev.Macromol.Chem.Phys.、C29(2および3))に記載の手順を使用した、13C核磁気共鳴(NMR)分光法により測定される。
【0048】
α−オレフィンは、好ましくは、C3〜20直鎖、分岐鎖または環式α−オレフィンである。C3〜20α−オレフィンの例には、プロペン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセンおよび1−オクタデセンが含まれる。α−オレフィンはまた、シクロヘキサンまたはシクロペンタン等の環式構造を含有して3−シクロヘキシル−1−プロペン(アリルシクロヘキサン)およびビニルシクロヘキサン等のα−オレフィンとなってもよい。用語の古典的な意味でのα−オレフィンではないが、本発明の目的において、ある特定の環式オレフィン、例えばノルボルネンおよび関連オレフィン、具体的には5−エチリデン−2−ノルボルネン等は、α−オレフィンであり、上述のα−オレフィンの一部またはすべてと置き換えて使用することができる。同様に、スチレンおよびその関連オレフィン(例えば、α−メチルスチレン等)は、本発明の目的において、α−オレフィンである。例示的ポリオレフィンコポリマーには、エチレン/プロピレン、エチレン/ブテン、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/1−オクテン、エチレン/スチレン等が含まれる。例示的なターポリマーには、エチレン/プロピレン/1−オクテン、エチレン/プロピレン/ブテン、エチレン/ブテン/1−オクテン、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)およびエチレン/ブテン/スチレンが含まれる。コポリマーは、ランダムまたはブロックコポリマーであってもよい。
【0049】
本発明の実践に有用な追加的オレフィンインターポリマーには、The Dow Chemical Companyから入手可能なVERSIFY(登録商標)プロピレン系ポリマー、およびExxonMobil Chemical Companyから入手可能なVISTAMAXX(登録商標)プロピレンポリマーが含まれ、少なくともこれらのVERSIFY(登録商標)およびVISTAMAXX(登録商標)プロピレンポリマーは、85mol%未満のプロピレン由来単位含量を有する。その他の様々なポリプロピレンポリマーに関する考察は、Modern Plastics Encyclopedia/89、1988年10月中旬発行、第65巻、第11号、6〜92頁に含まれている。
【0050】
本発明の実践においてオレフィンインターポリマーのブレンドが使用される場合、ブレンドは、任意の反応器内または反応器後のプロセスにより作製され得る。反応器後のブレンドプロセスよりも反応器内のブレンドプロセスの方が好ましく、直列に接続された複数の反応器を使用したプロセスが、好ましい反応器内のブレンドプロセスである。これらの反応器は、同じ触媒が投入されるが異なる条件下、例えば異なる反応物質濃度、温度、圧力等で操作され得るか、または同じ条件下で操作されるが異なる触媒が投入され得るか、または異なる条件下で操作されると共に異なる触媒が投入され得る。
【0051】
金属水和物:
本発明の実践において有用な金属水和物には、例えば、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウム等のヒドロキシル基または結晶水を有する化合物が含まれるが、特にこれらに限定されない。これらの金属水和物は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
市販の水酸化マグネシウムの例には、Matinswerk社製MAGNIFIN(登録商標)が含まれる。その他の例には、KISUMA5、KISUMA5A、KISUMA5B、KISUMA5J、KISUMA5LHおよびKISUMA5PH(すべて協和化学工業株式会社の商品名であり、同社により製造されている)が含まれる。市販の三水酸化アルミニウムの例には、Matinswerk社製MARTINAL(登録商標)およびAlamatis社製HYDRALが含まれる。
【0053】
金属水和物は、組成物へのブレンドに先立って、表面処理剤、典型的にはシラン表面処理剤による表面処理に供してもよく、または、表面処理されていない金属水和物を表面処理剤と共に組成物にブレンドしてインサイチュでの表面処理を行ってもよい。表面処理剤は、好適には、金属水和物の所望の表面処理を提供するのに十分な量で添加される。典型的には、添加される表面処理剤の好ましい量は、金属水和物の重量を基準として0.1重量%から2.0重量%である。特に限定されることなく、当技術分野において知られた表面処理剤のいずれかを使用することができる。しかしながら、アミノ基、メタクリル基、ビニル基、エポキシ基およびメルカプト基等の有機官能基を有するシラン表面処理剤が好ましく、難燃性および引張特性の点では、ビニル基および/またはエポキシ基を有するシラン表面処理剤がさらにより好ましい。
【0054】
カップリング剤:
上述のように、本発明の文脈において、カップリング剤は、適切な反応条件下で共有結合による連結を介して2つ以上のポリマー鎖を互いに結合し得る、多官能性化合物、すなわち2つ以上の官能基を有する化合物である。ポリ(アジド)カップリング剤は、アルキルおよびアリールアジド、アシルアジド、アジドホルメート、ホスホリルアジド、ホスフィン酸アジド、シリルアジドおよびポリ(スルホニルアジド)を含む。ポリ(スルホニルアジド)は、ポリオレフィンと反応する少なくとも2つの反応基(スルホニルアジド基(−SO))を有する任意の化合物である。好ましくは、ポリ(スルホニルアジド)は、構造X−R−Xを有し、式中、Xは、−SOであり、Rは、好ましくは、ポリオレフィンとスルホニルアジドとの間の容易な反応を可能とするのに十分スルホニルアジド基を分離する、十分な炭素、酸素もしくはケイ素原子、好ましくは炭素原子を有する非置換または不活性置換ヒドロカルビル、ヒドロカルビルエーテルまたはケイ素含有基を表す。R中に不活性置換し得る原子または基の例には、フッ素、脂肪族もしくは芳香族エーテル、シロキサン、および、3つ以上のポリオレフィン鎖が結合するスルホニルアジド基が含まれるが、これらに限定されない。Rは、好適には、アリール、アルキル、アルキルアリール、アリールアルキルシラン、シロキサンまたは複素環基、および上述のように不活性でスルホニルアジド基を分離するその他の基である。より好ましくは、Rは、スルホニル基間の少なくとも1つのアリール基、最も好ましくは少なくとも2つのアリール基を含む(例えばRが4,4’ジフェニルエーテルまたは4,4’−ビフェニルの場合)。Rが1つのアリール基である場合、ナフチレンビス(スルホニルアジド)の場合のように、基が2つ以上の環を有することが好ましい。ポリ(スルホニル)アジドには、1,5−ペンタンビス(スルホニルアジド)、1,8−オクタンビス(スルホニルアジド)、1,10−デカンビス(スルホニルアジド)、1,10−オクタデカンビス(スルホニルアジド)、1−オクチル−2,4,6−ベンゼントリス(スルホニルアジド)、4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホニルアジド)、1,6−ビス(4’スルホンアジドフェニル)ヘキサン、2,7−ナフタレンビス(スルホニルアジド)、および1分子当たり平均1個から8個の塩素原子と約2個から5個のスルホニルアジド基とを含有する塩素化脂肪族炭化水素の混合スルホニルアジド、ならびにそのような化合物の2種以上の混合物等の化合物が含まれるが、これらに限定されない。好ましいポリ(スルホニルアジド)には、オキシ−ビス(4−スルホニルアジドベンゼン)、2,7−ナフタレンビス(スルホニルアジド)、4,4’ビス(スルホニルアジド)ビフェニル、4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホニルアジド)およびビス(4−スルホニルアジドフェニル)メタン、ならびにそのような化合物の2種以上の混合物が含まれる。
【0055】
シランカップリング剤の例には、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン(VTES)、ビニルトリメトキシシラン(VMTS)、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)−トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチル−ジエトキシシラン等が含まれる。VTESおよびVTMSが好ましいシランカップリング剤である。
【0056】
カップリング剤は、カップリング量で、例えば、組成物の合わせた重量、すなわちポリプロピレン、オレフィンインターポリマーおよび金属水和物の合わせた重量を基準として、典型的には0.1重量%から6重量%の量、より典型的には0.1重量%から5重量%の量、さらにより典型的には0.2重量%から3重量%の量で使用される。
【0057】
添加剤
組成物は、酸化防止剤、硬化剤、架橋助剤(cross linking co-agent)、促進剤および抑制剤、加工助剤、充填剤、紫外線吸収剤または安定剤、帯電防止剤、核生成剤、スリップ剤、可塑剤、潤滑剤、粘度調整剤、粘着付与剤(tackifier)、ブロッキング防止剤、界面活性剤、伸展油、酸スカベンジャー、ならびに金属不活性剤を含むがこれらに限定されない添加剤を含有してもよい。添加剤は、組成物の重量を基準として、0.01重量%以下から10重量%以上の範囲の量で使用することができる。
【0058】
酸化防止剤の例は、ヒンダードフェノール、例えばテトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ−シンナメート)]メタン;ビス[(β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−メチルカルボキシエチル)]スルフィド、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、およびチオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート;ホスファイトおよびホスホナイト、例えばトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトおよびジ−tert−ブチルフェニル−ホスホナイト;チオ化合物、例えばジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、およびジステアリルチオジプロピオネート;各種シロキサン;重合化2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、n,n’−ビス(1,4−ジメチルペンチル−p−フェニレンジアミン)、アルキル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、混合ジ−アリール−p−フェニレンジアミン、ならびにその他のヒンダードアミン分解防止剤(antidegradant)または安定剤であるが、これらに限定されない。酸化防止剤は、組成物の重量を基準として、0.1重量%から5重量%の量で使用することができる。
【0059】
硬化剤の例は、過酸化ジクミル;ビス(α−t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン;イソプロピルクミルt−ブチルペルオキシド;t−ブチルクミルペルオキシド;ジ−t−ブチルペルオキシド;2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)2,5−ジメチルヘキサン;2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)2,5−ジメチルヘキシン−3;1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;イソプロピルクミルクミルペルオキシド;ジ(イソプロピルクミル)ペルオキシド;またはこれらの混合物である。過酸化物硬化剤は、組成物の重量を基準として、0.1重量%から5重量%の量で使用することができる。トリアリルイソシアヌレート;エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート;α−メチルスチレンダイマー;ならびに米国特許第5,346,961号および米国特許第4,018,852号に記載のその他の助剤等、他の様々な既知の硬化助剤、促進剤および抑制剤を使用することができる。
【0060】
加工助剤の例には、カルボン酸の金属塩、例えばステアリン酸亜鉛またはステアリン酸カルシウム;脂肪酸、例えばステアリン酸、オレイン酸またはエルカ酸;脂肪族アミド、例えばステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドまたはN,N’−エチレンビス−ステアリン酸アミド;ポリエチレンワックス;酸化ポリエチレンワックス;エチレンオキシドのポリマー;エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマー;植物ワックス;石油ワックス;非イオン性界面活性剤;ならびにポリシロキサンが含まれるが、これらに限定されない。加工助剤は、組成物の重量を基準として、0.05重量%から5重量%の量で使用することができる。
【0061】
充填剤の例には、算術平均粒径が10ナノメートルを超える、粘土、沈降シリカおよびシリケート、フュームドシリカ炭酸カルシウム、粉末鉱物、ならびにカーボンブラックが含まれるが、これらに限定されない。充填剤は、組成物の重量を基準として、0.01重量%未満から50重量%超の範囲の量で使用することができる。
【0062】
組成物:
組成物成分の反応処理は、固体高温ポリマーの好ましい形態をもたらす。反応性カップリングされたポリプロピレン組成物は、耐熱性、点火および火炎拡散に対する耐性、ならびに好ましくは可撓性を示す。反応処理は、ポリプロピレンおよびオレフィンインターポリマーのカップリングを含むがこれに限定されない、好ましい形態をもたらす。
【0063】
プロピレンホモポリマーまたはコポリマーは、押し出された際、組成物がその後の架橋を行わずに耐熱性ならびに点火および火炎拡散に対する耐性を示すような、任意の量で使用することができる。プロピレンホモポリマーまたはコポリマーは、組成物の重量を基準として、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも20重量%を占めることができる。組成物中のプロピレンホモポリマーまたはコポリマーの最大量に対する唯一の制限は、経済性、実用性(例えば収益逓減)および組成物の他の成分の必要最小量により課される制限であるが、典型的には、一般的な最大値は、組成物の重量を基準として、50重量%未満、好ましくは45重量%未満、より好ましくは40重量%未満を含む。
【0064】
オレフィンインターポリマーは、押し出された際、組成物が架橋を行わずに耐熱性ならびに点火および火炎拡散に対する耐性を示すような、任意の量で使用することができる。オレフィンインターポリマーは、組成物の重量を基準として、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも20重量%を占めることができる。組成物中のオレフィンインターポリマーの最大量に対する唯一の制限は、経済性、実用性および組成物の他の成分の必要最小量により課される制限であるが、典型的には、一般的な最大値は、組成物の重量を基準として、50重量%未満、好ましくは45重量%未満、より好ましくは40重量%未満を含む。
【0065】
金属水和物は、押し出された際、組成物がその後の架橋を行わずに耐熱性、可撓性、ならびに点火および火炎拡散に対する耐性を示すような、任意の量で使用することができる。金属水和物は、組成物の重量を基準として、少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも50重量%を占めることができる。組成物中の金属水和物の最大量に対する唯一の制限は、経済性、実用性および組成物の他の成分の必要最小量により課される制限であるが、典型的には、一般的な最大値は、組成物の75重量%未満、好ましくは70重量%未満、より好ましくは65重量%未満を含む。
【0066】
組成物はまた、ビス−スルホニルアジドと、IRGANOX(登録商標)1010またはIRGANOX(登録商標)MD1024を含むがこれらに限定されない酸化防止剤とのカップリング用パッケージを含み得る。このパッケージは、組成物の少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも0.2重量%を占めることができる。組成物中のパッケージの最大量に対する唯一の制限は、経済性、実用性および組成物の他の成分の必要最小量により課される制限であるが、典型的には、一般的な最大値は、組成物の2重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満を含む。パッケージは、典型的には、組成物が押出機またはその他の混合デバイス内で分子溶融物の形態で存在する時に組成物に添加される。
【0067】
ケーブル絶縁材料の配合は、当業者に知られた標準的手段により行うことができる。配合機器の例は、内部バッチミキサー、例えばBanbury(商標)またはBolling(商標)内部ミキサーである。あるいは、Farrel(商標)連続ミキサー、Werner and Pfleiderer(商標)二軸ミキサー、またはBuss(商標)ニーディング連続押出機等、連続単軸または二軸ミキサーを使用することができる。使用するミキサーの種類、およびミキサーの運転条件は、粘度、体積抵抗率および押出し表面の平滑性等、組成物の特性に影響する。
【0068】
それ自体が本発明の組成物を含む絶縁層を備えるケーブルは、様々な種類の押出機、例えば単軸または二軸型押出機を用いて調製することができる。米国特許第4,857,600号は、従来の押出機の説明を記載している。また、米国特許第5,575,965号は、押出機および共押出プロセスの説明を記載している。典型的には、押出機は、その上流側端部にホッパを、また下流側端部にダイを有する。ホッパは、スクリューを内蔵するバレル内に供給を行う。下流側端部において、スクリューの端部とダイとの間に、スクリーンパックおよびブレーカープレートがある。押出機のスクリュー部分は、3つのセクション、すなわち供給セクション、圧縮セクション、および計測セクションを備える。スクリュー部分はまた、2つのゾーン、すなわち背面加熱ゾーンおよび正面加熱ゾーンを備える。セクションおよびゾーンは、上流側から下流側へと続く。あるいは、押出機は、上流側から下流側へと続いている軸に沿って3つ以上の加熱ゾーンを備えてもよい。押出機が2つ以上のバレルを有する場合、バレルは、典型的には直列に接続される。典型的には、各バレルの直径に対する長さの比は、15:1から30:1の範囲内である。ポリマー絶縁材が押出し後に架橋されるワイヤコーティング作業において、ケーブルは、多くの場合、速やかに押出ダイの下流側の加熱加硫ゾーン内に通される。典型的には、加熱硬化ゾーンは、200℃から350℃の範囲内、好ましくは約170℃から約250℃の範囲内の温度に維持される。加熱ゾーンは、加圧ストリームにより、または誘導加熱された加圧窒素ガスにより加熱することができる。しかしながら、押出し後の架橋は、本発明の実践により排除することができる。
【0069】
以下の実施例は、本発明の様々な実施形態を例示している。別段の指定がない限り、すべての部およびパーセンテージは、重量換算である。
【0070】
特定の実施形態
分析した6つの試料の組成を表1に報告する。3つの試料(比較例(CEX)ならびに実施例1および3)は、ポリオレフィンエラストマー(0.870g/cmの密度(ASTM D792)を有し、The Dow Chemical Companyから入手可能なAFFINITY(商標)EG8200)、およびAlbemarle−Martinswerk社から入手可能なMAGNIFIN(登録商標)H5 Mg(OH)で反応処理された、ポリプロピレンホモポリマー(H502−25R)を含む。2つの試料(実施例2および実施例4)は、超低密度ポリエチレン(The Dow Chemical Companyから入手可能なATTANE SC4107)、およびMAGNIFIN(登録商標)H5 Mg(OH)で反応処理された、ポリプロピレンホモポリマー(H502−25R)を含む。実施例5は、両方ともThe Dow Chemical Companyから入手可能である、プロピレン衝撃コポリマー(C705−44NAHP)およびオレフィンインターポリマー(VERSIFY(商標)3300、エチレン12モルパーセントおよびプロピレン88モルパーセント、密度0.866g/cmおよびMFR9.8g/10分(230℃/21.6kg))を含む。
【0071】
上述の成分に加え、試料はまた、E. I. du Pont de Nemours and Companyから入手可能な無水マレイン酸グラフトポリエチレン(密度0.87g/cc)であるFUSABOND(登録商標)494を含む。試料はまた、Ciba Specialty Chemicals社から入手可能な金属不活性剤および酸化防止剤であるIRGANOX MD1024、フェノール系酸化防止剤と組み合わせて熱安定剤として使用されるIRGANOX PS 802DSDP(これもCiba Specialty Chemicals社から入手可能)、ならびにヒンダードアミン光安定剤であるCHIMASSORB944(これもCiba Specialty Chemical社から入手可能)を含む。実施例3、4および5はまた、酸化防止剤であるIRGANOX1010を含む。実施例1〜2および5ならびに比較例はまた、ポリプロピレンホモポリマー中に分散した50%の超高分子量シロキサンポリマーを含有する製剤であるDow−Corning MB50−001を含む。実施例1〜2および5は、さらに、ビス−スルホニルアジド(BSA)およびIRGANOX1010の添加剤パッケージを含む。実施例3および4は、さらに、過酸化物、ビニルトリアルコキシシランおよびシラン脱水縮合触媒の混合物であるXL PEarl Silaneを含む。過酸化物は、配合中に分解し、ビニルシランをポリマー鎖にグラフトさせる。配合中に金属水和物から放出される少量の水分は、脱水縮合触媒と共に、シラングラフトポリマー鎖のカップリングをもたらす。
【0072】
【表1】

【0073】
曲げ弾性率、メルトフローインデックス、熱機械分析(TMA)、熱間硬化またはクリープ、および引張特性の試験用の複数の試料を、以下のように調製する:50ミル(1.27mm)の型での160℃で10分間の(混合ボウルからの材料の)成形、続いて90℃の水浴中での6時間の硬化により、1つのプラーク(plaque)を調製する。複数のドッグボーン(dog-bone)を切り出し、試験して平均試験値を得る。
【0074】
ISO178に従い曲げ特性を試験し、表2に報告する。曲げ試験は、3点荷重条件下で梁を湾曲させるのに必要な力を測定する。曲げ弾性率は、屈曲時の材料の剛性の指標として使用する。
【0075】
【表2】

【0076】
ISO1133に従い、230℃でメルトフローインデックスを試験し、表3に報告する。3つの指定重量、2.16kg、5kgおよび21.6kを表3に示す。
【0077】
【表3】

【0078】
熱機械分析(TMA)は、試料が一定速度で加熱され、貫通が開始する温度(軟化温度)がTMA温度として報告される、プローブ貫通試験である。6つの試料に対するTMA温度を表4に報告する。
【0079】
【表4】

【0080】
6つの試料のそれぞれに対し150℃で測定した熱間硬化を表5に報告する。
【0081】
【表5】

【0082】
6つの試料のそれぞれに対し200℃で測定した熱間硬化を表6に報告する。
【0083】
【表6】

【0084】
6つの被検試料に対する引張特性を表7に報告する。
【0085】
【表7】

【0086】
プロピレンホモポリマーがポリオレフィンエラストマー(AFFINITY(登録商標))、または超低密度ポリエチレン(ATTANE(登録商標))、またはさらに低エチレン含量オレフィンインターポリマー(VERSIFY(商標))で反応処理された上述の組成物は、押し出された際、その後の架橋を行わずに、(1)耐熱性、(2)点火および火炎拡散に対する耐性、ならびに(3)可撓性を示す。これらの特性により、これらの組成物は、125℃定格自動車用ワイヤ等のケーブル用途に好適となる。
【0087】
上記明細書により非常に詳細に本発明を説明したが、この詳細は、例示を目的とするものであり、以下の添付の特許請求の範囲に対する制限として解釈されないものとする。引用されたすべての報告、参考文献、米国特許、許可された米国特許出願および米国特許出願公開は、参照することにより本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンポリマーをオレフィンインターポリマーとカップリングさせるための方法であって、反応処理条件下で、少なくとも、
A.10重量%の少なくとも1種のプロピレンポリマーと、
B.10重量%の少なくとも1種のオレフィンインターポリマーと、
C.35重量%の少なくとも1種の金属水和物と、
D.カップリング量のカップリング剤と、
E.任意選択で、1種または複数の添加剤と
を接触させるステップを含む方法。
【請求項2】
前記カップリング剤が、ポリ(スルホニル)アジドおよびビニル基を有するシランのうちの少なくとも1種である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カップリング剤が、プロピレンポリマー、オレフィンインターポリマーおよび金属水和物の合わせた重量を基準として、0.1重量パーセントから6重量パーセントの量で存在する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応処理条件が、150℃から280℃の温度を含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記オレフィンインターポリマーが、極低密度ポリエチレン;均一に分岐した、直鎖エチレン/α−オレフィンコポリマー;均一に分岐した、実質的に直鎖のエチレン/α−オレフィンポリマー;直鎖中密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンおよびオレフィンマルチブロックコポリマーのうちの少なくとも1種である、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記オレフィンインターポリマーが、少なくとも80重量%のエチレン由来単位含量および少なくとも0.870g/cmの密度を有する、均一に分岐した、実質的に直鎖のエチレン/α−オレフィンポリマーである、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記金属水和物が、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムのうちの少なくとも1種である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
酸化防止剤が、前記プロピレンポリマー、オレフィンインターポリマーおよび金属水和物の合わせた重量を基準として、0.01重量%から10重量%の量で存在する、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の方法により作製される組成物。
【請求項10】
ワイヤまたはケーブル絶縁シースの形態である、請求項9に記載の組成物。

【公表番号】特表2011−523968(P2011−523968A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512525(P2011−512525)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/044805
【国際公開番号】WO2009/148842
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】