説明

ポリプロピレン樹脂組成物およびその延伸フィルム

【課題】加工適性に優れ、フィッシュアイの少ない延伸フィルムを与えるポリプロピレン樹脂組成物、および得られたポリプロピレン樹脂組成物からなる延伸フィルムを提供すること。
【解決手段】第一段階でプロピレンを主成分とするモノマーを重合して極限粘度が3.0dl/g以上5.0dl/g未満の結晶性プロピレン重合体成分(A)を製造し、第一段階の後の段階で、前記結晶性プロピレン重合体成分(A)の存在下に、プロピレンを主成分とするモノマーを重合して極限粘度が1.5dl/g以上2.5dl/g未満の結晶性プロピレン重合体成分(B)を製造して得られ、結晶性プロピレン重合体成分(A)の含有量が1重量%以上10重量%未満であるプロピレン重合体を含み、230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレートが1.0g/10分以上10g/10分未満であるポリプロピレン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工適性に優れ、フィッシュアイの少ない延伸フィルムを与えるポリプロピレン樹脂組成物、及びその延伸フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、第一段階で、特定の結晶性プロピレン重合体を製造し、第二段階以降で、特定の結晶性プロピレン重合体を連続的に製造してなる、プロピレン重合体は公知である。
例えば、特開昭59−172507号公報(特許文献1)には、第一段階で極限粘度が1.8〜10dl/gの結晶性プロピレン重合体を35〜65重量%製造し、第二段階以降で極限粘度が0.6〜1.2dl/gの結晶性プロピレン重合体を連続的に製造してなる、加工性・機械的特性に優れているプロピレン重合体が開示されている。
また、特開平6−93034公報(特許文献2)には、第一段階で極限粘度が2.6dl/g以上の結晶性プロピレン重合体を10〜60重量%製造し、第二段階以降で極限粘度が1.2dl/g以下の結晶性プロピレン重合体を連続的に製造してなり、Mw/Mn>20であり、機械的特性に優れているプロピレン重合体が開示されている。
また、WO94/26794号公報(特許文献3)には、190℃/10kgで測定したMI(メルトインデックス)が1.0未満であって、相対的に高分子量の成分を10〜35重量%含む溶融強度に優れるポリプロピレンが開示されている。
また、WO98/54233号公報(特許文献4)には極限粘度が9〜13dl/gの高分子量ポリプロピレン含有量が15〜30重量%のポリオレフィン樹脂組成物が開示されている。
また、特許第3378517号公報(特許文献5)にはTi、Mg、ハロゲンを必須成分とする触媒を用いて第一段階でプロピレンを主成分とするモノマーを重合して極限粘度が5dl/g以上の結晶性プロピレン重合体を製造し、第二段階以降でプロピレンを主成分とするモノマーを重合して極限粘度が3dl/g未満の結晶性プロピレン重合体を連続的に製造して得られるプロピレン重合体が開示されている。
また、特開平11−181178号公報(特許文献6)には極限粘度が7〜15dl/gの高分子量成分の含有量が1〜50重量%のポリオレフィン樹脂組成物が開示されている。
また、特許第3849329号公報(特許文献7)には極限粘度が3〜13dl/gの相対的に高分子量のポリプロピレンを重合し、第二段階以降で極限粘度が0.1〜5dl/gの相対的に低分子量のポリプロピレンを連続的に重合して得られ、架橋剤の非存在下で溶融混練するポリプロピレン樹脂組成物の製造方法が開示されている。
また、特表2001−518533号公報(特許文献8)には高分子量成分と低または中分子量成分を含む溶融強度の高いポリプロピレンが開示されている。
また、特許第3761386号公報(特許文献9)にはMFRが10〜1000g/10min.の成分からなるポリプロピレン樹脂組成物の製造方法が開示されている。
また、特開2004−175933号公報(特許文献10)には多段重合で得られ、Mw/Mnが5.4以上、Mz/Mnが20以上のポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。
【特許文献1】特開昭59−172507号公報
【特許文献2】特開平6−93034公報
【特許文献3】WO94/26794号公報
【特許文献4】WO98/54233号公報
【特許文献5】特許第3378517号公報
【特許文献6】特開平11−181178号公報
【特許文献7】特許第3849329号公報
【特許文献8】特表2001−518533号公報
【特許文献9】特許第3761386号公報
【特許文献10】特開2004−175933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらのプロピレン重合体は、加工適性や、得られる延伸フィルムのフィッシュアイの観点から満足できるものではなかった。
本発明の目的は、加工適性に優れ、フィッシュアイの少ない延伸フィルムを与えるポリプロピレン樹脂組成物、および得られたポリプロピレン樹脂組成物からなる延伸フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、第一段階でプロピレンを主成分とするモノマーを重合して極限粘度が3.0dl/g以上5.0dl/g未満の結晶性プロピレン重合体成分(A)を製造し、第一段階の後の段階でプロピレンを主成分とするモノマーを重合して極限粘度が1.5dl/g以上2.5dl/g未満の結晶性プロピレン重合体成分(B)を製造して得られ、結晶性プロピレン重合体成分(A)の含有量が1重量%以上10重量%未満であるプロピレン重合体を含み、230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレートが1.0g/10分以上10g/10分未満であるポリプロピレン樹脂組成物に係るものである。
好ましい態様において、上記ポリプロピレン樹脂組成物は、結晶性プロピレン重合体成分(A)が、Ti、Mg、ハロゲンを含有するする触媒を用いて、2000g/g−触媒・時以上の重合速度で製造された成分であり、結晶性プロピレン重合体成分(B)が、Ti、Mg、ハロゲンを含有するする触媒を用いて、結晶性プロピレン重合体成分(A)の製造時の重合速度の2倍以上の重合速度で製造された成分である組成物である。
更に、本発明は、かかるポリプロピレン樹脂組成物を製膜し、得られた膜を延伸してなる延伸フィルムに係るものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明により加工適性に優れ、フィッシュアイの少ない延伸フィルムを与えるポリプロピレン樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明についてより具体的に説明する。
本発明におけるプロピレン重合体は、結晶性プロピレン重合体成分(A)と結晶性プロピレン重合体成分(B)とを含む。
【0007】
結晶性プロピレン重合体成分(A)は、プロピレンを主成分とするモノマーを重合して得られる。
結晶性プロピレン重合体成分(A)の極限粘度は3.0dl/g以上5.0dl/g未満であり、好ましくは3.5dl/g以上4.5dl/g未満である。極限粘度が3.0dl/g未満であると、ポリプロピレン樹脂組成物は加工適性に劣ることがあり、極限粘度が5.0dl/g以上であると、ポリプロピレン樹脂組成物から得られるフィルム中のフィッシュアイが増加することがある。
プロピレン重合体において、結晶性プロピレン重合体成分(A)の含有量は1重量%以上10重量%未満であり、好ましくは3重量%以上10重量%未満である。1重量%未満であると加工適性に劣ることがあり、10重量%以上であると流動性が低下することがあるのみならず、フィッシュアイが増加することもある。
結晶性プロピレン重合体成分(A)は、プロピレンの単独重合体等のアイソタクチックプロピレン重合体、またはプロピレンと、エチレンおよび炭素数4−12のα−オレフィンからなる群から選択される1種以上のモノマーとの共重合体が好ましい。α−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン、1−ヘキセン等が挙げられる。なお、プロピレンと共重合されるプロピレン以外のモノマーは「コモノマー」と称されることがある。
結晶性プロピレン重合体成分(A)は、柔軟性・透明性などを制御する観点からプロピレンと、プロピレン以外の1種以上のモノマーとの共重合体が好ましい。プロピレン以外のモノマーの含有量としては、共重合体の結晶性の観点から、エチレンの場合は10重量%以下が好ましく、より好ましくは5重量%以下であり、さらに好ましくは3重量%以下であり、α−オレフィンの場合は30重量%以下が好ましく、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。好ましい結晶性プロピレン重合体成分(A)の例としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンと10重量%以下のエチレンとのランダム共重合体、プロピレンと30重量%以下のブテンとのランダム共重合体、またはプロピレンと10重量%以下のエチレンと30重量%以下のブテンとの3元ランダム共重合体が挙げられる。
柔軟性、透明性に関して特に好ましい結晶性プロピレン重合体成分(A)は、エチレンを1重量%以上10重量%以下含むプロピレン−エチレン共重合体である。
【0008】
結晶性プロピレン重合体成分(B)の極限粘度は1.5dl/g以上2.5dl/g未満である。極限粘度が2.5dl/g以上であるとプロピレン重合体の極限粘度が大きくなり過ぎて、ポリプロピレン樹脂組成物は、流動性に劣り、加工性に劣る。また、組成物の粘度を調整するために、極限粘度が2.5dl/g以上の重合体成分を含むプロピレン重合体に、他の樹脂成分を添加しても、該プロピレン重合体と、添加された樹脂成分との混和性が劣ることがある。なお、結晶性プロピレン重合体成分(B)の極限粘度[η]Bは下記式より計算される。
[η]B=([η]T×100−[η]A×WA)/WB
[η]T:プロピレン重合体の極限粘度
[η]A:結晶性プロピレン重合体成分(A)の極限粘度
WA:プロピレン重合体中の結晶性プロピレン重合体成分(A)の含有量(重量%)
WB:プロピレン重合体中の結晶性プロピレン重合体成分(B)の含有量(重量%)
【0009】
結晶性プロピレン重合体成分(B)としては、プロピレン単独重合体等のアイソタクチックプロピレン重合体、プロピレンと、エチレンおよびα−オレフィンからなる群から選択される1種以上のモノマー等との結晶性共重合体などが好ましい。
特に好ましい結晶性プロピレン重合体成分(B)としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンと10重量%以下のエチレンとのランダム共重合体、プロピレンと30重量%以下の1−ブテンとのランダム共重合体、プロピレンと10重量%以下のエチレンと30重量%以下の1−ブテンとの3元ランダム共重合体が挙げられる。プロピレンとエチレンとのランダム共重合体およびプロピレンとエチレンと1−ブテンとの3元ランダム共重合体におけるエチレン含有量は、好ましくは7重量%以下であり、プロピレンと1−ブテンとのランダム共重合体およびプロピレンとエチレンと1−ブテンとの3元ランダム共重合体における1−ブテン含有量は、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。
【0010】
プロピレン重合体の極限粘度は、加工性の観点から、3dl/g未満であることが好ましく、より好ましくは1dl/g以上3dl/g未満、さらに好ましくは1.5dl/g以上2.5dl/g未満、最も好ましくは1dl/g以上2dl/g未満である。
【0011】
結晶性プロピレン重合体成分(B)は、結晶性プロピレン重合体成分(A)の製造段階の後に、前記結晶性プロピレン重合体成分(A)の存在下に、プロピレンを主成分とするモノマーを重合して得られるプロピレン重合体成分である。例えば、チーグラー・ナッタ触媒に代表される立体規則性オレフィン重合触媒存在下にプロピレンを主成分とするモノマーを重合して結晶性プロピレン重合体成分(A)を製造し、引き続き該触媒および該重合体成分の存在下にプロピレンを主成分とするモノマーを重合して結晶性プロピレン重合体成分(B)を製造する。極限粘度が3.0dl/g以上5dl/g未満の結晶性プロピレン重合体と極限粘度が1.5dl/g以上2.5dl/g未満の結晶性プロピレン重合体とを別々に製造し、次いで両者をブレンドして得られる組成物は、加工適性において劣り、かかる組成物から得られるシート、フィルムにおいて、フィッシュアイが多く発生する傾向がある。
【0012】
本発明におけるプロピレン重合体の製造方法としては、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンなどの不活性溶剤中でモノマーを重合する方法、液相のプロピレンやエチレン中でモノマーを重合する方法、気相のプロピレンやエチレン中に触媒を添加し、気相状態でモノマーを重合する方法、またはこれらの方法を組み合わせた方法が挙げられる。
本発明におけるプロピレン重合体の具体的な製造方法としては、同一の重合槽にて結晶性プロピレン重合体成分(A)を製造した後、引き続いて結晶性プロピレン重合体成分(B)を製造する回分式重合法、または少なくとも2槽の重合槽が直列に配置された重合装置において、第1の重合槽において結晶性プロピレン重合体成分(A)の製造後に生成物を第1の重合槽からそれに連結された第2の重合槽に移し、次いでその重合槽で結晶性プロピレン重合体成分(A)の存在下に結晶性プロピレン重合体成分(B)を製造する重合法などが挙げられる。
【0013】
中でも、プロピレン重合体の効率的な製造方法の一つは、チーグラー・ナッタ触媒を用いて、結晶性プロピレン重合体成分(A)を、液相のプロピレンを主体とする媒体中で製造し、結晶性プロピレン重合体成分(B)を、気相のプロピレンを主体とする媒体中で結晶性プロピレン重合体成分(A)の存在下に製造する方法である。この方法を用いると、重合槽中で重合体成分同士が融着する度合いが極めて少なく、かつ単位時間あたりの収量、生産に要するエネルギーなどの観点から、生産性が最も良好である。
【0014】
プロピレン重合体の製造には、チーグラー・ナッタ触媒や、メタロセン触媒などの触媒を用いて、プロピレンやエチレン、1−ブテンなどのコモノマーを重合させる方法を適用することができる。
【0015】
チーグラー・ナッタ触媒としては、例えば、Mg化合物にTi化合物を複合化させて得られた固体触媒成分等からなるTi−Mg系触媒や、Mg化合物にTi化合物を複合化させて得られた固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物、および必要に応じて電子供与性化合物等の第3成分を組み合わせて得られた触媒が挙げられる。
好ましくは、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平7−216017号公報、特開2004−67850号公報等に記載されたMg、Tiおよびハロゲンを含有する固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および電子供与性化合物からなる触媒である。
【0016】
プロピレン重合体において、結晶性プロピレン重合体成分(A)と結晶性プロピレン重合体成分(B)の融点の調整方法としては、重合時の各工程において重合槽中のプロピレン、エチレン、1−ブテンの量を調整する方法が挙げられる。また、結晶性プロピレン重合体成分(A)と結晶性プロピレン重合体成分(B)との割合の調整方法としては、重合時の各工程の滞留時間や重合温度、重合槽の大きさを調整する方法が挙げられる。
【0017】
結晶性プロピレン重合体成分(A)の製造における重合温度は通常20〜150℃、好ましくは35〜95℃の範囲である。この温度範囲での重合が生産性の面からは好ましく、所望する結晶性プロピレン重合体成分(A)、結晶性プロピレン重合体成分(B)の量比を得るのにも好ましい。
【0018】
結晶性プロピレン重合体成分(A)の製造時に、触媒1gあたり、1時間で生成する結晶性プロピレン重合体成分(A)の量は2000g以上であることが好ましい。すなわち、結晶性プロピレン重合体成分(A)の製造時の重合速度が2000g/g−触媒・時以上であることが好ましい。このような重合速度は、触媒の種類及び量、重合温度、重合圧力等の重合条件を適切に選択することにより達成することができる。このような重合速度を選択することにより、生成物からの触媒除去が不要となる。
【0019】
結晶性プロピレン重合体成分(B)の製造における重合速度は、結晶性プロピレン重合体成分(A)の製造における重合速度の2倍以上であることが好ましい。このような重合速度の関係は、結晶性プロピレン重合体成分(A)の製造および結晶性プロピレン重合体成分(B)の製造の各々における触媒の種類及び量、重合温度、重合圧力などの重合条件を選択することにより達成することができる。より好ましくは、結晶性プロピレン重合体成分(B)の製造における重合速度は、結晶性プロピレン重合体成分(A)の製造における重合速度の3倍以上である。結晶性プロピレン重合体成分(B)の製造における重合温度は結晶性プロピレン重合体成分(A)の製造における重合温度と同一でもよいし、異なっていてもよいが、通常20〜150℃、好ましくは35〜95℃の範囲である。
本発明の好ましい態様において、結晶性プロピレン重合体成分(A)は、Ti、Mg、ハロゲンを含有するする触媒を用いて、2000g/g−触媒・時以上の重合速度で製造された成分であり、結晶性プロピレン重合体成分(B)は、Ti、Mg、ハロゲンを含有するする触媒を用いて、結晶性プロピレン重合体成分(A)の製造時の重合速度の2倍以上の重合速度で製造された成分である。
【0020】
プロピレン重合体は、必要な場合に後処理として触媒の失活、脱溶剤、脱モノマー、乾燥、造粒などを行った後、製品として提供される。後処理の工程としては、重合槽から重合体成分およびモノマーを抜き出し、圧力を開放することによりモノマーを離脱させる工程、水などの失活剤と接触させた後、熱窒素気流中で脱溶剤および残ったモノマーを除去する工程などが挙げられる。
【0021】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、前述のようなプロピレン重合体を含む。このポリプロピレン樹脂組成物の主成分はプロピレン重合体であり、ポリプロピレン樹脂組成物におけるプロピレン重合体の含有量は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
【0022】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、ポリエチレン、ポリブテン−1、スチレン樹脂、エチレン/α−オレフィン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム等のポリオレフィン重合体等の他の樹脂成分を含有してもよい。
【0023】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、中和剤、酸化防止剤、耐侯剤、難燃剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、銅害防止剤、二酸化珪素粉末等の添加剤を含有してもよい。
【0024】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレートは1.0g/10分以上10g/10分未満であり、好ましくは1.5g/10分以上9.0g/10分未満であり、さらに好ましくは2.0g/10分以上8.0g/10分未満である。組成物のメルトフローレートが1.0g/10分未満では、その組成物は加工性に劣ることがあり、組成物の10g/10分を超えるとその組成物からのフィルム製膜が難しくなることがある。
【0025】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物が他の樹脂成分を含まない場合、本発明のポリプロピレン樹脂組成物のメルトフローレートの値は、プロピレン重合体のメルトフローレートの値以上の値となることがより好ましい。
【0026】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、引取り法で決定された溶融強度(メルトテンション)が、2.5g未満であることが好ましい。
【0027】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法としては、例えば、プロピレン重合体、必要に応じて、他の樹脂成分、添加剤を、タンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー等の混合機を用いて混合した後、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー等で溶融混練する方法が挙げられる。
【0028】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、押出成形、射出成形、真空成形、発泡成形等幅広い用途に好適に用いることができる。中でも押出成形には好適に用いられ、フィルムやシートに成形される。
【0029】
本発明の延伸フィルムは、本発明のポリプロピレン樹脂組成物を製膜、延伸してなる延伸フィルムである。
【0030】
本発明の延伸フィルムを得るための製膜、延伸加工方法は特に限定されないが、通常以下に述べる縦方向一軸延伸方式、横方向一軸延伸方式、または逐次二軸延伸方式、同時二軸延伸方式もしくはチューブラー二軸延伸方式等が挙げられる。未延伸フィルムでは、フィッシュアイが増加することがある。
【0031】
縦方向一軸延伸方式とは、ポリプロピレン樹脂組成物を押出機にて溶融後、Tダイより押出し、冷却ロールにてシート状に冷却固化し、次いで得られたシートを一連の加熱ロールにて縦方向に予熱、延伸することによりフィルムを製膜する方式である。
【0032】
横方向一軸延伸方式とは、ポリプロピレン樹脂組成物を押出機にて溶融後、Tダイより押出し、冷却ロールにてシート状に冷却固化し、次いで得られたシートの両端を流れ方向に沿って並んだ2列のチャックでそれぞれ掴み、予熱部、延伸部、および熱処理部からなる加熱炉にて、該2列のチャック間隔を幅方向に広げることにより横方向に延伸することによりフィルムを製膜する方式である。
【0033】
逐次二軸延伸方式とは、ポリプロピレン樹脂組成物を押出機にて溶融後、Tダイより押出し、冷却ロールにてシート状に冷却固化し、次いで得られたシートを一連の加熱ロールにて縦方向に予熱、延伸する。続いて、得られた縦延伸シートの両端を流れ方向に沿って並んだ2列のチャックでそれぞれ掴み、予熱部、延伸部、および熱処理部からなる加熱炉にて、該2列のチャック間隔を広げることにより横方向に延伸することによりフィルムを製膜する方式である。樹脂組成物の溶融温度は、分子量によるが、通常230℃〜290℃の範囲である。縦延伸温度は130〜150℃、縦延伸倍率は、4〜6倍であり、横延伸温度は150〜165℃、横延伸倍率は8〜10倍である。
【0034】
同時二軸延伸方式とは、ポリプロピレン樹脂組成物を押出し機にて溶融後、Tダイより押し出し、冷却ロールにてシート状に冷却固化し、次いで得られたシートの両端を流れ方向に沿って並んだ2列のチャックでそれぞれ掴み、予熱部、延伸部、および熱処理部からなる加熱炉にて、該2列のチャック間隔と列内の個々のチャック間隔を幅方向および流れ方向に広げることにより、縦方向と横方向へ同時に延伸することによりフィルムを製膜する方式である。
【0035】
チューブラー二軸延伸方式とは、ポリプロピレン樹脂組成物を押出し機にて溶融後、環状ダイより押し出し、水槽にてチューブ状に冷却固化し、得られたチューブを加熱炉あるいは一連の熱ロールにて予熱し、次いで低速ニップロールを通し、高速ニップロールで巻き取ることにより流れ方向に延伸する。この際、低速ニップロールと高速ニップロールの間に蓄えられた空気の内圧によってチューブを膨らませることにより、幅方向にも延伸することによりフィルムを製膜する方式である。
【0036】
本発明の延伸フィルムは、単層でも2層以上からなる多層構成であってもよいが、多層構成の場合は少なくとも一方の表面に本発明のポリプロピレン樹脂組成物からなる層を有する
【0037】
本発明の延伸フィルムの厚みは、用途に応じて適宜選択でき、特に制限はないが、5〜100μであり、好ましくは、10〜60μである。かかるフィルムは、食品包装、繊維包装、雑貨包装等の包装用途に広く用いられる。
【0038】
本発明の延伸フィルムには、通常工業的に採用されている方法によって、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理を施しても良い。
【実施例】
【0039】
以下、本発明について、実施例を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)結晶性プロピレン重合体成分(A)および結晶性プロピレン重合体成分(B)の含有量(重量%)
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法によって製造されたものは重合時の物質収支から求めた。結晶性プロピレン重合体成分(A)と結晶性プロピレン重合体成分(B)とをブレンドすることによって製造されたものはその配合比から求めた。
(2)重合体成分の極限粘度(単位:dl/g)
ウベローデ型粘度計を用いて135℃テトラリン中で測定を行った。なお、結晶性プロピレン重合体成分(B)の極限粘度は結晶性プロピレン重合体成分(A)およびプロピレン重合体全体の極限粘度を用いて、明細書中に記載の計算式に基づき求めた。
(3)共重合成分(コモノマー)含有量(単位:重量%)
高分子ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の616ページ以降に記載されている方法により、赤外分光法で測定を行い、求めた。
(4)融点(Tm、単位:℃)
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、DSC)を用いて、試片約10mgを窒素雰囲気下220℃で溶融させた後、急速に150℃まで冷却した。150℃で1分間保持した後、5℃/分の降温速度で50℃まで降温した。
その後に50℃で1分保持した後、5℃/分で昇温させて、得られた融解吸熱カーブの最大ピークのピーク温度の小数位以下を四捨五入してTm(融点)とした。ピークが複数あるものは、高温側のピークを採用した。
なお、本熱量計を用いて5℃/分の降温速度ならびに昇温速度で測定したインジウム(In)のTmは156.6℃であった。
【0040】
(5)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nで測定した。
(6)メルトテンション(MT、単位:g)
溶融張力測定機(東洋精機社製)を用い、下記条件にて測定した。
オリフィス:L/D=4 (D=2mm)
測定温度:190℃
予熱:10分
押出速度:5.7mm/分
引取速度:15.6m/分
(7)フィッシュアイの計測(単位:個/100cm2
卓上型欠陥検査装置(Mamiya−OP社製、GX70LT)を用いて、16.35cm×12cmの範囲について200μm以上の欠陥を計測し、100cm2当りのフィッシュアイ(FE)の個数を計算した。
【0041】
実施例1
(固体触媒の合成および予備活性化)
特開2004−067850号公報の実施例に準拠して製造されたMg、Tiおよびハロゲンを含む固体触媒成分15gに対して、十分に脱水脱気処理したn−ヘキサン1.5L、トリエチルアルミニウムを37.5ミリモル、シクロヘキシルエチルジメトキシシランを3.75ミリモルの割合で添加し、槽内温度を5〜15℃に保ちながらプロピレン15gを重合し、予備活性化を行った。
(プロピレン重合体の製造)
2つの重合槽を直列に接続して以下の手順で重合を行った。
第一槽である内容積20LのSUS製重合槽において、重合温度58℃、重合圧力2.2MPaを保持するように液体のプロピレンを40kg/時、1−ブテンを5kg/時、水素を1L/時で供給しながら、トリエチルアルミニウム41.8ミリモル/時、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン10.7ミリモル/時および予備活性化された固体触媒成分0.61g/時を連続的に供給して、重合を行った。この重合槽でのプロピレン重合体(成分A)生成量は1.2kg/時であった。プロピレン重合体(成分A)の一部をサンプリングして分析した結果、極限粘度は4.2dl/g、1−ブテン含有量は3.1重量%、プロピレン含有量は96.7重量%であった。前記プロピレン重合体は、失活することなく全て第二槽に連続的に移送した。
第二槽として、内容積の1m3の攪拌機付き流動床反応器を用い、重合温度80℃、重合圧力1.8MPa、気相部のエチレン濃度1.45vol%、気相部の1−ブテン濃度14.1vol%、気相部の水素濃度1.3vol%を保持するようにプロピレン、エチレン、1−ブテン、および水素を供給しながら、第一槽より移送された触媒含有重合体の存在下で重合を実施した。第二槽の出口では20.2kg/時のプロピレン重合体が得られた。このプロピレン重合体の極限粘度は1.9dl/g、エチレン含有量2.1重量%、1−ブテン含有量は11.2重量%であった、融点は130℃、MFR 4.0g/10分であった。
以上の結果から、第二槽でのプロピレン重合体(成分B)の生成量は19.0Kg/時であり、(成分A)と(成分B)の重量比は5.9:94.1であり、(成分B)の極限粘度は1.7dl/gであることが分かった。
(フィルムの製造)
重合によって最終的に得られたプロピレン共重合体100重量部に対し、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX1010)0.05重量部、リン系酸化防止剤トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名:IRGAFOS168)0.15重量部、平均粒径2.3μm(コールター法)の合成シリカ(商品名:サイリシア430、富士シリシア社製)0.10重量部、エルカ酸アミドを0.05重量部、タルク0.05重量部を加えて、得られた混合物を220℃で溶融混練し、MFRが4.3g/分のペレットを得た。このペレットの溶融張力は、1.3gであった。
(加工適性の評価)
得られたペレット(表層用)、住友ノーブレンFS2011DG3(融点159℃、MFR=2.5g/10分)(基材層用)を、それぞれ樹脂温度230℃、260℃で別の押出機で溶融押出し、一基の共押出Tダイに供給した。このTダイから2種2層構成(チルロール側/反チルロール=FS2011DG3/サンプル)で押出された積層樹脂を30℃の冷却ロールで冷却して、厚み約1mmのキャストシートを得た。1時間加工後の反チル側のダイ出口に発生する目脂(die deposit)の状態を目視にて評価した。
目脂の評価は次の基準に基づいて行った。
○:ダイスの幅方向1/3未満の幅に目脂が付着した場合
△:ダイスの幅方向1/3〜2/3の幅に目脂が付着した場合
×:ダイスの方向2/3以上の幅に目脂が付着した場合
評価結果を表2に示した。
(2軸延伸フィルムの評価)
表層用に得られたペレットを樹脂温度220℃で押出機で溶融押出し、Tダイに供給した。このTダイから押出された樹脂を25℃の冷却ロールで冷却して厚み約200μmのキャストシートを得た。
得られたキャストシートを延伸温度110℃で縦延伸機でロール周速差により4倍に延伸し、引き続いて加熱炉にて延伸温度125℃で横方向に4倍に延伸し、厚み12μmの2軸延伸フィルムを作製した。得られたフィルムのフィッシュアイを評価した。フィッシュアイは7.8個/100cm2であった。
【0042】
実施例2
実施例1におけるプロピレン共重合体の製造時の第一槽目、第二槽目におけるプロピレン、エチレン、1−ブテン、水素の量を変化させて、表1にあるように(成分A)および(成分B)を製造し、MFRが3.4g/10分のパウダーを得た。このパウダーのペレット化を行なった。得られたペレットを用い、実施例1と同様にして、ペレット、キャストシート、フィルムについて評価を実施した。
評価結果を表2に示した。
【0043】
実施例3
実施例1におけるプロピレン共重合体の製造時の第一槽目、第二槽目におけるプロピレン、エチレン、1−ブテン、水素の量を変化させて、表1にあるように(成分A)および(成分B)を製造し、MFRが3.1g/10分のパウダーを得た。このパウダーのペレット化を行なった。得られたペレットを用い、実施例1と同様にして、ペレット、キャストシート、フィルムについて評価を実施した。
また、得られたペレットを幅400mmのコートハンガー式Tダイを備えたφ50mm押出機を用いて、樹脂温度220℃、吐出量12Kg/時で押出し、チルロール温度30℃、ライン速度10m/分、エアーチャンバー冷却方式で冷却し厚み15μmのフィルムを作製した。得られたフィルムのフィッシュアイを評価した。
評価結果を表2に示した。
【0044】
実施例4
実施例1におけるプロピレン共重合体の製造時の第一槽目、第二槽目におけるプロピレン、エチレン、1−ブテン、水素の量を変化させて、表1にあるように(成分A)および(成分B)を製造し、ペレット化を行なった。得られたペレットを用い、実施例3と同様にして、ペレット、キャストシート、フィルムについて評価を実施した。
評価結果を表2に示した。
【0045】
実施例5
実施例1におけるプロピレン系共重合体の製造時の第一槽目、第二槽目におけるプロピレン、エチレン、1−ブテン、水素の量を変化させて表1にあるように(成分A)(成分B)を製造し、ペレット化を行なった。得られた樹脂組成物を実施例3と同様に評価を実施した。
評価結果を表2に示した。
【0046】
実施例6
実施例1におけるプロピレン系共重合体の製造時の第一槽目、第二槽目におけるプロピレン、エチレン、1−ブテン、水素の量を変化させて表1にあるように(成分A)(成分B)を製造し、MFRが2.3g/10分のパウダーを得た。このパウダーのペレット化を行なった。得られた樹脂組成物を実施例3と同様に評価を実施した。
評価結果を表2に示した。
【0047】
比較例1〜4
実施例1におけるプロピレン共重合体の製造時の第一槽目、第二槽目におけるプロピレン、エチレン、1−ブテン、水素の量を変化させて表1にあるように(成分A)(成分B)を製造し、ペレット化を行なった。得られたペレットを用い、実施例1と同様にして、ペレット、キャストシート、フィルムについて評価を実施した。評価結果を表2に示した。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一段階でプロピレンを主成分とするモノマーを重合して極限粘度が3.0dl/g以上5.0dl/g未満の結晶性プロピレン重合体成分(A)を製造し、第一段階の後の段階で、前記結晶性プロピレン重合体成分(A)の存在下に、プロピレンを主成分とするモノマーを重合して極限粘度が1.5dl/g以上2.5dl/g未満の結晶性プロピレン重合体成分(B)を製造して得られ、結晶性プロピレン重合体成分(A)の含有量が1重量%以上10重量%未満であるプロピレン重合体を含み、230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレートが1.0g/10分以上10g/10分未満であるポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項2】
結晶性プロピレン重合体成分(A)は、Ti、Mg、ハロゲンを含有するする触媒を用いて、2000g/g−触媒・時以上の重合速度で製造された成分であり、結晶性プロピレン重合体成分(B)は、Ti、Mg、ハロゲンを含有するする触媒を用いて、結晶性プロピレン重合体成分(A)の製造時の重合速度の2倍以上の重合速度で製造された成分である、請求項1記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項3】
結晶性プロピレン重合体成分(A)が、プロピレンの単独重合体、プロピレンと10重量%以下のエチレンとのランダム共重合体、プロピレンと30重量%以下のブテンとのランダム共重合体、またはプロピレンと10重量%以下のエチレンと30重量%以下のブテンとの3元ランダム共重合体であることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項4】
結晶性プロピレン重合体成分(B)が、プロピレンの単独重合体、プロピレンと10重量%以下のエチレンとのランダム共重合体、プロピレンと30重量%以下のブテンとのランダム共重合体、またはプロピレンと10重量%以下のエチレンと30重量%以下のブテンとの3元ランダム共重合体であることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項記載のポリプロピレン樹脂組成物を製膜し、得られた膜を延伸してなる延伸フィルム。

【公開番号】特開2009−13403(P2009−13403A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147847(P2008−147847)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】